生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_バイオセンサおよび血糖値測定用バイオセンサ
出願番号:1996023566
年次:2006
IPC分類:G01N 27/327,G01N 27/416


特許情報キャッシュ

吉岡 俊彦 池田 信 南海 史朗 JP 3794046 特許公報(B2) 20060421 1996023566 19960209 バイオセンサおよび血糖値測定用バイオセンサ 松下電器産業株式会社 000005821 岩橋 文雄 100097445 内藤 浩樹 100109667 永野 大介 100109151 吉岡 俊彦 池田 信 南海 史朗 JP 1995040157 19950228 JP 1995072585 19950330 20060705 G01N 27/327 20060101AFI20060615BHJP G01N 27/416 20060101ALI20060615BHJP JPG01N27/30 353RG01N27/30 353PG01N27/30 353UG01N27/46 338 G01N 27/327 特開平06−088805(JP,A) 7 1996327580 19961213 12 20020708 黒田 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、血液、尿等の生体試料、食品工業における原料、製品など、さらに果汁などの試料中に含まれる基質(特定成分)を高精度で、迅速かつ容易に定量し得るバイオセンサに関する。【0002】【従来の技術】グルコース、スクロースなどの糖類の定量分析法として、施光度計法、比色法、還元滴定法および各種クロマトグラフィーを用いた方法などが開発されている。しかし、これらの方法はいずれも、糖類に対する特異性があまり高くはないので精度が悪い。例えば、上記施光度計法は、その操作は簡便ではあるが、操作時の温度の影響を大きく受けることが知られている。【0003】近年、生体試料および食品中の特定成分(基質)を、試料液の希釈および撹拌などを行なうことなく、簡易に定量し得るバイオセンサが提案されている。【0004】特開平3−202764号公報は、絶縁性基板上にスクリーン印刷などの方法により、電極系を形成し、この電極系上に親水性高分子、酸化還元酵素、および電子受容体を含有する反応層を形成したバイオセンサを開示している。このバイオセンサは、以下のようにして、試料中の基質濃度を定量し得る:まず、試料液をバイオセンサの反応層上に滴下することにより、反応層が溶解し、試料液中の基質と反応層内の酸化還元酵素との間で酵素反応が進行し、次いで、反応層内の電子受容体が還元される。酵素反応終了後、この還元された電子受容体を電気化学的に酸化することにより、このとき得られる酸化電流値から試料液中の基質濃度が定量される。【0005】米国特許第5,192,415号は、試料液のpHを先に調節することなく、反応層に含有される酸化還元酵素のタイプに応じて、試料液のpHを最適にし得る水素イオン濃度制御層を有する、バイオセンサを開示している。【0006】米国特許第5,264,103号は、電気絶縁性基板上に形成され、そして作用極および対極を有する主電極系と;酸化還元酵素を含有する反応層と;該主電極系と間隔をおいて配置され、そして作用極および対極を有する副電極層とを有するバイオセンサを開示している。【0007】上記バイオセンサはそれぞれ、含有される酸化還元酵素を選択することにより、例えば、グルコースセンサ、アルコールセンサ、コレステロールセンサ、およびアミノ酸センサとして広範に使用され得る。【0008】【発明が解決しようとする課題】このようなバイオセンサのうち、グルコースセンサには、一般に酸化還元酵素としてグルコースオキシダーゼを用いることが知られている。しかし、グルコースオキシダーゼは、グルコースの異性体のうち平衡状態でおよそ63%の割合で存在するβ−グルコースとのみ反応するので、このグルコースセンサは、得られる応答電流値(すなわち検出感度)が低く、そして例えば、極少量のグルコースを定量する場合には、それに伴う測定誤差が大きくなるという問題があった。【0009】さらに、上記グルコールセンサを用いて多糖類を定量する場合、加水分解酵素によって得られるグルコースの多くはα体であるので、定量を行う前に、加水分解により生成したα−グルコースを、一旦ムタロターゼによってβ体に異性化させる工程が必要であった。【0010】特願平6−291401号公報は、上記ムタロターゼとグルコースオキシダーゼとを共に用いたバイオセンサを開示している。しかし、このバイオセンサは、酵素全体の試薬量が少ないと、グルコースセンサの検出感度を十分に向上させることができず、反対に、酵素全体の試薬量が多いと、センサの製造コストが高くなる。また、試料液中の基質濃度が比較的高い場合、このムタロターゼとグルコオキシダーゼとを含有するバイオセンサは、ムタロターゼを含有しないものと比較して、その検出感度が低下する。【0011】【課題を解決するための手段】 本発明のバイオセンサは、上記欠点を解決したものであり、グルコースを検出するバイオセンサであって、電気絶縁性の基板と、該基板上に形成され、作用極および対極を有する電極系と、該基板上に、あるいは該基板と空間を介して配置された反応層とを有するバイオセンサであって、該反応層が、ピラノース酸化酵素およびグルコ−スオキシダーゼを含有することを特徴とする。【0013】さらに本発明は、反応層中にピラノース酸化酵素と多糖類分解酵素とを含有する。【0014】【発明の実施の形態】本発明において、電気絶縁性の基板には、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂板が用いられ得る。【0015】作用極および対極を有する電極系は、この基板上に、公知の方法を用いて設けられ得る。例えば、該基板上にリードを形成した後、該各リードに接続され、そして互いに絶縁するように作用極および対極が設けられる。上記リードおよび電極の材料としては、公知の導電性材料が使用され得る。例としては、カーボン、銀、白金、金、およびパラジウムが挙げられる。【0016】反応層は、ピラノース酸化酵素を含有する。ピラノース酸化酵素は、α−グルコースとβ−グルコースとの両方を同時に酸化する酵素である。このようなピラノース酸化酵素の例としては、ピラノースオキシダーゼ(EC1.1.3.10;PyOx)が挙げられる。【0017】PyOxの含有量は、反応層1平方センチメートル当たり、1〜200ユニットが好ましく、さらに好ましくは、2〜50ユニットである。ここで、本明細書中に用いられる用語「ユニット」とは、1μmolの基質を1分間で酸化させる酸化還元酵素の量をいう。PyOxの含有量が、反応層1平方センチメートル当たり1ユニット未満では、測定時に数分以上の時間が必要となり、さらにその間に生じる試料液の蒸発によって、測定される応答電流値に影響が及ぼされ易い。PyOxの含有量が、反応層1平方センチメートル当たり200ユニットを上回ると、製造コストが高くなり、そして反応層形成時に、反応層が割れて応答電流値にばらつきを生じ易い。【0018】また、反応層は試料液中のグルコースの検出感度をさらに向上させ、そしてより広範なグルコース濃度に応答させるために、上記ピラノース酸化酵素と共にグルコースオキシダーゼ(GOD)を含有し得る。好適なGODの含有量は、反応層1平方センチメートル当たり、1〜200ユニットであることが好ましい。この場合、PyOxの含有量は反応層1平方センチメートル当たり、0.1〜200ユニットが好ましく、さらに好ましくは、0.2〜40ユニットである。【0019】さらに、反応層は種々の親水性高分子を含有し得る。例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、アクリル酸およびその塩、メタアクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸およびその塩が挙げられる。特に、CMCが好ましい。【0020】また、反応層は多糖類を加水分解してα−グルコースを生成するための多糖類分解酵素を含有し得る。多糖類分解酵素は、スクロース、マルトースなどの多糖類を加水分解して、グルコースを生成する能力を有する酵素である。多糖類分解酵素の例としては、インベルターゼ(INV)のようなスクロース加水分解酵素、マルターゼのようなマルトース加水分解酵素、β−ガラクトシダーゼのようなラクトース加水分解酵素などが挙げられる。多糖類分解酵素の含有量は、反応層1平方センチメートル当たり1〜400ユニットが好ましく、さらに好ましくは2〜200ユニットである。【0021】グルコースを含む試料液がバイオセンサの反応層に供給されると、試料液内のα−グルコースおよびβ−グルコースは、上記ピラノース酸化酵素によりそれぞれ酸化される。これと同時に、試料液内の溶存酸素は過酸化水素に還元される。ここで、電圧を印加すると、過酸化水素が酸化される。このとき生じる応答電流は、生成した過酸化水素濃度、すなわち試料液内の基質濃度に比例するので、その応答電流値を測定することにより、試料液内の基質濃度が求められる。【0022】上記基質の酸化反応と同時に過酸化水素を生成させる代わりに、反応層に電子受容体を含有させることにより、酵素反応と同時に電子受容体の還元体を形成し得る。このような電子受容体の例としては、フェリシアンイオン、p−ベンゾキノンおよびその誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセンおよびその誘導体が挙げられる。電子受容体は、これらの1種またはそれ以上が用いられ得る。特に、フェリシアンイオンを用いることが好ましい。【0023】フェリシアンイオンの含有量は、反応層1平方センチメートル当たり0.21〜3.30mgが好ましく、さらに好ましくは0.3〜2.59mgである。フェリシアンイオンの含有量が、反応層1平方センチメートル当たり0.21mg未満では、測定可能なグルコース濃度の範囲が極めて狭くなり易い。フェリシアンイオンの含有量が、反応層1平方センチメートル当たり3.30mgを上回ると、反応層が割れて応答電流値にばらつきを生じ、さらには、保存時の信頼性が低下し易い。【0024】次に、本発明のバイオセンサの製造方法の好ましい実施態様について、図1および図2を用いて説明する。【0025】最初に、電気絶縁性の基板1上に、スクリーン印刷により銀ペーストなどの導電性材料を印刷し、リード2、3を形成する。次いで、樹脂バインダーを含む導電性材料を基板1上に印刷して作用極4を形成する。この作用極4は、リード2と接触している。【0026】次いで、その基板1上に、絶縁性ペーストを印刷して絶縁層6を形成する。絶縁層6は、作用極4の外周部を覆っており、これにより作用極4の露出部分の面積は一定に保たれる。図1に示すように、絶縁層6はリード2、3の一部も覆っている。さらにこの作用極4の外周部に、リング状の対極5が樹脂バインダーを含む導電性材料を用いて形成される。この対極5はリード3と接触している。このようにして、作用極4および対極5を有する電極系8が基板1上に形成される。【0027】さらに、本発明のバイオセンサは、その精度をさらに安定させるために、上記作用極4および対極5に加えて参照極を有する三電極系を基板1上に形成させてよい。【0028】反応層は、以下のようにして上記基板1上に配置され得る。最初に、上記電極系8上に上記親水性高分子の水溶液を滴下し、そして乾燥して親水性高分子層を形成する。次いで、該親水性高分子層上にPyOxと、必要に応じて上記電子受容体および/または多糖分解酵素とを含有する水溶液を滴下して、乾燥させる。本発明のバイオセンサはまた、繰り返し使用し得るように上記親水性高分子層上に、ピラノース酸化酵素ならびに必要に応じて上記多糖類分解酵素をグルタールアルデヒドを用いて架橋固定することもでき、あるいはポリマー材料と共に包括固定してもよい。さらに、必要に応じて上記電子受容体を、ポリマー材料を用いて化学的に固定してもよい。このようにして、図2に示される電極系8全体を覆う反応層7が形成される。【0029】あるいは、反応層は上記基板1上に空間を介して配置され得る。この場合、図3に示されるように、バイオセンサは、基板1と、該基板1上にスペーサ20を挟んで配置されたカバー30とを有する。カバー30は、孔31を有し、その一方の面に反応層37を有する。この反応層37と電極系8とが向き合うように基板1とカバー30とが配置され得る。このような基板1と空間を介して反応層37を形成する方法は、例えば、特開平1-114747号公報に記載されている。このバイオセンサにおいては、試料液供給口38から供給された試料液が反応層37と電極系8との間に到達すると、図2に示されるバイオセンサと同様に、反応層37で生成した過酸化水素あるいは電子受容体の還元体を電極系8で測定することができる。【0030】(実施例1)本発明のバイオセンサの一例として、グルコースセンサを以下のようにして作製した。図1は、本発明の一例として作製したグルコ−スセンサの反応層を取り除いた概略平面図である。図2は、同グルコ−スセンサの概略断面図である。【0031】図1に示すように、ポリエチレンテレフタレートでなる電気絶縁性の基板1上に、スクリーン印刷により銀ペーストを印刷し、リード2、3を形成した。次いで、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストを基板1上に印刷して作用極4を形成した。この作用極4は、リード2と接触していた。【0032】次いで、その基板1上に、絶縁性ペーストを印刷して絶縁層6を形成した。絶縁層6は、作用極4の外周部を覆っており、これにより作用極4の露出部分の面積を一定に保った。【0033】次いで、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストをリード3と接触するように基板1上に印刷してリング状の対極5を形成した。【0034】次いで、電極系8(作用極4および対極5)上に0.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を滴下し、そして乾燥させてCMC層を形成した。このCMC層上にピラノースオキシダーゼ(PyOx)およびフェリシアン化カリウムの混合液を滴下して、乾燥させて反応層7を形成した。この反応層7内に含まれるPyOxおよびフェリシアン化カリウムの量は、反応層1平方センチメートル当たり、それぞれ10ユニットおよび1.3mgであった。【0035】上記のようにして作製したグルコースセンサの反応層7上に、試料液として90mg/dlのグルコース水溶液を滴下した。次いで、滴下後1分で、電極系8の対極5に対して作用極4に+0.5Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。このようにして、該グルコース水溶液に対する応答電流値を、測定毎に新たなグルコースセンサを用いて、合計12回測定した。得られた応答電流値のばらつきは小さかった。【0036】さらに、180および360mg/dlのグルコース水溶液に対する応答電流値についても、上記と同様にして、それぞれ12回測定した。得られた応答電流値は、グルコース濃度の増大に依存して増大する傾向を示し、そしてその変化の割合は大きかった。【0037】比較実験として、PyOxの代わりにグルコースオキシダーゼを含有するグルコースセンサを作製した以外は、上記と同様にして、上記グルコース濃度に対する応答電流値をそれぞれ12回測定した。得られた応答電流値は、同一のグルコース濃度間でばらつきがあった。さらに、これらの応答電流値は、グルコース濃度の増大に依存して増大する傾向を示したが、その変化の割合は小さかった。【0038】(実施例2)本発明のバイオセンサの一例として、スクロースセンサを以下のようにして作製した。【0039】実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートからなる電気絶縁性の基板1上に、リード2、3、電極系8(作用極4および対極5)および絶縁層6を形成した。次いで、作用極4および対極5を有する電極系8上に0.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を滴下し、そして乾燥させてCMC層を形成した。【0040】このCMC層上にPyOx、インベルターゼ(INV)、およびフェリシアン化カリウムの混合水溶液を滴下して、乾燥させて反応層7を形成した。この反応層7内に含まれるPyOx、INVおよびフェリシアン化カリウムの量は、反応層1平方センチメートル当たり、それぞれ10ユニット、40ユニットおよび1.3mgであった。【0041】上記のようにして作製したスクロースセンサの反応層7上に、試料液として171mg/dlのスクロース水溶液を滴下すると、該試料液により反応層7は溶解した。次いで、滴下後3分で、電極系8の対極5に対して作用極4に+0.5Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。【0042】さらに、342および684mg/dlのスクロース水溶液のそれぞれに対する応答電流値を、測定毎に新たなスクロースセンサを用い、かつ上記と同様にして測定した。【0043】得られた応答電流値は、スクロース濃度の増大に依存して増大する傾向を示し、そしてその変化の割合は大きかった。【0044】比較実験として、INVの代わりにマルトース加水分解酵素またはラクトース加水分解酵素を用いて作製したマルトースセンサまたはラクトースセンサにおいても、上記と同様の効果が得られた。【0045】(実施例3)本発明のバイオセンサの一例として、グルコースセンサを以下のようにして作製した。図4は、本発明のバイオセンサの一例を示すグルコースセンサの種々のグルコース濃度と応答電流との相関を表すグラフである;ここで、図4中の曲線(a)は、反応層にピラノースオキシダーゼ(PyOx)とグルコースオキシダーゼ(GOD)とを含有する場合の応答電流値の変化を表し、曲線(b)は、GODのみを含有する場合の応答電流値の変化を表し、そして曲線(c)は、PyOxのみを含有する場合の応答電流値の変化を表す。【0046】実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートからなる電気絶縁性の基板1上に、リード2、3、電極系8(作用極4および対極5)および絶縁層6を形成した。次いで、作用極4および対極5を有する電極系8上に0.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を滴下し、そして乾燥させてCMC層を積層した。【0047】このCMC層にPyOx、グルコースオキシダーゼ(GOD)、およびフェリシアン化カリウムの混合水溶液を滴下し、乾燥させて反応層7を形成した。この反応層7内に含まれるPyOx、GODおよびフェリシアン化カリウムの量は、反応層1平方センチメートル当たり、それぞれ1ユニット、10ユニットおよび1.3mgであった。【0048】上記のようにして作製したグルコースセンサの反応層7上に、試料液として90mg/dlのグルコース水溶液を滴下した。次いで、滴下後1分で、電極系8の対極5に対して作用極4に+0.5Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。【0049】さらに、180および360mg/dlのグルコース水溶液に対する応答電流値を、測定毎に新たなグルコースセンサを用い、かつ上記と同様にして測定した。得られたグルコース濃度と応答電流値との間の応答特性を図4中の曲線(a)に示す。【0050】比較実験として、上記グルコースセンサのうち、PyOxを含まないセンサ、およびGODを含まないセンサをそれぞれ作製し、そして上記と同様にして応答電流値をそれぞれ測定した。これらの結果を、図4中の曲線(b)および曲線(c)に示す。【0051】図4に示されるように、酵素としてGODのみを含むグルコースセンサ(図4中の曲線(b))は、試料液に含まれるβ−グルコースのみの濃度に反映するので、その応答電流値は最も低かった。これに対し、酵素としてPyOxのみを含むグルコールセンサ(図4中の曲線(c))は、試料液に含まれるα−グルコースとβ−グルコースとの濃度の和に反映するので、特にグルコース濃度が低い領域では図4中の曲線(c)よりも応答電流が高った。しかし、このPyOxのみを含むグルコールセンサは、グルコース濃度が高い領域ではその応答電流値が図4中の曲線(b)の結果よりも低かった。結果として、PyOxとGODとの両方を含むグルコースセンサ(図4中の曲線(a))が、最も広い濃度領域で常に高い応答電流値を有していた。【0052】(実施例4)本発明のバイオセンサの一例として、スクロースセンサを以下のようにして作製した。【0053】実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートからなる電気絶縁性の基板1上に、リード2、3、電極系8(作用極4および対極5)および絶縁層6を形成した。次いで、作用極4および対極5を有する電極系8上に0.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を滴下し、そして乾燥させてCMC層を形成した。【0054】このCMC層にPyOx、GOD、インベルターゼ(INV)およびフェリシアン化カリウムの混合水溶液を滴下し、乾燥させて反応層7を形成した。この反応層7内に含まれるPyOx、GOD、インベルターゼ、およびフェリシアン化カリウムの量は、反応層1平方センチメートル当たり、それぞれ1ユニット、10ユニット、40ユニットおよび1.3mgであった。【0055】上記のようにして作製したスクロースセンサの反応層7上に、試料液として171mg/dlのスクロース水溶液を滴下すると、該試料液により反応層7は溶解した。次いで、滴下後3分で、電極系8の対極5に対して作用極4に+0.5Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。【0056】さらに、342および684mg/dlのスクロース水溶液のそれぞれに対する応答電流値を、測定毎に新たなスクロースセンサを用い、かつ上記と同様にして測定した。【0057】得られた応答電流値は、スクロース濃度の増大に依存して増大する傾向を示し、そして広い濃度領域で常に高い値を有していた。【0058】比較実験として、反応層7にGODを含まない以外は、上記と同様の方法でスクロースセンサを作製し、そして応答電流値を測定した。得られた応答電流値は、上記GODを含むスクロースセンサのものよりも常に低かった。【0059】INVの代わりに、マルトース加水分解酵素またはラクトース加水分解酵素を用いて作製したマルトースセンサまたはラクトースセンサにおいても、上記と同様の効果が得られた。【0060】(実施例5)反応層7にフェリシアン化カリウムを含有させなかったこと以外は、実施例1〜4と同様にして、バイオセンサを作製した。これらのバイオセンサに、実施例1〜4と同様の基質濃度を有する試料液をそれぞれ滴下し、一定時間経過後に電極系8の対極5に対して作用極4に+1.0Vの電圧を印加し、そして5秒後の電流値を測定した。【0061】得られた応答電流値は、各基質濃度の増大に依存して増大する傾向を示した。(実施例6)実施例3と同様にして、グルコースセンサを作製した。このグルコースセンサの反応層7上に、試料液として95mg/dlのグルコース濃度を有する全血を滴下した。滴下後1分で、電極系8の対極5に対して作用極4に+0.5Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。【0062】さらに、170および320mg/dlのグルコース濃度を有する全血に対する応答電流値を、測定毎に新たなグルコースセンサを用い、かつ上記と同様にしてそれぞれ測定した。得られたグルコース濃度と応答電流値との間の応答特性を図5中の曲線dに示す。【0063】比較実験として、上記グルコースセンサのうち、PyOxを含まないセンサ、およびGODを含まないセンサをそれぞれ作製し、そして上記と同様にして応答電流値を測定した。これらの結果を、図5中の曲線eおよび曲線fに示す。図5に示されるように、酵素としてGODのみを含むグルコースセンサ(図5中の曲線eは、全血中のβ−グルコース濃度にのみ反映するので、その応答電流値は最も低かった。これに対し、酵素としてPyOxのみを含むグルコールセンサ(図5中の曲線f)は、全血中のα−グルコースとβ−グルコースとの濃度の和に反映して、図5eよりも応答電流が常に高かった。結果として、PyOxとGODとの両方を含むグルコースセンサ(図5中の曲線d)が、最も広い濃度領域で常に高い応答電流値を有していた。【0064】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、血液、尿等の生体試料、食品工業における原料、製品など、さらに果汁などの試料中に含まれる基質(特定成分)を高精度で、迅速かつ容易に定量し得るバイオセンサを得ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の一実施例のバイオセンサの概略平面図【図2】反応層を基板上に直接接して配置した本発明の一実施例のバイオセンサの概略断面図【図3】反応層を基板上に空間を介して配置した本発明の一実施例のバイオセンサの概略断面図【図4】本発明のバイオセンサの実施例のグルコース濃度と応答電流との相関を表すグラフ【図5】本発明のバイオセンサの実施例のグルコース濃度と応答電流との相関を表すグラフ【符号の説明】1 電気絶縁性の基板2,3 リード4 作用極5 対極6 絶縁層7,37 反応層8 電極系20 スペーサ30 カバー31 孔38 試料供給孔a 反応層にピラノースオキシダーゼ(PyOx)とグルコースオキシダーゼ(GOD)とを含有する場合の応答電流値の変化b GODのみを含有する場合の応答電流値の変化c PyOxのみを含有する場合の応答電流値の変化d 反応層にピラノースオキシダーゼ(PyOx)とグルコースオキシダーゼ(GOD)とを含有する場合の応答電流値の変化e GODのみを含有する場合の応答電流値の変化f PyOxのみを含有する場合の応答電流値の変化 グルコースを検出するバイオセンサであって、電気絶縁性の基板と、前記基板上に形成された作用極および対極を有する電極系と、前記基板上に、あるいは前記基板と空間を介して配置された反応層とを有し、前記反応層が、ピラノース酸化酵素およびグルコ−スオキシダーゼを含有するバイオセンサ。 前記ピラノース酸化酵素がピラノースオキシダーゼ(EC1.1.3.10)である請求項1記載のバイオセンサ。 前記反応層が、さらに電子受容体を含有する請求項1または2記載のバイオセンサ。 前記反応層がさらにスクロース加水分解酵素、マルトース加水分解酵素、およびラクトース加水分解酵素から選択される一種を含む請求項1または2または3記載のバイオセンサ。 前記電子受容体がフェリシアンイオンである請求項3記載のバイオセンサ。 グルコースを検出するバイオセンサであって、電気絶縁性の基板と、前記基板上に形成された作用極および対極を有する電極系と、前記基板上に、あるいは前記基板と空間を介して配置された反応層とを有し、前記反応層が、ピラノースオキシダ−ゼとグルコ−スオキシダ−ゼとフェリシアンイオンを含有し、前記反応層が、1平方センチメートル当り0.1ユニットから200ユニットの前記ピラノースオキシダ−ゼと、1ユニットから200ユニットの前記グルコ−スオキシダーゼおよび0.21mgから3.30mgの前記フェリシアンイオンを含有するバイオセンサ。 請求項1から6の何れかに記載の構成である血糖値測定用バイオセンサ。


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