生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ジエノゲストを有効成分とするホルモン療法用制癌剤
出願番号:1994280483
年次:2006
IPC分類:A61K 31/565,A61P 35/00,C07J 41/00


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澁 谷 靖 義 尾 畑 賢 臣 佐 藤 正 巳 甲 木 由紀夫 JP 3754466 特許公報(B2) 20051222 1994280483 19941115 ジエノゲストを有効成分とするホルモン療法用制癌剤 持田製薬株式会社 000181147 渡辺 望稔 100080159 三和 晴子 100090217 澁 谷 靖 義 尾 畑 賢 臣 佐 藤 正 巳 甲 木 由紀夫 JP 1993290823 19931119 20060315 A61K 31/565 20060101AFI20060223BHJP A61P 35/00 20060101ALI20060223BHJP C07J 41/00 20060101ALI20060223BHJP JPA61K31/565A61P35/00C07J41/00 A61K 31/565 A61P 35/00 C07J 41/00 BIOSIS(STN) CAPLUS(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) EMBASE(STN) 特開昭63−072627(JP,A) 特開昭55−035032(JP,A) 6 1995188026 19950725 13 20011105 瀬下 浩一 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ジエノゲスト(Dienogest) もしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とするホルモン療法用制癌剤、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする性ホルモン依存性癌治療剤、あるいは、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする子宮体癌および/または乳癌治療剤に関する。【0002】【従来の技術】ジエノゲストは、下記式(I)で示される構造(17α-cyanomethyl- 17β-hydroxy-estra-4,9(10)-dien-3-one)を有する既知化合物の国際一般名(INN)である。【0003】【化1】【0004】本化合物の性質および合成方法については、シュバート(Schubert)等、エルゼビア サイエンス パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers) 編, ナチュラル・プロダクツ・ケミストリー((Natural Products Chemistry), 1984 年)、143 〜158 頁に概要が述べられている。ジエノゲストは黄体ホルモン活性を有することが知られており、近年、ドイツに於いてエチニルエストラジオールとの合剤が製造され、経口避妊薬として発売されている。ジエノゲストはまた、子宮内膜症の治療剤としても開発が進められているが(エクスペリメンタル・クリニカル・エンドクリノロジー(Exp. Clin. Endocrinol.)、第94巻、1−2号、211 頁、1989年)、これまでのところ、ジエノゲストの抗癌作用については報告がなされていない。また、ジエノゲストは、他の黄体ホルモン活性を有する化合物と異なって、アンドロゲン作用がないことが報告されている(シュバートら、ナチュラル・プロダクツ・ケミストリー(同上))。【0005】さて、昨今の癌とホルモンとの研究テーマの一つとして、癌の発生・増殖・進展過程に生体のホルモンが影響を与えているという「癌のホルモン依存性」が挙げられる。この研究において、特に代表的な性ホルモン依存性癌である子宮体癌(子宮内膜癌)、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌等に対してはホルモン療法が薬物療法の重要な柱として位置づけられている。例えば、子宮体癌はその95%以上が腺癌であり、しばしば増殖期子宮内膜の上皮細胞の性格を保持し、プロゲステロン非存在下においてエストロゲン刺激によって発育すると考えられている(ガーピッド(Gurpide) 、ジャーナル・オブ・ナチュラル・キャンサー・インスティテュート(J. Natl. Cancer Inst.) 、第83巻、6号、 405〜 416頁、1991年)。このため、子宮体癌の薬物療法として一般の化学療法剤に加え、抗エストロゲン剤や黄体ホルモン剤等を用いたホルモン療法が試みられている。【0006】このうち抗エストロゲン剤としては、タモキシフェンおよびその誘導体が試されているが、これらの薬物については、子宮体癌細胞株の細胞増殖をむしろ亢進するとの報告があり、また、乳癌の化学療法において補助的にタモキシフェンを長期投与したところ、子宮体癌の発生危険度を高めたとする報告がなされており、子宮体癌細胞のホルモン剤に対する感受性も一様でないことから、未だ子宮体癌に対する有効性は確立していない(ガーピッド、ジャーナル・オブ・ナチュラル・キャンサー・インスティテュート(同上))。【0007】一方、黄体ホルモン剤としては、経口投与が可能な17α−ヒドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロン等が検討されてきている。これらのうち、近年、メドロキシプロゲステロンが、大量経口投与(一日あたり 400〜 600mg)により、子宮体癌に対して治療効果を示すことが明らかにされ(栗原ら、産婦人科の実際、第34巻、 517〜 536頁、1985年)、高用量の製剤が開発され発売されるに至っている。しかしながら、メドロキシプロゲステロンの大量投与によっても、子宮体癌に対する奏功率は23.6%にとどまっている(栗原ら、産婦人科の実際、同上)。また、メドロキシプロゲステロンが有するコルチコイド作用やアンドロゲン作用に基づくと考えられる副作用が問題視され、慎重な使用を余儀なくされている(岡田ら、産婦人科の実際、第38巻、4号、 575〜 582頁、1989年)。【0008】また、殆ど全ての乳癌と前立腺癌は、エストロゲンとアンドロゲンの作用を受けて発生すると考えられている。乳癌に対する薬物療法においても、これまで子宮体癌の治療と同様に、抗エストロゲン剤や黄体ホルモン剤を用いたホルモン療法が試みられている。抗エストロゲン剤としては、タモキシフェンおよびその誘導体が代表的なものであるが、白血球減少、高カルシウム血症等の血液異常や先述した長期投与による子宮体癌の発生の危険性が報告されており、必ずしも最適な治療剤とは言えない。黄体ホルモン剤としては、上記のメドロキシプロゲステロンが挙げられるが、やはり大量投与(一日あたり 600〜1,200mg )が必要であり、先述のコルチコイド作用やアンドロゲン作用に基づくと考えられる副作用が問題となる。前立腺癌については、エストロゲン製剤の他黄体ホルモン剤による治療も試みられている。【0009】なお、最近こうした性ホルモン依存性癌、とりわけ子宮体癌と乳癌の治療においてメドロキシプロゲステロンを大量投与したところ、副作用として、脳・心臓・肺等において重篤な血栓症が生じることが報告されており、厚生省薬務局安全課からも、メドロキシプロゲステロンの使用に際しては血栓症の発現に十分留意する必要があるとの注意がなされている(医薬品研究、23巻、5号、 664〜 671頁、1992年)。【0010】【発明が解決しようとする課題】上述したように、性ホルモン依存性癌に対するホルモン療法においては、現状では十分な有効率が得られておらず、かつ重篤な副作用が問題視されている。今後これらの癌に対するホルモン療法をより有効に、且つより安全に行なわしめるためには、従来のホルモン療法に反応しにくい性ホルモン依存性癌を含め、より幅広い治療効果を示す新しいタイプの薬理作用を有する薬物の開発が急務である。しかも、より低用量で治療効果を有し、従来のホルモン治療剤が有しているアンドロゲン作用やコルチコイド作用による血栓症、冠動脈心疾患、動脈硬化、クッシング症候群、あるいはムーンフェイス等の副作用がより少ない薬物の開発が望まれる。【0011】【課題を解決するための手段】かかる状況に鑑み、本発明者らは、従来の薬物に比し子宮体癌あるいは乳癌を始めとする性ホルモン依存性癌に幅広く有効で、より有効性が高く、同時に、副作用が少ない治療薬を目指して鋭意研究をすすめてきた。そしてついに、ジエノゲストが、株化したヒト由来の性ホルモン依存性癌細胞の増殖を、メドロキシプロゲステロンやタモキシフェンより強力に、はるかに低い用量で抑制することを見出した。しかも、ジエノゲストは、メドロキシプロゲステロンが全く奏功しない株化した癌細胞の増殖に対しても、明らかな増殖抑制作用を示した。そして今回、新たにジエノゲストがコルチコイド作用を有していないことを見出し、副作用がより少ない薬物であることを明らかにし、本発明を完成させたものである。【0012】本発明は、上記のように、従来薬よりも有効性が期待されかつ副作用の少ない、ジエノゲストを有効成分とするホルモン療法用制癌剤、ジエノゲストを有効成分とする性ホルモン依存性癌治療剤、ジエノゲストを有効成分とする子宮体癌および/または乳癌治療剤を提供することを目的とする。本発明の制癌剤の有効成分となるジエノゲストは、下記式(I)の構造を有する化合物である。また、ジエノゲストは、水、エタノール、グリセロール、酢酸等の製薬学上許容される種々の溶媒と溶媒和物を形成し得る。【0013】【化2】【0014】すなわち、本発明は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とするホルモン療法用制癌剤(癌のホルモン療法のための薬剤)である。また、本発明は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする性ホルモン依存性癌治療剤である。さらに、本発明は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする子宮体癌および/または乳癌治療剤である。さらにまた、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする子宮体癌治療剤である。加えて、本発明は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乳癌治療剤である。本発明はまた、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を、ホルモン療法用制癌剤、性ホルモン依存性癌治療剤、子宮体癌および/または乳癌治療剤の製造に使用する発明でもある。さらには、本発明は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とするホルモン療法用制癌剤、性ホルモン依存性癌治療剤、子宮体癌および/または乳癌治療剤の製造方法でもある。【0015】【実施例】次に、本発明の制癌剤の効果を、下記の実験例によって具体的に示す。なお比較に用いた薬物の内、メドロキシプロゲステロンは、ジエノゲスト同様経口投与が可能であり、かつ本邦においてホルモン療法薬として子宮体癌への適応が唯一認可されている薬物である。【0016】(実験例1) ヒト分化型子宮体癌由来株細胞(イシカワ株)に対する増殖抑制作用体重17〜27gのCB−17スキッド系雌マウス、およびヒト分化型子宮体癌由来株細胞であるイシカワ株(ホリンカ(Holinka) ら、ジャーナル・オブ・ステロイド・バイオケミストリー(J. Steroid Biochem.) 、第24巻、1号、85〜89頁、1986年)を使用した。当該培養株細胞をマウスに背部皮下移植し、体積 1,000mm3 以上の癌を形成したことを確認した後、この移植癌を摘出、細切し、他のマウス35匹に、1匹当り40mgを背部皮下に移植した。移植した癌の体積が75mm3 以上に達した時点で表1に示す薬物を投与した。【0017】すなわち、全例の両側卵巣を麻酔下に摘除した後、1群5匹で7に群分けした(第1群〜第7群)。第1群には薬物投与を行わず、第2〜7群に17β−エストラジオールを生理食塩水に懸濁し、体重10g当り5μgを連日腹腔内投与した。このうち、第2群には溶媒( 0.5%カルボキシメチルセルロース溶液、以下0.5% CMCと略す)を投与して対照群とし、第3〜7群に0.5% CMCに溶解もしくは懸濁した被験薬物を、ジエノゲストは 0.01mg/kg〜 10mg/kgの投与量で、また、メドロキシプロゲステロンは100mg/kgの投与量で、4週間、連日経口投与した。4週間の薬物処置後に癌の体積を測定し、使用薬物の子宮体癌細胞の増殖に対する抑制率(%)を、下記の計算式(A)より算出した。結果を表1に示す。【0018】【0019】表1に示す結果より明らかな如く、メドロキシプロゲステロンを 100mg/kg 投与しても、子宮体癌由来細胞(イシカワ株)の増殖に対する抑制率は70%にとどまったのに対し、ジエノゲストの投与群においては、0.1mg/kg以上の投与量のいずれにおいても、子宮体癌由来細胞(イシカワ株)の増殖はほぼ完全に抑制された。従って、ジエノゲストは、メドロキシプロゲステロンに比し、1/10,000〜1/1,000 という低い用量を使用したにもかかわらず、子宮体癌由来細胞(イシカワ株)の増殖に対する治療効果はより強力であった。【0020】(実験例2) ヒト分化型子宮体癌由来株細胞(Hec88-nu株)に対する増殖抑制作用体重19〜28gのCB−17スキッド系雌マウス、およびヒト分化型子宮体癌由来株細胞であるHec88-nu株(森沢ら、日臨細胞誌、第26巻、3号、 433〜 442頁、1987年)を使用した。Hec88-nu細胞は、黄体ホルモン剤であるメドロキシプロゲステロンで増殖が抑制されないことが知られている(加藤ら、ヒューマン・セル(Hum. Cell) 、第4巻、2号、 165〜 170頁、1991年)。当該培養株細胞を用いて、実験例1と同様にマウス背部皮下において移植癌とした後、他のマウス35匹に、1匹当り40mgを背部皮下に移植した。癌の体積が75mm3 以上に達した時点で表2に示す薬物を処置した。【0021】すなわち、全例の両側卵巣を麻酔下に摘除した後、1群4〜5匹に群分け(第1群〜第8群)した。第1群には薬物投与を行わず、第2〜8群に17β−エストラジオールを生理食塩水に懸濁し、体重10g当り5μgを連日腹腔内投与した。このうち、第2群には溶媒(0.5% CMC)を投与して対照群とし、第3〜8群に0.5% CMCに溶解もしくは懸濁した被験薬物を、実験例1と同様に、4週間、連日経口投与した。4週間の薬物処置後に癌の体積を測定し、各使用薬物の子宮体癌細胞(Hec88-nu)増殖に対する抑制率を、実験例1と同様に上記計算式(A)より算出した。結果を表2に示す。【0022】【0023】表2に示す結果より明らかな如く、ジエノゲストは、Hec88-nu癌細胞の増殖を0.01mg/kg という低い投与量においても50%以上抑制した。一方、メドロキシプロゲステロンは、従来知られる如く、Hec88-nu癌細胞の増殖に対し、100mg/kg投与しても、癌増殖抑制作用を全く示さなかった。また、タモシキフェンについても10mg/kg まで投与しても、Hec88-nu癌細胞の増殖の抑制は見られなかった。この結果、本発明の制癌剤は、従来の黄体ホルモン剤あるいは抗エストロゲン剤と異なる癌増殖抑制作用機序を有し、従来のホルモン療法に反応しにくい癌に対しても有効であることが推察された。【0024】(実験例3) ジエノゲストのヒト乳癌株細胞(MCF-7) に対する増殖抑制作用体重17〜25gのCB−17スキッド系雌マウス、およびヒト乳癌由来細胞株であるMCF-7 株(ソウレ(Soule) ら、ジャーナル・オブ・ナチュラル・キャンサー・インスティテュート(J. Natl. Cancer Inst.) 、第51巻、1409〜1413頁、1973年)を使用した。当該培養株細胞を用いて、実験例1と同様にマウス背部皮下において移植癌とした後、他のマウス30匹に、1匹当り80mgを左側背部皮下に移植した。生理食塩水に懸濁した17β−エストラジオール 0.5mg/kg/日をマウスに連日腹腔内投与した。癌の体積が100mm3以上に達した時点で以下の薬物で処理した。【0025】すなわち、全例の両側卵巣を麻酔下に摘除した後、1群5匹で6に群分けした(第1群〜第6群)。第1群には薬物投与を行わず、第2〜6群に17β−エストラジオールを生理食塩水に懸濁し、体重10g当り5μgを連日腹腔内投与した。このうち、第2群には溶媒を投与して対照群とし、第3〜6群に0.5% CMCに溶解もしくは懸濁した被験薬物を、ジエノゲストは 0.01mg/kg〜0.1mg/kgの投与量で、また、メドロキシプロゲステロンは100mg/kg、タモキシフェンは10mg/kg の投与量で、4週間、連日経口投与した。4週間の薬物処置後に癌の体積を測定し、使用薬物の乳癌細胞の増殖に対する抑制率を、実験例1と同様に上記計算式(A)より算出した。結果を表3に示す。【0026】【0027】表3に示す結果から、メドロキシプロゲステロンを100mg/kgあるいはタモキシフェンを10mg/kg 投与しても乳癌細胞の増殖を十分に抑制することはできなかった。これに対し、ジエノゲストは0.01mg/kg 〜0.1mg/kg、すなわちメドロキシプロゲステロンに対しては1/10,000〜1/1,000 、タモキシフェンに対しては 1/1,000〜 1/100のごく僅かな用量で、乳癌由来細胞( MCF-7)の増殖をほぼ完全に抑制した。したがってジエノゲストは、子宮体癌のみならず乳癌等に対しても従来薬に比して著しく優れた有用性が期待される。【0028】(実験例4) ジエノゲストにおけるコルチコイド作用の有無の確認体重 170〜210gのウィスター系雄性ラットを1群6匹として使用した。麻酔下に両側副腎を摘除後、被験薬物を実験例1と同様に調製して、ジエノゲストは10〜100mg/kgの投与量で1回経口投与し、あるいはゴマ油に溶解したデキサメサゾン(0.1mg/kg)またはアルドステロン(0.025 mg/kg) を皮下投与した。対照群には、同量の表4に示す溶媒を投与した。被験薬物処置に引き続いて生理食塩水30ml/kg を腹腔内投与した後、4時間蓄尿し、尿量ならびに尿中電解質濃度を測定した。コルチコイド作用の指標として、尿量および尿中ナトリウムイオン/カリウムイオン排泄量比(Na/K比)を算出した。結果を表4に示す。【0029】【0030】表4に示す結果より明らかなように、ジエノゲストは100mg/kgという高容量で投与しても、尿量および尿中Na/K比共に対照群と差がなく、デキサメサゾンに代表されるグルココルチコイド作用、ならびにアルドステロンに代表されるミネラルコルチコイド作用のいずれも認められなかった。【0031】(実験例5) ジエノゲストと従来薬とのアンドロゲン作用の比較体重40〜60gのウイスター今道系雄ラットを1群5〜6匹として使用した。麻酔下に精巣を摘除した後、被験薬物を実験例1と同様に調製し、ジエノゲストは10〜100mg/kgの投与量で、またメドロキシプロゲステロンは30〜300mg/kgの投与量で経口投与した。対照群には、同量の溶媒(0.5% CMC)を投与した。7日間連日投与した後、腹側前立腺を摘出し、重量を測定した。アンドロゲン作用の指標として、対照群の前立腺平均重量に対する、薬物処置群の前立腺平均重量の増加率を算出した。結果を表5に示す。【0032】【0033】表5に示す結果より、ジエノゲストを100mg/kgという高用量で投与しても明かなアンドロゲン作用は認められなかった。一方、メドロキシプロゲステロンは、100mg/kg以上の投与量で前立腺重量を50%以上増加させ、明らかなアンドロゲン作用が認められた。以上よりジエノゲストは、アンドロゲン作用に基づく副作用を生じさせる可能性がメドロキシプロゲステロンよりはるかに少ないと考えられた。なお、ジエノゲストの抗エストロゲン作用はごく僅かであることが、前出のシュバートら、ナチュラル・プロダクツ・ケミストリー(Natural Products Chemistry, 1984年) の 143〜 158頁に報告されており、実験例2ないし3の結果とあわせて考慮すると、本発明の制癌剤の効果を抗エストロゲン作用の面からも単純には説明できないことが理解される。【0034】以上の実験結果より、ジエノゲストは、従来の黄体ホルモン剤あるいは抗エストロゲン剤が効かない動物モデルにおいても、従来薬に比し非常に低用量で優れた抑制効果を発揮した。このことから、本発明の制癌剤は、従来の黄体ホルモン剤あるいは抗エストロゲン剤とは異なる作用機序を有すると推察され、従来のホルモン療法に反応しにくい性ホルモン依存性癌に対しても有効性を期待し得ると考えられる。更に、本発明の制癌剤はアンドロゲン作用ならびにコルチコイド作用を殆ど持たないため、血栓症、冠動脈心疾患、動脈硬化、クッシング症候群、ムーンフェイス等の副作用の少ない安全な薬剤であると期待される。また、本発明制癌剤のその他の未知の副作用についても、本実験例1〜3において示されたジエノゲストの性ホルモン依存性癌の増殖防止に必要な用量が、ドイツにおいて経口避妊薬として使用される本薬物の臨床用量(1日投与量2mg)にほぼ匹敵する用量であり、子宮内膜症治療薬としての臨床治験(1日投与量2mg)においても安全性が確認されていることから、何ら問題ないと考えられる。【0035】次に本発明の制癌剤の投与形態に付いて述べる。本発明の制癌剤は、単独で投与するかもしくは他の薬物と併用することが可能である。具体的な投与の形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、糖または剤皮で皮膜された錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液体状の溶液または懸濁剤、乳濁剤、脂肪乳剤、軟膏剤等の形態で、経口的あるいは非経口的に用いられるほか、坐剤として直腸内または腟内に、注射剤として筋肉内、静脈内に投与されうる。また、パッチ剤、テープ剤、皮内埋め込み型等の徐放性製剤とすることもできる。投与量は、成人一日あたり、約0.05〜100mg 好ましくは 0.5〜10mgで一日あたり1〜5回に分けて投与されるが、患者の年齢、体重、健康状態および投与経路により、投与量、投与回数ともに調節できる。【0036】本発明の制癌剤は、従来のホルモン療法の種々の態様で用いられる。すなわち性ホルモン依存性癌に対して単独で使用される他、既存のホルモン療法用制癌剤と組み合わせた投与方法、化学療法剤との併用(いわゆるホルモン化学療法)、手術の補助ホルモン療法等の各使用態様が挙げられ、当該癌の予防、治療あるいは再発防止等の目的で供される。以下に、本発明の実施例を示す。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。【0037】(実施例1)ジエノゲスト 0.5g乳糖 92.5gコーンスターチ 49.0gタルク 3.0gステアリン酸マグネシウム 5.0g上記成分を適宜混合し、湿式顆粒圧縮法により1錠あたりジエノゲスト0.50mgを含有する 150mgの錠剤となす。【0038】(実施例2)ジエノゲスト 2.0g乳糖 87.0gコーンスターチ 6.0gステアリン酸マグネシウム 5.0g上記成分を混合し、 100mgずつを日本薬局方3号カプセルに封入し、カプセル剤となす。【0039】(実施例3)ジエノゲスト 1.0gポリソルベート80 1.0gウィテップゾール(S−55) 98.0g上記成分を加温下練合し、プラスチックパッケージに封入して、1ヶあたり重量1.0gの坐剤となす。【0040】(実施例4)ジエノゲスト 1.0gポリオキシエチレンラウリルエーテル 39.0gグリセリン 20.0g上記成分を適宜溶融練合し、パッケージに封入して、1ヶあたり重量1.0gの坐剤となす。【0041】【発明の効果】本発明の制癌剤により、子宮体癌あるいは乳癌を始めとする性ホルモン依存性癌の治療において、従来のホルモン療法用制癌剤よりも極めて少ない投与量で、同等以上の治療効果を期待できる。従って従来のホルモン療法剤における大量投与に伴う副作用が、本剤では全く問題にならない。更に、本発明の制癌剤は、従来の黄体ホルモン剤あるいは抗エストロゲン剤とは異なる作用機序を有すると推察され、従来のホルモン療法に反応しなかった症例についても、幅広い有効性が期待できる。本発明の薬剤は、癌細胞に対する特異性が極めて高く副作用が少なく、少量で有効であるため、従来薬に比して安心して長期間投与することができる。 ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とするホルモン療法用制癌剤。 ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする性ホルモン依存性癌治療剤。 前期性ホルモン依存性癌が、子宮体癌、乳癌、前立腺癌、および/または甲状腺癌である請求項2記載の性ホルモン依存性癌治療剤。 ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする子宮体癌および/または乳癌治療剤。 ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする子宮体癌治療剤。 ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乳癌治療剤。


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