タイトル: | 特許公報(B2)_抗新生物剤としての酪酸、酪酸塩、および誘導体の生理学的に安定な組成物 |
出願番号: | 1995512663 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/16,A61K 31/205,A61K 31/19,A61P 17/02 |
フォーラー, ダグラス ブイ. JP 3971454 特許公報(B2) 20070615 1995512663 19941013 抗新生物剤としての酪酸、酪酸塩、および誘導体の生理学的に安定な組成物 ザ トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ 507076975 山本 秀策 100078282 フォーラー, ダグラス ブイ. US 08/142,908 19931029 20070905 A61K 31/16 20060101AFI20070816BHJP A61K 31/205 20060101ALI20070816BHJP A61K 31/19 20060101ALI20070816BHJP A61P 17/02 20060101ALI20070816BHJP JPA61K31/16A61K31/205A61K31/19A61P17/02 A61K 31/00 - 31/70 A61P 35/00 A61P 17/02 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) 特開昭58−013512(JP,A) Scheppach, W. et al., Gastroenterology, 1992年, vol.103, pp.51-56 Johnston, J.A. et al., Gastroenterology, 1992年, vol.103,no.5, pp.1709-1710 Bokiri, J. et al., Chemical Abstracts, 1990年, vol.112, no.3, p.438 Perrine, S.P., et al., Experientia, 1993年, Vol.49, No.2, pp.133-137 Chany, C., et al., Int. J. Cancer, 1982年, Vol.30, pp.489-493 Chany, C., et al., Int. J. Cancer, 1983年, Vol.32, pp.379-383 Lea, M., et al., Anticancer Research, 1993年, Vol.13, No.1, pp.145-150 Novogrodsky, A., et al., Cancer, 1983年, Vol.51, pp.9-14 Planchon, P., et al., In vivo, 1992年, Vol.6, pp.605-610 4 US1994011565 19941013 WO1995011699 19950504 1997507050 19970715 33 20011005 長部 喜幸 発明の背景1.発明の分野本発明は酪酸、酪酸塩および誘導体、ならびにこれらの組み合わせの生理学的に安定化合物を含む組成物を用いる新生物疾患を伴う患者の治療に関する。これらの組成物は新生物細胞の分化を開始または促進し、そして免疫系によりその認識ならびにクリアランスを促進する形質転換細胞上の両MHCおよび非MHCの抗原の表面発現を増強する。さらに、これらの組成物は多剤耐性現象の発症に関連するタンパク質の活性を低下させ、それによって細胞内濃度および従来の化学療法剤の有効性を増加させる。2.背景の説明今日世界で最も普遍的に恐れられている疾病は、ガンである。ガンはガン腫、白血病、腫瘍、および事実上あらゆる悪性腫瘍を包含する、あらゆる形態の新生物に対する専門外者の用語となっている。実際のガンは、悪性新生物の生物学的特徴を有する疾患としてより明確に定義され得る。新生物は比較的自律的増殖の組織であり、その増殖の自律性は、器官の個々の細胞の増殖を支配する「法則および調節」には従わない。すなわち、増殖はいくつかの点で促進される。新生物は良性あるいは悪性であり得る。良性は、細胞増殖がいくつかの点で制限され、個々の細胞は非浸潤および/または高度に分化され、そして退形成はほとんど認められないかあるいは全く認められない。対照的に悪性新生物は非被包性、浸潤性であり、そして分化が乏しく、かなり急速に増殖し、種々の程度で退形成的であり、そして身体の他の領域に移転する。理論上、特定の良性新生物は、早期形態の悪性腫瘍あるいは少なくとも悪性腫瘍への経路を通る段階であり得る。どのような多細胞体組織も細胞分裂の可能なものはガン化し得る。ガンまたは新生物細胞は、正常細胞とほぼ同様に挙動する。それらは分裂し、多数の要素から成り、栄養分を処理し、非新生物起源の特徴的機能を果たし、そしてそれらは死滅する。新生物形成はこれらのプロセスをより高いレベルで行い、身体の正常な機能に影響を及ぼすことによって健康への懸念をもたらす。例えば、新生物細胞は付近の器官および組織を損傷するか、または破壊する。健康な組織は身体の近傍領域に移転した新生物または新生物細胞によって空間および/または栄養物について完全に競合する。新生物はまた、さらに全身的な結果をもたらし得、免疫系の調節のような特定の組織の調節に影響する。新生物疾患の基本的治療法は驚く程変わらないままである。良性の過形成のような限定的腫瘍に対しては、しばしば手術が提唱され、そして疾患組織が取り除かれる。このアプローチは別の健康な個人に対しては一般的に好ましい。患者が浸潤的な手術手順に対して特に好ましい候補だと思われない場合、および/または新生物が1つの器官あるいは部位に限定されない(例えば、移転している場合)、薬剤療法または放射線療法がしばしば唯一の拠り所である。これらの治療法の背後にある根本的な考えは、全ての形態の新生物にある程度の細胞増殖の増加に関連しているというものである。放射線療法および化学療法は成功している。なぜなら、それらは単純にそして無差別に増加する細胞を死滅させるからである。問題は全ての増加する細胞が新生物ではないということである。ほとんどの細胞はいくつかの程度で増加し、そして全身の増殖速度の多様性は極めて大きい。新生物細胞はかなり急速に分裂しているが、通常この範囲のいずれかにある。従って、これらの治療法のそれぞれは特定の状況におい成功しているが、これらは通常、解決法とはならない。ガンの生物学についてのよく知られた1つの理論は、ガンは細胞発育の阻害を表す、というものである。ガン細胞は比較的未成熟な状態にとどまり、そして、その生存期間を通じ増殖および複製が可能であり継ける。対照的に、正常細胞はそれ以上増殖不可能な、例えば、機能性腸細胞、血液細胞あるいは肺細胞などに完全に成熟する。この正常なプロセスを分化と呼び、そしてガン細胞は、それゆえにおそらくガン遺伝子活性化の結果、全く分化していない細胞である。理論上、ガン細胞を完全に分化させ得る薬剤は、ガン細胞のさらなる増殖および患者への損傷を不可能にする(E.J.Seifertら、Am.J.Med.83:757-60,1987)。シトシンアラビノシドおよびレチノイン酸のような白血病細胞の分化をインビトロで促進し得る薬剤が、白血病細胞を正常かつ成熟と思われる細胞に変え、そして疾病の進行を遅らせるために最近患者に効果的に使用されている(L.Sachs,Cancer Res.47:1981-86,1987)。ホルボール(phorbal)ジエステル12-o-テトラデカノイルホルボール13-アセテート(TAP)は、急性リンパ性白血病のT細胞分化および慢性リンパ性白血病のB細胞分化の有効な誘導物質であることが明らかにされている(J.Cossmanら、N.Engl.J.Med.307:1251-54,1982)。天然に存在する腫瘍プロモーター、テレオシジンBはストレプトミセス(Streptomyces)の菌糸から単離されるインドール系アルカロイドであり、繊維芽細胞に対して同様な効果を有していることが明らかにされている(A.Bloch,Cancer Treatment Rep.68:199-205,1984)。不幸にも、これらの誘導物質の毒性、大量投与が必要なこと、そして所望しない危険な副作用を含む多くの問題により、その実用性が損なわれている(D.M.Paceら、Canad.J.Biochem.45:81-88,1967)。1つの分化誘導物質が、種々の形態のガンに対する治療剤、または薬として投与された(J.WatsonおよびM.B.Glasg,The Lancet 618:746-48,1933年4月8日)。酪酸およびクアニン(quanine)(珪藻土およびチョーク)の酪酸塩の粗調整物を用いて、頚部のガン腫、直腸ガン、胃ガン、または卵巣の乳頭腫を患う患者を治療した。それぞれの症例において、確定的な結果は決定し得なかった。治療は、外科的手法後、創傷にこれらの物質を含むゼラチンカプセルをパッキングする工程または単に物質を局部に適用する工程からなっていた。しかし、全ての症例において、手術と時々放射線療法(両者とも腫瘍に対して実質的な効果を有する)とを併用で外用薬を投与した。併用療法を考慮すると、これらの物質は有益な効果を有さなかった。さらに、使用した用量あるいは到達されたインビボでのレベルに関する情報は提供されず、一般的に有効性に関するいかなる決定値も必要とされなかった。観察されたいずれのポジティブな効果も悪性腫瘍に対する効果よりも、むしろ損傷を受けた組織を焼灼する酪酸の能力が原因となり得た。従って、酪酸が何等かの役割を果たしたのかどうかを決定することは不可能でありそして、事実上、この結果は、酪酸がポジティブな効果を全く有さないことを示唆する。さらに最近、酪酸の調製物は、Syrianハムスター細胞の新生物の形質転換をインビトロで抑制することが明らかにされた(J.Leavittら、Nature 271:262-65,1978)。これらの研究は、腫瘍発生に関連のある異常形態足場依存性の増殖、および促進されたタンパク質分解活性がそれぞれ腫瘍形成性に相関し、酪酸による治療後、すべて抑制されたことを示した。しかし、抗ガン剤としての酪酸の使用は実用的でなく、かつ臨床的使用に転用し得ない。酪酸は生理学的に不安定である。酪酸は約2分間の極めて短い血清中半減期を有し、そしてさらに重要なことに、どのような生物学的効果も検出可能に存在することが必要である。すなわち、治療を終了すると生物的効果が認められなくなることから、実際に酪酸を適用するのは極めて不適切である。ナトリウムブチレートは比較的無毒性の酪酸であるが同様に短い血清中半減期および生物学的効果を有し、ヒトの赤白血病細胞、慢性骨髄性白血病細胞、腸ガン細胞、唾液腺ガン細胞、膵液腺ガン細胞、膵腺ガン、メラノーマ細胞、卵巣腺ガン細胞、髄様甲状腺ガン細胞、バーキットリンパ腫細胞、星状細胞腫細胞、および神経芽細胞腫細胞の分化をインビトロで促進することが明らかにされている(K.N.Prasad,Life Sci.27:1351-58,1980)。分化は多くの異なる遺伝子産物および多くの異なる生物学的活性の発現あるいは抑制に密接に関連している。例えば、ナトリウムブチレートはNB細胞中のチロシンヒドロオシラーゼ、コリンアセチルトランスフェラーゼ、アセチルコリンステラーゼ、アデニレートシクラーゼ、ヒト結腸ガン腫細胞中のアデノシンキナーゼならびにアデノシンデアミナーゼ、グアノシン一リン酸キナーゼならびにアデノシン一リン酸キナーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼならびにヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびHeLa細胞中のシアリルトランスフェラーゼを含む、組織培養中の多くの哺乳動物の酵素の活性を増大することが明らかにされている。あるいは、他の酵素はナトリウムブチレートによって阻害される。活性が阻害される酵素としては、肝ガン細胞中のチロシントランスアミナーゼ、正常肝細胞中のヘキソキナーゼおよびグルコキナーゼ、および神経芽細胞腫細胞中の乳酸デヒドロゲナーおよびピルビン酸キナーゼが挙げられる。また、インビトロで例示されているナトリウムブチレートの他の特性は、ガングリオシドGMl合成の刺激、Hele細胞上のβアドレナリンレセプターおよびコレラトキシンレセプターの発現誘導、ゴナドトロピン生産の増大、およびプロスタグランジン合成の増大を含有する。ナトリウムブチレートが腫瘍の分化を促進し、そして増殖を抑制する機構については十分に理解されていないが、ナトリウムブチレートはcAMPの細胞内レベルを増大させ、ヒストンのアセチル化を阻害し、そしてゲノムDNAのメチル化を阻害する。多くの場合この分化はまた、腫瘍中で活性化されたガン遺伝子のダウンレギュレーションを伴うが、いずれの単一かつ特異的な原因と効果との関係についてはまだ確立されていない。酪酸を使った多くの研究が、HL-60細胞、白血病由来のヒト細胞株、および一般的に使用される骨髄前駆細胞株で行われている。これらの細胞は約0.5mMの酪酸中で容易に分化し、そして顆粒球細胞分化の調節および細胞代謝の研究に使われている(M.C.Hoesslyら、Cancer Res.49:3594-97,1989)。処置された細胞は、大量の顆粒球細胞の蓄積および核の凝縮のような表現型の変化を示す(G.Roveraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:2779-82,1979)。さらに、myb遺伝子の転写は、顆粒球HL-60細胞において著しく低下する。ナトリウムブチレートは、レチノイン酸ならびに他のレチノイド類、ある種の植物レクチン、ホルボールエステル、およびシトシンアラビノシドと同様にインビトロでは明らかに効果的であるが、インビボでの使用については多くの理由から成功していないか、あるいは開発されていない。有意な効果を生じるためには相当に多量の物質が必要であった。これらのレベルをインビボで達成するのは困難であるか、あるいは有毒であり、そして副作用を生じ得る。さらに、酪酸のようなある種の薬剤は、もともとかなり十分な耐溶性があるが、ナトリウム塩では認められなかった。それ程大量の塩が必要であることから、ナトリウム過負荷を原因とする主要器官の損傷が動物研究で観察された。最近の研究により、分化誘導物質の作用を若干明確にし得る、ということが示されている。フレンド白血病細胞をジメチルスルホキシド(DMSO)あるいはヒポキサンチンで処理すると、分化を刺激し、そしてc-myc発現をダウンレギュレートすることが明らかにされた(E.V.ProchownikおよびJ.Kukowska,Nature 322:848-850,1986)。遺伝子組換えにより生産されたc-mycを、c-mycレベルの低下を阻害するために用いると、これらの細胞の分化は完全に、あるいは部分的に阻害された。これは、少なくとも分化の部分的制御がある種のガン遺伝子の発現時に生じ得ることを示す。さらに他者により決定されているように、酪酸塩は多くの細胞遺伝子の発現に影響する。酪酸は、直接的制御である細胞酵素の発現をダウンレギュレーションあるいはアップレギュレーションすることにより、単に間接的に分化を刺激し得る。これはまだ、単なる推論であり、そして作用の確定的機構はまだ決定されていない。悪性腫瘍に対する現在の治療は、本質的に手術、放射線療法あるいは化学療法に限定され、その全てが比較的特異性に欠ける。腫瘍細胞に直接的を絞った、より新しいアプローチが必要とされている。正常細胞から腫瘍細胞を識別する著しい能力を有する細胞免疫系は、治療操作に理想的に適している。細胞免疫系は、免疫担当動物の、移植された腫瘍あるいは接種された腫瘍ウイルスの拒絶を可能にするという多くの証拠がある。関連する免疫機構に対する我々の理解は限られているが、ガンワクチンあるいはリンホカインの投与による腫瘍に対する免疫反応の管理された操作は実行可能である。それでもなお、多くの腫瘍は細胞免疫系防御を容易に免れ得る。宿主内の細胞免疫系による監視から腫瘍細胞が免れる主な機構は、主要組織適合性複合体(MHC)抗原発現の変化によるものである。MHC発現のダウンレギュレーションは腸、神経芽細胞腫および小細胞肺腫瘍においては極めて一般的である。これらの腫瘍は通常MHC発現をダウンレギュレーションをすることが明らかにされているガン遺伝子の変異形態を発現する。ダウンレギュレーションという用語は通常使用される用語であるが、正確ではない。腫瘍は、未成熟な未分化状態であるため、成熟した正常細胞のようにMHC抗原を発現できない。細胞傷害性T細胞(CTL)およびナチュラルキラー細胞(NK)を含有する細胞免疫系の効果作用は、身体の腫瘍の排除において中心的役割を果たす。腫瘍細胞に対してCTL応答を生じさせる能力は、明らかに腫瘍を拒絶する動物の能力に関連する。腫瘍に対するCTLは、標的抗原あるいは抗原フラグメントに制限されるMHCである。標的抗原はCTL自体に見い出されるMHC抗原と同一のあるいは同系統のMHC抗原に結合した腫瘍細胞表面上で認識されなければならない。HLAおよびH-2抗原はそれぞれヒトおよびマウスMHC遺伝子複合体によりコードされる細胞表面糖タンパク質である。腫瘍あるいはウイルス抗原に結合した同系のMHCクラスI抗原が必要なことが二元的な制限として知られている。MHC発現はまた、細胞免疫系のナチュラルキラー作用による腫瘍識別のレギュレーターであると思われるが、その正確な役割については議論されている。CTL標的細胞識別に対する制限要素としての重要な役割のため、MHCクラスI抗原について多くの生化学的分析が行われている。これらの抗原は、ヒトではHLA-A、-B、および-C、マウスではH-2K、DおよびLと呼ばれ、それぞれ多様性重鎖および非共有結合、非多様性軽鎖を含有する、細胞表面糖タンパク質であり、βミクログロブリンと呼ばれる。自己(同系のMHC)+腫瘍抗原に関するCTLの一部における顕著な二重特異性は、動物内で形質転換細胞を同定し、そして排除することに理想的に適したものにする。しかし、MHC発現の異常な調節は、ヒトの腫瘍において頻繁に発生することから、これらの2つの必須な認識要素のうちの1つを除去することにより、腫瘍細胞は細胞免疫の監視を回避し得る。ガン遺伝子および腫瘍ウイルスの発現により誘導される細胞MHC発現の主な変化により、このような変化が、細胞免疫系の細胞傷害性に対して生物学的に重要な耐性を生じることを明らかにしている。ウイルス誘導性腫瘍抗原の認識については細胞免疫系によって広範に調べられている(D.C Flyerら、J.Immunol.135:2287-92,1985)。サルコーマウイルス誘導性腫瘍抗原に対するCTLはクラスIに制限されている。腫瘍標的抗原の認識は適切な同系MHC遺伝子産物と間連しているはずである。重要なことに、これらのウイルスによって誘導された腫瘍は感染細胞のMHCクラスI発現の直接調節によって自身の免疫認識を制御する(R.T Maziarzら、Mol.Immunol.27:135-42,1990)。最近の実験により、ガン遺伝子により形質転換された細胞を包含する多くの腫瘍細胞において、MHCタンパク質発現のレベルが感染腫瘍ウイルスによって相当著しくダウンレギュレートされ、抗原認識のために細胞表面上の同系のMHC抗原とウイルス抗原との両方を必要とするCTL、あるいはCTL株によっては認識され得ないことが明らかにされている。MHC制限、ウイルス特異性CTLと同種MHC決定因子に対するCTLとの両方による腫瘍細胞のCTL介在溶解のレベルは、腫瘍細胞表面上のMHCクラスI抗原発現のレベルによって直接的に影響を受ける。腫瘍細胞表面上のMHC抗原を誘導すると、それらは再度動物免疫系によって認識され、そして破壊され得る。ヒト赤白血病細胞株K562は、ほとんどあるいは全くMHCクラスIを発現しないが、ヒト細胞傷害性Tリンパ球によって認識されない。インターフェロン、ウイルス、ナトリウムブチレート、あるいはトランスフェクションを用いたこれらの腫瘍細胞のMHCクラスI抗原の発現誘導により、K562の特異的MHCクラスI抗原の新しい表面発現は、これらの腫瘍細胞に体液性および細胞性両方の免疫認識に対する感受性を与える(R.T.Maziarzら、Cell.Immunol.130:329-38,1990)。このことは、そのような腫瘍の選択的生存の利点に対する内因性MHC抗原抑制の重要性を示している。MHCクラスIに加えて、他の抗原もまた、酪酸の存在下で刺激され、あるいはその発現が増大する。米国特許第4,822,821号、同第4,997,815号、同第5,025,029号および同第5,216,004号は(その開示内容は参考として具体的に援用されている)、鎌形赤血球およびサリドマイド胎児の赤血球において酪酸がγ-グロビン合成を刺激することを示している。酪酸によって刺激された他の抗原は、成熟細胞表面上に通常存在するが、しばしば腫瘍細胞から欠落する。これらのいくつかはIL-2レセプター、EGFレセプターあるいはCEA抗原と同様に、ガン免疫治療のための標的として使用されるために現在研究されている。例えば、ジフテリア毒素に結合し、そしてIL-2RあるいはEGF-Rに対するモノクローナル抗体が開発され、そして現在試験されている。IL-2R発現レベルは、腫瘍がこれらの免疫毒性治療に感受性があるかどうかを決定する。IL-2Rを発現しない細胞は抵抗性である。CEAに対するワクチンおよび毒素抗体が同様に開発され、そして検討されている。IL-2Rレセプター(IL-2R)およびそのリガンドは多くの造血性悪性腫瘍の生物療法的アプローチにおいて有用な手段である。IL-2Rは最初、抗Tac(「抗T細胞活性化」)モノクローナル抗体に結合した55kd表面ペプチド、p55として同定された。後に75kdペプチド、p75および64kdペプチド、p64が機能性IL-2R複合体中で同定され、以来高親和性のIL-2Rの必須成分であることが示されている。最も最近のIL-2Rの機能分析はレセプターは3種の異なるイソ型:IL-2に対して高親和性(解離定数(Kd)10-11M)、中程度親和性(Kd10-9M)、および低親和性(Kd)10-8M)で存在することを示している。低親和性のレセプターはp55のみからなり、そして結合リガンドをインターナリゼーションしないことから、IL-2R介在シグナル伝達において有効ではない。高親和性のレセプターはヘテロ三量体(heterotrimer)(p55,p75,p64)であり、効果的なリガンドのインターナリゼーションをし得る。中程度親和性のレセプターはヘテロ二量体(heterodimer)p55/p75あるいはp75/p64から成り得る。前者は結合可能であるが、リガンドをインターナリゼーションしない。それゆえこのことは、p64成分がIL-2のレセプター介在インターナリゼーションに対して不可欠であることを示す。機能的高親和性のレセプターは成人T細胞白血病細胞に結合したHTLV-1、ならびにいく種かの慢性リンパ球白血病、急性リンパ芽球種白血病および皮膚T細胞リンパ腫(Sezary)細胞上で、I125-IL-2を用いたScatchard分析により見い出される。リガンドに対する高親和性のIL-2Rのインターナリゼーション能力のため、細胞内毒素を送達するための導入として、増殖因子レセプターリガンド結合の概念が展開している。IL-2R作動性融合毒素は遺伝子的に構築され、そしてジフテリア毒素遺伝子の膜-トランスロケーションドメインおよびタンパク質合成阻害ドメインの完全長IL-2R遺伝子への融合物から成り、選択的に高親和性のIL-2R保有細胞を標的とし、そして死滅させる能力を有する遺伝子組換えタンパク質、DAB486IL-2を生産する。高親和性のIL-2レセプターを有する細胞に出会うと、組換えタンパク質はレセプター介在エンドサイトーシスによるIL-2R特異性結合およびインターナリゼーションを受ける。プロセッシングは酸性エンドゾーム中で起こり、そして毒素のAフラグメントはサイトゾルを通過する。ここで、Aフラグメントが伸長因子-2のADPリボシル化によってタンパク質の合成を阻害し、最終的に細胞死を引き起こす。毒素効果は過剰のIL-2、IL-2Rに対する過剰抗体あるいはエンドゾームの酸性化を妨げるクロロキンによって防ぎ得る。第2世代IL-2融合毒素はDAB389-IL-2と呼ばれ、DAB486のカルボキシ末端の97個のアミノ酸が欠失した状態で作製されて、IL-2Rに対して高親和性を有するより短いタンパク質を生じる。DAB486-IL-2およびDAB389-IL-2の両方を用いた樹立細胞株の毒素死滅実験によると、高親和性のレセプターを有する患者由来の新生物細胞は一様に中毒化した(2.5×10-10M未満の最小抑制濃度50すなわちMIC50)が、これらの高親和性のIL-2レセプターを有さない腫瘍細胞は影響を受けない。誘導剤による毒素不感受性IL-2Rネガティブ細胞の治療を含む前研究はPHA(植物性血球凝集素;10μg/ml)およびブリオスタチン(bryostatin)(1×10-7M)の場合、TAC抗体により測定されるIL-2Rの誘導は、毒素感受性ATL細胞について報告されているそれと類似したMIC50の融合毒素による中毒化と関連がある。これらの融合毒素を用いた臨床研究はすでに行われており、そして皮膚T細胞リンパ腫患者の44%、低度および中度非ホジキンリンパ腫患者の28%、そして難治性ホジキン病患者の15%において、臨床的に重要な反応が報告されている。反応を示した全ての患者は、CD25(TAC)染色によって測定された、IL-2レセプター発現腫瘍を有していた。多くの異なる造血性悪性腫瘍上でp55(TAC)ペプチドが発現するが、HTLV-1関連成人T細胞白血病細胞以外は、ほとんど高親和性レセプターのイソ型を発現する。IL-2Rを標的とする融合毒素は高親和性のIL-2Rを発現する細胞に対してのみ特異的細胞傷害性を有することから、その治療能力は高親和性レセプターのイソ型が見い出されるそれらの疾患に限定される。高親和性のIL-2の生理学的誘導物質を開発し、非発現あるいは低発現腫瘍を高親和性のIL-2Rポジティブ毒素感受性状態に変換することによってIL-2レセプターを標的とする融合毒素タンパク質の治療能力を拡大することは大変有益である。mdr-1遺伝子にコードされたP糖タンパク質(Pgp)は、腫瘍の化学療法剤に対する多剤耐性を主に担うタンパク質である。この分子は、細胞膜のポンプとして機能すると思われ、このポンプは、他の物質の中からある化学療法剤を細胞外にくみ出し、細胞内濃度を減少させ、そして活性を制限する。Pgp発現多剤耐性SW620細胞株をナトリウムブチレートで処理した結果、Pgp機能に活発な干渉が起きた。SW620ヒト結腸ガン細胞のナトリウムブチレート処理後、化学療法剤のビンブラスチン(vinblastine)、アドリアマイシン(adriamycin)、およびアクチノマイシンD(actinomycin D)の細胞内蓄積は10倍に増加した。ナトリウムブチレートは、Pgpのレベルの増加に伴ってPgpのリン酸化を阻害し、そしてこの薬剤耐性タンパク質の機能を遮断した。転換大腸炎として知られる状態は、便流を外科的に転換した後、大腸部分にしばしば発達する。これは、除去された部分を再吻合手術によって結合しなければ、いつまでも続く。この疾患は、特発性炎症腸疾患の出血によく似た炎症した慢性粘膜からの出血より特徴付けられ、最終的に狭窄を形成し得る。それは、結腸上皮の管腔内の栄養不足から生じる炎症状態を示し得るので、おそらく欠乏栄養物の短鎖脂肪酸を使用して効果的に処理され得る(J.M.Harigら、N.Engl.J.Med.320:23-28、1989)。直腸内酪酸は、一致した再現性のある大腸炎をマウスに引き起こす。観察される応答の重度は、利用される酪酸の濃度に比例した。酪酸の大腸炎生成作用は、低pH単独、または中和pHまたはアルカリpHでの酪酸塩アニオンの存在では再現され得ない(D.M.McCaffertyおよびI.J.Zeitlin、Int.J.Tissue React.11:165-68、1989)。しかし、より低い濃度では、酪酸はいくつかの有益な効果を有す。80mM酢酸塩、30mMプロピオン酸塩、および40mM酪酸塩を含有する組成物を、直腸潅注に1日2回使用した。この組成物は、遠位大腸炎の10人の患者のうち9人で改善を誘導した(R.I.Breuerら、Int.J.Colorectal Dis.6:127-32、1991)。別の10人の患者の研究で、短鎖脂肪酸潅注は、他の従来の処置形態に応答しない患者の転換大腸炎による出血を改善することがさらに分かった。出血の組織損傷度は減少し、血液の放出は停止し、そして内視鏡検査によるスコアは下がった。偽薬では、これら全てのパラメーターは変化しなかった(W.Scheppachら、Gastroenterology 103:1709-10、1992)。発明の要旨本発明は、現行の戦略および設計に関連した問題ならびに不利益を克服し、そして新生物ならびに他の疾患および障害の予防および処置のための新規組成物および新規方法を提供する。本発明の1実施態様は、酪酸塩、酪酸誘導体、およびその組み合わせを含む生理学的に安定でかつ安全な化合物を含有する組成物に関する。酪酸誘導体は、酪酸部分に一部基づく化合物であり、そして酪酸類似体、その同族体、および次の隣接した同族体(next adjacent homologs)、ならびに任意の前記のものに基づく化合物を包含する。これらの組成物は、白血病、リンパ腫、肉腫、神経細胞腫瘍、ガン、精上皮腫、メラノーマ、神経芽腫、混合細胞腫瘍、生殖細胞腫瘍、未分化腫瘍、転移性新生物、感染による新生物、および他の悪性腫のようなヒト新生物障害の処置に有益である。本発明の別の実施態様は、上記の組成物を投与することにより患者の新生物細胞の分化を誘導する方法に関する。分化した細胞は、成長速度が減少し、移転せず、最終的には死ぬので、その結果新生物を除去する。本発明の組成物は、全身投与または局所投与されて、望ましい結果を生じ得る。本発明の別の実施態様は、新生物形成状態の発達を妨げる方法に関する。本発明の組成物は、遺伝的に素因のある患者または新生物発達の可能性を増大させる事象に曝された患者に投与され得る。本発明の別の実施態様は、新生物細胞の免疫反応性MHC分子の発現を増強する方法に関する。MHC抗原を増強して発現する細胞は、宿主免疫系によってよりよく同定および認識され、そして有効に除去される。これらの抗原の発現の増強により、多くの新生物細胞が免疫系監視から逃れる主な経路が克服される。本発明の別の実施態様は、腫瘍特異的抗原およびレセプター抗原(新生物細胞のインターロイキン2レセプターを包含する)のような細胞表面非MHC抗原の発現を誘導する方法に関する。このことは従来の細胞致死技術によって選択的に疾患細胞を標的し得、そして対内から疾患細胞を取り除く宿主免疫系の能力を増強する。本発明の別の実施態様は、従来の化学療法を用いた新生物障害の処置でしばしば生じる多剤耐性のプロセスを阻害するために、これらの組成物を利用することに関する。本発明の組成物は、化学療法剤が個々の細胞からくみ出される機構を遮断するように働き、それによって蓄積を増加させそして効果を増大させる。本発明の別の実施態様は、創傷治癒に有益な、酪酸塩および誘導体またはその混合物の生理学的に安定でかつ安全な化合物を包含する組成物および方法に関する。これらの組成物およびそれぞれの組成物は、損傷組織周辺域の細胞分化、組成再生、およびおそらく血管形成を刺激する。本発明の別の実施態様は、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびクローン病を包含する胃腸障害を処置または予防するための本発明の化合物を含む組成物および方法に関する。本発明の別の実施態様は、これらのキットを患者の形質転換細胞の発ガン性または悪性の可能性を特徴づけるために利用する診断用キットおよび方法に関する。本発明の他の実施態様および有利性は、一部は以下の記載に述べられ、一部はこの記載から明らかであり、または本発明の実施から理解され得る。図面の説明図1 アルギニンブチレートで処理した新生物細胞株を細胞成長割合に対してプロットした用量応答曲線。図2 アルギニンブチレートの成長阻害を示す成長応答曲線のデータ。図3 イソブチルアミドで処理した新生物細胞株を細胞成長割合に対してプロットした用量応答曲線。図4 モノブチリンで処理した新生物細胞株を細胞成長割合に対してプロットした用量応答曲線。図5 モノブチリンの成長阻害を示す成長応答曲線のデータ。図6 907、アルギニンブチレート、イソブチルアミド、または901で処理したK562細胞の表面MHC抗原発現のレベルのFACS解析。図7 γ-インターフェロン、イソブチルアミド、またはモノブチリンで処理したK562細胞の表面MHC抗原発現のレベルのFACS解析。発明の説明本明細書に具体的に示され、広く記述されるように、本発明は化合物、組成物、および酪酸、酪酸塩または誘導体、あるいはそれらの組み合わせの生理学的に安定な化合物を含有する診断キットを包含する。本発明は、患者の新生物および胃腸障害の予防または処置のためのこれらの化合物の使用法、ならびに創傷治癒および形質転換細胞の発ガン性あるいは悪性の診断に関する使用も包含する。本発明の1つの実施態様は、酪酸、酪酸塩、酪酸誘導体およびそれらの組み合わせの生理学的に安定で安全な化合物を含有する組成物に関する。誘導体は、酪酸部分の一部に基づく化合物を含み、さらに類似体、同族体(次の隣接同族体を包含する)、および先の化合物に基づく化合物を包含する。これらの化合物の生理学的に安定な形態は、所望する効果を有する前の患者への導入の際に、分解せず、あるいはそうでない場合無効にならない。安全な化合物は、要求される投与量において非毒性で、逆反応あるいは副作用を引き起こさず、さらに十分に耐性である化合物である。ブタン酸とも称される酪酸は、4炭素の脂肪酸である。生理学的安定性は、いくらかのパラメーター(例えば、化合物あるいはその化合物由来の代謝生成物の半減期)から、あるいは患者に対して観測される効果の持続時間により測定され得る。例えば、酪酸のナトリウム塩であるナトリウムブチレートは、約2分の血清半減期で測定されるような効果的な生理学的安定性を有する。これはあまりにも短くて製剤として実用的ではない。生理学的に安定な酪酸、酪酸塩、および誘導体は、15分より長い、好ましくは1時間より長い、より好ましくは2時間より長い、およびよりさらに好ましくは4時間より長いインビボ半減期を有する。化合物はこの基準では安定だが、その生理学的安定性は、生物学的効果(例えば、患者の症候の改善、新生物細胞の大きさ、容積、あるいは数の減少、あるいは遺伝子発現の変化)の持続時間の観察によっても測定され得る。症候は、痛み、疲労、出血、熱、体重の損失、寝汗、嘔吐、腸習慣の変化、腫脹、あるいは精神性失見当を包含し得る。その発現が変化し得る遺伝子は、レセプター遺伝子(例えば、インターロイキン−2レセプターおよび上皮成長因子レセプター)、および酵素、転写あるいは複製因子、多剤耐性タンパク質(例えば、Pgpタンパク質複合体)、腫瘍特異性抗原、あるいはMHC抗原をコードする遺伝子を包含する。好ましくは、本発明の化合物の安定性は、約15分より長いインビボ半減期、約15分より長い血清半減期、あるいは処置が停止または化合物の血清レベルが半分より多く減少した後の15分より長く続く生物学的効果として決定される。例えば、アルギニンブチレートは、約15分の血清半減期を有し、投与後1時間以内に、そしてしばしば観測されるパラメーターに依存して4時間より長い間、ブチレート感応遺伝子の発現の増加のような生物学的効果を生じる。イソブチルアミドは、経口投与後の血漿中に現れ、投与された用量に依存して6.5〜10.5時間の間の血清半減期を有する。生物学的効果は24時間をこえて持続し得る。生理学的に安定な化合物は、新しく創製された化合物、あるいは一般的に本明細書に記載した活性を有するとみなされていないかまたは活性について試験されていない既知化合物であり得る。新規化合物は有機的に合成されるか、あるいは本明細書に提供される開示および/あるいは当業者の知識を用いて創製される。技術(例えば、合理的な薬物設計)は、生物学的に活性であり、かつ生理学的に安定であるこれらの新規化合物の創製に使用され得る。合理的な薬物設計において、物質の化学基または成分間の相互関係あるいは異なる成分の結合間の相互作用が強調される。例えば、1つの成分が酪酸あるいは酪酸誘導体であり得、そしてその結合相手が塩、金属、ハロゲン、あるいは他の中和物質または安定化物質であり得る。成分の分子モデルは、単一化合物の成分間および異なる化合物間の反応のエネルギー学を観察するために創製される。幾何学的および代数学的アプローチの融和により、提案される相互作用の定量的評価を可能にする。本知識により、ある特性を所有し、他は所有しないように設計される目的の化合物が構築される。あるいは、生理学的に安定な化合物は、酪酸の生物学的に活性な領域および他の化合物の生理学的に安定な領域の知識を手引きとして、一そろいの既知化合物から同定され得る。組成物における有望な使用について同定された化合物は、次いで組織培養において、動物において、および可能ならば人体において抗新生物活性および生理学的安定性が試験される。本明細書に記載の新規化合物を創製するか、あるいは既知化合物を再創製あるいは再分類するかいずれにせよ、化学および物理学のいくつかの基本的基準が適用される。生理学的に安定な化合物は、通常最低自由エネルギー状態で存在する。化合物は2つのやや任意の変化の1つによりその状態に到達し得る。第1は、固体から液体(融解あるいは溶解)または気体(昇華)、気体から液体(凝縮)または固体、あるいは液体から固体(凍結あるいは固化)または気体(蒸発)の物理状態の変化による。化学状態は、化合物の基本分子構造を変化させること、あるいは、時折、単一の化学基を変化させることにより操作され得る。物理状態の有用な変化は、液体の噴霧あるいは気体への変換あるいは気体の液体または固体への変換を包含する。このような物理変換は、より効果的な投与経路を単に提供し得る。化学状態を変化する第2の方法は、化学反応による(例えば、燃焼、酸化、分解、および原子団を変化あるいは修飾する任意の反応)。化合物のインビボ安定性を増加させる化学反応は少なくとも2つのカテゴリーに分類され得、このカテゴリーは、他の化合物との反応により化合物の分子組成を変化させるか、あるいは化合物の原子構造を変化させるかのいずれかである。1つあるいは他を安定化するための2つあるいはそれ以上の化合物の混合は、必ずしも新しくはない。例えば、酸はpHを中和するために塩基と常規的に混合される。塩はイオンポテンシャルを減少させるためにイオンと混合される。しかし、他の混合は、より新規であり得る。例えば、化合物の安定性は、所望する化合物とポリエチレングリコール、他のポリマー、あるいは関連する物質との混合により増加し得ることが示された。これは驚くべき成功であると示された。時折り、相乗効果が、混合が新規化合物の創製をもたらす混合化合物間に起こり得る。これはアルギニンと酪酸との組み合わせに起こり得た。新しいピークが混合物のHPLCプロフィルに現れ、これはどの成分の個々のプロフィルにも存在しなかった。このピークは、観測される生物学的効果の原因である、これまで知られていなかった新規な異なる化合物であり得る。化合物の化学構造は、例えば、酸をアルデヒド(ブチルアルデヒド)またはケトン(ブテロン)に変換する、メチル(メチル−ブチル)、エチル(エチル−ブチル)、プロピル、ブチル、あるいはフェニル基を付加あるいは除去する、化合物のイオン性を変化させる(例えば、極性基(ベンジルアセトン;CH3COCH2COC6H5)あるいは非極性基(ネオペンチルブチレート;CH3CH2CH2COOCH2C(CH3)3)の付加あるいは置換による)、あるいは炭素原子の相対的配置を変化させる(例えば、位置異性体あるいは立体異性体の形成)ことにより変化させ得る。位置異性体は、それらの空間的配置(化学基の絶対配置のような)においてのみ異なる。酪酸の位置異性体はイソ酪酸を包含する。酪酸誘導体の位置異性体は、ブチルアミン(CH3CH2CHCH3NH2)およびsec−ブチルホスホン酸(CH3CH2CHCH3PO3H2)を包含する。立体異性体は、立体配置(シス−トランス幾何異性体のような)においてのみ異なる。例えば、ブタジエンの立体配置異性体は、シスおよびトランスブタジエンを共に包含する。酪酸の同族体の立体配置異性体は、チグリン酸およびアンゲリカ酸(CH3CHCCH3COOH)を包含する。多くの異化酵素は立体特異的であることが公知であるので、酪酸の異化における制限段階がこのような異化酵素における活性を包含する場合、単に立体異性体を創製することにより、所望する活性は保持され得、そして安定性が増加され得る。これらの2つの反応カテゴリーはある程度重複するが、各々は出発物質と異なる化合物を生成し得るので、このような化合物は、多少異なる特性を有し得、宿主患者の内因性酵素により異なる様式で作用され得る。目標は、非安定性の原因である領域を除去するかあるいは変化させること、あるいは化学物質そのものに安定性を付加することにより、化合物の活性領域を安定化あるいは増強することである。酪酸塩はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、およびリチウムを包含するが、有効な濃度においてナトリウムは体液蓄積を生じる傾向があり、組織破壊が起こり得るので、ナトリウムブチレートは一般的に好ましくない塩である。本発明の他の塩は、この特性を有さず、あるいは目的の化合物は、低用量で投与されて、それによりナトリウムの有害な効果を最小にし得る。生理学的安定性を増加するための、酪酸の静電的にあるいは共有結合的に結合し得る試薬は、アミノ酸(例えば、アルギニン(アルギニンブチレート;ArgB)、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、あるいはリジン)、核酸(ヌクレオシドあるいはヌクレオチドを包含する)、あるいは置換基(例えば、炭水化物、糖類、脂質、脂肪酸、タンパク質、あるいはタンパク質フラグメント)を包含する。これらの塩と酪酸および酪酸誘導体との組み合わせもまた、この組み合わせの相互作用から有用な新しい化合物を生成し得る。酪酸誘導体は、酪酸部分の一部に基づき、そして類似体、同族体(次の隣接同族体を包含する)、および先のいずれかに基づく化合物を包含する。酪酸類似体は構造および機能類似体を共に包含する。機能類似体は、酪酸の活性に機能的に関連する化合物である。構造類似体は、炭素原子の配置あるいは数において酪酸と関連する化合物である。関連化合物は、置換および/あるいは付加により修飾された化合物を包含する。イソブチルアミドは酪酸の構造類似体であり、4つの炭素、1つのアミド基からなり、そして1時間より長い血清半減期で生理学的に安定であり、かつ抗新生物剤として有効である。4炭素酪酸類似体および同族体の他の例は、イソクロトン酸(CH3CHCHCOOH)、クロトンアルデヒド(CH3CHCHCHO)、イソ酪酸(メチル−プロピオン酸あるいはメチル−プロパン酸)、テトラゾール(CN4H2)、コハク酸(HOOC-CH2-CH2-COOH)、コハク酸アミド(HOOC-CH2-CH2-CONH2)、コハク酸ジアミド(H2NOC-CH2-CH2-CONH2)、4−オキソーブタン酸(COH-CH2-CH2-COOH)、フマル酸(HOOC-CH=CH-COOH)、フマル酸モノアミド(フマルアミド;HOOC-CH=CH-CONH2)およびジアミド(H2NOC-CH=CH-CONH2)、および無水酪酸((CH3CH2CH2CO)2O)を包含する。酪酸の次の隣接同族体は、酪酸より1つ多いあるいは1つ少ない炭素原子を有する化合物である。これらの化合物は3つあるいは5つの炭素を有する。抗新生物剤として有用であり得る次の隣接同族体の例は、チグリン酸、イソ吉草酸((CH3)2CHCH2COOH)、ブチルアミド、3−クロロプロピオン酸、5−(2−クロロエチル)−テトラゾール、アラニン(CH3-CH(NH2)-COOH)、β−クロロ−D−アラニンヒドロクロリドおよびβ−クロロ−L−アラニンヒドロクロリド、プロピルアミドスルホネート(CH3-CH2-CHNH2-SO3H)、プロピル−スルフェート(CH3-CH2-CH2-SO2)、およびヘキサフルオロ−プロピオン酸(CF3-CF2-COOF)を包含する。酪酸誘導体は、基礎あるいはコア構造が酪酸であり、共有結合性修飾を通して炭素原子数が4より有意に多い化合物(例えば、ケイ皮酸(C6H5-CH=CH-COOH;あるいは3−フェニル−2−プロペン酸)、α−メチルケイ皮酸、ヒドロ−ケイ皮酸、3−および4−フェニルブチレート、ジ−、トリ−およびイソ−フェニルブチレート、フェノキシ酢酸、チオ−フェノキシ酢酸、ブチルアニリド、イソアミル−ブチレート、およびベンゾイルアセトン)を包含する。これらの化合物、あるいはこれらの誘導体または塩は、インビトロで生理学的に安定であることが示され得るか、あるいは示されており、抗新生物剤としてたぶん有効である。化合物はまた、組み合わせで使用される場合、相乗効果を生じ得る。生理学的に安定な酪酸誘導体はまた、酪酸部分の一部に基づく化合物として存在し得るか、あるいは創製され得る。酪酸誘導体は、化合物イソバリン、バリン、メチオニン、およびスレオニン、ならびに、例えば、元素フッ素(F)、臭素(Br)、塩素(Cl)、あるいはヨウ素(I)を使用して1回あるいはそれ以上の回数化合物をハロゲン化することにより修飾された化合物を包含する。ハロゲン化誘導体は、クロロプロピオン酸(CH3-CH2-COCl)、クロロ−エチル−テトラゾール(CN4H2-CH2-CH2Cl)、クロロアラニン(CH3-CHNH2-COCl)、ブチリル−クロリド(CH3CH2CH2COCl)、およびヘプタフルオロ酪酸(CF3-CF2-CF2-COOF)を包含する。誘導体は、スルホキシド基(ブチルスルホネート;CH3-CH2-CH2-COSO3)、アミド基(ブチルアミド;CH3-CH2-CH2-CONH2)、アゾ基(-N=N-)、チオカルボニル基(-C=S)、キノイド基を付加すること、あるいは環構造(ケイ皮酸;C6H5-CH=CH-COOH)を付加あるいは創製することによっても創製され得る。誘導体は、エステル化、水素化(ブタノール、CH3-CH2-CH2-CHOH;ビアセチレン、CHCCCH)、酸化、水和、アルキル化、環化(テトラゾール)、あるいはリン(P)(例えば、リン酸基(PO4)あるいはリン酸(ブチルホスホン酸))、硫黄(S)(例えば、スルフヒドリル基(-SH)、亜硫酸基(-SO3H)あるいは硫酸基(SO4))、酸素(O)(例えば、ヒドロキシド(OH)、ジオキシド(O2)あるいはトリオキシド(O3))、あるいは窒素(N)(例えば、アミド(NH2;ブチルアミンおよびピペリジン酸(H2NCH2CH2CH2COOH)あるいはアミノ(NH3)基))を含有する化学基の付加によっても形成される。酪酸誘導体の例は、アミノ酪酸(CH3-CH2-CH2-CONH2;米国特許第2,572,809号に記載のとおり調製)、イソブチルアミド(CH3-CH(CH3)-CONH2)、亜硝酸n−ブチル(CH3-CH2-CH2-CONO;米国特許第2,739,166号に記載のとおり調製)、ブチルアミドあるいはn−酪酸モノアミド(CH3-CH2-CH2-CONH2)、ブチロニトリル(CH3-CH2-CH2-CN;米国特許第3,062,883号に記載のとおり調製)、α−あるいはβ−アミノ−n−酪酸、コハク酸アミドあるいはコハク酸モノアミド(HOOC-CH2-CH2-CONH3)あるいはジアミド(NH3OC-CH2-CH2-CONH3)、ブチルホスホン酸(CH3CH2CH2CH2PO3O2)、ブチルアルデヒド(CH3-CH2-CH2-COH)、フェニル−ブチレート(C6H5-CH2-CH2-CH2-COOH)、ブタナールオキシアミン(CH3CH2CH2CHNOH)、L−アミン−n−酪酸(LAB),およびモノブチリン(CH2OH-CHOH-CH2O-COCH2-CH2-CH3)およびジ−、トリ−、およびイソ−ブチリンを包含する。これらの米国特許の開示は本明細書に詳細に参考として援用する。化合物は、患者宿主に導入後、患者への所望する効果を有する酪酸あるいは酪酸類似体および誘導体の活性形態へ代謝するように創製され得る。類似化合物は、米国特許第5,185,436号に開示され、この開示は本明細書に参考として援用され、酪酸のエステルがインビボでn−酪酸あるいは類似構造に加水分解されることが開示されている。化合物はまた、時間放出様式で代謝するように創製され得、これによりより長い時間で有効な最小数の導入が可能になる。インビボで特定の化学反応が起こり得るかどうかは、反応物の安定性と比較した場合の、反応生成物の相対的安定性、および合理的な速度での反応物の生成物への転換を可能にする反応経路の有効性に依存する。その大きさが反応物と生成物との自由エネルギー(△G)の違いにより表される安定性因子は、反応がさらなる変化、すなわち、平衡への達成まで進行し得る場合、形成した生成物の性質を制御する。これは得られる生成物の最高収量をも制御する。適切な反応経路の有効性、あるいは反応速度因子は、生成物形成が起こり得る点での速度を決定し、さらに反応の終了の時間を制御する。抗新生物活性は、例えば、白血病、リンパ腫、肉腫、神経細胞腫瘍、ガン(扁平上皮ガンを包含する)、精上皮腫、メラノーマ、神経芽腫、混合細胞腫瘍、生殖細胞腫瘍、未分化腫瘍および他の悪性腫を含む細胞を包含する形質転換細胞の分化を誘導する能力を包含する。分化において、これらの細胞は攻撃的性質を失い、もはや転移しなくなり、そしてもはや増殖しなくなり、結局は死亡および/あるいは患者の免疫系のT細胞、ナチュラルキラー細胞、およびマクロファージにより除去される。細胞分化のプロセスは、例えば、遺伝子特異的転写の刺激および/あるいは阻害により、刺激されるか、あるいは転換される。ある遺伝子産物は細胞分化に直接的に関与し、活発に分裂する細胞を、増殖能を失ったあるいは減少した増殖能を有する細胞へ形質転換し得る。細胞遺伝子発現の様式の関連の変化が観察され得る。このプロセスを制御することは悪性を逆転する能力を包含する。その転写調節が酪酸存在下で変化する遺伝子は、ガン遺伝子myc、ras、myb、jun、abl、およびsrcを包含する。これらの遺伝子産物の活性および他のガン遺伝子の活性はJ.D.Slamonら(Science 224:256-62,1984)に記載されており、その開示は本明細書に参考として援用される。抗新生物活性はまた、血管形成誘導因子活性の封鎖、生成あるいは解放、転写調節による腫瘍血管形成誘導を抑制する能力、あるいは血管形成誘導または成長因子あるいはホルモン制御下での遺伝子の転写を調節する能力をも包含する。いずれも、特に前立腺新生物および乳ガンの両方に対しての効果的な治療である。転写および/あるいは細胞分化に影響を与えるさらなる活性は、細胞内cAMPレベルの増大、ヒストンアセチル化の阻害、およびゲノムメチル化の阻害を包含する。これらの活性の各々は、遺伝子転写および従って細胞分化に直接関連する。本発明の組成物は、液体、噴霧、カプセルとして溶液状であるいは固体(例えば、粉末あるいは錠剤)として、適宜に調製される。例えば、アルギニンブチレートはアルギニンと酪酸とを共に反応させ、生じた生成物を濾過し、そして最終溶液を水、生理食塩水、グリセロール、多糖、オイル、あるいは他の相対的に不活性な物質で固定百分率に希釈することにより調製される。イソブチルアミドは、プロピオン酸をアンモニアと反応させ、生じた生成物を濾過することにより調製され、次いで−20℃、0℃、4℃、あるいは室温で活性を有意に損失させることなく幾月から幾年保存される。固体イソブチルアミドは溶液から沈殿し得、水で洗浄され得、そして乾燥され得る。この固体形態は、錠剤あるいはカプセル形態に加工され得、あるいは水、生理食塩水、グリセロール、多糖、あるいはオイルのような相対的に不活性な液体と混合され得るかあるいは溶解され得る。モノブチリンは液体として調製され、そして何年もの間活性を有意に損失させずに保存され得る。濾過は0.45、0.22、および0.1ミクロンフィルターを用いて適宜に行われる。これらの組成物の無菌度は、細菌、真菌、あるいは酵母の増殖について選択される手法を用いてアッセイされる。無菌度は、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術(ここでは、核酸の特定種が、存在すれば、汚染の指示試薬として増幅され、検出される)を用いて核酸内容物をアッセイすることによっても決定され得る。液体あるいは固体形態のいずれかの純度は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガスクロマトグラフィー、あるいは高速圧液体クロマトグラフィー(FPLC)、逆相(RP)HPLCのようなこれらの技術の変法、あるいは当業者に利用可能な他の方法によりアッセイされる。組成物はまた、必要に応じて発熱物質に対して試験される(例えば、リムルスアメーバ細胞溶解液アッセイあるいはウサギ網状赤血球溶解液アッセイを用いる)。患者はまた、家畜動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、雄牛、ブタ、ヒツジ、ヤギあるいはニワトリ)あるいは野生動物であり得るが、好ましくはヒトである。投与は、成人、青年、子供、新生児、幼児、あるいは子宮内へ施され得る。組成物の投与は、必要に応じて、短期間、連続的、あるいは突発的であり得る。疑わしいあるいは診断された新生物障害の患者は、短期間、あるいは新生物が軽減し始めるまたは効果的に除去されるまで、組成物処置を要求するのみであり得る。本発明の他の実施態様において、上記の組成物および化合物は、患者における確認されたあるいは疑わしい新生物障害の処置の予防法あるいは治療法として有用である。例えば、変異誘発物質、発ガン性物質、放射線、あるいは他のガン生成剤に曝露された患者は、新生物状態の予想される発達を阻害する組成物を用いて連続的に処置され得る。遺伝的にスクリーンされ、新生物の将来の発達において高い危険性があると決定された患者もまた、多分誕生から開始され多分終身、組成物を投与され得る。これらの化合物は一般的に安全で非毒性であるので、予防および治療での両使用共に、容易に許容され得る。新生物障害は、新生物、腫瘍、悪性腫、ガンあるいは相対的に自律性の細胞増殖を生じる疾患として特徴づけられ得る任意の疾患あるいは疾病であり得る。新生物障害は、白血病、リンパ腫、肉腫、ガン(例えば、扁平上皮ガン)、神経細胞腫瘍、精上皮腫、メラノーマ、生殖細胞腫瘍、未分化腫瘍、神経芽腫(ある人々によりガンとも考えられている)、混合細胞腫瘍、転移性新生物、ウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスI型あるいはII型ウイルス、肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、あるいは他のレトロウイルス)のような感染物により引き起こされる新生物、あるいは他の悪性腫であり得る。本発明の組成物を用いて予防的あるいは治療的に処置され得る新生物障害は、小細胞肺ガンおよび他の肺ガン、横紋筋肉腫、絨毛状ガン、多形性神経膠芽腫(脳腫瘍)、腸および胃ガン、白血病、卵巣ガン、前立腺ガン、骨肉腫、あるいは転移したガンを包含する。これらの組成物により処置され得る免疫系の疾患は、非ホジキンリンパ腫(ろ胞性リンパ腫を包含する)、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病およびリンパ腫、毛細胞白血病、急性骨髄性、リンパ芽球あるいは他の白血病、慢性骨髄性白血病、および脊髄形成異常症候群を包含する。組成物により処置され得るさらなる疾患は、胸部細胞ガン、メラノーマおよび血液学的メラノーマ、卵巣ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、胃ガン、結腸ガン、骨ガン、扁平上皮ガン、神経線維腫、睾丸細胞ガン、および腺ガンを包含する。組成物は、経口、非経口、舌下、直腸内あるいは経腸投与により、あるいは肺吸収あるいは局所適用により投与され得る。非経口投与は、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、腹腔内注射、または直接注射、あるいは新生物の部位への他の投与によりなされ得る。投与の注射形態は、最大の効果のために時に好ましい。注射による長期投与が必要な場合、メディポート、内在カテーテル、あるいは自動ポンプ装置も好ましく、心臓および他の主要器官および器官系の中および周りの動脈へ直接および即時のアクセスが提供される。新生物部位への組成物の効果的な投与法は、経皮性輸注(例えば、経皮パッチを用いる)、アクセスし得るなら新生物への直接接触(例えば、メラノーマあるいは他の皮膚腫瘍)、あるいは切開あるいは体内へのいくつかの他の人工開口部を通しての内部新生物への投与によることであり得る。組成物は噴霧として鼻内通路にも投与され得る。頭部および脳の領域に局在している疾患は、このようにして、鼻の領域の動脈が頭の上部領域への迅速および効果的なアクセスを提供するように処置され得る。噴霧はまた、肺系への即時のアクセスを提供し、そしてこれらの領域への組成物の投与に対して好ましい方法である。胃腸管へのアクセスは、経口、浣腸、あるいは注射形態の投与を用いて達せられる。組成物は、ボーラス注射あるいは噴霧として投与され得るか、あるいは一定時間にわたって(一時的に)(例えば、毎2、4、6、あるいは8時間、毎日(QD)あるいは毎1日置き(QOD))あるいは長期にわたって(数週から数か月)連続して投与され得る。経口的な活性な組成物は、経口投与が通常最も安全であり、最も便利でかつ経済的な薬物送達様式であるのでより好ましい。経口投与は、胃腸内壁を通した組成物の吸収が乏しいので、通常不利である。吸収が乏しい化合物は非常に極性である傾向がある。従って、有効な化合物(本明細書に記載)は、それらの極性を減少あるいは除去することにより経口的に生物的有用となり得る。これは、その極性を中和する補足的な(complimentary)試薬を用いて組成物を処方すること、あるいは中和化学基を用いて化合物を修飾することにより、しばしば達成され得る。経口生物有用性はまた、薬物が極度の胃のpHおよび胃の酵素に曝露されるため問題がある。これらの問題は、非常に低いpH条件に抵抗し得、そして胃粘膜の酵素に耐性であり得るように分子構造を修飾することにより(例えば、イオン基を中和すること、イオン性相互作用を共有結合すること、あるいはジスルフィド結合あるいは他の相対的に不安定な結合を安定化あるいは除去することによる)、同様に克服され得る。組成物が経口投与される場合、液体、丸薬、錠剤あるいはカプセルの形態であり得る。経口投与される液体は、着香剤(ミント、さくらんぼ、グアバ、シトラス、シナモン、オレンジ、マンゴ、あるいは混合果実フレーバー)を含有し得る。経口投与される丸薬、カプセルあるいは錠剤もまた着香剤を含有し得る。さらに、すべての組成物は、貯蔵寿命を増加させる薬剤(防腐剤、酸化防止剤、および組成物の製造および配給に必要および適する他の成分)をさらに含有し得る。任意の方法による投与は、体液(例えば、血液、血清、あるいは血漿)試料から組成物レベルを測定することにより正確に定量され得る。酪酸塩、類似体、あるいは誘導体の有効な血清レベルは、約0.01μM〜約5.0mMの間、好ましくは約1.0μM〜約0.5mMの間、より好ましくは約0.1mM〜約0.4mMの間、およびさらにより好ましくは約0.2mMである。直接接触により適用される場合、活性成分の有効レベルは時に、適用範囲と密接に接触する範囲での組成物の濃度を決定することにより分析され得る。例えば、皮膚に局所的に適用される場合、有効レベルは、適用範囲下の数センチメートル以内の皮膚組織の体液あるいは組織試料から決定され得る。このような場合、組成物強度は前もって決定され得、濃縮溶液として使用され得る。酪酸、酪酸塩、類似体、誘導体、あるいはそれらの組み合わせの組成物溶液は、約0.001%〜10.0%間にあるが、皮膚あるいは他の体組織との長時間の直接接触のために必要に応じてさらに希釈され得る。本発明の組成物は、酪酸、酪酸塩、類似体または誘導体、あるいはそれらの組み合わせの生理学的に安定な形態を、新生物細胞への免疫反応性主要組織適合性(MHC)分子の発現を増強する薬剤として含有する。これらの増強されたMHC発現細胞は、宿主の免疫系により良好に同定および認識され、そして除去され得る。表面抗原の発現の増強は、多くの新生物細胞が免疫監視系を免れる主要経路を完全に克服する。発現が増強されたMHC抗原は、クラスI、クラスII、および、いわゆるクラスIIIあるいは補体成分を包含する。大部分は、マウスの第17染色体およびヒトの第8染色体に位置するMHC遺伝子領域内にコードされる。HLA複合体とも称されるヒトMHC抗原は、HLA-A、-B、および-C抗原を包含する。MHCクラスI抗原はすべての有核細胞の表面に存在し、細胞傷害性T細胞による標的細胞の認識を担う。この文脈における標的細胞は、ウイルスおよび細菌に感染した細胞、非MHC抗原を発現する移植細胞、損傷細胞、および形質転換細胞である。MHCコード化抗原は、ヒトにおいて約40,000〜60,000ダルトンの分子量を有する高多型性糖タンパク質鎖である。糖タンパク質鎖には、ヒトにおける約12,500ダルトンの分子量を有する、MHCコード糖タンパク質と対照的に多型でない、β2ミクログロブリンと呼ばれる、より小さなペプチドが結合する。クラスI抗原をコードする大部分の遺伝子座はMHC遺伝子領域内にあるが、識別される多くの非常に類似した分子(例えば、マウス中のQa座)がある。MHCクラスII抗原は、抗原をT細胞へ提示する多くの様々な細胞(例えば、ヘルパーT細胞および他の抗原提示細胞(APC))において見い出される。各々のMHCクラスII抗原は、共に高多型性である分子量約20,000〜40,000ダルトンの2種のペプチドからなる。未完成クラスII分子はしばしば、不変ガンマ(γ)鎖と呼ばれる他の抗原と共に見い出される。クラスII抗原は、脾臓および骨髄マクロファージ、B細胞、リンパ様樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、ナチュラルキラー細胞、星状細胞、特定の内皮細胞、および特定の皮膚線維芽細胞のような細胞上に発見され得る。C2、C4、およびB因子を包含する補体カスケードの成分の多くは、ヒトおよびマウスの両方においてMHC内でコード化されており、しばしばMHCクラスIII分子と称される。それらの機能はいくつかの免疫反応に関与しているが、これらの抗原は古典的なクラスIおよびII抗原とは全く似ていない。本発明の化合物はさらに、細胞表面、非MHC抗原(細胞表面レセプター、主要組織適合性抗原、腫瘍特異的抗原、インターロイキン(IL)レセプター抗原(例えば、IL−2レセプター(IL-2R)および他のサイトカインレセプター)、多剤耐性タンパク質複合体(例えば、Pgpタンパク質)、および成長因子レセプター(例えば、上皮成長因子(EGF)レセプター)を包含)の発現を誘導する。ある形態のガンはまた、非ガン性細胞の表面上では通常見い出されないが、その発現が酪酸塩あるいは誘導体存在下で誘導あるいは増大され得る免疫特異的抗原を呈示する。酪酸、酪酸塩または誘導体、あるいはそれらの組み合わせの生理学的に安定な形態を含有する組成物は、これらの非MHC抗原の発現を同様に刺激することにより、体から疾患細胞を取り除くための宿主の免疫系の能力を増強する。腫瘍特異的抗原の発現の増強は、抗体療法(例えば、毒素が結合したあるいは薬物が結合したモノクローナル抗体)の有効性をも大きく増大させる。本発明の他の実施態様において、本発明の組成物は、相加あるいは相乗的に組成物の効果を最大にするために、他の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載のいずれもの実施態様において使用され得る。本発明の組成物と組み合わせて有効であり得るサイトカインは、成長因子(例えば、B細胞成長因子(BCGF)、線維芽細胞由来成長因子(FDGF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)、幹細胞因子(SCF)、およびトランスフォーミング成長因子(TGF))を包含する。これらの成長因子+組成物は、細胞分化および/あるいは特定のMHC抗原あるいは腫瘍抗原の発現をさらに刺激し得る。例えば、BCGF+組成物は、特定のB細胞白血病の処置において有効であり得る。NGF+組成物は、特定の神経芽腫および/あるいは神経細胞腫瘍の処置において有用であり得る。類似の様式で、他の薬剤(例えば、分化剤)は、新生物障害の防止あるいは処置のため、本発明の組成物との組み合わせにおいて有用であり得る。他の分化剤は、B細胞分化因子(BCDF)、エリトロポイエチン(EPO)、SL因子、アクチビン、インヒビン、骨形態形成タンパク質(BMP)、レチノイン酸あるいはレチノイン酸誘導体(例えば、レチノール)、プロスタグランジン、およびTPAを包含する。あるいは、組成物と組み合わせられる他のサイトカインおよび関連抗原もまた、特定の新形成の処置あるいは予防に有用であり得る。潜在的に有用なサイトカインは、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキンIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6など、インターフェロン(IFN)タンパク質IFN−α、IFN−β、およびIFN−γ;環状AMP(ジブチリル環状AMPを包含する)、ヘミン、ヒドロキシ尿素、ヒポキサンチン、グルココルチコイドホルモン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびシトシンアラビノシドを包含する。これらの薬剤の組み合わせを用いる治療は、悪性腫および他の形態のガンに対して安全および有効な治療である。治療の組み合わせもまた、腫瘍あるいはいくつかの他の形態のガンの退化あるいは除去を誘導することにおいても有効であり得る(本発明の組成物と、放射線療法、形質転換細胞に対して指向するモノクローナル抗体あるいはポリクローナル抗体を用いる毒素あるいは薬物結合性抗体療法、遺伝子療法、あるいは特異的アンチセンス療法との組み合わせ)。効果は、相加的、対数的、あるいは相乗的であり得、処置の組み合わせを包含する方法は、同時プロトコル、断続的プロトコル、あるいは経験的に決定されるプロトコルであり得る。本発明の他の実施態様は、従来の化学療法、放射線療法、抗体療法、および他の治療形態の増大による新生物障害の処置のための組成物および方法を包含する。酪酸塩または誘導体、あるいはそれらの組み合わせの生理学的に安定な形態を含有する組成物は、化学療法剤との組み合わせにおいて、化学療法剤単独での効果を増強する。組成物は、化学療法剤の細胞内濃度を低下させる原因であるタンパク質の発現あるいは活性を減少させる。薬物および他の薬剤に対する耐性を担うタンパク質である多剤耐性(MDR)は、mdr−1遺伝子によりコードされたP−糖タンパク質(Pgp)を包含する。従って、新生物障害の処置のための従来の薬物は、より高い濃度においてより長い時間蓄積し、そして本明細書の組成物と組み合わせて使用される場合、より有効である。本発明の組成物と組み合わせた組み合わせ療法において有用ないくつかの従来の化学療法剤は、シクロホスファミド(例えば、アルキル化剤)、プリンおよびピリミジン類似体(例えば、メルカプト−プリン)、ニチニチソウおよびニチニチソウ様のアルカロイド、エトポシドあるいはエトポシド様薬物、抗生物質(例えば、デオキシルボシンおよびブレオマイシン)、コルチコステロイド、変異誘発物質(例えば、ニトロソ尿素)、代謝拮抗物質(メトトレキセートを包含する)、白金ベース細胞傷害性薬物、ホルモンアンタゴニスト(例えば、抗インスリンおよび抗アンドロゲン)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)および他の薬剤(例えば、ドキソルビシン、L−アスパラギナーゼ、ダカルバジン(DTIC)、アムサクリン(mAMSA)、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、およびミトキサントロンを包含する。化学療法剤は、薬物の有効性を最大にするが、患者の体への毒性を最小にするように設計されたプロトコルにより定義されるように、本発明の化合物と同時にあるいは交互に与えられ得る。本発明の他の実施態様は、創傷治癒に有用な酪酸塩、誘導体、および組み合わせを包含する組成物および方法に関する。これらの組成物は、他の従来の治療がうまくいかなかった後でさえ、患者の体への外科的および他の医学的侵入による床ずれ、外傷、擦過傷、および切開のポジティブな解決を促進および増強する。組織損傷の解決は、損傷組織周辺域の細胞分化、組織再生および血管形成(angdrogenesis)の刺激を包含する。新生物患者は疾患によるかあるいは処置の結果として併発症をしばしば有するので、これらの組成物は、多くの状況において好ましい処置方法であり得る。組成物は、創傷に直接投与され得るか、例えば注射によって全身的に投与され得るか、あるいは経口投与(液体、カプセルあるいは丸薬として)され得る。さらに、組成物は、長期治療のためにパッド(例えば、傷手当用品および包帯)上に吸収され得、あるいは予防治療のために患者の創傷またはその付近に差し込まれる物体上に堆積され得る。本発明の組成物は、胃腸障害(大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、および潰瘍性大腸炎を包含)の処置あるいは予防にも有用である。障害は、感染、栄養障害、あるいは未知または未同定の原因により引き起こされ得る。本発明の組成物は一般的に、より遠位に発する胃腸系の障害の処置にとってより有用である。組成物は、経口あるいは浣腸処方により、あるいは胃腸系との接触および有効性を最大にするための直腸内潅注により投与される。投与量は約1〜約12%(容/容)の間あるいは約1〜約100mMの間である。用量は、症候が改善あるいは解決するまで、1日に約2回から約4回の間で投与される。本発明の化合物は安全で生理学的に安定であるので、複数回および頻度の高い投与は問題とならない。処置のポジティブな効果は、便排泄頻度の減少、便の容量、あるいは血液損失を包含する。粘膜壁の内視鏡評価もまた、視覚徴候および炎症の消散により示されるように改善し得る。本発明の他の実施態様は、特定の新形成の重篤度の段階あるいはレベルおよび薬物、放射線、またはいくつかの他の処置形態へのガンの感応性を決定するための診断アッセイあるいはキットに関する。患者由来の細胞が取り出され得、組織培養条件に配され得る。細胞培養物、および同一あるいは異なる患者からの細胞株、初代細胞、あるいは非新生物細胞であり得るコントロール培養物(陽性および/あるいは陰性コントロール細胞)に、本発明の化合物を加える。化合物処理培養物およびコントロール培養物を、一定期間、好ましくは1日、より好ましくは1〜6時間、さらにより好ましくは1時間未満インキュベートする。培養物を、インキュベーション期間後試験され、細胞分裂、細胞増殖、DNA複製、DNA、RNA、またはタンパク質合成、あるいはサイトカイン、サイトカインレセプター、他の細胞表面分子または他の抗原、あるいは他の同化活性の発現の量を決定する。コントロールと比較して活性への効果が大きくなると、試験されるガンの特定の形態が攻撃的な処置を必要とする見込みが大きくなる。このようなアッセイは、特定の患者のための最善の治療方針の決定における診断ツールとして、および可能な治療的あるいは予防的用途のための新しい化合物のスクリーニングのための診断ツールとしても広く有用であり得る。それは相対的に非侵襲性であり、安価であり、定量的であり、かつ相対的に迅速である。器官特異的あるいは他のタイプ特異的な白血病性、ガン性、および他の形態の形質転換細胞(タイプI−Vガン)のパネルが試験され得、ガンの重篤度対化学療法の有効性の図あるいは表を作成するために使用され得、これから未知のガンの処置が有効に評価され得る。このようにして、治療薬は、大きな確実性および少ない危険性で決定される効果および最終結果を用いて、より注意深く選択され得る。次の実施例は本発明の実施態様を説明するが、本発明の範囲を制限するように考慮されてはならない。実施例実施例1 化合物の調製注射のためのアルギニンブチレートを重量によって1g/mlに調製した。無水L-アルギニン(Aldrich Chemical Co.(St.Louis,MO))を滅菌非発熱性水中の酪酸、pH5.0〜5.5と化合させて高浸透圧溶液を得た。この溶液を、0.45 micron Nalgene filter(Nalge Co.;Rochester,NY)および0.2 micron Nalgene filterで濾過した。患者への投与のための滅菌ボトルに移す間、この調製物を再び0.2 micron Nalgene filterで3度目の濾過を行った。高浸透圧溶液であるので、末梢静脈の刺激を避けるため、この液は長いかまたは深い静脈内アクセスを通して、直接注入しなければならない。安定性試験によってこの薬物が少なくとも28日間(試験した最も長い期間)安定であると測定された。患者に対する最初の薬物投与スケジュールは、500〜2,000mg/kg体重/日の間の250mg間隔で14日間であると期待される。イソブチルアミド経口溶液(100mg/ml)は、防腐剤として0.1%安息香酸ナトリウム(USP)、および単純シロップ(最終濃度で38%シュークロース)を含んだ。人工シナモンミント香料(USP)を添加して嗜好性を増した。この溶液を濾過し、そして滅菌および発熱性について試験した。実施例2 インビトロ分化の誘導多数のヒトおよびネズミの、初代および継代細胞培養物を、それぞれの細胞タイプまたは細胞株が要求する培養条件下に、インビトロで維持した。簡潔に記載すると、細胞を、組織培養フラスコにおいて、5〜10%のウシ胎児または仔ウシ血清を補ったDMEMまたはRPMI-1640中で維持した。細胞は必要に応じて継代(pass)した。酪酸塩または誘導体(表II)を、等数の細胞の各培養物にある範囲の濃度に亘って添加した。全ての実験は、物質を添加しないコントロールを並行して行い、そしてナトリウムブチレート処理を基準として行った。最小阻害濃度(MIC)の結果を表にし、そして表IIIに示した。成長および形態を毎日評価した。適切な場合には、多くの異なる血清濃縮物も利用した。酪酸溶液を5mMで調製し、そして5μMに2倍希釈した。いくつかの化合物は5000μMまでの濃度で阻害的でなかった。例えば、575664は5mMまでの濃度で、任意の細胞または細胞株に対して阻害効果を有さなかった。実施例3 ヒト神経芽腫細胞に対する化合物の効果ヒト神経芽腫細胞SK-N-MCを異なる酪酸塩および誘導体存在下でインキュベートした。これらの細胞を曝露の間4週間成育し、そして最終的な細胞数を測定した。結果は表IVに示す。細胞成長における劇的な減少が、原形質内で容易に達成される薬物レベルのアルギニンブチレートまたはイソブチルアミドで処理した後に観察された。ガン遺伝子n-mycの発現もまた、正常細胞と比較するとアルギニンブチレート(1mM)で処理した神経芽腫細胞において約3倍減少した。フェニルブチレートまたはフェニルアセテートで処理した細胞は、未処理細胞と比べて減少を示さなかったことから、成長に対する効果は特異的であることが示された。実施例4 ヒト腫瘍細胞株に対する化合物の効果骨髄性白血病(HL60)細胞は、骨髄系株に沿った分化によって酪酸塩または誘導体に応答した。細胞は、成熟し最終的に分化した好中球の多くの特性(成熟好中球の形態、ミエロペルオキシダーゼおよび他の特異的なエステラーゼの発現の刺激、および酸化的バースト発生能を含む)を獲得した。赤白血病(K562)細胞は、正常赤血球細胞のように、グロビンおよびヘモグロビン合成能を獲得し、そして実際に赤色を呈した。結腸腺ガン細胞(HT29)を酪酸塩または誘導体で処理した。これらの化合物は細胞成長に影響し、そして3〜4日目までに完全な成長停止を生じ、25日後にもさらなる成長を示さなかった。DNA合成の阻害(3H-チミジン取り込みによって測定される)は、6時間までに生じた。ガン原遺伝子、成熟刷子縁、およびスクラーゼおよびイソマルトース遺伝子の発現はすべて顕著であった。胃ガン(AGS)細胞は、処理後、成熟胃細胞のマーカーとなるムチンを発現した。イソブチルアミド、アルギニンブチレートおよびモノブチリンを、確立した多くの腫瘍細胞に対する細胞傷害効果についてスクリーニングした。細胞傷害性(本研究で測定するような)は、成長阻害または分化と必ずしも同じである必要はない。これらの効果は、これらのアッセイにおいて顕著には現れないと考えられる。アルギニンブチレートは、白血病細胞、メラノーマ細胞、卵巣ガン細胞、および乳ガン細胞に対して、いくらかの細胞傷害活性を有することが見出された(図1および2)。これらの細胞それぞれについてのアルギニンブチレートの50%致死濃度(LC50)を、0.1mM以上と決定した(log10LC50=>−3.6)。イソブチルアミドは、非小細胞(non-small cell)肺ガン株に対していくらかの細胞傷害活性を有することが見出された(図3)。モノブチリンは、白血病細胞、非小細胞肺ガン細胞、小細胞肺ガン細胞、メラノーマ細胞、卵巣ガン細胞、および腎臓ガン細胞に対していくらかの細胞傷害活性を有することが明らかになった(図4および図5)。各細胞株に対するイソブチルアミドのLC50は1.0mM以上であると決定した(log10LC50=>−2.3)。実施例5 HT-29細胞に対する化合物の分化性効果HT-29細胞の培養物をアルギニンブチレート、イソブチルアミドおよび3-フェニルブチレートで処理した。5mMの濃度で、分化の1つのマーカーであるアルカリホスファターゼ活性が、3つ全ての化合物によって迅速に誘導された。2mM濃度で、HT-29細胞の活発に成長している培養物は、3日目および4日目で成長を阻害および停止され、25日後にもさらなる成長は観察されなかった。刷子縁が観察され、このことが、この細胞が成熟したことを示唆した。ガン原遺伝子c-mycは、処理後2時間以内にダウンレギュレート(down-regulate)され、そして6時間以内に、トリチウム化したチミジンの取り込みが減少した。成熟に特異的な酵素であるスクラーゼおよびイソマルターゼの誘導も生じた。実施例6 リンパ球増殖に対する化合物の効果混合リンパ球反応(MLR)におけるかまたはフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激したヒトリンパ球との培養におけるヒトリンパ球の増殖を用いて、本発明の化合物を潜在的な免疫抑制効果について試験した。リンパ球を細胞分裂誘導刺激および化合物に48時間曝し、その後3H-チミジンを取り込ませた。MLRまたはPHA刺激反応におけるリンパ球の増殖は多くの複雑な作用が生じることを必要とし、この作用は、何時間にも亘る細胞表面レセプターとレクチンおよびリンフォカインとの連続した相互作用、およびリンパ球によるリンフォカインの自己分泌生合成および分泌を含む。これは正常(非腫瘍)細胞に対する化合物の細胞傷害性の極めて敏感な指標である。ナトリウムブチレート、アルギニンブチレート、モノブチリン、901409(クロロプロピオン酸)、イソブチルアミド、およびβ-クロロ-L-アラニンHClのL-アイソマーは、試験した腫瘍細胞株の大部分に対して、強い成長阻害効果を示した。この効果は、様々な血清濃度で一貫していた。L-594、アルギニンブチレート、およびモノブチリンはナトリウムブチレートと同等の活性であり、901409はナトリウムブチレートよりも4〜5倍高い活性であり、そしてイソブチルアミドは10〜20倍高い活性であった。これらの化合物はいずれも非腫瘍間充織細胞に対しては特に毒性ではなかった。最も強い抗腫瘍剤(ナトリウムブチレート、アルギニンブチレート、モノブチリン、901409、L-594515、イソブチルアミド)は、かなりの高濃度においてリンパ球反応性の阻害をいくらか示したが、正常ヒト間充織細胞およびリンパ球を残す、腫瘍細胞に対する毒性の顕著な「治療指数」を示した。このことが、他の古典的な化学療法の活性とは異なっている。用いたいくつかの細胞株は、培養において「分化可能」であるということは知られていないので、これらの化合物による成長阻害の機構は不明である。腫瘍阻害に対する最も強い効果を示すこれらの薬剤は、いくつかの場合において、胎児グロビン遺伝子発現の調節において最も活性な化合物と区別される。強い抗腫瘍効果を示す化合物のいくつか(901409およびL-594)は、酪酸の同族体に極めて近い。実施例7 化合物によるMHCクラスI誘導MHCクラスI抗原を発現しないヒト赤白血病(K562)細胞を、イソブチルアミド、アルギニンブチレート、またはモノブチリンで処理した。MHCクラスIに特異的なモノクローナル抗体で免疫蛍光によって測定したところ、これらの物質のそれぞれがMHC抗原発現のアップレギュレーションを生じた。マウス腫瘍細胞およびヒト腫瘍細胞(K562、Jurkat、HuT78)におけるMHC発現の増加は、マウスまたはヒト細胞傷害性Tリンパ球によるそれらの認識および破壊を生じる(Flyerら、1986;R.T.Maziarzら、Mol. Immunol. 27:135-42, 1990)。実施例8 化合物によるIL-2Rのアップレギュレーションアルギニンブチレート、モノブチリンおよびイソブチルアミドは、TおよびB細胞ヒト白血病またはリンパ腫細胞の両方におけるTAC(p55)の発現をアップレギュレートし得ることが見出された。酪酸塩またはその誘導体の添加後4日目に、ヒトIL-2R特異的蛍光抗体で染色した後、IL-2Rの誘導が示された(表VI)。logスケールで細胞表面蛍光を示しており、15.5単位増すごとに細胞表面のIL-2R発現が2倍になる。動物に安全に投与された他の形態の酪酸(3-フェニルブチレート)もまた、IL-2R発現の増加を誘導する。別のデータは、造血系悪性腫瘍において酪酸塩または誘導体によって、IL-2R発現が調整され得ることを実証した。これらの化合物は、IL-2R標的融合トキシンによる殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を増大させた。実施例9 多剤耐性タンパク質活性の阻害P-糖タンパク質(Pgp)は、腫瘍細胞において大部分の多剤耐性の原因となるタンパク質である。正常にPgpを発現する細胞から生じた腫瘍由来の細胞株において酪酸塩および誘導体によって、この発現は増加し得る。SW620ヒト結腸ガン細胞において酪酸処理後にPgpレベルは25倍増加したが、化学療法薬剤ビンブラスチン、アドリアマイシン、およびアクチノマイシンDの細胞内蓄積は、減少するよりもむしろ増加した。Pgpを発現する多剤耐性SW620のサブライン(subline)を本発明の組成物で処理すると、Pgp機能の活発な妨害に至る。ナトリウムブチレートは、Pgpレベルを増加させる一方、Pgpのリン酸化を阻害した。時間経過の研究により、ブチレート処理後のPgpリン酸化の減少とビンブラスチン蓄積の増加との間の密接な関係が明らかになった。酪酸の退薬はPgpのリン酸化を増加させたが、同時にビンブラスチン蓄積を減少させた。実施例10 K562細胞におけるMHC抗原の誘導FACS(蛍光活性化セルソーター(fluorescent activated cell sorter)分析を使用して、1.0mMのアルギニンブチレート、2つの異なる投与量、1.0および0.1mMのイソブチルアミド、1.0mMの907388、1.0mMの901409、1.0mMのモノブチリン、または1,000U/mlのγインターフェロンで処理する前(コントロール)、および処理後(24時間曝露)の、K562培養細胞におけるMHC抗原発現のレベルを調べた。結果を図6および7に示す。907および他の化学的形態はMHC発現に対し何ら効果を有しなかった。アルギニンブチレート、1.0mMのイソブチルアミド、901409、モノブチリン、およびγインターフェロンは全て10〜50倍のMHC発現を誘導した。0.1mMのイソブチルアミドは5倍のMHC発現を誘導した。実施例11 白血病細胞およびリンパ腫細胞に対する酪酸誘導体の調節効果TおよびB細胞白血病株および慢性リンパ性白血病(CLL)の患者由来の細胞に対する、ブチレートおよびブチレート誘導体であるアルギニンブチレートおよびイソブチルアミドの細胞傷害効果/分化効果を規定するために、細胞生存能をMITアッセイによって研究し、そしてIL-2R発現を定量化した。1mM酪酸に72時間曝した後、CEM、RAJIおよびNALM6細胞の生存パーセントは、コントロールの14〜25%であったが、HUT102細胞の成長は比較的影響されなかった(コントロールの90%)。2人のCLL患者から新たに採取したリンパ球は、1mMナトリウムブチレート存在下において50%および60%成長阻害を示した。アルギニンブチレートは、細胞株および患者の細胞において同程度の成長阻害を生じたが、これに対してイソブチルアミドは、ほんの僅か成長に影響した。IL-2Rの発現は、IL-2-フィコエリトリンフルオロカイン(fluorokine)を用いて測定したところ、酪酸およびアルギニンブチレート後に、NALM6細胞において5倍、そしてRAJIおよびCEM細胞において1.5〜2倍増加した。イソブチルアミドは、NALM6細胞およびRAJI細胞においては、同様に、IL-2Rの発現を誘導したが、CEM細胞においては誘導しなかった。これらの結果は、TおよびB白血病細胞株および新鮮なCLL細胞に対するブチレート誘導体の細胞傷害性効果/分化効果を確立する。従って、これら誘導体によるIL-2レセプターの誘導は、IL-2R発現細胞を標的とする薬剤との組合わせで臨床的に利用し得ると証明される。実施例12 化合物の薬物動態アルギニンブチレートを患者に静脈内投与した。用量は、10〜50g/kg体重/日の間5〜21日間であった。薬物の血漿レベルを、様々な間隔で採取しそしてアッセイした血液サンプルより測定した。血漿レベルは、投与の方法に関係なく匹敵した。ピークの血漿レベルは、動物(ヒヒ)およびヒトの両方において約0.3〜5.0mMの範囲であった。血清半減期を約15分と決定した。全ての用量は、一般的に十分に許容された。イソブチルアミドを多くの患者に経口投与した。この化合物は胃粘膜で容易に吸収される。薬物は、霊長類およびヒト内に投与後24時間以上、検出可能なレベルで存在した。イソブチルアミドは、経口投与後、5〜15分以内に血漿中に現れた。ピークレベルは約2時間後に生じ、そして薬物半減期は、投与された用量に応じて約6.5〜10.5時間であった。インビトロおよびインビボの研究により、1つの生物学的効果である胎児グロビン合成は、曝露の6時間以内に有害な副作用を伴わずに刺激されるか、または増加することが示された。患者#1は50〜150mg/kgを投与された。血漿レベルは、投与2時間後で0.9〜1.88mMの範囲であり、そして最終投与後15〜22時間の間に約0.4mMに低下した。患者#2は100mg/kgを投与され、そして2時間後の薬物レベルは3.6mMであった。他の用量での投与2時間後の薬物レベルは以下の通りであった:10mg/kg=0.24mM;25mg/kg=0.44mM;60mg/kg=0.93mM;75mg/kg=1.29mM。投与12〜13時間後でのトラフレベル(trough level)は、0.36〜2.06mMの範囲であった。患者#3は単回の経口投与をされ、そして投与2時間後の薬物血清レベルは、1.88〜3.15mMであった。追加の用量は、60〜100mg/kgの範囲であった。用量75〜100mg/kgでの後の投与は、投与4時間後に4.32mM、投与8時間後に2.45mMの薬物レベルを生じ、そして投与24時間後にも薬物はなお検出可能であった。患者#4は単回の50mg/kg用量を投与された。この投与は1.5時間で1.55mM、2時間で1.42mM、4時間で1.16mM、8時間で0.67mM、および12時間で0.49mMの血清薬物レベルを生じた。患者#5は25〜100mg/kgの経口用量を投与され、そして2時間後には0.4mM〜2.6mMの範囲の薬物レベルを有していた。薬物レベルは、複数の毎日の投与により、いっそうより高く蓄積した。全ての患者に対するすべての用量は一般的に耐性であった。実施例13 ブチレート処置による足潰瘍の減少22歳の女性患者に連続して20日間、漸増用量(2g/kg体重まで)のアルギニンブチレートを静脈内的に処置した。処置の期間中に、抗生物質クリームおよび軟膏を含む従来の処置に応答しなかった足潰瘍は、治癒の兆しを示し始めた。潰瘍は、全20日間の処置後ほとんど完全に治癒し、そしてその後完全に治癒した。処置を1年以上中断した後にも再発しなかった。実施例14 難治性新生物患者におけるブチレート経験のまとめ脳と皮膚にメラノーマが転移した患者#1(実施例11の患者とは関係がない)は、6〜8時間に亘って注入される500mg/kg/日のアルギニンブチレートの10日間1サイクルの注入を終了した。この患者は、注入開始12時間後に皮膚腫瘍小結節下の痛みが増大することを経験し、5日目後に注入を中断した36時間後その痛みは減少した。この患者の痛みは、6日目の注入開始約12時間後に再び悪化したが、しかし痛みを制御するための麻酔薬の要求は減少した。このガンの形態は、代表的には新生物細胞の痛みと関連せず、注入療法に関連する痛みとも関連しない。処置が何等かの効果を有し得ると考えられた。処置の開始まで、メラノーマ細胞数は転移が活発なように増加し続けた。第1サイクル終了後2週間の評価は、転移病巣がサイズも数も増加していないことを示した。アルギニンブチレートの注入による肝臓、腎臓、心臓、肺、胃腸管または骨髄に関係する患者の器官機能に対する有害な効果はなかった。患者#2は転移性乳ガンを有している。アルギニンブチレート500mg/kg/日の注入1日目に、患者は薬物を始める18時間前に吐き気の症状および食欲減退を報告し、注入を始める前に1度嘔吐した。注入を始めて4時間後、制吐薬を服用したのにも関わらず、患者は吐き気が続き、5回嘔吐した。この患者はIV水分補給および精密検査のために病院に入院した。この患者は、2日間水っぽい下痢および36時間吐き気の症状をいくつか発現した。微熱(100.2°F)があった。精密検査は血液、尿および下痢のC&S、R/O metsに対する頭部CTを含んだ。患者にアルギニンブチレートを始める前に、プレドニゾンをゆっくりと漸減させて投与し、そしてアルギニンブチレートを始める1週間前に減少用量を投与された。患者は、経験的に以前のレベルまで増加させた用量のプレドニゾンを投与され、そして12時間以内に吐き気が解消した。この患者はアルギニンブチレートの第1サイクルを開始した。患者#3は肝臓へ転移した結腸ガンを有している。この患者はイソブチルアミド400mg/kg/日を2サイクル完了した。それぞれのサイクルは14日間であった。サイクル1の4日目に始まったこの薬物の服用15〜30分後の嘔吐によって、この薬物コース(drug corse)は複雑化した。この投与後の嘔吐は、25%および50%の用量減少にも関わらず継続した。患者が最終的にコンパジン(compazine)を処方された後、サイクル2の最後4日間は薬物の減少を維持することに成功した。コンパジンはイソブチルアミドの摂取の前に服用された。治療コースの間、嘔吐の精密検査は胃閉塞/胃炎の評価、およびCNS metsを包含した。それらはネガティブであった。2サイクル中に患者は血清アルカリホスファターゼの増加を経験したが、他の肝臓機能の検査は安定のままであった。この患者はまた、イソブチルアミドのコースの間に進行的に四肢が衰弱した。精密検査は、R/Oガン性髄膜炎に対する脊椎のMRIおよび連続EMGを包含し、後者はパッチ状末梢神経脱ミエリン化プロセスを示した。患者記録の再検討により、患者の神経学的症状は、イソブチルアミドの開始よりも先に生じていたことが示唆された。これらの症状は慢性自己免疫性脱ミエリン化プロセスの結果であり、ブチレートには直接関連しないというのが神経科の見解であった。サイクル2の終了後1.5週間、神経科の推奨により免疫グロブリンをIV的に患者に与えた。EMG誘導の改善が見られたが主観的な改善はみられなかった。2サイクルのイソブチルアミド後の腫瘍の再発により、肝臓における腫瘍の進行が示された。この患者は研究から外した。肝臓、腎臓、肺、心臓、または骨髄に認められる器官機能に対する有害効果はなかった。患者はグレード2GIの毒性(24時間で2〜5回の嘔吐症状)を経験した。実施例15 炎症性腸疾患のラット回腸ループモデル100mg/kg/日で経口イソブチルアミドを3日間ラットに予め処置した。この期間の終了時に、5匹の処置動物および5匹の未処置動物は、外科的に作製された回腸ループを動物当たり3つ有した。リポ多糖類(LPS)を投与して、ループにおいて炎症応答を刺激した。2つのパラメータを使用して大腸炎の程度を決定した;(1)ループにおける体液量および(2)腸を横切るマンニトールフラックス(flux)。イソブチルアミドを処置した動物において、回腸ループでの体液量およびマンニトールフラックスが、平均40%減少した。このことはイソブチルアミドが炎症反応を和らげる原因であることを示唆した。本発明の他の実施態様および使用は、明細書および本明細書で開示した発明の実施を考慮すると当業者に明らかである。明細書および実施例は例示としてのみ考慮されること意図し、本発明の真の範囲および精神は、以下の請求の範囲により示される。 下肢潰瘍処置の必要がある患者の下肢潰瘍を処置するための組成物であって、該組成物が該組成物の活性成分として、治療有効量のアルギニンブチレートまたはイソブチルアミドまたはそれらの薬学的に受容可能な塩を含有する、組成物。 前記組成物が経口または非経口によって投与される、請求項1に記載の組成物。 前記組成物が局所手段によって投与される、請求項1に記載の組成物。 前記患者がヒトである、請求項1に記載の組成物。