タイトル: | 特許公報(B2)_ε−カプロラクタムの製造方法 |
出願番号: | 1995197514 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 201/04 |
佐野 英文 内堀 俊雄 神田 有 JP 4226084 特許公報(B2) 20081205 1995197514 19950802 ε−カプロラクタムの製造方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 佐野 英文 内堀 俊雄 神田 有 20090218 C07D 201/04 20060101AFI20090129BHJP JPC07D201/04 C07D 201/04 C07C 45/39 CA(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特開平05−301858(JP,A) 特開昭56−043227(JP,A) 特開昭57−120538(JP,A) 特開平09−031052(JP,A) 特許第3789504(JP,B2) 特開平08−176102(JP,A) 特開平08−198845(JP,A) 特開平08−193061(JP,A) 1 1997040640 19970210 8 20020606 谷尾 忍 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、出発原料をシクロヘキセンとしたε−カプロラクタムの製造方法に関する。詳しくは、シクロヘキセンを水と反応させてシクロヘキサノールを合成し、シクロヘキサノールを脱水素反応してシクロヘキサノンとした後、ベックマン転位によりε−カプロラクタムを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】ε−カプロラクタムは、主としてシクロヘキサノンをオキシム化し、生成したシクロヘキサノンオキシムをベックマン転位することにより製造されており、このシクロヘキサノンオキシムは、シクロヘキサノンとヒドロキシルアミンとを反応させて製造するのが一般的である。【0003】従来、ε−カプロラクタム製造の原料となるシクロヘキサノンの製造方法は、シクロヘキサンを分子状酸素で酸化してシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物を製造し、蒸留によりシクロヘキサノールとシクロヘキサノンを分離し、シクロヘキサノールは脱水素反応によりシクロヘキサノンとする方法、または、フェノールを部分水素還元し、転位反応によりシクロヘキサノンを製造する方法等により工業的に生産されている。【0004】近年、シクロヘキサノールを工業的に生産する方法として、シクロヘキセンをゼオライト系触媒の存在下で水和する方法が注目されている。かかる方法に関する報告は昭和40年代頃より多数なされてきているが、工業的規模での生産も最近になってようやく行われるようになった。【0005】【発明が解決しようとする課題】シクロヘキセンを水和してシクロヘキサノールを製造する方法は、コスト的に有利な方法であり、シクロヘキサノールの好ましい製造方法の一つである。従って、該方法で製造されたシクロヘキサノールをε−カプロラクタムの製造原料として利用することができれば工業的に有用であると考えられる。【0006】また、ε−カプロラクタムの製造においては通常の方法では多量の硫酸アンモニウム(硫安)が副生するので、この硫安の品質も重要である。シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応には通常発煙硫酸等が用いられるが、得られるε−カプロラクタムの硫酸塩をアンモニアで中和することにより多量の硫安が生成するものである。【0007】そこで、本発明者らは当該製法で得られたシクロヘキサノールを用いてε−カプロラクタムの製造を検討したところ、他の方法で得られたシクロヘキサノールから製造されたε−カプロラクタムと異なり、品質において本製造方法における特有の問題が存在することが明らかとなった。【0008】【課題を解決するための手段】ε-カプロラクタムの品質については、PZ、VB等の評価項目があるが、これらはε-カプロラクタム中に極微量含まれる不純物に由来すると考えられる。従って、この不純物を除去すればε-カプロラクタムの品質が向上すると考えられる。しかしながら、上記不純物を同定するのは困難であること、また不純物がε-カプロラクタム製造工程中のどの工程に由来するものなのかが不明であること、さらには、生成が予想される不純物の種類によってはその除去が困難であることから、ε-カプロラクタムの品質を向上させるには、どの工程のどのような不純物に注目するかが問題となる。【0009】本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、シクロヘキセンを出発原料としたε-カプロラクタムにおいては、水和、脱水素、オキシム化、ベックマン転位等の様々な製造工程の中で、オキシム化反応工程における原料であるシクロヘキサノン中の特定の不純物の量を制御することにより、上記課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。【0010】 すなわち、本発明の要旨は、シクロヘキセンを水和し、得られたシクロヘキサノールを脱水素反応によりシクロヘキサノンとし、ついで、下記のガスクロマトグラフィー分析条件による不純物の含有量を0.3%以下とした後で前記シクロヘキサノンをヒドロキシルアミンと反応させてシクロヘキサノンオキシムとし、更にベックマン転位させてε−カプロラクタムを製造する方法に存する。【0011】[ガスクロマトグラフィ−分析条件](1) カラム:内壁にβ−シクロデキストリン20%を含むシリコーン系液相化合物を膜厚0.5μmでコーテイングしたフューズドシリカのキャピラリーカラム(2)カラムサイズ、長さ60m×内径0.53mm(3)カラム温度:初期温度75℃ で、昇温速度1.5℃/分で100℃となるまで昇温し、その後5分間保持し、次いで、昇温速度10℃/分で200℃となるまで昇温し、その後20分間保持する。(4)検出方法:水素炎イオン化検出法(FID)(5)キャリヤーガス:ヘリウム(6)キャリヤーガス流量:シクロヘキサノンのピークの保持時間(tR)を(19±2)分になるように一定流量に調整する。(7)不純物の含有量:保持時間が(1.3〜3.0)×tR(分)に検出される不純物ピークを定量する。【0012】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の製造方法では、まずシクロヘキセンと水を反応させてシクロヘキサノールとする。シクロヘキセンの水和反応は触媒として、通常、固体酸触媒を用いて反応を行う。固体酸触媒としては、通常、ゼオライトやイオン交換樹脂などが挙げられる。ゼオライトとしては、結晶性のアルミノシリケートやアルミノメタロシリケート、メタロシリケート等の種々のゼオライトが利用でき、特にペンタシル型のアルミノシリケートまたはメタロシリケートが好ましい。メタロシリケートに含まれる金属としては、チタン、ガリウム、鉄、クロム、ジルコニウム、ハフニウム等の金属元素が例示できるが、中でもガリウムが好ましい。【0013】水和反応としては、流動床式、攪拌回分方式、連続方式等、一般的に用いられる方法で行われる。連続方式の場合は、触媒充填連続流通式、及び攪拌槽流通式のいずれも可能である。反応の温度は、シクロヘキセンの水和反応の平衡の面や副反応の増大の面からは低温が、また反応速度の面からは高温が有利である。最適温度は、触媒の性質によっても異なるが、通常50〜250℃の範囲から選択される。【0014】得られたシクロヘキサノールは、脱水素反応に供されてシクロヘキサノンとされる。シクロヘキサノールの脱水素反応は従来公知の方法のいずれでもよいが、一般的には、脱水素触媒の存在下で200〜750℃に加熱することにより行われる。脱水素触媒としては、銅−クロム系酸化物、銅−亜鉛系酸化物などが例示できる。この反応は平衡反応であり、生成物はシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物として得られるので、蒸留等によりシクロヘキサノンとシクロヘキサノールを分離し、分離したシクロヘキサノールは脱水素反応の原料として再利用される。【0015】今回の本発明者らの検討により、上記の方法で得られたシクロヘキサノン中には、従来注目されていなかった成分が微量含まれ、これらの不純物が製品ε-カプロラクタムの品質を著しく損なうことが判明した。この原因の一つとして、シクロヘキサノン中に残存した高沸点不純物がオキシム化反応の工程で相当するオキシム類となり、製品ε-カプロラクタム中に不純物として存在することが考えられる。また、これらの不純物はシクロヘキサノンオキシムまたはε-カプロラクタム中で分離精製することが困難である。【0016】そこで、本発明では、オキシム化に供するシクロヘキサノンとして、ガスクロマトグラフィ−を用い、前記の条件において測定されるシクロヘキサノンより高沸点成分と推定される特定不純物の含有量が0.3%以下、好ましくは0.1%以下、特に好ましくは50ppm以下のものを用いる。また、上記不純物の中でも、保持時間が(1.7〜2.0)×tR(分)に検出される数十のピークに相当する多数の不純物が、製造されるε-カプロラクタムの品質に特に大きな影響を及ぼすので、これを40ppm以下とするのが好ましい。かかる純度のシクロヘキサノンを得る方法としては、特定不純物が規定値以下となるようにシクロヘキサノールの脱水素反応の条件を調整する方法や、脱水素反応によって得られたシクロヘキサノンの蒸留精製の条件を調整する方法が例示される。【0017】こうして得られたシクロヘキサノンは、公知の反応条件下でヒドロキシルアミンと反応させてシクロヘキサノンオキシムとする。ヒドロキシルアミンは単独では安定な化合物ではないため、ヒドロキシルアンモニウムの硫酸塩や硝酸塩の形で使用され、例えば、水溶液中または非水溶液中でシクロヘキサノンとヒドロキシルアンモニウム硫酸塩を反応させる。【0018】次いで、シクロヘキサノンオキシムは、公知の方法によりベックマン転位させてε−カプロラクタムとする。例えば、濃硫酸または発煙硫酸中でベックマン転位させてε-カプロラクタム硫酸塩とした後、アルカリで中和する方法、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒存在下、気相もしくは液相でベックマン転位させる方法、液相で触媒が均一に溶解した状態でベックマン転位させる方法等が挙げられる。いずれの方法においても、得られたε-カプロラクタムは蒸留や晶析等により精製されて製品とする。【0019】【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り実施例に限定されるものではない。実施例におけるシクロヘキサノン中の特定不純物の定量はガスクロマトグラフィーにより行った。【0020】[ガスクロマトグラフィ−分析条件]・装置:島津(株)製GC−14A・ カラム:スペルコ社製 WAX β−DEX 110(内壁にβ−シクロデキストリン20%を含むシリコーン系液相化合物を膜厚0.5μmでコーテイングしたフューズドシリカのキャピラリーカラム)、長さ60m×内径0.53m・カラム温度:初期温度75℃ で、昇温速度1.5℃/分で100℃となるまで昇温し、その後5分間保持し、次いで、昇温速度10℃/分で200℃となるまで昇温し、その後20分間保持する。【0021】・検出方法:水素炎イオン化検出法(FID)・キャリヤーガス:ヘリウム・キャリヤーガス流量:シクロヘキサノンのピークの保持時間(tR)を(19±1)分になるように一定流量に調整した結果、供給圧力140KPa、セプタムパージ流量14ml/min、スプリット流量28ml/minに設定した。・注入口温度:220℃・検出器温度:240℃・試料注入量:0.2μl・不純物の定量方法:保持時間が(1.3〜3.0)×tR(分)に検出される不純物のピーク面積より、シクロヘキサノン換算での不純物量定量した。なお、ガスクロマトグラフィ−において、内部標準物質は分離度が良好な物であれば問題はなく、nーテトラデカン等を用いることができる。不純物の定量方法については不純物のピーク高さを基準に測定してもよい。【0022】比較例1(1)シクロヘキセンの水和反応水和触媒としてガリウムシリケート(Si/Ga原子比=25/1)を用いた。攪拌翼を備えたオートクレーブにシクロヘキセン15重量部、水30重量部、水和触媒10重量部を入れ窒素雰囲気化、120℃で1時間反応させた。(2)シクロヘキサノールの精製上記で得られたシクロヘキサノール混合物を10段の精留塔で精製し、純度99.9%の精製シクロヘキサノールを得た。【0023】(3)シクロヘキサノールの脱水素反応精製シクロヘキサノールを気化して250℃に設定された銅−亜鉛触媒を充填した管状反応器に、反応圧力0.17MPa(0.7kg/cm2G)、LHSV(液空間速度)2.4hr-1で供給して脱水素反応を行った。シクロヘキサノンの収率は60%であった。(4)シクロヘキサノンの精製シクロヘキサノンを30段の棚段式精留塔で還流比30で蒸留精製して低沸点成分を除去し、ついで、40段の棚段式精留塔でシクロヘキサノールを除去した。得られた精製シクロヘキサノンに、前記不純物を添加し、合計不純物量が0.4%(保持時間が(1.7〜2)×tR(分)に検出される不純物が60ppm)であるシクロヘキサノンとした。【0024】(5)シクロヘキサノンオキシムの製造ジャケット付き攪拌槽に仕込んだ45%ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液を85℃に加熱して、上記シクロヘキサノンを滴下した。この時、反応液のpHが4.0〜4.5になるようにアンモニア水を同時に滴下した。シクロヘキサノンの滴下が終了した後、反応を完結するため30分攪拌し続け、その後、静置分離して油相をシクロヘキサノンオキシムとして採取した。シクロヘキサノンオキシム中に含まれる水分は減圧下で脱水した。【0025】(6)ベックマン転位ベックマン転位液の酸度が57%、遊離のSO3濃度が7.5%になるような比率で、かつ、反応器内での滞留時間が1時間になるように、シクロヘキサノンオキシムと25%発煙硫酸(オリウム)をジャケット付き攪拌槽に同時に滴下した。この時、局所的な発熱を抑制するため、攪拌速度100rpm以上で攪拌し、また、ジャケットに冷却水を流して反応温度を70〜100℃に維持した。(7)SO3処理こうして得られたベックマン転位液をジャケット付き攪拌槽(500ml)に移送し、SO3濃度を7.0〜7.5%に保持し、攪拌速度300rpm以上で攪拌しながら、処理温度90〜125℃で2時間処理し、SO3処理液を得た。【0026】(8)後処理得られたSO3処理液をアンモニア水で中和した。中和反応はジャケット付き攪拌槽に温水を通し、中和温度70℃、pH7.0〜7.5で行った。続いて、上記中和液をベンゼンにて抽出した。抽出は分液ロートに中和液、ベンゼンを入れ、10分間震とう後、5分間静置して油相のみを採取し、水相は再度ベンゼンにて抽出した。この際、使用するベンゼン量は、理論量のε−カプロラクタム濃度が18重量%になるように調整した。こうして合計3回、ベンゼンによる抽出を行った後、常法によりベンゼンを留去して粗ε−カプロラクタムを得た。最後に粗ε−カプロラクタムを蒸留により精製した。蒸留は粗ε−カプロラクタムに適量の25%苛性ソーダ水溶液を添加した後、初留10重量%、主留80重量%、釜残10重量%の3部分に分けて採取し、主留分を品質評価の対象とした。【0027】(9)ε−カプロラクタム及び副生硫安の品質評価方法得られた精製ε−カプロラクタム及び副生硫安の品質を以下の2規格について評価した。結果を表−1に示す。PZ(過マンガン酸カリ価)ε−カプロラクタム試料1gを水100mlに溶解し、これに0.01N−過マンガン酸カリウム水溶液1mlを加え、攪拌し、比較標準液(塩化コバルト(CoCl2・6H2O)3.0gと硫酸銅(CuSO4・5H2O)2.00gを水で1000mlに希釈したもの)と同一色になるまでの時間。硫安品質ベンゼンによる抽出における抽残(水相=硫安水)のPHを、8M硫酸で5.2 に調整する。調整した試料5mlを500mlに希釈する。この希釈液の吸光度を測定する。波長:255nm、10mmセル 対象:脱塩水硫安品質=吸光度(Abs)×希釈率【0028】実施例1前記不純物の添加量を変え、合計不純物量が0.2%(保持時間が(1.7〜2)×tR(分)に検出される不純物が20ppm)であるシクロヘキサノンとしたこと以外、比較例1と同様にして、製品カプロラクタム及び副生硫安の品質を評価した。結果を表−1に示す。【0029】実施例2前記不純物の添加を行わず、加えて、更に50段の棚段式精留塔で還流比30でシクロヘキサノンの精製を行ったこと以外、比較例1と同様にして、製品カプロラクタム及び副生硫安の品質を評価した。結果を表−1に示す。なお、この時のシクロヘキサノン中の不純物量は検出限界(1ppm)以下であった。【0030】【表1】表−1【0031】表−1より、シクロヘキサノンの特定の不純物を特定量以下のものを用いることにより、ε−カプロラクタム及び副生硫安の品質を向上させることができることがわかる。【0032】【発明の効果】本発明の方法によれば、シクロヘキセンを出発原料として、高品質のε−カプロラクタムを安価に製造することが可能となり、且つ副生する硫安の品質も高いので、産業上有用である。 シクロヘキセンを水和し、得られたシクロヘキサノールを脱水素反応によりシクロヘキサノンとし、下記のガスクロマトグラフィー分析条件による不純物の含有量を0.3%以下にした後で前記シクロヘキサノンをヒドロキシルアミンと反応させてシクロヘキサノンオキシムとし、更にベックマン転位させてε−カプロラクタムを製造する方法。[ガスクロマトグラフィー分析条件](1) カラム:内壁にβ−シクロデキストリン20%を含むシリコーン系液相化合物を膜厚0.5μmでコーテイングしたフューズドシリカのキャピラリーカラム(2)カラムサイズ、長さ60m×内径0.53mm(3)カラム温度:初期温度75℃ で、昇温速度1.5℃/分で100℃となるまで昇温し、その後5分間保持し、次いで、昇温速度10℃/分で200℃となるまで昇温し、その後20分間保持する。(4)検出方法:水素炎イオン化検出法(FID)(5)キャリヤーガス:ヘリウム(6)キャリヤーガス流量:シクロヘキサノンのピークの保持時間(tR)を(19±2)分になるように一定流量に調整する。(7)不純物の含有量:保持時間が(1.3〜3.0)×tR(分)に検出される不純物ピークを定量する。