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タイトル:特許公報(B2)_くさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法
出願番号:1995274889
年次:2007
IPC分類:C22C 1/00,G01N 25/02,C22C 16/00,C22C 45/10


特許情報キャッシュ

井 上 明 久 篠 原 吉 幸 横 山 嘉 彦 増 本 健 真 壁 英 一 JP 3925564 特許公報(B2) 20070309 1995274889 19950928 くさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法 井上 明久 591112625 株式会社真壁技研 591267707 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 渡辺 望稔 100080159 三和 晴子 100090217 井 上 明 久 篠 原 吉 幸 横 山 嘉 彦 増 本 健 真 壁 英 一 20070606 C22C 1/00 20060101AFI20070517BHJP G01N 25/02 20060101ALI20070517BHJP C22C 16/00 20060101ALN20070517BHJP C22C 45/10 20060101ALN20070517BHJP JPC22C1/00 AG01N25/02C22C16/00C22C45/10 C22C 1/00、16/00、45/00-45/10 G01N 25/02,33/20 特開平07−333180(JP,A) 特開平04−198435(JP,A) 特開昭57−130755(JP,A) 特開平08−109419(JP,A) 特開平08−120363(JP,A) 2 1997087766 19970331 13 20020911 小川 武 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、くさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法に関し、詳しくは、所定組成の合金をくさび形鋳型を用いて完全な溶融状態から急冷し金属ガラス化させる過程における温度変化を検出して、金属ガラスのみを得る際に必要となる臨界冷却速度を得るくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法に関する。【0002】【従来の技術】従来より、アモルファス材を製造するために金属や合金を溶融し、液体状態から急冷凝固させて急冷金属(合金)粉末を得、得られた急冷金属粉末を結晶化温度以下で所定形状に固化して真密度化する方法や溶融金属や合金を急冷凝固させて直接所定形状のアモルファス材を得る方法などが種々提案されている。しかしながら、これら従来の方法によって得られるアモルファス材は、小さい質量のものがほとんどで、これらの方法ではバルク材を得ることは困難である。一方、急冷粉の固化によってバルク状アモルファス材を得る方法も試みられているが、満足のいくバルク材が未だ得られていない。【0003】例えば、小さい質量で生成されるアモルファス材には、メルトスピニング法、単ロール法、プラナーフロー鋳造法などによる薄い帯状(リボン状)、例えば最大板幅約200mm、最大板厚30μm程度のアモルファス材などが得られており、これらのアモルファス材のトランスのコア材等への応用が試みられているが、未だ多くのものが材料化には至っていない。急冷粉から小さい質量のアモルファス材を固化成形する技術として、CIP、HIP、ホットプレス、熱間押出し、放電プラズマ焼結法など種々の方法がとられているが、微細な形状のため流動特性が悪く、ガラス遷移温度以上に昇温できない温度特性の問題があり、成形もまた多工程を要する上に、固化成形後もバルク材としての特性が充分得られない等の欠点を有し、必ずしも満足する方法とはいえない。【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで、最近、本出願人らも特願平06−249254号(特開平08−109419号公報参照)および特願平06−275901号(特開平08−120363号公報参照)に記述しているように、Ln−Al−TM、Mg−Ln−TM、Zr−Al−TMおよびTi−Zr−Be−TM(Ln=ランタン系金属、TM=VI−VIII族遷移金属)のような二元系および三元系合金などのたくさんの合金系において、結晶化前80Kより高い広範な過冷却液体領域で、アモルファス合金が得られている。この後、これらのアモルファス合金は、水クエンチ法、アーク溶解法、銅鋳型鋳造法、高圧ダイキャスト法などの従来の色々な固化法によって、最大厚さが約25mmに達するバルク材として製造されている。このような大きなガラス形成能を持つこれらのアモルファス合金は、新規なアモルファス合金と、以前に報告した、非常に狭い過冷却液体領域を持ち、ガラス転移のないアモルファス合金との間のガラス形成能の著しい差に基づいて、酸化ガラスに類似の金属ガラスとして名付けられている。【0005】これまで、本発明者らは、上述の合金、または特にジルコニア基合金について、水冷銅炉床上での通常のアーク溶解凝固法による金属ガラスバルク材の作製および帯溶融法により一方向凝固させた金属ガラスバルク材の作製ならびに得られた金属ガラスバルク材の性質を提案している。しかしながら、これらの方法では、冷却体上において直接アーク溶解するために銅鋳型との接触面近傍で合金が完全に溶解されない問題があり、アモルファス(非晶質)単相のみからなる、あるいは同単相に近い金属ガラスを得ることが困難であるという問題があった。【0006】ごく最近、本発明者らは、連続冷却変態(C.C.T.)曲線の作成および上述の大きなガラス形成能を持つ金属ガラスに対するガラス形成のための臨界冷却速度の決定について一連の研究を行っている。そこで、本発明者の一人は、Zr65Al7.5Ni10Cu17.5 およびZr60Al10Ni12Cu18ガラスがアーク炉内の銅ハース上のそれらの溶融合金の冷却速度の測定および変態挙動を通して得られた連続冷却変態曲線から10〜20K/sのオーダのガラス形成のためのより低い臨界冷却速度をもつことをすでに報告している。【0007】これらの、アーク溶解法によって準備された溶融合金の臨界冷却速度は、溶融のためのサイクル数に強く依存する。すなわち、臨界冷却速度は、約7回までアーク溶解法を繰り返すことによってかなり減少し、約10回後10〜20K/sのオーダの最小値に飽和するようになる。この臨界冷却速度の大きな変化は、溶融合金の純度の増加を通して異種核生成サイトの除去から始まると思われている。この結果も、異質核生成の影響を含む臨界冷却速度が測定方法に強く依存することを示唆している。約5mmの直径を持つバルク状金属ガラスは、銅鋳型鋳造法によってジルコニア基合金に対して容易に製造されてきた。その結果、銅鋳型鋳造プロセスにおいて連続冷却変態曲線を作成し、ガラス形成のための臨界冷却速度を決定することは、ジルコニア基ガラスにとって重要である。しかしながら、上記特許出願において本発明者らが提案した帯溶融方式および差圧鋳造方式による金属ガラスバルク材の製造では、正確な連続冷却変態曲線の作成が困難で、金属ガラス形成のための正確な臨界冷却速度を決定することができないという問題があった。【0008】本発明の目的は、くさび形鋳型鋳造法を用いることにより、アモルファス材としての特性に優れたバルク状金属ガラス材を製造するための条件として必要になる金属ガラス形成のための正確な臨界冷却速度を簡単な操作で容易に算出し、好ましくは正確な連続冷却変態曲線を作成することで正確な臨界冷却速度を算出し、決定することができ、得られた金属ガラスバルク材を評価することのできるくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、くさび形銅鋳型内に鋳込まれる溶融Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金に対する連続冷却中の変態挙動および異なるキャビティサイトでの固化構造を試験することにより、合金の複数の測定点での温度変化から正確な連続冷却変態曲線を容易に作成し、ガラス形成のための正確な冷却速度を決定できることを知見し、このバルク状アモルファス金属の製造における知見に基づいて、簡単な操作で容易に種々の組成の合金からなる金属ガラスを製造する条件を開発するために鋭意研究を重ねた結果、溶融状態の金属材料をくさび形水冷鋳型に瞬時に鋳込むことにより、その目的を達成できることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。【0010】 すなわち、本発明は、完全に溶解した所定組成の合金をくさび形鋳型に鋳込んで急冷し、凝固する合金の温度変化を、当該合金の、前記くさび形鋳型の頂点から深さ方向に距離が異なる複数の点について連続的に検出し、前記複数の点の温度変化から連続冷却変態線図を作成して、結晶相の変態曲線の鼻を特定し、この鼻を通る冷却速度として非晶質相が生成する臨界冷却速度を算出し、得られた臨界冷却速度を用いて前記所定組成の金属ガラスバルク材の金属ガラスの形成能の評価を行うことを特徴とするくさび形鋳型鋳造を用いた金属ガラスの評価方法を提供するものである。【0011】 ここで、前記臨界冷却速度は、前記合金の融点をTm、前記変態曲線の鼻の温度をTn、この鼻での変態開始までの時間をtnとする時、(Tm−Tn)/tnから算出されるのが好ましい。【0012】【発明の作用】本発明のくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法では、まず所定組成の合金、好ましくはアモルファス形成能の高い合金、例えばジルコニア基合金を高エネルギ熱源、例えば高周波加熱源にて完全に溶解し、完全な溶融状態とした後、くさび形鋳型に鋳込むことにより、急冷バルク合金を作製する。ここで、くさび形鋳型ではその側面から中心までの距離は、その頂点からの距離が増大するにつれて連続的に増大して、冷却速度もそれに応じて低下するので、鋳型の形状、すなわち頂角を適当に選ぶことにより、アモルファス単相のみからなる領域と、結晶相のみからなる領域と、それらの中間領域とを同時に存在させることができる。このため、急冷バルク合金の製造と同時に、凝固する合金の温度変化を連続的に、好ましくはくさび形鋳型の頂点からの距離の異なる複数の点について検出し、これに基づいてアモルファス相が生成する臨界冷却速度を算出することができる。こうして本発明法によって得られた所定組成の合金の臨界冷却速度を用いて種々の方法で製造された金属ガラスバルク材を評価することができる。【0013】この時、好ましくは、臨界冷却速度は、くさび形鋳型の頂点からの距離の異なる複数の点の温度変化から連続冷却変態線図(曲線)を作成して、結晶相の変態曲線の鼻(ノーズ)を特定し、この鼻を通る冷却速度として算出される。さらに具体的には、この所定組成の合金の融点をTm、結晶相の変態曲線の鼻の温度をTn、この鼻での変態開始までの時間をtnとする時、臨界冷却速度(Rc)は下記式から算出される。Rc=(Tm−Tn)/tn【0014】本発明方法は、高周波加熱源などの高エネルギ熱源を用いて予め完全に溶融できれば、上述した3元系合金、Zr−Al−Ni−CuやZr−Al−Ni−Cu−Pdなどを始めとして4元系以上の多元系合金を含めほとんどあらゆる金属元素の組み合わせからなる合金について適用でき、またアモルファス相の生成が可能である。本発明において、これらの合金材料はその溶融物を得るためには、高エネルギ熱源による溶融がより容易なように、粉末状あるいはペレット状にして用いるのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、予め溶融が可能であれば、どのような形状の合金材料を用いてもよい。例えば、粉末状、ペレット状の他、線状、帯状、棒状、塊状など高エネルギ熱源に応じて適当な形状を適宜選択すればよい。【0015】本発明に用いられる高エネルギ熱源としては、容器、例えば石英管ノズル内において合金材料を予め完全に溶融可能であれば、特に制限はなく、どのような熱源を用いてもよいが、例えば、代表的に高周波加熱源、アーク熱源、プラズマ熱源、電子ビーム、レーザなどを挙げることができる。これらの熱源は、溶融合金を入れておく容器に対し、1個であっても、複数個を重畳して用いてもよい。なお、本発明においては、所定組成の合金材料をチャンバー内をアルゴンなどの不活性ガスで置換したアーク炉などにて溶製して、母合金を製造した後、この母合金を石英管などの容器内に封入し、鋳造に際しては、真空下で高周波加熱源により再溶解して用いるのが好ましい。【0016】本発明法で用いられるくさび形(V形)鋳型の材質、形状は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択が可能であるが、例えば、Zr−Al−Ni−Cu−Pd合金の場合、銅鋳型とし、くさび形(V形)の頂角(ノッチ角)θは7〜15°としてもよく、この範囲から適宜選択すればよい。なお、本発明法におけるくさび形鋳型への溶融合金の鋳込み温度および鋳込み圧(溶融合金の噴出圧)も特に制限的ではなく、くさび形鋳型や溶融合金に応じて適宜選択可能であるが、例えば、Zr−Al−Ni−Cu−Pd合金の場合、鋳込み温度を1273〜1573K、鋳込み圧を0.05〜0.25MPaとして鋳造するのがよい。【0017】【発明の実施の形態】本発明に係るくさび形鋳型鋳造を用いた金属ガラスの評価方法を添付の図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。【0018】図1は、本発明のくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法を実施する装置の概略模式図である。この装置10は、バルク状金属ガラスを製造するためのものであって、溶融合金12を入れた石英管14と、石英管14の外周に複数回巻回されたコイルからなる高周波加熱源16と、本発明法で特徴的な図中破線で示されるくさび形(以下、V形という)キャビティ18を持つ水冷銅鋳型20とを有する。ここで石英管14の先端には石英管ノズル14aが設けられ、溶融合金12をV形キャビティ18に所定圧力で噴出し、鋳込む。高周波加熱源16は図示しない電源に接続され、加熱温度がそのコントローラによって制御される。【0019】本実施例に用いられた図1に示す銅鋳型20のV形キャビティ18のV形の寸法は、深さが50mmの一定であったが、頂角が5〜15°の範囲で変えられたが、本発明法はこれに限定されるわけではない。【0020】また、銅鋳型20のV形キャビティ18内の中心線上にあって頂点から10mmのサイトa、20mmのサイトb、30mmのサイトc、35mmのサイトdおよび40mmのサイトeには熱電対22a、22b、22c、22d、22e、が設置される。熱電対22a〜22eは、鋳込まれた溶融合金12が急冷され、凝固して急冷バルク状合金となる際の温度変化を測定するもので、図示しない測定装置によって各熱電対22a〜22eの温度の時間変化が連続的に計測される。ここで熱電対22a〜22eは、特に限定されず、溶融合金の温度に応じて適宜選択すればよいが、本実施例で用いるZr-Al-Ni-Cu-Pd合金の場合に用いた溶融合金の温度が1273K〜1573Kである場合には、Pt−PtRh熱電対が好ましい。また、温度変化測定のための熱電対の数は、冷却凝固に影響がなければ多い方が好ましいが、図示例の5個に限定されず、何個であっても、どこに設置してもよい。【0021】本発明法に用いられる装置10は、基本的に以上のように構成されるが、以下に、本発明のくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法を説明する。石英管14内には合金材料が真空下もしくは不活性ガス下に封入されるが、この合金材料は、予めアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中でアーク溶解したものを封入するのがよい。このようにして封入された合金材料をコイル状高周波加熱源16で加熱溶解して、所定温度、上述のZr-Al-Ni-Cu-Pd合金の場合、1273K〜1573Kの範囲内の温度の溶融合金12を準備する。【0022】この後、石英管14のノズル14aから溶融合金12を所定鋳込み圧力で噴出し、銅鋳型20のV形キャビティ18内に鋳込で、急冷し、凝固させて、急冷バルク合金を製造する。この時、同時に急冷凝固する合金の図示例では5つの異なるサイト(位置)a〜eの温度変化をそれぞれ図示例では5つの熱電対22a〜22eによって鋳込み温度から経時的かつ連続的に測定する。【0023】次いで、後述する図8に示すように、得られた5点a,b,c,d,eの温度変化から、連続冷却変態(C.C.T.)線図(曲線)を作成し、結晶相の変態曲線(変態開始曲線)の鼻(ノーズ)を特定し、この鼻を通る冷却曲線から臨界冷却速度Rcを算出する。また、連続冷却変態曲線から特定された鼻の温度Tnおよびこの鼻での変態開始までの時間tnを特定し、合金組成に応じた融点Tmを用いて、臨界冷却速度Rcを下記式から算出してもよい。Rc=(Tm−Tn)/tnなお、本発明法においては、コンピュータによる処理を行って、急冷凝固合金の複数点における温度変化の測定から連続冷却変態曲線(線図)の作成、結晶相の変態曲線の鼻点の特定、およびこの鼻を通る冷却曲線の作成を自動化して、臨界冷却速度Rcを自動的に算出するようにしてもよいし、もしくは合金組成に応じて融点Tmを予め与えておき、この鼻点の温度Tn、開始までの時間tnの算出までを自動化し、式 Rc=(Tm−Tn)/tn を自動的に演算して、臨界冷却速度Rcを自動算出するようにしてもよい。さらに、本発明法の合金の溶融、鋳込みなどの操作も自動化してもよい。【0024】このようにして得られた臨界冷却速度Rcを用いて、種々の製造法によって得られる急冷バルク合金の金属ガラスバルク材としての評価をすることができる。【0025】【実験例】以下に、本発明法を実験例を用いてより具体的に説明する。(実験例1)本実験例1においては、異質核生成の抑制を通して大きなガラス形成能を持つので、Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金が選ばれた。母合金は、アルゴン雰囲気中で各純金属の混合物をアーク溶解することによって用意された。Zr−Al−Ni−Cu−Pd合金の固化分析に対して図1に示す装置10が使用された。銅鋳型20内のくさび型キャビティ18は、50mmの一定深さと、5〜15°の範囲の頂角を持つものが用いられた。溶融合金12の石英管ノズル14aからの噴出圧力は0.05MPaに固定されたが、射出温度は、1273〜1573Kの範囲で変えられた。射出された溶融物12の冷却速度は、図1に示すくさび型キャビティ18の深さ方向に沿った5つの異なるサイトa〜eに設置されたPt−PtRh熱電対22a〜22eで測定された。【0026】得られたくさび型インゴットの固化構造は、X線回折法、光学および電送電子顕微鏡測定法(OMおよびTEM)によって測定された。光学顕微鏡法(OM)試料は、1%フッ酸水溶液に298Kで5秒間エッチングされ、電送電子顕微鏡測定法(TEM)試料は、10%硝酸および90%メタノールの溶液に約230Kで電解によって薄くすることによって準備された。ガラス転移、過冷却液体および結晶化と関連する熱的安定性が、加熱速度0.67K/sで示差走査熱量計(DSC)によって試験された。液体および固体の温度を決定するための熱分析もまた、0.03〜3.03の異なる走査速度で示差熱分析(DTA)によって行われた。【0027】図2は、射出温度1473Kでのアモルファス相の形成に対するくさび型キャビティ18の垂直点からの深さ(d)と頂角(θ)との間の関係を示す。アモルファス相は、頂角(θ)が10°より小さい範囲においては全深さ範囲に亘って得られている。しかしながら、アモルファス単相はこれより大きい頂角範囲において形成されず、アモルファス単相の形成のための最大深さ(dc)は、頂角(θ)=12.5°で約30mmおよび頂角(θ)=15°で約20mmに減少する。図3も、射出温度に対する頂角(θ)=12.5°での最大深さdc値の変化を示す。最大深さdc値は、噴出温度の増加に伴って増加する、すなわち1273Kで24mmから1573Kで30mmに増加する傾向にある。【0028】図4は横断面におけるaおよびbでマークされたサイトでの光学顕微鏡写真を示す。ガラス状から結晶相への転移は銅鋳型20と接触する垂直端または表面からの距離の増加に従って起こる。アモルファス相の形成を確かにし、結晶相を特定するために、X線回折パターンが横断面内の領域A,BおよびCから取られた。図5に示すように、X線回折パターンから、領域Cに対してアモルファス単相が、領域Bに対してアモルファス相+bct−Zr2 Ni相+bct−Zr2 Cu相が、領域Aに対してZr2 Cu相+Zr2 Ni相が特定される。【0029】図4に示すように粒子サイズ0.4〜5μmを持つ結晶はZr2 NiおよびZr2 Cu相からなると結論された。Zr−Al−Ni−Cu−Pd合金の平衡構造がZr2 Ni,Zr2 Cu,Zr3 AlおよびZr2 Pd相からなることを考慮すると、領域AおよびBは非平衡結晶構造を持つということになる。領域Aの非平衡Zr2 (Ni,Al,Pd)およびZr2 (Cu,Al,Pd)相の形成は、過冷却液体から平衡複合相への転移の困難さを示し、そしてそれは大きなガラス形成能を達成するための重要な要因である。【0030】領域Cにおいて形成されたアモルファス相における結晶性が存在しなしことも、電送電子顕微鏡測定法(TEM)によって試験される。図6は(頂点)から約10mmだけ離れたサイトaから取られたZr−Al−Ni−Cu−Pd鋳造合金の明視野電子顕微鏡写真および選択領域電子回折パターンを示す。明視野画像は特徴のないコントラストを示し、回折パターンも、アモルファス単相の形成をはっきりと示すヘイローリング(後光輪)からなる。【0031】図7は、電送電子顕微鏡測定法(TEM)試料と同じ領域から取られた鋳造合金の示差走査熱量計(DSC)曲線を示す。約680Kより低い温度範囲における構造上の緩和による極めて広範な発熱反応、これに続いて約683Kごろのガラス転移による吸熱反応、683〜778Kの範囲の広い過冷却液体領域の出現、そしてその後の778Kでの開始温度を持つ結晶化による鋭い発熱反応を理解することができる。【0032】鋳造合金のガラス転移温度(Tg)およびこの鋳造合金のガラス転移温度(Tg)と結晶化開始温度(Tx)との差ΔTx(=Tx−Tg)によって打ち消される過冷却領域の温度間隔は、同一の合金組成を持つメルトスパンアモルファスリボンに対するそれら(Tg=683K、ΔTx=95K)と全く同一である。この一致は、鋳造インゴットとメルトスパンリボンとの間の乱れた構造においてはっきりと区別できる差異はないことを示唆する。【0033】本発明においては、横断面における異なるサイトでの連続冷却中の変態挙動を試験することによってZr60Al10Ni10Cu15Pd5 溶融合金の連続冷却変態(C.C.T.)曲線を作成する。図8は、共融温度(Te)、鋳造合金のガラス転移温度(Tg)および結晶化開始温度(Tx)と一緒に、くさび型キャビティの頂点から(a)10mm、(b)20mm、(c)30mm、(d)35mmおよび(e)40mmだけ離れているサイトで連続冷却中の溶解物の変態挙動を示す。【0034】図9に示す低冷却速度0.033K/sでの示差走査熱量計(DSC)データを基礎として、現在の合金は共融点近くに置かれ、第1結晶相の凝固温度と共融温度との間の温度差が33Kと同じように小さい。容易に感知できる回復(発熱)現象は、10mmおよび20mmだけ離れた位置でほとんどアモルファス単相の生成を表わす、図8に示す(a)および(b)曲線には見られない。しかしながら、わずかな回復が曲線(c)における1040Kで見られ、回復が生じ始める温度および回復の量は、頂点からの距離が増加するにつれて増加する。【0035】 図8に示す異なる冷却速度での熱分析データに基づいて、Zr−Al−Ni−Cu−Pd合金に対する過冷却液体から結晶相への連続冷却変態(C.C.T.)曲線は図10に示される。ここで、CsおよびCtはそれぞれ変態の開始点および終了点を表わす。連続冷却変態(C.C.T.)曲線から、変態の開始のための鼻(ノーズ)の温度(Tn)が1018Kであると測定され、(Tm−Tn)/tnによって定義されるガラス転移のための臨界冷却速度(Rc)は110K/sであると評価される。ここで、Tmは溶解温度(融点)であり、tnは鼻(ノーズ)の温度(Tn)での変態の開始までの時間である。【0036】この合金は、Tg/Tmが0.61という高度に低減されたガラス転移温度を持つことがさらにわかる。ここで、CsとCtとの間の時間間隔が約0.2秒と短く、こうしてZr2 (Ni,Al,Pd)およびZr2 (Cu,Al,Pd)の非平衡結晶相の成長がむしろ高速度で進行することを指摘することは重要である。この点に関するより詳細な説明は以下に述べられる。【0037】本鋳造法と従来のアーク溶解法との間の臨界冷却速度の差異の理由Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金におけるアモルファス相の生成のための臨界冷却速度は、連続冷却変態(C.C.T.)曲線から約110K/sであると測定されることは上述された。臨界冷却速度はPdを含まないZr65Al7.5Ni10Cu17.5 およびZr60Al10Ni12Cu18合金の臨界冷却速度(10〜20K/s)より約1オーダだけ大きい。Zr−Al−Ni−Cu合金のガラス形成能についてのPdの影響についてはほとんど知られていない。【0038】しかしながら、Pdの溶解がガラス形成能において重大な減少を引き起こすと考えることは困難である。なぜなら、Pdの付加は、一方向性固化法によってバルク状金属ガラスの容易な生成を引き起こすことが報告されているからである。加えて、Pdの付加の効果は、過冷却液体における結晶相の異種核生成の抑制のせいである。従って、Zr−Al−Ni−Cu合金に対する臨界冷却速度に比較してPd含有合金の臨界冷却速度の重大な増加は、おそらく連続冷却変態(C.C.T.)曲線の作成のために用いられる方法の相違によるであろう。【0039】アーク溶解法によって得られる臨界冷却速度は、溶解のサイクル数(N)に強く依存することが指摘されている。すなわち、臨界冷却速度はN=3に対して約100K/sであり、N=7に対して約10K/sに有意に減少する。このはっきりとした変化は、溶解の繰り返しが異質な核生成源の除去を通して溶融合金の純度の増加を生じさせる。【0040】他方、本測定法における溶解物は、石英管内で一旦溶解すると、くさび型鋳型内に射出される。この手順において、約7回の繰り返しによって用意されたアーク溶解合金が母合金として使用されている場合でさえ、溶解物に対する純度を高度に維持することは困難である。この困難さは、本測定法において約1オーダだけのガラス転移のための臨界冷却速度の増加の理由であるように思われる。さらに、この明白な差異は、また、溶解物のための純度の程度の改善がくさび型鋳造法によってでさえ10K/sのオーダの臨界冷却速度の達成を引き起こす可能性を示す。【0041】過冷却液体からの非平衡結晶相の速い成長反応の理由図10に示す連続冷却変態(C.C.T.)曲線は、過冷却液体から結晶相への変態が結晶核の生成後、極めて急速に起こることをはっきりと示している。領域Aの結晶質(微結晶)は非平衡bct−Zr2 (Ni,Al,Pd)相およびbct−Zr2 (Cu,Al,Pd)相からなることを考慮すると、中間段階の相としての非平衡結晶相の形成は、速い成長反応を可能にするように思われる。加えて、それらの結晶相の析出に起因する回復による温度の増加は、成長反応の加速において重要な役割を演ずるように思われる。速い成長反応もまた、過冷却液体から結晶相への変態の遅れは、結晶核の生成の困難さによることを意味している。【0042】この結果は、本発明法によるアモルファス合金に対する大きなガラス形成能の達成に対する先の出願で開示した概念と一致している。すなわち、大きなガラス形成能に対する主要な理由は、重大に異なる原子サイズを持つ3種の元素より多くからなる高度に濃縮したでたらめに詰まった液体における固/液界面エネルギの増加に起因する結晶相の核生成反応の困難さのせいである。この結果も、また、成長反応の遅れに通じる合金設計がガラス形成能のさらなる増加を可能にすることを示唆している。【0043】Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 溶融合金が、銅鋳型の深さ50mm、5〜15°の異なる頂角(θ)を持つくさび型キャビティ内に鋳込まれ、異なるサイトでの連続冷却中の変態挙動および固化構造が熱分析および従来の金属組織学的技術によって試験された。得られた結果は以下のように要約される。【0044】(1)鋳造インゴットは、10°より小さい頂角(θ)の範囲ではガラス相のみからなり、頂角(θ)がさらに増加すると、共存するガラス相と結晶相の形成が生じる。(2)結晶相は、0.4〜5μmの粒径を持つ非平衡Zr2 (Ni,Al,Pd)およびZr2 (Cu,Al,Pd)相からなる。【0045】(3)鋳造金属ガラスは、連続加熱における、ガラス状固体→過冷却液体→結晶相と続く連続する相変移を示し、鋳造合金のガラス転移温度(Tg)および結晶化開始温度(Tx)の値は、それぞれ、メルトスパンガラス状リボンに対するそれらの温度と一致して、683Kおよび778Kである。【0046】(4)熱分析データに基づいて、過冷却液体から中間結晶相への連続冷却変態(C.C.T.)曲線は、始点(Cs)および終点(Ct)において決定された。連続冷却変態(C.C.T.)曲線のノーズ温度(Tn)およびノーズ点までの時間(tn)は、それぞれ、1018Kおよび0.93sであると測定された。CsとCt点との間の時間間隔は0.2秒と短く、成長反応は急速に起こる。【0047】(5)(Tm−Tn)/tnによって定義されるガラス生成のための臨界冷却速度(Rc)は、110K/sであると評価された。そしてこの値は、Zr65Al 7.5Ni10Cu17.5 およびZr60Al10Ni12Cu18のためのアークメルト法による溶融を7回繰り返した後に得られる値よりも約1オーダ大きい値であった。重大な違いは、結晶相の不均一核生成の容易さに関係する溶融合金の清浄度の程度の違いに由来すると解釈される。それゆえに、溶融合金の純粋さのさらなる改善がガラス形成能におけるさらなる増加を生じさせることが結論される。【0048】【発明の効果】以上詳述したように、本発明法によれば、くさび形鋳型を用いることにより、正確な連続冷却変態線図を容易に簡単な操作で作成することができ、従って、金属ガラスバルク材を形成するための臨界冷却速度を正確かつ容易に算出することができ、所定組成の金属ガラス形成能を正確に評価することができる。本発明法によってなされた金属ガラスバルク材の評価技術は、今後のアモルファス合金の基礎科学から工業材料の発展において極めて重要であり、産業上大きな効果を発揮する。【図面の簡単な説明】【図1】本発明法を実施するために、くさび型鋳造物試料の準備および横断面において異なるサイトでの連続冷却変態(C.C.T.)挙動の測定に用いられる装置の模式的概略図である。【図2】1473Kの温度からくさび型銅鋳型内に鋳込まれたZr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金に対して頂角(θ)に関数としてガラス相の形成のための頂点からの臨界距離(dc)の変化を示すグラフである。【図3】θが12.5°であるくさび型鋳型に鋳込まれたZr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金に対する溶融合金の射出温度の関数としての臨界距離(dc)の変化を示すグラフである。【図4】θ=12.5°であるくさび型をした鋳造されたZr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金の横断面の状態を示す図であり、(a)および(b)はこの合金横断面における領域aおよびbから取られた光学顕微鏡写真である。【図5】θ=12.5°のくさび型をした、鋳造されたZr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金の横断面における領域A,BおよびCから取られたX線回折パターンである。【図6】θ=12.5°のくさび型をした鋳造されたZr60Al10Cu15Pd5 合金の領域Cから取られた明視野電子顕微鏡写真および選択領域電子線回折パターンである。【図7】θ=12.5°のくさび型を持つ鋳造Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金の領域Cから取られたDSC曲線を示すグラフである。【図8】θ=12.5°のくさび型を持つ鋳造Zr60Al10Ni10Pd5 合金の横断面における異なるサイト(a)〜(e)での温度−時間曲線を示すグラフである。【図9】Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金に対する異なる冷却速度で測定された示差熱分析曲線を示すグラフである。【図10】Zr60Al10Ni10Cu15Pd5 合金の、過冷却液体から結晶相への変態の連続冷却変態線図(C.C.T.曲線)を示すグラフである。ここで、CsおよびCtはそれぞれ変態の開始点と終了点を表わす。【符号の説明】10 本発明法を実施するのに用いられる装置12 溶融合金14 石英管14a 石英管ノズル16 高周波加熱源18 くさび形キャビティ20 銅製鋳型22a、22b、22c、22d、22e 熱電対a,b,c,d,e サイト(位置) 完全に溶解した所定組成の合金をくさび形鋳型に鋳込んで急冷し、凝固する合金の温度変化を、当該合金の、前記くさび形鋳型の頂点から深さ方向に距離が異なる複数の点について連続的に検出し、前記複数の点の温度変化から連続冷却変態線図を作成して、結晶相の変態曲線の鼻を特定し、この鼻を通る冷却速度として非晶質相が生成する臨界冷却速度を算出し、得られた臨界冷却速度を用いて前記所定組成の金属ガラスバルク材の金属ガラスの形成能の評価を行うことを特徴とするくさび形鋳型鋳造を用いた金属ガラスの評価方法。 前記臨界冷却速度は、前記合金の融点をTm、前記変態曲線の鼻の温度をTn、この鼻での変態開始までの時間をtnとする時、(Tm−Tn)/tnから算出される請求項1に記載のくさび形鋳型鋳造法を用いた金属ガラスの評価方法。


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