生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_臨床検査用製剤
出願番号:1995079640
年次:2004
IPC分類:7,G01N33/72,G01N33/90


特許情報キャッシュ

石橋 健一郎 日裏 久英 JP 3543144 特許公報(B2) 20040416 1995079640 19950311 臨床検査用製剤 国際試薬株式会社 000170565 廣瀬 孝美 100085486 石橋 健一郎 日裏 久英 20040714 7 G01N33/72 G01N33/90 JP G01N33/72 G01N33/90 7 G01N 33/72 G01N 33/90 A61K 38/16 A61K 47/16 A61K 47/42 A61K 9/19 特開平06−281654(JP,A) 3 1996245421 19960924 8 20020311 塚中 哲雄 【0001】【産業上の利用分野】本発明は臨床検査用製剤に関する。より詳細には、主として臨床検査などの分野で、ヘモグロビンを測定(定量)する際に標準品やコントロール試薬として利用される臨床検査用製剤に関する。【0002】【従来の技術】ヘモグロビンは、赤血球に存在するヘム蛋白質であり、α鎖及びβ鎖と命名されるポリペプチド鎖(各鎖はヘム1分子と結合している)2対からなる四量体で構成されており、分子量約65,000である。ヘモグロビンは、血液中に成人男性で16〜18g/dl、女性で14〜16g/dl含まれており、可逆的に酸素を鉄原子に着脱することにより、生体内において酸素運搬機能を営んでおり、また二酸化炭素の運搬にも重要な役割を果たしている。このような重要な役割を有することから、臨床検査における血液検査では、ヘモグロビンの測定は基本的な測定項目の一つになっており、赤血球数やヘマトクリット値などと組み合わせて貧血(例えば、鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血など)の診断に利用されている。また、最近では、便に含まれている微量のヘモグロビンを測定することにより、大腸癌などの診断にも利用されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】上記のヘモグロビンの測定に際しては、基準となる標準品やコントロール試薬が必要になるが、ヘモグロビンは安定性が低く、安定な標準品やコントロール試薬を調製することが困難である。例えば、ヘモグロビン溶液を凍結乾燥すると、ヘム部分のFe2+がFe3+に酸化されるメト化が生じ、また保存中にもメト化が進行し、変性することが知られている。特に、ヘモグロビンを標準品やコントロール試薬に製剤化する場合、1包装単位当りのヘモグロビン含量は極めて微量であり、変性によるヘモグロビン含量の変動が大きく、変性したヘモグロビンを含む標準品やコントロール試薬を用いると測定値の誤差が大きくなり、測定精度に欠けるという問題がある。【0004】ヘモグロビンの安定化法として、特開昭61−1620号公報には、糖類及びアミノ酸類を含有させてなるメト化防止剤が開示されており、かかる方法によりヘム核の変化に基づくヘモグロビンの変性を抑制できることが示されている。しかしながら、上記公報に記載の技術は、代用血液として利用するヘモグロビンの安定化を目的としており、ヘモグロビンとしてmg/mlレベルを対象としているため、臨床検査での標準品やコントロール試薬として要求されるng〜μg/mlレベルのヘモグロビンを安定化するには適当でない。一方、特開昭60−35270号公報には、ヘモグロビンに特定の含窒素化合物を添加することからなり、ヘム部からの鉄の遊離を防止するヘモグロビンの分解防止方法が開示されている。しかし、この方法は、測定系などの溶液中でのヘモグロビンの安定化を目的とするもので、標準品やコントロール試薬などの安定化方法としては適当でない。【0005】このように、従来のヘモグロビンの安定化方法は、ヘモグロビンを高精度で測定する必要のある臨床検査の標準品やコントロール試薬の安定化法としては適当でない。本発明はかかる問題を解決するためになされたもので、蛋白質としてのヘモグロビン分子を免疫学的測定法のレベルで安定化するものであり、臨床検査の分野で血液検査としてヘモグロビンを測定する際の標準品やコントロール試薬として用いられる微量のヘモグロビンの安定化を図ることを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、標準品やコントロール試薬として使用される微量のヘモグロビンの安定化を鋭意研究した結果、ヘモグロビンにアミノ酸及びアルブミンを共存させることによりヘモグロビンの安定性が著しく向上し、アミノ酸とアルブミンはヘモグロビンの安定化に対して相乗的に作用することを見出して本発明を完成させた。即ち、本発明は、ヘモグロビン、アミノ酸及びアルブミンとを含有することを特徴とする臨床検査用製剤であり、特にアミノ酸としてはL−リジンが好ましく、更に剤形としては凍結乾燥製剤が好適である。【0007】本発明は上記の構成からなり、本発明が対象とするヘモグロビンとしては、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、サル、ウサギ、ニワトリなどの動物由来のヘモグロビンが挙げられ、ヒトの血液検査におけるヘモグロビン測定の標準品又はコントロール試薬として使用する場合には、ヒト由来のヘモグロビンが使用される。【0008】本発明で使用されるアミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、バリンなどが例示され、特にアラニン、ロイシン、リジン、メチオニンが好ましく、更にリジンがより好ましい。本発明において、アミノ酸にはアミノ酸二量体も包含され、かかるアミノ酸二量体としては、例えば、グリシルグリシン、グリシルアラニン、アラニルアラニンなどが例示される。【0009】アルブミンとしては種々のアルブミンが使用でき、例えば、血清アルブミン、卵白アルブミン、ラクトアルブミンなどが例示でき、好適には血清アルブミンが使用される。血清アルブミンは、ヒト、ウシ、ウマなどの哺乳動物の血漿から常法に準じて調製されたものを使用でき、市販品を用いてもよい。更に、血清アルブミンは、遺伝子工学的方法で調製されたものを用いることもでき、遺伝子工学的方法で調製された血清アルブミンは、性状が一定であり且つ高純度であるので好ましい。好適な血清アルブミンとしてはウシ血清アルブミンが挙げられる。【0010】アミノ酸とアルブミンの配合比は特に限定されないが、一般に、重量比でアルブミン1に対して、アミノ酸を0.2〜5程度、好ましくは0.25〜2程度、より好ましくは0.5〜1.5程度とされる。【0011】本発明の臨床検査用製剤は種々の剤形をとりえるが、保存安定性の向上が図れることから、凍結乾燥製剤とするのが好ましい。凍結乾燥製剤は、例えば、ヘモグロビン水溶液又は緩衝液溶液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液など)にアミノ酸及びアルブミンを溶解した溶液を調製し、これを必要に応じて濾過処理した後、常法に準じて凍結乾燥することにより得ることができる。【0012】上記の混合溶液の液性は、ヘモグロビンの安定化が図れるものであれば特に限定されないが、通常pH7.2程度に調製される。また、凍結乾燥の方法としては、例えば、上記のヘモグロビン含有混合溶液を−70℃〜−10℃程度で凍結させ、次いで−40℃〜4℃程度において高真空下で乾燥させる方法が挙げられる。【0013】なお、本発明の臨床検査用製剤は、上記で説明した例に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。例えば、本発明の臨床検査用製剤は、必要に応じて種々の添加剤を含有していてもよく、かかる添加剤としては、塩化ナトリウムなどの無機塩、グルコース、マルトースなどの糖類が例示できる。本発明の臨床検査用製剤は、血液検査のヘモグロビン測定における標準品やコントロール試薬として好適に使用され、凍結乾燥製剤の場合には、用時に精製水で溶解して使用される。【0014】【発明の効果】本発明の臨床検査用製剤においては、アミノ酸及びアルブミンによりヘモグロビンの著しい安定化が図れる。従って、本発明によれば、長期間にわたり安定的に保存可能な臨床検査用製剤が得られるので、血液検査におけるヘモグロビン測定の標準品やコントロール試薬の調製が容易になると共に測定精度の向上に寄与することができる。【0015】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0016】実施例10.15M塩化ナトリウムと1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)を含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で調整した100ng/mlのヒトヘモグロビン溶液に、種々の化合物を1%(w/v)となるように添加後、常法に準じて凍結乾燥し、凍結乾燥品を調製した。凍結乾燥後、ヒトヘモグルビン量を抗ヒトヘモグロビン抗体(ウサギ)固定化マイクロタイタープレートと西洋ワサギペルオキシダーゼ標識抗ヒトヘモグロン抗体を用いるサンドイッチ酵素免疫測定法により測定した。さらに凍結乾燥品を37℃で7日間保存後、同様にヘモグロビン量を測定し、保存前後のヘモグロビン量より残存率を求め、ヘモグロビンの安定化効果の指標とした。その結果を表1に示した。表1に示されるように、アラニン、アルギニン、グリシルグリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リオシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、バリンに安定化効果が認められたが、中でもリジンは37℃、7日間の保存条件でほぼ完全に残存しており安定化効果が大きいことが判った。【0017】【表1】【0018】実施例2ヒトヘモグロビンを100ng/mlとなるように0.15M塩化ナトリウム含有20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)に溶解したもの、それに、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したもの、2%L−リジンを添加したもの、さらに1%BSAと1%L−リジンの両方を添加したものを調製し、常法に準じて凍結乾燥して凍結乾燥品を調製した。実施例1と同様にして、凍結乾燥後及び37℃で2週間保存後のヘモグロビン濃度を測定し、37℃2週間保存前後のヘモグロビンの残存率を求めた。その結果を表2に示した。【0019】【表2】以上の結果、1%BSAと1%リジンを添加したものは、無添加のもの、2%BSA、2%リジンをそれぞれ単独添加のものよりも安定化効果が大きく、アミノ酸とアルブミンはヘモグロビンの安定化に対して相乗効果が認められた。【0020】実施例3実施例1と同様の緩衝液で調製したヒトヘモグロビン溶液にL−リジンの濃度を0〜2%まで変化させて添加後、凍結乾燥し、凍結乾燥品を調製した。実施例1と同様にして、凍結乾燥後及び37℃で2週間保存後のヘモグロビン濃度を測定し、37℃2週間保存前後のヘモグロビンの残存率を求めた。その結果を表3に示した。【0021】【表3】以上の結果、L−リジンは0.25〜2%で効果が認められ、とりわけ1〜2%が良いことが判った。【0022】実施例4実施例1に示した緩衝液からBSAを除いた緩衝液で調製したヒトヘモグロビン溶液に1%L−リジンを加え、BSAの濃度を0〜5%まで変化させて添加後、凍結乾燥し、凍結乾燥品を調製した。実施例1と同様にして、凍結乾燥後及び37℃で2週間保存後のヘモグロビン濃度を測定し、37℃2週間保存前後のヘモグロビンの残存率を求めた。その結果を表4に示す。【0023】【表4】以上の結果より、添加するBSA濃度は0.5〜5%の範囲で安定化効果が有ることが判り、とりわけ1〜5%が良いことが判った。 ヘモグロビン、アミノ酸及びアルブミンとを含有することを特徴とする臨床検査用製剤。 アミノ酸がL−リジンである請求項1記載の臨床検査用製剤。 剤形が凍結乾燥製剤である請求項1又は2記載の臨床検査用製剤。


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