| タイトル: | 特許公報(B2)_チオアセタール化合物、単量体組成物及び光学用材料 |
| 出願番号: | 1994094496 |
| 年次: | 2004 |
| IPC分類: | 7,C07D495/10,C08F212/04,C08F228/06,G02B1/04 |
宮▲崎▼ 剛 中島 弘充 鯉沼 康美 JP 3543359 特許公報(B2) 20040416 1994094496 19940506 チオアセタール化合物、単量体組成物及び光学用材料 日本油脂株式会社 000004341 酒井 一 100081514 宮▲崎▼ 剛 中島 弘充 鯉沼 康美 20040714 7 C07D495/10 C08F212/04 C08F228/06 G02B1/04 JP C07D495/10 C08F212/04 C08F228/06 G02B1/04 7 C07D495/10 CAPLUS(STN) REGISTRY(STN) 特開平2−160762(JP,A) 特開平2−29401(JP,A) 3 1995304778 19951121 11 20010316 大久保 元浩 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、新規なチオアセタール化合物、光学用材料、塗料用樹脂、装飾用樹脂等に利用可能な新規なチオアセタール化合物を含有する単量体組成物及びこの単量体組成物を重合硬化させた、眼鏡用、OA機器用等のプラスチックレンズ等に有用な光学用材料に関する。【0002】【従来の技術】近年、軽量性、成形容易性、耐衝撃性及び染色性等に優れた合成樹脂が、無機硝子に代わってプラスチックレンズ材料等として使用されている。前記合成樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリスチレン、ポリカーボネート等が知られている。ポリメチルメタクリレート、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネートは、軽量で耐衝撃性等に優れるが、屈折率が1.49程度と低いため、レンズとして用いる場合には、無機硝子に比べてレンズが厚くなり、高倍率化、軽量化には適さないという欠点がある。またポリスチレン、ポリカーボネートは、屈折率が1.58〜1.59程度と高いものの、樹脂が熱可塑性であるため、射出成形時に複屈折による光学歪を生じやすいという問題があり、他にも耐溶剤性、耐擦傷性に欠ける等の欠点がある。【0003】そこで最近では、これらの欠点を改善するため、いくつかの提案がなされている。例えば特開昭53−7787号公報には、ジエチレングリコールビスカーボネートとジアリルイソフタレートとの共重合体が、また特開昭59−81318号公報には、ジアリルフタレートと不飽和脂肪酸アルコール安息香酸エステルとの共重合体が、更に特開昭59−191708号公報には、ビスフェノールAを有するジ(メタ)アクリレートと、ジアリルイソフタレートと、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等との共重合体が示されている。しかしながら、これらの共重合体は、屈折率が1.52〜1.55程度であるが、未反応のアリルモノマーが残存しやすいという欠点がある。【0004】一方、特開昭57−28115号公報には、スチレン系ビニル単量体と不飽和カルボン酸重金属塩との共重合物が、更に特開昭60−55007号公報には、ハロゲン置換ジアリルフタレートとハロゲン置換安息香酸アリルとの共重合体が示されている。これらの共重合体は、屈折率が1.58〜1.60程度と高いものの、金属塩やハロゲン置換芳香族環を有するアリル系モノマーを使用しているため、重合物の比重が大きく、レンズが重くなり軽量化が損なわれるという欠点がある。【0005】更に特開平2−160762号公報には、ジメルカプトジフェニルスルフィドジメタクリレートが、特開平2−29401号公報には、2−(ビニルベンジルスルフィド)ベンゾチアゾールが提案されている。これらの重合物の屈折率は1.60〜1.70前後と高いものの、色収差が悪く、更に重合反応の制御が難しく比重が大であり、耐候性にも問題がある。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れた耐候性、耐溶剤性等を有し、比重が小さく、高屈折率及び光学的透過性等を示す光学用材料、塗料用樹脂、装飾用樹脂の原料等に使用可能な新規なチオアセタール化合物及び単量体組成物を提供することにある。【0007】本発明の別の目的は、耐候性、耐溶剤性、耐衝撃性に優れ、比重が小さく、しかも高屈折率及び光学的透明性等を有する光学用材料及び該光学用材料の原料として使用可能な単量体組成物を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記一般式化2で表わされるチオアセタール化合物が提供される。【0009】【化2】【0010】また本発明によれば、前記チオアセタール化合物と、これと共重合可能な重合性単量体とを含有する単量体組成物が提供される。【0011】更に本発明によれば、前記単量体組成物を重合硬化して得られる1.55以上の屈折率を有する光学用材料が提供される。【0012】以下本発明を更に詳細に説明する。【0013】本発明のチオアセタール化合物は、前記一般式化2で表わされるチオアセタール化合物であり、例えば下記一般式化3で表わされる化合物等を挙げることができる。【0014】【化3】【0015】本発明のチオアセタール化合物を調製するには、例えばp−ビニルベンズアルデヒドとペンタエリスリチオールとを、例えばTiCl4、AlCl3、FeCl3、ZnCl2、BF3等のルイス酸類;塩酸、硫酸等の鉱酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸等の有機酸等の触媒の存在下、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒中にて撹拌、反応させる方法等により得ることができる。【0016】前記p−ビニルベンズアルデヒドと前記ペンタエリスリチオールとを反応させる際の仕込みモル比は4〜1:1が好ましく、特に2:1が望ましい。また反応温度は−100〜120℃が好ましく、特に−20〜40℃が望ましい。更に反応時間は1分〜48時間が好ましく、特に30分〜4時間が望ましい。【0017】また得られたチオアセタール化合物は、再結晶化操作、蒸留、再沈殿、カラム分離操作、吸着剤処理、イオン交換樹脂処理等の公知の精製法により、容易に単離・精製することができる。【0018】本発明の単量体組成物は、前記一般式化2で表わされるチオアセタール化合物と、これと共重合可能な重合性単量体とを含有する。チオアセタール化合物としては、前記一般式化3で表わされる化合物等を好ましく挙げることができ、単量体組成物中にはこれらの混合物を含有させることもできる。【0019】前記共重合可能な重合性単量体としては、例えばスチレン、p−メチルスチレン、p−クロルスチレン、o−クロルスチレン、p−ブロムスチレン、o−ブロムスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブロムフェニルメタクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の単官能単量体;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルポリ(n=2〜20)エトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、テトラクロルフタル酸ジアリル、ジアリルフタレート、p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールビス(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールビスアクリレート、テトラエチレングリコールビス(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールビス(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールビスメタクリレート、プロピレングリコールビスアクリレート、ビスフェノールAビス(メタ)アクリレート、テトラクロルフタル酸ジアリル、ジアリルイソフタレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能単量体を好ましく挙げることができる。【0020】本発明の単量体組成物としては、例えば前記チオアセタール化合物と前記単官能単量体との組成物、前記チオアセタール化合物と前記多官能単量体との組成物及び前記チオアセタール化合物と前記単官能単量体と前記多官能単量体との組成物等を挙げることができる。前記単量体組成物を硬化させた際の硬化物の物性を上げるには、前記多官能単量体の使用が好ましく、特にスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸等の単官能単量体の1種又は混合物と、ジビニルベンゼン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルポリ(n=2〜20)エトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン等の多官能単量体の1種又は混合物とを組み合わせるのが望ましい。【0021】本発明の単量体組成物において、前記チオアセタール化合物及び共重合可能な重合性単量体の配合割合において、チオアセタール化合物の下限は、チオアセタール化合物の光学的特性を十分に発揮するために10重量%が好ましく、特に20重量%が望ましい。また下限は、強度等の物性の低下を防止するために99重量%が好ましく、特に80重量%が望ましい。更に共重合可能な重合性単量体の下限は、強度等の物性の低下を防止するために1重量%が好ましく、特に20重量%が望ましい。更にまた上限は、チオアセタール化合物の光学的特性を十分に発揮するために90重量%が好ましく、特に80重量%が望ましい。【0022】本発明の光学用材料は、前記単量体組成物を重合硬化して得られるものであって、1.55以上、好ましくは1.59〜1.67の屈折率を有する。【0023】本発明の光学用材料を調製するには、例えば前記単量体組成物を、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒中あるいは無溶媒において、ラジカル重合開始剤の存在下、光重合あるいは加熱重合させる方法等により得ることができる。【0024】前記ラジカル重合開始剤としては、10時間半減期温度が160℃以下の有機過酸化物及び/又はアゾ化合物等を用いるのが好ましく、具体的には、例えば過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルオキシジカーボネート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシピバレート、ターシャリブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、ターシャリブチルペルオキシアセテート、ターシャリペルオキシオクトエイト、ターシャリブチルペルオキシベンゾエイト、アゾビスイソブチロニトリル又はこれらの混合物等を挙げることができる。前記ラジカル重合開始剤の使用量は、前記単量体組成物100重量部に対し10重量部以下が好ましく、特に5重量部以下が望ましい。【0025】特に眼鏡用プラスチックレンズの製造においては、例えば前記単量体組成物を直接所望の型枠内に仕込み、好ましくは0〜200℃で、1〜48時間加熱させて重合硬化させる方法等が好ましい。この際重合系は、例えば窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の不活性ガスの置換又は雰囲気下にするのが望ましい。また、前記単量体組成物を重合硬化させる前に、予め好ましくは0〜200℃で、0.5〜48時間予備重合させてから所望の型枠内に仕込み、後重合させてもよい。【0026】また前記重合硬化に際して、更にUV吸収剤、着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加することもできる。また得られた重合硬化物の表面物性を向上させるために、硬化後の表面に種々の表面処理を施すこともできる。【0027】【発明の効果】本発明のチオアセタール化合物は新規な化合物であり、該チオアセタール化合物を含む単量体組成物は、重合硬化させることにより高屈折率及び光学的透明性等を有するので、光学用材料、塗料用樹脂、装飾用樹脂等の原料成分として有用である。また本発明の光学用材料は、1.55以上の屈折率を有し、光学歪が小さく、光学的透明性、耐熱性、耐溶剤性及び耐衝撃性等に優れており、しかも比重が小さいので軽量化が可能で、更に硬化重合時の制御が容易であるので、特に眼鏡用レンズ、カメラレンズ、光学用素材等のプラスチックレンズに有用である。【0028】【実施例】以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0029】【実施例1】クロロホルム5ml中に、p−ビニルベンズアルデヒド396mg(3mmol)及びペンタエリスリチオール300mg(1.5mmol)を仕込み、−10℃に冷却した後、TiCl4 0.19g(1mmol)を加え、30℃で1時間撹拌反応させた。反応の進行はIRスペクトルにおいて、アルデヒド由来の1700cm~1の吸収の消失により確認した。反応終了後、メタノール中にて再沈殿を行い、目的のチオアセタール化合物の白色粉末(約170℃以上で昇華)を得た。収率は88%であった。【0030】以下に得られたチオアセタール化合物の1H−NMR、13C−NMR、IR、元素分析の測定結果を示す。【0031】【化4】【0032】1H−NMR(270MHz、CDCl3(TMS)、δ(ppm)、J(Hz))7.43(d、e;dd、8H、J=8.3、J=25.7) 6.70(a;dd、2H、Jd=11.0、Je=17.8)5.75(c;d、2H、Jc=17.5) 5.26(b;d、2H、Jc=10.9) 5.09(f;s、2H)3.50(g;dd、4H、J=14.5、J=363.2) 2.86(g;dd、4H、J=14.2、J=138.1)【0033】【化5】【0034】13C−NMR(270MHz、CDCl3(TMS)、δ(ppm)、40℃)138.0;3 114.5;1137.4;6 51.7;7136.2;2 43.7、37.1;8128.1;4 22.7;9126.6;5IR(KBr;cm~1)1510、861(パラ又はジ置換ベンゼン)3000、1410、990(ビニル)元素分析(C23H24S4)計算値 H;5.65,C;64.47,S;29.88実測値 H;5.68,C;64.41,S;29.91【0035】【実施例2】p−ビニルベンズアルデヒドの代わりに、p−ビニルベンズアルデヒド:m−ビニルベンズアルデヒド=7:3(重量比)の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、チオアセタール化合物の白色粉末を得た。収率は85%であった。また反応の進行は、IRスペクトルにおいて、p−ビニルベンズアルデヒド及びm−ビニルベンズアルデヒド中のアルデヒド由来の1700cm~1の吸収の消失により確認した。【0036】以下に得られたチオアセタール化合物の1H−NMR、13C−NMR、IR、元素分析の測定結果を示す。【0037】【化6】【0038】1H−NMR(270MHz、CDCl3(TMS)、δ(ppm)、J(Hz))7.42(d、e、d'、e'、f'、g';m、8H) 6.71(a';dd、1.4H、Jb'=10.9、Jc'=17.5)5.77(c';d、1.4H、Ja'=17.8) 5.28(b';d、1.4H、Ja'=11.6)5.10(f、h';s、0.6H) 6.70(a;dd、0.6H、Jd=11.0、Je=17.8)5.75(c;d、0.6H、Jc=17.5) 5.26(b;d、0.6H、Jc=10.9)3.50(i;dd、4H、J=14.5、J=363.2) 2.86(i;dd、4H、J=14.2、J=138.1)【0039】【化7】【0040】13C−NMR(270MHz、CDCl3(TMS)、δ(ppm)、40℃)138.3;3’ 126.6;5138.2;5’ 126.4;6’138.0;3 125.8;7’137.4;6 114.6;1’136.3;2’ 114.5;1136.2;2 51.7;7129.0;4’ 52.1;9’128.1;4 43.7、37.1;10127.2;8’ 22.7;11IR(KBr;cm~1)1510、860(パラ又はジ置換ベンゼン)790、695(メタ又はジ置換ベンゼン)3000、1410、990(ビニル)元素分析(C23H24S4)計算値 H;5.65,C;64.47,S;29.88実測値 H;5.71,C;64.37,S;29.92【0041】【実施例3〜7】実施例1で得られたチオアセタール化合物と表1に示す重合性単量体とを、表1に示す各配合割合で混合して単量体組成物を調製した。得られた各単量体組成物(総量1g)に、商品名「パーブチルO」(日本油脂(株)製)(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)を1重量%添加し、試験管中にて窒素置換した後、70℃で12時間加熱硬化させた。得られた光学用材料の屈折率及びアッベ数をアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)を用いて測定した。また外観及び沸騰水中に10分間浸漬した後、みかけ上の変性の有無を肉眼で評価した。結果を表1に示す。【0042】【実施例8〜12】実施例1で得られたチオアセタール化合物の代わりに、実施例2でえられたチオアセタール化合物を用いた以外は、実施例3〜7と同様にして光学用材料を調製し、各測定を行った。結果を表1に示す。【0043】【比較例1〜5】表1に示す重合性単量体を用いた以外は、実施例3と同様にして光学用材料を調製し、各測定を行った。結果を表1に示す。【0044】【表1】 下記一般式化1で表わされるチオアセタール化合物。 請求項1に記載されるチオアセタール化合物と、これと共重合可能な重合性単量体とを含有する単量体組成物。 請求項2記載の単量体組成物を重合硬化して得られる1.55以上の屈折率を有する光学用材料。