タイトル: | 特許公報(B2)_フォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法 |
出願番号: | 1994098378 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C01G23/00,C01G49/00,C08K3/22,C08K9/02,C09C1/36,C09D7/12,C09K9/00,G03C1/725,G03C1/73,G03C1/735,A61K7/02,C09D5/00 |
原川 正司 山本 和夫 JP 3583161 特許公報(B2) 20040806 1994098378 19940512 フォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法 朝日化学工業株式会社 000213840 久保山 隆 100093285 中山 亨 100113000 榎本 雅之 100119471 原川 正司 山本 和夫 JP 1993110265 19930512 20041027 7 C01G23/00 C01G49/00 C08K3/22 C08K9/02 C09C1/36 C09D7/12 C09K9/00 G03C1/725 G03C1/73 G03C1/735 A61K7/02 C09D5/00 JP C01G23/00 C C01G49/00 A C08K3/22 C08K9/02 C09C1/36 C09D7/12 C09K9/00 C G03C1/725 503 G03C1/73 503 G03C1/735 A61K7/02 C09D5/00 Z 7 C01G 23/00 C09K 9/00 特開平05−017152(JP,A) 9 1995025617 19950127 11 20010507 大工原 大二 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、フォトクロミック性という演色効果を有する塗料、印刷、樹脂着色、化粧料、光メモリー等の分野に適した酸化チタン系化合物の製造法に関するものである。【0002】【従来の技術】サングラスに代表されるように、光の強度により可逆的に色が変化するフォトクロミズムという特異な機能の利用が行われている。フォトクロミズムを発現する化学物質としては既にハロゲン化銀類、スピロピラン系有機化合物が知られている。また酸化チタンについては鉄、クロム、マンガン等の金属類の存在下でフォトクロミズムを示すことが知られており、例えば特開昭63−132811号公報、特開平4−364117号公報、特開平5−17152号公報、特開平5−51209号公報や国際公開特許WO−89/12084号公報に開示されている。【0003】しかしながら上記特許に開示されているように、酸化チタンにフォトクロミック性を付与する金属粉自体あるいはその硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等の金属塩や酸化物、水酸化物を単に混合し焼成しただけでは、得られた粉末そのものが発現するフォトクロミズムの程度は弱いものであり、実際この程度の色度の変化では、各種用途において他の構成成分と混合使用した場合には、その効果が希釈されるため顕著な色調変化が認められ難く、実用面での性能は必ずしも満足のいくレベルには到達していなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、種々の用途に使用可能な、実用レベルに供し得る優れたフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法を提供することにある。本発明者らはフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法につき検討した結果、有機チタン化合物とフォトクロミック性を付与する金属を含む有機化合物とを特定の方法で混合後、該混合物を共に加水分解、焼成することにより優れたフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物が得られることを見出し本発明を完成するに至った。【0005】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は有機チタン化合物と、ナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン及び銀より選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機化合物とを有機溶媒に溶解することによって混合する工程、該混合物を実質的に共に加水分解する工程、および該加水分解により得られた生成物を焼成する工程、からなるフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法に関するものである。【0006】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明に用いる有機チタン化合物としては、加水分解性を有する有機チタン化合物であれば任意のものを選択して使用することができる。この様な有機チタン化合物としては一般式Ti(OR)n X4−n (但し、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Xは有機基又はハロゲン原子を表し、nは0<n≦4の整数を示す。)で表されるチタンアルコキシド類、有機チタンキレート化合物、有機チタン錯体等が挙げられる。【0007】具体的なチタンのアルコキシド類としては、例えばチタンを炭素数1〜17のアルコールとのアルコキシド類,特に工業的に重要なものとしてはテトラ−i−プロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン,テトラステアロキシチタンが挙げられる。有機チタンキレート化合物としては、具体的にはチタンとキレート化剤の酸素や窒素原子とが配位した化合物、例えばチタンアセチルアセトナート、アセト酢酸エチルチタネート、サリチルアルデヒドエチレンイミンチタネート、ジアセトンアルコキシチタン、オクチレングリコキシチタン、トリエタノールアミンチタネート、乳酸チタネート等が挙げられる。また有機チタン錯体としてはシクロペンタンジエン等の配位子を有する化合物、例えばモノシクロペンタジエルチタントリハライド、ジシクロペンタジエニルチタンジハライド、シクロペンタジエニルチタントリメトキサイド、シクロペンタジエニルチタントリエトキサイド、シクロペンタジエニルトリプロポキサイド等が挙げられる。【0008】これら有機チタン化合物は単一で又は二種以上混合して用いられる。また上記の有機チタン化合物を縮重合した化合物、例えばチタンアルコキシド類を部分加水分解して得られる該アルコキシド類の2量体、3量体、4量体等のオリゴマーや特定の有機基で一部を置換した化合物、例えばチタンアルコキシド類に酢酸等を作用させて一部酢酸エステルとした化合物等として用いてもよく、この場合、希望する形状に加工する際の成形性を制御する上で都合が良い場合がある。チタンアルコキシドのオリゴマー、部分的にアセトキシ基で置換したチタンアルコキシドやアセトキシで部分置換したチタンアルコキシドのオリゴマーはピ・シ・ブラドリー(P.C.Bradly)等の「メタルアルコキシドズ(Metal Alkoxides )」に記載されている如く容易に入手できるものである。【0009】他方、本発明に於いてはフォトクロミック性を付与する為にナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、モリブデン及び銀より選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機化合物を有機チタン化合物とともに有機溶媒に溶解させ混合する。該金属を含む有機化合物としては、有機チタン化合物を溶解し得る溶媒に溶解し、加水分解性を有するものであれば任意のものを選択して用いることができる。【0010】金属を含む有機化合物の代表例としては、(1) M(OR’)X もしくは VO(OR’)X で示される金属アルコキシド(式中、Mはナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マグネシウム、シリコン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、銀;R’は炭素数1〜5のアルキル基;Xは金属の原子価に対応する1〜5の整数を示す。)(2) β−ジケトン配位子を有する金属錯体(3) M(OCOCn H2n+1)X 【0011】【化1】【0012】【化2】で示される金属セッケン〔式中のM,Xは(1)の定義と同一である〕(4) フェロセンのようなメタロセンが挙げられる。【0013】金属アルコキシドの例としてはメトキシナトリウム、エトキシナトリウム、n−プロポキシナトリウム、i−プロポキシナトリウム、n−ブトキシナトリウム、i−ブトキシナトリウム、t−ブトキシナトリウム;トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリ−n−プロポキシ鉄、トリ−i−プロポキシ鉄、トリ−n−ブトキシ鉄、トリ−i−ブトキシ鉄、トリ−t−ブトキシ鉄;トリメトキシバナジル、トリエトキシバナジル、トリ−n−プロポキシバナジル、トリ−i−プロポキシバナジル、トリ−n−ブトキシバナジル、トリ−i−ブトキシバナジル、トリ−t−ブトキシバナジル;ジメトキシマンガン、ジエトキシマンガン、ジ−n−プロポキシマンガン、ジ−i−プロポキシマンガン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン;ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、ジ−n−プロポキシ亜鉛、ジ−i−プロポキシ亜鉛、ジ−n−ブトキシ亜鉛、ジ−i−ブトキシ亜鉛、ジ−t−ブトキシ亜鉛;トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−i−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム;ペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−t−ブトキシニオブ等が挙げられる。【0014】β−ジケトン配位子を有する金属錯体の例としては鉄アセチルアセトナート、クロムアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、バナジルアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、セリウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート等が挙げられる。【0015】金属セッケンの例としてはエタン酸ナトリウム、プロパン酸ナトリウム、ブタン酸ナトリウム、ヘキサン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ウンデカン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、テトラデカン酸ナトリウム、ヘキサデカン酸ナトリウム、オクタデカン酸ナトリウム、ナフテン酸ナトリウム;トリエタン酸鉄、トリプロパン酸鉄、トリブタン酸鉄、トリヘキサン酸鉄、トリオクタン酸鉄、トリノナン酸鉄、トリデカン酸鉄、トリウンデカン酸鉄、トリドデカン酸鉄、トリテトラデカン酸鉄、トリヘキサデカン酸鉄、トリオクタデカン酸鉄、トリナフテン酸鉄;トリエタン酸クロム、トリプロパン酸クロム、トリブタン酸クロム、トリヘキサン酸クロム、トリオクタン酸クロム、トリノナン酸クロム、トリデカン酸クロム、トリウンデカン酸クロム、トリドデカン酸クロム、トリテトラデカン酸クロム、トリヘキサデカン酸クロム、トリオクタデカン酸クロム、トリナフテン酸クロム;ジエタン酸銅、ジプロパン酸銅、ジブタン酸銅、ジヘキサン酸銅、ジオクタン酸銅、ジノナン酸銅、ジデカン酸銅、ジウンデカン酸銅、ジドデカン酸銅、ジテトラデカン酸銅、ジヘキサデカン酸銅、ジオクタデカン酸銅、ジナフテン酸銅;ジエタン酸ニッケル、ジプロパン酸ニッケル、ジブタン酸ニッケル、ジヘキサン酸ニッケル、ジオクタン酸ニッケル、ジノナン酸ニッケル、ジデカン酸ニッケル、ジウンデカン酸ニッケル、ジドデカン酸ニッケル、ジテトラデカン酸ニッケル、ジヘキサデカン酸ニッケル、ジオクタデカン酸ニッケル、ジナフテン酸ニッケル;ジエタン酸マンガン、ジプロパン酸マンガン、ジブタン酸マンガン、ジヘキサン酸マンガン、ジオクタン酸マンガン、ジノナン酸マンガン、ジデカン酸マンガン、ジウンデカン酸マンガン、ジドデカン酸マンガン、ジテトラデカン酸マンガン、ジヘキサデカン酸マンガン、ジオクタデカン酸マンガン、ジナフテン酸マンガン;トリエタン酸アルミニウム、トリプロパン酸アルミニウム、トリブタン酸アルミニウム、トリヘキサン酸アルミニウム、トリオクタン酸アルミニウム、トリノナン酸アルミニウム、トリデカン酸アルミニウム、トリウンデカン酸アルミニウム、トリドデカン酸アルミニウム、トリテトラデカン酸アルミニウム、トリヘキサデカン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、トリナフテン酸アルミニウム;ジエタン酸コバルト、ジプロパン酸コバルト、ジブタン酸コバルト、ジヘキサン酸コバルト、ジオクタン酸コバルト、ジノナン酸コバルト、ジデカン酸コバルト、ジウンデカン酸コバルト、ジドデカン酸コバルト、ジテトラデカン酸コバルト、ジヘキサデカン酸コバルト、ジオクタデカン酸コバルト、ジナフテン酸コバルト;エタン酸銀、プロパン酸銀、ブタン酸銀、ヘキサン酸銀、オクタン酸銀、ノナン酸銀、デカン酸銀、ウンデカン酸銀、ドデカン酸銀、テトラデカン酸銀、ヘキサデカン酸銀、オクタデカン酸銀、ナフテン酸銀等が挙げられる。【0016】これらフォトクロミック性を付与する金属の有機化合物の中、特にナトリウムエトキサイド等の金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナートのようなβ−ジケトン錯体、ナフテン酸銅のような金属セッケン、フェロセンのような有機金属錯体が好ましい。【0017】該金属を含む有機化合物を混合する量は、該金属を含む有機化合物を対応する金属の酸化物の量に換算するとき酸化チタン系化合物に対して通常0.05〜8.0重量%、好ましくは0.1〜5重量%となる量である。【0018】有機溶媒としては、有機チタン化合物と該金属を含む有機化合物を共に溶解するものならどの様なものも用いることができるが、好ましくは凝固点が50℃以下、より好ましくは−130℃〜50℃で、沸点が250℃以下、より好ましくは室温〜250℃の間の沸点を有するものが用いられる。【0019】これら溶媒の例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチアルアルコール、tert−ブチアルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール等のアルコール類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、ノナン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トリエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、テトラリン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン等のケトン類;が挙げられる。【0020】これらの溶媒は単独でも、又はこれらの中から2種類以上を混合しても用いることができる。中でもアルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec −ブタノール又はtert−ブタノール等、芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレン等、エーテルとしてはジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等、ケトンとしてはアセトン、メチルエチルケトン等、脂肪族炭化水素としてはペンタン、ヘキサン、オクタン等が好適である。【0021】その使用量は、所定量の有機チタン化合物及び該金属を溶解するのに必要な量以上であれば特に制限されないが、一般的には0.1重量%〜90重量%、好ましくは1重量%から80重量%の範囲で溶解される。【0022】有機チタン化合物と該金属を含む有機化合物の有機溶媒への溶解は、例えば攪拌羽根の付いた槽型反応器を用いる方法等公知の方法を採用することができる。両者の溶解方法は特に制限されず、例えば予め有機チタン化合物或いは該金属を含む有機化合物のいずれかを有機溶媒中に溶解しておき、これに他方の化合物を投入し溶解する方法、予め両者別々の溶液を作成後混合する方法、更には有機溶媒中に両者を同時に投入し溶解する方法等、適宜選択して行うことができる。加熱したり、還流しながら攪拌し溶解することは均一の溶液を得る上で有効である。【0023】有機チタン化合物と該金属を含む有機化合物とを有機溶媒に溶解することにより得られる化合物(以下該混合物と呼ぶことがある。)は実質的に共に加水分解される。ここで「実質的に共に加水分解される」とは、有機チタン化合物及び該金属を含む有機化合物がほぼ並行して加水分解されることを意味し、この加水分解を共加水分解と呼ぶことがある。該共加水分解における水の接触方法としては公知の方法が採用できる。水を液体状で接触させる場合は例えば、水や水を含む他の溶媒を、該混合物の溶液に添加したり、逆に水や水を含む他の溶媒に該混合物溶液を滴下する方法を挙げることができる。水を気体状にて接触させる場合は、例えば該混合物の溶液を水蒸気雰囲気中に押し出したり、水蒸気含有窒素や水蒸気自体を該混合物の溶液に吹き込む方法を挙げることができる。また該混合物の溶液は該共加水分解に先立って有機溶媒の一部を予め留去しておいてもよいし、該共加水分解後、有機溶媒を留去してもよい。また該共加水分解と有機溶媒の留去を同時に行うこともできる。【0024】用いられる適切な水の量は、使用する有機チタン化合物や該金属を含む有機金属化合物の濃度、共加水分解温度、攪拌条件等により一義的ではなく、通常、特定の条件で共加水分解し、得られた加水分解物を焼成したもののフォトクロミック性を評価したりモニターすることによって決めるが、一般的には、該混合物に含まれる有機チタン化合物と該金属を含む有機化合物の全モル数に対して少なくとも1モル以上、通常は1〜100モルの水が用いられる。該共加水分解温度は、有機チタン化合物及び該金属を含む有機化合物の分解温度より低い温度であれば特に制限されず、室温下でも、生産性の点を考慮して加熱下でも共に行うことができる。【0025】本発明に於いて、該混合物を実質的に共に加水分解及び有機溶媒の除去により得られる加水分解生成物(以下該加水分解生成物と呼ぶことがある。)の形状は限定されるものではなく、各用途において粉体状、板状又は薄片状、繊維状及び各種基板、基材、粉体の表面にコーティングした形状等必要に応じた形状に加工・製造される。例えば粉体や板状、薄片状のものは塗料、印刷、樹脂フィラー、化粧品等の分野に適している。繊維状のものは建設、装飾分野に、又各種表面にコーティングしたものはシャッター、センサー等に適している。【0026】任意の形状の該加水分解生成物を製造する為には公知の加工方法を用いる事ができる。例えば粉体状の場合は、該混合物の溶液に水を接触させて液相にて加水分解したり、スプレードライやドラム乾燥にて空気中や気相中の水分と接触させて共加水分解して製造される。また板状や薄片状の該加水分解生成物を製造するにはドラムフレーカーやベルト状の基材に液膜を塗布し、次いで空気中の水分と接触せしめた後、剥離する事により製造できる。この際、所望の形状の該加水分解生成物は有機チタン化合物の濃度、溶媒蒸発の為の加熱温度、加水分解する際の気相中の水分濃度や温度を適宜選択することにより得られる。繊維状に加工するには、水との縮重合で有機チタン溶液を高分子量化したり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン等の有機ポリマーを添加して曳糸性を高めた液を乾式紡糸したり、遠心紡糸、エアージェット紡糸した後共加水分解する事により製造する事ができる。基材の表面にコーティングする場合は、基材を該混合物の溶液に浸漬したり、塗布したりする事により該混合物の液膜を基材表面に形成した後、溶媒の蒸発と該混合物の共加水分解を行う事により製造される。【0027】以上の方法により得られる任意の形状に加工された該加水分解生成物を、次いで約500〜約750℃、好ましくは550〜700℃の温度で通常約1時間以上、好ましくは1〜3時間焼成することにより、任意の形状に加工されたフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物が得られ、該酸化チタン系化合物はそのまま、或いは必要に応じて中和処理や解砕、粉砕、篩別、表面処理をして各種用途に用いられる。【0028】本発明により得られるフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物は、他の物質と混合或いは希釈されて用いられても、フォトクロミズムによる変色度合を明確に識別できる10以上の色差ΔEを有しており、極めて利用価値の高いものである。【0029】【発明の効果】以上詳述したように本発明方法によれば、粒子状、板状或いは薄片状、繊維状及びコーティング層等の各種形状で、優れたフォトクロミック性を有した酸化チタン系化合物を得ることができる。また本発明で得られた薄片状酸化チタンは、従来の薄片状酸化チタンの持つ白色度及び隠蔽性、形状による薄片の層状配列や付着性という機能は勿論のこと、ある種の金属、例えば酸化鉄等を含有するものにあってはファンデーションのような化粧料に適用した場合には、従来の化粧料が呈した室内で仕上げた化粧が明るい太陽光線下では白さが浮き上がり過ぎるという欠点を、その優れたフォトクロミック性により、室内で合わせた化粧肌の色が太陽光線下において素早く反応変色して、戸外においても化粧肌の色の白さが目立たず、自然で美しく見えるメークアップ化粧料の提供を可能とするものである。また、看板、ディスプレー等に使用すると、照明に応じて白さが代わり周囲との調和の取れた白さを演出できる等、各種化粧料や塗料、樹脂充填材等に適用可能であり、その工業的価値は頗る大なるものである。【0030】【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0031】なお、本発明におけるフォトクロミズムの評価は、本発明法により得られた粉状、粒子状、板状或いは薄片状物質をそのまま暗所に12時間以上保管した後、2mW/cm2 の強度で紫外線を1時間照射し、紫外線照射前後の色の変化を色差計(Z−1001DP;日本電色工業(株)製)にて測定し、色差(CIELAB表色系による色差△E)を求めた。又退色率については、紫外線照射1時間後の色度と、紫外線を1時間後照射した後暗所に10分間保管した時の色度から次式により求めた。退色率(%)={色度(UV1時間照射後)−色度(暗所10分間保管後)}/色度(UV1時間照射後)×100【0032】実施例1300mlの3口セパラブルフラスコにテトライソプロポキシチタン32g、トリイソプロポキシ鉄0.045gとイソプロピルアルコール114gを仕込んだ。室温で1時間攪拌し、イソプロポキシ鉄が完全に溶解した後、水8.1gをイソプロピルアルコール154gに溶解した溶液を室温で30分かけて滴下し、共加水分解した。その後、オイルバスにて加熱し、溶媒のイソプロピルアルコールを留去し、該加水分解生成物の粉末を得た。得られた粉末を磁製坩堝に入れ、電気炉で150℃/Hrの昇温速度で560℃まで昇温し、この温度で1時間保持した。得られた酸化チタン系化合物粉末のフォトクロミック性を測定した所、ΔEは29、退色率は30%であった。【0033】実施例2〜3表1に記載した有機チタン化合物、金属を含む化合物、溶媒及び共加水分解用の水を溶解した溶媒を用い、焼成温度を表1の条件で実施した他は実施例1と同様にして酸化チタン系粉末を製造し、フォトクロミック性を測定した。結果を表1に示す。【0034】【表1】表中、* Fe(AcAc)3は鉄アセチルアセトナートである。【0035】実施例4300mlの3口セパラブルフラスコにトルエン22g、テトライソプロポキシチタン32gを仕込み、攪拌しながら1.15gの水と28gのイソプロピルアルコールと30gのトルエンを混合した溶液を滴下し、テトライソプロポキシチタンを2量体に縮合した。次いで酢酸4.05gを滴下し、部分アセチル化を行った後、鉄アセチルアセトナート0.102g、ナトリウムエチラート0.719gを添加、溶解して薄片用原液を調整した。この原液を90℃に加熱した回転している直径150mmφのドラム上にゴムロールを介して展着させ、液膜を形成した後、溶媒蒸発及び加湿した空気により加水分解を行った。この過程でロール上にヒビの入った薄片が形成されるので、掻き取り刃で掻き取り薄片を得た。次いでこの薄片を電気炉で680℃まで100℃/Hrの昇温速度で昇温し、この温度で1時間保持した。このようにして得られた酸化チタン系化合物薄片のΔEは13、退色率は45%であった。【0036】比較例1300mlの3口セパラブルフラスコにテトライソプロポキシチタン32g、イソプロピルアルコール114gを仕込み、これに水8.1gをイソプロピルアルコール154gに溶解した溶液を滴下し、室温で加水分解した。加水分解後オイルバスにて加熱し、溶媒のイソプロピルアルコールを留去し、加水分解粉末を得た。得られた加水分解粉末を硝酸第二鉄0.20gを溶解した31gの水の中に加えて含浸した後、4N苛性ソーダ溶液1.1gを添加して中和した。オイルバスで加熱し、水を蒸発した後電気炉にて150℃/Hrの昇温速度で600℃まで昇温し、この温度で1時間保持した。得られた酸化チタン系化合物粉末のΔEは4、退色率は46%であった。【0037】比較例2300mlの3口セパラブルフラスコにトルエン22g、テトライソプロポキシチタン32gを仕込み、攪拌しながら1.15gの水と28gのイソプロピルアルコールと30gのトルエンを混合した溶液を滴下し、テトライソプロポキシチタンを2量体に縮合した。次いで酢酸4.05gを滴下し、部分アセチル化を行い、薄片化原液を作製した。この原液を90℃に加熱した回転している直径150mmφのドラム上にゴムロールを介して展着させ、液膜を形成した後、溶媒蒸発及び加湿した空気による加水分解を行った。この過程でロール上にヒビの入った薄片が形成されるので、掻き取り刃で掻き取り薄片を得た。硝酸第二鉄0.17gを水23.2gに溶解し、これに薄片10gを加え含浸した。4N苛性ソーダ溶液1.8gを加えて中和した後、エアーバスで加熱して水を蒸発した。電気炉にて600℃まで150℃/Hrの昇温速度で加熱し、この温度で1時間保持した。このようにして得られた酸化チタン系化合物フレークのΔEは5で退色率は54%であった。【0038】比較例3超微粒子のチタニア(商品名P−25 デグッサ社製)9gと超微粒子酸化鉄(商品名 ナノタイト 昭和電工(株)製)0.027gを振動ミルにて30分間、混合し粉砕した。この粉末を坩堝に入れて電気炉で150℃/時間の昇温速度で560℃まで昇温し、この温度で1時間保持した。得られた酸化チタン系化合物粉末のフォトクロミック性を測定した所、ΔEは3、退色率は67%であっった。【0039】比較例4300mlの3口セパラブルフラスコにテトライソプロポキシチタン32g、イソプロピルアルコール114gを仕込み、これに水8.1gをイソプロピルアルコール154gに溶解した溶液を滴下し室温で加水分解した。加水分解後オイルバスにて加熱し溶媒のイソプロピルアルコールを留去し、加水分解粉末を得た。この粉末を硫酸銅0.11gを溶解した30gの水溶液に加えて攪拌しながらオイルバスで加熱し水を蒸発した。得られた粉末を電気炉で150℃/Hrの昇温速度で600℃まで加熱し、この温度で1時間保持した。得られた酸化チタン系化合物粉末のフォトクロミック性を測定した所、ΔEは3、退色率は10%であった。【0040】比較例5300mlの3口セパラブルフラスコにテトライソプロポキシチタン32g、イソプロピルアルコール114gを仕込み、これに水8.1gをイソプロピルアルコール154gに溶解した溶液を滴下し室温で加水分解した。加水分解後オイルバスにて加熱し溶媒のイソプロピルアルコールを留去し、加水分解粉末を得た。この粉末を塩化ニオブ0.048gを30gのエタノールに溶解した溶液に加えて攪拌しながら1Nの苛性ソーダ水溶液4.4gを室温で滴下して塩化ニオブを加水分解した。次いでオイルバスで加熱し溶媒を留去した後、電気炉で150℃/Hrの昇温速度で560℃まで加熱し、この温度で1時間保持した。得られた酸化チタン系化合物粉末のフォトクロミック性を測定した所、ΔEは4、退色率は10%であった。 有機チタン化合物と、ナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン及び銀より選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機化合物とを有機溶媒に溶解することによって混合する工程、該混合物を実質的に共に加水分解する工程、および該加水分解により得られた生成物を焼成する工程、からなるフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 有機チタン化合物がチタンアルコキシド類、有機チタンキレート化合物または有機チタン錯体であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 有機チタン化合物がチタンアルコキシド類であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 有機チタン化合物がテトラ−i−プロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン,テトラステアロキシチタン、チタンアセチルアセトナート、アセト酢酸エチルチタネート、サリチルアルデヒドエチレンイミンチタネート、ジアセトンアルコキシチタン、オクチレングリコキシチタン、トリエタノールアミンチタネート、乳酸チタネート、モノシクロペンタジエルチタントリハライド、ジシクロペンタジエニルチタンジハライド、シクロペンタジエニルチタントリメトキサイド、シクロペンタジエニルチタントリエトキサイド及びシクロペンタジエニルトリプロポキサイドから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 有機チタン化合物がチタンアルコキシド類のオリゴマー又はチタンアルコキシド類の部分酢酸エステルであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 ナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン及び銀から選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機化合物がナトリウム、鉄、銅又はニオブを含むものであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 ナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン及び銀から選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機化合物が、該金属のアルコキシド類又は該金属のキレート化合物であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 ナトリウム、鉄、クロム、銅、ニッケル、バナジウム、マンガン、珪素、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン及び銀から選ばれる少なくとも1種の金属を含む有機化合物の量が、該金属を含む有機化合物を酸化物の量に換算するとき酸化チタン系化合物に対し、0.05〜8.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造法。 該混合物を実質的に共に加水分解する工程を、気体状の水の存在下に行うことを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタン系化合物の製造方法。