タイトル: | 特許公報(B2)_簡易培地 |
出願番号: | 1994284672 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N1/20,C12M1/16,C12M1/34,C12Q1/04 |
水落 慎吾 小高 秀正 JP 3630737 特許公報(B2) 20041224 1994284672 19941118 簡易培地 日水製薬株式会社 000226862 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 水落 慎吾 小高 秀正 20050323 7 C12N1/20 C12M1/16 C12M1/34 C12Q1/04 JP C12N1/20 A C12M1/16 C12M1/34 B C12M1/34 D C12Q1/04 7 C12N 1/20 C12M 1/16 C12M 1/34 C12M 1/34 C12Q 1/04 JSTPlus(JOIS) BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed 特開平6−315397(JP,A) 特開昭55−127985(JP,A) 特開平6−311880(JP,A) 国際公開第93/12218(WO,A1) 特表昭57−502200(JP,A) 3 1996140664 19960604 9 20010622 飯室 里美 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、種々の微生物の検出、同定、輸送に有用な簡易培地に関する。【0002】【従来の技術】種々の微生物を検出、同定するにあたって、従来から行われている微生物の培養方法として、平板塗抹法や混釈法、液体培地法などが一般的に用いられている。これらの方法は、培養を行う以前に培地や器具類の滅菌の準備が必要であり、被検試料を培地に接種した後は塗抹や混釈等の熟練を要する操作が必要である。更に、被検試料接種後の培地の輸送や培養後発育したコロニーを計測したあとの培地等の滅菌ではかさばる器具や培地により多大な労力を要する。【0003】そのため手軽に培養できるフィルム状培地を用いた簡易検査法が報告されている。その例としては、(1)防水性基体の上面部に、接着剤層、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開昭57−502200号公報)、(2)防水性基体の上面部に、空気透過性膜、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開平3−15379号公報)、(3)濾紙等に菌体栄養成分を含浸させ、その表面をカバーシートで覆ってなる検出紙(特開平2−65798号公報)、(4)防水性平板の表面に冷水可溶性ゲル化剤と微生物培養基、繊維質吸水性シートを順次積層した培地(特開平6−181741号公報)が報告されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記(1)及び(2)の培地においては、試料接種後、試料を一定面積に拡散させるためにスプレッダーにより圧力をかける操作を必要とするという問題があった。また、上記(3)の培地においては、コロニーの形成が濾紙内部で行われるため、コロニーの観察が困難であることから、精度の低下や、釣菌不能などの問題があった。また、上記(4)の培地においては、繊維質吸水性シートを用いているため、釣菌の際の扱い難さが問題となっていた。【0005】従って、本発明の目的は試料接種等の操作性に優れ、かつコロニーの観察が容易で正確な検出が可能であり、しかも釣菌も容易に行うことができる簡易培地及びこれを用いた微生物の検出方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは上記操作性、コロニーの検出性及び釣菌の容易さ等の面から種々の培地について検討した結果、防水性の平板の表面に、キサンタンガム又はカラギーナンと、ローカストビンガム及び菌体培養用栄養分を特定の割合で含有する培地組成物を含む薄膜を形成することにより、試料液を培地上に滴下するのみで容易に拡散し、かつ形成された薄膜上で明確なコロニーが形成され、検出性が良好で、しかも容易に釣菌できる簡易培地が得られることを見出し、本発明を完成した。【0007】すなわち、本発明は、防水性の平板の表面の少なくとも一部に、(a)キサンタンガム又はカラギーナン、(b)ローカストビンガム、及び(c)菌体培養用栄養分を含有し、かつ(a)及び(b)の重量比が6:4〜0.5:9.5である培地組成物を含む薄膜を形成したことを特徴とする簡易培地を提供するものである。【0008】また、本発明は、上記の簡易培地の薄膜形成面に検体液を接種して培養し、薄膜形成面に形成されたコロニーを検出することを特徴とする検体中の微生物の検出方法を提供するものである。【0009】本発明で用いられる防水性の平板の材質としては、防水性であれば特に制限されず、例えばポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系等のプラスチック、ガラスなどが挙げられ、特にポリスチレン系プラスチックが好ましい。また、平板の表面は、薄膜を形成し得る状態であれば特に制限されず、例えば薄膜が形成し易いように梨子地に仕上げたものであってもよい。【0010】また、これらの平板の形状は、正方形、長方形、円形等特に限定されない。またその大きさも特に制限されないが、微生物の簡易検出用の場合には長径で1〜15cmが好ましい。【0011】本発明の簡易培地は、このような平板の表面の少なくとも一部に、(a)キサンタンガム又はカラギーナン、(b)ローカストビンガム、及び(c)菌体培養用栄養分を含有する培地組成物を含む薄膜が形成されているものである。培地組成物において、(a)キサンタンガム又はカラギーナンと、(b)ローカストビンガムは、(a)及び(b)の重量比が6:4〜0.5:9.5、好ましくは4:6〜1:9であることが必要である。(a)成分の割合がこの範囲より大きいと、試料を接種したときの拡散性が悪くなり、また(b)成分の割合がこの範囲より大きいと、培養時間が長くなると薄膜のゲルが軟化してしまう。この(a)成分及び(b)成分は、培地組成物中に、合計で0.1〜30重量%、特に5〜20重量%配合するのが好ましい。【0012】また、(c)菌体培養用栄養分は、検出しようとする微生物の生育に適し、水可溶性のものが選択される。例えば、多種の微生物を増殖させる場合には、一般的な栄養培地成分が用いられ、特定の微生物を選択的に増殖させる場合には選択培地成分が用いられる。この(c)成分は、通常培地組成物中に0.5〜20重量%、特に1〜5重量%配合するのが好ましい。【0013】更に、この培地組成物には、コロニーの観察を容易にするため、種々の発色剤を配合するのが好ましい。かかる発色剤には、コロニーを着色する色素、例えばトリフェニルテトラゾリウムクロライド、3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド等の色素;5−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド等の酵素基質;ブロムチモールブルーやニュートラルレッドのようなpH指示薬等が含まれる。【0014】薄膜は、例えば前記(a)、(b)及び(c)成分を含むアルコール懸濁液を、平板の表面に塗布した後、乾燥することにより形成される。アルコール懸濁液中の培地組成物の濃度は、培地組成物が容易に均一に平板表面に塗布できる程度の粘度になる濃度であることが好ましく、1〜70重量%、特に6〜30重量%が好ましい。ここで、アルコールとしては炭素数1〜5のアルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。【0015】このアルコール懸濁液の平板表面への塗布は、例えばバーコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーターなどによる塗布や吹き付け(噴霧)による塗布が挙げられるが、ベーカーアプリケーターによるのが好ましい。次いで、乾燥は自然乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥が好ましい。更に、ガス、γ線、電子線等により滅菌するのが好ましい。【0016】得られた簡易培地における平板上の薄膜層は、0.01〜2mm、特に0.1〜1mmであるのが好ましい。【0017】本発明簡易培地は、平板表面全体に1種の培地組成物を含む薄膜が均一に形成されていてもよく(例えば図1)、また菌体培養用栄養分と発色剤を変化させた複数種の培地組成物を含む薄膜を形成したものでもよい(例えば図2、図3)。【0018】得られた本発明の簡易培地は、試験に供されるまでの間雑菌による汚染を防止する目的で、周囲を撥水性フィルムの袋、プラスチックシャーレ、ガラスシャーレ等で覆っておくのが好ましい。【0019】本発明の簡易培地を使用して微生物を培養・検出するには、例えば薄膜形成面に検体液を接種して培養し、薄膜形成面に形成されたコロニーを検出することにより行うことができる。薄膜形成面に接種された検体液中の微生物は、膨潤するか又は粒子間の接着が遅いタイプの物質粒子の間隙を縫って拡散する。更に拡散より遅れて十分な膨潤又はゲル化がおこり、捕捉され自由移動が抑制され培養後コロニーを形成する。従って、薄膜形成面を観察すれば、形成したコロニーが容易に観察できる。試料を定量的に簡易培地へ接種すれば、培養後出現したコロニーを計測することにより、容易に菌数を算定することができる。なお、菌体液の接種は通常ピペット等により一定量を接種する方法が採用されるが、水分の多い個体へスタンプする方法や試料液へ浸す方法でもよい。また、検体液接種後の培養は、静置しておいてもよく、輸送期間中に培養を兼ねてもよい。【0020】【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0021】実施例1キサンタンガム又はカラギーナンとローカストビンガムの重量比をかえた簡易培地を製造し、これらに検体液を接種し、培養したときの拡散性、コロニー形成及びゲルの軟化について評価した。結果を表1及び表2に示す。【0022】培地の製造方法:培地組成成分として、ペプトン1.7g、ダイズペプトン0.3g、塩化ナトリウム0.5g、ブドウ糖0.25g、リン酸一水素カリウム0.25g及びトリフェニルテトラゾリウムクロライド0.002gをエタノール100mlに懸濁し、これにキサンタンガム又はカラギーナンとローカストビンガムの重量比を10:0〜0:10(各々の合計10g)に組み合わせた培地を調製した。次に、その各々の培地組成液の1mlずつを密閉型のプラスチックシャーレ(47φmm)に分注し、均一になるように広げて乾燥した後、エチレンオキサイドガスで滅菌し、簡易培地を作製した。【0023】評価方法:E.coli及びB.subtilisをトリプトソーヤブイヨン(日水製薬社製)で35℃にて24時間培養した後、10倍段階希釈を行い、それぞれの試料1mlずつを簡易培地の薄膜形成面に接種した。簡易培地が試料の水分を吸収した後、倒置してふ卵器中で35℃にて24時間培養した。この一連の操作において下記する評価を行った。【0024】(1)拡散性;試料1mlを簡易培地の中心部に接種し、周辺部にまで試料の拡散がみられるかについて観察し、以下の基準で評価した。◎:拡散速度が速く、スムーズに培地のへりまで拡散した。○:培地の中心からへりまで拡散した。△○:試料の接種時には培地のへりまで拡散しないが、培養後にはコロニーがへりまで形成した。△:ゆっくりだが、培地のへりの近くまでしか拡散しない。×:培地のへりまで拡散しない。【0025】(2)コロニー形成、ゲルの軟化;培養後、簡易培地に形成したコロニー、及び簡易培地のゲルが軟化して崩れていないかを観察し、以下の基準で評価した。○:ゲルは軟化せず、コロニーが形成している。△:ゲルはゆるくはなるが落ちることはなく、コロニーが落ちかける。×:ゲルが軟化し、コロニーの形成が不良。【0026】【表1】【0027】【表2】【0028】表1及び表2の結果より、拡散性、コロニー形成、ゲルの軟化での評価においてキサンタンガム又はカラギーナンとローカストビンガムの重量比が6:4〜0.5〜9.5、特に4:6〜1:9で良好であることを認めた。【0029】実施例2培地組成物成分としてペプトン1.7g、ダイズペプトン0.3g、塩化ナトリウム0.5g、ブドウ糖0.25g、リン酸−水素カリウム0.25g、ローカストビンガム8g、キサンタンガム2g及びトリフェニルテトラゾリウムクロライド0.002gを用い、これらをエタノール100mlに懸濁し、良く攪拌した。次に、このエタノール懸濁液を1mlずつ密閉型のプラスチックシャーレ(47φmm)に分注し、均一になるように広げて乾燥した後、エチレンオキサイドガスで滅菌した。【0030】表1に示す各種菌株を、トリプトソーヤブイヨン(日水製薬社製)で35℃にて24時間培養した後、10倍段階希釈を行い、それぞれ1mlずつを簡易培地の薄膜形成面に接種するか、又はトリプトソーヤ寒天培地(TSA、日水製薬社製)に接種し、35℃にて24時間培養した後、菌数を測定した。その結果を表3に示す。【0031】【表3】【0032】表3の結果より、各種菌株について、本発明の簡易培地及びTSA平板を用いた場合のいずれも、ほぼ同数の菌数が認められた。また、簡易培地に形成したコロニーを白金線を用いて刺すことにより釣菌したところ、容易に釣菌することができ、更にこの菌をTSA平板に接種して35℃、24時間培養したところ、コロニーの形成が認められた。【0033】実施例3市販食品として豚挽き肉及び豆腐を購入し、各食品10gを90mlの滅菌生理食塩水を加えて均一になるようにストマッキングした試料を10倍段階希釈した。その1mlを実施例2の簡易培地の薄膜形成面に接種した。更に同様の試料の1mlを滅菌シャーレにとり、あらかじめ滅菌し、48℃程度に冷却してある標準寒天培地(日水製薬社製)を注ぎ、混釈した。次に、これらを35℃で24時間培養し、出現したコロニーを算出した。その結果、豚挽き肉では、簡易培地で3.3×108 CFU/ml、混釈平板培養で3.0×108 CFU/ml;豆腐では、簡易培地で9.1×104 CFU/ml、混釈平板培養で9.3×104 CFU/mlであり、簡易培地及び標準寒天培地ともほぼ同様の菌数を示した。【0034】【発明の効果】本発明の簡易培地を用いれば、検体液の接種が容易であり、検体液が均一に拡散し、更にコロニーの観察及び釣菌が正確かつ容易にできるため、種々の微生物の検査を簡易に行うことができる。【図面の簡単な説明】【図1】平板の表面全体に同一組成の培地組成物を含む薄膜が形成された本発明簡易培地を示す説明図である。【図2】平板の表面にそれぞれ異なる組成を有する培地組成物を含む薄膜が形成された本発明簡易培地を示す説明図である。【図3】長方形状の平板の表面にそれぞれ異なる組成を有する培地組成物を含む薄膜が形成された本発明簡易培地を示す説明図である。 防水性の平板の表面の少なくとも一部に、(a)キサンタンガム又はカラギーナン、(b)ローカストビンガム、及び(c)菌体培養用栄養分を含有し、かつ(a)及び(b)の重量比が6:4〜0.5:9.5である培地組成物を含む薄膜を形成したことを特徴とする簡易培地。 培地組成物が、更に発色剤を含有するものである請求項1記載の簡易培地。 請求項1記載の簡易培地の薄膜形成面に検体液を接種して培養し、薄膜形成面に形成されたコロニーを検出することを特徴とする検体中の微生物の検出方法。