タイトル: | 特許公報(B2)_臨床検査用複合酵素含有組成物 |
出願番号: | 1994277617 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/42,C12Q1/32,C12Q1/48,C12Q1/50,C12Q1/52,G01N33/50 |
青木 亮治 植田 成 JP 3625503 特許公報(B2) 20041210 1994277617 19941111 臨床検査用複合酵素含有組成物 旭化成ファーマ株式会社 303046299 青木 亮治 植田 成 20050302 7 C12Q1/42 C12Q1/32 C12Q1/48 C12Q1/50 C12Q1/52 G01N33/50 JP C12Q1/42 C12Q1/32 C12Q1/48 A C12Q1/50 C12Q1/52 G01N33/50 7 C12Q 1/00ー70 G01N 33/00-98 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 9 1996131196 19960528 15 20010625 斎藤 真由美 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、安定化剤としてトレハロースおよびソルビトールより選ばれた糖類およびアルブミンを含み、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素および含水媒体を含有する安定化された臨床検査用複合酵素組成物であって、臨床検査において、精度管理や検量用等に用いられる有用な組成物に関する。【0002】【従来の技術】現在、臨床検査用酵素含有組成物として、精度管理のためのコントロール(管理血清)ならびに、各施設間差是正のために用いられるリファレンス・マテリアル(標準物質)、さらに両者の中間的なものとして酵素活性値を得るために行う目盛り付けのための試料であるキャリブレーターが、多数市販されている。また、これらは、ヒトプール血清、動物プール血清、ヒトアルブミン、またはウシ血清アルブミン等をマトリックスとし、これに検査すべき酵素成分に対応する酵素を添加し調製される。【0003】添加される酵素の由来は、種々の動物臓器やヒト由来のものが報告されている。例えば、現在市販されているものとして、動物由来酵素をヒトプール血清に添加した「モニトロール」(登録商標;国際試薬(株))が凍結乾燥品で、「モニトロールL」(国際試薬(株))が凍結液状品で、コントロールとして用いられている。また、リファレンスとしては、ヒトプール血清にヒト赤血球由来酵素やヒト株化細胞由来酵素を添加した「セラクリアHE」(商品名;日本商事(株)製)や、ウシ血清アルブミンに上記ヒト由来酵素を添加した「酵素リファレンス」等が市販されている。この中でヒトプール血清をマトリックスに用いる場合は、HIVを始め、既知、未知のウイルスの混入の危険性が皆無ではなく、バイオハザード面での細心の注意が必要である。【0004】これらの酵素含有組成物は、それに対応する酵素活性測定試薬により酵素活性を測定するが、その使用目的により求められる性能が異なる。一般的に、酵素活性のような触媒能の量を測定する場合、基質の濃度や種類、またpH、温度等の反応環境により、大きく値が異なる。従って、臨床診断薬のように、血清等の検体の中の酵素活性の値を、病態把握の判定の一助として用いる場合、前述のように測定環境により値が異なるということは致命的である。現実に、種々の測定試薬が多数のメーカーより市販されており、そのため、例えば、同じ検体を、複数の試薬で測定した場合、その試薬の反応環境に著しく差がある場合、異なる値が得られ、徒に混乱を招くだけとなる。【0005】そのため、測定法の細部にわたる条件の統一を合意に基づいて定めた、いわゆる勧告法(recommended method)が学会により決められている。その例として、国際臨床化学連合(IFCC)勧告法、日本臨床化学会(JSCC)勧告法等がある。ところが、この勧告法は、用手法であり、一日に膨大な数の検査をとりおこなう検査室ではとうてい実施できるものではない。そこで、勧告法の有する正確さを直接伝えるものとして、リファレンス・マテリアルの必要性が生じる。これにより、リファレンス・マテリアルを用いて勧告法にて測定された値を、日常一般に自動分析機を用いて測定される市販試薬との校正に用いれば、反応環境の差異によらず同一検体の酵素活性をより正確に求め得ることができる。【0006】このように、リファレンス・マテリアルは、勧告法と日常一般法とのバイアスとなるもので、それに求められる性能としては、ヒトの検体と同じ性質を示すものが望まれる。近年、検査データの互換性の面から、リファレンス・マテリアルの重要性が特に強調されてきており、ヒト由来酵素を用いた製品も市販されている。しかしながら、一口に、ヒト由来酵素といっても、臓器特異性などの面から、酵素作用は同一でも性質の違うアイソザイムとして複数種存在する酵素もあり、さらに、個人、病態により、血清に含まれる量も異なり、その事情は複雑である。【0007】例えば、アルカリホスファターゼは、骨、肝、胎盤、小腸、腫瘍細胞からの逸脱、等の由来があり、これらの酵素は、使用する緩衝液の種類によって得られる活性値が大きく異なることが知られている。一方、コントロールは日常検査において各測定現場での精度管理のために用いられており、試薬や機器類の異常をチェックするためのものであり、酵素活性の値そのものよりもその値のが測定期間中変動しないことが要求される。さらに、キャリブレーターは、リファレンス・マテリアルとコントロールの中間に位置づけることができ、ある特定の試薬を使用した場合の検量用物質として用いられる。【0008】これらの臨床検査用酵素含有組成物は、通常、凍結乾燥品や液状品、凍結品として流通されている。このうち凍結乾燥品は、凍結乾燥品としての保存安定性にはすぐれているものの、凍結乾燥時のリポ蛋白の変性により、溶解時に濁りが生じたり、容量誤差が生じやすい等の問題点がある。また、含有する酵素の溶解課程における活性の変動が少なくなかった。例えば、凍結乾燥品の場合、同一ロットでのバイアル間差が大きいことが報告されている(検査と技術、vol.20、No.12、1041、1992)。また、より具体的には、特にアルカリホスファターゼが大きな問題を抱えている。例えば、アルカリホスファターゼは血清中のリポ蛋白の影響を受けて可逆的に失活するという現象が指摘されている。また、市販管理血清の凍結乾燥品において、溶解後25℃、24時間以内にかなりの活性上昇が認められている(生物試料分析、vol.14、No.2、1991)。このように凍結乾燥品に限れば、アルカリホスファターゼに関しては、溶解後の活性値変動に関して満足な性能を有するものは皆無であった。また、溶解液(通常は水)の温度と活性値への影響も指摘されている。例えば、クレアチンキナーゼに関して、2〜8℃の溶解液で溶解したもののほうが室温の溶解液で溶解した場合よりも高活性値を示したとの報告もある(臨床検査機器.試薬、vol.15、No.4、1992)。これらを総合すると、凍結乾燥品の場合、溶解後の安定性について、おおむね1日から2日程度の使用に限られていた。【0009】これに対して、液状品や凍結品は溶解液(通常は水)に溶かす必要がないため操作が簡便であり、溶解時の誤差がなく、上記凍結乾燥品の課題であった溶解過程における酵素活性の変動は少なくなった。凍結品の場合は使用に際して解凍操作が必要であるのに対し、液状品は、手を加えずにそのまま使用することができるため、近年、臨床生化学検査分野でもその比率が高まりつつあり、そのまま使用できることから無調製試薬という呼び方もされている。この無調製試薬は、溶解や解凍の手間が省けるので、ひいては検査室の省力化、合理化につながる。【0010】従って管理血清においても無調製化は必然の方向である。しかし、コントロール、リファレンス・マテリアル等の酵素含有組成物の場合は現状では無調整試薬としての技術レベルには達しておらず、流通と保存は凍結品の形態をとっているのが現状である。しかし、これらの製品でもアルカリホスファターゼに関して、溶解後の活性が徐々に上昇するとの報告が(検査と技術、vol.20、No.12、p1039、1992年)、また、クレアチンキナーゼに関しても−20℃の凍結で、1〜3ヶ月間以降は活性が低下するとの報告(検査と技術、vol.21、No.5、1993年増刊号)もあり、必ずしも満足のいくものではない。【0011】臨床意義としてのアルカリホスファターゼは、腫瘍マーカーのみならず、各種病態情報としてきわめて多彩である。また、クレアチンキナーゼは、3種のアイソザイムをもち、現在臨床検査で広く測定されている酵素、例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなどと比較してその局在臓器の特異性がきわめて高く、骨格筋、心筋、平滑筋、脳にその大部分が存在する。従って、クレアチンキナーゼを測定することによりこれに関連した損傷臓器の推定が容易に可能である。従って、特に、凍結品や液状品としてのアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼの安定化酵素含有組成物が望まれている。【0012】一般に、酵素はタンパク質であり、その溶液は不安定である。その解決のための一手段として、酵素を好熱性の微生物の培養により取得することが行われている。これは、これらの微生物が作る酵素がもともと熱に対し安定であるためである。また、タンパク質工学等の手法を用い、熱に安定なタンパク質を遺伝子、アミノ酸、立体構造などの情報をもとにデザインし、改変することも近年可能になりつつある。また、他の手段としては酵素溶液の環境を整えることで安定化が図られている。【0013】例えば、一般的な安定化剤としてグリセロールをはじめとするポリオール類が知られている。しかし、酵素の種類は膨大であり、また、至適pHが異なる等その性質も多様であり、全てについて適応可能な安定剤というものはない。実際に、特定の酵素に関しての安定化方法についてはこれまでにも種々の報告がある。例えば、特開平5−207880号公報には非反応性スルフヒドリル基を有するタンパク質を用いるクレアチンキナーゼの安定化組成物が、米国特許第5298406号明細書には抗酸化剤としてアスコルビン酸、非還元性ポリオール、および抗菌剤を含有するクレアチンキナーゼの組成物が、クレアチンキナーゼ単独の安定化組成物として述べられている。これらは、いずれもクレアチンキナーゼの活性発現に必須のSH基を安定化させるための組成物である。ところが、酵素が2種類以上共存する場合、ある酵素にとっての安定化条件が、他の酵素にとっての不安定化要素となることが多々あり、このため、含有する酵素全てに対する安定化条件を見いだすことは困難である。例えば、アルカリホスファターゼは、その活性化にマグネシウムイオンが必須であることが知られており(酵素ハンドブック(朝倉書店)、p434、1983)、また、マグネシウムイオンは安定化作用も有する。【0014】一方で、クレアチンキナーゼの保存安定性はキレート試薬の添加により増大することが知られている(Clin.Chem.、23、1119、1977)。これは、キレート試薬によりマグネシウムイオン等の金属がトラップされるためと考えられ、両酵素の安定化剤は相反する性質をもつ。また、クレアチンキナーゼは前述したようにSH酵素であるため、システイン、メルカプトエタノール、N−アセチルシステインや上記特許公開公報記載のシステイニル−ウシ血清アルブミン等のチオール化合物の共存下で安定化される。ところが、N−アセチルシステインやシステイニル−ウシ血清アルブミンはアルカリホスファターゼにとっては逆に不安定化因子となる(実施例1参照)。【0015】また、溶液状態での安定化条件と、凍結状態での安定化条件は、一般には異なり、両者を満足させる条件を見いだすこともまた困難である。例えば、アルカリホスファターゼについて、シュクロースの添加により溶液での安定性は向上するが、凍結保存安定性は逆に低下した(実施例5参照)。また、酵素は一般にはより低温の状態で安定であるが、乳酸デヒドロゲナーゼのように低温で不安定である(臨床化学、vol.19、No.2、1990)酵素も中には存在する。【0016】このような状況下、例えば、複数の酵素を含む組成物において、全ての酵素活性を低下させることのない安定化組成物が求められている。特に、リファレンス・マテリアル、キャリブレーター、コントロールとして精度管理や検量のために用いられる酵素含有組成物は、通常の検査薬キットの分析試薬の場合のように、あらかじめ活性低下を見込んで大過剰量の酵素を添加すればよいというものではなく、酵素活性の力価そのものの変動の有無がその商品価値を決める大きな要因となる。近年、検査室の合理化、省力化のために、酵素をより安定化させた即使用可能な無調製試薬キットが開発されているが、精度管理や検量のための酵素含有組成物試薬はこれらに比べ、酵素濃度も極めて薄いこと、酵素活性のわずかの低下でもその商品価値を失うことなどから、その安定化はより困難であり、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素組成物、とりわけ、アルカリホスファターゼとクレアチンキナーゼの混合組成物での両酵素共の安定化が望まれている。【0017】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素を含む複数の酵素含有組成物において、タンパク質としてアルブミンおよび糖としてソルビトールまたはトレハロースを含む、調整後の溶液の安定性と凍結保存安定性、および凍結保存を経た解凍後の安定性に優れた実用性、経済性に富む臨床検査用酵素含有液状組成物を提供することである。【0018】【課題を解決するための手段】上記の状況に鑑み本発明者らは、鋭意研究した結果、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素を含む精度管理または/および検量のための酵素含有組成物の安定化組成物について、種々のマトリックスを検討した結果、ある種の添加剤を組み合わせて用いることにより、凍結品としての安定性にすぐれ、かつ解凍液の安定性にもすぐれた液状および凍結組成物となすことができ、本発明を完成するに至った。【0019】即ち、本発明の目的は、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素を含む複合酵素含有組成物に含まれるすべての酵素を安定化させることにより、従来に比し、経済性に富み、かつ測定値の変動の範囲が狭く、検査精度を管理する上で、信頼度の高い検査を行うことを可能とするコントロール、キャリブレーター、またはリファレンス・マテリアルとして有用な臨床検査用酵素含有液状組成物を提供することにある。【0020】より具体的には、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素を含む複合酵素含有組成物に対して、意外にも、ある種の糖、アルブミンの併用により、凍結された状態での安定性のみならず、凍結を経る経ないにかかわらず冷蔵溶液の状態での安定性においても優れていることを見いだし本発明を完成させるに至った。【0021】本発明は、このような状況に鑑み完成されたものであり、安定化剤としてトレハロースおよびソルビトールより選ばれた糖類およびアルブミンを含み、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種以上の酵素および含水媒体を含有する安定化された臨床検査用複合酵素組成物である。【0022】本発明における該酵素組成物としてはアルカリホスファターゼ(ALP)(EC.3.1.3.1)、クレアチンキナーゼ(CK)(EC.2.7.3.2)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(EC.2.6.1.2)からなる群より選ばれる2種以上の酵素を含む複合酵素含有組成物、好適にはALPとCKの2種を包含する複合酵素含有組成物、ALPとCKとALTの3種を包含する複合酵素含有組成物が挙げられ、さらにこれらの複合酵素含有組成物以外に、好ましくは、▲1▼アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)(EC.2.6.1.1)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(EC.1.1.1.27)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)(EC.2.3.2.2)を含む組成物、▲2▼アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む組成物、を提供することである。【0023】次に、本発明に用いることのできるアルブミンとしては、例えばヒトやウシ血清アルブミン(BSA)をはじめとした哺乳動物、またニワトリ血清アルブミン等の鳥類等のアルブミンを使用することができる。これらは市販されているものをそのまま用いればよく、その濃度としては好ましくは、0.3〜7(W/V)%、特に1〜5(W/V)%が好ましい。【0024】また、糖としては、ソルビトール、トレハロースが特に好ましく、糖の濃度としては2〜15%、特に3〜10%が好ましい。また、この糖濃度が低い場合には、充分な安定化効果は示さず、高い場合には、粘度調整が困難となるために、上記使用範囲内を使用する。これらは必要に応じ2種類の混合物として用いることもできる。【0025】また、本発明組成物に用いる酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、クレアチンキナーゼ(CK)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)からなる群より選ばれる2種以上の酵素を必須とする複合酵素組成物としてなり、好ましくは、▲1▼アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)を含む組成物、▲2▼アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む組成物、が挙げられる。【0026】これらに記載の酵素としては、その起源については、液状および凍結組成物としての用途に合致すれば特に限定されないが、動物起源、好ましくはヒト起源が望ましい。動物由来としては、例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)についてはウシ腎臓(シグマ製カタログナンバーP6680)、ウシ腸(シグマ製カタログナンバーP0280)、ブタ腎臓(シグマ製カタログナンバーP4439)、ニワトリ小腸(シグマ製P8008)などが、クレアチンキナーゼ(CK)についてはウシ心臓(シグマ製C7886)、ブタ心臓(商品名;モニトロール(L)(国際試薬))、ニワトリ心臓(商品名;コントロールワコー(和光純薬工業(株))、ウサギ筋肉(シグマ製C3755)などが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の由来としてはウシ心臓(商品名;モニトロールII(国際試薬))、ブタ心臓(シグマ製G2751)などが、またアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)についてはウシ心臓(商品名;モニトロールII(国際試薬))、ブタ心臓(シグマ製G8225)などが、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)についてはニワトリ心臓(シグマ製L9126)、ブタ心臓(シグマ製L2881)などが、さらにγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)についてはウシ腎臓(シグマ製G4135)、ブタ腎臓(シグマ製G2262)等が挙げられる。【0027】また、ヒト起源としては、血清、赤血球、尿等の生体材料より取得したもののみならず、ヒト由来細胞を培養したもの、またはヒト由来酵素の遺伝子を組み込んだ形質転換体の培養により取得することもできる。例えば、生体材料として赤血球からAST、LDHを、また尿からはγーGTPを取得することができる。ヒト由来細胞の好適な例としてはヒト肝癌細胞株BRL68(ATCCCL−48)、ヒトバーキットリンパ腫細胞株ナマルバ細胞(ATTCCRL−1432)、ヒト骨髄性白血病細胞株HL−60(ATTCCCL−240)等であり、これらの培養物から適宜上記の酵素を取得することができる。【0028】また、上記酵素に関しては、動物やヒト由来cDNA遺伝子が種々報告されているので、これらの遺伝子を組み込んだ形質転換体として酵素活性を発現させることにより取得することもできる。この際、形質転換体としては、ヒト細胞のみならず、チャイニーズハムスター由来細胞CHO等のヒト以外の動物細胞はもとより大腸菌等の微生物を用いることもできる。これら動物起源またはヒト生体材料や細胞培養等により生産された各種の酵素は、市販されたもの以外の場合、カラムクロマトグラフィ法等の種々の確立された精製法を組合せ、実用上問題にならない程度に純度を高め本目的に使用すればよい。【0029】本発明におけるこれらの酵素の添加量は、ALPが9u/l〜6500u/l、特に好ましくは45u/l〜1300u/l、CKが6u/l〜4000u/l、特に好ましくは30u/l〜800u/l、ALTが3u/l〜1150u/l、特に好ましくは13u/l〜230u/l、ASTが3u/l〜1150u/l、特に好ましくは13u/l〜230u/l、LDHが8u/l〜4000u/l、特に好ましくは40u/l〜800u/l、γ−GTPが2u/l〜1200u/l、特に好ましくは10u/l〜240u/lである。【0030】なお、酵素活性は37℃にて1μmolの基質を変化させる酵素量を1uとして、ALP、CK、ALT、AST、LDHについては日本臨床化学会勧告法(臨床化学、19巻、p209、p184(1990)、同18巻、p211、p226(1989)、同19巻、p228(1990)における測定温度30℃を37℃にした常用基準法にて、またγ−GTPはγ−グルタミル−3,5−ジブロム−4−ヒドロキシアニリドを基質に用いる市販のキットで測定した(デタミナーγ−GTP(協和メディックス(株))。この基質は、γ−GTPの作用により3,5−ジブロム−4−ヒドロキシアニリド(DBHA)を生成させ、生じたDBHAは、モノフェノールモノオキシゲナーゼ(MPO)、例えばアスコルビン酸オキシダーゼ、ラッカーゼなどにより1N−エチル−N−(3−メチルフェノール)−N−サクシニルエチレンジアミン(EMSE)と酸化縮合し、710nmに緑色の発色を示す。この発色強度を定量することによりγ−GTP活性値を求める。【0031】さらに、含水媒体としては、中性付近、好適にはpH7〜8付近の緩衝能を有する水性媒体であれば良く、緩衝剤、例えばPIPES、HEPES、BES等を蒸留水にて溶解し、NaOHでpHを調整したグッド緩衝液や、リン酸緩衝液などを、5〜200mM、特に10〜100mMの濃度で使用すればよい。また防腐剤等も必要に応じて使用することができる。【0032】本発明の複合酵素含有組成物は、使用目的が血清,血漿などの実際の検体との比較において用いられるため、粘度、比重等の物理化学的な性質は実際の検体に近似することが望ましい。例えば、被検体(多くの場合血清)との性状に差があると、自動分析機器のサンプリング誤差を生じ、正確な測定をなしえない(検査と技術、vol.17、No.2、1989)。実際、これらの物性が、安定化剤の添加によって逆に血清とかけ離れてしまう場合も多々ある。【0033】本発明の液状組成物においては、このような事情も考慮し、実際の検体である血清に粘度、比重等を近似させることが容易にできる。実際の血清の粘度、比重は個人により値が異なるが、粘度は1.07〜1.39cP(37℃にて測定)、比重は1.0180〜1.0244(25℃にて測定)であったとの報告がある(HEM研究会記録集、p21、1992年6月)。例えば、糖としてソルビトールまたはトレハロースを用い、アルブミンとしてBSAを用いた場合、BSAが3%の時、ソルビトール3%で、粘度1.18cP、比重1.01839であり、またソルビトール5%で、粘度1.30cP、比重1.02508と上記血清値の範囲内であった。尚、粘度は東機産業製バイオレオラザーを用い、37℃、50rpm、48コーンの条件にて測定し、比重はゲーリュサック型比重瓶を用い25℃にて測定した。【0034】本発明組成物を調整するには、例えば、低温、好ましくは2〜8℃にて、上記濃度範囲の物質を各々秤量し、含水媒体に溶解させ、pHを合わせ液状組成物とすればよい。さらに、該組成物をバイアル瓶等のガラス製容器に1〜10mlずつ分注し、そのまま使用に供するか、または−20℃以下の冷凍機にてできるだけ速やかに凍結し、保存すれば良い。この凍結組成物を解凍するには、室温にて、好ましくは2〜25℃にて自然解凍させ、よく均一化したのち使用に供すればよい。【0035】これらの酵素含有組成物の具体的な使用方法としては、上記バイアル瓶に分注された該組成物を、溶液の場合はそのまま、また凍結の場合は解凍させたのち、その一部を測定のため、例えば自動分析装置用サンプルカップに0.1〜0.5ml程度取り出し、自動分析装置にセットし、血清等検体と同じように各々の酵素活性測定試薬にて測定に供すれば良い。このようにして実際に使用すれば、調製後、1週間以内に使用する場合は、使用時まで冷蔵にて保存(例えば2〜8℃)すればよく、この場合その期間内で、いずれの酵素についても活性の低下が認められず安定であった。また、すぐに使用しない場合には、−20℃以下の凍結状態で保存し、使用時に解凍して用いればよい。この場合−20℃以下の保存で少なくとも15ヶ月はいずれの酵素においても活性の低下が認められず、また解凍後の2〜8℃における安定性についても調製時と同様1週間活性を保持することができた。【0036】すなわち、本発明による複合酵素含有液状組成物は、−20℃以下の凍結では、少なくとも15ヶ月の長期にわたり、また解凍後では2〜8℃保存で少なくとも7日間、いずれの酵素においても活性の低下が認められない、安定で、経済性に富む組成物となし得た。以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明はなんら限定されることはない。【0037】【実施例】各酵素の活性測定は、37℃にて、以下の市販試薬を用いて、γ−GTPは測定試薬に添付されたキャリブレータを用いて、またそれ以外の酵素は実測Kファクター(検査と技術、vol.25、No.5、p223,1993年増刊号)法を用いて酵素活性を算出した。尚、測定機器は日立7070型自動分析装置を使用した。AST ;GOTII−HAテストワコー(和光純薬工業(株)製)ALT ;GPTII−HAテストワコー(和光純薬工業(株)製)γ−GTP;デタミナ−γ−GTP(協和メディックス(株)製)ALP ;ALPII−HAテストワコー(和光純薬工業(株)製)CK ;CPKII−HAテストワコー(和光純薬工業(株)製)LDH ;LDHII−HAテストワコー(和光純薬工業(株)製)【0038】【実施例1】20mM PIPES−NaOH(pH7.5)3% BSA(シグマ製)500u/l・ALP(ブタ腎由来;シグマ製)250u/l・CK (ウサギ筋肉由来;ベーリンガーマンハイム製)上記組成のALP、CK複合酵素含有組成物▲1▼、及び上記組成物に1mMのN−アセチルシステイン(シグマ製)を加えたもの▲2▼、上記組成物に0.5mM塩化マグネシウムを加えたもの▲3▼、上記組成物に5%ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を加えたもの▲4▼、上記組成物に0.5mM塩化マグネシウムと3%ソルビトールを加えたもの▲5▼、を各々調製した。 37℃1日保存後の残存酵素活性を測定した。各々の組成物につきALP、CKの残存活性(%)を表1に示した。【0039】【表1】【0040】表1に示したとおり、BSAのみの組成物▲1▼に比べN−アセチルシステイン添加の▲2▼はCKの残存率は改善されているもののALPに関してはさらに残存率が低下していた。また、塩化マグネシウム添加の▲3▼については逆にCKの残存率が低下していた。これに対して本発明の▲4▼および▲5▼の組成についてはALP、CKともに殆ど活性の低下が認められなかった。【0041】【実施例2】20mM BES−NaOH(pH7.5)3% BSA(シグマ製)0.5mM 塩化マグネシウム2mM アラニン526u/l・ALP(ブタ腎由来;シグマ製)303u/l・CK (ウサギ筋肉由来;ベーリンガーマンハイム製)108u/l・ALT(ブタ心臓;シグマ製)上記組成の複合酵素含有組成物に、おのおの5%になるようにトレハロース、ソルビトール、マンニトール、ガラクトース、ラクトースを添加して、溶液での安定性を5℃保存にて、また凍結での安定性を−20℃保存にて調べた。表2に5℃、3週間後の残存活性(%)を、表3には−20℃、3週間後の残存活性(%)を示した。【0042】【表2】【0043】【表3】【0044】表2に示したとおり溶液の場合は、糖を添加しなかったもの、およびガラクトース、ラクトースでALTが10%程度、マンニトールで5%程度活性が低下していた。ALPについては、糖の種類によらず、糖無添加も含めほぼ100%活性を保持していた。また、CKについては本発明以外の組成で約5%の活性低下が認められた。次に、表3に示したとおり、−20℃においては、糖無添加のものについてCKが5%、マンニトールではALTが18%、ALPが6%、CKが8%低下した。一方で、本発明組成物であるソルビトール、トレハロースの添加においては、5℃および−20℃にいずれの条件下においても含有する酵素すべてにおいて活性を保持していた。【0045】【実施例3】20mM PIPES−NaOH(pH7.5)0.3% BSA(シグマ製)0.5mM 塩化マグネシウム0.5mM 塩化カルシウム10mM グルタミン酸ナトリウム536u/l・ALP(ブタ腎由来;シグマ製)301u/l・CK (ウサギ筋肉由来;ベーリンガーマンハイム製)100u/l・AST(ブタ心臓由来;シグマ製)108u/l・ALT(ブタ心臓;シグマ製)上記組成の複合酵素含有組成物に、5%シュクロースを添加したもの、5%トレハロースを添加したもの、糖を添加しないもの、をそれぞれ調整し、−20℃で凍結保存した。表4に6カ月保存後の残存活性を示した。【0046】【表4】【0047】シュクロース添加のものは、ALPに約15%の活性低下が認められ、また糖の無添加のものも同様ALPに10%程度の低下が認められた。これに対し、本発明組成物であるトレハロース添加のものは、AST、ALT、ALP、CKいずれの酵素についても活性低下が認められなかった。【0048】【実施例4】20mM BES−NaOH(pH7.5)3% BSA(シグマ製)2mM 塩化マグネシウム0.05% アジ化ナトリウム109u/l・ALP (BRL68由来)(参考例2)61u/l・CK (HL−60由来)(参考例1)38u/l・AST (HL−60由来)(参考例1)34u/l・ALT (ブタ心臓由来;シグマ製)31u/l・γ−GTP(ウシ腎臓由来;シグマ製)103u/l・LDH (HL−60由来)(参考例1)上記組成の複合酵素含有組成物に、トレハロースを▲1▼0.5%添加したもの、▲2▼2%添加したもの、▲3▼5%添加したものをそれぞれ調整し、5℃および−20℃の各温度で7日間保存し、その残存活性を測定し、トレハロース濃度の影響を調べた。結果を表5(−20℃、7日後の残存活性(%))、表6(5℃、7日後の残存活性(%))に示した。【0049】【表5】【0050】【表6】【0051】表5に示したように−20℃では、0.5%トレハロースで若干ALTの活性低下が認められた他はほぼ両者ともで安定であった。ところが、表6のとおり、5℃保存では0.5%トレハロースでLDHが10%活性低下しており、0.5%濃度のトレハロース添加の効果が認められていなかった。尚、25℃、7日間保存においては、LDHは、0.5%、2%、5%のどのトレハロース濃度でも活性を保持しており、低温で不安定であることが示唆された。そして、このLDHの低温失活は、本発明組成物である2%および5%トレハロース添加のものでは認められず、安定化には、2%以上のトレハロースが必要であった。尚、AST、CK、LDHは、参考例1の方法で、ヒト由来細胞株HL−60を培養することにより、またALPは、参考例2の方法でヒト由来細胞株BRL68を培養することにより取得した。【0052】【実施例5】20mM PIPES−NaOH(pH7.5)3% BSA(シグマ製)2mM 塩化マグネシウム0.05% アジ化ナトリウム462u/l・ALP (BRL68由来)(参考例2)282u/l・CK (HL−60由来)(参考例1)100u/l・AST (HL−60由来)(参考例1)118u/l・ALT (ブタ心臓由来;シグマ製)146u/l・γ−GTP(ウシ腎臓由来;シグマ製)235u/l・LDH (HL−60由来)(参考例1)上記組成の複合酵素含有組成物に、おのおの5%になるようにソルビトール、トレハロース、マンニトール、シュクロースを添加して、凍結での安定性を−20℃保存にて調べた。表7に−20℃、9ヶ月後の残存活性(%)を示した。【0053】【表7】【0054】表7に示すように、−20℃においては、糖無添加のものがAST、ALT、ALP、CK、LDHで8〜34%の活性低下を、マンニトールはALT、CKで10%の活性低下を、シュクロースはALT、ALP、CKで4〜24%の活性の低下が認められたのに対し、本発明組成物であるソルビトール、トレハロースの添加においては、含有する酵素すべてにおいて活性を保持していた。【0055】更に、本発明のソルビトール、トレハロース含有組成物について、調整直後の溶液と、−20℃で9ヶ月保存したのち解凍した溶液との5℃、1週間後の溶液安定性を比較し、結果(残存活性(%))を表8に示した。【0056】【表8】【0057】表8に示したとおり、両者に差異は認められず、−20℃、9ヶ月保存後に解凍したものについても、調整時同様、5℃、1週間安定であった。【0058】【参考例1】ヒト前骨髄性白血病細胞株HL−60(ATCC CCL−240)をウシ胎児血清10%(V/V)を添加した市販のRPMI−1640培地に細胞密度1x105 cells/mlになるように分散させ、この細胞分散液を2Lのスピンナーフラスコに1.5L分仕込み、温度37℃、空気95%及びCO2 、5%にセットした炭酸ガスインキュベーター中にて5日間浮遊撹拌培養した。増殖した細胞を遠心分離機により分離し、超音波処理により細胞を破砕した。上清中の酵素活性を測定し、細胞密度107 cells/ml当たりの溶液の酵素活性を調べたところ、6435u/lのLDH、260u/lのAST、5300u/lのCK、を検出した。これらの、細胞破砕液上清を硫安分画後、DEAE−SepharoseCL−6B(ファルマシア)カラムにてAST、LDH混合画分とCK画分を得た。更に、AST、LDH混合画分はBlue−SepharoseCL6B(ファルマシア)カラムにより、素通り画分からASTを、吸着画分よりLDHを取得した。【0059】【参考例2】ヒト胎児肝細胞株BRL68(ATCC CL−48)をウシ胎児血清10%(V/V)を添加した市販のMEM培地に細胞密度2.5x104 cells/mlになるように分散させ、この分散液を200mlずつを225mlの組織培養用フラスコ(住友ベークライト(株)製)に仕込み、温度37℃、空気95%および、CO2 、5%にセットした炭酸ガスインキュベーター内にて4日間静置培養した。増殖した細胞を0.01%(W/V)トリプシン液(GIBCO社製)で剥離させ遠心分離機により細胞を集め、超音波処理により細胞を破砕した。上清中の酵素活性を測定し、細胞密度107 cells/ml当たりの溶液の酵素活性を調べたところ、14650u/lのLDH、811u/lのAST、1473u/mlのALPを検出した。細胞破砕液上清を硫安分画後、Blue−SepharoseCL6B(ファルマシア)カラムの素通り画分としてALPを取得した。【0060】【発明の効果】本発明による複合酵素含有液状組成物は、−20℃以下の凍結では、少なくとも15ヶ月の長期にわたり、また解凍後では2〜8℃保存で少なくとも7日間、いずれの酵素においても活性の低下が認められない、安定で、経済性に富む組成物となし得た。 安定化剤としてトレハロースおよびソルビトールより選ばれた少なくとも1種類の糖類およびアルブミンを含み、少なくともアルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選ばれる2種類以上の酵素および含水媒体を含有する安定化された臨床検査用複合酵素組成物。 請求項1において、マグネシウムイオンを含む組成物。 請求項1において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびγ−グルタミルトランスペプチダーゼを含む組成物。 請求項1において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを含む組成物。 アルブミンが、0.3〜7(W/V)%含有してなる請求項1記載の組成物。 トレハロースおよびソルビトールより選ばれた少なくとも1種類の糖類が、2〜15(W/V)%含有してなる請求項1記載の組成物。 請求項1ないし4のいずれかひとつの項において、該酵素がヒト生体材料またはヒト由来細胞培養、遺伝子組み換え技術によりヒト遺伝子を組み込まれた形質転換体細胞培養により取得されたものである組成物。 組成物が、液状または凍結組成物である請求項1記載の組成物。 液状または凍結組成物の解凍液の比重が1.015〜1.030(25℃)、粘度が1.05〜1.40cP(37℃)である請求項8記載の組成物。