タイトル: | 特許公報(B2)_神経成長因子産生誘導剤 |
出願番号: | 1995303772 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 49/707,A61K 31/12,A61K 31/365,A61K 36/07,A61P 25/28,C07D 307/33 |
河岸 洋和 森 啓信 今関 進 坂本 秀樹 石黒 幸雄 JP 3741163 特許公報(B2) 20051118 1995303772 19951027 神経成長因子産生誘導剤 カゴメ株式会社 000104113 入山 宏正 100081798 石黒 幸雄 396026444 河岸 洋和 森 啓信 今関 進 坂本 秀樹 石黒 幸雄 20060201 C07C 49/707 20060101AFI20060112BHJP A61K 31/12 20060101ALI20060112BHJP A61K 31/365 20060101ALI20060112BHJP A61K 36/07 20060101ALI20060112BHJP A61P 25/28 20060101ALI20060112BHJP C07D 307/33 20060101ALI20060112BHJP JPC07C49/707A61K31/12A61K31/365A61K35/84 AA61P25/28C07D307/32 G C07C 49/00 A61K 31/00 A61K 35/00 C07D307/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平02−004785(JP,A) 特開昭56−025136(JP,A) 特開昭56−015236(JP,A) 特開昭53−015346(JP,A) 特開昭52−148045(JP,A) Journal of Organic Chemistry,1979年,44(18),p.3109-3113 3 1997124541 19970513 8 20021002 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、エゾハリタケ科(Climacodontaceae)ブナハリタケ属(Mycoleptodonoides)のキノコであるブナハリタケ(Mycoleptodonoides aitchisonii)の子実体や菌糸体から単離される特定のシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤に関する。【0002】【従来の技術】従来、キノコの子実体から単離される化合物及びその薬剤効果については複数の報告がある。例えば、サルノコシカケ科のキノコであるカワラタケ(Polyporus versicolor)の子実体から単離されるエルゴステロール誘導体には肝臓癌細胞に対する殺細胞効果のあることがテトラヘドロン(tetrahedron)39、2779〜2785(1983)に報告されている。またハラタケ科のキノコであるヒメマツタケ(Agaricus blazei)の子実体から単離されるエルゴステロール誘導体には子宮頸癌細胞に対する殺細胞効果のあることがフィトケミストリ(Phytochemistry)27、2777〜2789(1988)に報告されている。同様のことは特公昭48−6766号公報、特公昭55−71702号公報、特公昭58−62118号公報等にも報告されている。【0003】エゾハリタケ科のキノコであるブナハリタケについても、該ブナハリタケの子実体から香気物質が抽出されることが特開平4−45793に報告されている。また、ブナハリタケ属キノコの培養濾液中に含まれるムコ多糖を有効成分とした制癌剤の製造方法が特公昭52−44606に報告されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、ブナハリタケの子実体や菌糸体から単離される化合物及びその薬剤効果については全く報告がない。【0005】【発明が解決するための手段】 しかして本発明者らは、叙上の如き実情に鑑み、ブナハリタケの子実体や菌糸体から単離される化合物の薬剤効果について鋭意研究した結果、ブナハリタケの子実体や菌糸体に所定の抽出処理及び分画処理を施すと、特定のシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及びγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体が単離され、該シクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及び該γ−ラクトン(γ−lactone)誘導体には神経成長因子(NGF)産生誘導効果のあることを見出した。【0006】 すなわち本発明は、下記の式1で示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤に係り、また下記の式2又は式3で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤に係る。【0007】【式1】【0008】【式2】【0009】【式3】【0010】【発明の実施の形態】式1で示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及び式2又は式3で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体はブナハリタケの子実体及び/又は菌糸体を次のように処理することによって得られる。先ず、ブナハリタケの生あるいは乾燥子実体及び/又は菌糸体を、水及び水溶性有機溶媒の均一混合溶媒で抽出処理し、ろ過や遠心分離等で固液分離して抽出液を得た後、該抽出液から水溶性有機溶媒を蒸発することにより水層を得る。この場合、均一混合溶媒としては、80〜85%メタノール水溶液やエタノール水溶液、85%アセトン水溶液等を使用できる。抽出は通常室温で行なうが、加熱還流しても良く、抽出時間は通常1〜72時間とする。例えば、85%エタノール水溶液中にブナハリタケの乾燥子実体を加え、ホモジナイズ処理し、これを室温で一昼夜放置した後、ろ過して抽出液を得た後、該抽出液を減圧下に40〜45℃で加熱してエタノールを蒸発することにより水層を得るのである。【0011】次に、前記水層を水及び非水溶性有機溶媒の混合溶媒を用いて液−液分配抽出処理し、非水溶性有機溶媒層を分取して、該非水溶性有機溶媒層から非水溶性有機溶媒を蒸発することにより乾固物を得る。この場合、非水溶性有機溶媒としては、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル等を使用できる。例えば、前記水層に酢酸エチルを加え、振盪して放置した後、分層した酢酸エチル層を分取し、該酢酸エチル層を減圧下に40〜45℃で加熱して酢酸エチルを蒸発することにより乾固物を得るのである。【0012】上記乾固物はそれ自体が神経成長因子(NGF)産生誘導剤として有効なものであるが、該乾固物から不純物を除去して神経成長因子(NGF)産生誘導効果を高めるために、該乾固物をクロマト分画処理し、クロマト分画処理したものをさらに再分画処理して目的とするシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及びγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を単離する。この場合、詳しくは実施例で後述するように、ベンゼン、クロロホルム、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム/アセトン、クロロホルム/メタノール、ヘキサン/酢酸エチル、ベンゼン/アセトン、ヘキサン/ベンゼン、ヘキサン/アセトン、ベンゼン/酢酸エチル等を移動層として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等でクロマト分画処理することができ、またODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで再分画処理することができる。【0013】詳しくは実施例で後述するように、かくして再分画処理することにより3種の化合物が単離される。単離される3種の化合物のうちで、第1の化合物の物理化学的性質及び構造解析結果は下記の通りである。(1)分子量:142(C7H10O3)(2)赤外吸収スペクトル(cm−1):1016,1651,1697,2881,2925,3371(3)核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,δ):2.15(3H,S),2.31(1H,dd,J=18.47,1.98),2.80(1H,dd,J=18.47,6.27),4.31(2H,S),4.72(1H,dd,J=6.27,1.98)(4)核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR,δ):13.6,44.4,54.9,71.7,139.3,171.5,206.4(5)溶媒に対する溶解性:クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、メタノールに可溶、水に不溶(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性(7)色および性状:無色油状【0014】以上の物理化学的性質及び構造解析結果から、単離される第1の化合物は式1で示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体であることが決定された。【0015】また単離される3種の化合物のうちで、第2の化合物の物理化学的性質及び構造解析結果は下記の通りである。(1)分子量:144(C7H12O3)(2)赤外吸収スペクトル(cm−1):1018,1176,1761,2935,2974,3466(3)核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,δ):1.21(3H,d,J=6.59),1.35(3H,d,J=6.60),2.14(1H,dd,J=7.10,10.05),2.44(1H,dddq,J=6.59,8.57,9.24,10.05),3.76(1H,dd,J=8.74,9.24),3.96(1H,dq,J=6.60,7.10),4.42(1H,dd,J=8.57,8.74)(4)核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR,δ):17.2,20.8,33.1,53.0,67.5,73.0,179.1(5)溶媒に対する溶解性:クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、メタノールに可溶、水に不溶(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性(7)色および性状:無色油状【0016】以上の物理化学的性質及び構造解析結果から、単離される第2の化合物は式2で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体であることが決定された。【0017】また単離される3種の化合物のうちで、第3の化合物の物理化学的性質及び構造解析結果は下記の通りである。(1)分子量:144(C7H12O3)(2)赤外吸収スペクトル(cm−1):1016,1186,1676,1736,2929,3435(3)核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,δ):1.22(3H,d,J=7.25),1.40(3H,d,J=6.60),2.29(1H,m),2.84(1H,m),3.65(1H,dd,J=6.93,10.55),4.54(1H,m),5.44(1H,dd,J=5.44,10.55)(4)核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR,δ):10.0,20.4,35.6,46.8,60.7,77.5,179.4(5)溶媒に対する溶解性:クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、メタノールに可溶、水に不溶(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性(7)色および性状:無色油状【0018】以上の物理化学的性質及び構造解析結果から、単離される第3の化合物は式3で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体であることが決定された。【0019】詳しくは実施例で後述するように、式1で示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及び式2又は式3で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体は神経成長因子(NGF)産生誘導効果があり、神経成長因子(NGF)産生誘導効果を有する化合物は痴呆症治療剤としての利用が注目されている。【0020】【実施例】試験区分1シクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及びγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体の抽出及び単離:ブナハリタケの乾燥子実体4kgをミキサーにて破砕後、85%エタノール水溶液20Lを加え、ホモジナイズ処理し、これを室温で一夜放置した後、ろ過して抽出液を得た。残渣に85%エタノール水溶液20Lを加え、同様に抽出処理を行なった。同様の抽出処理を合計5回繰り返し、それぞれの抽出液を合わせた。そして合わせた抽出液を減圧下に40〜45℃で加熱してエタノールを蒸発することにより水層を得た。【0021】前記水層に酢酸エチル2Lを加え、振盪して放置した後、分層した酢酸エチル層を分取した。残渣に酢酸エチル2Lを加え、同様に液−液分配抽出処理を行なって酢酸エチル層を分取した。同様の液−液分配抽出処理を合計3回繰り返し、それぞれの酢酸エチル層を合わせた。合わせた酢酸エチル層を減圧下に40〜45℃で加熱して酢酸エチルを蒸発し、更にデシケータで乾燥して乾固物6.01gを得た。【0022】前記乾固物をクロロホルムで溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した(担体はワコーゲルC−200、商品名、和光純薬社製)。この際、移動相として、順次極性が高くなるように、クロロホルムを100ml、クロロホルム/アセトン=9/1(容量比)を200ml、クロロホルム/アセトン=7/3(容量比)を300ml、クロロホルム/メタノール=9/1(容量比)を300mlの計4区分、合計900ml用い、各100mlの画分を合計9画分(以下、BM9画分という)得た。【0023】前記BM9画分のうちの第7画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した(担体はKieselgel 60、商品名、メルク社製)。この際、移動相として、クロロホルム/メタノール=9/1(容量比)を1000ml用い、各100mlの画分を合計10画分得た。このうちの第8画分を更に薄層クロマトグラフィーに供した(担体はKieselgel 60、商品名、メルク社製)。この際、展開溶媒として、クロロホルム/メタノール=85/15(容量比)を用いて展開を行なった。このうちのRf=0.5〜0.7より、式1に示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体を34.9mg単離した。【0024】前記BM9画分のうちの第3画分を更にシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した(担体はKieselgel 60、商品名、メルク社製)。この際、移動相として、クロロホルム/メタノール=9/1(容量比)を1400ml用い、各200mlの画分を合計7画分得た。このうちの第3画分を更に高速液体クロマトグラフィーに供した(担体はYMC R&D D−ODS−5−A、商品名、ワイエムシィ社製)。この際、移動相として、アセトニトリルを1000ml用い、各200mlの画分を合計5画分得た。このうちの第2画分より、式2に示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を59.4mg単離した。【0025】前記BM9画分のうちの第4画分を更にシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した(担体はKieselgel 60、商品名、メルク社製)。この際、移動相として、クロロホルムを700ml用い、各100mlの画分を合計7画分得た。このうちの第6画分及び第7画分を合わせて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した(担体はワコーゲルC200、商品名、和光純薬社製)。この際、移動相として、順次極性が高くなるように、ヘキサン/ベンゼン=1/1、クロロホルム、クロロホルム/アセトン=95/5(容量比)の合計3区分を各300ml用い、各100mlの画分を合計9画分得た。このうちの第8画分より、式3に示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を20.0mg単離した。【0026】試験区分2シクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及びγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体の神経成長因子(NGF)産生誘導効果:古川らの方法{バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications),136,57−63(1986)}にしたがい、胎生後期(19日令)ラットの大脳皮質から調製した初代アストログリア細胞を、10%牛胎仔血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で無菌的に培養した。培養は3日毎に培地を交換して、1〜2週間行なった。コンフルエントに達したところで、培地を0.5%牛血清アルブミンを含むDMEMに変え、更に数日間培養し、培養ベースを得た。別に、試験区分1で単離したシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を各々、ジメチルスルホキシドに溶解し、その溶液を0.5%牛血清アルブミンを含むDMEMに加えたものを調整しておいた。そしてこれらを上記培養ベースに投与して、合計3区分の投与群を調製した。各投与群はシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体の濃度が各々1mMとなるようにした。比較のためシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を溶解することなく、ジメチルスルホキシドだけを0.5%牛血清アルブミンを含むDMEMに加えたものを調製しておき、これを上記培養ベースに投与して、対照群を調製した。合計3区分の投与群と1区分の対照群とを24時間培養した後、培養液を集め、古川らの方法{ジャーナル オブ ニューロケミストリー(Journal of Neurochemistry),40,734−744(1983)}によるエンザイムアッセイ法で神経成長因子(NGF)濃度を測定した。シクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を投与しないで培養した対照群とシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体又はγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を各々1mM投与して培養した各投与群との間でt検定を行なった。その結果、各投与群は1%の危険率で有効と有意に検定された。【0027】【発明の効果】既に明らかなように、以上説明した本発明のシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体及びγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体には神経成長因子(NGF)産生誘導剤として有効という効果がある。 下記の式1で示されるシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤。【式1】 下記の式2で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤。【式2】 下記の式3で示されるγ−ラクトン(γ−lactone)誘導体を有効成分とする神経成長因子(NGF)産生誘導剤。【式3】