生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ワイルドライスより抽出した抗酸化物及びその製造方法
出願番号:1994164402
年次:2004
IPC分類:7,A61K31/19,A61K31/7034,A61K31/7048,A61K35/78,A61P43/00,C07H15/203,C07H15/26,C09K15/06,C09K15/08


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越智 宏倫 大澤 俊彦 竹内 征夫 JP 3584408 特許公報(B2) 20040813 1994164402 19940715 ワイルドライスより抽出した抗酸化物及びその製造方法 日研フード株式会社 591137031 鈴木 正次 100059281 越智 宏倫 大澤 俊彦 竹内 征夫 20041104 7 A61K31/19 A61K31/7034 A61K31/7048 A61K35/78 A61P43/00 C07H15/203 C07H15/26 C09K15/06 C09K15/08 JP A61K31/19 A61K31/7034 A61K31/7048 A61K35/78 A61P43/00 C07H15/203 C07H15/26 C09K15/06 C09K15/08 7 A61K 31/19 A61K 31/7034 A61K 31/7048 A61K 35/78 A61P 43/00 C07H 15/203 C07H 15/26 C09K 15/06 C09K 15/08 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平01−179678(JP,A) SHARMA, O. P.,Antioxidant activity of curcumin and related compounds,Biochemical Pharmacology,1976年,25/15,p1811-1812 2 1996026983 19960130 15 20000619 田名部 拓也 【0001】【産業上の利用分野】この発明はワイルドライスに含有している抗酸化物を抽出することを目的としたワイルドライスより抽出した抗酸化物及びその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】従来米種子の中には抗酸化因子が含まれていることが知られている。その代表的な物として、ビタミンEがあげられている。またインディカタイプの米の籾殻からは、イソビテキシンという抗酸化因子が単離・同定されている。これらは、種子の貯蔵・保存面において、種子の酸化的傷害を防ぐ重要な役割を果たしている。この酸化的傷害は、種子の貯蔵・保存における生物活性の低下を引き起し、発芽率の低下にもつながる。従つて発芽率の高い米種子には強い抗酸化因子が含まれているという推測ができるが、白色米より有色米のほうが発芽率が高いことに着目され、インディカタイプの黒米からアントシアニンが単離・固定されている。【0003】【発明により解決すべき課題】然るに前記インディカタイプの黒米よりも強い抗酸化性をもつ物質を研究した結果、ワイルドライスに含まれる抗酸化因子に到達したので、これを抽出すると共に、科学構造の解析及びその機能を解明した結果、3種の抗酸化因子を単離し、その化学構造を同定した。これら3種には、ケイ皮酸類縁体(3、4、5−trimethoxy cinnamic asid)が含まれている。【0004】フラボノイド類縁体の一つである80%−3は、配糖体であり、アグリコンにフラボノイドのルテオリン(Luteolin)を持つ。これはフェノール性水酸基をもつことで、脂質過酸化における脂質ラジカルの捕捉が考えられた。さらにオルトジヒドロオキシ(O−Dihydroxy )構造より金属キレート能、これらにより強い抗酸化性を示した。【0005】またケイ皮酸類縁体を含む物質、60%−3、80%−1、80%−2、80%−3(60%−3と80%−2は同一物質)は、80%−3を除いてフェノール性水酸基を持っていないが、抗酸化性を示した。これは、脂質ラジカル捕捉能や金属キレート能ではなく、フェントン反応により生じたヒドロキシラジカル(・OH)の捕捉であると各種抗酸化試験より推測された。【0006】即ち物の発明はワイルドライスより抽出した下記化学式よりなる抗酸化物である。【化3】【化4】【0007】また製造方法の発明は脱穀したワイルドライスを粉砕した後6Lのn−ヘキサンで脱脂し、吸引濾過する操作を行った後、残渣を6Lの95%エタノールによって抽出し吸引濾過したものを減圧濃縮し粗抽出物を得た。前記粗抽出物を、アンバーライトXAD−2カラムクロマトグラフィーを用いて水/メタノールの濃度勾配により分画し、その60%〜80%区分を抽出することを特徴としたワイルドライスより抽出する化学式1・化学式2よりなる抗酸化物の製造方法である。【0008】前記発明により抽出分画した80%−1、80%−2、80%−3について夫々につき考察する。【0009】(1) 80%−1について、図1より、ケミカルシフト6.43(ppm)と7.61(ppm)に、トランス型の二重結合の存在のを示すダブレット(J=16(Hz))が確認された。3.8(ppm)付近のシングレットのピークから、メトキシ基が考えられた。またこの物質の 1H−NMRは、すでに発明者がブラウンマスタードから単離・同定されたシナピン酸メチルエステル(sinapic acid methyl ester )の 1H−NMRと同様であると当初考えられたが、FT−1Rから2947cm−1にカルボン酸の0Hの吸収があることと、図2に示す13C−NMRの結果、図3に示した2次元NMRスペクトル(HMBC)により3つのメトキシ基のプロトンがベンゼン環の3,4,5位に相関があるため、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trimethoxy cinnamic acid)であるとが判明した。これらの機器分析の結果をまとめて表1に示した。【0010】【表1】【0011】(2) 80%−2について図4より、〈80%−1〉と同様にケミカルシフト6.47(ppm)と7.60(ppm)からトランス型の二重結合、3.8(ppm)付近から3つのメトキシ基が考えられた。また、6.9(ppm)から7.9(ppm)にベンゼン環由来、3.3(ppm)から5.1(ppm)には糖由来のピークが認められる。13C−NMR[図5]では、168.3(ppm)と199.1(ppm)にカルボニル由来のピークがある。そして、62(ppm)から105(ppm)の間に糖由来の12本のピークがあるため、この物質は、糖2分子の配糖体であると考えられる。各種NMRの結果アグリコンは、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trimethoxy cinnamic acid)とp−ヒドロキシアセトフェノン(hydroxy acetophenone)であると同定された。。また、配糖体の構成糖を調べるため、酸加水分解を行いTMS化し、GLC(GLC条件については、下に示す。)を用いた結果、構成糖はグルコースであることが判明した。なお、GLCでは標準サンプルとしてD−グルコースを使用した。糖とアグリコンの結合は、HMBC[図6]より3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trimethoxy cinnamic acid)のカルボニルの炭素と糖の6位に相関があり、p−ヒドロキシアセトフェノン(hydroxy acetophenone)の4位と糖の1位に相関があったことから、糖とアグリコンの結合様式が判明した。また、2次元NMRより糖と糖の結合は、3位と1位で結合していることが推測される。よって80%−2の機器分析の結果をまとめて表2に示した。【0012】【表2】【0013】【80%−2の構成糖確認のためのGLC条件】【0014】(3) 80%−3について、図7より、〈80%−1〉,〈80%−2〉と同様にケミカルシフト6.26(ppm)と7.42(ppm)からトランス型の二重結合、3.8(ppm)付近から3つのメトキシ基が考えられた。また、6.0(ppm)から7.7(ppm)にベンゼン環由来、3.3(ppm)から5.0(ppm)には糖由来のピークが認められた。図8では、168.3(ppm)と183.4(ppm)にカルボニル由来のピークがみられた。そして、65(ppm)から103(ppm)の間に糖由来と考えられる6本のピークがあるため、この物質も、配糖体であると考えられる。各種NMRの結果からアグリコンの一つは、〈80%−1〉,〈80%−2〉と同様の3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trimethoxy cinnamic acid)であり、もう一つはフラボノイドのルテオリン(Luteolin)であることが推測される。そこで、文献値のルテオリン(Luteolin)の13C−NMRと比較したところ、ケミカルシフトがほぼ一致した。また、配糖体の構成糖を調べるため、酸加水分解を行いTMS化し、GLC(GLC条件については、下に示す。)を用いた結果、構成糖はグルコースであることが判明した。なお、GLCでは標準サンプルとしてD−グルコースを使用した。糖とアグリコンの結合様式は、HMBCより3,4,5−トリメトキシケイ皮酸の9位のカルボニルと糖の6位の水素に相関があった。しかし、ルテオリン(Luteolin)の結合様式については確認できなかった。そこで、メタノリシスにより、構成糖をTMS化しGLCで調べた結果、D−グルコースの1位がメチル化されたα−メチル−D−グルコシドであったため、糖の1位が結合に関与していることが示唆された。また、13C−NMRにおけるルテオリン(Luteolin)と文献値のルテオリンの比較から、3”位を中心にケミカルシフトがずれているため、糖の1位と結合していると推測された。そこで80%−3の機器分析の結果を表3にまとめて示した。【0015】【表3】【0016】【80%−3の構成糖確認の為のGLC条件】【0017】【実施例】脱穀したワイルドライス1kgを粉砕した後6Lのn−ヘキサン18リットルで脱脂し、吸引濾過する操作を2回行つた。この残渣を6Lの95%エタノール18リットルによって2回抽出し吸引濾過したものを減圧濃縮し粗抽出物6gを得た。【0018】前記粗抽出物を、アンバーライトXAD−2カラムクロマトグラフィーを用いて水/メタノールの濃度勾配により分画し、6つの抽出分画とアセトン3リットルの抽出による画分を得た(図9)。【0019】前記各画分について、リノール酸の過酸化誘導を用いた抗酸化試験により、抗酸化活性を測定した所(図10)、80%区分の前後で活性が強いことが判つた。そこでこの80%区分を、さらに分取用HPLCにより、80%−1、80%−2、80%−3の3つの区分に分けて得られた各物質の抗酸化活性及びヒドロキシラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカル捕捉能について検討した(図11)。【0020】【試験例1】リノール酸の過酸化誘導による抗酸化試験。【0021】モル濃度を50μMに統一し、リノール酸のフェントン反応による過酸化誘導[図12]を行った。重量濃度による抗酸化試験(図13)と比較したところ、80%−1と80%−3の抗酸化性が強くなった。分子量の大きい80%−3については、濃度が高くなったために抗酸化性が強くなったと予測される。また、80%−1については、高濃度よりも低濃度において、より強い抗酸化性を示すことが予測される。【0022】【試験例2】ウサギ赤血球膜ゴースト脂質酸化による抗酸化試験。【0023】リノール酸の過酸化誘導の結果から、抗酸化性の強い80%−1と80%−3について、ここでは、生体のモデル系としてウサギ赤血球膜ゴーストの脂質酸化系を用いて抗酸化性を検討した(図14)。脂質酸化抑制率は低いものの、80%−3には弱いながらも抗酸化性が見られた。フェノール性水酸基を持たない80%−1については、ほとんど抗酸化性が見られなかった。【0024】【試験例3】2−デオキシリボースの酸化分解による抗酸化試験。【0025】収量が高くフェノール性水酸基を持たない80%−1について、2−デオキシリボースの酸化分解により、ヒドロキシラジカル(・OH)の捕捉能について検討した(図15)。対照として用いたα−トコフェロールと同等の強い抗酸化性を示したことから、80%−1におけるヒドロキシラジカルの捕捉能が確認された。【0026】【試験例4】キサンチン/キサンチンオキシダーゼ/NBT法による試験。【0027】2−デオキシリボースの酸化分解と同様に、収量が高くフェノール性水酸基を持たない80%−1について、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2 − )の捕捉能について検討した(図16)。2mMという高濃度においてほとんど活性を示さなかったため、80%−1は、スーパーオキシドアニオンラジカルの捕捉能がないと考えられる。【0028】前記抗酸化試験の結果、ワイルドライスから単離・同定された4種の抗酸化因子には、それぞれ抗酸化性が認められた。中でも、80%−1,80%−3は、リノール酸のヒドロキシラジカルによる過酸化誘導を用いた抗酸化試験から、抗酸化性が強いことが確認された。80%−3については、ウサギ赤血球膜ゴーストの脂質酸化から、脂質ラジカルの捕捉能が推測された。また、80%−1については、2−デオキシリボースの酸化分解から、ヒドロキシラジカルの捕捉能が推定された。これらの結果から、リノール酸の過酸化誘導において、80%−1,80%−3に抗酸化性が見られた要因としては次のことが考えられる。80%−1では、フェントン反応によって生じたヒドロキシラジカルの捕捉により、リノール酸の過酸化を抑制するものと推定される。また、80%−3では、脂質ラジカルの捕捉による抑制が主であると推測される。【0029】【発明の効果】この発明によれば、ワイルドライスから単離・同定した抗酸化物は、それぞれ高い抗酸化性が認められたので、これを抗酸化剤として使用することができる、然してこの発明の製造法によればワイルドライスから、抗酸化性物質を容易に単離できる効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】この発明における80%−1とシナピン酸メチルエステルの 1H−NMRスペクトルの比較。【図2】同じく80%−1とシナピン酸メチルエステルの13C−NMRスペクトルの比較。【図3】同じく80%−1の2次元NMRスペクトル(HMBC法)。【図4】同じく80%−2の 1H−NMRスペクトル。【図5】同じく80%−213C−NMRスペクトル。【図6】同じく80%−2の2次元NMRスペクトル(HMBC法)。【図7】同じく80%−3の 1H−NMRスペクトル。【図8】同じく80%−3の13C−NMRスペクトル。【図9】同じくワイルドライスのアルコール抽出物のアンバーライトXAD−2カラムクロマトグラフィーによる分離。【図10】同じく図9で分けた区分の抗酸化活性。【図11】同じく80%メタノール区分の分取用HPLCによる分離。【図12】リノール酸を基質とし、フェントン反応による過酸化誘導を行つたモデル系による抗酸化試験。【図13】同じく重量法による抗酸化試験。【図14】同じくうさぎ赤血球膜ゴースト脂質過酸化系における抗酸化試験。【図15】同じく2−デオキシリボースの酸化分解によるヒドロキシラジカル捕捉能活性。【図16】同じくキサンチン/キサンチンオキシダーゼ/NBT法によるスーパーオキシドアニオンラジカル捕捉能試験。 ワイルドライスより抽出した下記化学式よりなる抗酸化物。 脱穀したワイルドライスを粉砕した後6Lのn−ヘキサンで脱脂し、吸引濾過する操作を行った後、残渣を6Lの95%エタノールによって抽出し吸引濾過したものを減圧濃縮し粗抽出物を得た。前記粗抽出物を、アンバーライトXAD−2カラムクロマトグラフィーを用いて水/メタノールの濃度勾配により分画し、その60%〜80%区分を抽出することを特徴としたワイルドライスより抽出する請求項1記載の抗酸化物の製造方法。


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