生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_虚血−再灌流障害の予防および治療薬
出願番号:1995161665
年次:2006
IPC分類:A61K 38/46,A61P 9/00


特許情報キャッシュ

東丸 貴信 匡 培根 JP 3742675 特許公報(B2) 20051118 1995161665 19950628 虚血−再灌流障害の予防および治療薬 東菱薬品工業株式会社 000221650 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 東丸 貴信 匡 培根 20060208 A61K 38/46 20060101AFI20060119BHJP A61P 9/00 20060101ALI20060119BHJP JPA61K37/54A61P9/00 A61K 38/46 A61P 9/00 CA(STN) MEDLINE(STN) 米国特許第3849252(US,A) Gordon D.O. Lowe,Clinical Hemorheology,1984年,Vol.4,p.15-28 Tanahashi N. et al.,Clinical Hemorheolgy,1995年,Vol.15, No.1,p.89-96 Z.S.Latallo,Thromb Haemostas(Stuttgart),1983年,Vol.50, No.2,p.604-609 3 1997012475 19970114 6 20020517 八原 由美子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は虚血−再灌流障害の予防および治療薬に関する。【0002】【従来の技術】虚血−再灌流障害は各種臓器の切開手術や切除時に虚血に陥った臓器組織の血行再開後に生じる障害の総称である。このような障害は、血管を含む臓器移植時に血流を停止し、再開したときなどにも問題となる。従って、心臓、脳はもとより腎臓、肝臓、肺臓、膵臓、消化管など多くの組織で頻繁に起こることが知られている。現在、これらの虚血−再灌流障害の機序として、急激な再酸素化によるエネルギー代謝の亢進や活性酸素種の増加、過酸化脂質等が障害の原因であると考えられているが、実際の病態においての詳細は不明である。このような状況のなかで、活性酸素種を消去し、過酸化脂質生成を抑制できれば、組織機能の低下や壊死が防止され、組織障害をも抑止し、上記の各種疾患の予防・治療が可能になると期待される。これまでにも活性酸素消去剤、あるいは抗酸化剤が種々検討されてきたが、その作用は強力とは言えず、病態の予防効果や治療効果は十分なものではない。従って、再灌流障害の予防および治療薬の開発は急務となっている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、虚血−再灌流障害に対して有効な予防・治療薬を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】先に、本発明者等はバトロキソビンが経皮的血管形成術(PTA)後の再狭窄、動脈硬化症の予防および治療に有効であることを見出し、特許を出願した(特願平6−322011号)。本発明者等はバトロキソビンのもつ薬理作用につき、更に鋭意研究したところ、虚血−再灌流障害モデルにおいて細胞障害抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。本発明に係わるバトロキソビンは「Bothrops atrox moojeni蛇毒由来のトロンビン様酵素」であり、市販の製剤は東菱薬品工業(株)により製造されているバトロキソビン製剤があげられる。本発明の虚血−再灌流障害の予防および治療薬は、心疾患、脳血管障害、腎疾患、肝疾患、肺疾患、膵疾患等あるいは臓器移植時における虚血−再灌流障害の予防・治療薬として使用される。さらに詳しくは、心筋梗塞時における心筋壊死を減少させるため、経皮的冠動脈血栓溶解術(PTCR)や、経皮的冠血管形成術(PTCA)が広く行われるようになっている今日、術後の血流再開後に生じる新たな心筋障害に対して有効であり、また、脳虚血性疾患において血流再開後に生じる新たな神経細胞障害に対しても有効である。バトロキソビン(Bothrops atrox moojeni蛇毒由来のトロンビン様酵素)製剤1ml中の成分および分量は、次の通りである。─────────────────────────────────バトロキソビン(主成分) 10BUクロロブタノール(防腐剤) 3mgゼラチン加水分解物(安定化剤) 0.1mg塩化ナトリウム(等張化剤) 9mg注射用蒸留水 全量1ml─────────────────────────────────本発明によるバトロキソビンの投与量は症状により異なるが、一般に成人1日1回当たり、1〜20バトロキソビン単位(Batroxobin Unit,略してBU)であり、なお、症状により増減できる。これを適宜希釈し、点滴静脈内投与、静脈内投与、動脈内投与あるいは局所投与することが好ましい。ここで言うバトロキソビン単位とは、バトロキソビンの酵素活性量を示す単位で、37℃で、標準ヒトクエン酸加血漿0.3mlに、バトロキソビン溶液0.1mlを加えるとき、19.0±0.2秒で凝固する活性量を2BUとするものである。【0005】バトロキソビンの急性毒性試験はマウス、ラット、ウサギおよびイヌに静脈内投与して行った。LD50(BU/kg)は次の通りであった。以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。【0006】【実施例1】犬心筋再灌流モデルにおける虚血−再灌流障害のバトロキソビンの予防・治療効果実験方法体重8〜12kgの雌雄の雑種成犬10頭に、ペントバルビタールナトリウム30mg/kgを静脈内投与して麻酔後、ただちに気管挿管し、人工呼吸を行った。第3および第4肋骨間を切開して開胸した後、心膜を破り心臓を露出させた。虚血は左冠状動脈前下行枝を周囲の組織から剥離し、オクルーダーで結紮して血行を一時停止させた。実験中、血流停止は、冠動脈流量、心電図および左心室圧をモニターして確認した。再灌流は引き続き結紮を解除することにより行った。虚血−再灌流障害の評価は以下のごとく行った。すなわち、結紮90分後に血行を再度開通させ、30分後直ちに飽和塩化カリウム溶液10ml注入により心臓停止し、即座に左鎖骨下動脈からリン酸緩衝液を逆行性に、心臓に灌流して洗浄した後、狭窄部位を再度結紮し、リン酸緩衝液に溶解した2%エバンスブルー溶液10mlを同様に灌流し、非虚血域を染色した。その後心臓を摘出し、1cm厚で水平断し、リン酸緩衝液に溶解した1%TTC(Triphenyl Tetrazolium Chloride)に入れ、染色した。断面上のエバンスブルー染色陽性領域(青色:非虚血組織域)、エバンスブルー染色陰性でTTC染色陽性領域(赤色:冠動脈虚血健常域)、エバンスブルー染色陰性でTTC染色陰性領域(白色:心筋梗塞域)の各領域の面積をプラニメーターで測定し、これと、それぞれの組織の厚みから、虚血容積および梗塞容積を求め、〔梗塞容積/虚血容積〕を百分率で求めた。なお、バトロキソビン投与群(n=5)では、バトロキソビン0.5BU/kgを、血流再灌流開始30分前に総頸動脈から投与し、対照群(n=5)では、同様に生理食塩水を同量投与した。【0007】結 果対照群の〔梗塞容積/虚血容積〕は47±10%であった。バトロキソビン投与群の〔梗塞容積/虚血容積〕は25±5%で、対照群に比べ、心筋梗塞域の壊死拡大を有意(p<0.005)に抑制した(表1)。したがって、バトロキソビンの投与は、心筋の虚血−再灌流障害に対し、抑制作用を示すことが認められた。【0008】【表1】**p<0.005【0009】【実施例2】ラット脳虚血−再灌流モデルにおける虚血−再灌流障害のバトロキソビンの予防・治療効果実験方法体重約200〜250gのWistar系雄ラット18匹を用い、各群6匹ずつの3群に分け、偽手術群、対照群、バトロキソビン投与群とした。ラットを、10%抱水クロラール(350mg/kg)にて麻酔後、定位手術機械に固定し、両側翼小孔を露出し、電気熱凝固法で両側椎骨動脈を遮断した。24時間後、同じ麻酔条件で頸部正中を切開し、両側総頸動脈(Common Carotid Artery, CCA) を露出し、無損傷鉗子で30分間、脳波を監視しながらクランプした。脳波をとる電極は、一方は前頭鼻正中部に、一方は頭頂部に装着しモニターした。CCAの閉鎖を確認してから30分後、再びクランプを外し、脳血管灌流を6時間行った。再灌流終了後、断頭し、脳を摘出し、ホルマリン固定した。パラフィン包埋後薄切し、海馬を通る前額断切片を作成し、標本にヘマトキシリン−エオシン染色を施した。光学顕微鏡下で観察し、海馬CAl部の長さ1mm当りの正常および障害錘体細胞を算出し、組織の障害度を評価した。バトロキソビン投与群には、8BU/kgを、CCAをクランプする30分前に腹腔内投与した。対照群には、等容量の生理食塩水を投与した。偽手術群は、両側翼小孔を露出し、24時間後にCCAを露出したが、凝固もクランプも行わず、CCAを露出する30分前に等容量の生理食塩水を投与した。【0010】結 果偽手術群:光学顕微鏡による観察では、異常な所見はみられなかった。海馬CAl大錐体細胞の生存率は98.5±1.6%であった(表2)。対照群:光学顕微鏡による観察では、海馬CAl領域で大錐体細胞の萎縮がみられ、細胞質の染色の度合いは深かった。さらに細胞核は三角形に濃縮しており、細胞間隙は広くなっていた。海馬CAl大錐体細胞の生存率は56.4±19.8%であった(表2)。バトロキソビン投与群:光学顕微鏡による観察では、海馬CAl領域で大錐体細胞の萎縮がみられたが、わずかであった。細胞質の濃染もわずかであった。細胞核および核小体は明瞭であった。細胞間隙も変化なかった。海馬CAl大錐体細胞の生存率は87.3±5.4%で対照群に比べて有意(p<0.01)であった(表2)。このように、脳虚血再灌流による細胞障害は、バトロキソビンの投与により顕著に抑制された。したがってバトロキソビンは脳虚血再灌流障害に対し、抑制作用を示すことが認められた。【0011】【表2】生存率は平均± S.D. で示した。**:偽手術群と比較 p<0.01、 ##:対照群と比較 p<0.01【0012】【発明の効果】本発明のバトロキソビンは、抗血栓性の末梢循環改善作用を有し、心筋虚血時、脳虚血時などにおける再灌流障害の予防および治療薬として有効である。 バトロキソビンを有効成分として含有することを特徴とする虚血−再灌流障害の予防および治療薬。 虚血性心疾患に対する請求項1記載の予防および治療薬。 虚血性脳疾患に対する請求項1記載の予防および治療薬。


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