タイトル: | 特許公報(B2)_バルプロ酸の精製方法 |
出願番号: | 1994166097 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C51/487,C07C53/128 |
山 本 敏 夫 JP 3587473 特許公報(B2) 20040820 1994166097 19940623 バルプロ酸の精製方法 日本合成化学工業株式会社 000004101 山 本 敏 夫 20041110 7 C07C51/487 C07C53/128 JP C07C51/487 C07C53/128 7 C07C 51/487 C07C 53/128 特開平01−135740(JP,A) 特開昭62−106041(JP,A) 特開昭60−156638(JP,A) 特開昭55−053237(JP,A) 特開昭53−112806(JP,A) 特開平07−278053(JP,A) 特開昭60−152438(JP,A) 特開平01−268649(JP,A) 特開平02−275834(JP,A) 特開昭60−072844(JP,A) 特開昭54−016411(JP,A) 2 1996012618 19960116 6 20010611 井上 千弥子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、医薬品を始めとして各種の用途に有用なバルプロ酸の精製方法に関するものである。【0002】【従来の技術】バルプロ酸の製造方法としては、従来、▲1▼4−ヒドロキシヘプタン法、▲2▼シアノ酢酸法、▲3▼マロン酸エステル法等が知られている。又、本出願人も以前に特開昭60−156638号公報及び特開昭63−122646号公報においてバルプロ酸の製造方法を提案した。即ち、特開昭60−156638号公報は(1)アセト酢酸エステルとアリルハライドを反応させて2,2−ジアリルアセト酢酸エステルを得る工程、(2)2,2−ジアリルアセト酢酸エステルをアルコールと反応させて2,2−ジアリル酢酸エステルを得る工程、(3)2,2−ジアリル酢酸エステルを加水分解してジアリル酢酸とした後還元するか、又は(3)′2,2−ジアリル酢酸エステルを還元してバルプロ酸エステルとした後、加水分解する工程の組み合わせからなる製造方法であり、一方、特開昭63−122646号公報は(1)アセト酢酸エステルとプロピルハライドを反応させて2,2−ジプロピルアセト酢酸エステルを得る工程、(2)2,2−ジプロピルアセト酢酸エステルをアルコールで脱アセチルしてバルプロ酸エステルを得る工程、(3)バルプロ酸エステルを加水分解する工程よりなる製造方法である。【0003】これらバルプロ酸の製造方法の中でも、上記▲1▼はグリニヤー試薬や青酸ナトリウム等の高価でかつ取り扱いに細心の注意が必要とされる試薬を用いなければならなかったり、▲2▼の方法では反応条件がかなり苛酷であったり、又▲3▼の方法では高価な原料が必要である等の欠点があるため、本出願人の開示方法のほうがはるかに有利であるといえる。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本出願人の提案した特開昭60−156638号公報開示の方法では、還元工程において未還元の2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸が不純物としてバルプロ酸とともに残ってしまう。又、特開昭63−122646号公報開示の方法でも、原料であるプロピルハライド中に不純物として少量混在しているアリルブロミド、アリルクロリド、ジブロモプロパン等がアセト酢酸エステルと反応してしまい、最終的に、前記と同様2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸が不純物として目的物であるバルプロ酸とともに混在してしまう。ここで、不純物として存在しているものには、2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸の他に、2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸の二重結合が異性化した化合物、例えばα−プロピル−β−エチルアクリル酸等も含まれる(以下、断りがなくとも不純物として2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸といった場合には、これらの二重結合が異性化した化合物をも含めることがある。)。【0005】該バルプロ酸の不純物である2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸は、沸点等の物性面においてバルプロ酸と非常に似ており、従来の蒸留、金属塩の再結晶、活性炭吸着等による精製方法ではバルプロ酸との分離は非常に難しく、高度に精製されたバルプロ酸を効率良く得ることはできなかった。そこで、これらバルプロ酸の製造時において、不純物としてバルプロ酸と混在する2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸、更にはα−プロピル−β−エチルアクリル酸等の2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸の二重結合が異性化した化合物を容易に除去し、高純度のバルプロ酸を得る精製方法の開発が望まれている。【0006】【課題を解決するための手段】しかるに、本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を含有するバルプロ酸塩水溶液を、亜硫酸イオン又は亜硫酸水素イオンの存在下で空気又は酸素と接触させ、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を、該塩のスルホン酸塩又はスルホン酸付加物として、系から分離するバルプロ酸の精製方法が、バルプロ酸の不純物である2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸、更には2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸の二重結合が異性化した化合物を容易に除去できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明について具体的に説明する。【0007】本発明におけるバルプロ酸は前述した如き▲1▼〜▲3▼の製造方法や特開昭60−156638号公報及び特開昭63−122646号公報開示の製造方法等、従来公知の方法により製造されるものである。又、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸というのは、該バルプロ酸製造時に生じる不純物の化合物のことである。これらの不純物は、反応生成物として得られる2,2−ジアリル酢酸エステル又は2,2−ジアリル酢酸の還元工程で未還元物として生じたり(特開昭60−156638号公報)、又、原料となるプロピルハライド中に含まれるアリルブロミド、アリルクロリド、ジブロモプロパン等がアセト酢酸エステルと反応してしまった結果生じたり(特開昭63−122646号公報)して、バルプロ酸と混在することになる。【0008】本発明においては、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を含有するバルプロ酸塩水溶液に亜硫酸イオン、又は亜硫酸水素イオンを添加し、更に空気又は酸素を反応系中に吹き込むことが最大の特徴であり、このとき亜硫酸イオン、又は亜硫酸水素イオンの反応性を落とさないために水溶液のpHを4〜11、好ましくは7〜10、更に好ましくは8〜10に調整することが望ましい。亜硫酸イオン、又は亜硫酸水素イオンとpH調整試薬の添加順序には特に制限はなく、空気又は酸素を吹き込む前であればどちらが先でも差し支えない。【0009】以下、本発明の精製工程を順に説明する。まず、上記の不純物2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸を含有したバルプロ酸に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア水等のアルカリ水溶液を加え、バルプロ酸アルカリ塩水溶液を調製し、これに該不純物あたり少なくとも3当量以上の亜硫酸イオン、又は亜硫酸水素イオンを添加し、pH調整試薬で該水溶液のpHを4〜11、好ましくは7〜10、更に好ましくは8〜10となるように調整する。【0010】本発明に用いる亜硫酸イオン、又は亜硫酸水素イオンとしては反応系中で該イオンとして存在すればよく、それにはメタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二酸化イオウ等が挙げられるが、原料入手の容易さの点から特に好ましいのはメタ重亜硫酸ナトリウムであり、又、pH調整試薬としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸や酢酸、ギ酸等の有機酸、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア水等の塩基性物質が挙げられ、特に好ましいのは硫酸及び水酸化ナトリウムであるが、いずれもこれらに限定されるものではない。【0011】その後、該水溶液を0℃以上、好ましくは室温〜80℃で撹拌しながら、該水溶液中に10ml以上/分/l、好ましくは50〜300ml/分/lの空気又は酸素を通常10分間以上吹き込む。かかる処理により、バルプロ酸の不純物のみにスルホン化が起こり、スルホン酸ナトリウム塩付加物が生じるのであって、例えば2−アリル吉草酸のナトリウム塩の場合では、以下の化1に示す如き反応によって二重結合部にスルホン酸ナトリウム塩が付加された反応生成物、即ち2−プロピル吉草酸ナトリウムのスルホン酸ナトリウム塩が生じていると推察される。他の不純物(2,2−ジアリル酢酸、α−プロピル−β−エチルアクリル酸等)についても同様にスルホン酸ナトリウム塩が付加された反応生成物が容易に得られる。【0012】【化1】【0013】上記スルホン化の反応終了後は、該不純物のスルホン酸ナトリウム塩を系から分離するために該反応液の酸性化を行う。かかる酸性化によって、バルプロ酸の金属塩あるいはアンモニウム塩は水に難溶なバルプロ酸となり油層部を形成する。この時、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、塩化メチレン等の有機溶媒により抽出してもよい。水層部と油層部を2層分離させ油層部を分取する。そして、その後、該抽出物は水で洗浄され、抽出溶媒を用いた場合は溶媒除去されて、不純物のない精製されたバルプロ酸が得られるのである。一方、該スルホン酸ナトリウム塩又は該スルホン酸は水層に取り込まれて該水層とともに系外に取り除かれる。該酸性化に用いられる酸としては、前記と同様、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸や酢酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。【0014】かくして本発明の精製方法により得られるバルプロ酸は、2−アリル吉草酸や2,2−ジアリル酢酸を不純物として含有することのない高純度のバルプロ酸となる。勿論必要に応じて、更に蒸留等の精製処理を行うこともできる。【0015】【作用】本発明は、バルプロ酸の製造時に不純物としてバルプロ酸と混在してしまう2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸を、亜硫酸イオン又は亜硫酸水素イオンの存在下で、空気又は酸素と接触させることにより、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸をスルホン化し、スルホン酸塩又はスルホン酸として容易にバルプロ酸と分離することができ、製造面、収率面において非常に有利である。【0016】【実施例】以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。尚、実施例中、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。実施例1バルプロ酸の製造アセト酢酸メチル0.18モル、アリルクロリド0.54モル、炭酸カリウム0.38モル、ジメチルホルムアミド180mlにより反応を行い、2,2−ジアリルアセト酢酸メチル31.2gを製造し、次いで、メタノールで処理して2,2−ジアリル酢酸メチル22.5gを製造した。更に該2,2−ジアリル酢酸メチル22.5gを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解を行い、2,2−ジアリル酢酸を得、これをパラジウム/活性炭とともにオートクレーブ中で仕込み還元反応を行い、目的物のバルプロ酸を20.0g得た。かかるバルプロ酸中には、不純物として2−アリル吉草酸0.09%、及びα−プロピル−β−エチルアクリル酸1.1%が含まれていた(ガスクロマトグラフィーにより検出された)。【0017】バルプロ酸の精製上記2−アリル吉草酸0.09%、及びα−プロピル−β−エチルアクリル酸1.1%を含有したバルプロ酸20.0gに水11ml、25%水酸化ナトリウム水溶液30.7g、メタ重亜硫酸ナトリウム0.5gを混合しpH14の均一溶液を得た。該溶液に97%硫酸3.1gを加え、pH8.0に調整した後、27〜39℃で撹拌しながら、該溶液中に100ml/分の空気を70分間吹き込んだ。反応終了後、97%硫酸17.1gを加え、遊離した油層を分液し、該油層を水30mlで水洗したところ19.7gの油層を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、かかる油層中には不純物である2−アリル吉草酸及びα−プロピル−β−エチルアクリル酸は検出されなかった。尚、ガスクロマトグラフィーによる分析条件は次の通りである。カラム:DEGS15%+H3PO42% on chromosorb WAW(DMCS)3mmID.2m(ガラスカラム)カラム温度:140℃インジェクション温度:250℃検出器:FID range102(島津7A)キャリアーガス:ヘリウム 40ml/min【0018】実施例2バルプロ酸の製造テトラブチルアンモニウムブロミド0.032モル、35%水酸化ナトリウム水溶液36.6g、プロピルブロミド0.32モルを仕込み、撹拌しながらアセト酢酸メチル0.16モルを反応させ、2,2−ジプロピルアセト酢酸メチルを製造し、次いで、メタノールで処理してバルプロ酸メチルを製造した。更に該バルプロ酸メチルを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解を行い、目的物のバルプロ酸を20.0g得た。かかるバルプロ酸中には、不純物として2−アリル吉草酸0.07%、及び2,2−ジアリル酢酸0.01%が含まれていた(ガスクロマトグラフィーにより検出された)。【0019】バルプロ酸の精製上記2−アリル吉草酸0.07%、及び2,2−ジアリル酢酸0.01%を含有したバルプロ酸20.0gに水15ml、25%水酸化ナトリウム水溶液27g、亜硫酸水素ナトリウム0.3gを混合しpH13の均一溶液を得た。該溶液に50%硫酸水溶液を2.5g加え、pH9.0に調整した後、27〜39℃で撹拌しながら、該溶液中に80ml/分の空気を70分間吹き込んだ。反応終了後、50%硫酸水溶液を20.1g加え、遊離した油層を分液し、該油層を水30mlで水洗したところ19.6gの油層を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、かかる油層中には不純物である2−アリル吉草酸及び2,2−ジアリル酢酸は検出されなかった。【0020】【発明の効果】本発明の精製方法は、バルプロ酸の製造時に不純物としてバルプロ酸と混在してしまう2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸をスルホン化し、スルホン酸塩又はスルホン酸として容易にバルプロ酸と分離することができ、製造面、収率面において非常に有利である。 2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を含有するバルプロ酸塩水溶液を、亜硫酸イオン又は亜硫酸水素イオンの存在下で空気又は酸素と接触させ、2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を、該塩のスルホン酸塩又はスルホン酸付加物として、系から分離することを特徴とするバルプロ酸の精製方法。 2−アリル吉草酸及び/又は2,2−ジアリル酢酸の金属塩あるいはアンモニウム塩を含有するバルプロ酸塩水溶液のpHを4〜11に調整することを特徴とする請求項1記載のバルプロ酸の精製方法。