タイトル: | 特許公報(B2)_脂肪酸エステルの精製方法 |
出願番号: | 1994224910 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C67/60,C07C69/22,C07C69/33,C07C69/58 |
高野 進 JP 3565586 特許公報(B2) 20040618 1994224910 19940920 脂肪酸エステルの精製方法 川研ファインケミカル株式会社 390003001 石田 敬 100077517 西舘 和之 100072109 戸田 利雄 100088269 西山 雅也 100082898 高野 進 20040915 7 C07C67/60 C07C69/22 C07C69/33 C07C69/58 JP C07C67/60 C07C69/22 C07C69/33 C07C69/58 7 C07C 67/48-67/62 特開昭55−092346(JP,A) 特開昭52−116401(JP,A) 特開昭62−4244(JP,A) 7 1996092159 19960409 7 20010622 井上 千弥子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、脂肪酸エステルの精製方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は界面活性剤の中間体、化粧品基剤、滑剤として有用な脂肪酸エステルの精製方法に関するものである。【0002】【従来の技術】脂肪酸から触媒を用いて脂肪酸エステルを合成する場合、このエステル生成反応が可逆反応であるため、反応生成物中には、必ず1〜6%程度の未反応脂肪酸が含まれている。このため工業規模の脂肪酸エステル製造工程においては、反応生成混合物から触媒除去後、蒸留によって、目的脂肪酸エステル精製を行う方法が一般的に実施されている。しかし、これらの脂肪酸エステルは沸点が高く、蒸留に長時間を要するという問題点がある。また、未反応脂肪酸は加熱により変質して蒸留残渣となり、廃棄物となるという問題点もある。【0003】その他の精製方法としては、イオン交換樹脂による方法(フランス特許No.89−10284)、(ドイツ特許No.72−2261067)、超臨界流体抽出法(ヨーロッパ特許No.90−201529)などが開示されている。しかし、これらの精製方法は前記蒸留法よりも更に複雑な操作が必要であるため、経済性が低く、実用上満足できるものではない。【0004】【発明が解決しようとする課題】そのため、従来の蒸留法よりも簡便で、品質を損なうことなく大量処理が可能であり、しかも経済的に有利な精製方法の開発が強く望まれていた。【0005】本発明は、合成脂肪酸エステル中に不可避的に含まれる少量の不純物脂肪酸を分離除去することが可能な、かつ簡便で経済的な、脂肪酸エステルの精製方法を提供しようとするものである。【0006】本発明は、特に、鉱酸や固体酸等の触媒を用いて脂肪酸から脂肪酸エステルを製造する工程において、簡便で経済的に反応物から未反応脂肪酸を分離回収しつつ、脂肪酸エステルを精製分離する方法を提供しようとするものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明の脂肪酸エステルの精製方法は、10重量%以下の脂肪酸を不純物として含有し、かつ2.0重量%以下の水分含有率を有する脂肪酸エステル未精製物に、前記脂肪酸エステルの融点以上の温度において、アンモニアガス、並びに固体状炭酸アンモニウム及びその固体状水和物から選ばれた少なくとも1種からなる塩基を添加し、これを前記不純物脂肪酸と反応させて脂肪酸アンモニウム塩結晶を生成させ、得られた反応混合物から前記脂肪酸アンモニウム塩結晶を分離除去することを特徴とするものである。【0008】本発明の精製方法において、前記脂肪酸エステルが、6〜22の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸のエステルからなるものであることが好ましい。【0009】本発明の精製方法において、前記不純物脂肪酸が、6〜22の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸からなるものであることが好ましい。【0010】本発明の精製方法において、前記脂肪酸エステルが、1〜18の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールのエステルからなることが好ましい。【0011】本発明の精製方法において、前記不純物脂肪酸含有脂肪酸エステル未精製物中の水分含有量は0.3%(重量)以下であることが好ましい。【0012】本発明の精製方法において、前記脂肪酸アンモニウム塩結晶の生成及び分離が0〜80℃の温度範囲内において行われることが好ましい。【0013】また、本発明方法において、前記分離された脂肪酸アンモニウム塩結晶を、酸で処理して脂肪酸を再生することをさらに含んでいてもよい。【0014】【作用】本発明の方法が適用される脂肪酸エステル未精製物中の脂肪酸エステルは、6〜22個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪酸のエステルであることが好ましく、これらの脂肪酸は1種であってもよく、または2種以上であってもよい。具体的に述べれば、本発明方法が好ましく適用される脂肪酸エステルは、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘン酸等から選ばれた1種または2種以上の脂肪酸のエステルである。【0015】また、脂肪酸エステル未精製物中に不純物として含まれる脂肪酸は、上記脂肪酸エステル生成脂肪酸に対応するものである。これら不純物脂肪酸の含有量は10%以下であり、5%以下であることが好ましい。不純物脂肪酸の含有量が10%を超えると、そのアンモニウム塩の分離が困難となり本発明の目的の達成が困難になる。【0016】本発明方法において、脂肪酸エステルは、1〜18個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールのエステルであることが好ましい。このようなエステル生成用アルコールは具体的に述べれば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ぺンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール等から選ばれ、これらは単独で用いられてもよく、或は2種以上が併用されてもよい。【0017】本発明の精製処理に供される脂肪酸エステル未精製物に含まれる水分の含有量は2%(重量)以下であり、0.3%(重量)以下であることが好ましい。通常の脂肪酸のエステル化反応で得られる反応混合物には7%(重量)前後の水が含まれるので、本発明の精製処理を施す前に、常法に従って脱水を施して、その水分含有量を2%(重量)以下に調整する。【0018】本発明方法において、使用されるアンモニアガス並びに固体状炭酸アンモニウム及びその固体状水和物中に、水分又はアルコールが含まれていると、それが生成した脂肪酸のアンモニウム塩を溶解してしまうから、これらには水分、およびアルコールが実質上含まれていないことが必要である。ただし、脂肪酸アンモニウムを溶解しないような溶媒は含まれてもよい。【0019】本発明方法において、操作温度を下げたり、および/又は濾過時の粘度を下げたりする操作性の改善を目的として、アンモニウム塩生成性塩基の添加の際に、脂肪酸アンモニウムを溶解しない溶媒を併用してもよい。【0020】本発明方法において、脂肪酸のアンモニウム塩の結晶を生成させ、これを分離するときには、脂肪酸エステルが液体でなければならないので、これらの工程を脂肪酸エステルの融点以上で操作することが必要である。具体的には、0℃から80℃の温度範囲内で脂肪酸アンモニウム結晶の生成、および分離が行われることが好ましいが、分離の操作上可能な限り低温で行うことがより好ましい。【0021】本発明方法において、アンモニアガス、固体状炭酸アンモニウム及びその固体状水和物の使用量は、脂肪酸エステル未精製物に少量含まれる不純物脂肪酸に対し、理論化学当量未満でもその範囲内での効果はあるが、その全量を分離除去するためには理論化学当量以上の量で使用される。また、アンモニアガス、固体状炭酸アンモニウム及びその固体状水和物は、それぞれ単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。【0022】生成した脂肪酸アンモニウムが加熱されると、アンモニアが脱離することがあり、特に減圧下に加熱すると脱離しやすいので、脂肪酸エステルと脂肪酸のアンモニウム塩との分離は、分離が可能な限り低温で実施することが好ましい。同じ理由から、濾過によって脂肪酸アンモニウム塩結晶を分離する場合は、減圧濾過よりも加圧濾過の方が好ましい。また、脂肪酸アンモニウムの濾過性が悪い場合には、遠心分離機を使用してもよい。なお、分離した脂肪酸アンモニウムの結晶中には、通常、少量の脂肪酸エステルが含まれる。【0023】分離した脂肪酸アンモニウム塩結晶を強酸で処理して、脂肪酸を遊離させることができる。この脂肪酸を捕集して、脂肪酸エステルの原料として再使用することができる。また、脂肪酸アンモニウム塩結晶を分離除去した後の溶液中に残存する過剰のアンモニアは、減圧下加熱攪拌する方法などにより容易に除去することができる。また、過剰の炭酸アンモニウムは、濾過により除かれる。【0024】【実施例】下記実施例により、本発明を更に詳細に説明する。実施例1ガスクロマトグラフ分析により、ラウリン酸メチル97.2%(重量)および、ラウリン酸2.8%(重量)からなることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液の水分を0.3%(重量)に調整し、この溶液20g中に、それを25℃で攪拌しながらこれに、アンモニアガス0.1gを導入して、ラウリン酸アンモニウムを生成させ、得られた反応混合液のpHが塩基性であることを確認した。この生成混合液を窒素加圧0.5kg/cm2 下で濾過したところ、ラウリン酸アンモニウムとラウリン酸メチルとからなる結晶性残渣0.72gと、濾液18.7gとが得られた。この濾液をエバポレーターで減圧下、60℃に加熱して、過剰のアンモニアを除き、得られた精製物をガスクロマトグラフ分析を行ったところ、ラウリン酸メチルの含有率が100.0%であるとの結果が得られた。また、この精製物中に、ラウリン酸およびアンモニアは検出されなかった。【0026】比較例1ガスクロマトグラフ分析によりラウリン酸メチル97.2%(重量)および、ラウリン酸2.8%(重量)の混合物であることが確認されている実施例1と同じ組成の脂肪酸エステル未精製物の溶液20gに、水5gを加え、25℃で攪拌しながら、これに、25%アンモニア水0.20gを加えて静置した。得られた反応液の下層のpHが塩基性であることを確認してこの下層を分液し、水5gで3回水洗した。これをエバポレーターで減圧下、80℃に加熱して、濃縮し、ガスクロマトグラフ分析に供したところ、この濃縮物はラウリン酸メチル97.2%(重量)と、ラウリン酸2.8%(重量)の混合物であることが認められた。また、この濃縮物からアンモニアは検出されなかった。【0027】実施例2ガスクロマトグラフ分析により、粗ラウリン酸メチル(組成:カプリル酸メチル1.0%(重量)、カプリン酸メチル3.0%(重量)、ラウリン酸メチル88.5%(重量)、ミリスチン酸メチル7.5%(重量))98.4%(重量)と、粗ラウリン酸(組成:カプリル酸1.0%(重量)、カプリン酸3.0%(重量)、ラウリン酸88.5%(重量)、ミリスチン酸7.5%(重量))1.6%(重量)との混合物であることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液の水分含有量を0.2%に調整し、この溶液20gを25℃で攪拌しながら、これに、炭酸アンモニウム・1水和物0.17gを加え、更に5時間攪拌して、粗ラウリン酸アンモニウムを生成析出させ、この反応混合液のpHが塩基性になっていることを確認した。この反応混合物を窒素加圧0.5kg/cm2 下で濾過したところ、粗ラウリン酸アンモニウム、粗ラウリン酸メチルおよび炭酸アンモニウム・1水和物からなる結晶性残渣0.54gと、濾液19.04gとが得られた。この濾液をガスクロマトグラフ分析に供したところ、それはラウリン酸メチル100.0%からなるものであることが確認され、粗ラウリン酸、アンモニアは検出されなかった。【0028】実施例3ガスクロマトグラフ分析により、粗ステアリン酸ブチル(組成:ラウリン酸ブチル2.1%(重量)、ミリスチン酸ブチル26.5%(重量)、ステアリン酸ブチル71.4%(重量))、98.7%(重量)と、粗ステアリン酸(組成:ラウリン酸2.1%(重量)、ミリスチン酸26.5%(重量)、ステアリン酸71.4%(重量))1.3%(重量)からなることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液の水分を0.3%に調整し、この溶液50gを30℃で攪拌しながらこれにアンモニアガス0.25%を導入して、粗ステアリン酸アンモニウムを生成させ、溶液のpHが塩基性になったことを確認した。この反応混合物を窒素加圧0.5kg/cm2 下で濾過したところ、粗ステアリン酸アンモニウムおよび粗ステアリン酸ブチルからなる結晶性1.36gと、濾液47.9gとが得られた。この濾液をエバポレーターで減圧下60℃に加熱して、過剰のアンモニアを除き、ガスクロマトグラフ分析に供したところ、この濾液はステアリン酸ブチル99.8%(重量)と、ラウリン酸0.2%(重量)からなるものであることが確認された。また、この溶液フラクション(濾液)からアンモニアは検出されなかった。【0029】実施例4ガスクロマトグラフ分析により、粗オレイン酸メチル(組成:パルミチン酸メチル20%(重量)、ステアリン酸メチル5%(重量)、オレイン酸メチル42%(重量)、リノール酸メチル30%(重量)、その他3%(重量))、95.0%(重量)と、粗オレイン酸(組成:パルミチン酸20%(重量)、ステアリン酸5%(重量)、オレイン酸42%(重量)、リノール酸30%(重量)、その他3%(重量))5.0%とからなることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液の水分を0.2%に調整し、この溶液20gを30℃で攪拌しながら、これに、アンモニアガス0.15gを導入して、粗オレイン酸アンモニウムを生成させ、溶液のpHが塩基性であることを確認した。この反応混合物を遠心分離機で処理して、反応混合物中の固形物を分離し、分離液をエパボレーターで減圧下、60℃に加熱して、過剰のアンモニアを除き、得られた精製物をガスクロマトグラフ分析に供したところ、それがオレイン酸メチル99.7%(重量)および、オレイン酸0.3%(重量)からなるものであることが確認された。この精製物からアンモニアは検出されなかった。【0030】実施例5ガスクロマトグラフ分析により、粗オクチル酸セチル(組成:オクチル酸セチル75%(重量)、オクチル酸ステアリル25%(重量))、98.0%(重量)と、オクチル酸2.0%(重量)からなることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液の水分を0.2%に調整し、この溶液20gを20℃で攪拌しながら、これにアンモニアガス0.10gを導入して、オクチル酸アンモニウムを生成させ、溶液のpHが塩基性であることを確認した。得られた反応混合物を遠心分離機で処理して、固形物を分離し、分離液をエバポレーターで減圧下、60℃に加熱して、過剰のアンモニアを除き、得られた精製物をガスクロマトグラフ分析に供したところ、それがオクチル酸セチル100.0%からなるものであることが確認された。この精製物からオクチル酸、およびアンモニアは検出されなかった。【0031】参考例ガスクロマトグラフ分析により、ラウリン酸メチル97.2%(重量)とラウリン酸2.8%(重量)からなることが確認されている脂肪酸エステル未精製物の溶液50gを、オイルバス加熱により蒸留したところ、15mmHgの減圧下、141℃の温度において留分45gを得た。これをガスクロマトグラフ分析したところ、ラウリン酸メチル含有率:100.0%、ラウリン酸含有率:0.0%の結果が得られた。【0032】【発明の効果】本発明方法により、合成脂肪酸エステル未精製物中に少量含まれる不純物脂肪酸を簡便に分離することができ、脂肪酸エステルの簡便で高度な精製が可能となった。また、本発明方法は、従来の蒸留法にくらべ初溜分および後溜分の除去などの工程を含まないため、目的脂肪酸エステルの損失が少なく、分離除去した脂肪酸のアンモニウム塩を脂肪酸に戻すことができ、これを脂肪酸エステルの原料として再使用する事が可能である。さらに、脂肪酸アンモニウムの生成は通常の化学反応装置で行うことができるため、蒸留装置を具備していなくても脂肪酸エステルの精製が可能となる。 10重量%以下の脂肪酸を不純物として含有し、かつ2.0重量%以下の水分含有率を有する脂肪酸エステル未精製物に、前記脂肪酸エステルの融点以上の温度において、アンモニアガス、並びに固体状炭酸アンモニウム及びその固体状水和物から選ばれた少なくとも1種からなる塩基を添加し、これを前記不純物脂肪酸と反応させて脂肪酸アンモニウム塩結晶を生成させ、得られた反応混合物から前記脂肪酸アンモニウム塩結晶を分離除去することを特徴とする脂肪酸エステルの精製方法。 前記脂肪酸エステルが、6〜22の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸のエステルからなる、請求項1に記載の精製方法。 前記不純物脂肪酸が、6〜22の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸からなる、請求項1に記載の精製方法。 前記脂肪酸エステルが、1〜18の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールの脂肪酸エステルからなる、請求項1に記載の精製方法。 前記不純物脂肪酸含有脂肪酸エステル未精製物が0.3%(重量)以下の水分を含む、請求項1に記載の精製方法。 前記脂肪酸アンモニウム塩結晶の生成及び分離が0〜80℃の温度範囲内で行われる、請求項1に記載の精製方法。 前記不純物脂肪酸アンモニウム塩結晶を、酸で処理して脂肪酸を再生することを更に含む、請求項1に記載の精製方法。