タイトル: | 特許公報(B2)_亜硝酸イオン濃度測定方法 |
出願番号: | 1995239550 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N21/78,G01N31/00 |
五十嵐 淑郎 川上 貴教 JP 3547863 特許公報(B2) 20040423 1995239550 19950919 亜硝酸イオン濃度測定方法 東亜ディーケーケー株式会社 000219451 山本 正緒 100083910 五十嵐 淑郎 川上 貴教 20040728 7 G01N21/78 G01N31/00 JP G01N21/78 C G01N31/00 H 7 CA(STN) REGISTRY(STN) G01N 21/75-21/83 G01N 31/00-31/22 特開平02−059665(JP,A) 特開平02−216447(JP,A) 特開昭63−277680(JP,A) 特開平01−148961(JP,A) 特開平01−242584(JP,A) 5 1997089781 19970404 8 20020911 加々美 一恵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、試料液中の亜硝酸イオンを比色分析法を利用して定量する方法、特に亜硝酸イオンと試薬との反応に基づく吸光度又は蛍光強度を測定して亜硝酸イオンを定量する方法に関する。【0002】【従来の技術】亜硝酸イオンの定量は、亜硝酸イオンのみならず、硝酸イオンや一酸化窒素等の窒素酸化物の定量にも応用することができる。即ち、硝酸は還元カラムや試薬により還元して亜硝酸イオンとしたうえで測定することにより、その定量が可能である。又、酸化窒素等も様々な吸収液に通すことによって酸化が進み、亜硝酸イオンとして測定することが可能である。【0003】亜硝酸イオンの直接比色定量法は、1879年にGriessらが提唱したジアゾカップリングによる発色法が現在でも主流となっている。以来、アゾ色素生成に関する種々の改良がなされて来たが、アゾ色素の吸光度から亜硝酸イオンを定量するという基本方針には変化がなかった。【0004】例えば、JISに定められている亜硝酸イオンの比色定量法では、亜硝酸イオンを含む試料液に4−アミノベンゼンスルホン酸アミドを加えてジアゾ化し、これに更に二塩化N−1−ナフチルエチレンジアンモニウムを添加してカップリングさせ、このジアゾカップリング反応により生成したアゾ色素の波長540nmにおける吸光度を吸光光度計により測定する。【0005】【発明が解決しようとする課題】このような従来の亜硝酸イオンの定量法にあっては、比色定量のための試薬の感度が低いことが大きな課題であった。即ち、従来利用している反応に供するモル吸光係数は2〜3万程度と予想され、かかる反応系においては飛躍的に感度を向上させる試薬は見いだすことができなかった。【0006】更に、従来の亜硝酸イオンの定量法では、ジアゾカップリング反応の反応過程が2段階に及ぶため、それぞれの反応条件を制御することが難しく、また他のイオンによる妨害を受け易いといった欠点があった。【0007】本発明は、かかる従来の事情に鑑み、吸光光度法のような比色分析法を利用して、亜硝酸イオンを簡便に、しかも高感度で定量することができる、全く新しい亜硝酸イオン濃度の測定方法を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明が提供する新しい亜硝酸イオン濃度測定方法は、亜硝酸イオンを含む試料液に試薬としてポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物を添加混合し、亜硝酸イオンとの反応により生成したジアゾ基を有するポルフィリン化合物の吸光度又はそれを励起したときの蛍光強度を測定して、試料液中に含まれる亜硝酸イオン濃度を求めることを特徴とするものである。【0009】本発明が試薬として使用するポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物としては、そのアミノ基が亜硝酸イオンと反応してジアゾ基を生成するポルフィリン化合物であれば特に限定されないが、ジアゾ反応の容易さや感度の点で芳香族第一級アミン、例えばポルフィン核にアミノフェニル基を有するアミノフェニルポルフィンが好ましい。【0010】尚、アミノフェニル基のようなアミノ基はポルフィン核の外側にある。又、ポルフィン核上の置換基としてのアミノ基の数並びに位置は限定されず、例えば置換基が1つのアミノ基だけでも、アミノ基以外に他の置換基があっても良い。しかし、通常はポルフィン核の5、10、15、20位が最も置換され易いので、試薬合成が比較的容易な点で5、10、15、20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィン(以下TAPPと略記する)が特に好ましい。【0011】【発明の実施の形態】本発明方法では、吸光・蛍光スペクトルに大きなピークを有するポルフィン核と、亜硝酸イオンによりジアゾ化する第一級アミンとを合わせ持つ化合物を試薬として選択し、ジアゾ化によって変化するポルフィン核のソーレ吸収帯の吸光又は蛍光を測定して、亜硝酸イオンの定量を行うものである。【0012】ポルフィン核を有するポルフィリン化合物は、モル吸光係数が数十万にも達するソーレ吸収帯と称する大きな吸収帯を有すると共に、金属イオンと錯体を形成しやすいので、この性質を利用して従来から比色定量法による金属イオンの定量分析に試薬として使用されている。しかし、その方法は、ポルフィリン化合物と金属イオンとの錯体の形成、あるいはポルフィリン化合物の錯体からの金属イオンの解離により、ポルフィン核の吸光・蛍光スペクトル特性が変化することを利用するものであった。【0013】本発明方法は、このようなポルフィリン化合物の錯体を利用したものとは異なり、亜硝酸イオンとのジアゾ化反応に大きな吸収帯を有するポルフィリン化合物を利用するという、新たな観点からの亜硝酸イオンの定量方法である。【0014】試薬であるポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物は、ポルフィン核自体が電子吸引性であるためアミノ基は亜硝酸イオンの攻撃を受けやすく、強酸性では迅速に亜硝酸イオンと反応してジアゾ基が生成する。この試薬であるアミノ基を有するポルフィリン化合物と亜硝酸イオンとの反応は、酸性条件下、好ましくはpH3以下、更に好ましくはpH約1にて行う。又、反応温度は室温でも良いが、室温〜50℃の温度範囲が好ましく、約30℃が更に好ましい。特にpH約1及び温度約30℃の反応条件が、前記のごとくジアゾ化反応の進行が容易であると共に、各種金属イオンとの錯体形成が行われず、妨害イオンの影響もないため、最も好ましい。尚、反応時間はフローインジェクション法等の分析法によって変わるが、通常は30分程度が好ましい。【0015】尚、亜硝酸イオンはポルフィリンの1分子に対して1分子が反応すると、その後の反応速度は非常に遅くなる。従って、この反応は、ポルフィリン1分子に複数のアミノ基が存在していても、その1つが反応すると残りのアミノ基は亜硝酸イオンとの反応が遅くなるので、選択的に1:1の反応とみて差し支えない。【0016】ポルフィン核を有するポルフィリン化合物は、ソーレ吸収帯に特有な大きな吸収を有するが、亜硝酸イオンとのジアゾ化反応によってジアゾ基が生成すると、ソーレ吸収帯が大きく減少する。その機構は、ジアゾ基の生成によって電子がポルフィン核に吸引されて一種のキノイドのような電子構造を取り、このときの電子の流れ込みによりポルフィン核に特有の18π電子共鳴系が乱され、ソーレ吸収帯が大きく減少するものと考えられる。【0017】従って、既知濃度の亜硝酸イオンを含む複数の標準液と前記アミノ基を有するポルフィリン化合物試薬とを反応させ、反応後の液の吸光度を吸光光度計で測定するか、又は反応後の液に励起光を照射したときの蛍光強度を蛍光光度計で測定し、亜硝酸イオン濃度に対する吸光度又は蛍光強度の検量線を作成しておけば、濃度未知の亜硝酸イオンを含む試料液について、同様に反応させた後の吸光度又は蛍光強度を測定することにより、前記検量線から試料液の亜硝酸イオン濃度を求めることができる。【0018】測定すべきソーレ吸収帯の波長は、試薬として使用するポルフィリン化合物によって若干異なるが、例えばTAPPの場合には、波長434nm付近に大きな吸収ピークがあるので、この波長付近の吸光度を測定する。又、蛍光強度の測定は、波長434nmの励起光で励起したとき放出される波長660nm付近の蛍光強度を測定する。【0019】かかる本発明方法によれば、反応過程が従来のジアゾカップリング反応の場合の2段階に比べて1段階ですむため、反応条件の簡素化を図ることができ、同時にポルフィン核に特有な大きな吸収帯を利用することによって、JIS等に定められた従来法のアゾ色素の吸光度を測定する方法に比べて大幅な感度の向上を達成できる。【0020】尚、本発明方法を、液体クロマトグラフィーやフローインジェクション法と組み合わせれば、試料液の流れの中で亜硝酸イオンを連続的に分析することが可能である。液体クロマトグラフィーは、通常陰イオン交換樹脂でイオンの分離を行った後に対象とするイオンを測定するもので、多成分測定において亜硝酸イオンを他のイオンと同時に高感度で測定する場合に適している。又、フローインジェクション法は、前処理から測定までを試料液の流れの中で行うもので、モニタリングや自動測定等に適している。【0021】【実施例】実施例1試薬として、図1に示すように、ポルフィン核に図2のアミノフェニル基を4個有する5、10、15、20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィン(TAPP)を使用した。このTAPPは水溶性で、その水溶液はpH約1において波長434nmにモル吸光係数(ε)が約3×105の大きなソーレ吸収帯に依存する鋭いピークを持つ。【0022】このTAPPを8.0×10−7モル/l含有するTAPP試薬と、亜硝酸イオン濃度の異なる標準液とを混合し、塩酸でpH1.0に調整し、温度30℃で30分間反応させた。反応後の液の吸光度を吸光光度計で測定したところ、波長434nmにおける吸光度は図3に示すように亜硝酸イオン濃度の増加に伴って減少した。図3において、曲線aは濃度比NO2−/TAPP=0、曲線bは濃度比NO2−/TAPP=0.5、及び曲線cは濃度比NO2−/TAPP=4.0の場合を示している。【0023】同様にして得られた検量線を図4に示した。図4の縦軸のAは吸光度であり、A30は反応時間30分後の吸光度及びA0はブランク値を表す。又、横軸はTAPP(8.0×10−7モル/l)に対する亜硝酸の濃度を表す。検量線は亜硝酸イオン濃度0〜4×10−7モル/lの範囲で直線となり、2×10−7モル/lでの変動係数は10回の測定で1.03%であった。このことは、反応系が非常に安定していることを示している。又、本発明方法における検出限界は、亜硝酸イオンとしてS/N=3で測定して4×10−9モル/l(0.18μg/l)であった。これは、従来の方法と比較して10倍以上の感度である。【0024】更に、妨害物質として塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン等の影響を調べたが、いずれにおいても亜硝酸イオンに対して1000倍濃度の共存であっても影響は認められなかった。又、各種金属イオンとの錯形成反応も全く観測されなかった。【0025】実施例2図5に示すフローインジェクション測定装置を利用し、実施例1と同じTAPP試薬(8.0×10−7モル/l)を用いて、亜硝酸イオンのFIA蛍光検出法による測定を実施した。【0026】ポンプ1により塩酸Aを供給してインジェクター2内の試料液Bを反応管4に導き、同時に別のポンプ3によりTAPP試薬Cを反応管4に供給し、両者を混合した。反応管4は内径0.5mm及び長さ2mのテフロンチューブからなり、この反応管4を覆っている恒温槽5により反応温度を約30℃の一定温度に保持した。反応管4から出た反応後の試料液は蛍光検出器6に送られ、波長434nmの励起光を照射することにより放出される660nm付近に極大波長をもつ蛍光の蛍光強度(R.F.I.)を蛍光検出器6で測定した。【0027】その結果、試料液の亜硝酸イオン濃度を変えて測定することにより、TAPPの蛍光スペクトルは、図6に示すように亜硝酸イオン濃度の増加に伴って減少した。図6において、曲線aはNO2−濃度=0モル/l、曲線bは同濃度=5.0×10−8モル/l、曲線cは同濃度=1.0×10−7モル/l、曲線dは同濃度=1.5×10−7モル/l、曲線eは同濃度=2.0×10−7モル/l、曲線fは同濃度=4.0×10−7モル/l、曲線gは同濃度=6.0×10−7モル/l、及び曲線hは同濃度=8.0×10−7モル/lの場合を示している。【0028】図6から分かるように、亜硝酸イオンが反応するとTAPPの蛍光スペクトル自体が小さくなる。従って、実施例1の場合と同様に検量線を作成することができ、その検量線を用いて濃度未知の亜硝酸イオンの定量を行うことができる。その場合、図5に示すようにデータ処理装置7を用いて、検出された蛍光強度から亜硝酸濃度を自動的に求めることが可能である。尚、蛍光の場合には、他のイオン種による妨害も少なく、バックグラウンドのノイズも小さいことから、更に高感度の測定が期待できる。【0029】【発明の効果】本発明によれば、アミノ基を有するポルフィリン化合物を試薬とし、亜硝酸イオンをジアゾ化反応のみで光分析システムにかけ、その吸光度又は蛍光強度を測定することにより、亜硝酸イオン濃度を求めることができる。従って、ジアゾカップリング反応により発色させる従来の亜硝酸イオンの測定方法に比較して、本発明方法は10倍以上も高い感度が得られると共に、反応過程が1段階となるので反応条件制御が単純化され、妨害イオンの影響も少ない。【0030】又、本発明方法は、亜硝酸イオン以外にも、硝酸や酸化窒素等の亜硝酸イオンを生成し得る物質の測定にも利用できることは勿論のこと、クロマトグラフィー技術やフローインジェクション法と組合せて自動測定等にも応用することができるので、従来技術では難しかった自然環境水中の亜硝酸イオンの測定をはじめ、環境分析や臨床分析等の広い分野での応用が期待できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明において試薬として用いるポルフィリン化合物の化学構造式である。【図2】図1の化学構造式中におけるφを意味するアミノフェニル基の化学構造式である。【図3】実施例1で得られた亜硝酸イオン濃度の違いによるTAPPの吸光度特性を示すグラフである。【図4】実施例1で得られた亜硝酸イオン濃度と吸光度との関係を示す検量線のグラフである。【図5】実施例2で用いたフローインジェクション測定装置の概略図である。【図6】実施例2で得られた亜硝酸イオン濃度の違いによるTAPPの蛍光強度特性を示すグラフである。【符号の説明】1 ポンプ2 インジェクター3 ポンプ4 反応管5 恒温槽6 蛍光検出器7 データ処理装置A 塩酸B 試料液C TAPP試薬 亜硝酸イオンを含む試料液にポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物を添加混合し、亜硝酸イオンとの反応により生成したジアゾ基を有するポルフィリン化合物の吸光度又はそれを励起したときの蛍光強度を測定して、試料液中に含まれる亜硝酸イオン濃度を求めることを特徴とする亜硝酸イオン濃度測定方法。 ポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物が、アミノフェニルポルフィンであることを特徴とする、請求項1に記載の亜硝酸イオン濃度測定方法。 アミノフェニルポルフィンが、5、10、15、20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィンであることを特徴とする、請求項2に記載の亜硝酸イオン濃度測定方法。 上記ポルフィン核にアミノ基を有するポルフィリン化合物と試料液中の亜硝酸イオンとの反応を酸性条件下で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の亜硝酸イオン濃度測定方法。 吸光度の測定を434nm付近の波長で行うか、蛍光強度の測定を波長434nmの励起光で励起したとき放出される660nm付近の波長について行うことを特徴とする、請求項3に記載の亜硝酸イオン濃度測定方法。