タイトル: | 特許公報(B2)_高純度ナフタレンジカルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 1996018962 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 51/487,C07C 63/38,B01J 23/44,C07B 61/00 |
橋本 晃男 重松 隆助 中村 健一 高川 實 JP 3826960 特許公報(B2) 20060714 1996018962 19960205 高純度ナフタレンジカルボン酸の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 橋本 晃男 重松 隆助 中村 健一 高川 實 20060927 C07C 51/487 20060101AFI20060907BHJP C07C 63/38 20060101ALI20060907BHJP B01J 23/44 20060101ALI20060907BHJP C07B 61/00 20060101ALN20060907BHJP JPC07C51/487C07C63/38B01J23/44 ZC07B61/00 300 C07C 63/00-63/74 C07C 51/42-51/50 C07B 61/00 B01J 21/00-38/74 特開昭50−142542(JP,A) 特公昭47−044213(JP,B1) 特開昭53−082742(JP,A) 2 1997208517 19970812 9 20030203 山本 昌広 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸から高純度ナフタレンジカルボン酸を製造する方法に関する。ナフタレンジカルボン酸は優れた性能を有するポリエチレンナフタレート(PEN) 樹脂の原料として有用である。【0002】【従来技術】ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコール等のジオール類とを重合させることにより得られるポリエステルは、優れた引っ張り強度と耐熱性をもち、フィルムや繊維、ボトル等の素材として、工業的に重要な用途をもつ。特に2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを重合させてできるポリエチレンナフタレート(PEN) は、ポリエチレンテレフタレートに代わる優れた工業用樹脂として近い将来の需要拡大が見込まれている。【0003】ナフタレンジカルボン酸は、ジアルキルナフタレンを酢酸溶媒中でCoやMn等の重金属と臭素化合物の存在下に、分子状酸素により高温、高圧で酸化することにより得られる。しかしながら、こうして得られる粗ナフタレンジカルボン酸には、触媒金属であるCoやMnが数百ppm から数千ppm 混入することが避けられない。また他に、酸化反応の中間生成物であるホルミルナフトエ酸やメチルナフトエ酸、ナフタレン環の分解で生じるトリメリット酸、臭素が付加したナフタレンジカルボン酸ブロマイド、原料ジアルキルナフタレン中の不純物に由来するナフトエ酸やナフタレントリカルボン酸等が不純物として含まれる。また、この他に構造不明な着色成分も存在する。これらの不純物の含まれるナフタレンジカルボン酸をジオール類との重合の原料に用いた場合、得られるポリエステルには耐熱性及び軟化点の低下や、着色する等の品質の劣化がみられる。特にホルミルナフトエ酸がある程度以上含まれている場合には重合度が上がらないこととゲル化や着色を生じるため、ホルミルナフトエ酸の量を抑制することが重要となる。即ち高品質のポリエステルを得るためには、不純物含量の極めて少ない高純度のナフタレンジカルボン酸が必要である。【0004】ナフタレンジカルボン酸は、高温の加熱で分解するため蒸留が不可能であり、且つ一般の溶媒に難溶性であるため、通常の簡便な再結晶による精製が困難である。このため高純度のナフタレンジカルボン酸を得る工業的方法は未だ確立しておらず、現在は粗ナフタレンジカルボン酸をメタノール等のアルコール類と反応させてナフタレンジカルボン酸エステルとして精製されている。しかしポリエチレンナフタレートの原料としてはナフタレンジカルボン酸エステルではなく、ナフタレンジカルボン酸が望ましく、その精製法の確立が必要である。【0005】ナフタレンジカルボン酸を溶媒に溶解し精製する方法として、米国特許5,256,817 号では、水または酢酸水溶液を溶媒として、300 ℃以上の高温下で溶解し、水添、晶析を行うことを提案している。この方法ではナフタレンジカルボン酸を溶解させるために高温が必要とされ、そのため脱炭酸反応によるナフトエ酸の生成、核水添反応によるテトラリンジカルボン酸の生成等の副反応が起き易く、なおかつホルミルナフトエ酸の水添による除去処理は不十分であり、晶析後の結晶に残存している。特開昭62-230747 号では粗2,6-ナフタレンジカルボン酸をジメチルスルフォキサイドやジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド等の溶媒に溶解し、晶析することによる精製方法が示されている。しかし該溶媒への溶解度が低く、且つ該溶液を水素化した場合、溶媒も水素化されるために水素化処理を行うことができず、重合の際に特に問題とされるホルミルナフトエ酸の除去が難しいという欠点がある。特開平5-32586 号ではピリジン類に溶解し、晶析することによる精製方法が示されている。しかしながら2,6-ナフタレンジカルボン酸の溶解度の温度依存性が小さいため回収率が低いという欠点がある。【0006】上記のようにナフタレンジカルボン酸をそのまま精製する方法とは別に、ナフタレンジカルボン酸をアルカリに溶解しアルカリ塩として、溶解度を向上させ、精製する方法が提案されている。例えば特公昭52-20993号や特公昭48-68554号では、粗ナフタレンジカルボン酸を KOHやNaOH等のアルカリ水溶液に溶解し、炭酸ガスや亜硫酸ガスを用いた酸析によりモノアルカリ塩として析出させ、当該モノアルカリ塩と水とを接触させて不均化することにより2,6-ナフタレンジカルボン酸を遊離させている。しかしこれらの方法では、モノアルカリ塩を析出する際に、2,6-ホルミルナフトエ酸等他の不純物の塩も同時に析出してしまうほか、大量のアルカリや酸の処理及び回収が必要となるという欠点がある。また特公昭52-20994号や特開昭48-68555号では、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸を KOHやNaOH等のアルカリ水溶液に溶解し、冷却または濃縮によりジアルカリ塩の晶析を行い、更に不均化することにより、精製された2,6-ナフタレンジカルボン酸を得る方法が提案されている。しかしこの方法ではジアルカリ塩の溶解度の温度依存性が小さく、また低温においてもジアルカリ塩の水に対する溶解度が非常に大きいため回収率が低く、更に結晶中の微量のアルカリの除去が困難という問題がある。【0007】特開昭50-142542 号では、粗2,6-ナフタレンジカルボン酸をアミン水溶液に溶解し、水素化処理を行った後、アミン化合物を留去することにより、2,6-ナフタレンジカルボン酸を析出させ精製2,6-ナフタレンジカルボン酸を得る方法が示されている。本法について本研究者らが詳細に検討を行ったところ、実施例に記載されている水素化処理を行うと、アルデヒド不純物であるホルミルナフトエ酸を取り除くことはできるが、その際に生成するメチルナフトエ酸はアミン化合物を留去する際に2,6-ナフタレンジカルボン酸と共に析出し、充分に除去し得なかった。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸から、メチルナフトエ酸やホルミルナフトエ酸の少ない高純度のナフタレンジカルボン酸を工業的に有利に製造する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ナフタレンジカルボン酸は脂肪族アミンとアミン塩を形成し水に溶解すること、不純物として含まれるアルデヒド化合物は不活性ガス雰囲気下で第VIII族金属と接触させることにより脱カルボニル反応でナフトエ酸に変換できること(以下、本操作を脱カルボニル処理と言う)、さらに脱カルボニル処理後の水溶液を加熱することによりアミン類を留去して、ナフタレンジカルボン酸を析出することにより、ホルミルナフトエ酸とメチルナフトエ酸含有量の著しく少ない高純度のナフタレンジカルボン酸が得られることを見い出し、本発明に到達した。【0010】即ち本発明は、ジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸を脂肪族アミン類の水溶液に溶解し、その溶解液を不活性ガス雰囲気下で第VIII族金属と接触させた後、当該水溶液を加熱することによりアミン類を留去させることを特徴とする高純度ナフタレンジカルボン酸の製造方法である。なお脱カルボニル反応が十分に進行しなかった場合は、さらに水素化処理を行うことにより、ホルミルナフトエ酸の極めて少ない高純度のナフタレンジカルボン酸を得ることができ、粗ナフタレンジカルボン酸から容易に高純度のナフタレンジカルボン酸が高収率で得られる。【0011】【発明の実施の形態】本発明で原料として使用される粗ナフタレンジカルボン酸はジアルキルナフタレンの酸化反応により得られたものであればよく、特に制限は無い。ジアルキルナフタレンとしては、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等があり、アルキル基の位置によりそれぞれ10種の異性体がある。それらのうち、ポリエステルの原料としては、2,6-置換体と2,7-置換体が有用であり、特に2,6-置換体が好適に用いられる。これらのジアルキルナフタレンは、重金属及び臭素を主とする酸化触媒存在下、分子状酸素により酸化することによって粗ナフタレンジカルボン酸が得られる。【0012】粗ナフタレンジカルボン酸を溶解する脂肪族アミン類は、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert- ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン等のアルキルアミンと、ピペリジン、N-メチルピペリジン、ピロリジン、エチレンイミン、ヘキサメチレンイミン等の脂環式アミンである。これらのうちでは、取り扱いや入手の容易さからメチルアミン類とエチルアミン類が好ましく、その中でもナフタレンジカルボン酸とアミンを形成した場合に分解温度の低いトリメチルアミンとトリエチルアミンが特に好ましい。またこれら2種類のアミンを混合して使用しても良い。【0013】本発明方法では先ずこれら脂肪族アミン類を含有する水溶液にナフタレンジカルボン酸を溶解させる。アミン化合物の使用量は、粗ナフタレンジカルボン酸のカルボン酸基と当量またはそれ以上にするのがよい。工業的に実施する経済的な使用量としては 1.0〜1.2 当量が妥当である。水の最適使用量は、アミン化合物の種類と量、粗ナフタレンジカルボン酸溶解時の温度、および含有不純物の種類と量に多少影響されるが、通常はナフタレンジカルボン酸に対し 0.5〜50倍重量、好ましくは 1〜20倍重量である。粗ナフタレンジカルボン酸を上記のアミン類および水と混合し、アミン塩を形成させ溶解する時の温度は10〜100 ℃程度で十分である。【0014】本発明においてアミンの留去操作を実施する以前に、そのアミン塩水溶液に不純物として含まれる重金属成分を100ppm以下になるよう除去しておくことが望ましい。本操作を行わない場合、最終的に得られるナフタレンジカルボン酸の色相は不良であり、精製原料として用いた粗ナフタレンジカルボン酸より着色する場合がある。【0015】一般に脱カルボニル処理および水素化処理には貴金属触媒が用いられ、貴金属触媒は重金属成分により被毒される。重金属成分を除去しておくと、アミンの留出操作の前に実施される脱カルボニル処理、水素化処理に使用される触媒の寿命を長期間に渡り維持できる効果がある。【0016】重金属成分を除去されたナフタレンジカルボン酸のアミン塩水溶液は次に脱カルボニル処理される。この操作を行うことにより、不純物として含まれるホルミルナフトエ酸はナフトエ酸に変換され取り除くことが出来る。脱カルボニル処理を行わずに水素化処理を実施すると、ホルミルナフトエ酸からメチルナフトエ酸が生成し、メチルナフトエ酸は、アミン塩水溶液を加熱してアミン類を留去した際、ナフタレンジカルボン酸と共に析出するためメチルナフトエ酸の除去ができない。従って水素化処理の後に脱カルボニル処理を行っても効果はない。粗ナフタレンジカルボン酸中の不純物の種類、量によっては水素化処理を行わずに脱カルボニル処理のみでホルミルナフトエ酸が除去される。またこの脱カルボニル処理により、通常含まれるナフタレンジカルボン酸臭素化物の除去も行われる。【0017】脱カルボニル処理および水素化処理は、触媒として活性炭やシリカ、アルミナ等の表面積の大きな担体上に、Pt, Pd, Rh, Ru, Ni, Coのうち一種以上の金属を分散させたものを用いて脱カルボニル反応を行うものである。好ましくはPdまたはPtを活性炭上に分散させた触媒を用いる。これらの触媒と粗ナフタレンジカルボン酸をアミン水溶液に溶解させた溶液とを不活性ガス雰囲気下で接触させることにより脱カルボニル処理を行う。ここで不活性ガスとは脱カルボニル処理に対して不活性な実質的に水素を含まないガスであり、水素濃度は 10ppm以下である。不活性ガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられるが、通常は窒素ガスが用いられる。反応方式は回分方式でも、連続流通式でも良いが、工業的には連続流通式が好ましい。反応圧力は特に制限されず、反応温度は使用する触媒種や触媒量、滞留時間により異なるが、通常70〜250 ℃である。250 ℃以上の過酷な反応条件では、副反応として着色物質の生成が起こる場合がある。【0018】ナフタレンジカルボン酸アミン塩を含有する水溶液を脱カルボニル処理した後もなお許容量を越えるホルミルナフトエ酸、ナフタレンジカルボン酸臭素化物が含まれる場合は、水素化処理によりこれらを除去する。使用される触媒は脱カルボニル処理で用いられた触媒と同様のものでかまわない。反応方式は回分方式でも、連続流通式でも良いが、工業的には連続流通式が好ましい。その際の反応温度は、使用する触媒種や触媒量、滞留時間により異なるが、通常70〜250 ℃が好ましい。水素分圧は0.01〜30 kg/cm2 、好ましくは0.01〜10 kg/cm2 の範囲とする。250 ℃以上の反応条件では副反応としてナフタレン環の核水素化によるテトラリンジカルボン酸の生成や、脱炭酸あるいは水素化分解等の副反応が起こる場合がある。【0019】本発明の方法では、1基の反応器で脱カルボニル処理を行う場合と、2基の反応器を直列に接続してそれぞれの反応器で脱カルボニル処理と水素化処理を行う場合がある。1基の反応器の中間部より水素ガスを供給し同一反応器の中で脱カルボニル処理と水素化処理を分けて行ってもよい。また脱カルボニル処理と水素化処理との触媒量の割合は、それぞれ95:5〜5:95の範囲で任意に行うことができる。反応器を2基設け、それぞれの反応器中の触媒量を同量とすれば、同一の反応器で脱カルボニル処理と水素化処理とを交互に行うことができる。例えば水素化処理を行ってきた反応器は触媒の水素化活性が低下した時点よりそのまま脱カルボニル処理用反応器に切り換え、脱カルボニル処理に用いてきた方の反応器の触媒は新触媒に交換し水素化処理を行うことが望ましい。従来の水素化処理のみで精製した場合を比較し、脱カルボニル処理を行う本発明の方法では極めて優れた精製効果が得られる。【0020】このようにして得られたナフタレンジカルボン酸アミン塩を含有する水溶液からアミン化合物を留去させて精製ナフタレンジカルボン酸を析出させる。アミン化合物を留去するには、▲1▼水溶液を外部加熱しアミンのみ、あるいはアミンを水と共に留去させる方法、▲2▼過熱蒸気や水を供給しながら加熱し留去させる方法、▲3▼窒素ガスのような不活性ガスを吹込みながら加熱してアミンを留去させる方法、▲4▼減圧下でアミンを留去させる方法などがあり、これら二種類以上の方法を組み合わせてアミンのみ、あるいはアミンと水を留去させてもよい。アミンを留去させる際の温度は、低過ぎるとアミン塩の分解速度が遅くなるので50℃以上が好ましく、特に80℃以上が好ましい。一方温度が高過ぎると、生成するナフタレンジカルボン酸が変質したり着色する場合があるので、通常 250℃以下にする。【0021】以上の方法でナフタレンジカルボン酸アミン塩を含有する水溶液からアミン化合物を留去することにより、ナフタレンジカルボン酸アミン塩が分解されて、発生するアミンは冷却して捕集することによりによりほぼ全量回収できる。このアミンは必要に応じて精製し再度使用することができる。アミンが留去されるにつれ、ナフタレンジカルボン酸アミン塩を含有する水溶液には遊離のナフタレンジカルボン酸が析出する。析出するナフタレンジカルボン酸量は留去されたアミン量に比例する。高い回収率でナフタレンジカルボン酸を得るにはアミン留出量を多くする。経済的な工業プロセスとして成り立つためには 90%以上の回収率で留去操作を実施することが好ましい。加熱により生成する精製ナフタレンジカルボン酸は、濾過や遠心分離等の操作により回収することができる。また適時水洗操作を行い結晶に付着している不純物を取り除くなどの操作を加える。更に乾燥することにより精製ナフタレンジカルボン酸が得られる。【0022】【実施例】以下、実施例および比較例により本発明の方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。原料および精製ナフタレンジカルボン酸の結晶の純度および性状は、有機物はメチルエステル化処理後にガスクロマトグラフィーにて、無機物は湿式分解処理後 ICP発光分光分析法にて分析した。【0023】以下、実施例、比較例および各表中に記した略号は次の通りである。2,6-NDCA 2,6-ナフタレンジカルボン酸2,6-NDCA・TEA 2,6-ナフタレンジカルボン酸ジトリエチルアミン塩2-NA 2-ナフトエ酸2,6-MNA 2,6-メチルナフトエ酸2,6-FNA 2,6-ホルミルナフトエ酸TMAC トリメリット酸NTCA ナフタレントリカルボン酸Br-2,6-NDCA 2,6-ナフタレンジカルボン酸ブロマイドTDCA テトラリンジカルボン酸L.E. 低沸物H.E. 高沸物TEA トリエチルアミン【0024】製造例1氷酢酸 1797gに、酢酸コバルト(四水塩)3.8g 、酢酸マンガン (四水塩)32.0g、臭化水素(47%水溶液)7.43gを混合し溶解させ、触媒液を調製した。撹拌機、環流冷却器および原料送液ポンプを備えた5Lチタン製オートクレーブに前記の触媒液740gを仕込んだ。残りの触媒液は2,6-ジメチルナフタレン180gと混合し原料供給槽に仕込み、加熱して2,6-ジメチルナフタレンを溶解させ、原料液を調製した。窒素で反応系内の圧力を18 Kg/cm2 G に調整し、撹拌しながら温度 200℃に加熱した。温度、圧力が安定した後、原料液および圧縮空気を反応器に供給し酸化反応を開始した。反応器オフガス中の酸素濃度が 0.1容量% になるように供給空気流量を調節しながら、原料液を 2時間かけて連続的に供給した。原料液の供給終了後、空気の供給を 9分間継続した。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却して反応生成物を取り出し、ガラスフィルターで吸引濾過し、水及び酢酸で洗浄後、乾燥した。その結果、表1に示す組成の粗2,6-NDCAが得られた。【0025】製造例2還流冷却器、撹拌装置、温度測定管を備えた2Lのガラス製 4つ口フラスコに製造例1で得られた粗2,6-NDCA 200g 、水 1070g、TEA 205.9g (2,6-NDCAに対して1.1 当量) を加え30分撹拌した。溶解せずに析出した重金属成分は、細孔径10μm の焼結金属フィルターを用い濾過した後、細孔径 1μm のニトロセルロース製メンブランフィルターを用い濾過して2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を得た。この溶液を一部採取し、真空加熱により水と TEAを留去、乾固して得られた2,6-NDCAは、表1に示すように製造例1で得られた2,6-NDCAと同様であった。【0026】実施例1撹拌装置、加圧濾過装置を装着した、200ml のステンレス製オートクレーブに製造例2で得られた2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液100gと0.5%Pd/C触媒粉末を加え、系内を窒素で置換後、 150℃で 1時間撹拌して脱カルボニル処理を行い、放冷後、濾過して2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を得た。さらに溶液70g を、撹拌装置、加圧濾過装置、ガス抜き出し口を備えた300ml のステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換後、200 ℃まで加熱し、同温度下で100g/hr.の速度で水を加えながら、送水量と同量の留去液を反応装置上部より抜き出す操作を 2時間行った。総留去液量は溶液中のNDCA量に対して約21倍量であった。次いで同温度で加圧濾過し、得られた結晶を水及び酢酸で洗浄後、 120℃で 5時間真空乾燥した。粗2,6-NDCAに対する収率 94.7%で表1に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-FNA は 40ppm、2,6-MNA は30ppm であった。【0027】比較例1脱カルボニル処理を行わなかった以外は実施例1と同様な操作を行い、で表2に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-MNA は20ppm であるが、2,6-FNA は2350ppm であった。【0028】比較例2実施例1において、系内を窒素で置換する代わりに系内に水素を5Kg/cm2 充填し、水素化処理のみを行った以外は実施例1と同様な操作を行い、表2に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-FNA は60ppm であったが、2,6-MNA が1230ppm 生成し残存していた。【0029】実施例22〜3mm に粒径を揃えた0.5%Pd/C触媒5gを充填した13mmφ×316mm のステンレス製反応管、気液分離器、原料フィードポンプを備えた固定床加圧流通反応装置の系内を窒素で10 Kg/cm2 で保圧し、同ガス 50ml/分の流通下、反応管を 150℃に保持して、製造例2で得られた2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を30g/hrで流通させて脱カルボニル処理を行った。得られた2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を実施例1と同様な操作で留去処理を行い、表1に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-FNA は40ppm 、2,6-MNA は20ppm であった。【0030】実施例3実施例2と同様な反応装置の系内を水素33.3体積% 、窒素66.7体積% の混合ガスで10 Kg/cm2 に保圧し、同ガス 50ml/分の流通下、反応管を150 ℃に保持して、実施例2で得られた脱カルボニル処理後の2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を30g/hrで流通させて水素化処理を行った。得られた2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を実施例1と同様な操作で留去処理を行い、表2に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-FNA は20ppm であり、2,6-FNA は検出されなかった。【0031】比較例3製造例2で得られた2,6-NDCA・TEA の溶解水溶液を用いて、脱カルボニル処理を行わずに、実施例3と同様な水素化処理と留去処理を行い、表2に示す組成の精製2,6-NDCAの結晶を得た。この2,6-NDCA中の2,6-FNA は50ppm であったが、2,6-MNA が1280ppm 生成し残存していた。【0032】【表1】【0033】【表2】【0034】【発明の効果】本発明の方法によってジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸を、脂肪族アミン類水溶液を用いて溶解し、脱カルボニル処理、または更に水素化処理を行い、その当該水溶液を加熱してアミンを留去することにより、メチルナフトエ酸やホルミルナフトエ酸の極めて少ないナフタレンジカルボン酸を高収率で容易に得ることができる。これにより高純度のナフタレンジカルボン酸を工業的に極めて有利に製造されることから、本発明の工業的意義は大きい。 ジアルキルナフタレンを酸化して得られた粗ナフタレンジカルボン酸を脂肪族アミン類の水溶液に溶解し、その溶解液を不活性ガス雰囲気下で70〜150℃の温度でパラジウムを含む触媒と接触させた後、当該水溶液を加熱することによりアミン類を留去させることを特徴とする高純度ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 不活性ガス雰囲気下でパラジウムを含む触媒と接触させた後、水素化処理を行い、当該水溶液を加熱する請求項1記載の高純度ナフタレンジカルボン酸の製造方法。