タイトル: | 特許公報(B2)_新規微生物および微生物によるヘテロ多糖類の製造方法 |
出願番号: | 1994317793 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12P19/06,C12N1/20 |
佐藤 正則 五十嵐 操 中林 昭 大塚 佐和子 川野 隆嗣 JP 3704664 特許公報(B2) 20050805 1994317793 19941129 新規微生物および微生物によるヘテロ多糖類の製造方法 月島機械株式会社 000165273 三宅 正夫 100059306 佐藤 正則 五十嵐 操 中林 昭 大塚 佐和子 川野 隆嗣 20051012 7 C12P19/06 C12N1/20 C12N1/20 C12R1:64 C12P19/06 C12R1:64 JP C12P19/06 C12N1/20 A C12N1/20 C12R1:64 C12P19/06 C12R1:64 7 C12P 19/06 C12N 1/20 CA(STN) BIOSIS(DIALOG) WPIDS(STN) 特開平2−9385(JP,A) 8 FERM P-13997 1996149985 19960611 11 20010917 内藤 伸一 【0001】【産業上の利用分野】本発明は新規な微生物およびこの新規な微生物などの微生物を使用したヘテロ多糖類の製造方法に関する。【0002】【従来の技術、発明が解決しようとする課題】ヘテロ多糖類の代表例として、キサンタンガムが知られている。このキサンタンガムは、粘度増強および品質安定などの有用な作用を示すので、食品添加剤を始めとし、印刷インキ用乳化剤および捺染ペーストの増粘剤などとして広く使用されており、また、石油採掘の際の副生油の回収にも多量に使用されている有用な物質である。【0003】このような有用なキサンタンガムを微生物を使用して製造する方法は古くから広く知られており、この微生物としてキサントモナス属に属する細菌群が知られている。キサンタンガムの製造、利用技術および化学的性質などは多くの文献に記載されているが、サンフォード.ピー.エイ.(Sanford.P.A.)らによる総説収録「微生物の菌体外多糖類 Extracellular Microbial Polysaccharide」には特に詳細に記載されている。【0004】微生物を使用したキサンタンガムのようなヘテロ多糖類の実用的な製造方法として、たとえば、米国特許第3,485,719号明細書に開示されている。この方法は、コーンシュガー、グルコースおよびその他の炭水化物などを炭素源とし、キサントモナス キャンペストリス NRRL B−1459を使用して、約2週間以上の期間にわたって連続培養するとの方法である。この方法で使用されているグルコースなどの単糖類は、澱粉などを化学的に、または、酵素的に加水分解して得られるが、そのためには、少なからぬ費用と時間が必要である。従って、このような単糖類の原料を加水分解することなしにそのまま多糖類製造時の炭素源として使用できることが、実用的に大きな意義を有することになる。【0005】さらに、たとえば、特開平6−30600号公報に記載されている方法では、炭素源として澱粉を使用している。しかしながら、この方法では、澱粉とともに、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびイソアミラーゼおよびプルラナーゼなどの糖化型澱粉酵素を水性栄養媒質中に含有させて、澱粉を酵素によって予め加水分解してグルコースなどの単糖類に変化せしめ、この単糖類をキサントモナス属などの細菌の炭素源としている。【0006】なお、この公開公報において、澱粉とは、澱粉自体だけではなく澱粉加水分解生成物も包含されている。この公開公報での方法も、結局は微生物に利用させる炭素源はグルコースであるので、この点で、前記の米国特許明細書に開示された方法と本質的には異ならないことになる。また、この公開公報に記載された方法では、この水性栄養媒質中のグルコースの濃度を1〜15%にするものとされている。しかして、このグルコースの濃度は、使用される微生物の種類によって相違するので、使用される微生物の種類に応じて、水性栄養媒質中の澱粉および酵素のそれぞれの濃度を変更しなければならず、煩雑であり、これが実用化する際の障害となる。また、この方法を工業的に連続培養によって行うに当っては、安定した操業を可能ならしめるために、操業期間中はこの水性栄養媒質中のグルコース濃度を所定の濃度に保つように制御されなければならないが、これは容易なことではない。【0007】さらに、前記の米国特許第3,485,719号に記載されている方法および特開平6−30600号公報に記載されているような何れの方法においても、使用される微生物に応じて、それぞれの微生物に適した糖以外の有機成分および無機成分などの他の栄養源を添加することが必要とされ、培地の調製が煩雑である。また、最近、酪農の拡大化に伴って大量に副生される乳糖を含有するミルクホエ−(乳精)の有効利用の一貫として、微生物によるヘテロ多糖類の製造における炭素源として使用することが提案されている。しかしながら、このような場合にも、さらに他の有機栄養成分が必要とされ、たとえば、トウモロコシ可溶性抽出物(コ−ンスチ−プリカ− CSL)、カゼインおよびグルタミン酸等の添加が必要とされている。【0008】他方、キサントモナス属に属する細菌の菌学的性質として、一般に、「澱粉を資化する」とされているが、この資化性は実用上満足し得るほど強くはないことが知られている。すなわち、たとえば、前記の米国特許第3,485,719号で使用されているキサントモナス キャンペストリス NRRL B−1459を、ここで使用されている炭素源のグルコースに代えて、液化澱粉である市販試薬の可溶性澱粉を使用した場合には、この菌株の生育増殖自体が悪く、たとえば、キサンタンガムのような多糖類の生産量も少なく実用には適しないことが本発明者らによって確認されている。【0009】【課題を解決するための手段、作用】本発明者らは、炭素源として液化澱粉のみを使用するだけで、糖化型澱粉分解酵素などの酵素および無機成分などの他の栄養成分などを含有する複雑な培地を使用しなくてもキサンタンガムのようなヘテロ多糖類を効率よく生産し得る方法について、鋭意、研鑚を重ねた結果、炭素源として液化澱粉のみを含有する単純な組成の培地を使用するだけで、糖化型澱粉分解酵素などの酵素および無機成分などの他の栄養成分を共存せしめなくてもキサンタンガムのようなヘテロ多糖類を効率よく生産し得る新規な微生物の分離に成功し、さらに、このような微生物を培養してヘテロ多糖類を生産させるに際して、炭素源として液化澱粉を使用するだけでヘテロ多糖類を容易に効率よく製造することができ、さらに、液化澱粉とともに魚肉質成分を共存せしめることによって、ヘテロ多糖類の生産量を顕著に増大せしめ得ることを発見し、この発見に基づいて本発明に到達した。【0010】 すなわち本発明は、炭素源として液化澱粉のみを含有する培地中で生育増殖し、多量のキサンタンガムを生産し得るキサントモナス キャンペストリス TSK−001(FERM P−13997)であり、また、キサントモナス キャンペストリス TSK−001(FERM P−13997)を、炭素源として液化澱粉のみを含有する培地で培養し、得られた培養物からヘテロ多糖類を回収することを特徴とするヘテロ多糖類の製造方法であり、さらに、キサントモナス属に属し、液化澱粉のみを炭素源として、ヘテロ多糖類を生産し得る細菌を、炭素源として液化澱粉のみおよび魚肉質成分を含有する培地で培養し、得られた培養物からヘテロ多糖類を回収することを特徴とするヘテロ多糖類の製造方法である。【0011】本発明の新規な微生物の菌学的性質は次の如くである。すなわち、(a) 形態(1) 細胞の形および大きさ:桿菌,0.6〜0.8μm×2〜3μm。 (2) 運動性の有無 :有り,鞭毛を1本有する。 (3) グラム染色性 :陰性。 (4) 抗酸性 :無し。【0012】(b) 生理学的性質(1) 肉汁寒天平板培養 :よく生育する。コロニーの形状は円形であり、表面、周縁は共に円滑。色調は黄色半透明で、光沢がある。(2) 肉汁寒天斜面培養 :生育する。その状態は糸状で光沢があり、黄色半透明である。(3) 肉汁液体培養 :混濁状態にて生育する。 (4) 肉汁ゼラチン穿刺培養:表層部に生育し、ゼラチンの液化がみられる。 (5) リトマス・ミルク :培養7日後の観察で、脱色し、消化する。【0013】(c) 生理学的性質(1) 硝酸塩の還元 :還元しない。 (2) 脱窒反応 :陰性。 (3) MRテスト :陰性。 (4) VPテスト :陰性。 (5) インドールの生成:生成しない。 (6) 硫化水素の生成 :生成する。 (7) 澱粉の加水分解 :強く分解しする。 (8) クエン酸の利用(Koserの培地およびChristensenの培地を併用):利用する。 (9) 無機窒素源の利用:硝酸塩を利用しない。アンモニウム塩を利用する。 (10)ウレアーゼ :陰性。 (11)オキシダーゼ :陽性。 (12)カタラーゼ :陽性。 (13)生育の範囲 :pH6〜8.5,温度28〜35℃。 (14)酸素に対する態度:好気性。 (15)糖類から酸およびガスの生成の有無:表1のとおり。【0014】【表1】【0015】(d) その他の性質(1) レバンの生成 :生成する。 (2) アルギニンの加水分解:分解しない。 (3) Tween 80の分解 :分解する。 (4) レシチナーゼ :陽性。 (5) 炭素源,窒素源としてのアスパラギンの利用:利用しない。 (6) ペクチンの溶解 :溶解する。 (7) エスクリンの加水分解:分解する。 (8) アセトイン試験 :陰性。 (9) 食塩耐性 :3%。 (10)0.1%トリフェニルテトラゾリウムクロライド含有培地での増殖:増殖しない。 (11)ヘテロ多糖類の生成 :多量のキサンタンガムを生成する。(e) 分離源 静岡県磐田市大藤地区のキャベツの葉組織【0016】本菌株の菌学的性質を「バージーズ マニュアル Bergey's Manual」第8版における菌学的性質と詳細に比較検討した結果、リトマス・ミルク試験での結果が、「脱色し、消化する」であり、硫化水素を生成し、ウレアーゼが陰性であり、食塩耐性が3%であり、かつ、L−アラビノーズ、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトースおよびトレハロースのそれぞれの糖から酸を生成することから、本菌株はキサントモナス キャンペストリス(Xanthomonas campestris)に属するものであると判断した。また、澱粉を強く加水分解し、他の炭素源を共存させなくても液化澱粉を強力に資化し、多量のキサンタンガムを生成する点で、キサントモナス キャンペストリスに属する公知の菌株と相違していることから、本菌株はキサントモナス キャンペストリスに属する新菌株と判断し、本菌株をキサントモナス キャンペストリス(Xanthomonas campestris)TSK−001と命名した。なお、本菌株はFERM P−13997として、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。【0017】この菌株を、炭素源として液化澱粉のみを含有する培地、さらには、栄養成分として液化澱粉および魚肉質成分のみを含有する培地で好気的に培養することによって、キサントモナス属に属する公知の菌株に比して多量のヘテロ多糖類を生産せしめ、以て、ヘテロ多糖類を容易に、かつ、効率よく製造することが可能となる。このように本菌株を培養することにより、本菌株によって生産されたヘテロ多糖類は菌体外へ排出され培養液中に蓄積される。【0018】本発明において液化澱粉とは、水性液に溶存している澱粉と定義される。液化澱粉を生成せしめるためには、常法によって、澱粉を化学的に、または、酵素的に処理して低分子化せしめて水溶性が増大せしめられた、所謂、デキストリン類および可溶性澱粉などが使用される。この原料および処理条件には特に制限はない。原料の澱粉としては、その代表例として、小麦、とうもろこし、米、ライ麦およびオート麦などから得られた穀物澱粉ならびに馬鈴薯、キャッサバ、タピオカおよび甘藷などの芋類から得られた澱粉などがある。【0019】また、処理条件としては、(1) 190〜230℃程度で加熱する(2)塩酸などの希酸の存在化で110〜140℃程度で加熱するなどがある。また、酵素としては、通常は、アミラーゼが使用される。市販の可溶性澱粉もそのまま使用することができる。【0020】培地または培養液中の液化澱粉の濃度は、実用上、通常は、培地または培養液1リットル(l)あたり10〜50g程度、好ましくは、20〜40g程度とされる。この液化澱粉の濃度が約50gを越えて高くなるに伴って培地乃至は培養液が高粘度となり、攪拌効率の低下から生産性の低下を来す危険性がある。【0021】短時間で培養液の単位容積あたりのヘテロ多糖類の収量を向上させて、効率よくヘテロ多糖類を製造するためには、培養初期においては液化澱粉の濃度を低くすることが好ましく、実用上、通常は、培地または培養液1lあたり20〜30g程度とされる。培養終了後の液は高粘度となっており、そのままの状態で菌体を除去することが困難となるので、菌体の分離に先立って、培養液を希釈することが好ましい。この希釈の程度には特に制限はないが、実用上、通常は、培養液中のヘテロ多糖類の濃度が0.1〜1.0(重量/容量)%程度となるように希釈される。【0022】ヘテロ多糖類の生産性をさらに増大させるために、培地または培養液に炭素源以外の成分として魚肉質成分を含有せしめることが好ましい。魚肉質成分として、魚粕、魚粉、荒粕およびフィッシュソリュブルなどの魚粉類、生鮮魚肉および魚粉などから熱水もしくは水蒸気で抽出され、または、酵素処理によって抽出された抽出物ならびに魚肉汁の濃縮・精製物である魚エキスなどが培地または培養液に含有せしめられる。これらの魚粉類、抽出物および魚エキスなどの魚肉質成分は、その原料の魚の種類および処理条件などには特に制限はなく、また、市販品をそのまま使用することができる。なお、培地中または培養液中に原料の澱粉と澱粉液化酵素を共存せしめて澱粉液化酵素により原料の澱粉を液化せしめることができる。【0023】これらの魚粉類、抽出物および魚エキスなどの魚肉質成分の使用量は、使用される魚肉質成分の原料の魚の種類および処理方法などによって、多岐にわたる品質、品位のものが存在し、その成分の種類、含有率が大きく変動しており、また、培養条件などによって大きく異なるため、一概に特定し得ないが、実用上、通常は、その全窒素量で特定することができる。この魚肉質成分の使用量は、全窒素量として、培地または培養液1リットル(l)あたり、実用上、通常は、0.1〜1g程度、好ましくは、0.2〜0.5g程度とされる。なお、魚肉質成分の全窒素含有率は、常法の如くケルダール法により測定される。【0024】培養は常法により好気的に行われる。そのためには、通常は、空気などの酸素含有ガスで培養液は通気攪拌される。空気の通気量は培養液中の溶存酸素濃度が律速とならなければよく、通常は、1分あたり培養液1lにつき0.3〜1.5l(標準状態)程度とされる。培養液の液性は、ほぼ微酸性乃至微アルカリ性でよく、6〜8.5程度が好適である。培養温度は常温乃至室温でよく、28〜35℃程度が好適である。また、培養液中の菌体濃度(乾燥菌体換算で表示 以下同様)は、培養液1lあたり、乾燥菌体換算で1〜3g程度に保つことが好適である。【0025】培養の経過に伴って、培養液の液性はアルカリ性に大きく傾くことがあるが、この場合には、フマール酸および乳酸などの有機酸の添加によって、培養液の液性は所定の値に保持される。なお、培地にこれらの有機酸の塩を予め添加しておけば、培養の経過中で液性はほぼ微酸性乃至微アルカリ性の所定の値に保たれる。また、培養液の発泡を予防・防止するために、培地または培養液にシリコーンのような消泡剤を添加することもできる。培養は、回分法および連続法のいずれでも行うことができる。【0026】また、ヘテロ多糖類を生産するための培養に先立って、予備培養することができ、しかも好ましい。この培養においては、キサントモナス キャンペストリスに属する公知の菌株の培養に使用される培地をも使用することができる。【0027】このようにして、微生物によって生産されたヘテロ多糖類は菌体外に排出され培養液中に蓄積される。従って、培養の経過に伴って、培養液中のヘテロ多糖類の濃度が上昇すれば、培養液の粘度もこれに伴って増大するので、培養の経過は培養液の粘度を測定することによって知ることができる。このようにして培養することによって、たとえば、回分培養の場合には、培養液中のヘテロ多糖類の濃度は、培養条件などにもよるが、通常は、約48時間以内で、最大に達する。【0028】このようにして得られた培養液または所望により希釈された培養液から、常法によって菌体を除去し、ついで、目的物であるヘテロ多糖類が分離・回収される。すなわち、たとえば、遠心分離および各種の濾過によって培養液または所望により希釈された培養液から菌体が除去される。このようにして得られた清澄液に、貧溶媒であるプロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールのような低級アルコールまたは無機塩を添加して、目的物であるヘテロ多糖類を沈殿せしめ、この沈殿を、遠心分離および各種の濾過によって分離・回収する。このようにして得られた粗製のヘテロ多糖類は、さらに所望により各種の精製を経て、製品とされる。なお、培養液が希釈された場合には、貧溶液などの添加によるヘテロ多糖類の沈殿に先立って、除菌後の清澄液を濃縮することが好ましい。【0029】【実施例】本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明するが、これらの実施例は単なる例示であって、本発明を何等制限するものではない。なお、実施例において培養液中のキサンタンガムは、適宜希釈された培養液から遠心分離(10,000×gで1時間)によって菌体を分離除去して得られた清澄液を濃縮し、この濃縮液に過剰(2〜3倍量)の貧溶媒であるアルコールを添加して、キサンタンガムを沈殿させる。このキサンタンガムを濾取し、これを乾燥してこの重量をキサンタンガムの量とすることによって定量される。また、キサンタンガムは、キサンタンガムを酸で加水分解し、この分解物について、グルコース、マンノース、グルクロン酸およびピルビン酸の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析することによって同定される。【0030】実施例1本発明の新規な微生物であるキサントモナス キャンペストリス(Xanthomo-nas campestris)TSK−001(FERM P−13997)を、ブイヨン寒天斜面培地で培養・賦活された菌体の1白金耳を後記の培地100mlに接種し、これを300rpmの回転培養機よって30℃で24時間予備培養して、菌体濃度0.15(重量/容量%)の培養液を得、これを種菌とした。【0031】培地組成液化澱粉(純正化学製) 30g魚エキス(焼津水産化学製 カルチベータ) 5g(全窒素量として0.4g)フマール酸ナトリウム(純正化学製) 3g水 1lpH 7.030l容ジャーファーメンターに前記の培地10lを仕込み、殺菌後、これに前記の種菌培養液500mlを接種し、300rpmで攪拌しつつ、1分間あたり100容量/容量%で空気を通気し、30℃で好気的に回分培養を行った。【0032】 培養時間の経過に伴って菌は増殖し、培養液のpHは約7〜8の範囲に保持され、また、培養液の粘度は培養の経過に伴って徐々に増大した。培養開始から32時間経過後には、培養液の粘度は8400cP(センチポアズ)に達した。 培養期間における培養液中の澱粉濃度および菌体濃度ならびに培養液のpHおよび粘度のそれぞれの経時変化を図1に示す。 培養開始48時間後には、培養液中のキサンタンガムの濃度は16.5g/lとなった。 この培養液からプリコートフィルタープレスによって菌体を除去して、清澄粘稠液を得た。 この清澄粘稠液1lを採り、これと2lのプロピルアルコールとを混合して沈殿を生成せしめた。沈殿を遠心分離によって回収し、デシケーター中で乾燥してキサンタンガム15.3gを得た。【0033】比較例1本発明の新規な微生物であるキサントモナス キャンペストリス(Xanthomo-nas campestris)TSK−001(FERM P−13997)に代えて、公知のキサントモナス キャンペストリス(Xanthomonass campestris)NRRL B−1459を使用した以外は、実施例1と同様にして行ったが、キサンタンガム5gを得たに止まった。【0034】実施例2魚エキスに代えて市販の飼料用フィッシュソリブルを半量となるまで濃縮した液を培地1lあたり全窒素量として0.4gとなるように添加した以外は実施例1と同様にして行って、キサンタンガム14.5gを得た。【0035】実施例3コーンスターチ(純正化学製)30g、市販の魚粉4g(全窒素量として0.44g)および水500mlから成る混合物に、1.5gの澱粉液化酵素タマミール120L(NOVO社製)を添加し、85℃で30分間加熱して、このコーンスターチの殆ど全量を可溶化せしめこれを殺菌冷却して可溶化澱粉含有物を得た。この可溶化澱粉混合物の全量に、3gのフマール酸ナトリウムを添加し、これにさらに水を加えて1lとし、これを培地として使用した以外は、実施例1と同様にして行って、キサンタンガム16.2gを得た。【0036】実施例4市販の魚粉(鰯の削り粉)を熱水で60分間抽出して全窒素含有率が6.2g/lの魚粉熱水抽出物を得た。魚エキスに代えて、この魚粉熱水抽出物を培地1lあたり64ml添加した以外は実施例1と同様にして行って、キサンタンガム13.7gを得た。【0037】実施例5魚粉(鰯の削り粉)を酵素(天野製薬製 パパイン)で分解し、全窒素含有率26g/lの魚粉分解抽出物を得た。魚エキスに代えて、この魚粉分解抽出物を培地1lあたり15ml添加した以外は実施例1と同様にして行って、キサンタンガム14.0gを得た。【0038】比較例2次の培地組成を有する培地を使用した以外は実施例1と同様にして行ったが、キサンタンガム9.4gを得たに止まった。培地組成液化澱粉(純正化学製) 30 g酵母エキス(日本製薬製) 1 gコーンスチーブリカー(純正化学製) 1 ml硫酸アンモニウム(純正化学製) 1 g硫酸マグネシウム(7水塩)(純正化学製) 0.2gりん酸二カリウム(純正化学製) 1 g水 1 lpH 7.0【0039】【発明の効果】本発明により、低廉な液化澱粉を使用し、工業上の利用価値が高いキサンタンガムのようなヘテロ多糖類が、容易に、しかも効率よく得られる。【図面の簡単な説明】【図1】培養期間における培養液中の澱粉濃度および菌体濃度ならびに培養液のpHおよび粘度のそれぞれの経時変化を示すグラフである。 炭素源として液化澱粉のみを含有する培地中で生育増殖し、多量のキサンタンガムを生産し得るキサントモナス キャンペストリス TSK−001(FERM P−13997)。 キサントモナス キャンペストリス TSK−001(FERM P−13997)を、炭素源として液化澱粉のみを含有する培地で培養し、得られた培養物からヘテロ多糖類を回収することを特徴とするヘテロ多糖類の製造方法。 キサントモナス属に属し、液化澱粉のみを炭素源として、ヘテロ多糖類を生産し得る細菌を、炭素源として液化澱粉のみおよび魚肉質成分を含有する培地で培養し、得られた培養物からヘテロ多糖類を回収することを特徴とするヘテロ多糖類の製造方法。 キサントモナス属に属する細菌がキサントモナス キャンペストリスに属する細菌である請求項3記載のヘテロ多糖類の製造方法。 キサントモナス属に属する細菌がキサントモナス キャンペストリス TSK−001(FERM P−13997)である請求項4記載のヘテロ多糖類の製造方法。 培養が好気的培養である請求項2乃至5のいずれか1項記載のヘテロ多糖類の製造方法。 魚肉質成分として魚粉類、魚類抽出物または魚エキスが含有せしめられる請求項3乃至6のいずれか1項記載のヘテロ多糖類の製造方法。 ヘテロ多糖類がキサンタンガムである請求項2乃至7のいずれか1項記載のヘテロ多糖類の製造方法。