タイトル: | 特許公報(B2)_プローブ走査機構、および、それを用いた走査型プローブ顕微鏡 |
出願番号: | 1995244131 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N13/10,G12B21/22 |
安藤 敏夫 林 美明 JP 3577141 特許公報(B2) 20040716 1995244131 19950922 プローブ走査機構、および、それを用いた走査型プローブ顕微鏡 オリンパス株式会社 000000376 安藤 敏夫 林 美明 20041013 7 G01N13/10 G12B21/22 JP G01N13/10 C G12B1/00 601H 7 G01N 13/10 - 13/24 G12B 21/00 - 21/24 JICSTファイル(JOIS) 特開平1−287403(JP,A) 特開平5−225600(JP,A) 特公平4−557(JP,B2) 特開平3−35104(JP,A) 特開平7−167148(JP,A) 実開平1−69962(JP,U) 特開昭63−281002(JP,A) 特公平6−103177(JP,B2) 特開平6−26854(JP,A) 特開平2−297004(JP,A) 特表平7−504749(JP,A) 特開平5−203404(JP,A) 特公平7−76696(JP,B2) 安藤敏夫、中野勝志,“蛍光顕微鏡を組み合わせた原子間力顕微鏡の開発とその応用”,生物物理,日本,日本生物物理学会,1995年 5月25日,第35巻、第3号,p.28−30 久曽神煌、佐川大輔、豊山晃,“板ばねを利用した直動および回転機構”,精密工学会誌,日本,社団法人精密工学会,1987年 7月 5日,第53巻、第7号,p.1092−1096 15 1997089910 19970404 9 20011010 遠藤 孝徳 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、試料を原子または分子のオーダーの分解能で観察、測定、加工する走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構、および、それを用いた走査型プローブ顕微鏡に関する。【0002】【従来の技術】試料を原子オーダーの分解能で観察する装置として、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope )が知られている。SPMの一つに、ビニッヒ(Binnig)やローラー(Rohrer)等によって発明された走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope )がある。また、別のSPMとしては、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope )がある。AFMは、サーボ技術を始めとするSTMの要素技術を利用し、絶縁性の試料を原子オーダーで観察できる装置で、例えば特開昭62−130302号に開示されている。【0003】AFMは、鋭く尖った突起部(探針)を自由端に持つカンチレバーを備えている。この探針を試料に近づけると、探針先端の原子と試料表面の原子との間に働く相互作用力(原子間力)によりカンチレバーの自由端が変位する。この自由端の変位を電気的あるいは光学的に測定しながら、探針を試料面に沿ってXY方向に走査することにより、試料の凹凸情報等を三次元的にとらえることができる。【0004】走査を行なうための機構としては、互いに直交する方向に移動可能なXテーブルとYテーブルを有し、これを積層型ピエゾアクチュエーターを用いて移動させる構成のXYステージや、三本の積層型ピエゾアクチュエーターが互いに直交する様に連結されている、いわゆるトライポッド、円筒状の圧電体の内側面に周方向に連続した一枚の共通電極を設け、外側面に周方向に四枚の駆動電極を設けてなる、いわゆる圧電チューブスキャナーなどがある。【0005】【発明が解決しようとする課題】上述のXYステージは、XテーブルのX方向の運動とYテーブルのY方向の運動とは完全に独立しており、一方の運動が他方に影響を与えることはないが、テーブルの慣性質量が大きいため、高速走査には適さない。【0006】また、トライポッドとチューブスキャナーは比較的高速での走査を行なえるが、各方向の運動が他の方向の運動と独立でないため、ある方向の運動が他の方向の運動に影響を与えてしまう。【0007】このように、前述した走査機構では、ピエゾアクチュエーター自体の固有振動数や、ある方向の変位に対して他の方向が変位する干渉や、リンギング現象のために走査周期は300Hzが限界である。チューブスキャナーは実際に数十Hz程度が限界である。【0008】リンギングとは、ピエゾアクチュエーターに印加する電圧を急激に上げると、変位発生後に振動を残す現象をいう。円筒型ピエゾアクチュエーターでは、大きな走査幅を得るには、全長の長いものを使用する必要があるが、全長の長いものほど、リンギングは発生し易い。【0009】このような走査機構は、静止した試料や時間変化の遅い試料を観察する目的にはそれほど支障なく使用できるが、走査周期が長いために、例えば、貧食細胞が食刺を伸ばしたり、細胞が刺激に反応する様子を観察するといった目的には応えることができない。本発明は、各方向の運動が互いに独立しており、プローブを高速で走査できるプローブ走査機構を提供することを目的とする。本発明は、また、そのようなプローブ走査機構を有する走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。【0010】【課題を解決するための手段】本発明による走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構、および、それを用いた走査型プローブ顕微鏡は、探針を有するレバー部と、レバー部を保持するレバー保持部を備えた移動部材と、移動部材を第1の軸方向に移動可能に保持する第1の保持手段と、移動部材を第1の軸方向に移動させる第1の駆動部と、移動部材を第1の軸に直交する第2の方向に移動可能に保持する第2の保持手段と、移動部材を第2の軸方向に移動させる第2の駆動部とを備えており、移動部材の第1の軸方向と第2の軸方向の移動が独立であることを特徴とする。【0011】あるいは、探針を有するレバー部と、レバー部を保持するレバー保持部を備えた移動部材と、移動部材を第1の軸方向に移動可能に保持する第1の保持手段と、移動部材を第1の軸方向に移動させる第1の駆動部と、移動部材を第1の軸に直交する第2の方向に移動可能に保持する第2の保持手段と、移動部材を第2の軸方向に移動させる第2の駆動部と、移動部材を第1と第2の軸に直交する第3の方向に移動可能に保持する第3の保持手段と、移動部材を第3の軸方向に移動させる第3の駆動部とを備えているおり、移動部材の第1の軸方向と第2の軸方向と第3の軸方向の移動が独立であることを特徴とする。【0012】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。まず、プローブ走査機構の構成について図1を用いて説明する。カンチレバー12はホルダー(図4に符号14で示される)により移動体16に取り付けられる。移動体16の一角には三枚のサファイア板18が設けられており、サファイア板18の平面は互いに直交している。三本のピエゾアクチュエーター30X、30Y、30Zは、互いに直交する方向に変位可能で、一端がそれぞれ固定台32X、32Y、32Zに固定されている。ピエゾアクチュエーター30X、30Y、30Zの他端にはサファイア板22が取り付けられている。サファイア板22は、ルビー球20を間に挟んで、移動体16に設けられたサファイア板18に対向している。【0013】図2に示す様に、サファイア板18の中央部には磁石24が設けられ、サファイア板22の中央部には磁石26が設けられ、両者は互いに引き合う極性で、十分に狭い間隔、例えば数μmの間隔を置いて向き合っている。磁石24と磁石26の磁束密度は約12500ガウスである。磁石24と磁石26の間の引力により、図1に示される様に、移動体16は三本のピエゾアクチュエーター30X、30Y、30Zに支持されている。【0014】Y方向とZ方向のピエゾアクチュエーター30Yと30Zは動いてなく、X方向のピエゾアクチュエーター30Xが駆動している状態を考える。ピエゾアクチュエーター30Xの伸縮によりサファイア板22はX方向に往復運動し、移動体16は、ルビー球20を介してサファイア板22に押され、あるいは磁力によりサファイア板22に引っ張られて、X方向に往復運動する。この往復運動の間、Y方向とZ方向を向いたサファイア板18は、それに向き合ったサファイア板22に対してルビー球20の回転を伴なってX方向に移動するだけで、Y方向とZ方向には移動しない。従って、移動体16のY方向とZ方向の位置は変わらない。この運動の抵抗は、Y方向とZ方向のルビー球20の転がり抵抗のみで極めて小さい。【0015】次に、三本のピエゾアクチュエーター30Xと30Yと30Zが共に駆動状態にあり、これにより移動体16が三次元的に運動している場合を考える。移動体16がY方向やZ方向に運動していても、それらの運動はX方向の成分を全く持たないので、X方向の運動に関しては前述の状況と全く同じであり、ピエゾアクチュエーター30Xは、ピエゾアクチュエーター30Yと30Zから何等影響を受けることなく、移動体16をX方向に駆動する。すなわち、任意の一本のピエゾアクチュエーターは、他の二本のピエゾアクチュエーターに全く影響されることなく、その方向に移動体16を駆動する。【0016】このように、X方向とY方向とZ方向の運動は完全に独立しているので、走査周波数はそれぞれの方向の振動特性によってのみ決まる。実際の走査は共振周波数以下の周期で行なわれ、また、ピエゾアクチュエーター30Xと30Yと30Z、移動体16、カンチレバー12、カンチレバーホルダー14から成る機構の共振周波数は200kHz程度にすることができる。すなわち、200kHz程度の周波数で走査を行なうことができる。【0017】この実施の形態では、移動部材16を移動可能に保持する手段として、磁石24と26を用いているが、図3に示すように、バネ(好ましくは引っ張りバネや板バネ)やゴムなどの弾性体28を用いても一向に構わない。【0018】次に、これまで説明したプローブ走査機構を用いた原子間力顕微鏡について図4と図5を用いて説明する。図4に示されるように、移動体16には、カンチレバー12の上方の位置に、屈折プリズム44が固定されている。屈折プリズム44は、図5に示すように、二枚の三角プリズム44aと44bを向きを90°変えてZ方向に重ねて配置した構成となっている。【0019】再び図4に戻り、光ビームを射出するレーザー発振器40、レーザー発振器からの光ビームを拡大または平行化するエクスパンダー/コリメーター42、カンチレバーからの反射光を偏向する反射ミラー46、四分割された受光領域を備えた光センサー48が所定の位置に配置されている。これらの光学素子は共に一つの筐体に固定されている。【0020】カンチレバー12は、前述した様に、ピエゾアクチュエーター30X、30Y、30Zを伸縮させることによって、任意の方向に移動可能である。走査に平行して、レーザー発振器40から射出された光ビームはエクスパンダー/コリメーター42を経て、屈折プリズム44で偏向され、カンチレバー12の自由端部に入射する。カンチレバー12からの反射光は反射ミラー46で反射され、光センサー48に入射する。光センサー48に対する反射光の入射位置は、カンチレバー12の自由端部の変位に応じて変化し、従って、光センサー48の各受光領域に入射する光量を調べることで、カンチレバー12の自由端部の変位が求められる。【0021】走査の間、屈折プリズム44は移動体16と一緒に移動し、これに応じて屈折プリズム44に対する光ビームの入射位置が変わるが、屈折プリズム44は光ビームがカンチレバー12の自由端部の同じ位置に入射するように補償する。【0022】このAFMでは、走査される部分を極めて軽量に抑えることができる。具体的には、移動体16とホルダー(板バネ)14、カンチレバー12、屈折プリズム44の総質量は1g以下に抑えることができる。これにより、高速走査が可能となる。【0023】本発明は、上述の実施の形態に何等限定されるものではない。発明の要旨を逸脱しない範囲で行なわれる実施は、すべて本発明に含まれる。本明細書には以下の各項に記した発明が含まれる。【0024】1.探針を有するレバー部と、前記レバー部を保持するレバー保持部を備えた移動部材と、前記移動部材を第一の軸方向に移動させる第一の駆動部と、第一の軸に直交する第二の軸方向に前記移動部材を移動させる第二の駆動部と、第一および第二の軸方向に移動可能に前記移動部材を保持する移動部材保持部とを有していることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0025】2.探針を有するレバー部と、前記レバー部を保持するレバー保持部を備えた移動部材と、前記移動部材を第一の軸方向に移動させる第一の駆動部と、第一の軸に直交する第二の軸方向に前記移動部材を移動させる第二の駆動部と、第一および第二の軸に直交する第三の軸方向に前記移動部材を移動させる第三の駆動部と、第一、第二、第三の軸方向に移動可能に前記移動部材を保持する移動部材保持部とを有していることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0026】3.第1項において、さらに球状部材を有し、前記第一および第二の駆動部と前記移動部材は互いに対向する平面を備えており、互いに対向する前記駆動部の平面と前記移動部材の平面の間に前記球状部材が挟持されることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0027】4.第2項において、さらに球状部材を有し、前記第一、第二、第三の駆動部と前記移動部材は互いに対向する平面を備えており、互いに対向する前記駆動部の平面と前記移動部材の平面の間に前記球状部材が挟持されることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0028】5.第3項または第4項において、前記移動部材保持部は、一端が前記駆動部に係合し、他端が前記移動部材に係合している弾性部材であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0029】6.第3項または第4項において、前記移動部材保持部は、互いに対向する前記駆動部の平面と前記移動部材の平面に設けられた互いに引き合う磁性体であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0030】7.第5項において、前記弾性部材が引っ張りバネであることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。8.第5項において、前記弾性部材が板バネであることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡のプローブ走査機構。【0031】【発明の効果】本発明によれば、各方向の運動が互いに独立しており、プローブを高速で走査できるプローブ走査機構が得られる。これにより、貧食細胞が食刺を伸ばす様子や細胞が刺激に反応する様子などを観察できる走査型プローブ顕微鏡が得られるようになる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施の形態のプローブ走査機構の構成を示す斜視図である。【図2】移動体を保持する構成を示す図である。【図3】図2の構成に代わる移動体を保持する別の構成を示す図である。【図4】図1のプローブ走査機構を用いた原子間力顕微鏡の構成を示す図である。【図5】図4の屈折プリズムの構成を示す図である。【符号の説明】12…カンチレバー、16…移動体、18…サファイア板、20…ルビー球、22…サファイア板、24、26…磁石、30X、30Y、30Z…ピエゾアクチュエーター。 探針を有するレバー部と、レバー部を保持するレバー保持部を備えた移動部材と、移動部材を第1の軸方向に移動可能に保持する第1の保持手段と、移動部材を第1の軸方向に移動させる第1の駆動部と、移動部材を第1の軸に直交する第2の方向に移動可能に保持する第2の保持手段と、移動部材を第2の軸方向に移動させる第2の駆動部とを備えており、移動部材は第1の軸方向のみに移動する時には第2の軸方向の移動の成分を持たず、また、第2の軸方向のみに移動する時には第1の軸方向の移動の成分を持たず、移動部材の第1の軸方向と第2の軸方向の移動が独立であることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項1に記載のプローブ走査機構であって、第1および第2の駆動部は一軸方向に伸縮しうるアクチュエータ1およびアクチュエータ2を備えていることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項2に記載のプローブ走査機構であって、移動部材は第1の軸に直交する第1の平面と、第2の軸に直交する第2の平面とを有し、第1および第2の駆動部は、アクチュエータ1およびアクチュエータ2が各々伸縮する方向の軸に直交する平面を持つ板1および2を有し、第1および第2の保持手段は、移動部材の各々の平面と各々の駆動部の板に挟持された球状部材とを有していることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項1に記載のプローブ走査機構であって、さらに、移動部材を第1と第2の軸に直交する第3の方向に移動可能に保持する第3の保持手段と、移動部材を第3の軸方向に移動させる第3の駆動部とを備えており、移動部材は、第1の軸方向のみに移動する時には第2と第3の軸方向の移動の成分を持たず、また、第2の軸方向のみに移動する時には第3と第1の軸方向の移動の成分を持たず、また、第3の軸方向のみに移動する時には第1と第2の軸方向の移動の成分を持たず、移動部材の第1の軸方向と第2の軸方向と第3の軸方向の移動が独立であることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項4に記載のプローブ走査機構であって、第3の駆動部は一軸方向に伸縮しうるアクチュエータ3を備えていることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項5に記載のプローブ走査機構であって、移動部材は第1の軸に直交する第1の平面と、第2の軸に直交する第2の平面と、第3の軸に直交する第3の平面とを有し、第1ないし第3の駆動部は、アクチュエータ1ないしアクチュエータ3が各々伸縮する方向の軸に直交する平面を持つ板1ないし3を有し、第1ないし第3の保持手段は、移動部材の各々の平面と各々の駆動部の平面に挟持された球状部材とを有していることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項6に記載のプローブ走査機構であって、第1ないし第3の保持手段は球状部材を有していることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項7に記載のプローブ走査機構であって、球状部材はルビー球であることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項6に記載のプローブ走査機構であって、平板部材はサファイア板であることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項6に記載のプローブ走査機構であって、移動部材は平面を持つ板を有していることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項10に記載のプローブ走査機構であって、板はサファイア板であることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項6に記載のプローブ走査機構であって、移動部材の各々の軸方向に固定された第1の磁石と、各々の板に固定された第2の磁石を有し、第1の磁石と第2の磁石は互いに引き合うことを特徴とするプローブ走査機構。 請求項6に記載のプローブ走査機構であって、移動部材と各々の平板部材とを連結する弾性部材を有することを特徴とするプローブ走査機構。 請求項13に記載のプローブ走査機構であって、弾性部材はバネであることを特徴とするプローブ走査機構。 請求項1または4に記載のプローブ走査機構を有することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。