生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_組換えトリアデノウイルスベクター
出願番号:1994522542
年次:2005
IPC分類:7,C12N15/09,A61K39/12,A61P31/14


特許情報キャッシュ

シェパード、マイケル エルニー、カトリナ マッコイ、リチャード ワーナー、ウェンディ JP 3606870 特許公報(B2) 20041015 1994522542 19940414 組換えトリアデノウイルスベクター コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション 393028081 渡邉 潤三 100116838 シェパード、マイケル エルニー、カトリナ マッコイ、リチャード ワーナー、ウェンディ AU PL8297 19930414 20050105 7 C12N15/09 A61K39/12 A61P31/14 JP C12N15/00 A A61K39/12 A61P31/14 7 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed 特開昭61−118326(JP,A) 特表昭59−500042(JP,A) 特開昭60−248179(JP,A) Mol.Gen.Mikrobiol.Virusol.,No.5(1988)p.39-43(p.27-30) Vet.Microbiol.,Vol.24,No.2(1990)p.105-112 Virology,Vol.188,No.2(1992)p.881-886 12 AGAL N94/8878 AGAL N94/8879 AU1994000189 19940414 WO1994024268 19941027 1996508410 19960910 27 20010412 高堀 栄二 技術分野本発明は、疾病により大量死しやすい商業目的の家禽に免疫応答を起こすために用いる、抗原産生遺伝子(異種遺伝子配列)の運搬ベクターに関する。このようなベクターは特に、疾病から家禽を保護するための大規模な投与が容易なワクチンの調製に有用である。本発明はまた、適当な運搬ベクターの作製方法、該ベクターを基にしたワクチンの調製方法、該ワクチンの投与方法、及び疾病からの家禽の保護方法に関する。背景技術集約的な家禽産業の生産性は、伝染病の制御の度合に左右される。オーストラリアでは、そのような疾病に対し要する費用が少なくとも年間5千万ドルかかると見積もられている。疾病は清潔な衛生状態と検疫により制御される面もあるとはいえ、家禽の保護は依然として予防接種に頼らざるを得ない。営利的状況においては、適当な予防又は治療剤或いはアジュバントの投与は、処置すべき家禽の数が莫大なため、困難で費用のかかるものとなっている。従って、ワクチンは安価で、効果的かつ容易に投与できるものでなくてはならない。従来、生きたウイルス粒子からなるワクチンは、ウイルスの継代、及び弱毒化ウイルスの選別により調製されている。または、死菌ワクチンが毒性ウイルスから調製されている。一般のウイルス感染に対する商業目的の家禽の予防接種についての最近の試みは、AU−A−34353/93[出願人:バイロジェネティクス・コーポレーション(VIROGENETICS CORPORATION)]に記載されている。この出願は、宿手動物の免疫応答を誘発するワクチンとしてのマレック病ウイルスに由来する異種DNAを含む、ワクシニアウイルス又は鶏痘ウイルス等の組換えポックスウイルスを記載している。しかし、ポックスウイルスの使用には、適切な防御が発生するまで家禽の免疫応答が充分に維持できないという欠点がある。特に、一旦母親由来の抗体が抗体性免疫における働きを失うと、発生した防御免疫は鳥を保護するのに充分でなくなることがある。1993年9月発行の雑誌ジェネティック・エンジニアリング・ニュース(Genetic Engineering News)に報告されているように、米国のメディソーブ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(Medisorb Technologies,Inc.)のグループによって別の試みがなされている。ここではポリラクトコグリコール酸(polylactic−coglycolic acid)に基づく生物分解性のミクロスフェアに、従来のサルモネラワクチンを封入したものを用いている。しかしこの場合、ミクロスフェアを鳥に注射する必要がある。この方法は、莫大な数の鳥に対しては、営利上必ずしも適しているとはいえない。従って、本発明の1つの目的は、大規模な投与に特に適した、遺伝子材料である異種配列を有する運搬媒体を提供することにある。特に、本発明の1つの目的は、一般的な鳥類の疾病に対する防御力を賦与するように、抗体又は細胞性免疫を発生させる及び/又は最適化する手段にして、素早くかつ効果的に、特に大量の家禽に投与する手段を提供又は強化することにある。また本発明の他の1つの目的は、一般的な鳥類の疾病から鳥を保護するための、抗体又は細胞性免疫を発生させる及び/又は最適化するのに適した手段を調製する方法を提供することにある。また本発明の更に他の1つの目的は、鳥類の保護方法を提供することにある。発明の概要本発明の1つの態様によれば、目的DNAを発現することのできる組換えトリアデノウイルスにして、該目的DNAが該組換えトリアデノウイルスのゲノムの適切な部位へ安定的に組み込まれている、組換えトリアデノウイルスが提供される。本発明の他の1つの態様によれば、少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなる組換えトリアデノウイルスを包含してなる組換えベクターが提供される。該異種塩基配列は抗原ポリペプチドとして発現可能なものが好ましい。上記の少なくとも1種の異種塩基配列によりコードされる抗原ポリペプチドは、宿主ベクターにとって外来のものであることが好ましい。上記の組換えベクターは、組換えトリアデノウイルスが由来する天然のトリアデノウイルスが有するのと変わらないウイルス粒子構造蛋白質を有する、生きた組換えトリアデノウイルスを包含していてもよい。本発明は、ニワトリアデノウイルスのある領域が特殊な性質を有する、との発見に基づく。特に、主要な後期プロモーター及びリーダー配列は、既に性質の明らかになったアデノウイルスの相当領域とは全く異なる。まず驚くべきことに、ニワトリアデノウイルスのリーダー配列は分割された配列であることが判明した。またヒトアデノウイルスに関する知識に基づくと、更に驚くべきことに、既に他のアデノウイルスにおいて性質の判明した領域に対応しない非必須領域がニワトリアデノウイルスゲノム上に存在していることから、このウイルスが異種配列の運搬に特に適していることが判明した。本発明は更に、トリアデノウイルスが家禽に長い免疫応答を発生させることから、ワクチンの媒体として非常に適している、との発見に基づく。更に、トリアデノウイルスには毒性の異なる多くの血清型が存在するため、必要な免疫応答レベルに適合するワクチン媒体の選択が可能である。アデノウイルスは種類の多い科であり、多様な鳥類、特にニワトリ、更にヒト及びその他の哺乳類を包含する多くの生物種から単離されている[R.ウィガンド(R.Wigand),H.ゲルダーブロム(H.Gelderblom)及びM.オゼル(M.Ozell),“ネズミアデノウイルスFL株の生物学的及び生物物理学的特性(Biological and Biophysical characteristics of mouse adenovirus,strain FL)”、Arch,Virol.54:131−142,1977]。これによれば、アデノウイルスは2つの異なる属に分類され、1群は哺乳類を宿主とし[マストアデノウイルス(Mastadenoviradae)]、他群は鳥類を宿主とする[アビアデノウイルス(Aviadenoviradae)]。トリアデノウイルスの血清型は哺乳類アデノウイルスのものと僅かに関連があるだけなので、後者に関する知識は前者について部分的にしか使えない。トリアデノウイルスはヒトアデノウイルスと極めて限定されたDNA相同性を有するだけであり[P.アレストロム(P.Alestrom),A.ステンランド(A.Stenlund),P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet)およびU.パターソン(U.Pettersson),“トリ及びヒトアデノウイルス間における配列相同性(Sequence homology between avian and human adenoviruses)",J.Virol.42:306−310,1982]、またニワトリアデノウイルス(fowl adenovirus,FAV)ゲノムはヒトアデノウイルスゲノムより約10キロベース長い。これらのウイルスをアデノウイルスに分類するのは、形態及び構造上の類似性のみに基づくものである。現在、アビアデノウイルス属(トリアデノウイルス)は、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、キジ、アヒルアデノウイルスの5種に分かれている。ニワトリアデノウイルス(FAV)は、1950年代にFAVに感染した未発達卵及び細胞培養物を使用した研究の結果単離され、初めて確認された{M.バン デン エンデ(M.Van Den Ende),P.A.ダン(P.A.Don),A.キップス(A.Kipps),“ウシランピースキン病の原因と思われる、卵中の新たな濾過性因子の単離(The isolation in eggs of a new filterable agent which may be the cause of bovine lumpy skin disease)",J.gen.Micro.3:174−182;1949;及びV.J.イエーツ(V.J.Yates),D.E.フライ(D.E.Fry),“ニワトリ胚致死性オーファン(CELO)ウイルス(血清型1)の観察[Observations on a chicken embryo lethal orphan(CELO)virus(serotype 1)]",Am.J.Vet.Res.18:657−660;1957}。しかし、分子研究の行われているニワトリアデノウイルスだけが、腫瘍FAVであるCELOウイルスである。CELOウイルスゲノムはヒトアデノウイルス(HAV)ゲノムより約30%長い{W.G.レイバー(W.G.Laber),H.バンドフィールド−ヤングハズバンド(H.Bandfield−Younghusband),及びN.G.リグレー(N.G.Wrigley),“CELOウイルス(トリアデノウイルス)の精製とその特性[Purification and properties of chick embryo lethal orphan virus(an avian adenovirus)]",Virol.45:598−614;1971}。CELOウイルスは少なくとも11〜14の構造蛋白質で構成されてなり{H.ヤスエ(H.Yasue)及びM.イシバシ(M.Ishibashi),“CELOウイルスの誘発する初期及び後期ポリペプチド[Chick embryo lethal orphan(CELO)virusinduced early and late polypeptides",Virol.78:216−233;1977;P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet)及びC.R.パリッシュ(C.R.Parish),“CELOウイルスのDNA結合蛋白質:トリ及びヒトアデノウイルスの初期蛋白質間における相補性の欠如(DNA−binding proteins of chick embryo lethal orphan virus:Lack of complementation between early proteins of avian and human adenoviruses)",J.gen.Virol.65:1817−1825;1984a}、これは10〜14の構造蛋白質で構成されてなるHAVと構造上類似している{J.V.メイゼル(Jr)[J.V.Maizel(Jr)],D.O.ホワイト(D.O.White)及びM.スカーフ(M.Scharff),“アデノウイルスのポリペプチド,I.ウイルス粒子内における複数の蛋白質構成要素の存在証拠、及び2,7A及び12型の比較(The Polypeptides of adenovirus.I.Evidence for multiple protein components in the virion and a comparison of types 2,7A and 12",Virol.36:115−125;1968;及びM.イシバシ(M.Ishibashi)及びJ.V.メイゼル(Jr)[J.V.Maizel(Jr)],“アデノウイルスのポリペプチド,V.未成熟ウイルス粒子,並びに前駆構成要素と成熟ウイルス粒子間の構造中間体(The polypeptides of adenovirus V.Young virions,structural intermediate between top components and aged virions)",Virol.57:409−424;1974}。FAVとHAVの形態上の相違で唯一明白なのは、FAVが付加的なファイバーを有することである。第2のファイバー遺伝子の存在を考慮するとしても、HAVと比較するとFAVのゲノムにかなりの量の‘過剰'DNAが存在することは説明されていない。DNA交差交雑の研究により、HAV及びFAV間には非常に限られた相同性しかないことが示された[P.アレストロム(P.Alestrom),A.ステンランド(A.Stenlund),P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet)及びU.パターソン(U.Pettersson),“トリ及びヒトアデノウイルス間の配列相同性(Sepuence homology between avian and human adenoviruses)",J.Virol.42:306−310;1982]。しかし、このことや、免疫学的関連性の欠如にもかかわらず、CELOウイルス及びHAVのヘキソンの遺伝子配列は類似していなくとも二者のアミノ酸構成は類似していることが判明している{W.G.レイバー(W.G.Laver),H.バンドフィールド−ヤングハズバンド(H.Bandfield−Younghusband)及びN.G.リグレー(N.G.Wrigley),“CELOウイルス(トリアデノウイルス)の精製とその性質[Purification and Properties of chick embryo lethal orphan virus(an avian adenovirus)]",Virol.45:598−614,1971}。他に顕著な類似点として、ゲノムの両端における末端反復配列の存在[P.アレストロム(P.Alestrom),A.ステンランド(A.Stenlund),P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet)及びU.パターソン(U.Pettersson),“トリ及びヒトアデノウイルス間における配列相同性(Sequence homology between avian and human adenoviruses)",J.Virol.42:306−310;1982;並びにM.シェパード(M.Sheppard)及びK.M.アーニー(K.M.Erny),“非腫瘍トリアデノウイルスの有する逆方向末端反復配列のDNA配列分析(DNA sequence analysis of the inverted terminal repeats of a non−oncogenic avian adenovirus)",Nuc.Acid Res.17:3995;1989],低分子量ウイルス関連(virus associated,VA)RNAの生成[S.ラーソン(S.Larsson),A.ベレット(A.Bellet)及びG.アクスヤービ(G.Akusjarvi),“トリ及びヒトアデノウイルスに由来するVA RNAs:長さ、配列及び遺伝子配置における劇的な違い(VA RNAs from avian and human adenoviruses:dramatic differences in length,sequence,and gene location)",J.Virol.58:600−609;1986]、及び少なくとも1種の非構造蛋白質、すなわちDNA結合蛋白質(DBP)の共有[P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet),C.R.パリッシュ(C.R.Parish),“CELOウイルスのDNA結合蛋白質:トリ及びヒトアデノウイルスの初期蛋白質間における相補性の欠如(DNA−binding proteins of chick embryo lethal orphan virus:Lack of complementation between early proteins of avian and human adenoviruses)",J.gen.Virol.65:1817−1825;1984a]を挙げることができる。表面上、これらの発見はFAVとHAVの強い類似性を示唆する。しかし、まず、FAVの末端反復配列はかなり短かく、またHAVと違い、腫瘍及び非腫瘍FAVを比較した場合末端反復配列の長さに違いはない[M.シェパード(M.Sheppard)及びK.M.アーニー(K.M.Erny),“非腫瘍トリアデノウイルスの有する逆方向末端反復配列のDNA配列分析(DNA sequence analysis of the inverted terminal repeats of a non−oncogenic avian adenovirus)",Nuc.Acids Res.17;3995;1989]。第2に、FAVのVA RNA遺伝子はその染色体配置、転写の方向及び主鎖の配列に関して、HAVの対応遺伝子とは異なる[S.ラーソン(S.Larsson),A.ベレット(A.Bellet)及びG.アクスヤービ(G.Akusjarvi),“トリ及びヒトアデノウイルスに由来するVA RNAs:長さ、配列及び遺伝子配置における劇的な違い(VA RNAs from avian and human adenoviruses:dramatic differences in length,sequence,and gene location)",J.Virol.58:600−609;1986]。最後に、E1A意電子との相互作用により転写を誘発するFAVのDBPは、HAVのE1A遺伝子を認識しない[P.リー(P.Li),A.J.D.ベレット(A.J.D.Bellet)及びC.R.パリッシュ(C.R.Parish),“CELOウイルスのDNA結合蛋白質:トリ及びヒトアデノウイルスの初期蛋白質間における相補性の欠如(DNA−binding proteins of chick embryo lethal orphan virus:Lack of complementation between early proteins of avian and human adenoviruses)",J.gen.Virol.65:1817−1825;1984a]。ニワトリアデノウイルスは家禽に共通して見られ、今日までに11の異なる血清型が識別されている[J.B.マクフェラン(J.B.McFerran)及びT.J.コナー(T.J.Connor),“ニワトリアデノウイルス分類における更なる研究(Further studies on the classification of fowl adenoviruses)",Av.Dis.21:585−595;1977]。これら全ての血清型は世界中に広く散在しているようであるが、特定の地理学的位置においてはある血清型が優勢であることを疫学的調査が示している。例えば、アメリカで最も一般的な血清型は1,4,5,7及び9である[B.コウエン(B.Cowen),G.B.ミッチェル(G.B.Mitchell)及びB.W.カルネク(B.W.Calnek),“成長期及び産卵期の家禽におけるアデノウイルスの調査(An adenovirus survey of poultry flocks during the growing and laying periods)",Av.Dis.22:115−121;1978;並びにV.J.イエーツ(V.J.Yates),Y.O.リー(Y.O.Rhee),D.E.フライ(D.E.Fry),A.M.エル ミシャド(A.M.El Mishad)及びK.J.マコーミック(K.J.McCormick),“健全なニワトリにおけるトリアデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスの存在(The presence of avian adenoviruses and adeno−associated viruses in healthy chickens)",Av.Dis.20:146−152:1976]。オーストラリアにおける臨床上羅患している家禽についての調査では、血清型は1及び4と同定されており[D.B.ボイル(D.B.Boyle)及びJ.B.マクフェラン(J.B.McFerran),“クイーンズランドの家禽より単離したトリアデノウイルス(Avian adenoviruses isolated from poultry in Queensland)",Aus.Vet.J.52:587−589;1976]、最近では血清型6、7及び8[R.L.リース(R.L.Reece),D.A.バー(D.A.Barr),D.C.グリックス(D.C.Grix),W.M.フォーシス(W.M.Forsyth),R.J.コンドロン(R.J.Condron)及びM.ヒンドマーシュ(M.Hindmarsh,“ビクトリア種のニワトリにおける自然発生封入体肝炎の観察(Observations on naturally occurring inclusion body hepatitis in Victorian chickens)",Aust.Vet.J.63:201−202;1986]が、最も優勢な血清型として識別されている。鳥にワクチンを投与するための、生きたベクターの作製に適切なFAVを選択する場合、自然界で優勢な血清型を考慮することが重要である。家禽に頻繁に接触し、家禽に免疫を生じさせていると考えられる血清型に比べ、養禽の場であまり遭遇することのない血清型は明らかに有利である。更に考慮すべきことは、母親由来の抗体が孵化直後の鳥を保護する期間を過ぎても、ベクターは鳥の体内で活性を維持する能力を有するかどうかということである。FAVベクターとなりうるものを選択する場合に他に考慮すべきことは、病原性と免疫原性である。生きたベクターウイルスは、高い感染力を有しても、標的種に不利な影響を与えないような非病原性である(又は少なくとも確実に弱毒化されている)ものが好ましい。血清型1のFAVの腫瘍形成性は立証されており{P.S.サーマ(P.S.Sarma),R.J.ヒューブナー(R.J.Huebner)及びW.T.レーン(W.T.Lane),“トリアデノウイルス(CELO)によるハムスターへの腫瘍の誘発[Induction of tumours in hamsters with an avian adenovirus(CELO)",Science 149:1108;1965]},従ってこのFAV群はベクター作製に好ましくない。ワクチンベクターとして用いるのに好ましい候補株は、非病原性分離株FAV CFA20(血清型10)及びCFA15(血清型10)である。臨床上安全で、オーストラリア及びアメリカの家禽には明らかに稀な血清型を代表することから、CFA20ウイルスはより好ましいベクター候補である。上記のことを考慮することは過去の感染に関連して起こりうる問題を削減する意味で重要である。FAV CFA15及びCFA19(血清型9)も、ベクター作製の考慮に足る適当な候補であるといえる。他の血清型も有用でありうる。より毒性を有する株ほど、強い抗体産生応答を発生させることは注目に値する。ウイルスゲノムの非必須領域に組み込むことができ、且つ、抗体又は細胞性免疫発生が望まれる感染性生物体の抗原決定基をコードしうる異種塩基配列としては、腸管感染を起こす寄生生物、例えばコクシジウムや、呼吸器ウイルス、例えば感染性気管支炎ウイルス、の抗原決定基を発現するものを用いることができる。免疫が望まれる他の感染性生物体としては、ファブリキウス嚢等の内臓を標的にするもの、例えば感染性嚢疾患ウイルス(infectious bursal disease virus,IBDV)が含まれる。ニワトリアデノウイルスの非必須領域に組み込むことのできる異種塩基配列としては、下記の病原体の抗原決定基の塩基配列を挙げることができる。ニューカッスル病マレック病エッグドロップ症(Egg Drop Syndrome)封入体肝炎感染性喉頭気管支炎マイコプラズマニワトリ貧血因子(再生不良性貧血)トリインフルエンザトリ脳脊髄炎本発明のベクターへ組み込まれている異種塩基配列としては、感染性嚢疾患の抗原決定基(VP2)又はコクシジウム症の抗原決定基を発現する配列がより好ましい。また、ベクターに組み込む異種塩基配列としては、サイトカイン、あるいは例えばニワトリ骨髄性単球増殖因子(cMGF)又はインスリン様増殖因子(IGF)といった成長促進因子等の、免疫強化因子の塩基配列も挙げることができる。候補ベクターに刺激された免疫応答の種類は、そこに挿入される異種塩基配列の選択に影響しうる。FAVの分離株CFA20及びCFA15は、粘膜免疫を誘発するので、腸管または呼吸器系感染に対してより適当である。強い血清抗体産生応答を誘発するCFA19等のFAVの分離株は、鳥の消化官外へ浸透する能力を有するため、家禽の器管疾患に対して使用するのにより適当である。抗原決定基又は免疫強化因子をコードする異種遺伝子を包含する目的DNAは、ウイルスゲノムの少なくとも1種の非必須領域に配置することができる。異種塩基配列の置換や挿入に適当と考えられるウイルスゲノムの非必須領域としては、ウイルスゲノムの右末端に位置するノンコーディング領域を挙げることができる。この領域は、交差単位97から99.9のゲノム右末端に位置するのが好ましい。異種塩基配列をできる限り効果的に本来の位置で発現させる為に、該異種塩基配列をプロモーター及びリーダー配列と関連させてもよい。また異種塩基配列は、トリアデノウイルスの主要な後期プロモーター及びスプライスリーダー配列に関連させて挿入するのが好ましい。主要な後期プロモーターはアデノウイルス遺伝子地図上で交差単位16〜17付近に位置し、古典的なTATA配列の特徴を有する[D.C.ジョンソン(D.C.Johnson)、G.ゴッシュ−コンダリー(G.Gosh−Chondhury)、J.R.スマイレー(J.R.Smiley)、L.ファリス(L.Fallis)及びF.L.グラハム(F.L.Graham)、“アデノウイルスベクターを用いた単純ヘルペスウイルス糖蛋白質gBの大量発現(Abundant expression of herpes simplex virus glycoprotein gB using an adenovirus vector)”、Virology 164,1−14,1988]。上記のトリアデノウイルス分離株のスプライスリーダー配列は、後期遺伝子へスプライスされる、分割された配列である。また、異種遺伝子配列はポリアデニル化配列と関連させてもよい。また、トリアデノウイルスの主要な後期プロモーターの代わりに、他の適当ないかなる真核生物のプロモーターも使用することができる。例えば、SV40ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)又はヒトアデノウイルスのプロモーターを使用することができる。トリアデノウイルス以外の、例えばSV40のプロセシング及びポリアデニル化のシグナルについても考慮することができる。本発明の更に他の1つの態様によれば、鳥類における感染性生物体による感染に対する防御力を賦与する又は強化するように、抗体又は細胞性免疫を発生させる及び/又は最適化する組換えワクチンであって、適当な担体及び賦形剤と配合される少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなる少なくとも1種の組換えトリアデノウイルスベクターを包含する組換えワクチンが提供される。上記の異種塩基配列は抗原ポリペプチドとして発現できるものが好ましい。上記の少なくとも1種の塩基配列によりコードされる抗原ポリペプチドは、宿主ベクターにとって外来のものが好ましい。この少なくとも1種の塩基配列はプロモーター/リーダー及びポリA配列と関連させてもよい。上記の組換えワクチンは、該組換えトリアデノウイルスの由来する天然のトリアデノウイルスが有するのと変わらないウイルス粒子構造蛋白質を有する、生きた組換えトリアデノウイルスベクターを包含していてもよい。組換えワクチンにおいて用いるベクター候補として好ましいのは、FAV分離株CFA20(血清型10)、CFA15(血清型10)及びCFA19(血清型9)である。家禽の種類、それが有する免疫及び環境に応じて他の血清型を使用することもできる。本発明のワクチンは、様々な病原体の起こす呼吸器系及び腸管感染に対して効果を発揮することができる。特定の感染性生物体に対してワクチンの効果を発揮させる為に、これら感染性生物体の抗原決定基をコードする異種遺伝子配列を、ベクターに包含するトリアデノウイルスゲノムの非必須領域に組み込むことができる。疾病に対する防御力を最適化するのにワクチンを用いる場合の適当な異種塩基配列としては、サイトカインや成長促進因子のような免疫強化因子の配列を挙げることができる。本発明のワクチンは、安定剤、賦形剤、他の薬学的に許容される化合物もしくは他の抗原又はその一部等の、他の成分を含んでいてもよい。ワクチンは凍結乾燥調製物又は懸濁液の形にすることができるが、これらは全てワクチン製造分野において一般的なものである。このようなワクチンに適当な担体としては、等張緩衝食塩水を挙げることができる。本発明の更に他の1つの態様によれば、鳥類における感染性生物体に対する防御力を誘発する又は強化するように、抗体又は細胞性免疫を発生させる及び/又は最適化するワクチンを調製する方法にして、少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなる組換えトリアデノウイルスベクターを構築し、得られる組換えトリアデノウイルスベクターを投与に適した形態にすることを包含する方法が提供される。上記の異種塩基配列としては、免疫強化因子をコードするのと同時に、抗原ポリペプチドとして発現可能なものが好ましい。該異種塩基配列は、宿主ベクターにとって外来のものが有利である。上記の異種塩基配列は、プロモーター/リーダー及びポリA配列と関連させるのがより好ましい。ワクチン投与の形態としては、腸溶性物質でコートした投与単位、腹腔内接種、筋肉内又は皮下投与、エーロゾル噴霧、点眼又は鼻腔内投与を挙げることができる。飲料水、飼料ペレット又は卵(ovo)への投与も可能である。投与方法としては、エーロゾル噴霧の形で投与することが好ましい。本発明の更に他の1つの態様によれば、少なくとも1種の異種塩基配列をトリアデノウイルスに挿入することを包含する、トリアデノウイルスワクチンベクターの作製方法が提供される。該異種塩基配列としては、抗原ポリペプチドとして発現できるものが好ましい。そしてその少なくとも1種の異種塩基配列にコードされる抗原ポリペプチドは、宿主ベクターにとって外来のものであることが好ましい。また、該異種塩基配列がプロモーター/リーダー及びポリA配列と関連してあることがより好ましい。ワクチンベクターの1つの好ましい製造方法においては、制限酵素認識部位であって、好ましくはベクター構築用に選択した宿主ゲノムを分割しないような部位を、宿主ゲノムの非必須領域、好ましくはノンコーディング領域に挿入する。このように、組換えウイルスゲノムはその非必須領域内に特殊な制限酵素認識部位を有するため、単純な制限酵素切断及び連結による異種塩基配列の挿入が可能である。この方法には、更に、場合に応じて非必須領域の部分的除去ができ、より大きなDNA断片を挿入できるという長所がある。この方法により、リーダー配列及びポリアデニル化認識配列のみならず外来遺伝子配列とも関連するFAVプロモーターを含有してなるDNA発現カセットを、該カセットをはさむ特定の制限酵素認識部位に構築し、FAVゲノムへの挿入を容易にすることができる。適当なベクターを構築するには、外来DNAを組み込んで変質する非必須領域を、相同的組換えにより構築する方法もある。この方法により非必須領域をクローニングし、その一部を除去し、プロモーター、リーダー及びポリアデニル化配列と共に、外来DNAを、好ましくは相同的組換えにより、フランキング配列間に挿入する。この方法によれば、非必須領域の一部を除去することで、ウイルスが通常のパッケージングにおいて制約されているよりも大きいDNAを挿入するための、余分な空間を作ることも可能である。本発明の他の1つの態様によれば、上記した本発明のワクチンの投与方法(予防接種方法)が提供される。空気伝播はFAV伝播の自然経路であることから、ワクチンはエーロゾル噴霧の形で投与するのが好ましい。本発明の1つの予防接種方法によれば、FAVベクターに基づくワクチンは、それぞれ異なる外来遺伝子又は免疫強化因子の遺伝子を担持する2個以上のウイルスベクターを包含してなる“カクテル”の形で投与することができる。本発明のより好ましい予防接種方法、即ち“カクテル”又は同時投与方法では、FAV分離株CFA19及びCFA20の両方に基づくワクチンを用いる。本発明の他の1つの予防接種方法では、FAVベクターに基づく複数のワクチンを連続的に投与し、第1のFAV予防接種に続きある段階において追加免疫ワクチン又は新たなワクチンのいずれかを投与する。使用するワクチンは異なるFAV分離株に基づくものが好ましい。上記した“連続”法のより好ましい態様においては、感染に対し最大の防御力を達成するように、血清型の関連しない分離株に基づくワクチンの組合わせを選択する。1つの例としては、FAV分離株CFA20に基づくワクチンを、FAV分離株CFA19に基づくワクチンによる予防接種に続いて又は先立って投与する方法がある。本発明のベクターワクチンは、年齢に関らず家禽に有利に接種される。ニワトリに関しては、ブロイラーは生後1日で予防接種し、種鶏及び産卵鶏は通常産卵期まで又はそれ以降まで予防接種することができる。好ましくは上記の連続法又はカクテル法のいずれかにより、家禽を予防接種するが、それだけでは免疫適格性が未だ充分とはいえない。そこで更に有利な方法として、最初の予防接種から4週間後の再感染に対する防御のために、生後1日の鳥を予防接種することができる。本発明の更に他の1つの態様によれば、本発明の組換えワクチンの有効量を鳥に投与することを包含する、鳥の免疫応答を産生する方法が提供される。本願明細書の記載を通して言及する「有効量」とは、免疫応答を誘発するのに充分な量、好ましくは一回あたり少なくとも104TCID50であるが、適用する投与方法に応じて一回あたり103〜107TCID50の範囲にあるのが好ましい。本発明のワクチンは勿論、マレック病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス又は感染性喉頭気管支炎ウイルスといった他のウイルス又は生物体に対するワクチンと、投与時に混合してもよい。本発明のこの好ましい態様においては、ワクチン投与をエーロゾル噴霧により行う。本発明の組換えベクター及びワクチンの製造方法及び試験方法は、当業者の熟知するところであろう。制限酵素による切断、結合及び電気泳動の標準的な手順は製造又は販売元の指示に従って行った。標準的な技術は、当業者の理解するところなので詳述しない。好ましい態様FAV分離株CFA15,19及び20を用いる本発明の好ましい態様を以下に記載する。これら3つの分離株はその低病原性及び高免疫原性から選択されているが、トリアデノウイルスの他の分離株も、前記の選択基準を満たすものであればワクチンベクターの構築に適するといえる。表1は様々な血清型の数種の分離株の適性を示している。106pfuのウイルス0.5mlをニワトリの腹腔内に接種し、病原性を調べた。生存したニワトリを8〜10日目に殺し、組織分析とウイルスの再分離のために組織標本を得た。ウイルスゲノムの特徴選択した分離株FAV CFA15,19及び20のゲノムの特徴を従来の方法により調べた。三者のゲノム全体のDNA制限酵素地図を、それぞれ図1,2及び3に示した。交差単位は所定のものであり(1交差単位=0.45kb)、また規定に従って、後期mRNA転写産物を合成することのない末端領域が、左端に位置するようにアデノウイルスゲノムの方向を決めた。地図作成に用いた酵素を各地図の端に記した。CFA20の主要な後期プロモーター(MLP)配列及びスプライスリーダー配列(LS)の特徴FAV MLPの同定とクローニングFAV血清型10(CFA20)ゲノムのDNA制限酵素地図及び遺伝子地図から、MLP及びリーダー配列を含むと思われる領域を特定した。Dra I断片4(3.0kb)、Hpa I/Dra I断片(2.8kb)及びDra I/Hpa I断片(4.5kb)(図4)の3種のDNA断片を、各々別のプラスミドベクターにクローニングした。これらのDNA断片を、更にM13mp18及びM13mp19にサブクローニングし、塩基配列を決定した(図5)。その結果、MLP配列は、配列決定した領域内で1つずつしか存在しない潜在上流因子及び古典的TATA配列を含む配列として同定され、その後リーダー配列及び転写開始部位の位置により確認した。図4は、CFA20の主要な後期プロモーター配列及びスプライスリーダー配列の特徴及びクローニングした領域を示す。具体的には、FAV CFA20のHpa I及びDra I制限酵素地図と、クローニングした領域及び配列決定した領域を示した。スプライスされ後期mRNAになるリーダー配列の構造及び配列を決定する為に、ヒナの腎臓細胞をFAVに感染させ、感染サイクル後期(通常、感染後24〜32時間)まで感染を進行させた。この時点で、感染細胞から全RNAをRNAzolB溶液[ブレサテク(Bresatec)社,オーストラリア国]を用いて精製した。単離したRNAをイソプロパノール沈澱させ、必要となるまで50μlに等分して−70℃で保存した。ポリA(mRNA)を、ポリATトラクトシステム(Poly AT tract System)[プロメガ(Promega)社,アメリカ合衆国]を用いて全RNAから単離した。単離したmRNAをcDNA製造に用いた。cDNA製造用に、MLPによる転写産物であるヘキソン遺伝子及びペントンベース遺伝子の相補鎖であるオリゴヌクレオチドを作製した。更に、TATAボックスから24塩基下流の、主要な後期転写産物のキャップ部位と思われる位置をカバーするオリゴヌクレオチドを作製した。このオリゴヌクレオチドを、上記のcDNA製造用オリゴヌクレオチドと共にTap PCRに用いた。導入されたDNA断片の大きさを決定するために、陽性のクローンから得られたDNAを適切な制限酵素で切断した。これらの導入した断片に関して、DNA配列決定を、チェインターミネーター法[F.サンガー(F.Sanger),S.ニックレン(S.Nicklen)及びA.R.グルソン(A.R.Gulson),(1977)“連鎖終止阻害剤を用いたDNA配列決定(DNA sequencing with chain terminating inhibitors)",PNAS USA 74:5463−5467]の変法を用いて、T7 DNAポリメラーゼ[ファルマシア(Pharmacia)社,スウェーデン国]により相補鎖を伸長させて行った。リーダー配列キャップ部位を確認するために、上記で得られたのと同じcDNAを新たに調製し、今度はdGTP残基のテールをそのcDNAに加えた。簡潔に手順を述べると、cDNAを1mMのdGTP及び約15単位の末端デオキシヌクレオチド転移酵素[ファルマシア(pharmacia)社]と共に、2mMのCaCl2緩衝液中で37℃、60分間インキュベートした。反応は、70℃で10分間加熱することにより停止した。次にDNAをエタノール沈澱させ、PCRに用いるのに適した容量に再懸濁した。5'末端のXba I部位とポリ(dC)オリゴヌクレオチドを用いて、上記と同様にしてPCRを行った。得られた断片をXba I及びSma Iを用いて切断し、pUC19ベクターにクローニングした。次いで、ハイブリダイゼーションによって陽性と認められたクローンについて上記のようにしてDNA合成と配列決定を行った。図5に、主要な後期プロモーター、上流エンハンサ−、並びにcDNA解析により判明したスプライスリーダー1の配置が示されているスプライスリーダー1及び2のDNA配列を示す。ウイルスゲノムの非必須領域の特徴4249bpのFAV(血清型10のCFA20)Nde I/3断片のクローニング及び全塩基配列の決定により、FAVゲノムの右末端を同定した。FAV右末端における遺伝子(Nde I/3断片に含まれる)の全構成は、既に判明した他のアデノウイルスの構成とは全く異なる。この領域は第3361番の塩基までに終了する2つのオープンリーディングフレームを包含する(図6)。この2つのオープンリーディングフレームの外には、FAV DNAの削除及び外来DNAの挿入に使用できる824bpの比較的大きな領域が残る。これにより、これまでに同定されずまた予期されなかった少なくとも3.1交差単位のDNAの除去及び他の配列の挿入が可能となる。図6はFAV CFA20ゲノムの92〜100交差単位の領域を拡大したものを示し、またウイルスDNAの除去及び異種DNAの挿入に使用できるノンコーディング領域を示している。また、コーディング領域と思われる領域も示している。FAVベクターの構築図7はFAVベクターの好ましい構築方法のチャートを示す。FAV CFA20のゲノム右末端のNde I断片3をクローニングし、特異制限酵素(Not I)認識部位を挿入する。相同的組換えによって、ゲノム中の特異制限酵素(Not I)認識部位を有する機能的ウイルスを製造するために、CK細胞を、精製しNot I認識部位を挿入したNde I断片3及び精製したSpe I断片1によりトランスフェクトした。特に好ましいFAV分離株の1つはFAV M11 Not Iとして同定されたもので、オーストラリア政府分析研究所(Australian Government Analytical Laboratories)に1994年3月11日に寄託され、寄託番号N94/8879が与えられている。図8はFAVの発現カセット構築のチャートを示す。外来DNAを挿入するためのマルチクローニング部位、及びポリA認識部位、並びに主要な後期プロモーターとスプライスリーダー配列1及び2をプラスミドベクターに挿入する。これら全てはFAVゲノムの特異制限酵素認識部位に挿入するための特異制限酵素認識配列(Not I)にはさまれている。ベクター構築の例:1.FAV−vp2組換え体の構築図8に記載するようにIBDV vp2遺伝子を発現カセットに挿入した。発現カセットをNot I断片として単離し、予めFAV Nde I/3断片に組込んだ特異なNot I部位にクローニングした。vp2遺伝子を含むプラスミドを線状にし、FAV Spe I/1 DNAと共にCK細胞をトランスフェクトした。このプラスミドはオーストラリア政府分析研究所(Austrarian Government Analytical Laboratories)に1994年3月11日に寄託されており、大腸菌(E.coli)DH52 pFMLP234内に同定することができる。このバクテリアには寄託番号N94/8878が与えられている。2.FAVチミジンキナーゼ組換え体の構築図8に示すように、発現を制御するために、CMVIEプロモーター及びWV40ポリアデニル化シグナルを利用して、感染性喉頭気管支炎ウイルス(ILTV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を発現カセット内に挿入した。TK発現カセットをNot I断片として単離し(図8)、予めFAV Nde I/3断片に組み込んだ(図7)特異的Not I部位にクローニングした。FAV Nde I/3断片に隣接するTK発現カセットを含むプラスミドをNde Iで切断して線状にし、FAVゲノムDNAと共にCK細胞をトランスフェクトした。TK欠損株(野生株)ウイルスの複製をブロックする代謝抑制因子であるメトトレキセートを用いた継代により、TK遺伝子を発現するFAVベクターを選択した。プラーク精製に続いて、サザンブロットハイブリダイゼーションによって、製造したFAVベクターのNde I/3断片中にTK遺伝子が存在することを確認した。メトトレキセートを用いた継代によりFAV−TK組換え体が単離できるということは、FAVゲノムのこの領域内で外来遺伝子を挿入でき且つ発現できることを証明している。外来遺伝子の発現図9及び図10は外来遺伝子の発現を目的としたFAVの発現カセットの使用結果を示す。上流配列(USS)、転写開始部位、マルチクローニング部位、及びポリA認識配列を有するか又は有さないFAV MLP/LSを含む種々の構築物について、感染性嚢疾患ウイルスに由来するクロラムフェニコールアセチラーゼ(CAT)遺伝子又はvp2抗原遺伝子の発現を調べた[上記のCAT遺伝子及びvp2抗原遺伝子に関しては、A.A.アザド(A.A.Azad),K.J.ファーヘイ(K.J.Fahey),S.A.バレット(S.A.Barret),K.M.アーニー(K.M.Erny)及びP.J.ハドソン(P.J.Hudson),“感染性嚢疾患ウイルスの宿主保護的な抗原を発現する遺伝子をコードするcDNA断片の大腸菌における発現(Expression in Escherichia coli of cDNA fragments encoding the gene for the host protective antigen of infectious bursal disease virus)",Virology 149 190−198,1986を参照]。尚、ヒトサイトメガロウイルスの即時−初期(immediate−early)プロモーターエンハンサー(HCMVIEP/E)を含む発現カセットと比較した。図9のグラフは、FAV MLP/LSカセットをFAV全体と共に感染させた場合、CAT活性又はvp2抗原が測定可能なレベルに達することを示している。このことは、上記のようにして構築した発現カセットが、家禽産業に営利上有益な前述(本願明細書の14〜15ページ)の病原体及びその他の病原体の、ワクチン用抗原の遺伝子を包含する種々の外来遺伝子を発現することのできる、組換えニワトリアデノウイルスの基礎となりうることを示唆している。予防接種の実施例1. 1種のベクターを含有するワクチンの投与本実験では、生後1日のニワトリ(ヒナ)を免疫不適格なニワトリの代表として、生後3週間のニワトリを免疫適格になりつつあるニワトリの代表として用いた。生後1日のヒナをエーロゾル噴霧によりCFA20に感染させた。ウイルスはニワトリ1羽当り5×107個の投与量となるように、滅菌した等張食塩水に懸濁した。制限した区域にニワトリを配置し、ニワトリの眼及び嘴に接触するように、ニワトリの頭の高さでウイルス懸濁液を噴霧した。ポンプアクション式のプラスチック製噴霧ボトルを用いて粗い霧を噴霧した。血清抗体産生応答の開始をELISA及びウイルス中和アッセイにより測定した。結果の詳細を表2に示した。感染後4週間にわたり盲腸扁桃からウイルスを回収した結果、ウイルスの消滅は、ウイルス中和アッセイにより検出できなかったがELISAにより検出できた循環抗体の発生に一致している。本実験では7週間以上にわたってウイルス中和抗体は検出されなかった。しかし、最初の感染から6週間後に行ったニワトリへのCFA20による再感染の試みが失敗したことは、ウイルスが回収されなかったこと及び血清中の既往性のELISA抗体応答がなかったことを反映している。生後3週間のニワトリを感染させた場合、ウイルスは感染後1〜2週間のみで回収され、ウイルスの消滅はELISAにより検出可能な抗体の発生に再び一致した(表3)。ウイルス中和抗体も又これらニワトリの血清中より検出可能であったが、感染後4週間(生後7週間)以前では検出されなかった。これは盲腸扁桃からウイルスが消滅して2週間後のことである。2. 連続予防接種エーロゾルによる連続的予防接種の実施可能性を調べるために、2種の株を組合わせて使用した。この試みにおいて、第1の予防接種にはCFA19(血清型9)を、これに続く第2の接種にはCFA20を用いた。結果を表4に示した。CFA19を用いた予防接種はCFA20による感染を防御しなかった(表4)。CFA19を用いた予防接種から4週間後にCFA20を接種したところ、CFA20に特異的なウイルス中和抗体を産生し、その接種後少なくとも7日間CFA20ウイルスを回収できた。in vitroにおける中和アッセイはCFA19及びCFA20間の交差中和を検出しなかった。これらのニワトリから回収したウイルス識別をウイルスDNAの制限酵素分析によって同定した。これにより、CFA19を接種したニワトリにCFA20を接種した後はニワトリからCFA20のみが回収されることが証明された。3. 同時予防接種エーロゾルによるニワトリへのCFA20及びCFA19の同時予防接種についても調べた。表5の結果は、どちらか一方のウイルスに対する抗体産生応答の発生する時期及びその程度のいずれも、もう一方のFAV感染によって影響を受けないことを示している。ウイルスが単独投与された場合と同様に(表3)、CFA19に対するウイルス中和抗体産生応答は感染後14日目に最初に検出され、CFA20に対する応答は28日目に検出された。回収したウイルスの制限酵素分析により、感染後3日目ではCFA20のみが盲腸扁桃から回収でき、7日目までは両方のウイルスが採取されたことが分かった。4. 組換えFAVにより運搬される外来抗原に対する抗体産生応答の誘発感染性嚢疾患ウイルス(IBDV)のvp2遺伝子を有する組換えニワトリアデノウイルス又はCFA20をニワトリに接種した。生後1日のヒナの腹腔内に予防接種したのち、0日及び14日目に、その後は1週間ごとに採血した。血清を集めIBDVのvp2及びアデノウイルスに対する抗体の存在をELISAにより調べた。表6の結果は、組換え体を予防接種した群からvp2に対する抗体が予防接種後14日目に最初に検出され、28日目にピークに達したことを示している。CFA20を用いて予防接種したニワトリからはvp2に対する抗体を検出しなかった。FAV−vp2及びCFA20の両群において、予防接種後14日目に抗アデノウイルス抗体を検出した。5. 組換えワクチンの投与による防御力の誘発IBDV vp2遺伝子を担持する組換えアデノウイルス又はCFA20のいずれかをニワトリに静脈内接種した。予防接種後21日目に、両群に毒性を有する感染性嚢疾患ウイルスを接種した。全てのニワトリを4日後に殺し、ファブリキウス嚢中のIBDVをELISAにより測定した。表7の結果は、組換えワクチンを投与したニワトリは全て、嚢中のウイルス抗原力価において1/4より小さい値を示し、感染を防御したことを示す。これに対し、組換えを行っていないアデノウイルス(CFA20)により免疫処置されたニワトリは全て1/128より大きい抗原力価を示した。上記の記載は、特に、ある血清型(4,9及び10)のニワトリアデノウイルスベクターについて言及しているが、いかなる種の生きた感染性トリアデノウイルスも本発明に使用しうることは理解されよう。同様に、FAVベクターを作製する目的にも、ここに述べた特定の配列の突然変異体及び変異体のみならず、真核生物のプロモーター及びリーダー配列も用いる事ができる。また、本発明はニワトリに関して、及び感染性嚢疾患ウイルスに由来する異種配列に関してのみ例示しているが、様々な種類の鳥、及び多様な病気に対する免疫処置も本発明の範囲に含まれることは理解されよう。本発明のベクターが有益であると考えられる他の鳥類としては、七面鳥、アヒル、キジ、ウズラ及びガチョウが挙げられる。 少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなり、且つ該異種塩基配列を発現することのできる組換えニワトリアデノウイルスを包含してなる組換えニワトリアデノウイルスベクターであって、該少なくとも1種の異種塩基配列はニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域に挿入されており、ニワトリアデノウイルスはCELOウイルスを除く、組換えニワトリアデノウイルスベクター。 該組換えニワトリアデノウイルスが、それが由来する天然のニワトリアデノウイルスが有するのと変わらないウイルス粒子構造蛋白質を有する、生きたニワトリアデノウイルスを包含することを特徴とする請求項1に記載の組換えニワトリアデノウイルスベクター。 上記の少なくとも1種の異種塩基配列が、抗原ポリペプチドとして発現可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組換えニワトリアデノウイルスベクター。 該異種塩基配列が感染性嚢疾患ウイルスの抗原決定基をコードすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の組換えニワトリアデノウイルスベクター。 該組換えニワトリアデノウイルスが血清型4,9及び10からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の組換えニワトリアデノウイルスベクター。 ニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域に、有効なプロモーター配列と関連させて、少なくとも1種の異種塩基配列を挿入することを包含する、ワクチンとして用いる組換えニワトリアデノウイルスベクターの製造方法。 該異種塩基配列の挿入に先だって、制限酵素認識部位を該ニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域へ挿入することを特徴とする請求項6に記載の方法。 鳥類における感染性生物体による感染に対する防御力を賦与又は強化するように、抗体又は細胞性免疫を発生させる及び/又は最適化する組換えワクチンにして、少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなり、且つ該異種塩基配列を発現することができる組換えニワトリアデノウイルスを包含してなる少なくとも1種の組換えニワトリアデノウイルスベクター、並びに適当な担体及び/又は賦形剤を含有し、該少なくとも1種の異種塩基配列はニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域に挿入されており、ニワトリアデノウイルスはCELOウイルスを除く、組換えワクチン。 該ワクチンをエーロゾル噴霧の形で投与できるように、該担体及び/又は賦形剤が選択されていることを特徴とする請求項8に記載の組換えワクチン。 予防接種が望まれる疾病の抗原決定基をコードする少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなり、且つ該異種塩基配列を発現することのできる組換えニワトリアデノウイルスを包含してなる第1の組換えニワトリアデノウイルスベクターを鳥類へ投与することを包含する、疾病に対する鳥類の予防接種方法であって、該少なくとも1種の異種塩基配列はニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域に挿入されており、ニワトリアデノウイルスはCELOウイルスを除く、予防接種方法。 第1の組換えニワトリアデノウイルスベクターに組み込まれている少なくとも1種の異種塩基配列とは異なる、少なくとも1種の異種塩基配列を組み込んでなり、且つ該異種塩基配列を発現することのできる組換えニワトリアデノウイルスを包含してなる第2のニワトリアデノウイルスベクターを、上記の鳥類に投与することを更に包含し、第2のニワトリアデノウイルスベクターの該少なくとも1種の異種塩基配列はニワトリアデノウイルスゲノム右末端の非必須領域に挿入されており、ニワトリアデノウイルスはCELOウイルスを除く、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。 該第2のニワトリアデノウイルスベクターが、該第1のニワトリアデノウイルスベクターの血清型とは異なる血清型を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。


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