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タイトル:特許公報(B2)_アルコールの酸化反応剤及びそれを用いた酸化方法
出願番号:1995262258
年次:2006
IPC分類:C07C 27/00,C07B 33/00,C07B 41/06,C07B 41/08,C07C 45/29,C07C 49/04,C07C 49/175,C07C 49/385,C07C 49/395,C07C 49/403,C07C 49/713,C07C 49/76,C07C 49/78,C07C 49/786,C07C 49/17,C07C 51/235,C07C 53/126,C07C 53/124,C07C 55/12,C07C 55/14,C07C 61/09,C07C 67/40,C07C 69/24,C07C 69/75,C07D 307/33


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石井 康敬 中野 達也 JP 3779755 特許公報(B2) 20060310 1995262258 19950913 アルコールの酸化反応剤及びそれを用いた酸化方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 鍬田 充生 100090686 石井 康敬 中野 達也 20060531 C07C 27/00 20060101AFI20060511BHJP C07B 33/00 20060101ALI20060511BHJP C07B 41/06 20060101ALI20060511BHJP C07B 41/08 20060101ALI20060511BHJP C07C 45/29 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/04 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/175 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/385 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/395 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/403 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/713 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/76 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/78 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/786 20060101ALI20060511BHJP C07C 49/17 20060101ALI20060511BHJP C07C 51/235 20060101ALI20060511BHJP C07C 53/126 20060101ALI20060511BHJP C07C 53/124 20060101ALI20060511BHJP C07C 55/12 20060101ALI20060511BHJP C07C 55/14 20060101ALI20060511BHJP C07C 61/09 20060101ALI20060511BHJP C07C 67/40 20060101ALI20060511BHJP C07C 69/24 20060101ALI20060511BHJP C07C 69/75 20060101ALI20060511BHJP C07D 307/33 20060101ALI20060511BHJP JPC07C27/00 350C07B33/00C07B41/06 CC07B41/08C07C45/29C07C49/04 AC07C49/175 AC07C49/385 AC07C49/395C07C49/403 AC07C49/713C07C49/76 AC07C49/78C07C49/786C07C49/17C07C51/235C07C53/126C07C53/124C07C55/12C07C55/14C07C61/09C07C67/40C07C69/24C07C69/75 ZC07D307/32 EC07D307/32 F C07B 41/06- 41/12 C07B 33/00 C07C 45/29 C07C 51/235 C07C 67/40 JICSTファイル(JOIS) CA(STN) 特開昭63−130552(JP,A) 特開昭64−019033(JP,A) 特表平07−506337(JP,A) Tetrahedron Letters,1982, Vol.23, No.5,p.539-542 Chemistry Letters,1995, No.10,p.871-872 11 1997077705 19970325 19 20011015 特許法第30条第1項適用 平成7年3月13日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第69春季年会1995年講演予稿集▲II▼」に発表 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液相酸化反応において、アルコールからエステル、ケトン、ラクトン又はジカルボン酸などを生成させる上で有用なアルコールの酸化反応剤およびこの触媒を用いたアルコールの酸化方法に関する。【0002】【従来の技術】ハロゲン酸及びその塩(以下、ハロゲン酸類と称する場合がある)は、工業的に利用価値の高い酸化物として古くから活用されており、アルコール類の酸化のみならず、アルデヒド類の酸化、オレフィン類やパラフィン類の酸化、酸化脱水素、酸化開裂などの反応において高い活性を示すことが知られている。酸化剤としてのハロゲン類としては、前記ハロゲン酸の他、ハロゲン、次亜ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸、ハロゲン酸フッ化物、N−ハロゲン酸アミド、次亜ハロゲン酸エステル、ヨードシル化合物などがよく利用されている。ハロゲン酸類は、酸化反応全般に利用できる比較的安価な酸化物であるとともに、ハンドリングが容易であり、代表的な空気酸化や過酸化物を用いた酸化反応などに比べても非常に安全であり、かつコントロールしやすいという利点がある。また、化学量論的に反応が進行するため、使用量により反応を制御することが可能であり、他の一般的な酸化反応では困難な高い酸化選択性が得られる利点もある。従って、前記ハロゲン酸類を用いる酸化方法は、工業的には付加価値の高い化合物(例えば、医薬、農薬などの原体など)を少量バッチ生産する上で有効な手段として活用されている。【0003】ハロゲン酸類を酸化剤として利用する方法は、主に、3種類、すなわち、(1)ハロゲンを単独又は有機溶媒中で用いる方法、(2)酸性溶液中、次亜ハロゲン酸を用いる方法、(3)アルカリまたは炭酸塩とともハロゲンを次亜ハロゲン酸塩として用いる方法に大別される。これらの方法のうち、(1)の方法は、ハロゲンガスを大量に使用するため、環境上の問題から大規模な除害設備が必要となるだけでなく、将来的には法的規制を受ける可能性が強い。また、(2)の方法は、反応系を酸性にする必要があるため、副反応が生じる場合が多く、酸化反応生成物の選択性が低下する。さらに酸性下において酸化活性種たる次亜ハロゲン酸への分解効率で小さいため、通常、被酸化物(基質)に対して3〜10倍モル量以上の過剰なハロゲン酸類が必要となり、経済的に不利である。これに対して、(3)の方法は、酸化活性種が比較的安定な塩の形態で存在するため、取り扱い性が容易であり、基質に対して若干過剰量の次亜ハロゲン酸塩を使用すればよいという利点がある。【0004】そこで、前記(3)の方法に関して、いくつかの酸化技術の改良が提案されている。例えば、特開昭62−155225には、アルカリ性媒体中、亜臭素酸又はその塩に対して、活性化剤として、マグネシウム、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウムの単体、又はこれらの金属の塩(硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、燐酸塩)を添加し、炭化水素類やアルコール類を液相で酸化する方法が開示されている。この文献には、ジオールからジケトン、ラクトンなどを生成させる例が記載されている。また、特開平1−151532号公報および特開平1−151534号公報には、アルミナ又はシリカゲルの存在下、水に不溶な不活性有機溶媒中、固体の亜臭素酸塩とアルコールとを反応させ、ケトンやアルデヒドを生成させる方法が開示されている。【0005】しかし、これらの方法は、一部のアルコール基質を除いて酸化収率が50%〜80%程度と低く、反応後の精製処理が必要となる。また、各種の金属や重金属化合物を添加するため、反応後の廃棄物処理に特殊な設備などを必要とする。【0006】一方、ジオール類の酸化反応では、ジケトン、ジアルデヒド、ジカルボン酸、ケトアルデヒド、ケト酸、ラクトン、ケトルアルコール、ヒドロキシアルデヒドなどの工業的に極めて利用価値の高い化合物が得られる。そのため、ジオール類についても様々な酸化手法が検討され、前記酸化反応生成物を選択的に製造する方法が試みられている。例えば、ハロゲン又は含ハロゲン化合物を用いる手法以外にも、一般的なアルコール化合物の酸化方法として、(1)分子状酸素を酸化剤として用いるラジカル的な手法、(2)クロム酸やマンガン酸などの金属酸化物を用いる手法、(3)複合金属種である固体酸触媒を用いる手法、(4)有機又は無機の過酸化物を用いる手法、(5)カルボニル化合物などを水素受容体とした金属錯体を用い、錯体上での配位子交換による手法などが検討されている。しかし、ジオール類の酸化では、反応を制御する必要性などから、前記の一般的な手法が広く適用できず、しかも、これらの手法が適用できる場合でも反応条件が厳しく限定される。また、ジオール類の酸化方法では、様々な組み合わせの酸化生成物が得られるため、反応後の処理・精製の煩雑さを避けるためには、酸化反応において高い転化率および反応選択性が求められている。【0007】このような点から、ジオール類は、非常に特殊な酸化系で酸化する場合が多い。例えば、ジオール類から対応するジケトンを生成させる酸化方法として、酸化クロム(VI)−ピリジン錯体による酸化[Sarett法、Cornforth法]、DMSO酸化法、NaIO3 やKIO3 を用いる酸化方法、Pt/O2 空気酸化法などが知られている。また、ジオール類から対応するケトアルコールを生成させる酸化方法としては、四酢酸鉛/ピリジンを用いる方法や次亜ハロゲン酸/硝酸アンモニウム塩を用いる方法も知られている。これらの方法では、いずれも比較的高い反応効率および選択率で目的化合物を生成させることができ、有効な酸化方法である。一方、隣接する炭素原子にヒドロキシル基が結合したビシナルなジオール類の酸化反応では、酸化過程で炭素−炭素間結合の開裂(グリコール開裂)が生じやすいので、対応する1,2−ジケトンやアシロインを選択的に生成させることが特に困難である。そこで、選択性を高めるためには、過剰量の炭酸銀/セライト試薬を用いるFetizon法などの限られた方法しか採用できない。【0008】このように、各種アルコール類に対して汎用の酸化方法は極めて例が少なく、とりわけ工業的に有利な酸化剤であるハロゲン酸類を利用した汎用性のある酸化方法は確立されていない。【0009】ハロゲン酸類を用いた化学量論的な反応に関し、H5 IO6 又はNaBrO3 とNaHSO3 とを用いることにより、オレフィン類などの不飽和炭化水素から対応するハロヒドリン誘導体が高い収率で生成する(J. Org. Chem., 59, 5550-5555(1994))。この方法では、例えば、オレフィンから対応するハロヒドリンが生成し、α,β−不飽和カルボニル化合物から対応するα−ハロアルドールが生成し、アリルアルコールから対応する2−ハロ−1,3−ジオールが生成し、アルキンから対応するケトン,ジケトン又はα,α−ジハロケトンを高い収率で生成させることができる。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ハロゲン酸類を用い、高い反応性および選択性で、アルコール類を酸化できる反応剤およびそれを用いた酸化方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、温和な条件下であっても、化学量論的に高い転化率および選択率でアルコール類を酸化できる反応剤およびそれを用いた酸化方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、各種アルコール類に対して汎用性のある酸化反応剤およびそれを用いた酸化方法を提供することにある。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、NaBrO3 /NaHSO3 酸化系を、一級アルコールやα,ω−ジオールなどのアルコール類の酸化反応に適用したところ、一級アルコールからは酸化的エステル化によりエステルが生成し、α,ω−ジオールからは対応する環状エステルがそれぞれ高い収率で生成することを見いだし、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成した。【0012】 すなわち、本発明のアルコールの酸化反応剤は、下記式 M(XO3)n(式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属Mの価数を示す)で表されるハロゲン酸又はその塩と、還元性無機化合物とで構成されており、前記還元性無機化合物は、(1)アルカリ金属と無機酸との塩、(2)アルカリ土類金属と無機酸との塩、および(3)アンモニアと無機酸との塩から選択された少なくとも一種である。前記ハロゲン酸又はその塩は、Mが水素原子又は1〜3価金属、Xが塩素、臭素又はヨウ素原子、nが1〜3の整数のハロゲン酸又はその塩、例えば、塩素酸、臭素酸又はヨウ素酸あるいはこれらの塩であってもよい。前記還元性無機化合物には、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩などが含まれる。ハロゲン酸又はその塩1当量に対する還元性無機化合物の割合は、例えば、0.1〜5当量程度の範囲から選択してもよい。【0013】 本発明の方法では、前記酸化反応剤により、一級又は二級アルコールを酸化させる。この方法では、一価又は多価アルコールを液相で酸化させることができる。前記酸化反応を利用すると、アルコール類の種類、ヒドロキシル基の置換部位に応じて、種々の対応するカルボニル化合物を生成させることができる。例えば、一級アルコールから対応するエステル又はカルボン酸を生成させることができ、二級アルコールから対応するケトンを、一級ヒドロキシル基を有するジオールから対応するラクトン又はジカルボン酸を生成させることができる。 さらに、本発明の方法では、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸又はこれらの塩と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩又はピロ亜硫酸塩とで構成された反応剤により、アルコール類を液相で酸化する方法、ハロゲン酸又はその塩に、活性化剤として前記還元性無機化合物を添加してアルコール類の酸化を促進する方法などが含まれる。 なお、本明細書において、ヒドロキシル基が一級アルコール基又は二級アルコール基である化合物(例えば、一価アルコール、ジオールおよびポリオール)のみならず、ヒドロキシル基が低級アルコキシ基に転換されたアルコール、アセタールやヘミアセタールなどの誘導体も、「アルコール類」と総称する。また、特に言及しない限り、ハロゲン酸又はその塩を総称して「ハロゲン酸類」という場合がある。【0014】【発明の実施の形態】本発明で用いるハロゲン酸又はその塩は、式 M(XO3 )n で表される。 (式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属の価数を示す)Mで表される金属の種類は、ハロゲン酸の活性を損わない限り特に制限されず、例えば、Na,K,Liなどのアルカリ金属(周期表1A族金属)、Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属(周期表2A族金属)、Sc,Yなどの周期表3A族金属、Ti,Zrなどの周期表4A族金属、V、Nbなどの周期表5A族金属、Cr,Mo,Wなどの周期表6A族金属、Mn,Tcなどの周期表7A族金属、Fe,Ru,Co,Rh,Ni,Pd,Ptなどの遷移金属(周期表8族金属)、Cu,Ag,Auなどの周期表1B族金属、Zn,Cdなどの周期表2B族金属、Al,Gaなどの周期表3B族金属、Sn,Pbなどの周期表4B族金属、Sb,Biなどの周期表5B族金属などが含まれる。好ましい金属Mは、水溶性ハロゲン酸塩を形成する場合が多い。【0015】好ましいMには、水素原子又は1〜3価金属、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、アルミニウムなどが含まれる。経済性および安全性などを考慮すると、前記Mはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属である場合が多い。【0016】Xで表されるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。好ましいハロゲン原子は、塩素、臭素およびヨウ素原子、特に臭素原子である。なお、次亜ハロゲン酸を用いる酸化反応において、酸化力はCl>Br>Iの順序で低下することが知られているが、ハロゲン酸又はその塩では、むしろXが臭素原子およびヨウ素原子である化合物が高い酸化活性を示す。nは1又は前記金属Mの価数であり、1〜3程度である場合が多い。【0017】好ましいハロゲン酸又はその塩の具体例としては、例えば、臭素酸、臭素酸アルカリ金属塩(臭素酸ナトリウムNaBrO3 、臭素酸カリウムKBrO3 、臭素酸リチウムなど)、臭素酸アルカリ土類金属塩(臭素酸マグネシウム、臭素酸カルシウムなど)、臭素酸亜鉛、臭素酸アルミニウム、これらの臭素酸又はその塩に対応する塩素酸又はヨウ素酸若しくはこれらの塩(例えば、塩素酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウムなど)などが挙げられる。これらのハロゲン酸又はその塩は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのハロゲン酸又はその塩のうち、臭素酸、臭素酸アルカリ金属塩(臭素酸ナトリウムNaBrO3 、臭素酸カリウムKBrO3 、臭素酸リチウムなど)、塩素酸又は塩素酸アルカリ金属塩、ヨウ素酸又はヨウ素酸アルカリ金属塩、特に臭素酸アルカリ金属塩を用いる場合が多い。【0018】なお、前記ハロゲン酸類は、反応系中で生成すればよく、例えば、臭素酸アルカリ金属塩は、対応するアルカリ金属水酸化物を含む水溶液に臭素を吹き込むことにより生成させてもよい。前記ハロゲン酸類は、結晶などの固体、水溶液、又は適当な有機溶媒溶液として使用でき、水溶液として使用するばいが多い。【0019】本発明の特色は、前記ハロゲン酸類と、還元性無機化合物とを組み合わせている点にある。このような組み合わせにより構成される酸化反応剤(反応系)は、アルコール類に対して高い酸化能を有するだけでなく、選択的に酸化する能力が高い。特に、還元性無機化合物の添加により、酸化反応が大きく促進される。そのため、還元性無機化合物は、ハロゲン酸類の活性化剤として機能するようである。【0020】前記還元性無機化合物には、種々の無機化合物、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、アルミニウム、クロム、マンガン、遷移金属(鉄、ニッケルなど)、銅、亜鉛などの金属単体、又はこれらの金属又はアンモニアと無機酸との塩(例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩など)などが含まれる。これらの無機化合物のうち、▲1▼アルカリ金属、アルカリ金属塩およびアンモニウム塩は、ハロゲン酸類の活性を高める上で極めて有用である。なお、▲2▼アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、アルミニウム、クロム、マンガン又はこれらの塩は、▲3▼遷移金属(鉄、ニッケルなど)、銅、亜鉛又はこれらの塩に比べて、比較的高い反応活性を示す。【0021】好ましい還元性無機化合物には、前記のようにアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、特に、亜硫酸金属塩(例えば、亜硫酸ナトリウムNa2 SO3 、亜硫酸カリウムの亜硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸アンモニウムなど)、亜硫酸水素金属塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 ,亜硫酸水素カリウムなどの亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸アンモニウム塩など)、チオ硫酸金属塩(例えば、チオ硫酸ナトリウムNa2 S2 O3 、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アンモニウムなど)、ピロ亜硫酸塩(ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどのピロ亜硫酸アルカリ金属塩、ピロ亜硫酸アンモニウムなど)などが含まれる。これらの還元性無機化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。還元性化合物としては、亜硫酸金属塩、亜硫酸水素金属塩、チオ硫酸金属塩などを用いる場合が多い。【0022】還元性無機化合物の使用量は、ハロゲン酸類の活性および選択的酸化能を損わない範囲で選択でき、例えば、ハロゲン酸換算で、ハロゲン酸類1当量に対して、0.1〜5当量、好ましくは0.25〜2.5当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量程度である。還元性無機化合物は、ハロゲン酸類1当量に対して0.7〜1.3当量、特に0.9〜1.1当量程度の割合で使用する場合が多い。【0023】このような酸化反応剤(酸化系)は、アルコール類から選択的にカルボニル化化合物を生成させる上で有用であり、ハロゲン酸類や還元性無機化合物の種類又は添加量を選択することにより、各種アルコール類を選択的に酸化でき、汎用性が高い。そのため、本発明の方法では、前記酸化反応剤を用いて、アルコール類を酸化する。【0024】アルコール類としては、一級アルコール基を有する一級アルコール、二級アルコール基を有する二級アルコールが使用でき、アルコール類は、一価又は多価アルコールであってもよい。アルコール類のうち一価アルコール類には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、2−ヘプタノール、オクチルアルコール、2−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、ゲラニオール、フィトールなどの炭素数1〜20程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族アルコール(飽和又は不飽和脂肪族アルコール);シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノールなどの置換基(アルキル基など)を有していてもよい炭素数3〜12程度の脂環族アルコール;ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シンナミルアルコール、サリチルアルコール、1,1−ジフェニルメタノール、2−フェニル−2−エタノール、1,1−ジフェニルエタノールなどの芳香族アルコール;フルフリルアルコールなどの複素環式アルコールなどが含まれる。【0025】多価アルコール類には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1,2−ジフェニルエタンジオールなどの置換基を有していてもよいアルキレングリコール(例えば、炭素数2〜20程度のアルキレングリコール);ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのオキシエチレン単位の繰返し数2〜20程度のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのオキシプロピレン単位の繰返し数2〜20程度のポリプロピレングリコール、オキシテトラメチレン単位の繰返し数2〜20程度のポリテトラメチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどの3以上のヒドロキシル基を有する脂肪族多価アルコール;1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘプタンジオール、1,3−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,2−シクロオクタンジオール、1,3−シクロオクタンジオール、1,4−シクロオクタンジオール、1,5−シクロオクタンジオール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、メントール、ボルネオールなどの環状多価アルコール;単糖類(例えば、トレオース、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなど)、2〜10の単糖単位を含むオリゴ糖類(例えば、スクロース、マルトース、ラクトースなどの2糖類;ラフィノースなどの3糖類など)、11以上の単糖単位を含む多糖類(デンプン、可溶性デンプンなど)などの糖類;ペンタエリトリット、エリトリット、アラビット、キシリット、ソルビット、マンニット、イノシットなどの糖アルコール;ソルビットの分子内脱水縮合物(1,4−ソルビタン、3,6−ソルビタン、1,5−ソルビタン、1,4,3,6−ソルビドなど)、マンニットの分子内脱水縮合物(マンニタンなど)などの鎖状糖アルコールの分子内脱水縮合生成物;およびコレステロール、テストステロールなどのステロイド化合物などが含まれる。【0026】これらのアルコール類は、前記のようにヒドロキシル基が脱離可能な保護基(例えば、C1-2アルコキシ基などの低級アルコキシ基)に転換されたアルコール、アセタールやヘミアセタールなどの誘導体であってもよく、二重結合などの不飽和結合を有していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、C1-6 低級アルコキシ基)、カルボニル基、アシル基(例えば、C1-7 低級アシル基)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、C1-6 低級アルコキシ−カルボニル基)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、モノ−又はジ−C1-4 アルキルアミノ基)などの官能基を有するアルコール類であってもよい。【0027】前記酸化反応を利用すると、アルコール類の種類、ヒドロキシル基の置換部位に応じて、種々の対応するカルボニル化合物を高い転化率で選択的に生成させることができる。例えば、基質ジオールのヒドロキシル基を選択的に酸化し、化学量論的な収率および高い選択率で対応するカルボニル化合物を生成させることができる。また、従来では達成することが困難であった多価アルコールの選択的な酸化、例えば、ジオール、グリセリン類、糖類やステロイドなどの天然化合物をヒドロキシル基の部位で選択的に酸化することもできる。特に、一級ヒドロキシル基と二級ヒドロキシル基とを有する多価アルコール類の酸化では、ハロゲン酸類の添加量を制御することにより、二級ヒドロキシル基の酸化を優先的に進行させ、高い選択率でヒドロキシケトン化合物を優先的に生成させることができる。さらに、複数の二級ヒドロキシル基を有する多価アルコールに対するハロゲン酸類の量を増加させるにつれて、複数のヒドロキシル基を順次オキソ基に変換できる。例えば、2個の二級ヒドロキシル基を有するジオールに対して、ハロゲン酸又は過ヨウ素酸換算で、ハロゲン酸類を1〜1.5モル程度用いると、一方のヒドロキシル基をオキソ基に変換でき、ハロゲン酸類を2〜2.5モル程度用いると、双方のヒドロキシル基をオキソ基に変換できる。【0028】より詳細には、例えば、下記式(1)で表される一級アルコールから下記式(2a)で表されるエステルを、酸化的エステル化反応により、選択的に生成させることができるとともに、前記一級アルコール(1)から対応するカルボン酸(2b)を選択的に生成させることもできる。【0029】【化3】(式中、R1 は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基を示す)前記式において、R1 で表されるアルキル基には、前記アルコール類に対応する直鎖状又は分枝鎖状C1-20アルキル基(好ましくはC2-10アルキル基)が含まれ、アルケニル基には、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル基などのC2-10アルケニル基が含まれ、アルキニル基には、例えば、エチニル、プロピニル基などのC2-10アルキニル基が含まれる。R1 で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのC3-20シクロアルキル基(好ましくはC4-10シクロアルキル基)が含まれ、アラルキル基には、例えば、ベンジル、フェネチル基などのC6-12アリール−C1-4アルキル基などが含まれる。【0030】前記エステル(2a)とカルボン酸(2b)は、アルコール(1)に対するハロゲン酸類および還元性無機化合物の量を調整することにより効率よく生成させることができる。例えば、前記エステル(2a)は、一級アルコール(1)のヒドロキシル基に対してハロゲン酸類を2.5当量未満(例えば、1〜2.3当量、好ましくは1〜2当量程度)、還元性無機化合物を2.5当量未満(例えば、1〜2.3当量、好ましくは1〜2当量程度)使用することにより、効率よく生成させることができ、カルボン酸(2b)は、一級アルコール(1)のヒドロキシル基に対してハロゲン酸類2.5当量以上(例えば、2.5〜5当量、好ましくは2.7〜4当量程度)、還元性無機化合物2.5当量以上(例えば、2.5〜5当量、好ましくは2.7〜4当量程度)を使用することにより、効率よく生成させることができさらに、カルボン酸(2b)は、酸の存在下又は酸性条件下、特に前記一級アルコール(1)に対するハロゲン酸類および還元性無機化合物の量が多い系で反応させることによっても高い収率で得ることができる。前記酸としては、種々のプロトン酸(無機酸、有機カルボン酸)が使用できる。無機酸には、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸などが含まれる。有機カルボン酸には、例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸などの飽和カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの飽和ジカルボン酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのなどのオキシカルボン酸などが含まれる。有機カルボン酸としては、水溶性有機カルボン酸を用いる場合が多い。これらの酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、前記無機酸と有機カルボン酸とを組み合わせて使用してもよい。【0031】前記プロトン酸で調整される反応系は、酸性であればよく、pH5以下(例えば、0.1〜5程度)、好ましくはpH3以下(例えば、0.5〜3程度)である。前記プロトン酸の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、ハロゲン酸類1当量に対して、0.1〜5当量、好ましくは0.3〜3当量、さらに好ましくは0.5〜2.5当量程度である場合が多い。【0032】また、本発明の酸化方法では、下記反応式で表されるように、二級アルコール(3)から対応するケトン(4)を選択的に生成させることもできる。【0033】【化4】(式中、R2 及びR3 は、同一又は異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基を示し、R2 とR3 は互いに結合して非芳香族環を形成してもよい)この反応において、過剰量のハロゲン酸類び還元性無機化合物を用い、脂環族アルコールを酸化すると、α−ハロゲノケトンの生成量が増加する。そのため、ハロゲン酸類と還元性無機化合物の使用量をコントロールすることにより、アルコールからケトン及びα−ハロゲノケトンを選択的に合成できる。例えば、基質アルコール類に対して、ハロゲン酸類を2.5当量以下(例えば、1.2当量程度)、還元性無機化合物を2.5当量以下(例えば、1.2当量程度)用いると、対応するケトンが高い収率で得られ、ハロゲン酸類を3当量以上(例えば、3〜5当量程度)、還元性無機化合物を3当量以上(例えば、3〜4当量程度)用いると、α−ハロゲノケトンを高い収率で得ることができる。【0034】R2 及びR3 で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基としては、前記R1 の項で説明したのと同様の基が挙げられる。非芳香族環には、前記シクロアルキル基に対応する環、例えば、C4-10シクロアルカン環などが含まれる。ケトンの生成反応において、二級アルコールとしては、二級ヒドロキシル基を有する一価又は多価の脂肪族アルコール(例えば、C3-10アルコール又はC3-10ジオールなど)、脂環族アルコール(例えば、C4-10シクロアルカン環を有する脂環族アルコールなど)を用いる場合が多い。【0035】さらに、下記反応式で表されるように、一級アルコール基を有するジオール(5)から対応するラクトン(6a)又はジカルボン酸(6b)を生成させることもできる。【0036】【化5】(式中、R4 は水素原子又はメチル基を示し、nは3以上の整数を示す、R4 は繰返し数nにより異なっていてもよい)この反応式において、前記酸化反応剤の種類や量などにもよるが、n=3〜5程度のジオールを酸化すると、対応するラクトンが生成しやすく、nが5以上(特にnが6以上、例えば、n=7〜20、好ましくはn=8〜16程度)の炭素鎖の長いジオールを酸化すると、対応するジカルボン酸が生成しやすい。【0037】なお、芳香族アルコールを基質として用いると、対応する芳香族アルデヒドを効率よく生成させることもできる。【0038】酸化反応において、ハロゲン酸類の使用量は、例えば、基質アルコール類の水酸基に対して0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2.5モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度であり、還元性無機化合物の使用量は、ハロゲン酸類に対して0.5〜2モル、好ましくは0.7〜1.7モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。ハロゲン酸類及び還元性無機化合物の使用量は、基質アルコール類の水酸基に対して、それぞれ、0.9〜3モル、好ましくは1〜2.5モル(例えば、1.1〜2.5モル)程度である場合が多い。ハロゲン酸類の使用量が少な過ぎると、反応効率が低下し、過剰であるとさらに酸化反応が進行した化合物やハロゲン化された化合物が生成しやすくなる。また、還元性無機化合物の添加量が少な過ぎると、反応速度が低下しやすい。【0039】アルコール類の酸化反応は、通常、液相で行なう場合が多い。アルコール類の液相酸化は、ハロゲン酸類が通常水溶性であるため、少なくとも水を含む均一系で行なう場合が多く、水に対して混和性又は相溶性を有し、反応に不活性な有機溶媒、例えば、アセトニトリル、ホルムミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、低級カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸など)、三級アルコール(t−ブタノールなど)またはこれらの混合溶媒を使用してもよい。また、水に対して非混和性の有機溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類又はこれらの混合溶媒を用い、水相と有機溶媒相との二相系(不均一系)で反応させてもよい。また、二相系で反応させる場合、基質アルコール類の溶解性などを考慮して、相間移動触媒(例えば、四級アンモニウム塩など)、界面活性剤などを併用してもよい。さらには、基質アルコール類を溶媒として利用することもできる。【0040】酸化反応において、基質アルコール類や各成分の添加順序などは特に制限されず、操作性などの点から適当に設定できる。反応操作性の観点からは、基質アルコールとハロゲン酸類とを含む所定温度の混合液に、還元性無機化合物を添加するのが有利である。【0041】ハロゲン酸類を酸化剤として用いてアルコール類を酸化する際、反応系に活性化剤として還元性無機化合物を添加すると、常温常圧下であっても、アルコール類を化学量論的に、しかも高選択率で酸化し、対応するカルボニル化合物を高い収率で得ることができる。そのため、酸化反応は、比較的温和な条件であっても円滑に進行する。反応温度は、例えば、0℃〜150℃(例えば、0℃〜100℃)、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは20〜50℃程度である。また、反応は、常圧又は加圧(例えば、1〜10atm程度)下で行なうことができる。なお、反応温度及び/又は反応圧力が高いと、さらに酸化が進行し、低分子カルボン酸類などが副生する虞がある。【0042】反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、蒸留、濃縮、溶媒抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどにより、目的酸化生成物を容易に分離精製できる。なお、酸化反応による生成物が水に対して不溶性又は難溶性である場合、溶媒によっては、反応終了後に、相分離や沈殿物が生成する場合もあるが、本発明の酸化方法では、転化率及び選択率が高いので、殆どの場合、簡単な抽出操作であっても目的生成物を高い純度で得ることができる。しかも、ハロゲン酸類、還元性無機化合物の未反応物やこれらの分解物は、極めて高い水溶性を示すため、水洗などにより未反応物や不純物を簡単に除去できる。そのため、本発明の方法では、反応終了後、簡単な有機溶剤抽出と水洗浄とを組み合わせるだけで、目的とする生成物を高い収率及び高い純度で得ることができる。このように、本発明の方法では、温和な条件で反応を促進できるとともに、従来法に比べて非常に安全である。しかも、高い転化率及び選択率でアルコール類を酸化できるとともに、分離精製を含む後処理工程を極めて簡素化でき、簡単な操作で目的生成物を高い収率で得ることができる。そのため、工業的及び経済的に極めて有利にアルコール類を酸化できる。【0043】【発明の効果】本発明の酸化反応剤は、ハロゲン酸類と還元性無機化合物とを組み合わせているため、高い反応性および選択性で、アルコール類を酸化できる。また、温和な条件下であっても、化学量論的に高い転化率および選択率で基質アルコール類を効率よく酸化できる。そのため、各種の基質アルコール類に対して適用でき、汎用性が高い。本発明の酸化方法では、前記酸化反応剤を用いるので、アルコール類を簡便かつ効率よく酸化でき、高い収率で目的化合物を得ることができる。しかも、目的化合物の分離精製も容易であり、工業的及び経済的に有利に目的化合物を得ることができる。【0044】【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例1シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 125g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌し反応させた。反応混合液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮することにより、シクロヘキサノンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0045】実施例2シクロヘキサノール100g(1モル)、NaClO3 128g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合溶液を40℃に加熱し、NaHSO3 125g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌し反応させた。反応混合液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮することにより、シクロヘキサノンが転化率80%、選択率80%で得られた。【0046】実施例3シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液を40℃に加熱し、Na2 SO3 151g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮することにより、シクロヘキサノンが転化率80%、選択率80%で得られた。【0047】実施例4シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液を40℃に加熱し、Na2 S2 O3 190g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌しながら反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮することにより、シクロヘキサノンが転化率70%、選択率80%で得られた。【0048】実施例5シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 211g(1.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液を40℃に加熱し、Na2 S2 O3 222g(1.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌しながら反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮することにより、シクロヘキサノンが転化率95%、選択率100%で得られた。【0049】実施例61,2−シクロヘキサンジオール116g(1モル)、NaBrO3 362g(2.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 250g(2.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると,1,2−シクロヘキサンジノンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0050】実施例72,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン226g(1モル)、NaBrO3 362g(2.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 250g(2.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、2,2−ビス(4−オキシシクロヘキシル)プロパンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0051】実施例81,2−シクロヘキサンジオール116g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 125g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、α−ヒドロキシシクロヘキサノンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0052】実施例91,2−プロパンジオール76g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 125g(1.2モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、ヒドロキシアセトンに1,2−プロパンジオールが付加したケタール化合物が、転化率99%、選択率100%で得られた。【0053】実施例10シクロヘキサノールに代えて、下表の基質アルコールを用いる以外、実施例1と同様にして反応させたところ、下表に示す化合物が得られた。なお、基質アルコールの使用量は5ミリモルであり、NaBrO3 は6ミリモルの水溶液3mlとして用い、前記基質アルコールとNaBrO3 水溶液およびアセトニトリル10mlの混合液に、25℃で、NaHSO3 は6ミリモルの水溶液6mlを徐々に滴下し、表に示す時間撹拌することにより反応させた。【0054】【表1】表1より明らかなように、二級アルコールから対応するケトンが高収率で得られる。【0055】実施例112,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンに代えて、下表の基質アルコールを用い、NaBrO3 /NaHSO3 の割合及び反応時間を変化させる以外、実施例7と同様にして反応させたところ、下表に示す化合物が得られた。なお、基質アルコールの使用量は5ミリモル、アセトニトリルの使用量は10mlであり、NaBrO3 及びNaHSO3 はそれぞれ水溶液として用いた。また、基質2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンについてはアセとニトリルに代えて溶媒としてt−ブタノールを用いた。【0056】【表2】表2より明らかなように、ジオール類においても二級アルコールと同様に、ヒドロキシケトン及びジケトンが高い収率で得られる。また、1,2−シクロオクタンジオールにおいては、反応時間が短い段階では、対応するヒドロキシケトンが生成していた。【0057】実施例12シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 382g(2.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、Na2 HSO3 250g(2.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗の後乾燥させ、濃縮するとα−ブロモシクロヘキサノンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0058】実施例13NaBrO3 3モルおよびNa2 HSO3 4モルを用い、室温(約25℃)で24時間反応させる以外、実施例12と同様にして反応させたところ、α−ブロモシクロヘキサノンが転化率74%、選択率100%で得られた。【0059】実施例141,2−シクロヘキサンジオール116g(1モル)、NaBrO3 563g(3.6モル)の水溶液600mlおよびアセトニトリル200mlの混合液に、25℃で、Na2 HSO3 250g(2.4モル)の200ml水溶液を徐々に滴下して1時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、6−ブロモ−1,2−シクロヘキサンジオンが転化率99%、選択率100%で得られた。【0060】比較例1シクロヘキサノール100g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液を25℃で1時間撹拌反応させた。反応混合液を分析したところ、未反応シクロヘキサノール85%が残存していた。【0061】比較例21,2−シクロヘキサンジオール116g(1モル)、NaBrO3 181g(1.2モル)の400ml水溶液およびアセトニトリル400mlの混合液を25℃で1時間撹拌反応させた。反応液を分析したところ未反応1,2−シクロヘキサンジオール85%が残存していた。【0062】実施例15下表の一級アルコール1モル、NaBrO3 2モルの水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、Na2 HSO3 2モルの水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後、乾燥させ、濃縮すると、下表のエステルが得られた。【0063】【表3】なお、基質アルコールとしてベンジルアルコールを用いる以外、上記と同様にして反応させたところ、ベンズアルデヒドが収率51%、安息香酸が収率17%で得られた。【0064】実施例16NaBrO3 、Na2 HSO3 、アセトニトリルおよび水を表に示す割合で用い、1−オクタノール5ミリモルを、室温で2時間撹拌反応させる以外、実施例15と同様にして反応させたところ、下表のエステルまたはカルボン酸が得られた。なお、No.2においては、2M−硫酸を用いて反応系の液性をpH1に調整して反応させた。また、No.5では、基質である1−オクタノールを10ミリモルを用いた。【0065】【表4】実施例171,1−ジメトキシオクタン10ミリモル、NaBrO3 12ミリモル、Na2 HSO3 12ミリモル、および水8mlを用いる以外、実施例15と同様にして反応させたところ、1−メトキシ−1−オクタノンが収率54%で得られた。【0066】実施例181,1−ジメトキシオクタン5ミリモル、n−ブタノール5ミリモル、NaBrO3 12ミリモル、Na2 HSO3 12ミリモル、および水8mlを用いる以外、実施例15と同様にして反応させたところ、ブトキシカルボニルヘプタンが収率61%、1−メトキシ−1−オクタノンが収率25%で得られた。【0067】実施例191,4−ブタンジオール1モル、NaBrO3 382g(2.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、Na2 HSO3 250g(2.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、γ−ブチロラクトンが転化率60%、選択率100%で得られた。【0068】実施例201,4−ブタンジオールに代えて、1,5−ペンタンジオールを用いる以外、実施例19と同様にして反応させたところ、δ−バレロラクトンが転化率60%、選択率100%で得られた。【0069】実施例211,4−ブタンジオール5ミリモル、NaBrO3 15ミリモル、Na2 HSO3 15ミリモル、アセトニトリル10mlおよび水20mlを用いる以外、実施例19と同様にして、25℃で2時間撹拌反応させたところ、γ−ブチロラクトンが収率62%で得られた。【0070】実施例221,6−ヘキサンジオール1モル、NaBrO3 382g(2.4モル)の水溶液400mlおよびアセトニトリル400mlの混合液に、25℃で、Na2 HSO3 250g(2.4モル)の水溶液200mlを徐々に滴下して2時間撹拌反応させた。反応液をジエチルエーテルで抽出し、抽出液を水洗した後乾燥させ、濃縮すると、アジピン酸が転化率71%、選択率100%で得られた。【0071】実施例231,6−ヘキサンジオールに代えて、1,5−ペンタンジオールを用いる以外、実施例22と同様にして反応させたところ、グルタル酸が収率68%で得られた。【0072】実施例241,6−ヘキサンジオールに代えて、1,10−デカンジオールを用いる以外、実施例22と同様にして反応させたところ、セバシン酸が収率91%で得られた。 下記式 M(XO3)n(式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属Mの価数を示す)で表されるハロゲン酸又はその塩と、還元性無機化合物とで構成されているアルコールの酸化反応剤であって、前記還元性無機化合物が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩又はピロ亜硫酸塩である酸化反応剤。 ハロゲン酸又はその塩において、Mが水素原子又は1〜3価金属、Xが塩素、臭素又はヨウ素原子、nが1〜3の整数である請求項1記載のアルコールの酸化反応剤。 ハロゲン酸又はその塩が、塩素酸、臭素酸又はヨウ素酸若しくはこれらの塩である請求項1記載のアルコールの酸化反応剤。 ハロゲン酸又はその塩1当量に対する還元性無機化合物の割合が、0.1〜5当量である請求項1記載のアルコールの酸化反応剤。 請求項1記載の反応剤により、一級又は二級アルコールを酸化させるアルコールの酸化方法。 一価又は多価アルコールを液相で酸化させる請求項5記載の酸化方法。 下記式(式中、R1は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す)で表される一級アルコールから下記式(式中、R1は前記に同じ)で表されるエステル又は一級アルコールに対応するカルボン酸を生成させる請求項5記載の酸化方法。 二級アルコールから対応するケトンを生成させる請求項5記載の酸化方法。 一級ヒドロキシル基を有するジオールから対応するラクトン又はジカルボン酸を生成させる請求項5記載の酸化方法。 塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸又はこれらの塩と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩又はピロ亜硫酸塩とで構成された反応剤により、アルコール類を液相で酸化する酸化方法。 ハロゲン酸又はその塩に、活性化剤として還元性無機化合物を添加してアルコール類の酸化を促進する方法であって、前記還元性無機化合物が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩又はピロ亜硫酸塩である方法。


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