生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_脂肪乳剤の調製方法
出願番号:1994209039
年次:2005
IPC分類:7,A61K47/24,A61K9/107,A61K31/23,A61K35/78,A61P3/02


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高橋 秀和 内山 多恵子 片桐 由夏子 JP 3611130 特許公報(B2) 20041029 1994209039 19940729 脂肪乳剤の調製方法 昭和産業株式会社 000187079 須藤 阿佐子 100102314 高橋 秀和 内山 多恵子 片桐 由夏子 20050119 7 A61K47/24 A61K9/107 A61K31/23 A61K35/78 A61P3/02 JP A61K47/24 A61K9/107 A61K31/23 A61K35/78 J A61P3/02 7 A61K 9/00, 47/00, 31/00,35/00 A61P 1/00 - 43/10 特開昭58−201712(JP,A) 特開昭57−209216(JP,A) 特開昭60−258110(JP,A) 3 1996040938 19960213 7 19990122 2002004387 20020314 森田 ひとみ 谷口 博 渕野 留香 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、レシチンを乳化剤とする脂肪乳剤の改良調製法に関する。具体的には、本発明は、例えば静注用リポ製剤を調製する方法としてレシチンを有効に乳化に利用する方法に関する。【0002】【従来の技術】脂肪乳剤(リポ製剤)は、一般に、リン脂質を含有する脂肪乳剤であって、高カロリー栄養輸液療法におけるカロリー補給の目的で開発された製剤である。脂肪乳剤は基本的に大豆油10〜20重量%、卵黄あるいは大豆レシチン(乳化剤)1.2〜1.8重量%およびグリセリン(等張化剤)2.5重量%を含むO/W型のエマルションである。この基本処方にさらに脂肪酸(乳化補助剤)、コレステロール類(安定化剤)、高分子物質、薬効成分などが添加される場合もある。乳剤の粒子径は、乳化の安定性と血管内血栓防止の観点から、1.0μm以下に調製する。【0003】上記のようなリポ製剤の調製法について、例えば、特開昭58−222014号、特開昭60−149524号、特開平2−101009号、特開平04−69340号等に説明されているが、レシチン成分を含むすべての脂溶性成分及び水成分(場合によっては等張化成分を含まない。)を同時に混合している。そのため一部のレシチンが界面に集まらず、レシチン単独の集合体を作って分散し、脂溶性成分と水成分を乳化する役割を果たさないという現象が起きる。添加したレシチンの一部が乳化剤として機能しないので、製剤としても一定の品質の製品を得ることができない。【0004】例えば、静注用の乳剤原料に用いるレシチンは、精製されて粉末、ヌガー状、ブロック状等の固体であり、直接水に懸濁させるとラメラ構造をとる。仮にレシチンが油中に存在していても、結晶状態で分散していれば、強力な乳化によってその一部が水に直接接触してラメラ構造をとってしまう。ラメラ構造となったレシチンは再度油中に移行させることは極めて困難である。これらのレシチンは乳化には有効に利用されないため、乳化安定性を保つためにはレシチンの添加量を増大することが必要である。同時にラメラ構造物は乳化物と比べ、血液中で凝集しやすく、粒子径の増大や沈殿の発生につながる。さらに製剤の薬理活性自体にも影響することも考えられる。【0005】上記特開昭58−222014号の実施例では、原料成分のうち脂溶性成分のみを先に40℃〜75℃で加熱混合している。この温度範囲は本願発明の温度範囲と一部重複する。しかし、この実施例においては、その後20〜40℃の水成分を約10倍容も加えていることからもわかるように、本願発明の目的とする濁りの生じない、レシチンが充分に乳化剤として機能するような混合方法を開示しているものではない。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、レシチン含有脂肪乳剤の調製において、原料レシチンのラメラ構造の発生を抑え、安定した乳化物を調製することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、レシチンを主たる乳化剤として使用する脂肪乳剤の調製方法において、初めにレシチンを含め油成分を加熱し、レシチンが油成分中で濁りを生じない温度以上にした後、濁りを生じない温度からその温度に15℃を加えた温度以内の温度範囲で乳化を行い、調製中レシチンに濁りを生じないようにすることを特徴とする脂肪乳剤の調製方法である。レシチンが全て油脂の均一な乳化に使用されるようにするために、予め脂溶性成分(レシチンを含む)のみをレシチンが水和して濁ることのなくなる温度(以下、「曇り点」という)以上の温度で加熱混合・溶解し、さらに曇り点以上の温度で水成分と乳化させることで、ラメラ構造(液晶成分)の発生を抑え、安定した乳化物を得ることができる。【0008】レシチンの曇り点は、使用する油脂の種類や添加するまたはもともと含まれる脂溶性成分(脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロール類など)の種類や量、および水分によって変化する。また、レシチン自体の成分組成によっても異なる。曇り点の測定は脂溶性の成分がすべて透明に溶解するまで加温し、ついで徐冷し、観察によって透明な溶液が白濁し始める温度として簡単に測定できる。曇り点以下の温度では、レシチンの数十パーセント以上が乳化の用途に使われず、別の構造体を形成するが、曇り点以上で乳化するとレシチンの90%以上が乳化に利用され、特に液晶状態のものは極端に少なくなる。これによって乳化の安定性が高くなる。【0009】一方、脂溶性成分の溶解及び乳化は、使用する油や乳化補助剤及びレシチンの酸化劣化を避けるためにできるだけ低い温度で行うことが望ましい。また、熱に対して比較的不安定な薬物の担体として乳化物を用いる場合、薬物の熱による損失を防ぐためにも、できるだけ低い温度で調製することが望ましい。本願発明の方法によれば雲り点以上の温度での乳化によって乳剤の安定化が図れることから、不要に高温で処理する必要が無くなり、実際の乳化作業においては、雲り点の温度から15℃以内の温度範囲で十分に目的を達成することができる。【0010】本発明で調製した乳剤にはリポソーム(レシチン液晶膜小包)等のラメラ構造の発生が少なく、レシチンが乳化物の界面に集積し有効に利用されている。従来リポソームは、剤型としてそれ自体が剤型学的に特異な動態を示しやすく、リポソーム含量が変化することはリポソームの影響により乳剤全体の薬理特性が変化することにつながりかねない。また、リポソームは血液中の安定性が一般に低く、凝集しやすいため目視できる大きさの粒子になることも珍しくない。このように、リポソームの含量が多いことや含量がふれていることは薬理効果の安定性に対して重要な問題であった。しかし、本発明で調製した乳剤にはこのような問題は極めて少ない。精製オリーブ油10gに卵黄レシチン1.2gの配合の場合の曇り点は54℃であり、精製大豆油10gに卵黄フォスファチジルコリン1.8g及びオレイン酸0.24gの配合の場合曇り点は53℃である。【0011】本発明において、油脂は高純度の精製油脂であり、静注用乳化製剤に使用できるものであれば種類は何でもよく、精製オリーブ油、精製大豆油が例示される。例えば、精製オリーブ油、精製大豆油は水蒸気精製等の精製により不けん化物が0.5%以下、望ましくは0.1%以下のものである。【0012】本発明において、レシチンは、卵黄レシチン、大豆レシチンなどの精製レシチンであり、常法の有機溶媒による分画法によって調製することができる。すなわち、たとえば粗卵黄リン脂質を冷n−ヘキサン−アセトンに溶解し、攪拌下、徐々にアセトンを添加し、不溶物を濾別回収し、この操作をさらにもう1回繰り返した後溶媒を留去することによって精製レシチンを得ることができる。これは主としてフォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミンからなり、これ以外のリン脂質として、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、スフィンゴミエリンなども含有する。また、ここで得られたレシチンをさらにエタノールに対する溶解度の違いで分別したり、カラムクロマトグラフィーによって特定の成分、主にフォスファチジルコリンを濃縮あるいは単離したものを用いることができる。【0013】脂肪乳剤とは油脂5〜50重量%、油脂100部に対してレシチン1〜50部、好ましくは5〜30部、および適量の水から主としてなる。レシチンの脂肪乳剤中の含有量は、乳剤の形態および用途によって適宜増減できるが、一般には当該乳剤中に極微量、たとえば0.5〜50mg/ml含有させる。【0014】本発明において、油成分中でレシチンが濁りを生じない温度以上の乳化温度下で乳化を行う際、さらにアルコールを添加することができる。アルコールとしては、エタノール、メタノール、イソプロパノールが例示される。好ましくは、アルコールはエタノールまたは含水エタノールである。レシチンにあらかじめアルコールを添加してから、油脂に添加することができる。アルコールは油脂類のおよそ1%程度でも充分効果が出る。油脂の成分によってはさらに微量でも充分な効果を示すこともある。静注乳剤の場合、アルコールとしてエタノールを用いれば容易に生分解され、人体への悪影響はない。仮にこの程度の量のエタノールが残存しても製剤の調製および安定性は良好になることがあっても決して悪くならない。【0015】本発明の脂肪乳剤の製造法は、所定量の油脂、レシチン、脂溶性成分(脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロール類)などを所定の温度範囲で混合し、次いでこれに所定の温度範囲に調製した必要量の水を加え、通常のホモジナイザー(例えば、TKホモミキサー、ポリトロンのような高速攪拌型等)で粗乳化後、微細乳化に適したホモジナイザー(例えば、加圧噴射型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等)を用いて均質化処理をして、水中油型乳剤とすることによりなる。製造上の都合によっては、脂肪乳剤の生成後に安定化剤、等張剤などの添加剤を加えてもよい。【0016】エマルションの調製にはいくつかの乳化機械が古くから知られているが、その微粒化能力はそれぞれ異なっている。脂肪乳剤は静脈内に直接投与される製剤であるため、血管内の大きさを考慮して、油滴の平均粒径0.2〜0.3μmのエマルションとして調製されている。したがって、脂肪乳剤を調製するためには、高圧ホモジナイザーは必須である。また、この高圧ホモジナイザーの能力を最大限に引き出すためには、数μm程度の微粒化を前処理として行っておくと効果的である。その粒子はきわめて微細で、その平均粒子径は1.0μm以下であり、その保存安定性はきわめて良好である。【0017】乳化補助剤としての炭素数6〜22の脂肪酸は、医薬品に添加可能なものであれば使用できる。この脂肪酸は直鎖状、分枝状のいずれでもよいが、直鎖状のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレン酸、ミリスチン酸などを用いるのが好ましい。これらの塩としては、生理的に受け入れられる塩、たとえばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)を用いることができる。安定化剤としてのコレステロールやホスファチジン酸は医薬用として使用が可能なものであれば使用できる。【0018】乳化安定化剤用高分子物質として用いられるアルブミン、ビニル重合体、非イオン性界面活性剤としては次のものが好ましい。すなわちアルブミンとしては、抗原性の問題からヒト由来のものを用いる。ビニル重合体としては、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。また、非イオン性界面活性剤としては、ポリアルキレングリコール(たとえば、平均分子量1000〜10000、好ましくは4000〜6000のポリエチレングリコール)、ポリオキシアルキレン共重合体(たとえば、平均分子量1000〜20000、好ましくは6000〜10000のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体)、硬化ヒマシ油ポリオキシアルキレン誘導体(たとえば、硬化ヒマシ油ポリオキシエチレン−(40)−エーテル、同−(20)−エーテル、同−(100)−エーテルなど)、ヒマシ油ポリオキシアルキレン誘導体(たとえば、ヒマシ油ポリオキシエチレン−(20)−エーテル、同−(40)−エーテル、同−(100)−エーテルなどを用いることができる。【0019】薬物としては、プロスタグランジンE1をはじめとするプロスタグランジン類縁体、ロイコトリエンなどの高度不飽和脂肪酸カスケード系のホルモン、ゲスターゲンをはじめとするステロイドホルモン等の脂溶性ホルモン、アドリアマイシンをはじめとする脂溶性の抗ガン剤、イブプロフェンをはじめとする非ステロイド系の脂溶性鎮痛剤、その他薬理作用をもつ脂溶性成分やその誘導体、さらには脂溶性でない薬物の脂溶化誘導体等、少量で薬理作用の発現する薬剤が挙げられる。これらの薬剤の乳剤は、油脂、乳化剤及びその他の脂溶性成分に溶解して用いる。【0020】【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例において、平均粒子径はゼータサイザー3(英国、マルバーン社製)により測定した。【0021】実施例1精製オリーブ油(昭和産業(株)製)100gに精製卵黄レシチン(キューピー(株)製)12gを60℃で混合後、60℃に加温したグリセリン等張液を加え1000mlとし、攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、60℃に保ちながら、高圧乳化装置(マントンガウリン型)を用いて合計圧600kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で189nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中1%以下であった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は2%であった。【0022】実施例2精製大豆油(昭和産業(株)製)10gに卵黄フォスファチジルコリン(キューピー(株)製の卵黄レシチンを原料とし、高速液体クロマトグラフィーでフォスファチジルコリンを単離したもの)1.8g及びオレイン酸0.24gを55℃で混合後、55℃に加温したグリセリン等張液に加え100mlとし、攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、高圧乳化装置(商品名:ナノマイザー)を用いて合計圧450kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で199nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中1%以下であった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は3%であった。【0023】比較例1精製オリーブ油100gに卵黄レシチン12gおよびグリセリン等張液を加え1000mlとし、60℃で攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、高圧乳化装置(マントンガウリン型)を用いて合計圧600kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で194nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中4.2%あった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は25%であった。【0024】比較例2精製オリーブ油100gに卵黄レシチン12gを60℃で混合後、20℃に冷却した。20℃にあわせたグリセリン等張液を加え1000mlとし、攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、20℃に保ちながら高圧乳化装置(マントンガウリン型)を用いて合計圧600kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で212nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中3.4%であった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は19%であった。【0025】比較例3精製大豆油10gに卵黄フォスファチジルコリン1.8g及びオレイン酸0.24gおよびグリセリン等張液を加え100mlとし、55℃で攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、高圧乳化装置(商品名:ナノマイザー)を用いて合計圧450kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で187nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中3.6%であった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は31%であった。【0026】比較例4精製大豆油10gに卵黄フォスファチジルコリン1.8g及びオレイン酸0.24gを60℃で混合後、30℃に冷却し白濁させる。30℃に加温したグリセリン等張液を加え100mlとし、攪拌型のホモミキサーで粗乳化した後、高圧乳化装置(商品名:ナノマイザー)を用いて合計圧450kg/cm2で10パスさせて乳化物を得た。この脂肪乳剤の平均粒子径は蒸留水中で200nmであり、10万Gでの超遠心沈殿固形物は全固形物中3.1%であった。この乳化物の血清中で37℃24時間後の平均粒子径増加率は23%であった。【0027】【発明の効果】原料レシチンのラメラ構造の発生を抑え、安定したレシチン含有脂肪乳剤を調製することができる。原料レシチンの存在状態(液晶、固体等)によって影響されず、ロット間で差がない均一な品質の製品であるレシチン含有脂肪乳剤を調製することができる。 レシチンを主たる乳化剤として使用する、少なくともレシチン、油脂、水を含有する脂肪乳剤の調製方法において、初めにレシチンを含め油成分を加熱し、レシチンが油成分中で濁りを生じない温度である曇り点以上の温度にした後、曇り点以上の温度からその温度に15℃を加えた温度以内の温度範囲で乳化を行い、油成分の混合、溶解から水成分やその他添加成分を混合、乳化して乳化製剤を得るまでの全ての調製工程中で該温度範囲で管理することを特徴とする脂肪乳剤の調製方法。 乳化を、曇り点から69℃以内の温度範囲で行う請求項1記載の脂肪乳剤の調製方法。 脂肪乳剤が静注用リポ製剤である請求項1または請求項2記載の脂肪乳剤の調製方法。


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