生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ヒドロモルホンおよびヒドロコドンの調製のためのモルヒノン還元酵素
出願番号:1994502129
年次:2005
IPC分類:7,C12N9/02,C12P17/18,C12Q1/26


特許情報キャッシュ

ハイラス、アン・マリア フレンチ、クリストファー・エドワード ブルース、ネイル・チャールズ JP 3638022 特許公報(B2) 20050121 1994502129 19930528 ヒドロモルホンおよびヒドロコドンの調製のためのモルヒノン還元酵素 マクファーラン・スミス・リミテッド 青山 葆 皆崎 英士 北原 康廣 ハイラス、アン・マリア フレンチ、クリストファー・エドワード ブルース、ネイル・チャールズ GB 9213524.3 19920625 20050413 7 C12N9/02 C12P17/18 C12Q1/26 C12N9/02 C12R1:40 JP C12N9/02 C12P17/18 C C12Q1/26 C12N9/02 C12R1:40 7 C12N 9/02 WPIDS/BIOSIS/BIOTECHABS/MEDLINE(STN) REGISTRY/CA(STN) 7 NCIMB 40119 GB1993001129 19930528 WO1994000565 19940106 1995508167 19950914 11 20000522 深草 亜子 産業上の利用分野本発明は新規酵素およびその使用法に関する。発明の背景現在鎮痛剤ヒドロモルホン(ジヒドロモルヒノン)および鎮咳剤ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)は、不経済な材料、化学触媒および活性化物質を用いて合成されており、またこの合成によって環境にも望ましくない影響を及ぼす。例えば、ヒドロモルホンはモルヒネを酸溶媒に微分散したプラチナまたはパラジウムによる触媒的還元により製造されている。生成物は二酸化硫黄ガスを飽和点まで添加して精製する。この混合物を4から5日の間放置して結晶を生成させ、錯体を濾過し、乾燥させ、その後濃塩酸中で二酸化窒素の放出が止むまで90℃に加熱して分解させる。生物触媒はより清潔な技術を提供し得る。しかしながら、現在入手し得る酵素の活性の範囲は限られており、かかる酵素は必要な反応を触媒しない。GB−A−2231332はヘロイン、3−アセチルモルヒネおよび6−アセチルモルヒネをモルヒネへと加水分解する反応を触媒するアセチルモルヒネカルボキシラーゼ、および、NADPを補因子として利用してモルヒネをモルヒノンへ酸化させるモルヒノンデヒドロゲナーゼを開示する。この酵素はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の新規な株であり、「M10」と名付けられた、NCIMB40119株から得られる。この酵素はヘロインおよびモルヒネの検出に用い得る。発明の要旨本発明は、ヒドロモルホンおよびヒドロコドンの合成において生触媒として用い得る酵素の発見に基づいて完成したものである。この酵素はモルヒノンおよびコデイノンの7,8−不飽和結合の還元を触媒する、高い特異性のNADH依存性還元酵素である。酵素、モルヒノン還元酵素の反応には還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)のごとき補因子が必要であり、NADHはモルヒノンからヒドロモルホンへの還元に伴ってNAD+へと酸化される。発明の説明本発明のモルヒノン還元酵素は異なるいくつかの方法にて特定し得るが、以下に記載する配列表に示される部分的なアミノ酸配列により特定するのが最も良いと思われる。アミノ酸配列に代えて、または加えて、本発明のモルヒノン還元酵素は以下の性質のいずれかにより特徴付けることも可能である。補因子、代表的にはNADHの助けをかりて、モルヒノンおよびコデインをそれぞれヒドロモルホンおよびヒドロコドンへ還元する。本酵素はさらにネオピノンをヒドロコドンへ還元する。本酵素は、同様の環状構造を有する他の化合物に対しては有意な活性を示さない。本発明のモルヒノン還元酵素の、その他の差別化のための特徴としては、この酵素の生の分子量が81000ダルトン(マーカータンパク質により検量線を作成した、ゲル濾過カラムの溶出により決定した)であることが挙げられる。この酵素は41100ダルトンの分子量を有する2つの同じサブユニットから構成される(エレクトロスプレー質量分析により測定した)。pH7.5〜8.0において酵素は最適活性を示し、50mMリン酸緩衝液のpH8.0において最高活性を示す。以下の実施例1から3は本発明のモルヒノン還元酵素の他の性質を示すが、酵素を産生する微生物の成育条件を変化させるか、または酵素を産生するのに用いられる組替DNA技術によりこれらの性質のいくつかを変え得ることが期待される。従って、酵素を最も一般的に規定する際には、かかる特徴に依存しない方が望ましい。これらのうちのいずれか1またはそれ以上を酵素を規定する際の代替パラメーターとして採用することもできるが、上述の1またはそれ以上の特徴に加え得る1またはそれ以上の好ましい性質として考えることが最も好ましい。本発明の新規酵素はモルヒノンおよびコデイノンをそれぞれヒドロモルホンおよびヒドロコドンへと転換させる。従って、モルヒノン、コデイノンおよびネオピノンの7,8不飽和結合を、モルヒノン還元酵素とNADHのごとき補因子の存在下において酵素的に還元することを可能とする。本発明の酵素はそれゆえ、モルヒネおよびコデイノンの検出および定量のための診断アッセイに有用である。本発明の酵素は公知のM10株微生物を、炭素および窒素源上で培養して産生され得る。利用可能ないずれのソースでも用い得るが、ピー・プチダ(P.putida)M10をモルヒネ含有炭素源上で培養するのが好ましい。モルヒノン還元酵素は構成物質として産生され、それゆえ、このピー・プチダM10はモルヒノン還元酵素の高活性品を産生するため、グルコース上で培養することができる。この生物の培養は一般に好気条件下で行う。通常の温度、例えば20〜40℃の範囲内であればいずれの温度でも培養し得るが、好ましくは25から35℃で培養する。本発明の酵素を得るため、細胞をいずれの常法によって破壊してもよい。好ましくはセルフリー抽出物を作成する。本発明の酵素はその後、細胞または抽出物より回収する。寄託した出発生物そのものの代わりに、その変異体、例えばガンマ線照射または化学変異誘発によって得たもの、他の培養等による培養により誘導したものまたは他の細菌内へ形質転換したもの、もしくは人工的に作成したバリアントを用い得る。かかる生物が、新規酵素産生するか否かの活性は当業者であれば検出し得る。酵素または微生物をいくらか修飾した物は当業者によく理解されている組み替え技術により作成し得る。この技術には、他のホスト生物内で酵素を産生させることも含む。本発明の酵素は主にヒドロモルホンおよびヒドロコドンの合成における工業用生物触媒として有用である。この合成には酵素の精製を用いる合成も含まれる。または、酵素を適当な生物のブロック変異体内で用いることもできる。本発明の酵素はまた、生物の体液中、特に尿および血液中のモルヒノンおよびコデイノンの検出および定量に用い得る。検出は、様々な方法による分光分析によって行えばよい。例えば、モルヒノンの還元を、UV吸収の変化が生じる酸化還元反応を動かすために用いてもよい。すなわち補因子自体は、NADHからNAD+への酸化を観察するこにより、より詳細にはこれを340nmの吸収の変化として検出することによって還元反応の検出に用い得る。上記に指摘したごとく、モルヒノン還元酵素は、GB−A−2231332にアセチルカルボキシエステラーゼおよびモルヒネデヒドロゲナーゼ酵素のソースとして記載されているものと同じ、寄託細菌から得ることができる。これらの酵素はそれぞれヘロイン、3−アセチルモルヒネおよび6−アセチルモルヒネからモルヒネへの加水分解、およびモルヒネ(モルヒノンヘ)、コデインおよびエチルモルヒネの酸化を触媒する。これらの酵素のうちの2番目のもののN末端の配列は解析されている。全て同じ生物から単離された2つの既知の酵素および本発明のモルヒノン還元酵素の組合せは、いわばヘロインからヒドロモルホンへの経路である。新規酵素の遺伝子を、所望によりGB−A−2231332に記載された酵素の遺伝子と共に、通常の組み替え技術によって単離し、適当なホスト内へ形質転換してもよい。形質転換された微生物はヒドロモルホンまたはヒドロコドンを様々な前駆体から調製するのに用い得る。新規な酵素は、所望により一方または両方の既知の酵素と共に、精子中にモルヒノンもしくは経路のより上流の基質が存在するか否かを確認するアッセイに用い得る。以下の実施例は本発明を説明するものである。実施例1は、特にモルヒノン還元酵素の精製および特徴付に関し、実施例2はヒドロコドンの製造におけるその使用に関し、実施例3は結合アッセイに関する。実施例11.微生物シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(M10)は産業廃液から単離し(ブルース(Bruce)ら、アチーブス・オブ・マイクロバイオロジー(Arch.Microbiol.)154:465〜470)、単一炭素源およびエネルギー源としてモルヒネを用いて濃縮した。2.成育条件シュードモン・プチダ(Pseudomon putida)(M10)は2リットル容のエーレンマイヤー・フラスコに入れた、(NH4)2SO4(0.5g/l)、K2HPO4(2.0g/l)、KH2PO4(0.2g/l)およびMgSO4(0.05g/l)からなる滅菌鉱物規定培地750ml内にて培養した。バーネット(Barnett)とイングラム(Ingram)(ジャーナル・オブ・アプライド・バクテリオロジー(J.Appl.Bacteriol.)(1955)18:131〜148)に記載されたトレース剤を0.2μmザルトリアス・フィルター(Sartorius filter)にてフィルター滅菌し、滅菌培地へ添加した(1リットルにつき1ml)。特に断らない限り、成育培地にはさらにフィルター滅菌した10mMグルコースを単一炭素源として添加した。培養物は30℃にて180rpmにセットしたロータリーシェーカーにて48時間インキュベートした。その後、培養物を遠心分離(ソーバルRC−5C遠心分離器、GS3ローター使用、4℃にて9000rpmで15分)にて収穫した。ペレットとなった細胞は50mMのリン酸カリウム緩衝液に1mMのジチオトレイトールを加えた溶液(pH7.0)内に0.5g/mlの濃度にて再懸濁した。細胞懸濁液をソニプレップ150MSEウルトラソニック・ディスインテグレーター(フィシオンズ・インストゥルメンツ、FSAリミテッド)を用いる、振幅10μm、15秒間の超音波処理に供してセルフリー抽出物を得、粉砕氷上にてあわせて3分間4℃に保った。細胞の粗抽出物を遠心分離(20000rpm、30分間、SS34ローター使用、4℃)し、未破壊細胞および細胞の残渣をペレットとした。3.クロマトグラフィー全ての操作は4℃にて行い、全ての溶液には1mMのジチオトレイトール(DTT)を添加した。モルヒノン還元酵素はアフィニティークロマトグラフにより精製した。用いた吸着材はミメティク・イエロー2(Mimetic Yellow2)(アフィニティー・クロマトグラフィー・リミテッド、イギリス、ワイト島)である。最終体積50mlを直径50mmのカラムに投入した。線流速度を約30cm/時間としてこれを保持した。カラムは最初カラムの空体積(ecv)の2倍の、pH7に調節した50mMリン酸緩衝液(バッファーA)にて平衡とした。50mlまでの(1ecv)の細胞抽出物をカラム上へ注入した。カラムを2ecvのバッファーAにて洗浄し、その後1MのNaClを含有するバッファーA溶液にて溶出物の280nmにおける吸収がほとんどベースラインにまで落ちるまで洗浄した。典型的にはこの操作には10ecvの溶離液が必要である。結合しているモルヒノン還元酵素をその後、2ecvの0.6M NaCl+5mM NaCl+5mM NADHを含有するバッファーAにて溶離させた。通常、さらにこのカラムをリンスしても、有意に高い活性を有する物を溶離することはない。このカラムはその後2ecvの1M NaCl、2ecvの1M NaOHおよび2ecvの蒸留水でリンスし、20%エタノール中で保存した。溶離物の活性フラクションを集め、バッファーAによるディアフィルトレーションによってNaClおよびNADHの濃度を約1000倍に薄めた。ディアフィルトレーションは、10000ダルトンをカットオフするフィルトロン・オメガ・シリーズの膜を取り付けたアミコン8050ディアフィルトレーション用セルを用いて行った。精製物はその後約5mlにまで濃縮し、適当に分注して−20℃にて凍結保存した。4.酵素アッセイ酵素活性をNADHの酸化速度を測定して評価した。用いた反応混合物は、特に断らない限り、バッファーA中に0.3mMのNADHおよび0.3mMのコデイノンを含有するものである。アッセイは30℃にて行った。NADHの酸化は340nmにおける吸収の減少を、ヒューレット−パッカード8452Aダイオード・アレイ・スペクトロホトメーターを用いて測定することにより追跡した。コデイノン非存在下におけるNADHの酸化速度(バックグラウンド速度)もまた測定し、コデイノン存在下における速度から差し引いた。酵素活性の1ユニットを、1分間につき1μモルのNADHをこの条件下にて酸化する活性の量として規定する。タンパク質濃度はブラッドフォード(Bradford)のアナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)(1976):248〜245)の方法により、バイオ−ラッドの蛋白質アッセイ試薬を用い、バイオ−ラッドのプロトコールに基づいて測定した。ウシ血清アルブミンを標準として用いた。5.電気泳動SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)をバイオ−ラッド・ミニ−プロテアンII電気泳動システムを用いて行った。アクリルアミドゲル(12%w/v)を型取り、バイオ−ラッドのプロトコールに基づいて行った。ゲルには典型的には200V、45分間を負荷した。ゲルは0.1%のクーマッシー・ブリリアント・ブルーR−250を含有する40%メタノール、10%酢酸溶液で染色し、40%メタノール、10%酢酸溶液にて2回洗浄した。生の(非変性)PAGEを、試料を変性させず、SDSをゲルから除外し、そしてゲルを染色の前に20%トリクロロ酢酸にて固定化する以外はSDS−PAGEと同じ方法にて行った。6.分子量の測定モルヒノンレダクターゼの本来の分子量はゲル濾過クロマトグラフィーにて、アンドリュースの方法(バイオケミカル・ジャーナル(1964)91:222〜233)に従って測定した。直径16mm、長さ75cmのセファクリルS−200(ファルマシア)を充填したカラムを用いた。流速は8ml/時間とした。分子量の標準物質として用いたのは、ウシ肝臓カタラーゼ、イーストC300ヘキソキナーゼ、ウシ血清アルブミン(BSA)およびチトクロームCであり、それぞれ分子量が240000、100000、、67000および13000ダルトンである。カタラーゼおよびヘキソキナーゼは、その活性に基づきベーグマイヤー(メソッズ・オブ・エンザイマティック・アナリシス)3版、VCH パブリシャーズ ドイツウイルヘルム)の方法により検出し得る。BSAは280nmにおける吸収によりおよびチトクロームCはその505nmにおける吸収により追うことができる。サブユニットの分子量は、バイオ−ラッドの低分子量スタンダードを用いて測定し得、エレクトロスプレー質量分析によっても測定し得る。精製したモルヒノン還元酵素をエレクトロスプレー質量分析のため、蒸留水による限外濾過に供してリン酸塩とDTTの濃度を1000倍に薄め、その後50%v/vとなるようメタノールを、1%v/vとなるよう酢酸を添加した。質量分析はVGバイオーQ質量分析器(VGアナリティカル・リミテッド、イギリス国マンチェスター)を用いて行った。7.フラビンアッセイフラビンをモルヒノン還元酵素から、3分間ボイルし、変性したタンパク質を限外濾過によって除いて分離した。遊離および結合フラビンの吸収スペクトルを水晶製キュベット内で、ヒューレット−パッカード8452Aダイオード・アレイ分光分析器を用いて測定した。フラビンの薄層クロマトグラフィー(TLC)を、シリカプレート上で、ファゼカス(Fazekas)とコーカイ(Kokai)(メット・エンザイモル(Met.Enzymol.)(1971)18B:385〜398)の溶媒系2および4、即ち12:3:5n−ブタノール:酢酸:水、および2%のリン酸水素ジナトリウム水溶液を用いて展開した。TLCプレート上のフラビンは、366nmの紫外線で照らした場合、固有の黄色蛍光により顕在化する。フラビンのルシフェラーゼアッセイをシグマより市販されているビブリオ・ハーベイー(Vibrio Harveyii)ルシフェラーゼを用いて行った。反応混合物は0.1mg/mlのルシフェラーゼ標品、0.1mg/mlのウシ血清アルブミン、0.2mMのn−デカナール、0.5mMのNADHおよび1.5mMのジチオトレイトールを含有する。アッセイは24℃で行い、発光をバイオオービット1250ルミノメーター(ラボシステムズ(UK)リミテッド、イギリス国ベーシングストーク)にて測定した。デフラボモルヒノン還元酵素は硫酸アンモニウム処理により、フセインとマッセイ(1978)(メット・エンザイモル53:429〜437)の方法によって調製した。結果1.精製モルヒノン還元酵素をアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。代表的な精製物のデータを表1に示した。精製物はSDS−PAGEにより純粋であることを確認した。精製物の特異的活性は一般に、タンパク質1mgにつき15から20ユニットであった。2.分子量の測定既知の分子量の標準タンパク質のゲル濾過により、モルヒノン還元酵素の分子量はおよそ81000ダルトンであることが分かった。SDS−PAGEによりサブユニットの分子量は44000ダルトン近辺であることがわかった。エレクトロスプレー質量分析の結果、サブユニットの分子量は41120ダルトンであった(標準偏差は3ダルトン)。これらの結果より、天然のモルヒノン還元酵素はダイマーとして存在していることが導かれる。3.補欠分子族精製モルヒノン還元酵素の吸収スペクトルはこの酵素がフラビンタンパク質であることを示す。酵素をボイルし、変性したタンパク質を限外濾過により除くと、溶液の吸収スペクトルが遊離のフラビンのものに変化し、これによってフラビンはタンパク質に共有結合していないことがわかる。フラビン吸収ピークの強さは、タンパク質濃度と分子量から計算し得る酵素のモル濃度の2倍のモル濃度を示し、これは酵素のサブユニットごとに1分子のフラビンが結合していることを示唆する。遊離のフラビンは2つの薄層クロマトグラフィー系においてフラビンモノヌクレオチド(FMN)と共に移動するが、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)またはリボフラビンとは異なる移動を示す。遊離のフラビンは、FMNに特異的なルシフェラーゼアッセイ(チャッペル(Chappelle)とピッシオロ(Picciolo)、メット・エンザイモル(1971)18B:381〜385)においては陽性の結果を示した。FMN標品もまた、陽性の結果を示したが、FAD標品およびリボフラビンは陽性ではなかった。これより、補欠分子族は非共有結合FMNであることが結論づけられる。フラビンはモルヒノン還元酵素から硫酸アンモニウム処理を、フセインとマッセイの方法(既出)により行うことによって解離させ得る。この方法により作成したデフラボーモルヒノン還元酵素は、可視領域に吸収を示さず、不活性であった。FMNと共にインキュベーション(30分、4℃)をし、続いて遊離のFMNを限外濾過にて除くと、フラボタンパク質の吸収が再度得られ、標準アッセイに対しておよそ80%の活性が再び得られた。FADと共にインキュベーションしてもフラボタンパク質の吸収もしくは酵素活性の再現は得られなかった。FMNとFADの混合物と共にインキュベーションした場合、FMN単独とインキュベーションした場合の活性を越える活性は得られなかった。これらの結果はFMNが酵素に存在する唯一のフラビン補欠分子族であることを示す。エレクトロスプレー質量分析が非共有結合の補欠分子族を示すとは期待されないため、天然のモルヒノン還元酵素は2つの約41100ダルトンのタンパク質サブユニットと、分子量466のFMN2分子からなり、併せて天然の分子量がおよそ83100ダルトンとなるものであると結論付けられる。生の(非変性)PAGEにおいて、精製モルヒノン還元酵素は典型的にはモルヒノン還元酵素による強い活性バンドに加えて、1または2のわずかに低いRf値のかすかなバンドが得られる。これらのうち最も遅く移動するものは、上述のごとく調製したデフラボ−モルヒノン還元酵素と動きを共にすることが分かった。デフラボ−モルヒノン還元酵素をFMNで滴定すると、このバンドは徐々に、最初は第2の特定できないバンドと入れ代わり、そして最後には活性モルヒノン還元酵素のバンドに代わる、ただしたとえ過剰のFMNがあっても前者は常に幾分かは存在している。この結果、精製モルヒノン還元酵素においてより遅く移動する微かなバンドがデフラボ−モルヒノン還元酵素を示すことが示唆される。活性モルヒノン還元酵素が1ユニットにつき1つのFMNを含有するのなら、第2のバンドはこれらのうちの1つが失われたダイマーを示すものであるかもしれない。精製酵素の生PAGEと等電点電気泳動の両方において、1本の明確なバンドと1本の拡散したバンドが得られ、相対強度は様々であった。試料を非変性PAGEにかける前に過剰のFMNと共にインキュベートすると、明確なバンドが薄れ、拡散したバンドの強度が増加した。FADにはこの効果は求められなかった。これによって、明確なバンドはアポ酵素を示し、拡散したバンドはホロ酵素を示すことが導かれる。4.最適pHモルヒノン還元酵素の活性を以下の緩衝液内で測定した:50mMのリン酸緩衝液、pH6.0、6.5、7.0、7.5および8.0;50mMのMOPS緩衝液pH6.5、7.0、7.5および8.0;50mMのトリス緩衝液、pH7.5、8.0、8.5および9.0;および50mMのグリシン緩衝液、pH9.0、9.5、10.0および10.5。最適活性はpH7.5から8.5において認められた、最高活性はリン酸緩衝液pH8.0において認められ、この活性は標準アッセイ条件より20%高いものであった。5.カイネティクスおよび特異性酵素の活性を様々な基質にて試験した。NADPHをNADHと交換した場合には活性が認められなかった。モルヒノンに対する活性を実施例2に示した共役酵素系において調べた。6位の炭素原子にケト基の代わりにヒドロキシ基を有するモルヒネ、コデインまたはイソコデインに対しては活性が認められなかった。反対方向、すなわち通常の反応生成物であるヒドロコドンまたはヒドロモルホンに対する活性は認められなかった。しかしながら、逆反応はエネルギー的に好ましくなく、低速度であるのでバックグラウンドとなる酵素のNADH酸化活性にマスクされる。逆反応はオキシコドン、オキシモルホンまたはジヒドロコデインに対して認められなかった。試験したアルカロイドは、いずれも1mMの濃度で標準アッセイ系に添加した場合にコデイノンの活性を阻害しなかった。モルヒノンとした場合のケト基のα、β位に二重結合のある不飽和環を有するステロイドであるプロゲストロンおよびコルチゾンに対しては活性が認められなかった。しかしながら、これらのステロイドは、0.3mMの濃度で標準アッセイ混合物へ添加した場合にコデインの反応を大きく抑制した。非常にわずかな活性が単純環化合物である2−シクロヘキセン−1−オンに対して認められた。この化合物はまた、標準反応混合物に1mMの濃度で添加した場合にコデイノンとの反応を抑制したが、ステロイドの場合より抑制は少なかった。アッセイはある範囲の基質濃度で行い。みかけのKmとVmax値をコデイノンおよびネオピノンに対して0.3mMのNADH下で測定した。NADHに対するみかけのKmを0.3mMのコデイノンの存在下で測定した。データを表2に示した。6.活性の抑制精製した酵素を以下の抑制剤となる可能性のあるものと共にインキュベートした:硫酸銅、チオールブロック剤である−ヒドロキシメルクリベンゾエート(pHMB)、チオール還元剤であるジチオトレイトール(DTT)および金属錯化剤であるエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)と8−ヒドロキシキノリン(8HQ)。コデインまたはNADHを含有しない標準アッセイ混合物において、インキュベーションは最初室温で30分間、次に4℃で16時間とした。酵素の濃度はおよそ3.3μg/ml、精製酵素保存液の1/100の濃度である。表3に結果を示した。硫酸銅とp−ヒドロキシメルクリベンゾエートは高度に抑制作用を示し、これはスルフヒドリル基が活性に必要であることを示唆するものである。7.N−末端配列精製した酵素をポリビニルジフルオライド膜へエレクトロブロッティングし、N−末端配列を決定した。配列は添付の配列表の、配列番号1に示す。実施例2および3実施例2および3では、モルヒネ、コデインおよびその代謝産物になり得るものを、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、水素核磁気共鳴(1H−NMR)および質量分析(MS)のごとき方法を用いて分析し、同定した。逆相HPLCは、モデル510ポンプ、モデル712ウイスプ(WISP)オートインジェクターおよび235nmと280nm、0〜1Vfsd.に調整したウォーターズ994プログラム設定可能フォトダイオードアレイ検出器により構成されるウォーターズ社のシステム(ミリポア・ウォーターズU.K.リミテッド、ワトフォード)を用いて行った。試料(50μl)の分離は5μmC18スフェリオソーブODSカラム(4.6×250mm)(アナケム・リミテッド、ルートン)にて、イソクラティック溶媒系により流速1ml/分で分配して行った。移動相はフィルター滅菌した15mMのKH2PO4(1MのH3PO4にpH3.5に調整)の30%(v/v)HPLC等級のアセトニトリル(使用前に40分間の脱ガス)から構成されている。マキシマ820ソフトウエアを用いてインテグレイションを行い、プログラム可能フォトダイオードアレイ検出器を用いて190から350nmの範囲の得られたピークのUV吸収スキャンを行った。TLCは予めシリカゲル(キースゲル60F254、メルク)で被覆した0.2mm厚のプラスチック製プレートを用い、先に溶媒1(クロロホルム:メタノール80:20(v/v)で飽和させたTLCタンク内で行路6〜8cmまで展開した。続いてプレートを乾燥させ、254nmのUVランプ下、ルディー・テンジャー(Ludy Tenger)液を噴霧して分析した。シリカゲルで被覆した(250μm厚;ホワットマン60AF254)ガラス板上の分離用薄層クロマトグラフィーにて精製した。1H−NMR検索は、ブルッカースペクトロホトメーターを用いて、トリメチルシランを内部標準、ジュウテロ化クロロホルムを溶媒として行った。質量分析(+FAB)はクラトスモデルMF890マススぺクトロメーターにて、特に断らない場合はメタノール/ジクロロメタンを溶媒として用いて行った。モルヒノン還元酵素活性を実施例1に記載したごとく測定した。実施例2精製モルヒノン還元酵素または粗細胞抽出物、2mMのコデイノン、2mMのNADHおよび50mMのトリスHClバッファー(pH8.0)を含有し、最終体積10mlまたは50mlの反応精製物を30℃にて180rpmにセットしたロータリーシェイカー上にてインキュベートした。試料(1ml)を規則的な間隔をおいて分取し、NADHの酸化を340nmの分光分析により追跡した。試料は分析後、反応槽へ返した。反応が完了した後(50mlの反応混合物を、500μlの精製モルヒノン還元酵素、6U/mlで処理した場合には100分かかった)、反応混合物をNaHCO3と1MのNaOHの添加によってpH8.7に調整し、4℃に冷却し、3倍容量の冷クロロホルムにより溶媒抽出を行った。有機相は0.4nm分子ふるいを用いて乾燥させ、溶媒はロータリーエバポレーターにて除いた。残った残渣は少量(1ml)のクロロホルムに再度溶解して、溶媒1、シリカゲル板によるTLC分析で再分離した。典型的には、2つの陽性スポットがUVランプ(254nm)の下で観察した場合あるいはルディー・テンガー溶液を噴霧した場合に認められ、それぞれRf値は0.41と0.33であった。前者のスポットは未変化コデイノンである、これは標準品と比較して確かめた。後者のスポット(Rf=0.33)は細胞抽出物のボイルが反応混合物に含有されている場合またはNADHを添加しない場合には認められず、これがインキュベーションによる生成物のスポットであることが示唆される。ある範囲のモルヒネアルカロイド類を溶媒1のTLCに供した。二酒石酸ヒドロコドンが反応生成物と同じRf値を有していた。反応生成物をシリカゲルで被覆したガラスプレート上の分離用TLCにて、溶媒1による前処理および展開を行った。生成物のバンドをガラスプレートから回収し、10mlのメタノールにて溶出した。シリカ相を溶媒から3000rpm5分間の遠心分離を、オート・ベンチ・セントリフュージ・マークIV(バイルド・アンド・タトロック)を用いて行って除き、溶媒をロータリー・エバポレーターにかけて除いた。残存油状残渣は1H−NMR分析に、比較のためのヒドロコドン標品と共にかけた。ヒドロコドン標品および反応生成物のNMRスペクトルにおいて、ヒドロコドンのピークは以下の通りである:中心が6.67δおよび6.57δである一組のダブレット(C−1およびC−2位置にある2つの水素からなる芳香族AB系のピーク)、および4.7δのシングレット(C−5水素原子のピーク)。反応生成物には6.6δおよび6.12δのピークがなく、コデイノンの7,8−結合の飽和が生じたものと考えられる。ヒドロコドンの標品のスペクトラムは反応生成物と同じであった。さらに反応生成物の同定を、そのマススペクトルを、メタノール、ジクロロメタン、アセトニトリルおよびアセトンに溶解したヒドロコドン標品のマス・スペクトルと比較して行った。フラグメンテーションのパターンは分子量299のヒドロコドン標品と同じであった。実施例3モルヒノン還元酵素の基質を、2mMモルヒネ、2mM NADP+、凍結乾燥した精製モルヒネデヒドロゲナーゼ(1mlの50mMビストリスプロパン緩衝液(BTP)で再構成した)(8U/ml)および全体積が50mlとなるようにした50mMのBTP緩衝液pH8.0を振盪培養して生理的に製造した。規則的な間隔をおいて、1mlの試料を分取し、反応を2μlの氷酢酸(HPLC等級)を添加して停止した。沈殿したタンパク質をその後MSEマイクロフュージにて13000rpmにてペレットとした。上清のHPLC分析は、その20μlを1.98mlの移動相で希釈し、モルヒネ濃度の減少(Rf=3.5分)がモルヒノンの生成(Rt=3.9分)と一致することを示した。モルヒネの濃度は、試験に供する試料と同様に処理したモルヒネHCl標品の標準カーブ(110mM)に基づいて測定した。モルヒネ濃度の減少が停止したことが明らかとなった後(70分)、2mMのNADHと500μlの精製モルヒノン還元酵素(3U/ml)を培養混合物へ添加した。上清を続いての分析すると、モルヒノン還元酵素の添加の後、ピークの高さ(Rt=3.9)の有意な減少が認められ、モルヒネの量の連続的な減少が認められた(Rt=3.5)。モルヒノン還元酵素添加後に前者のピーク(Rt=3.9)から得られたUVスペクトルは、ヒドロモルホン標品のUVスペクトルと同一性を示したが、一方で還元酵素添加の前にはいかなる同一性も発見されなかった。さらに、ヒドロモルホン標品は3.9分のリテンション時間を示し、このことは反応生成物(ヒドロモルホン)がHPLC条件下ではモルヒノンと共に移動することを示唆する。配列表配列番号:1配列の種類:N−末端アミノ酸配列の長さ:15アミノ酸起源生物:シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)株名:NCIMB40119配列 (1)配列番号1に示すN−末端のアミノ酸配列を有する;(2)NADH補因子の存在下で、モルヒノンをヒドロモルホンへ還元する;(3)同じ補因子の存在下でコデイノンおよびネオピノンもまた還元するが、逆反応に対しては有意な酵素活性を示さない;(4)ゲル濾過により測定すると約81000の分子量を有する;(5)リン酸緩衝液内で、pH約8.0のとき最高活性を示す;および、(6)シュードモナス・プチダNCIMB40119株から得られる特徴を有するモルヒノン還元酵素。 請求項1に記載の株またはその変異体もしくはバリアントであって、補因子の存在下でモルヒノンをヒドロモルホンに還元するモルヒノン還元酵素を産生し得る株を培養することを含み、培養を炭素源および窒素源の下、20から40℃の温度でモルヒノン還元酵素が産生されるまで行い、細胞を破壊し、モルヒノン還元酵素を含有するフラクションを分離する工程を含む請求項1に記載の酵素の製法。 請求項1に記載の酵素の存在下での還元反応に試料を供し、還元と同時に生じるNADHのNAD+への転化を検出することを含む試料中のモルヒノンまたはコデイノンの検出方法。 モルヒノンまたはコデイノン前駆体をモルヒノンまたはコデイノンへと転化させる1または複数の酵素がさらに存在する条件下で請求項3記載の方法を行う、試料中のモルヒノンまたはコデイノンの前駆体の検出方法。 請求項1に記載の酵素および必要な補因子の存在下でモルヒノンまたはコデイノンをそれぞれ還元する、ヒドロモルホンまたはヒドロコドンの製法。 モルヒノンまたはコデイノンが、その前駆体をモルヒノンまたはコデイノンに転化させる1または複数の酵素をさらに含む条件下にて該前駆体からイン・サイチュで合成される、請求項5記載の方法。 前駆体がヘロイン、3−アセチルモルヒネ、6−アセチルモルヒネ、モルヒネ、コデインまたはエチルモルヒネである請求項4または6記載の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る