タイトル: | 特許公報(B2)_センノシドA及びBの製造方法 |
出願番号: | 1994332871 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07H 15/244,A61K 31/70,A61P 1/10,B01J 21/18,A61K 36/00,C07B 61/00 |
トイッカ ヤルモ JP 3878680 特許公報(B2) 20061110 1994332871 19941215 センノシドA及びBの製造方法 参天製薬株式会社 000177634 渡邉 潤三 100116838 トイッカ ヤルモ FI 935715 19931217 20070207 C07H 15/244 20060101AFI20070118BHJP A61K 31/70 20060101ALI20070118BHJP A61P 1/10 20060101ALI20070118BHJP B01J 21/18 20060101ALI20070118BHJP A61K 36/00 20060101ALN20070118BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070118BHJP JPC07H15/244A61K31/70A61P1/10B01J21/18 XA61K35/78C07B61/00 300 C07H 15/244 A61K 31/70 A61P 1/10 特開平5−186394(JP,A) 特表平6−502190(JP,A) 特開昭58−131997(JP,A) 14 1995224084 19950822 8 20010824 原田 隆興 【0001】【産業上の利用分野】本発明の目的は、レインアントロン−8−グルコシド(rheinanthrone−8−glucoside)を酸素又は酸素源により酸化してセンノシドA及びBを形成することを包含する、センノシドA及びB(sennosides A and B)の製造方法を提供することにある。【0002】センノシドは、緩下作用を有する物質であり、例えばカシア・アングスチフォリア(Cassia angustifolia)やカシア・アクチフォリア(Cassia acutifolia)などのセンナ(senna)の中に存在する。センノシドは、センナの部分、例えばその葉やさやなど、から、粗混合物の形で抽出することにより単離することができる。センノシドの中でも最も重要なのは化1で表されるセンノシドA及びBである。【0003】【化1】【0004】センノシドA及びBは、互いに立体異性体であり、10及び10’の位置に関して互いに配置が異なっている。センノシドA及びBの還元物には、例えば、化2で表されるレインアントロン−8−グルコシド、及びレイン−8−グルコシドがある[エイ.ストール(A. Stolle)ら、Fortschritteder Chemie organischer Naturstoffe,band 599, 1950, p.248−2699 を参照]。【0005】【化2】【0006】粗センノシド混合物は、所望のセンノシドの他に、センニジン(sennidin)[アグリコン(aglycone)に相当する]などの副産物や、センノシドの分解産物などを含んでおり、該副産物は、望ましくない副作用を生じることがある。粗センノシド混合物中のセンノシド系化合物の総量は、約68%であり、残りは植物由来の他の物質である。【0007】【従来の技術】センナからセンノシドを取得する方法及びその改変法は、特許や文献から幾つか知られている。例えば、センノシドを取得するための様々な抽出方法や抽出−結晶化方法が知られている(フィンランド国特許第75992号明細書及び本願明細書中に記載の文献を参照)。【0008】また、室温で水−メタノール混合液を用いてセンナのさやと葉からセンノシドを抽出した後、メタノールを蒸発させて粗センノシド混合物を調製することも知られている(例えばWO93/00350を参照)。更に、所望であれば、得られる濃縮物を、例えば2−ブタノールのようなアルコールで洗浄した後還元して、レインアントロン−8−グルコシドを得る。還元剤としては、塩化スズ(II)、二酸化硫黄、水素化ホウ素アルカリ金属、及び、特に亜ジチオン酸のアルカリ金属塩などの多様な還元試薬が提案されている。【0009】センノシドを取得する方法としては、レインアントロン−8−グルコシドを酸化して、対応するセンノシド化合物を形成することが知られている。適当な酸化剤としては、一般に過酸化水素や二酸化マンガンの他に、空気中の酸素などの酸素も提案されている。又、触媒を加えて酸化を容易にすることも提案されており、その触媒としては、パラジウム黒や鉄(III)塩が提案されている。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は前記の公知の方法の改良法を提供することにあり、これによって、従来の方法に較べ更に純度の高いセンノシドA及びBをより高収率で製造することができる。【0011】【課題を解決するための手段】本発明の目的は、触媒として活性炭を用いてレインアントロン−8−グルコシドの酸化を行い、そして、更に場合により、得られるセンノシドA及びBを、カルシウムイオン含有水溶液からメタノール沈澱によりカルシウム塩に転化することにより達成される。【0012】本発明の好ましい態様によると、センナのさやや葉などを適切な出発材料として用い、これを室温で、好ましくは20oC〜30oCで45〜70%のメタノール水溶液で、例えば50%のメタノール水溶液で抽出して粗センノシド混合物を得る。出発材料に対する抽出用溶媒の具体的な割合は、約1:1〜約2:1である。次いで、メタノールを好ましくは真空下40oC未満で蒸発させると、センノシド混合物を含む水相が残る。本発明の好ましい態様によると、該水相をアルコール、特に2−ブタノールなどの、水中に部分的にのみ溶解する溶媒で洗浄する。洗浄後放置し相分離を行ない、出発材料中のセンノシド混合物の副産物の大部分を含む有機層を蒸留法などで精製後、再利用することができる。洗浄後得られる水相は所望のセンノシドを含んでいる。【0013】センノシドは、還元前にpH値がセンノシドのpKa値以下、即ちpH値が約4より下になるまで、強硫酸などの酸を加えることによって単離することができる。【0014】その後センノシド混合物を水溶液中で還元する。還元には、例えば亜ジチオン酸のアルカリ金属塩、特に亜ジチオン酸ナトリウムを用いる。還元時のpH値は、アルカリ金属の水酸化物、特に水酸化ナトリウムにより、7〜10、好ましくは8.3に調整する。用いる還元剤の量は、溶液中に含まれるセンノシドの量の約0.5〜約2倍である。還元の際の温度は、15〜30oCに保つのが好ましい。還元は、通常約2〜約4時間行う。【0015】還元後、硫酸などの酸をpH値4〜5、好ましくは4.7になるまで添加することによりレインアントロン−8−グルコシドを沈澱させ、そのpHにおいて種晶(seed crystals)を加えた後、pH値2〜3、好ましくは2.9になるまで徐々に酸を加える。この混合物を10oCに冷却し、1〜3時間放置し結晶を析出させる。沈澱物は、例えば遠心分離法などによって、窒素雰囲気下で濾別する。長時間保存するために、必要であれば、沈澱物を加熱炉で乾燥してもよい。【0016】その後、得られるレインアントロン−8−グルコシドを、次のようにして酸化処理にかける。即ち、まず、例えばその10倍量の水−アルコール混合液、好ましくは80%のイソプロパノール水溶液を用いて、0〜15oC、好ましくは5〜10oCにおいてスラリーにして、更にアルカリ金属の水酸化物やアルキルアミド、好ましくはトリエチルアミドやジエチルアミドなどの適当な塩基を加えてpH値を7〜9に調整してから酸化する。塩基を添加する間は、pH値が8.5を超えると、酸化中のセンノシドから糖分子が分離し、pH値が0.5〜1上がる恐れがあるので好ましくない。本発明によれば、次に活性炭、好ましくはOH-活性炭を、レインアントロン−8−グルコシドに対して0.05〜0.20倍量、好ましくは0.1倍量添加する。本発明によれば、活性炭は表面活性触媒として働き、活性炭の表面に吸着した酸素が、空気や酸素の単なる気泡よりも更に選択的且つ効果的にレインアントロン−8−グルコシドを酸化し、センノシドA及びBとする作用を有する。同時に、活性炭は反応中に形成され得るレイン−8−グルコシドやレインなどの望ましくない過酸化物を吸着する。活性炭を加えた後、酸素又は酸素源を、上記温度で、例えば焼結体フィルターから気泡を発生させて、混合物に送りこむ。【0017】本発明によると、触媒として、パラジウム黒や水中に溶解している酸素などのように以前から提案されている触媒の代りに、特に活性炭を用いることによって、純度の高い製品を高収率で得ることができる。この効果的な触媒を用いる利点は、最終産物中のセンノシド含量について特に反映されており、レインアントロン−8−グルコシドを水酸化カルシウムを含む水に溶解し、活性炭なしで反応混合物に気泡を送って酸化を行う方法で得られる生成物に比べて、センノシド含量が30%以上も高い生成物が得られる。【0018】上記の酸化反応の進行はHPLCを用いて調べることができ、出発物質の濃度を監視することによって正確な反応終結点を容易に測定することができる。得られる混合物は濾過し、濾液を適当な酸でpH値1〜4、好ましくは約2に調整する。これを室温で放置するとセンノシドA及びBが酸の形で沈澱する。得られる沈澱物を例えばイソプロパノールで洗浄し、真空室などで乾燥するが、分解を避けるために乾燥温度は最高40oCまでとする。【0019】本発明の方法によれば、得られた酸型センノシドA及びBを、より胃腸へ吸収されやすいカルシウム塩に転化することができる。このためには、センノシドA及びBを、好ましくは水酸化カルシウムを加えてpH値を上げることにより、水溶液に溶解する。水酸化カルシウムは、pH値が8.0±0.5になるまで加えるが、pHが約5の時に既にセンノシドの溶解は始まる。或いは、水酸化ナトリウムを上記のpH値になるまで加えながら、酸型センノシドA及びBの全モルに対して塩化カルシウムを約1.1〜約2モル過剰量加えても良い。次いで、希塩酸等の希酸を加え、約1時間かけて、pHを約6.7〜約6.9に調整する。より高いpHの最終生成物を得たい場合は、pHを6.7〜8.5に調整することもできる。pHは、水溶液中のセンノシドが酸として沈澱し始めるのを避けるため、6.7を下回らないようにする。【0020】上記のカルシウム塩を沈澱させるために、メタノールを、まず水溶液の形で、好ましくは50〜90%の水溶液として、例えば90%メタノール水溶液を、15分から2時間かけて、好ましくは30分の間に上記の混合液に加え、次いで純粋なメタノールを1〜4時間、好ましくは約2時間かけて加え、混合液を撹拌し、濾別する。センノシドの分解を防ぐため、得られた沈澱物を40oCを越えない温度で乾燥する。【0021】【実施例】以下の実施例で本発明を詳述するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。【0022】【実施例1】A.抽出、蒸発及び洗浄センナのさや16kgを、メタノール10リットル及び水道水10リットルの混合液中に3日間温浸する。抽出をより効果的に達成するため、溶液をポンプで循環する。温度は20〜30oCに維持する。一定時間後、溶液を排出し、さやを50%メタノール水溶液4リットルで洗浄する。得られたメタノール−水混合液を40oC、真空下で蒸留する。蒸留残留物の密度が1.25kg/lになった時、蒸留を停止し、蒸留残留物をn−ブタノール8リットルで抽出する。抽出は、適当な反応器内で、ブタノール溶液を1.5時間撹拌することにより行なう。撹拌を停止し、溶液を1晩放置して相分離させる。分離後、水相を環元器に入れる。【0023】B.還元25oCの還元器内の、上記で得られた粗センノシド水溶液に、pHが8.3になるまで50%水酸化ナトリウム水溶液を添加する。120〜150gのアルカリ液が消費される。更に、該溶液に亜ジチオン酸ナトリウム500gを添加し、得られる混合液を2時間撹拌する。次に水3リットルを加えた後、硫酸を添加してpHを4.7に調整する。更にレインアントロン−8−グルコシドの結晶1gを加え、硫酸を添加してpHを、2.9に調整する。その後、混合液を10oCに冷却し、2時間放置する。結晶化したレインアントロン−8−グルコシドをフィルターで濾別し、温水1500mlで洗浄する。沈澱物を真空下でフィルターを通して窒素吸引することにより乾燥する。これにより約20%の水分を含有する、レインアントロン−8−グルコシド約560gを得る。【0024】C.レインアントロン−8−グルコシドの酸化15〜20%の水分を含有するレインアントロン−8−グルコシド560gを、80容量%イソプロパノール6000ml中に、5〜10oCで懸濁させてスラリーとする。pH約8になるまでトリエチルアミンを添加することにより、該レインアントロン−8−グルコシドを溶解する。その際、pHは8.5を超えないようにする。約200mlのトリエチルアミンを消費する。その後、OH-活性炭50gを加え、焼結体フィルターにより約3リットル/分の速度で気泡を発生させて、混合液中に圧縮空気を通す。反応液の温度は5〜10oCに維持しながら、約2.5時間、気泡を流通させる。【0025】反応終了後、混合液を厚紙フィルターで濾過し、濾液に濃塩酸(約200ml)を加えてpHを1.5〜2.0に調整する。得られる混合液を室温で1晩撹拌して結晶を析出させる。得られた沈澱物を厚紙フィルターで濾別し、イソプロパノール500mlで洗浄し、その後約40oC以下の温度の真空チャンバー内で乾燥する。収率は約310g(レインアントロン−8−グルコシドに対して約62.2%)である。【0026】D.カルシウム塩の製造得られる酸型センノシドA及びB300gを水1800ml中に懸濁させてスラリーとし、更に水酸化カルシウム−水スラリー[Ca(OH)230g+水150ml]を加えて溶解する。該アルカリスラリーの添加は混合液のpHが8±0.5になるまで続け、スラリー約110mlを消費する。これにより酸型センノシドA及びBが溶解する。その後1時間かけて、弱塩酸(40ml;希釈率1:10)を加えてpHを6.7に調整し、かつpHが6.7から6.9の範囲内に維持されているか確認する。30分以内に90%メタノール水溶液1000mlを加え、その後約2時間かけて純粋な(100%)メタノール4400mlを加える。更に1時間、混合液を撹拌し、厚紙フィルターで濾別する。沈澱物を少量のメタノールで洗浄する。【0027】沈澱物を最高40oCまでの温度で1晩乾燥し、重量を測定する。センノシドA及びBのカルシウム塩の収率は、センノシド成分が約82%である酸型センノシドA及びBから計算すると、空気乾燥の場合は約317g(100%)、真空乾燥の場合は約285g(約91%)である。【0028】【発明の効果】本発明の方法により、従来の製造方法に較べ高純度のセンノシドA及びBを更に高収率で得ることができる。 レインアントロン−8−グルコシドを酸素又は酸素源により酸化してセンノシドA及びBとするセンノシドA及びBの製造方法にして、触媒として活性炭を用いてレインアントロン−8−グルコシドの酸化を行うことを特徴とする方法。 得られるセンノシドA及びBの全てまたは一部を、カルシウムイオン含有水溶液からメタノール沈澱によってカルシウム塩に転化する工程を続いて実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 水溶液中において、アルカリpH条件下において酸化を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 該アルカリpH条件がpH値8〜8.5の条件であることを特徴とする請求項3に記載の方法。 酸素含有気体を酸化に用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 該酸素含有気体が空気であることを特徴とする請求項5に記載の方法。 レインアントロン−8−グルコシドが、センナあるいはセンナの部分から抽出して得られるセンノシド混合物を環元することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 上記の環元を、亜ジチオン酸のアルカリ金属塩を用いて水溶液中で行うことを特徴とする請求項7に記載の方法。 該亜ジチオン酸のアルカリ金属塩が亜ジチオン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項8に記載の方法。 上記の抽出操作を、水−メタノール混合液を用いて行い、抽出後メタノールを蒸発させた後、アルコールで水相を洗浄することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の方法。 該アルコールが2−ブタノールであることを特徴とする請求項10に記載の方法。 酸化後、反応混合物をpH値1.5〜2.0まで酸性化して結晶化することによりセンノシドA及びBを取得することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。 センノシドA及びBを、水酸化カルシウムを加えることにより水溶液に溶解し、次いでメタノールを加えて該センノシドA及びBをそれらのカルシウム塩として沈澱させることにより、センノシドA及びBをカルシウム塩に転化することを特徴とする請求項2〜12のいずれかに記載の方法。 上記の沈澱のために、該水溶液のpH値を6.7〜6.9に調整することを特徴とする請求項13に記載の方法。