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タイトル:特許公報(B2)_L−リジンの製造法
出願番号:1995522813
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C12P 13/08,C12N 9/04,C12R 1/15


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杉本 雅一 臼田 佳弘 鈴木 智子 田中 朗子 松井 裕 JP 3783065 特許公報(B2) 20060324 1995522813 19950223 L−リジンの製造法 味の素株式会社 遠山 勉 松倉 秀実 川口 嘉之 杉本 雅一 臼田 佳弘 鈴木 智子 田中 朗子 松井 裕 JP 1994035019 19940304 20060607 C12N 15/09 20060101AFI20060518BHJP C12P 13/08 20060101ALI20060518BHJP C12N 9/04 20060101ALN20060518BHJP C12R 1/15 20060101ALN20060518BHJP JPC12N15/00 AC12P13/08 AC12N9/04 ZC12P13/08 AC12R1:15 C12N 15/00 - 15/90 C12P 13/08 C12N 9/04 C12N 9/12 PubMed CA(STN) WPI(DIALOG) 欧州特許出願公開第00555661(EP,A1) Molecular Microbiology 2(1) p.63-72 (1988) Mol Microbiol 5(5) p.1197-1204 (1991) 7 JP1995000268 19950223 WO1995023864 19950908 45 20010905 光本 美奈子 発明の背景本発明は微生物工業に関連したものであり、詳しくは、発酵法によるL−リジンの製造法及びこの製造法に好適なコリネホルム細菌に関するものである。従来、L−リジンはブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、バチルス属、またはエシェリヒア属に属するL−リジン生産菌を用いた発酵法により製造されており、これらの微生物の生合成系において、オキザロ酢酸からアスパラギン酸、アスパラギン酸βアルデヒド等を経由して合成される。このようなL−リジン生合成経路にはホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパルトキナーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素などの種々の酵素が関与しているが、これらの酵素は最終生産物であるL−リジンや中間生成物であるアスパラギン酸などによるフィードバック阻害を受けるものが多いために、発酵法によりL−リジンを製造する場合、生産性を向上させるために、このような阻害を受けないような変異株が多く用いられている。例えば、ブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属のようなコリネホルム細菌においては、アスパルトキナーゼ(以下、「AK」という)は、L−リジン及びL−リジン合成経路からの分岐経路で合成されるL−スレオニンによる協奏阻害を受けることが知られており、この阻害を受けないAKを保持する変異株がL−リジン生産に用いられている(J. Gen. Appl. Microbiol., 16, 373-391(1970))。また、L−リジンの発酵生産には、L−リジンの生産性に最も影響を与える酵素といわれているホモセリンデヒドロゲナーゼ(以下、「HD」という)を欠損した変異株も用いられている。これは、L−リジン合成系路からアスパラギン酸β−アルデヒドを介して分岐するL−スレオニン固有の合成系路において、第一の反応であるアスパラギン酸β−セミアルデヒドからL−ホモセリンを生成する反応を触媒するHDが欠失しているためにL−スレオニンが合成されず、その結果AK活性が阻害されずにL−リジン合成反応が進行するためである。このようなHD欠損株としては、コリネバクテリウム・グルタミカムのHD完全欠損株が知られている(Nakayama, K. et al.;J. Gen. Appl. Microbiol. 7(3), 145-154(1961))。上記のようなHD完全欠損株に対し、いわゆる弱化型(leaky type)HDを保持する変異株もL−リジン生産に有効であると考えられる。HD完全欠損株はL−スレオニン及びL−メチオニンを合成できないために、培地中にこれらのアミノ酸が存在しないと生育することができない。これに対して、L−リジン生産を抑制するほどには実質的に活性を示さないが、ごく僅かにHD活性を有する弱化型HDを保持するHD弱化株を取得することができれば、培地にL−スレオニンやL−メチオニンを添加しなくても生育が可能となり、培地調製が簡便になる。また、弱化型HDは、基質であるアスパラギン酸β−セミアルデヒドに対する親和性が小さくなっている。したがって、HD弱化株は生育に必要なL−スレオニン、L−メチオニン及びL−イソロイシンを合成するために著量のアスパラギン酸β−セミアルデヒドを合成する。著量に合成されたアスパラギン酸β−セミアルデヒドは結果としてL−リジンへと流れることとなる。その一方で、L−スレオニンの生成量を完全に抑える点でHD完全欠損株は今なお有用であると考えられるが、突然変異によるHDの欠損は復帰変異によって活性が戻る可能性があり、そのような可能性の極めて低いHD遺伝子が破壊されたHD欠損株が一層有用であると考えられる。尚、HD遺伝子の塩基配列は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebaterium glutamicum)についてはPeoplesらにより報告されている(Peoples, O. P. et al., Molecular Microbiology 2(1), 63-72 (1988))。また、HD弱化株及びHD欠損株はL−スレオニンを生産しないので、AKはフィードバック阻害を受けない。したがって、HD弱化株及びHD欠損株の細胞中でAK遺伝子が増幅されれば、L−リジン合成反応が進み、L−リジン生産性が向上すると考えられる。さらに、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないAKの変異とHDの弱化あるいは欠損とを併せてコリネホルム細菌に導入することにより、L−リジン生産性はより一層向上すると考えられる。発明の概要本発明は、上記観点からなされたものであり、コリネホルム細菌のL−リジン生産性を向上させるために、HD弱化株及びHD遺伝子破壊株を得ること、及びAK遺伝子が増幅されたHD弱化株及びHD欠損株、さらにはL−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないAKを保持するHD弱化株及びHD遺伝子破壊株を提供することを課題とする。本発明者は、上記課題を解決するためにブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)のHD弱化変異株を取得し、野生型HD遺伝子及び弱化型HD遺伝子を単離してその構造を明らかにし、弱化型HD遺伝子及び一部を欠失したHD遺伝子をブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの野生株に導入することによってL−リジン生産性が向上したL−リジン生産株を創成し、さらにこうして得られたL−リジン生産株の細胞中でAK遺伝子を増幅することにより、あるいはL−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないAKをコードする遺伝子を導入することにより一層L−リジン生産性を向上させることに成功し、本発明に至った。すなわち本願発明は、N末端から23番目のロイシン残基及び104番目のバリン残基の少なくとも一方が他のアミノ酸残基に変化した変異型ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片、N末端から23番目のロイシン残基及び104番目のバリン残基の少なくとも一方が他のアミノ酸残基に変化した変異型ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を保持するコリネホルム細菌、及び前記変異型ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がコリネホルム細菌の染色体上のホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子との相同組換えにより染色体DNAに組み込まれて形質転換されたコリネホルム細菌を提供する。また本願発明は、コリネホルム細菌由来のホモセリンデヒドロゲナーゼの一部をコードするDNA断片が、コリネホルム細菌の染色体上のホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子との相同組換えにより染色体DNAに組み込まれることによって、ホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子が破壊されたことを特徴とするコリネホルム細菌を提供する。さらに本願発明は、コリネホルム細菌由来のアスパルトキナーゼ遺伝子とコリネホルム細菌細胞内で自律複製可能なベクターとを連結してなる組換えDNAを細胞内に保持し、かつ、野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないことを特徴とするコリネホルム細菌、コリネホルム細菌由来のアスパルトキナーゼであってL−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼをコードする遺伝子が、コリネホルム細菌の染色体DNAに組み込まれて形質転換され、かつ、野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないことを特徴とするコリネホルム細菌を提供する。さらに本願発明は、上記コリネホルム細菌を好適な培地で培養し、該培養物中にL−リジンを生産蓄積せしめ、該培養物からL−リジンを採取することを特徴とするL−リジンの製造法を提供する。尚、本明細書においては、野生型HDまたは野生型AKを生産する株を「野生株」、実質的にはHD活性をほとんど示さないが、ごく僅かにHD活性を有する弱化型(leaky type)の変異を有するHDを単に「変異型HD」、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないような変異を有するAKを「変異型AK」、さらに一部を欠失したHD遺伝子を「欠失型HD遺伝子」ということがある。また、外来HD遺伝子または外来AK遺伝子とベクターとからなる組換えDNAを宿主染色体DNA上のHD遺伝子またはAK遺伝子との相同組換えにより染色体DNAに組み込むことを「遺伝子組込み」、この組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた状態から、1コピーのHD遺伝子またはAK遺伝子をベクターとともに脱落させることにより、染色体上のHD遺伝子またはAK遺伝子が外来HD遺伝子または外来AK遺伝子に置換された状態にすることを「遺伝子置換」という。さらに、変異型HD遺伝子を保持する突然変異株または変異型HD遺伝子で遺伝子置換された株を単に「HD変異株」、一部を欠失したHD遺伝子で遺伝子置換された株を「HD欠損株」ともいう。また、本発明にいうコリネホルム細菌とは、バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology)第8版599頁(1974)に定義されている一群の微生物であり、好気性,グラム陽性,非抗酸性,胞子形成能を有しない桿菌であり、コリネバクテリウム属細菌、及び従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属細菌として統合されたブレビバクテリウム属細菌、さらにコリネバクテリウム属細菌と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。本発明により得られるHD変異株は、L−リジン生産性にすぐれており、培地中にL−メチオニン及びL−スレオニン、またはL−ホモセリンが存在していなくても生育できる。また、本発明のHD欠損株は、HD遺伝子が発現しないのでL−リジン生産性に優れ、さらにこの性質を安定して保持することができる。さらに、AK遺伝子が増幅されたHD変異株及びHD欠損株、変異型AK遺伝子を保持するHD変異株及びHD欠損株は、より一層L−リジン生産性に優れている。発明の詳細な説明以下、本発明を詳細に説明する。<1>弱化型HD突然変異株及び変異型HD遺伝子の取得弱化型変異を有するHDを生産する突然変異株は、野生型HDを生産するコリネホルム細菌を変異処理することにより得られる。コリネホルム細菌の変異処理には、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)等の通常人工突然変異に用いられている変異剤による処理を行う。変異処理した菌体からシングル・コロニー・アイソレーションを行い、各々のコロニーから弱化型HDを産生するものを選択する。弱化型HD変異株は、最小培地で生育することができ、L−メチオニン及びL−スレオニンを過剰に加えた最小培地では生育できないが、L−ホモセリン、又はL−メチオニン及びL−スレオニンを加えた最小培地では生育できるので、これを指標に選択することができる(Shiio, I. & Sano, K., J. G. A. M., 15, 267-287 (1969))。こうして得られた変異株が弱化型HDを生産することを確認するために、菌体から粗酵素液を抽出してHD比活性を野生型HDと比較しておくことが好ましい。HDの酵素活性は、例えばFollettieらの方法(Follettie,M.T. et al., Molecular Microbiology 2, 53-62 (1988))に従って菌体より調製した粗酵素液を用いて、Kalinowskiらの方法(Kalinowski,J. et al., Mol.Gen.Genet., 224, 317-324 (1990))によって測定することができる。得られた弱化型HD変異株から変異型HD遺伝子を単離するには、例えば、弱化型HD変異株から斎藤、三浦の方法(H.Saito and K.Miura Biochem.Biophys. Acta 72,619,(1963))等により染色体DNAを調製し、ポリメラーゼチェインリアクション法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)により、HD遺伝子を増幅することによって行うことができる。増幅反応に用いるDNAプライマーは、HD遺伝子の全領域あるいは一部領域を含有するDNA二重鎖の両3’末端に相補するものを用いる。HD遺伝子の一部領域だけを増幅した場合には、該DNA断片をプライーとして全領域を含むDNA断片を染色体DNAライブラリーよりスクリーニングする必要がある。HD遺伝子の全領域を増幅した場合には、増幅されたHD遺伝子を含有するDNA断片を含むPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供した後、目的のDNA断片を抽出することによってHD遺伝子を含有するDNA断片を回収できる。DNAプライマーとしては、例えばコリネホルム・グルタミカムについて既知となっている配列(Peoples, O. P. et al; Molecular Microbiolory, 2(1), 63-72 (1988))を基にして適宜作成すればよいが、具体的には、HD遺伝子をコードする1150塩基からなる領域を増幅できるプライマーが好ましく、例えば配列番号1及び2に示した2種のプライマーが適当である。プライマーDNAの合成は、ホスホアミダイト法(Tetrahedron Letters,22,1859(1981)参照)等の常法により、市販のDNA合成装置(例えば、Applied Biosystems社製DNA合成機model 380B等)を用いて合成することができる。また、PCR反応は、市販のPCR反応装置(宝酒造(株)製DNAサーマルサイクラーPJ2000型等)を使用し、TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造(株)より供給されている)を用い、供給者により指定された方法に従って行うことができる。PCR法により増幅された変異型HD遺伝子は、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli:以下、「E. coli」ともいう)及び/又はコリネホルム細菌の細胞内において自律複製可能なベクターDNAに接続して組換えDNAを調製し、これをE. coli細胞に導入しておくと、後の操作がしやすくなる。E. coli細胞内において自律複製可能なベクターとしては、プラスミドベクターが好ましく、宿主の細胞内で自立複製可能なものが好ましく、例えばpUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010等が挙げられる。また、これらのベクターにコリネホルム細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力をもつDNA断片(例えば、pAM 330(特開昭58-67699号公報参照)、pHM 1519(特開昭58-77895号公報参照)、pCG 1(特開昭57-134500号公報参照)、pCG 2(特開昭58-35197号公報参照)、pCG 4(特開昭57-183799号公報参照)、pCG 11(特開昭57-183799号公報参照)等から調製できる)を挿入すると、E. coli及びコリネホルム細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。このようなシャトルベクターとしては、以下のものが挙げられる。尚、それぞれのベクターを保持する微生物及び国際寄託機関の寄託番号をかっこ内に示した。これらのベクターは、寄託微生物から次のようにして得られる。対数増殖期に集められた細胞をリゾチーム及びSDSを用いて溶菌し、30000×gで遠心分離して溶解物から得た上澄液にポリエチレングリコールを添加し、セシウムクロライド−エチジウムブロマイド平衡密度勾配遠心分離により分別精製する。E. coliにプラスミドを導入して形質転換するにはD.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, 326, 1979)あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.,Biol.,53,159(1970))等により行うことができる。弱化型HD変異株から変異型HD遺伝子を単離するには、弱化型HD変異株からプラスミドベクター等を用いて染色体DNAライブラリーを作製し、このライブラリーから変異型HD遺伝子を保持する株を選択し、選択された株から変異型HD遺伝子が挿入された組換えDNAを回収することによっても得られる。以下に、染色体ライブラリーの調製及びライブラリーから変異型HD遺伝子を保持する株を選択する方法の一例について述べる。まず、弱化型HD変異株を培養して培養物を得る。用いる培地はコリネホルム細菌が生育できるものであればよく、培地中のL−スレオニン及びL−メチオニンの含有量が少ない場合には、L−スレオニン及びL−メチオニンあるいはL−ホモセリンを添加しておくことが好ましい。次に培養物を遠心分離して菌体を得、この菌体より、例えば斎藤、三浦の方法(Biochem.Biophys.Acta.,72,619,(1963))、K. S. Kirbyの方法(Biochem.J.,64,405,(1956))等の方法により染色体DNAを得る。こうして得られた染色体DNAから変異型HD遺伝子を単離するために、染色体DNAライブラリーを作製する。まず、染色体DNAを適当な制限酵素で部分分解して種々の断片混合物を得る。切断反応時間等を調節して切断の程度を調節すれば、幅広い種類の制限酵素が使用できる。例えば、Sau3AIを、温度30℃以上、好ましくは37℃、酵素濃度1〜10ユニット/mlで様々な時間(1分〜2時間)染色体DNAに作用させてこれを消化する。ついで、切断された染色体DNA断片を、E. coli細胞内で自律複製可能なベクターDNAに連結し、組換えDNAを作製する。具体的には、染色体DNAの切断に用いた制限酵素Sau3AIと同一末端塩基配列を生じさせる制限酵素、例えばBamHIを、温度30℃以上、酵素濃度1〜100ユニット/mlの条件下で1時間以上、好ましくは1〜3時間、ベクターDNAに作用させてこれを完全消化し、切断開裂する。次いで、上記のようにして得た染色体DNA断片混合物と開裂切断されたベクターDNAを混合し、これにDNAリガーゼ、好ましくはT4DNAリガーゼを、温度4〜16℃、酵素濃度1〜100ユニット/mlの条件下で1時間以上、好ましくは6〜24時間作用させて組換えDNAを得る。得られた組換えDNAを用いて、例えばE. coli K-12株を形質転換して染色体DNAライブラリーを作製する。この形質転換はD.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, 326, 1979)あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.,Biol.,53,159(1970))等により行うことができる。得られた染色体DNAライブラリーの中から、変異型HD遺伝子を保持する形質転換株を選択するには、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムについて既知となっている配列(Peoples, O. P. et al., Molecular Microbiology, 2(1), 63-72 (1988))をもとにしてオリゴヌクレオチドプローブを合成し、これを用いたコロニーハイブリダイゼーションを行えばよい。E. coliのHD遺伝子は2種類(HD-1、HD-2)存在することが知られている(Zakin, M. M. et al; J.B.C., 25 8, 3028-3031 (1983))が、これらはいずれもコリネバクテリウム・グルタミカムHDのC末端側約100アミノ酸残基に対応する領域が存在しないので、この領域の中からプローブに用いる配列を選択すると、E. coli染色体上のHD遺伝子にはハイブリダイズしないので好ましい。こうして選択された形質転換株から、変異型HD遺伝子を含有する組換えDNAを、例えばP. Guerryらの方法(J. Bacteriol.,116,1064,(1973))、D. B. Clewellの方法(J.Bacteriol.,110,667, (1972))などにより単離することができる。また、上記と同様にしてコリネホルム細菌からクローニングされた野生型HD遺伝子を用いて、以下のようにして弱化型HDを生産する株を創成してもよい。まず、野生型HD遺伝子又は他の変異を有するHD遺伝子を含有するDNAをインビトロ変異処理し、変異処理後のDNAと宿主に適合するベクターDNAとを連結して組換えDNAを得る。組換えDNAを宿主微生物に導入して形質転換体を得、同形質転換体のうちで弱化型HDを発現するように至ったものを選択する。また、野生型HD遺伝子又は他の変異を有するHD遺伝子を含有するDNAを、宿主に適合するベクターDNAと連結して組換えDNAを得て、その後組換えDNAをインビトロ変異処理し、変異処理後の組換えDNAを宿主微生物に導入して形質転換体を得、同形質転換体のうちで弱化型HDを発現するように至ったものを選択してもよい。DNAをインビトロ変異処理するための薬剤としては、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。ヒドロキシルアミンは、シトシンをN4−ヒドロキシシトシンに変えることによりシトシンからチミンへの変異を起こす化学変異処理剤である。本発明に用いる変異型HD遺伝子としては、弱化型HDをコードするものであれば特に制限されないが、野生型HDのアミノ酸配列において、▲1▼N末端から23番目のロイシン残基がロイシン残基以外のアミノ酸残基に変化する変異、▲2▼N末端から104番目のバリン残基がバリン残基以外のアミノ酸残基に変化する変異、▲3▼N末端から23番目のロイシン残基がロイシン残基以外のアミノ酸残基に変化し、かつ、104番目のバリン残基がバリン残基以外のアミノ酸残基に変化する変異、のいずれかの変異を有するHDをコードする遺伝子が挙げられる。ここで、野生型HDのアミノ酸配列としては、具体的には配列表配列番号3及び4に示すブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株由来のHDのアミノ酸配列が挙げられる。上記▲1▼〜▲3▼に示した変異において、23番目のロイシン残基にあってはフェニルアラニン残基に変化する変異が、104番目のバリン残基にあってはイソロイシン残基に変化する変異が挙げられる。尚、置換されたアミノ酸残基に対応するコドンは、そのアミノ酸残基をコードするものであれば種類は特に問わない。また、菌種や菌株の違いにより保持する野生型HDのアミノ酸配列がわずかに相異するものがある。このような酵素の活性に関与しない位置でのアミノ酸残基の置換、欠失あるいは挿入を有するHDも本発明に使用することができる。例えば、後記実施例に示すように、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)に由来するHDのアミノ酸配列を、コリネバクテリウム・グルタミカムのHDについて報告されているアミノ酸配列(Peoples, O. P. et al; Molecular Microbiology 2(1) 63-72 (1988))と比較したところ、N末端から148番目のアミノ酸残基はコリネバクテリウム・グルタミカムのHDではグリシン残基であるのに対し、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDではアラニン残基であることが明らかとなっている。このようなコリネバクテリウム・グルタミカムのHDにおいても、上記▲1▼〜▲3▼のいずれかの変異を導入すると弱化型HDが得られることが予想される。<2>野生型AK遺伝子及び変異型AK遺伝子の取得本発明に用いる野生型AK遺伝子は、コリネホルム細菌野生株から調製することができる。また、L−リジン及びL−スレオニンによる相乗的なフィードバック阻害が実質的に解除されたAKをコードする遺伝子は、AK活性に対するL−リジン及びL−スレオニンにより相乗的なフィードバック阻害が実質的に解除された変異株から調製することができる。このような変異株は、例えば、コリネホルム細菌野生株に、通常の変異処理法、紫外線照射またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)等の変異剤処理を施し、変異処理した細胞群の中から取得することができる。AK活性の測定は、Miyajima,R et al;The Journal of Biochemistry(1968),63(2),139-148に記載される方法を用いることができる。AK遺伝子の供与菌としては、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株ATCC13869、及びATCC13869株より変異処理により誘導されたL−リジン生産菌AJ3463(FERM P-1987)が最も好ましい供与菌である。コリネホルム細菌からAK遺伝子を単離するには、例えば、斎藤、三浦の方法(H.Saito and K.Miura Biochem.Biophys.Acta, 72,619,(1963))等により染色体DNAを調製し、ポリメラーゼチェインリアクション法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)により、AK遺伝子を増幅することによって行うことができる。増幅に用いるDNAプライマーはAK遺伝子の全領域あるいは一部領域を含有するDNA二重鎖の両3'末端に相補するものを用いる。AK遺伝子の一部領域だけを増幅した場合には、該領域のDNA断片をプライマーとして用い、全領域を含むDNA断片を増幅することにより遺伝子ライブラリーよりスクリーニングする必要がある。全領域を増幅した場合には、該DNA断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、目的のバンドを切り出すことによってAK遺伝子を含有するDNA断片を回収できる。DNAプライマーとしては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムにおいて既知となっている配列(Molecular Microbiology(1991),5(5),1197-1204, Mol.Gen.Genet.(1990)224,317-324参照)を基にして、AK遺伝子をコードする約1643bpの領域を増幅すべく、5'-TCGCGAAGTAGCACCTGTCACTT-3'(配列表配列番号5)と5'-ACGGAATTCAATCTTACGGCC-3'(配列表配列番号6)という配列の23mer及び21merの一本鎖DNAが最適である。DNAの合成はApplied Biosystems社製DNA合成機model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成できる。PCR反応は、宝酒造(株)製DNAサーマルサイクラーPJ2000型を用い、TaqDNAポリメラーゼを用い、供給者により指定された方法に従って行うことができる。PCR法により増幅された変異型AK遺伝子は、E. coli及び/又はコリネホルム細菌の細胞内において自律複製可能なベクターDNAに接続して組換えDNAを調製し、これをE. coli細胞に導入しておくと、後の操作がしやすくなる。E. coli細胞内において自律複製可能なベクターとしては、プラスミドベクターが好ましく、宿主の細胞内で自立複製可能なものが好ましく、例えばpUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010等が挙げられる。また、これらのベクターにコリネホルム細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力をもつDNA断片を挿入すると、E. coli及びコリネホルム細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。E. coliにプラスミドを導入して形質転換するにはD.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, 326, 1979)あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.,Biol.,53,159(1970))等により行うことができる。上記のようにしてAK野生株からAK遺伝子を単離すれば野生型AK遺伝子が得られ、AK変異株からAK遺伝子を単離すれば変異型AK遺伝子が得られる。本発明に用いる変異型AK遺伝子としては、L−リジン及びL−スレオニンによる相乗的なフィードバック阻害が解除されたAKをコードするものであれば特に制限されないが、野生型AKのアミノ酸配列において、αサブユニットではN末端から279番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に、βサブユニットでは30番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に変化する変異が挙げられる。ここで、野生型AKのアミノ酸配列としては、具体的にはαサブユニットでは配列表配列番号9に示すアミノ酸配列が、βサブユニットでは配列表配列番号11に示すアミノ酸配列が挙げられる。また、上記のアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基としては、スレオニン残基、アルギニン残基、システイン残基、フェニルアラニン残基、プロリン残基、セリン残基、チロシン残基及びバリン残基が挙げられる。尚、置換されるアミノ酸残基に対応するコドンは、そのアミノ酸残基をコードするものであれば種類は特に問わない。また、菌種や菌株の違いにより保持する野生型AKのアミノ酸配列がわずかに相違するものがあると予想される。このような酵素の活性に関与しない位置でのアミノ酸残基の置換、欠失あるいは挿入を有するAKも本発明に使用することができる。<3>HD変異株及びHD欠損株の取得HD変異株は、<1>に記載したように、野生型HDを生産するコリネホルム細菌を紫外線照射または変異剤による処理を行い、変異処理した菌体から変異型HDを産生する株を選択することによって得られる。また、そのようにして得られたHD変異株から単離した変異型HD遺伝子を、野生型コリネホルム細菌細胞に導入し、染色体上のHD遺伝子との相同組換えにより遺伝子置換を行うことによっても、野生型HDを発現しないHD変異株が得られる。変異型HD遺伝子を、宿主染色体上のHD遺伝子と置換するには以下のようにすればよい(図1参照)。すなわち、プラスミドベクターにブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来の温度感受性複製起点と変異型HD遺伝子とクロラムフェニコール等の薬剤に耐性を示すマーカー遺伝子とを挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAでコリネホルム細菌を形質転換し、温度感受性複製起点が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するHD遺伝子配列との組換えを起こし、染色体HD遺伝子と変異型HD遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分、温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では野生型HDが優性であるので、最小培地で野生株と同等の生育を示す。次に、染色体DNA上に変異型HD遺伝子のみを残すために、2個のHD遺伝子の組換えにより1コピーのHD遺伝子を、ベクター部分(温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカーを含む)とともに脱落させる。例えば、染色体組込み株を培養し、培養菌体を薬剤を含まない平板培地にまいて培養する。生育したコロニーを、薬剤を含む平板培地にレプリカして培養し、薬剤感受性株を取得する。得られた薬剤感受性株の染色体からベクター部分が脱落していることを、サザン・ハイブリダイゼーションにより確認し、さらに変異型HDを発現していることを確認する。上記の変異型HD遺伝子のかわりに、HDの一部をコードするHD遺伝子、すなわち一部を欠失したHD遺伝子を用いて遺伝子置換を行うと、染色体HD遺伝子が一部を欠失したHD遺伝子に置換されたHD欠損株が得られる。後記実施例1に示すように、HDはN末端側の領域が活性に関与していると予想される。したがって、HD遺伝子のうち欠失させる部位としては、N末端側の領域、例えばN末端から350アミノ酸以内の領域、例えば100〜200番目、あるいは250〜350番目のアミノ酸の領域が挙げられる。尚、HD遺伝子は、その下流に存在するホモセリンキナーゼと同一オペロン内にあるので、ホモセリンキナーゼの発現を阻害しないようにHD遺伝子のプロモーター部位は欠失させないことが好ましい。組換えDNAをコリネホルム細菌の細胞内に導入するには、E. coli K-12について報告されている様に受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.,Biol.,53,159(1970)、またはバチルス・ズブチリスについて報告されている様に細胞がDNAを取り込み得る様に増殖段階(いわゆるコンピテントセル)に導入する方法(Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1977)))により可能である。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類および酵母について知られている様に(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec.Gen.Genet.,168.111(1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75, 1929(1978))、DNA受容菌を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストにして組換えDNA受容菌に導入することも可能である。プロトプラスト法では上記のバチルス・ズブチリスにおいて使用されている方法でも充分高い頻度を得ることができるし、特開昭57-183799に記載されたコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属のプロトプラストにポリエチレングリコールまたはポリビニルアルコールと二価金属イオンとの存在下にDNAをとり込ませる方法も当然利用できる。ポリエチレングリコールまたはポリビニルアルコールの代りに、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、フィコール、ブルロニックF68(セルバ社)などの添加によってDNAのとり込みを促進させる方法でも同等の結果が得られる。さらには、電気パルス法(杉本ら,特開平2-207791号公報)によっても、組換えDNAをブレビバクテリウム属またはコリネバクテリウム属細菌に属する受容菌へ導入できる。変異型HD遺伝子または欠失型HD遺伝子を導入する野生型コリネホルム細菌としては、コリネバクテリウム属細菌、及び従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属細菌として統合されたブレビバクテリウム属細菌、さらにコリネバクテリウム属細菌と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌が挙げられるが、特にコリネバクテリウム属(ブレビバクテリウム属)のグルタミン酸生産性細菌が本発明においては、最も好ましいものである。コリネバクテリウム属(ブレビバクテリウム属)のグルタミン酸生産性細菌の野性株の例としては次のようなものが挙げられ、これらの野生株、あるいは同株にL−リジン生産性の性質を付与した株も同様に本発明に使用することができる。また、本発明に用いることができるコリネホルム細菌として、上記のようなグルタミン酸生産性を有する野性株のほかにグルタミン酸生産性を有するまたはグルタミン酸生産性を失った変異株も含まれる。現在、L−リジン生産菌としてコリネホルム・グルタミン酸生産菌の種々の人工変異株が用いられており、これらの株も本発明に使用することができる。このような人工変異株としては次のようなものがある。AEC(S−(2−アミノエチル)−システイン)耐性変異株、その成長にL−ホモセリンのようなアミノ酸を必要とする変異株(特公昭48−28078号,特公昭56−6499号),AECに耐性を示し、更にL−ロイシン、L−ホモセリン,L−プロリン,L−セリン,L−アルギニン,L−アラニン,L−バリン等のアミノ酸を要求する変異株(米国特許第3708395号及び第3825472号),DL−α−アミノ−ε−カプロラクタム,α−アミノ−ラウリルラクタム,アスパラギン酸−アナログ,スルファ剤,キノイド,N−ラウロイルロイシンに耐性を示すL−リジン生産変異株,オキザロ酢酸脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ)または呼吸系酵素阻害剤に耐性を示すL−リジン生産変異株(特開昭50−53588号,特開昭50−31093号,特開昭52−102498号,特開昭53−9394号,特開昭53−86089号特開昭55−9783号,特開昭55−9759号,特開昭56−32995号,特開昭56−39778号,特公昭53−43591号,特公昭53−1833号),イノシトールまたは酢酸を要求するL−リジン生産変異株(特開昭55−9784号,特開昭56−8692号),フルオロピルビン酸または34℃以上の温度に対して感受性を示すL−リジン生産変異株(特開昭55−9783号,特開昭53−86090号)、エチレングリコールに耐性を示し、L−リジンを生産するブレビバクテリウムまたはコリネバクテリウムの変異株(米国特許出願第333455号参照)。<4>HD変異株又はHD欠損株におけるAK遺伝子増幅AKは、L−リジン及びL−スレオニンが共存することによってフィードバック阻害を受けるが、野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないコリネホルム細菌はL−スレオニンを生産できないので、AKはフィードバック阻害を受けない。したがって、野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないコリネホルム細菌の細胞中でAK遺伝子を増幅すれば、L−リジン生産性が向上すると考えられる。また増幅するAK遺伝子として阻害解除型AK遺伝子を用いると、一層フィードバック阻害を受けないので、さらにL−リジン生産性が向上すると考えられる。AK遺伝子を導入する野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないコリネホルム細菌としては、上記<3>のようにして得られるHD変異株又はHD欠損株が挙げられるが、突然変異処理によって得られるHD完全欠損株を用いても、同様にAK遺伝子増幅によるL−リジン生産性向上効果が得られる。これらの野生型ホモセリンデヒドロゲナーゼを発現しないコリネホルム細菌細胞中でAK遺伝子または変異型AK遺伝子を増幅するには、AK遺伝子または変異型AK遺伝子とコリネホルム細菌細胞内で自律複製可能なベクターとからなる組換えDNAで該コリネホルム細菌を形質転換すればよい。ここで用いるベクターは、コリネホルム細菌細胞内において自律的に複製し得るものであればどのようなものでも良い。具体的には、前述したpAJ655、pAJ1844、pAJ611、pAJ3148、pAJ440等が例示できる。コリネホルム細菌の形質転換方法としては、E. coli K-12について報告されている様に受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.,Biol.,53,159(1970)、またはバチルス・ズブチリスについて報告されている様に細胞がDNAを取り込み得る様に増殖段階(いわゆるコンピテントセル)に導入する方法(Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1977))等が挙げられる。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類および酵母について知られている様に(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec.Gen.,Genet.,168.111(1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75, 1929(1978))、DNA受容菌を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストにして組換えDNA受容菌に導入することも可能である。また、ベクターに薬剤耐性などのマーカー遺伝子や、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子などを保持させることにより、組換えDNAの宿主中での安定性を向上させることができる。さらに、AK遺伝子または変異型AK遺伝子の発現には、AK遺伝子固有のプロモーターをそのまま用いてもよいが、コリネホルム細菌で機能する他の遺伝子のプロモーターを用い、これをAKまたは変異型AKをコードするDNA配列に連結してもよい。<5>HD変異株又はHD欠損株の染色体DNAへの変異型AK遺伝子の導入上記<4>で述べたように、HD変異株又はHD欠損株の細胞中でAK遺伝子増幅を行うと、L−リジン生産性を向上させることができるが、HD変異株又はHD欠損株に導入したAK遺伝子の安定性を増すためには、AK遺伝子を染色体DNA中に組み込むことが好ましい。ここで染色体DNAに組み込むAK遺伝子としては、変異型AK遺伝子を用いることが好ましい。変異型AK遺伝子を、宿主染色体DNAに組み込むには、変異型HD遺伝子あるいは欠失型HD遺伝子の場合と同様に遺伝子組込みを行えばよい。すなわち、プラスミドベクターにブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来の温度感受性複製起点と変異型AK遺伝子とクロラムフェニコール等の薬剤に耐性を示すマーカー遺伝子とを挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAでコリネホルム細菌を形質転換し、温度感受性複製起点が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するAK遺伝子配列との組換えを起こし、染色体AK遺伝子と変異型AK遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分、温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。この状態では変異型AKが優性であるので表現型は変異型となる。したがって、遺伝子組込み株のままでもよいが、染色体DNA上でほぼ同一の配列が並列に並んでいると再び組換えを起こして一方のAK遺伝子が脱落しやすいので、染色体DNA上に変異型AK遺伝子のみが残った遺伝子置換株を得ることが好ましい。すなわち、2個のAK遺伝子の組換えにより、1コピーのAK遺伝子をベクター部分(温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカーを含む)とともに脱落させる。例えば、染色体組込み株を培養し、培養菌体を薬剤を含まない平板培地にまいて培養する。生育したコロニーを、薬剤を含む平板培地にレプリカして培養し、薬剤感受性株を取得する。得られた薬剤感受性株の染色体からベクター部分が脱落していることを、サザン・ハイブリダイゼーションにより確認し、さらに変異型AKを発現していることを確認する。尚、変異型HD遺伝子または欠失型HD遺伝子による遺伝子置換の場合と異なり、野生型AK遺伝子が染色体DNA上に完全な形で残っていてもさしつかえないので、変異型AK遺伝子は染色体DNA上のAK遺伝子以外の部位に組み込まれていてもよい。<6>L−リジンの製造上記のようにして得られるHD変異株、HD欠損株、AK遺伝子を増幅したこれらの株、または変異型AK遺伝子を組み込んだHD変異株もしくはHD欠損株を、好適な培地で培養することにより、培養物中にL−リジンを生産蓄積せしめることができる。使用する培地としては、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地が挙げられる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物などの糖類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じてリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。また、HD欠損株を用いる場合には、培地中に適当量のL−スレオニン及びL−メチオニン、またはL−ホモセリンを加える。培養は好気的条件下で16〜72時間実施するのがよく、培養温度は25℃〜37℃に、培養中pHは5〜7に制御することが好ましい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。培養物からのL−リジンの採取は通常のイオン交換樹脂法、沈澱法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。【図面の簡単な説明】図1は、遺伝子組込み及び遺伝子置換の概念図、図2は、各種微生物のHD遺伝子のアミノ酸配列を比較した図、図3は、各種微生物のHD遺伝子のアミノ酸配列を比較した図(続き)、図4は、p399AK9B及びp399AKYBの構築の過程を示す図、図5は、HD変異株及びHD欠損株のL−リジン生産性及び培養後のODを示す図、図6は、AK遺伝子を増幅したHD変異株及びHD欠損株のL−リジン生産性及び培養後のODを示す図、図7は、変異型AK遺伝子が染色体に組み込まれたHD変異株及びHD欠損株のL−リジン生産性及び培養後のODを示す図である。好適な実施例の説明以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例1 野生型HD遺伝子、弱化型HD遺伝子及び阻害解除型HD遺伝子の解析ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株から、弱化型HD変異株及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が解除されたHDを産生する変異株を創成し、これらの野生株及び変異株から、野生型HD遺伝子、弱化型HD遺伝子及び阻害解除型HD遺伝子を単離し、構造解析を行った。野生株としては、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株(FERM BP-734)を、弱化型HD変異株としてはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12472株及びAJ12937株を、阻害解除型HD変異株としてはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAI6080株を用いた。これらの変異株は以下のようにして得た。AJ12036株は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)から、もともと存在するプラスミドpAM330を脱落させた株であり、HDに関しては野生型HDを産生する株である。一方、AJ12472株及びAJ12937株は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)からL−リジン生産性を指標として突然変異による育種を繰り返した結果得られた株であり、弱化型HDを産生する株である。また、AI6080株はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)から、L−スレオニン生産性を指標として突然変異による育種を繰り返した結果得られた株であり、阻害解除型HDを産生する株である。<1>PCR法によるHD遺伝子の増幅HD遺伝子の塩基配列は、コリネバクテリウム・グルタミカムにおいて報告されており(Peoples, O. P. et al; Molecular Microbiology 2(1) 63-72 (1988))、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムとコリネバクテリウム・グルタミカムの各々のHD遺伝子の配列は類似性が高いことが予想されたので、コリネバクテリウム・グルタミカムの配列を基にPCR法に用いる合成プライマーDNAを作製した。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株、AJ12472株、AJ12937株及びAI6080株から常法により染色体DNAを調製した。これらの染色体DNAからHD遺伝子を含む約1500bpのDNA断片をPCR法により増幅するために、ABI社製DNA合成機model381A型を用いて、5’側プライマーH1(841)5'-CTGGGAAGGTGAATCGAATT-3'(860):配列表配列番号1)及び3’側プライマーH2((2410)5'-TCCGAGGTTTGCAGAAGATC-3'(2391):配列表配列番号2)の2種類のプライマーを合成した。尚、かっこ内の数字はPeoplesらが発表した塩基配列(Peoples, O. P. et al., Molecular Microbiology 2(1) 63-72 (1988))における位置を示す。得られた合成プライマーは、逆相HPLCにて精製した。PCR反応は、PCR増幅装置(DNAサーマルサイクラーPJ2000:宝酒造(株))及びPCRキット(Takara GeneAmpTM kit:宝酒造(株))を用い、以下に示す組成で行った。PCR反応におけるDNAの変性、DNAのアニーリング、及びポリメラーゼ反応の条件は、各々94℃、1分、37℃、2分、75℃、3分とし、各温度間の遷移は1秒で行った。この反応サイクルを25サイクル繰返すことによりDNAの増幅を行った。こうして得られた増幅反応生成物の大きさをアガロースゲル電気泳動により確認した結果、約1.4KbpのDNA断片の増幅が認められた。こうしてAJ12036株、AJ12472株、AJ12937株及びAI6080株の各株の染色体DNAから増幅されたDNA断片を各々制限酵素KpnIを用いて切断して得られるDNA断片を、ベクタープラスミドpHSG399(Takeshita, S. et al.;Gene(1987),61,63-74参照)のKpnI部位に挿入して組換えDNAを得た。AJ12036株由来の増幅断片を含む組換えDNAをpHDW、AJ12472株由来の増幅断片を含む組換えDNAをpHDMI、AJ12937株由来の増幅断片を含む組換えDNAをpHDMII、AI6080株由来の増幅断片を含む組換えDNAをpHDMIIIと命名し、各々のプラスミドをE. coli JM109株に導入して形質転換体を得た。<2>HD遺伝子の塩基配列の決定及び変異点の解析(1)野生型及び変異型HD遺伝子の塩基配列の比較上記のようにして得られたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株、AJ12472株、AJ12937株及びAI6080株のHD遺伝子断片の塩基配列の決定をダイデオキシ法により行った。決定されたAJ12036株の野生型HD遺伝子の塩基配列及びこの配列から推定されるアミノ酸配列を、配列表配列番号3に示す。さらに、アミノ酸配列を配列表配列番号4に示す。この配列とPeoplesら報告したコリネバクテリウム・グルタミカムのHD遺伝子の配列(Peoples, O. P. et al., Molecular Microbiology, 2(1), 63-72 (1988))を比較したところ、4ヶ所に塩基の相違があり、そのうち1ヶ所はアミノ酸レベルでの相違であった。この相違点をコリネバクテリウム・グルタミカムのHD遺伝子の配列を基準として以下に示す。▲1▼531G→C(148Gly→148Ala)▲2▼1222G→C▲3▼1318G→T▲4▼1324C→Gコリネホルム細菌の各野生株のHD遺伝子の配列の間に認められるこのような相違は、HD活性に影響するものではなく、コリネバクテリウム・グルタミカムのHD遺伝子の配列も配列番号3に示されるブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのHD遺伝子の配列と同等のものとして扱うことができる。また、AJ12036株の野生型HD遺伝子の塩基配列及びこの配列から推定されるアミノ酸配列をAJ12472株、AJ12937株及びAI6080株のHD遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列と比較した結果、AJ12472株では2ヶ所、AJ12937では1ヶ所、AI6080では1ヶ所の変異点があり、全てアミノ酸置換を伴っており、さらにAJ12472株及びAJ12937株のHD遺伝子には全く同一の変異が1ヶ所共通して存在していることがわかった。各変異点を以下に示す。以下、155C→T(23Leu→Phe)の変異点を変異点1、398G→A(104Val→Ile)の変異点を変異点2、さらに1266C→T(393Ser→Phe)の変異を変異点3という。(2)ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム、バチルス・サブチリス及びE. coliのHDアミノ酸配列及び変異点の比較E. coliにはHD遺伝子が2種類(HD-1、HD-2)存在し、いずれもAKと2機能酵素となっていることが知られている(Zakin, M. M. et al; J.B.C. 258 3028-3031 (1983))。また、バチルス・サブチリスのHD遺伝子の塩基配列も決定されている(Parsot, C and Cohen, G. N.; J.B.C. 263(29) 14654-14660 (1988))。これらのアミノ酸配列とブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生型HDのアミノ酸配列を比較したものを図2及び図3に示す。この結果から、相同性の高い部位はN末端側の領域に多く、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDのアミノ酸配列においてアミノ酸番号100〜230の領域に相同性が高い部位が集中していることがわかる。このことと、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDの2箇所の変異点はN末端から約100アミノ酸残基内にあり、特に変異点1はN末端から23アミノ酸残基の位置であって、しかも2つの変異点は、E. coliのHD-1、HD-2、バチルス・サブチリスのHD及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDとの間で保存性の高いアミノ酸残基であったこと、さらに、E. coliのHD-1及びHD-2は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDのC末端側約100アミノ酸残基に対応する配列は存在しないことから、HDの活性領域はN−末端側にあると推定される。一方、L−スレオニンによる阻害が解除されたコリネバクテリウム・グルタミカムHDの遺伝子の塩基配列が発表されている。すなわち、Sahmら(Reinscheid,D.J. et al; J.Bacteriol. 173(10) 3228-3230 (1991))は点変異によるC末端から68番目の1アミノ酸の置換を、またSinskeyら(Archer, J. A. C. et al; Gene 107 53-59 (1991))は、点変異によるフレームシフトでのC末端から17番目以降のアミノ酸の変化、及び7番目以降のアミノ酸の欠失を報告している。また、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAI6080株の阻害解除型HDでは、アミノ酸残基の変異はC末端から53アミノ酸残基目の位置であった。さらに、E. coliのHD-1及びHD-2には存在しないC−末端側の領域が、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDと同様にL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けるバチルス・サブチリスのHDには存在することから、HDのL−スレオニンによるフィードバック阻害に関わる領域はC−末端側にあると推定される。実施例2 野生型AK遺伝子及び変異型AK遺伝子の取得と解析<1>野生型及び変異型AK遺伝子、及びそれらを含有するプラスミドの作製ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)、及び2256株より変異処理により得られたL−リジン生産性変異株AJ3463(FERM P-1987)より常法に従い、染色体DNAを調製した。染色体DNAよりPCR法(polymerase chain reaction ; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)によりAK遺伝子を増幅した。増幅に用いたDNAプライマーはコリネバクテリウム・グルタミカムにおいて既知となっている配列(Molecular Microbiology(1991)5(5),1197-1204, Mol.Gen.Genet.(1990)224,317-324参照)を基にしてAK遺伝子をコードする約1643bpの領域を増幅すべく、5'-TCGCGAAGTAGCACCTGTCACTT-3'(配列番号5)と5'-ACGGAATTCAATCTTACGGCC-3'(配列番号6)という配列の23mer及び21merの一本鎖DNAを合成した。DNAの合成はApplied Biosystems社製DNA合成機model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成した。PCR反応は、宝酒造(株)製DNAサーマルサイクラーPJ2000型を用い、TaqDNAポリメラーゼを用い、供給者により指定された方法に従って遺伝子増幅を行なった。増幅された1643kbの遺伝子断片をアガロースゲル電気泳動により確認した後、ゲルより切り出した該断片を常法により精製し、制限酵素NruI(宝酒造(株)製)及びEcoRI(宝酒造(株)製)にて切断した。遺伝子断片のクローン化用ベクターにはpHSG399(Takeshita, S et al;Gene(1987),61,63-74参照)を用いた。pHSG399を制限酵素SmaI(宝酒造(株)製)及び制限酵素EcoRIにて切断し、増幅されたAK遺伝子断片と接続した。DNAの接続はDNAライゲーションキット(宝酒造(株)製)を用い、指定された方法にて行なった。この様にしてpHSG399にブレビバクテリウム染色体より増幅されたAK遺伝子断片が接続されたプラスミドを作製した。野生株である2256株(ATCC 13869)由来のAK遺伝子を有するプラスミドをp399AKY、L−リジン生産菌であるAJ3463由来のAK遺伝子を有するプラスミドをp399AK9と命名した。p399AKYおよびp399AK9に、それぞれコリネバクテリウム属細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力をもつDNA断片(以下「Coryne.-ori」と記す)を導入し、コリネバクテリウム属細菌中で自律複製可能なAK遺伝子を搭載したプラスミドを作製した。Coryne.-oriは、エシェリヒア・コリと、コリネバクテリウム属細菌の双方の菌体中で自律複製可能なプラスミドベクターからCoryne.-oriを調製した。このようなプラスミドベクターはいくつか報告があるが、ここでは、コリネホルム細菌細胞内で自律複製可能なプラスミドpAJ1844(特開昭58-216199参照)とエシェリヒア・コリ細胞内で自律複製可能なプラスミドpHSG298(S.Takeshita et al:Gene 61,63-74(1987)参照)から作製したシャトルベクターpHK4を用いた。pHK4の作製法については、特開平5−7491号公報に詳細に記載されているが、概略を示せば以下の通りである。pAJ1844を制限酵素Sau3AIで部分切断し、制限酵素BamHIで完全切断したpHSG298と連結した。連結後のDNAをブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036(FERM-P7559)に導入した。形質転換の方法は、電気パルス法(特開平2-207791参照)を用いた。形質転換体の選択は、カナマイシン25μg/mlを含むM-CM2Gプレート(グルコース5g、ポリペプトン10g、酵母エキス10g、NaCl15g、DL-メチオニン0.2g、寒天15gを純水1lに含む。pH7.2)にて行った。形質転換体からプラスミドを調製し、大きさの最も小さいものを選択し、pHK4と命名した。このプラスミドは、エシェリヒア・コリと、コリネホルム細菌中で自律複製でき、宿主にカナマイシン耐性を付与する。上記のようにして得られたpHK4を、制限酵素KpnI(宝酒造(株)製)にて切断し、切断面を平滑末端化した。平滑末端化はDNA Blunting kit(宝酒造(株)製)を用い、指定された方法にて行なった。平滑末端化後、リン酸化済みBamHIリンカー(宝酒造(株)製)を接続し、pHK4よりCoryne.-ori部分のDNA断片をBamHIのみによる切断によって切り出される様改変した。このプラスミドをBamHIにより切断し、生じたCoryne.-oriDNA断片を同じくBamHIにて切断したp399AKY、p399AK9に接続し、コリネバクテリウム属細菌中で自律複製可能でかつAK遺伝子を含むプラスミドを作製した。p399AKY由来の野生型AK遺伝子を含むプラスミドをp399AKYBと命名し、p399AK9由来の変異型AK遺伝子を含むプラスミドをp399AK9Bと命名した。p399AK9B、p399AKYB構築の過程を図4に示す。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生型株であるAJ12036株(FERM-P7559)に変異型AKプラスミドp399AK9Bを導入した株AJ12691は、1992年4月10日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM-P12918として寄託され、1995年2月10日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-4999の受託番号で寄託されている。<2>ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの野生型AK及び変異型AK遺伝子の塩基配列の決定野生型AK遺伝子を含むプラスミドp399AKY及び変異型AK遺伝子を含むプラスミドp399AK9を各々の形質転換体から調製し、野生型及び変異型AK遺伝子の塩基配列の決定を行なった。塩基配列の決定はサンガーらの方法(F.Sanger et al:Proc.Natl.Acad.Sci.74,5463(1977)などがある)によった。p399AKYにコードされている野生型AK遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号7に示す。一方、p399AK9にコードされている変異型AK遺伝子の塩基配列は野生型AKと比べ、配列番号7において1051番目のGがAに変化しているという1塩基の変異のみを有していた。AK遺伝子は、同一のDNA鎖にα、βの2本のサブユニットが同一のリーディングフレームでコードされていることが知られているが(Kalinowski,J et al;Molecular Microbiology(1991)5(5),1197-1204参照)、相同性から判断して本遺伝子も同一のDNA鎖にα、βの2本のサブユニットが同一のリーディングフレームでコードされていると考えられる。DNA塩基配列より推定される野生型AKタンパク質のαサブユニットのアミノ酸配列をDNA配列と同時に配列表の配列番号8に示す。このアミノ酸配列のみを配列番号9に示す。また、DNA塩基配列より推定される野生型AKタンパク質のβサブユニットのアミノ酸配列をDNAと同時に配列表の配列番号10に示す。このアミノ酸配列のみを配列番号11に示す。尚、各サブユニットとも、開始コドンにGTGが用いられており、対応するアミノ酸をメチオニンと表記しているが、これは、メチオニン、バリン、またはフォルミルメチオニンを表すものである。一方、変異型AK遺伝子配列上の変異は、野生型AKタンパク質のアミノ酸配列(配列番号8、10)において、αサブユニットでは279番目のアラニン残基がスレオニン残基に、βサブユニットでは30番目のアラニン残基がスレオニン残基にというアミノ酸残基置換を起こしていることを意味する。<3>変異型AK遺伝子発現産物のAK活性及び阻害解除の評価ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)野生型株であるAJ12036株(FERM-P7559)に野生型AKプラスミドp399AKYB及び変異型AKプラスミドp399AK9Bを各々導入した株を作製した。コリネバクテリウムへの遺伝子導入は、電気パルス法によった。宿主のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)AJ12036株、野生型AKプラスミドを保持するAJ12690株および、変異型AKプラスミドを保持するAJ12691(FERM-P12918)株のAK活性を測定した。活性測定は、常法に従った(Miyajima,R et al;The Journal of Biochemistry(1968)63(2),139-148参照)。表3に示す様にAKプラスミド導入によりAKの比活性が約10〜15倍に増大していること、及び変異型AKプラスミド導入株についてのみ、L−リジン及びL−スレオニンによる相乗阻害が解除していることを確認した。表3は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生型株AJ12036株、及びそれに野生型AKプラスミドを保持させたAJ12690株、変異型AKプラスミドを保持させたAJ12691株の菌体破砕液のAK比活性、及びそのL−リジン及びL−スレオニンによる相乗阻害の程度を表わしたものである。阻害剤のL−リジン、及びL−スレオニンは各々最終濃度1mMとなるよう添加した。<4>変異型AK遺伝子の部位特異的変異による改良上記のようにして得られた変異型AKをさらに改良するために、部位特異的変異により、変異型AKの変異点(279Ala→Thr)を他のアミノ酸残基に置換することにした。目的部位に目的の変異を起こす部位特異的変異法としてはPCRを用いる方法(Higuchi,R.,61,in PCR technology(Erlich,H.A.Eds.,Stockton press(1989)))、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits,H.J.Meth. in Enzymol.,154,350(1987);Kunkel,T.A. et al.,Meth. in Enzymol.,154,367(1987))などがある。変異によって導入されるアミノ酸残基の種類としては、20種類のアミノ酸を極性や分子構造などの各々の性質により分類し、代表的なもの8種(Arg,Asp,Cys,Phe,Pro,Ser,Tyr,Val)を選んだ。各々の変異点のアミノ酸変異、及び塩基置換を表4に示す。変異の導入方法としては、変異が導入される279番目のAla残基のコドンを目的のアミノ酸残基のコドンに置換した23merの合成DNA8種を考案し(Arg導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG CGT GCCAAGGTTT-3':配列番号12、Asp導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG GAT GCCAAGGTTT-3':配列番号13、Cys導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG TGT GCCAAGGTTT-3':配列番号14、Phe導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG TTT GCCAAGGTTT-3':配列番号15、Pro導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG CCT GCCAAGGTTT-3':配列番号16、Ser導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG TCT GCCAAGGTTT-3':配列番号17、Tyr導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG TAT GCCAAGGTTT-3':配列番号18、Val導入用合成DNAは5'-GCCAGGCGAG GTT GCCAAGGTTT-3':配列番号19である)、その相補配列と併せて16種類の23mer一本鎖DNAを合成した。たとえばArg残基を導入する場合、5'-GCCAGGCGAG CGT GCCAAGGTTT-3'(配列番号12)なる配列を有する一本鎖DNA、その相補鎖一本鎖DNA、配列番号5の配列を有する一本鎖DNA、及び配列番号6の配列を有する一本鎖DNAをプライマーとし、p399AKYを鋳型にしてPCR法を行った。非特異的変異の導入を除くため、作製されたDNAから変異点を含む約280塩基対を制限酵素(NaeI-AvaII)を用いて切り出し、p399AKYの該当部位と置換して組換えプラスミドを作製した。置換した領域については塩基配列の確認を行った。得られた8種類の各々の組換えプラスミドが保持する変異型AKの酵素活性を測定、評価するにあたり、宿主としてE. coliのAK完全欠損株Gif106M1を用いた(Boy, E and Patte, J.C., J. Bacteriol.112, 84-92 (1972), Theze, J. et al., J. Bacteriol.117, 133-143 (1974))。コリネホルム細菌にはAK欠損株が知られていないために、宿主のAKとプラスミド由来のAKが混在してしまい、正確に測定できないと考えられたためである。多くのコリネホルム細菌の遺伝子はE. coli中で発現することが知られており、またAK遺伝子はpHSG399上のlacプロモーター下流に連結されているため、エシェリヒア・コリ中で発現可能であると予想された。野生型及び8種類の組換えプラスミドでE. coli Gif106M1を形質転換し、各々の形質転換株から無細胞抽出液を調製し、酵素解析を行った。AK活性の測定は、Miyajima,R et al;The Journal of Biochemistry(1968)63(2),139-148に記載される方法により行った。表5にL−リジン5mM、L−スレオニン5mM、あるいはL−リジン及びL−スレオニン2mMづつ添加したときの阻害解除度及び比活性を示す。その結果、Aspのような酸性アミノ酸に変化させた場合はAKは失活したが、その他のいずれのアミノ酸に変化させた場合もL−リジン及びL−スレオニンによる阻害は解除された。実施例3 HD変異株及びHD欠損株のL−リジン生産性の評価2種類の変異型HD及びHD欠損がL−リジン生産性に与える効果を比較するために、変異型HD遺伝子又は配列の一部を欠失させたHD遺伝子を同じ宿主の染色体に組込んだ遺伝子置換株を作製し、各々をHD変異株及びHD欠損株としてL−リジン生産性を評価した。<1>変異型HD遺伝子置換用プラスミド及び欠失型HD遺伝子置換用プラスミドの作製ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株(FERM BP-734)(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株(ATCC 13869)から、クリプティックプラスミドpAM330を脱落させたもの)の染色体DNAに、変異型HD遺伝子又は配列の一部を欠失させたHD遺伝子を相同組換えにより導入するために遺伝子置換用プラスミドを作製した。(1)変異点1を有するHD遺伝子の作製実施例1で得られた変異型HD遺伝子は、変異点1(155C→T(23Leu→Phe))及び変異点2(398G→A(104Val→Ile))を有する変異型HD遺伝子(AJ12472株由来)、及び変異点2のみを有する変異型遺伝子(AJ12937株由来)の2種類であった。変異点1がHD活性およびL−リジン生産性に与える影響を調べるために、変異点1のみを有する変異型HD遺伝子を作製した。以下、変異点1を有する変異型HDをHD-M1、変異点2を有する変異型HDをHD-M2、変異点1及び変異点2を共に有するHDをHDM-12と呼ぶ。HDM-12遺伝子を含むプラスミドpHDMIを、変異点1及び変異点2の両変異点の間を切断する制限酵素TthIII1、及びベクターとHD遺伝子との連結点を切断するKpnIを用いて切断し、変異点1を持つ5’側HD断片を得た。同様に野生型HD遺伝子を有するpHDWをTthIII1及びKpnIで切断して3’側HD断片を得た。こうして得られた5’側HD断片と3’側HD断片とを結合することによって、変異点1のみを有するHD-M1遺伝子を得た。(2)遺伝子置換用プラスミドの構築上記のようにして得られた変異点1のみを有するHD-M1遺伝子を、クロラムフェニコール耐性(Cmr)遺伝子を有するベクタープラスミドpHSG398のKpnI部位に挿入し、さらに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株由来の温度感受性複製起点(TSori)をpHSG398のBamHI部位に挿入することによって、HD-M1遺伝子置換用プラスミドpTSHDM1を構築した。TSoriは、Coryne. -oriを有するプラスミドpHK4をインビトロでヒドロキシルアミン処理し、処理後のプラスミドDNAでブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036を形質転換し、高温(34℃)で生育できない形質転換株から回収して得られたプラスミドpHSC4(特開平5−7491号公報参照)から調製した。尚、Coryne. -oriは、pHSC4からBamHIとKpnIで切り出すことができるが、BamHI切断のみでCoryne. -oriを切り出せるようにプラスミドを改変した。pHSC4を制限酵素KpnI(宝酒造(株)製)にて切断し、切断面を平滑末端化した。平滑末端化はDNA Blunting kit(宝酒造(株)製)を用い、指定された方法にて行なった。平滑末端化後、リン酸化済みBamHIリンカー(宝酒造(株)製)を接続し、pHSC4よりTSori部分のDNA断片をBamHIのみによる切断によって切り出される様改変した。pHSC4を保持するエシェリヒア・コリAJ12571は、1990年10月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P-11763として寄託され、1991年8月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-3524の受託番号で寄託されている。次に、同様にして、変異点2のみを持つHD-M2遺伝子を有するプラスミドpHDIIをKpnIで切断してHD-M2遺伝子断片を得、これをpHSG398のKpnI部位に挿入し、さらに、TSoriをBamHI部位に挿入することによりHD-M2遺伝子置換用プラスミドpTSHDM2を構築した。また、変異点1及び変異点2を共に有するHD-M12遺伝子を有するプラスミドpHDMIをKpnIで切断してHD-M12遺伝子断片を得、これをpHSG398のKpnI部位に挿入し、さらに、TSoriをBamHI部位に挿入することによりHD-M12遺伝子置換用プラスミドpTSHDM12を構築した。さらに、野生型HD遺伝子を有するプラスミドpHDWをAatIIで切断し、HD遺伝子内に存在する2つのAatII部位(配列番号3において塩基番号716〜721、1082〜1087)間を欠失させることにより一部を欠失したHD遺伝子(HD-Δ遺伝子)を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをKpnIで切断してHD-Δ遺伝子断片を得、これをpHSG398のKpnI部位に挿入し、次にTSoriをBamHI部位に挿入することによりHD-Δ遺伝子置換用プラスミドpTSHDΔを構築した。(3)HD変異株及びHD欠損株の作製上記で得られた変異型HD遺伝子置換用プラスミドpTSHDM1、pTSHDM2、pTSHDM12、及び欠失型HD遺伝子置換用プラスミドpTSHDΔを用いて、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株の形質転換を、電気パルス法(杉本ら,特開平2-207791号公報)によって行った。得られた形質転換株を、M-CM2G培地を用いて25℃にてフルグロース(約1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、プレート1枚あたり105細胞となるよう希釈し、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含むM-CM2G平板培地にまき、34℃にて2〜7日培養してコロニーを取得した。得られたコロニーについて、細胞中にプラスミドが含まれていないことを確認し、さらに直鎖状のpHSG398をプローブに用いたサザン・ハイブリダイゼーション解析により、遺伝子置換用プラスミドの染色体への組込みを確認した。上記のようにして得られた染色体組込み株は、染色体上にもともと存在するHD遺伝子と変異型もしくは欠失型HD遺伝子との融合遺伝子2個が、ベクター(TSoriを含む)を挟んだ状態で挿入されている。次に、変異型HD遺伝子あるいは欠失型HD遺伝子のみを染色体に残すために、野生型HD遺伝子及びベクターを染色体DNAから脱落させて、変異型HD遺伝子置換株及び欠失型HD遺伝子置換株を得た。野生型HD遺伝子及びベクターの脱落は次のようにして行った。各組込み株を、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むM-CM2G培地で34℃にてフルグロース(1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、クロラムフェニコールを含まないM-CM2G平板培地に1枚あたり50〜200コロニーとなるようにまき、34℃にて培養した。生育したコロニーを、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含むM-CM2G平板培地にレプリカし、34℃にて培養してクロラムフェニコール感受性株を取得した。得られたクロラムフェニコール感受性株の染色体からベクターが脱落していることを、サザン・ハイブリダイゼーションにより確認し、さらに変異型HDあるいは欠失型HDを発現していることを確認した。こうして得られた遺伝子置換株は、染色体DNAの塩基配列決定により、変異点が導入されていることを確認した。こうして得られたHD-M1遺伝子置換株をHDM1株、HD-M2遺伝子置換株をHDM2株、HDM-12遺伝子置換株をHDM12株、HD-Δ遺伝子置換株をHDΔ株と呼ぶ。<2>HD変異株及びHD欠損株のL−リジン生産性HD変異株であるHDM1株、HDM2株、HDM12株、及びHD欠損株であるHDΔ株のL−リジン生産性を検討した。シングルコロニーアイソレーションを行ったこれらのHD変異株、HD欠損株及びHDに関しては野生株であるAJ12036株を、下記に示すL−リジン生産培地20mLを入れた500mLフラスコ中で、31.5℃にて72時間振盪培養し、最終OD(OD562)及びL−リジン蓄積量を調べた。(L−リジン生産培地)下記成分(1L中)を溶解し、KOHでpH8.0に調製し、115℃で15分殺菌した後、別に乾熱殺菌したCaCO3を50g/L加える。結果を図5に示す。尚、残糖はいずれの株でも認められなかった。この結果から明らかなように、L−リジンの蓄積はAJ12036株ではほとんど認められないのに対して、HDM1株では約4g/l、HDM2株では約17g/l、HDM12株では約7.5g/l、HDΔ株では約30g/lであり、いずれの株でもL−リジンの蓄積が認められ、特にHDΔ株ではL−リジン生産性が飛躍的に向上した。また、HDへの変異点1のみの導入によってもL−リジンが蓄積されることが明らかとなった。尚、HDΔ株は最小培地またはL−スレオニンもしくはL−メチオニンを単独で添加した最小培地では生育せず、L−ホモセリンまたはL−スレオニン及びL−メチオニンの添加により生育が回復した。また、HDM1株、HDM2株及びHDM12株は、いずれもL−スレオニン及びL−メチオニンを含まない最小培地で生育が可能であった。尚、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムHDΔ株は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12846と命名され、1994年3月1日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P-14197として寄託され、1995年2月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-4995の受託番号で寄託されている。実施例4 HD変異株及びHD欠損株におけるAK遺伝子の増幅効果実施例3に示したように、変異型HD遺伝子及び欠失型HD遺伝子を野生株に導入すると、L−リジンの生産性が向上することが明らかとなったが、さらにこれらの変異型HD遺伝子及び欠失型HD遺伝子とAK遺伝子増幅との組合せによる効果を調べた。AKはL−リジン及びL−スレオニンによる協奏阻害を受けるが、各々単独では阻害の程度は低いことが知られている。したがって、HD変異株及びHD欠損株ではL−スレオニンが生産されないので、野生型AK遺伝子の増幅によってもL−リジンの生産性が向上することが予想される。さらに、実施例2で得られたL−リジン及びL−スレオニンによる阻害を受けない変異型AKをコードする遺伝子を導入すれば、より一層L−リジン生産性が向上することが期待される。このような変異型HD遺伝子あるいは欠失型HD遺伝子の導入とAK遺伝子増幅との組合せ効果を検討するため、実施例3で得られたHD変異株及びHD欠損株にAK遺伝子を含むプラスミドを導入し、L−リジン生産性を評価した。野生株であるAJ12036、HD変異株であるHDM1、HDM2及びHDM12、及びHD欠損株であるHDΔの各株を各々宿主として、野生型AK遺伝子及びCoryne.-oriを持つプラスミド(p399AKYB))と変異型AKを持つプラスミド(p399AK9B)を用いて形質転換した。すなわち、宿主5株について2種類のプラスミドで形質転換を行い、合計10種類の形質転換株を得た。AJ12036、HDM1、HDM2、HDM12、HDΔ及び各々の形質転換株について2株づつを前述のL−リジン生産培地を用いて培養し、L−リジン生産性を調べた。但し、p399AKYBプラスミド及びp399AK9Bプラスミドを保持する形質転換株については、前培養に用いた培地及びL−リジン生産培地ともに10μg/mLのクロラムフェニコールを添加して培養した。培養は、培地20mLを入れた500mLフラスコ中で、31.5℃にて72時間振盪しながら行った。結果を図6に示したように、AJ12036株では、野生型AKプラスミドを導入してもL−リジン生産性の向上は認められないのに対し、HD変異株及びHD欠損株では、野生型AKプラスミド導入によりL−リジン蓄積量の増加がみられた。また、変異型AKプラスミドを導入した場合には、HD変異株及びHD欠損株のいずれにおいても野生型AKプラスミドを導入したときよりもL−リジン生産性がさらに向上した。さらに、野生型HD遺伝子を保持するAJ12036株でも、変異型AKプラスミドの導入により、約22g/LのL−リジン蓄積が認められた。実施例5 HD変異株及びHD欠損株における変異型AK遺伝子置換の効果<1>変異型AK遺伝子及び変異型HD遺伝子置換株、及び変異型AK遺伝子及び欠失側HD遺伝子置換株の創成実施例4ではHD変異及びHD欠損とAK遺伝子増幅との組合せの効果を調べたが、本実施例では変異型HD遺伝子あるいは欠失型HD遺伝子が染色体上に組み込まれるとともに変異型AK遺伝子が染色体上に組み込まれた株を創成し、L−リジン生産性を評価した。変異型AK遺伝子を染色体DNAに組み込むための遺伝子置換用プラスミドは次のようにして得た。実施例2で得られたプラスミドをp399AK9(pHSG399に染色体より増幅されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ3463株由来の変異型AK遺伝子断片が接続されたプラスミド)のベクター部分に存在するBamHI部位に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの温度感受性複製起点(TSori)を挿入することによって、変異型AK遺伝子置換用プラスミドpAK9Tを構築した。変異型AK遺伝子及びHD-M1遺伝子が導入された株〔(AKFBR+HDM1)株〕は、実施例4で得られたHDM1株を親株として、変異型AK遺伝子置換用プラスミドpAK9Tを用いて変異型AK遺伝子を組み込むことによって得た。HDM1株にpAK9Tを電気パルス法(杉本ら,特開平2-207791号公報)によって導入し、得られた形質転換株を、M-CM2G培地を用いて25℃にてフルグロース(約1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、プレート1枚あたり105細胞となるよう希釈し、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含むM-CM2G平板培地にまき、34℃にて2〜7日培養してコロニーを取得した。得られたコロニーについて、細胞中にプラスミドが含まれていないことを確認し、さらに直鎖状のpHSG399をプローブに用いたサザン・ハイブリダイゼーション解析により、pAK9Tの染色体への組込みを確認した。上記のようにして得られた染色体組込み株は、染色体上にもともと存在するAK遺伝子と変異型AK遺伝子との融合遺伝子2個が、ベクター(TSoriを含む)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。次に、変異型AK遺伝子のみを染色体DNA上に残すために、野生型AK遺伝子及びベクターを脱落させて、変異型AK遺伝子置換株を得た。ベクターの脱落は次のようにして行った。変異型AK遺伝子組込み株を、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むM-CM2G培地で34℃にてフルグロース(1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、クロラムフェニコールを含まないM-CM2G平板培地に1枚あたり50〜200コロニーとなるようにまき、34℃にて培養した。コロニーを形成するクローンのうち、L−リジン生産性が親株であるHDM1株よりも向上している株を選択した。同様に、変異型AK遺伝子とHD-M12遺伝子を持つ株〔(AKFBR+HDM12)株〕は、HDM12株を親株として、pAK9Tを用いた遺伝子置換を上記と同様にして行い、HDM12株よりもL−リジン生産性が向上している株を選択した。一方、変異型AK遺伝子とHD-M2遺伝子を導入した株〔(AKFBR+HDM2)株〕は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12036株にpAK9Tを導入して親株として変異型AK遺伝子が導入されたAKFBR株を創成し、続いてHD-M2遺伝子の導入を行った。すなわち、AJ12036株にpAK9Tを電気パルス法(杉本ら,特開平2-207791号公報)によって導入し、得られた形質転換株を、M-CM2G培地を用いて25℃にてフルグロース(約1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、プレート1枚あたり105細胞となるよう希釈し、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含むM-CM2G平板培地にまき、34℃にて2〜7日培養してコロニーを取得した。得られたコロニーについて、細胞中にプラスミドが含まれていないことを確認し、さらに直鎖状のpHSG399をプローブに用いたサザン・ハイブリダイゼーション解析により、pAK9Tの染色体への組込みを確認した。次に、変異型AK遺伝子組込み株を、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むM-CM2G培地で34℃にてフルグロース(1〜2×109/ml)になるまで培養した。培養菌体を、クロラムフェニコールを含まないM-CM2G平板培地に1枚あたり50〜200コロニーとなるようにまき、34℃にて培養した。生育したコロニーを、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含むM-CM2G平板培地にレプリカし、34℃にて培養してクロラムフェニコール感受性株を取得した。得られたクロラムフェニコール感受性株の染色体からベクターが脱落していることを、サザン・ハイブリダイゼーションにより確認し、さらに変異型AKを発現していることを確認した。こうして得られた遺伝子置換株は、染色体DNAの塩基配列決定により、変異点が導入されていることを確認した。こうして得られた変異型AK遺伝子置換株AKFBR株の染色体に、HD-M2遺伝子置換用プラスミドpTSHDM2を上記と同様に電気パルス法にて導入し、さらにプラスミドが脱落した遺伝子置換株を得た。遺伝子置換株の選択は、L−リジン生産性の向上及びL−スレオニン又はL−メチオニンに対する感受性により行った。同様に、変異型AK遺伝子とHD-Δ遺伝子を導入した株〔(AKFBR+HDΔ)株〕は、変異型AK遺伝子置換株AKFBR株を親株とし、pTSHDΔを用いた遺伝子置換を上記と同様にして行い、HD欠損によるL−メチオニン及びL−スレオニン要求性のクローンを選択した。上記のようにして得られた各遺伝子置換株は、最終的に染色体DNAの塩基配列決定によって変異点が導入されていることを確認し、さらにサザンハイブリダイゼーションによるプラスミド脱落の確認を行った。<2>変異型AK遺伝子及び変異型HD遺伝子置換株、及び変異型AK遺伝子及び欠失型HD遺伝子置換株のL−リジン生産性の評価上記で得られた4株、すなわち(AKFBR+HDM1)株、(AKFBR+HDM2)株、(AKFBR+HDM12)株、及び(AKFBR+HDΔ)株について、L−リジン生産性の評価を行った。これらの各株を、前述のL−リジン生産培地20mLを入れた500mLフラスコ中で、31.5℃にて72時間振盪培養し、培養後の培養液のOD及びL−リジン蓄積量を測定した。結果を図7に示す。L−リジン生産量は、AKFBR株が約19g/Lであったのに対し、(AKFBR+HDM1)株では約21g/L、(AKFBR+HDM2)株では約22g/L、(AKFBR+HDM12)株では約20g/L、(AKFBR+HDΔ)株では約35g/Lであり、変異型HD遺伝子あるいは欠失型HD遺伝子を単独で導入した場合よりも、これらの遺伝子と変異型AK遺伝子と組み合わせて導入した方がL−リジン生産性がより一層向上することが示された。培養終了後の培地のODに関しては、(AKFBR+HDM1)株、(AKFBR+HDM2)株、及び(AKFBR+HDM12)株ではいずれもAKFBR株との差はほとんど無かったが、(AKFBR+HDΔ)株では欠失型HD遺伝子単独による遺伝子置換株の場合よりもさらにODは低下した。尚、培養終了後の残糖はいずれの株においても認められなかった。(AKFBR+HDM2)株はAJ12848(FERM P-14198)、(AKFBR+HDM12)株はAJ12849(FERM P-14199)、及び(AKFBR+HDΔ)株はAJ12850(FERM P-14200)と命名され、各々かっこ内の受託番号で、1994年3月1日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、1995年2月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、それぞれ順にFERM BP-4996、FERM BP-4997、FERM BP-4998の受託番号で寄託されている。実施例6 HD完全欠失株の復帰変異頻度の測定染色体上の遺伝子置換により取得したHDの完全欠失株であるHDΔ株及びAKFBR+HDΔ株について、ホモセリン要求性の復帰変異頻度を、通常の変異処理剤であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)により生菌体を処理して得られたHD欠損株であるATCC13287と比較した。それぞれの保存菌株を栄養培地にて前培養し、L−リジン生産培地に植菌し、72時間振盪培養した後に培養液を適宜希釈し、M−CM2G平板培地にてコロニーを形成させた後、L−メチオニン、L−スレオニンを含まないブレビバクテリウム用最小培地にレプリカし、最小培地に生育したコロニーの数と、栄養培地に生育したコロニーの数との比率を復帰変異率とした。この方法で復帰変異株のコロニーが観察できない場合には、最小培地に塗布する菌数を増やし、他方栄養培地には希釈したものを塗布し、そのコロニー形成数から最小培地に塗布した菌数を推定し、復帰変異率を算出した。この方法によって、上記3株の復帰変異率を測定した結果を表6に示す。ATCC13287株では、培養終了時に顕著な復帰変異株の出現を認めたのに対し、染色上の遺伝子置換により作製したHDΔ株及びAKFBR+HDΔ株では復帰変異株が全く認められなかった。また、L−リジン蓄積量は、復帰変異の出現しないHDΔ株及びAKFBR+HDΔ株の方が、ATCC13287株より多かった。配列表配列番号:1配列の長さ:20配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:2配列の長さ:20配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:3配列の長さ:1478配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:genomic DNA起源生物名:ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)株名:AJ12036配列の特徴特徴を表す記号:CDS存在位置:89..1423特徴を決定した方法:S配列配列番号:4配列の長さ:445配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:タンパク質配列配列番号:5配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:6配列の長さ:21配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:7配列の長さ:1643配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:genomic DNA起源生物名:コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株名:ATCC 13869配列配列番号:8配列の長さ:1643配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:genomic DNA起源生物名:コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株名:ATCC13869配列の特徴:mat peptide存在位置:217..1479特徴を決定した方法:S配列配列番号:9配列の長さ:421配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:タンパク質配列配列番号:10配列の長さ:1643配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:genomic DNA起源生物名:コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株名:ATCC13869配列の特徴:mat peptide存在位置:964..1479特徴を決定した方法:S配列配列番号:11配列の長さ:172配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:タンパク質配列配列番号:12配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:13配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:14配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:15配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:16配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:17配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:18配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列配列番号:19配列の長さ:23配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:合成DNA配列 N末端から23番目のロイシン残基のフェニルアラニン残基への置換、及びN末端から104番目のバリン残基のイソロイシン残基への置換のいずれかまたは両方のアミノ酸置換を有する、コリネバクテリウム・グルタミカムまたはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のホモセリンデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片を保持するコリネホルム細菌を好適な培地で培養し、該培養物中にL−リジンを生産蓄積せしめ、該培養物からL−リジンを採取することを特徴とするL−リジンの製造法。 前記コリネホルム細菌が、前記DNA断片が染色体上のホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子との相同組換えにより染色体DNAに組み込まれて形質転換されたコリネホルム細菌である、請求項1記載の製造法。 前記ホモセリンデヒドロゲナーゼが、配列番号1及び2のプライマーを用いたPCRによって増幅される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列において、N末端から23番目のロイシン残基のフェニルアラニン残基への置換、及びN末端から104番目のバリン残基のイソロイシン残基への置換のいずれかまたは両方のアミノ酸置換が導入された配列を有するタンパク質である、請求項1または2に記載の製造法。 前記ホモセリンデヒドロゲナーゼが、配列番号4のアミノ酸配列において、N末端から23番目のロイシン残基のフェニルアラニン残基への置換、及びN末端から104番目のバリン残基のイソロイシン残基への置換のいずれかまたは両方のアミノ酸置換が導入された配列を有するタンパク質である、請求項1または2に記載の製造法。 前記コリネホルム細菌が、さらに、コリネホルム細菌由来のアスパルトキナーゼ遺伝子とコリネホルム細菌細胞内で自律複製可能なベクターとを連結してなる組換えDNAを細胞内に保持する細菌である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造法。 前記アスパルトキナーゼ遺伝子が、コリネバクテリウム・グルタミカムまたはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のアスパルトキナーゼにおいて、αサブユニットではN末端から279番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に、βサブユニットではN末端から30番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に変化することにより、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が実質的に解除された変異型アスパルトキナーゼをコードする遺伝子である、請求項5に記載の製造法。 前記アスパルトキナーゼ遺伝子が、αサブユニットでは配列番号9のアミノ酸配列においてN末端から279番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に、βサブユニットでは配列番号11のアミノ酸配列においてN末端から30番目のアラニン残基がアラニン以外かつ酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基に変化することにより、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が実質的に解除された変異型アスパルトキナーゼをコードする遺伝子である、請求項6記載の製造法。


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