生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体及び植物病害防除剤
出願番号:1995327049
年次:2007
IPC分類:C07D 213/79,A01N 43/40,A01P 3/00


特許情報キャッシュ

朝田 亨 坪井 宏幸 吉岡 信行 小磯 彰宏 後藤 孝史 JP 3894971 特許公報(B2) 20061222 1995327049 19951215 2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体及び植物病害防除剤 日本曹達株式会社 000004307 志賀 正武 100064908 朝田 亨 坪井 宏幸 吉岡 信行 小磯 彰宏 後藤 孝史 20070322 C07D 213/79 20060101AFI20070301BHJP A01N 43/40 20060101ALI20070301BHJP A01P 3/00 20060101ALI20070301BHJP JPC07D213/79A01N43/40 101DA01P3/00 C07D213/79 A01N 43/40 A01P 3/00 CAplus(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN) 2 1997165373 19970624 13 20021001 新留 素子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、農薬として有用な、新規な2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体に関する。【0002】【従来の技術】イソニコチン酸誘導体に関する特許出願発明としては、例えば特開昭63−93766号に、2,6−ジハロゲン化イソニコチン酸及びそのエステル誘導体等が植物病害防除剤として有効であることが開示されている。また本発明者らによる特開平7−173012号には、2−クロロ−6−ヒドロキシイソニコチン酸が植物病害防除剤として有効であることが開示されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の化合物においては、その薬効が必ずしも十分とはいえず、また、特開昭63−93766号の化合物は保護すべき植物体に薬害が生ずる場合もあった。従って、植物に対してより安全でかつ効力の優れた薬剤が求められていた。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者等は、かかる課題を解決するため種々検討した結果、一般式(1)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体が植物に対する薬害の心配がなく、優れた植物病害防除活性を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記一般式(1)【0005】【化2】(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を表わし、あるいは、R2及びR3は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってシクロアルキレン基を表わす。R4及びR5は低級アルキル基を表わし、あるいは、R4及びR5は、それぞれが結合する酸素原子及び酸素原子が結合する炭素原子と一緒になって環状アセタール基を表わす。)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体、及びこれを有効成分とする植物病害防除剤に関するものである。【0006】【発明の実施の形態】一般式(1)において、R1、R2及びR3は、各々独立に水素原子又は低級アルキル基を表し、低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でも良く、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基等の炭素数1〜4のものが挙げられる。また、R2とR3は一体となって一般式(1)中で環を形成することができ、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のシクロアルキル環、好ましくは炭素数3〜8のシクロアルキル環を形成することができる。R1、R2及びR3としてより好ましいものは、水素原子、炭素数1〜2の低級アルキル基であり、R2とR3によって形成されるシクロアルキル環も好ましく挙げられる。【0007】R4及びR5は低級アルキル基を表し、低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でも良く、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基等の炭素数1〜4のものが挙げられる。また、R4とR5は一体となって一般式(1)中で環を形成することができ、例えば、ジオキソラニル、ジオキサニル等の環状アセタール構造を形成することができる。R4及びR5として好ましいものは炭素数1〜2の低級アルキル基である。【0008】本発明における前記一般式(1)で示される化合物は、例えば下記(A)又は(B)等の方法で製造することができる。但し、当該化合物は、これらの製造法に限定されるものではない。尚、図中のR1〜R5は一般式(1)での定義と同じ意義を有する。(A):【0009】【化3】【0010】一般式(2)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸クロリドを適当な溶媒中、必要に応じ塩基の存在下に、一般式(3)で示されるグリコールアルデヒドのアセタール誘導体と反応させることによって、一般式(1)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体を製造できる。反応溶媒としては、一般式(3)で示されるグリコールアルデヒドのアセタール誘導体を反応溶媒と兼ねて用いることもできるが、他にテトラヒドロフラン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩等が使用できる。反応温度は、溶媒、塩基等により異なるが、通常−10〜80℃が好ましく、特に0〜50℃が好ましい。反応時間は、反応温度、溶媒、塩基等により異なるが、通常0.1〜10時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。【0011】(B):【0012】【化4】【0013】一般式(4)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸と一般式(3)で示されるグリコールアルデヒドのアセタール誘導体とを、脱水試薬を用いて反応させることによって、一般式(1)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体を製造できる。このとき、必要に応じて触媒を添加することもできる。反応溶媒としては、一般式(3)で示されるグリコールアルデヒドのアセタール誘導体を反応溶媒と兼ねて用いることもできるが、他にテトラヒドロフラン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。脱水試薬としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、 モレキュラーシーブ等が使用できる。触媒としてはピリジン、4−ピロリジノピリジン等が使用できる。反応温度は、溶媒、脱水試薬、触媒等により異なるが、通常−10〜80℃が好ましく、特に0〜50℃が好ましい。反応時間は、反応温度、溶媒、触媒等により異なるが、通常0.1〜10時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。【0014】更に、一般式(1)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体を製造する方法としては、前述の(A)、(B)の方法の他に、イミダゾール等を用いてカルボン酸を活性アミドとし、アルコールとの反応を行わせる方法等、一般的にエステル類を合成する際に用いられる方法を適用することができる。【0015】また、本発明に係る2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体の合成中間体である一般式(3)で示されるグリコールアルデヒドのアセタール誘導体の合成法については、例えば特開昭57−188684号、特開昭57−188685号、[J.Org.Chem.,Vol.52,No. 15,3243(1987)]、[Tetrahedron Vol.47,No.23,3737(1991)]等に記載されている。【0016】尚、上述の方法で製造される一般式(1)で示される化合物の具体的構造を例示すれば、表1の通りである。但し表中、R1〜R5は一般式(1)の置換基に各々対応し、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基をそれぞれ表す。【0017】【表1】【0018】本発明に係る2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体を有効成分とする植物病害防除剤は、植物病原ウィルス、細菌及び糸状菌による各種の植物病害防除、例えばイネの主要病害であるいもち病、きゅうりの斑点病等に適用し得るが、特にいもち病に優れた効果を示す。本発明に係る2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体は、植物病原菌に対して直接殺菌作用を発現するよりも、むしろ植物体が本来備えている植物病原菌に対する抵抗反応を引き出す作用によって病害防除を発揮する。したがって、本薬剤は予防的に使用することが使用形態として好ましい。【0019】本薬剤は、有効成分を単独で使用することも可能であるが、通常、農薬の製剤に用いられる固体及び液体坦体、並びに分散剤、希釈剤、乳化剤、展着剤、増粘剤等の補助剤と混合して、水和剤、液剤、油剤、粉剤、粒剤、ゾル剤(フロアブル)等の剤型に製剤して使用することができる。固体及び液体坦体としては、例えばタルク、クレー、ベントナイト、カオリン、けいそう土、モンモリロナイト、雲母、バーミキュライト、石膏、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、木粉、澱粉、アルミナ、珪酸塩、糖重合体、ワックス類、水、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール等)、石油溜分(石油エーテル、ケロシン、ソルベントナフサ等)、脂肪族又は脂環式炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、クメン、メチルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン等)、エーテル類(イソプロピルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセタート、酢酸アミル等)、酸アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアニリド等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アルコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)等が挙げられる。【0020】補助剤としては、例えば非イオン型界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等)、陰イオン型界面活性剤(アルキルベンゼンスルホナート、アルキルスルホサクシナート、ポリオキシエチレンアルキルスルファート、アリールスルホナート等)、陽イオン型界面活性剤(アルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、第四級アンモニウム塩類等)、両性型界面活性剤(アルキルアミノエチルグリシン、アルキルジメチルベタイン等)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、トラガントガム、キサンタンガム、ポリビニルアセタート、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。【0021】さらに、本薬剤は、各種の農園芸用殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤、殺虫剤、殺ダニ剤等の農薬や、肥料等と混合して用いることができる。本薬剤における有効成分含有量は、製剤形態、施用方法、その他の条件によって種々異なる。通常は0.5〜95%(重量)、好ましくは2〜70%(重量)である。本薬剤の施用方法としては、植物への施用(茎葉散布)、植物の生育土壌への施用(土壌施用)、田面水への施用(水面施用)、種子への施用(種子処理)等が可能である。本薬剤の施用量に関しては、適用植物、適用病害等によっても異なるが、茎葉散布の場合には有効成分濃度1〜10000ppm、好ましくは10〜1000ppmの溶液を10アール当たり50〜300L施用するのが好ましく、土壌施用及び水面施用の場合には、有効成分量で10アール当たり0.1〜1000g、特に好ましくは10〜100g施用するのが好ましい。また、種子処理の場合には、種子1kgに対して、0.001〜50gの有効成分を施用するのが好ましい。【0022】【実施例】次に本発明を実施例、製剤例及び試験例によって説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。(実施例1)グリコールアルデヒドジメチルアセタール6.4g、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記する)20ml及びトリエチルアミン12.1gを攪拌、氷冷し、これに2,6−ジクロロイソニコチン酸クロリド9.1gを5mlのTHFに溶解させた溶液を滴下した。反応液を室温で2時間攪拌した後、反応液に酢酸エチルを加え、この有機層を水洗した後、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して2,6−ジクロロイソニコチン酸2’,2’−ジメトキシエチル(化合物No.1)6.5gを得た。融点:52.7℃核磁気共鳴スペクトル(内部標準TMS,溶媒DMSO−d6)δppm3.38(s) 6H4.32(d) 2H4.74(t) 1H7.89(s) 2H【0023】(実施例2〜10)グリコールアルデヒドジメチルアセタールの代わりに各種試薬を用いる他は実施例1と同様にして表2〜表4に記載の化合物No.2〜10を得た。但し表中、R1〜R5は一般式(1)の置換基に各々対応し、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基をそれぞれ表す。【0024】【表2】【0025】【表3】【0026】【表4】【0027】(製剤例1)粉剤化合物No.1〜6で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体2重量部をそれぞれ、クレー98重量部と混合粉砕し、粉剤とした。(製剤例2)水和剤化合物No.1〜6で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体20重量部をそれぞれ、クレー68重量部、ホワイトカーボン8重量部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル4重量部と混合粉砕し、水和剤とした。(製剤例3)粒剤化合物No.1〜6で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体5重量部をそれぞれ、ベントナイト及びタルクの等量混合物90重量部及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5重量部と混合粉砕し、粒剤に成型した。【0028】(試験例1)イネいもち病防除試験(土壌施用)ポット(直径6cm,高さ5.5cm)で育種した2葉期のイネ(品種:愛知旭)に、(製剤例2)記載の水和剤各々から調製した薬液を土壌施用した(有効成分量で5mg/ポット)。14日後にイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、25℃の湿室に24時間置いた後、温室内で発病させ、胞子懸濁液接種10日後に病斑数を調査し、下記式より防除価を算出した。対照薬剤として、2,6−ジクロロイソニコチン酸メチルエステル(特開昭63−93766号に記載)についても同様の方法で試験を行った。結果を表5に示す。【0029】【数1】【0030】【表5】(注)−は薬害がないことを、+は薬害が生じたことを表す。【0031】(試験例2)キュウリ斑点細菌病防除試験ポット(直径10cm,高さ9cm)で育種した4葉期のキュウリ(品種:ときわ新地這)に、(製剤例2)記載の各々の水和剤から調製した有効成分濃度200ppmの薬液を茎葉散布した。7日後、病原細菌懸濁液を噴霧接種し、25℃の湿室に48時間置いた後、温室内で発病させ、病原細菌懸濁液接種7日後に下位4葉の病斑数を調査し、(試験例1)における場合と同様にして防除価を算出した。その結果、化合物No.1〜6で示される化合物は85〜100%の防除価を示した。また対照薬剤として、2−クロロ−6−ヒドロキシイソニコチン酸(特開平7−173012号に記載)についても同様の方法で試験を行ったところ、60%の防除価を示した。【0032】【発明の効果】本発明に係る2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体は、植物病害防除剤として有用であり、植物病原ウイルス、細菌及び糸状菌による各種の植物病害の防除に優れた効果を示し、植物に対する薬害の心配がない。 一般式(1)(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を表わし、あるいは、R2及びR3は、それぞれが結合する炭素原子と一緒になってシクロアルキレン基を表わす。R4及びR5は低級アルキル基を表わし、あるいは、R4及びR5は、それぞれが結合する酸素原子及び酸素原子が結合する炭素原子と一緒になって環状アセタール基を表わす。)で示される2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体。 請求項1に記載の2,6−ジクロロイソニコチン酸誘導体を有効成分として含有する植物病害防除剤。


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