タイトル: | 特許公報(B2)_興奮促進剤 |
出願番号: | 1995256615 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 31/198,A61P 25/26 |
角田 隆巳 瀧原 孝宣 坂根 巌 野沢 歩 JP 3797627 特許公報(B2) 20060428 1995256615 19951003 興奮促進剤 株式会社 伊藤園 591014972 竹内 三郎 100072084 橋本 清 100103399 角田 隆巳 瀧原 孝宣 坂根 巌 野沢 歩 20060719 A61K 31/198 20060101AFI20060629BHJP A61P 25/26 20060101ALI20060629BHJP JPA61K31/198A61P25/26 A61K 31/198 BIOSIS(STN) CAOLD(STN) CAPLUS(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) JSTPLUS(JOIS) 特開平4−253916(JP,A) 3 1997100230 19970415 14 20010906 中木 亜希 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、興奮促進剤に関するものである。【0002】【従来の技術】テアニンは、1950年代に緑茶の一成分として分離された物質であり、本物質はL−グルタミン酸−γ−エチルアミドである。このテアニンは従来から茶のうま味成分として知られ、食品添加物にも指定されている物質であるが、最近、テアニンのカフェイン興奮抑制作用が発見され、この作用を利用して、カフェインを含んだ飲料乃至食品に対して茶から抽出したテアニンを一定濃度以上加えることによって、それら飲料乃至食品の味や香りを保持しつつもカフェインの興奮作用を抑制する旨の発明(特開平4−253916号公報)などが開示されていた。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、このテアニンの脳神経細胞に対する作用について鋭意研究を進めた結果、本発明をなしたのである。すなわち、本発明者らが、被試験動物に対するテアニンの投与量を種々変化させて投与し、投与後の被試験動物の脳波について測定してみたところ、従来一般的に投与されていた投与量の範囲では、確かに精神安定状態となりテアニンの興奮抑制作用を示す結果が得られたものの、テアニンの量をある範囲以下に調整して投与すると、驚いたことに興奮状態となりテアニンの興奮促進作用を示す結果を得られたのである。また、この結果を確かめるべく別の条件にて被試験動物に対するテアニン投与試験を行ってみたが、やはり同様の結果が得られたのである。【0004】そこで、本発明者らは、上記試験結果に基づき、テアニンに由来する興奮促進剤を提供せんとするものである。【0005】【課題を解決するための手段】上記課題解決するために、本発明は、テアニンを有効成分として興奮促進作用を示す範囲の微量を含有することを特徴とする興奮促進剤を提供する。テアニンの投与量を極微量の範囲に調整して投与すると、テアニンの興奮促進作用が現れることは後述するラットを使った実験1及び実験2により証明されたところである。【0006】ここで、実験1の結果より、静脈注射により投与した場合には、体重換算にして1μmol/kg(0.17mg/kg)〜5μmol/kg(0.85mg/kg)、好ましくは1μmol/kg(0.17mg/kg)〜2μmol/kg(0.34mg/kg)のテアニンを投与すると興奮促進作用が得られることが判明したことから、注射剤としてテアニンが興奮促進作用を示す範囲は、体重換算にしてテアニンを0.17mg/kg〜0.85mg/kg、好ましくは0.17mg/kg〜0.34mg/kg含有する範囲であると考えられる。【0007】また、経口投与剤としてテアニンが興奮促進作用を示す範囲は、上記実験1の結果と、テアニンと性質が類似するアミノ酸混液の腸管吸収率が30%〜83%であること(栄養学ハンドブック(技報堂出版発行、1985年))とを勘案して、最小有効量を約0.20mg/kg(0.17/0.83)、最大有効量を約2.8mg/kg(0.85/0.30)と算出できるから、体重換算にしてテアニンを0.20mg/kg〜2.8mg/kg含有する範囲であると考えられる。もっとも、テアニンに近似しているグルタミン酸混液の腸管吸収率が33.8%である(栄養学ハンドブック(技報堂出版発行、1985年)ことからすると、経口投与剤としてテアニンが興奮促進作用を示す範囲は、好ましくは体重換算にしてテアニンを約0.50mg/kg〜2.5mg/kg(0.17/0.338〜0.85/0.338)含有する範囲であると考えられる。【0008】したがって、上記のテアニンが興奮促進作用を示す範囲の微量とは、上記の注射剤及び経口投与剤の有効範囲からして、体重換算にして約0.17mg/kg〜2.8mg/kgであると考えられる。【0009】本発明におけるテアニンは、茶等に含有されているものであるから、無害な添加剤であり、例えば、茶葉を水、熱水又はエタノール等の有機溶媒で抽出し、或いは化学合成、微生物醗酵又は植物組織培養等することによって製造される。【0010】また、本発明の興奮促進剤は、液状、顆粒状又はパウダー状に加工して飲食物の添加剤とすることが好ましいが、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又はシロップ剤として飲食物と別個に摂取するようにしてもよい。【0011】さらに、本発明の興奮促進剤を長期に亘り定期的に服用した場合には、滋養強壮剤として有効に使用することができる。【0012】【発明の実施の形態】〔実験1〕テアニンの種々投与量における脳神経細胞に対する作用を検討するために、テアニン投与量を種々調整し、これをラットに投与し、投与後のラットの脳波を観測した。【0013】1.供試動物と群構成9週齢のwister/st系雄性ラット(体重260−320g )を1週間予備飼育した後に、ネンブタール麻酔下で電極埋込手術を行なって、ステンレススチール製ネジ電極を左右前頭部に固定し、ステンレススチール製並列型双極電極を海馬及び篇桃体に埋め込んだ。術後4日間は感染予防のためにセフタメゾンを筋注し、術後10日以降に3回の予備試験を行ない、脳波が安定しているラットを被試験体とし、1群6匹としてA群からE群までの5群を構成した。【0014】2.被験物質の調製と投与生理食塩水に無水テアニンを溶解して以下のテアニン投与量となるようにテアニン生理食塩水溶液を調製してラットに投与した。なお、テアニン投与は、尾静脈より静脈注射で行った。テアニン投与量A群:テアニン 0μmol/kg体重投与B群:テアニン 1μmol/kg体重投与C群:テアニン 2μmol/kg体重投与D群:テアニン 5μmol/kg体重投与E群:テアニン10μmol/kg体重投与【0015】3.脳波測定脳波測定は双極導出法により行ない、検出した脳波を遮断周波数50Hz、減衰特性24db/oct の高域遮断フィルターを通過させ、デジタルレコーダ(ティアック社製:DR-M2a)によりサンプリング周波数200Hzで光磁気ディスク上に記録した。記録された脳波につき、後日パーソナルコンピュータ(日本電気社製:PC-9801BA )と波形解析ソフト(Development Corporation 社製:DADISP Work -sheet)を用いて、高速フーリエ変換法によりパワースペクトラムを求め、δ波、θ波、α1波、α2波、β波の相対パワーを算出した。脳波測定はテアニン投与5分後、15分後、30分後、60分後のそれぞれ3分間行い、アーティファクトの少ない部分を5秒間1区間として5回の加算によりスペクトラムの平滑化を行なった。尚、一般に、α波は目を閉じて安静にしている時、β波は脳が活発に活動している時、δ波は熟睡状態の時、θ波はうとうと居眠りしている時に現れる脳波である。【0016】4.実験結果上記各群における皮質、海馬及び篇桃体のぞれぞれの部位について、テアニン投与15分後、30分後、60分後のδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを図1乃至図9に示した。【0017】これより、B群(1μmol/kg体重投与)、C群(2μmol/kg体重投与)及びD群(5μmol/kg体重投与)のいずれも、睡眠時に現れるδ波の相対パワーが皮質、海馬及び篇桃体のいずれにおいても抑制され、活動時に現れるβ波の相対パワーが増加し、その増加率は特にC群(2μmol/kg体重投与)で顕著に見られた。【0018】また、B群の各部位毎の各δ波、θ波、α1波、α2波及びβ波のそれぞれに対する相対パワーの経時変化を図10〜図14に、同じくC群の各部位毎の各δ波、θ波、α1波、α2波及びβ波のそれぞれに対する相対パワーの経時変化を図15〜図19に、同じくD群の各部位毎の各δ波、θ波、α1波、α2波及びβ波のそれぞれに対する相対パワーの経時変化を図20〜図24に、そして同じくE群の各部位毎の各δ波、θ波、α1波、α2波及びβ波のそれぞれに対する相対パワーの経時変化を図25〜図29に示した。【0019】これより、B群(1μmol/kg体重投与)及びC群(2μmol/kg体重投与)では、睡眠時に現れるδ波の相対パワーが皮質、海馬及び篇桃体のいずれにおいても抑制された。これに対し、D群(5μmol/kg体重投与)及びE群(10μmol/kg体重投与)では、ほとんどδ波の相対パワーは抑制されなかった。また、B群(1μmol/kg体重投与)及びC群(2μmol/kg体重投与)では、活動時に現れるβ波の相対パワーが海馬及び篇桃体において著しく増加し、特にその増加率はC群(2μmol/kg体重投与)で顕著であった。【0020】〔実験2〕本実験では、種々濃度に調整したテアニンを脳神経細胞に直接投与した場合の神経回路網に対するテアニンの作用を検討するために、テアニンをラットの大脳皮質初代培養神経細胞に還流投与し、投与後に予め細胞内に取り込ませた感受性色素の周期を比較観測した。【0021】1.ラット大脳皮質細胞の培養妊娠18日目のラットから胎児を取り出し、この胎児の脳を切開して大脳皮質部位を切り出し、切り出した大脳皮質部位の細胞をパパイン酵素処理して単離した。一方、シリコン樹脂製の枠にカバーガラスを張り付けてガラス上をポリエチレンイミンを用いてコーティングしておき、このコーティングプレートに前記の単離した細胞を所定濃度となるように均一にまき、数日ごとに培養液を交換しながら培養した。これより培養細胞は徐々に神経回路網を形成し、自発的に周期的な興奮作用を起こすようになった。【0022】2.被験物質の調製と投与先ず、上記方法により同時に培養した6種類の培養細胞を用いて、各培養細胞の培地を等張の緩衝液に換えた後、細胞内に蛍光性のCa2+受性色素fura−2を取り込ませ、細胞内部のfura−2の発光周期(自発的興奮の周期)を測定し、この測定値の平均値を各培養細胞のコントロールとした。次に、各培養細胞に対して、種々濃度すなわち10μM 、50μM 、100μM 、400μM 、700μM 、1000μM に調整したテアニン生理食塩水溶液を還流(in vitro)にて投与し、各細胞内部のfura−2の発光周期を測定した。【0023】3.fura−2周期測定細胞内部のfura−2の発光周期は、同時多点観察装置(1986年にkudoらが開発)により測定した。そして、同様にして5回繰り返した実験結果の平均値を図30に示した。なお、この図では、横軸にはテアニン濃度(μM)、縦軸には平均周期の逆数をとった振動数のコントロールのそれに対する割合を示した。【0024】4.実験結果これより、テアニン生理食塩水溶液濃度100μM、400μM及び700μMを投与した場合には、対象に比べて興奮性が見られ、1000μMを投与した場合には逆に興奮抑制傾向が見られた。したがって、本実験においても上記実験1と同じく、テアニン含有量を一定量以下の極微量の範囲に調整して投与すると、テアニンの興奮促進作用が働くことが認められる。【0025】【発明の効果】本発明によれば、テアニンの有する興奮促進作用を十分に利用して、安全でかつ有効な興奮促進剤を提供することができる。さらに、長期に亘って定期的に服用すれば、滋養強壮剤、活力増強剤、スタミナ持続剤としても有効である。また、活力増強作用とスタミナ持続作用により、肥満防止、老化防止にも有効であると考えられる。【図面の簡単な説明】【図1】各種投与量におけるテアニン投与15分後の皮質におけるδ波、θ波、α1波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図2】同、海馬におけるδ波、θ波、α1波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図3】同、扁桃体におけるδ波、θ波、α1波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図4】各種投与量におけるテアニン投与30分後の皮質におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図5】同、海馬におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図6】同、扁桃体におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図7】各種投与量におけるテアニン投与60分後の皮質におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図8】同、海馬におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図9】同、扁桃体におけるδ波、θ波、α1波、α2波及びβ波の相対パワーを示した図である。【図10】1μmテアニン投与した場合の皮質、海馬及び扁桃体におけるδ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図11】同、θ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図12】同、α1波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図13】同、α2波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図14】同、β波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図15】2μmテアニン投与した場合の皮質、海馬及び扁桃体におけるδ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図16】同、θ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図17】同、α1波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図18】同、α2波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図19】同、β波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図20】5μmテアニン投与した場合の皮質、海馬及び扁桃体におけるδ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図21】同、θ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図22】同、α1波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図23】同、α2波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図24】同、β波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図25】10μmテアニン投与した場合の皮質、海馬及び扁桃体におけるδ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図26】同、θ波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図27】同、α1波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図28】同、α2波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図29】同、β波の相対パワーの経時変化を示した図である。【図30】各種濃度に調整したテアニンをラットの脳細胞に還流投与した場合の興奮状態を示した図である。 テアニンを有効成分として体重換算にして0.17mg/kg〜2.8mg/kg含有することを特徴とする興奮促進剤。 テアニンを有効成分として体重換算にして0.17mg/kg〜0.34mg/kg含有し、かつ注射剤としての用途に用いることを特徴とする興奮促進剤。 興奮促進剤の興奮促進作用は、δ波の抑制作用とβ波の増加作用とを特徴とするものである請求項1又は2に記載の興奮促進剤。