タイトル: | 特許公報(B2)_フィチン酸加水分解用酵素組成物及びフィチン酸の加水分解方法 |
出願番号: | 1994089228 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12N9/18,A23K1/165,C12N9/16 |
エリク エーヘネ マウリセ ファンデルベケ マルニクス デ シュレイフェル アニー マリア マホダレナ フェルメイレ JP 3587876 特許公報(B2) 20040820 1994089228 19940405 フィチン酸加水分解用酵素組成物及びフィチン酸の加水分解方法 アヴェヴェ エヌ.ヴィー. 594072199 渡邉 潤三 100116838 吉岡 正志 100099287 片桐 光治 100079256 エリク エーヘネ マウリセ ファンデルベケ マルニクス デ シュレイフェル アニー マリア マホダレナ フェルメイレ NL 93200989.7 19930405 20041110 7 C12N9/18 A23K1/165 C12N9/16 C12N9/16 C12R1:66 C12N9/16 C12R1:685 C12N9/18 C12R1:66 C12N9/18 C12R1:685 JP C12N9/18 A23K1/165 C C12N9/16 B C12N9/16 C12R1:66 C12N9/16 C12R1:685 C12N9/18 C12R1:66 C12N9/18 C12R1:685 7 C12N 9/14-9/46 BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平01−281048(JP,A) World J. Microbiol. Bioechnol., 1993 Mar, Vol.9, pages 117-9 20 1994319539 19941122 32 20010404 鈴木 恵理子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は酵素によるフィチンの加水分解に関する。より詳しくは、有機リン化合物であるフィチン酸を、無機リンとイノシトールとに加水分解するフィターゼに関する。【0002】【従来の技術】家畜飼養において、複数の必須ミネラルの存在が重要な役割を果たしているというのは確立した事実である。これらの飼料成分の取込・吸収性は、家畜の成育状況や、堆肥に含まれる排泄物に反映される。家畜の集中飼育生成の増加により、堆肥の生成はそれに含まれるリン酸分のために、環境問題を引きおこしている。さらに、堆肥に関する問題、特に堆肥のリン含有度を規制する法律によってそれに関わる出費が必要となり、環境へのリン排出量を減らすことが要請されている。リンは、様々な植物性原材料や、動物性副産物、或いは無機リンの形で、飼料に添加される。【0003】フィチン酸 (phytic acid or phytate) は、イノシトールの六リン酸エステル(myo−inositol hexakisphosphate)であり、各種の種子や穀物に含まれている。また、フィチン酸は、リンとイノシトールの両方の主要な貯蔵形態であり、リン全含有量の 50 % 以上にあたる[ロラス(Lolas)他、1976; ソーヴァー(Sauveur), 1989]。油用種子は、5.2 %ものフィチンを貯えることができる[レディ(Reddy)他,1982]。【0004】しかしながら、植物性原材料のフィチンに含まれているリンは、家畜、ブタ、人などの単胃の動物には、その単純な消化管のために消化が難しい。これらの動物では、腸内でフィチン酸の加水分解を触媒する腸内フィターゼの活性は、全くないか極く低いレベルであり、結腸に出されたフィチン性リンは、そのまま体外に排出される。このため、植物性原材料は、家畜飼養にとっては充分なリン供給源ではなく、付加的なリンを動物性副産物や無機リン酸の形で飼料に含有させる必要がある。【0005】また、フィチンは、そのキレート特性により反滋養要因と考えられている。即ち、Ca2+, Fe3+, Mg2+ やZn2+ などの多価の陽イオンと結合して、非溶解性の錯体を形成しており、これらの必須飼料ミネラルの生体内取込性と吸収性を下げるためである。更にまた、タンパク質とフィチンによる複合体の形成[コスグルーヴ(Cosgrove),1966]は、酵素によるタンパク質の消化の妨げとなる。この様な、フィチンの、リン及びミネラル代謝に及ぼす否定的効果により、また合わせて環境への高濃度のリン排出や、それに関する法律の制定により、フィチン性リンを生体内で利用可能にすることの必要性が高まっている。【0006】フィチンやフィチン酸は、植物性原料に存在するか、或いは、微生物によって作られるフィターゼの触媒活性により加水分解される。酵素フィターゼ[myo−イノシトール六リン酸ホスホヒドロラーゼ(myo−inositol hexaphosphate phosphohydrolase)E.C.3.1.3.8.]は、適切な条件下でフィチン酸を無機リン酸とイノシトール一〜五リン酸 (inositol mono− to penta−phosphates) に加水分解する。フィターゼは植物から微生物、特に真菌類、に広く分布している酵素であるが、単胃の動物では、腸内に、ほとんど微量にしか存在していない。植物由来のフィターゼは pH 安定性に欠け、触媒活性を示す pH の範囲が狭い[スタルディ及びバックル(Sutardi & Buckle),1986; ロラス及びマルカキス(Lolas & Markakis), 1991]。そのため単胃の動物の消化管の中で急速に不活化し、生体内効率は低い[イックハウトとデパエペ(Eeckhout and De Paepe)、1991]。それ故、家畜用複合飼料の調製における、植物由来フィターゼの重要性は低い。それに対し、微生物由来のフィターゼのいくつかは、広い pH 領域で安定性と活性を有しており、動物の腸内でフィチンがより効率的に加水分解される。そのため、動物の胃の酸性条件にも耐え得る微生物由来のフィターゼを加えることによって飼料に含まれるフィチン性リンの取込・吸収性を改良するため、微生物由来のフィターゼの生産方法が開発されてきた。しかしながら、微生物由来のフィターゼの熱安定性は低く、合成飼料を生産する工程で発せられる高温(70〜80oC)に耐えることができない。それ故、必要量の 30 % 増の量を用いることが必要となる。【0007】真菌類由来のフィターゼを加えると、フィチン性リン又はミネラルの吸収性が向上し、それによりリン転換率が高まって、飼料及び排泄物のリン含有量を減らすことのできることは、既に生体内の実験で発表されている。【0008】微生物由来のフィターゼの活性については多くの論文がある。細菌由来のフィターゼ[グリーヴス(Greaves)他、1967; アーヴィング及びコスグルーヴ(Irving and Cosgrove), 1971; ポワール及びジャガネーザン(Powar and Jagannathan), 1982]及びイースト由来のフィターゼ[ナイーニ及びマルカキス(Nayini and Markakis), 1984]に続いて、主にカビ類特にアスペルギルス(Aspergillus)株にフィターゼの存在することが知られている[シエ及びウェア(Shieh and Ware), 1968; 山本他、 1972;ユーセフ(Youssef)他、1987]。これらの株のほとんどと、その他の微生物は、酸性ホスファターゼも産生する。いくつかの酸性ホスファターゼは、フィターゼと呼ばれることもあったが、それらは、フィチンに対してむしろ非特異的であって、フィチンに対する加水分解活性は、他の有機リン酸に対する加水分解活性に比べて低い。【0009】発酵条件によって、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)NRRL 3135 の野生株は、細胞外ホスファターゼとフィターゼの混合物を産生する。フィターゼと酸性ホスファターゼの合成は、既知の先行技術に従って、リンの濃度により調節することができる[シエ(Shieh)他、1969; ウラー及びクミンズ(Ullah and Cummins),1987]。最近公開された特許出願公報には、遺伝子工学で作製したアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)N1RRL 3135 株 と アスペルギルス ニガー(A. niger)株を使い、フィターゼを大量に生産する方法が開示されている(EP 特許願第0,420,358号 A1)。この公報には、酸性ホスファターゼのクローニングに関しても述べられている。【0010】培養されたアスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 から産生されたフィターゼを含む培養液を精製すると[ウラー及びギブソン(Ullah and Gibson),1987]フィターゼは明らかに2つの最適 pH 値を示す。最も活性が高いのは、pH 5.0 − 5.5 の範囲で、2番目に高い活性(pH 5.0 における活性の 60 %)は、pH 2.2 において観察される。【0011】ウラーとクミンズ(Ullah and Cummins,1987)は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来の、最適 pH 値が2.5 の酸性ホスファターゼ[オルトホスフォリック モノエステル ホスホヒドロラーゼ(orthophosphoric monoester phosphohydrolase E.C. 3.1.3.2.)]を精製した。この酸性ホスファターゼは、pH 4.5 では pH 2.5 の時の 65 % の活性を示し、pH 6.0 では実質的に不活性である。ウラーとクミンズ(Ullah and Cummins, 1988)はこの他にも、最適 pH 値が6.0 の酸性ホスファターゼを精製している。【0012】これら2種の酸性ホスファターゼのどちらも、種々の有機リン酸モノエステルに対し広い基質選択性を示が、フィチン酸を基質として結合することはできない[ウラー及びクミンズ(Ullah and Cummins),1988]。それに対し、アーヴィングとコスグローヴ(Irving and Cosgrove,1974)は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)の酸性ホスファターゼが pH 2.2 でフィチン酸に対し副次的活性(16 %)を持つと報告している。【0013】ザイラ(Zyla, 1993)は最近の文献の中で、酸性ホスファターゼが、アスペルギルス ニガー(A. niger)から精製したフィターゼの存在下、種々の pH 値において、飼料原材料に対して活性を示すと述べている。【0014】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 が産生するフィターゼと酸性ホスファターゼは、基質選択性や最適 pH 値において互いに異なっているが、最適温度でも異なっている。フィターゼは 58oC で最高の活性を示すが、68oC で全活性を失う。一方、最適 pH 2.5 の酸性ホスファターゼは、63oC で最高の活性を示し、70oC でもなお 88 % の活性を維持する。最適 pH 6.0 の酸性ホスファターゼも 63oC で最高活性を示すが、70oC ではその 92 % の活性を失う。以上のことから、最適 pH が 2.5 である酸性ホスファターゼが、フィターゼや最適 pH 6.0 の酸性ホスファターゼよりも高い温度範囲で活性を示すことがわかる。【0015】アスペルギルス ニガー(A. niger)の老廃菌糸体から得られる未精製の細胞内酸性ホスファターゼは、最適 pH が 1.8 から 2.6 の範囲であり、60oCで最高活性を示す。又、pH 4.5 においても最高活性の 85 % の活性を示す[ザイラ(Zyla)他、1989]。【0016】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)のフィターゼは、フィチン量や糞中のリン排出量を減少させる必要性及び家畜の成育や飼料転換などの家畜の品質改善の目的に従って、家畜のブタとブロイラーの飼料に加えられている。フィターゼの活性/飼料 kg は、ブタとブロイラー用の飼料で 500 から 1000 ユニット(pH 5)が適当であると報告されている[シモンズ(Simons)他、1990]。ここで 500 ユニット/飼料 kg とは、リン 0.8g/ブタ用飼料 kg または、リン 1.0g/ニワトリ用飼料 kg に相当する[ボルグリーヴ(Borggreve),1991;ヴァール(Vahl),1991]。ブタ飼料には、フィターゼは 600 ユニット/飼料 kg まで加えられるが、それ以上の量を加えると逆に効果が下がるので、推められない[ナチュフォス マニュアル(Natuphos manual)、ジスト−ブロケイズ(Gist−Brocades)]。【0017】植物性原材料としての小麦ふすまと大豆に含まれるフィチンを、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の未精製の細胞内酸性ホスファターゼによるイン ヴィトロ(in vitro)での加水分解は、小麦ふすま及び大豆へ 12,000 ユニット(U)/飼料 kg と 30,000 U /飼料 kg をそれぞれ添加して 40℃、pH 4.5 の条件でインキュベーション処理すると、2 時間後に完了する。一方、ブロイラー用飼料を使うと、同条件下で 4 時間後に加水分解が完了する。この結果は、酸性ホスファターゼがフィチンの分解に関しては効率の悪いことを示している[ザイラ(Zyla)他、1989]。【0018】ザイラとコレレスキ(Zyla and koreleski, 1993)は、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼに酸性ホスファターゼを付加してイン ヴィトロ(in vitro)でセイヨウアブラナ種子や大豆を分解する場合、その分解活性はインキュベーションの pH 条件に影響されることを示した。このインキュベーション実験は、酸性ホスファターゼ/フィターゼ比が比較的高い条件で行われている(フィチン酸加水分解活性量の比で表すと 3.5/1 から 62/1)。【0019】ザイラ(Zyla, 1993)は、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼのフィチンに対する脱リン酸作用は、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼの作用とは異なっており、結果として、2つの酵素の間に相加的作用がある(よって、分解に要する時間が短縮される)ことを示した。フィチン酸から完全にリン酸を脱離するのにかかる時間は、用いるフィターゼの精製度が高いほど(つまり、酸性ホスファターゼ/フィターゼ比が低いほど)長くなる。しかしながら、精製度が最も高いフィターゼであっても、酸性ホスファターゼ/フィターゼ比は依然として高い(3.5/1)。【0020】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、フィターゼ製剤を用いるフィチン又はフィチン酸の加水分解を高い効率で行なうための酵素組成物を開発すべく鋭意研究を行なった。その結果、イン ヴィトロ(in vitro)とイン ヴィヴォ(in vivo)において、植物性原材料に含まれるフィチン加水分解に際し、真菌類由来の酸性ホスファターゼとフィターゼとよりなる酵素組成物において、酸性ホスファターゼ及びフィターゼが、酵素組成物の pH 値 2.5 及び pH 値 5 におけるフィチン酸加水分解活性の比と定義される pH 2.5/5.0 活性比が 0.8/1.0〜3/1 という低い範囲にある場合に、意外にもフィチン酸加水分解に対して相乗作用があるということを知見した。本発明は、この知見に基いてなされたものである。【0021】【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、フィチン酸加水分解活性を有する酸素組成物にして、2.5〜5.0 の pH 領域にてフィチン酸加水分解活性を持つフィターゼ及び 2.5 の pH 値でフィチン酸加水分解活性を持つ酸性ホスファターゼを含み、上記フィターゼ及び酸性ホスファターゼは、酵素組成物の pH 値 2.5 及び pH 値 5 におけるフィチン酸加水分解活性の比と定義される pH 2.5/5.0 活性比がフィチン酸加水分解に対して相乗作用を有するところの 0.8/1.0〜3/1 の範囲になるような量比で含有されてなることを特徴とする酵素組成物が提供される。【0022】本発明の酵素組成物において、フィターゼ及び酸性ホスファターゼは、酵素組成物の上記のように定義した pH 2.5/5.0 活性比が、好ましくは 1/1〜2.5/1、さらに好ましくは 1.5/1〜2/1 の範囲になるような量比で含有される。【0023】本発明の酵素組成物のフィターゼは好ましくは真菌類由来のフィターゼ、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus) 属由来のフィターゼ、更に好ましくは、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)、アスペルギルス ニガー(A. niger)及びアスペルギルス テレウス(A. terreus) 由来のフィターゼよりなる群から選ばれる真菌類フィターゼである。【0024】本発明の酵素組成物の酸性ホスファターゼは、好ましくは真菌類由来の酸性ホスファターゼ、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus) 属由来の酸性ホスファターゼ、更に好ましくはアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)、アスペルギルス ニガー(A. niger)及びアスペルギルス テレウス(A. terreus)由来の酸性ホスファターゼよりなる群から選ばれる真菌類酸性ホスファターゼである。更に、酸性ホスファターゼは熱安定性を有し、特にフィターゼよりも高い熱安定性を有することが望まれる。【0025】本発明の酵素組成物は、特に、熱処理によって更に好ましい組成比を示すようになる。つまり、熱処理後、酵素組成物中の酸性ホスファターゼ/フィターゼ比が pH 2.5/5.0 活性比で 0.8/1.0 〜 3/1 の範囲内で上昇するために、2つの酵素間の相乗効果も高まるということである。【0026】更に本発明によれば、上述の酵素組成物を含有する食品、飼料又はかいば製品及びそれらのための成分材料を提供される。それらの中には、上述の酵素組成物を含有する、熱処理された食品、飼料又はかいば製品、或いはそれらのための成分材料が包含される。【0027】また更に本発明によれば、上で定義される酵素組成物により、酵素組成物に含まれるフィターゼと酸性ホスファターゼがフィチン酸の加水分解活性を持つ pH 条件下で、フィチン酸を含有する原材料を処理する工程を含む、フィチン酸の加水分解方法が提供される。この処理は好ましくは pH 約 2 から 6 の間で、より好ましくは pH 約 2.5 で行なうことが望ましい。また、この工程で処理されるフィチン酸を含む飼料用原材料は、好ましくは植物性原材料であり、より好ましくは、大豆や小麦材料である。【0028】更に本発明によれば、真菌類由来のフィターゼをコードする遺伝子と真菌類由来の酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を含有し、両遺伝子は転写及び翻訳をコントロールする配列に効果的に連結され、両遺伝子によりコードされている酵素が発現するように構成された遺伝子的に改変された植物、もしくはそれに由来する部分又は産生物が提供される。【0029】また本発明によれば、家畜を、上述の酵素組成物を含む飼料又はかいばで飼養することを含む、家畜飼養における飼料又はかいばの消化を向上させ、且つ家畜の堆肥に含まれるリン排出量を減らす方法が提供される。【0030】本発明は、適切な比率での酸性ホスファターゼとフィターゼとの混合物を用いると、その両酵素の相乗作用により、植物性フィチンの酵素分解が改善されることを開示する。【0031】自然界では、多くの植物の種子や穀類の中で、フィチンはリンとイノシトール両方の主要な貯蔵形態の役割を果たしている。発芽・成長の際に、リンはこれらの種子や穀類の中に存在するフィターゼの働きにより、フィチンから離脱される。【0032】これらの植物性原材料は食品や飼料産業で使われるので、フィチンは人間や家畜にとって潜在的なリン源である。ところが、単胃動物にとっては、このフィチンの生体内での取込性は限られている。何故ならば、植物由来のフィターゼは、胃酸により胃腸内で不活化し、よって生体内での効果が低下するからである。そのため、フィチン性リンの生体内利用能を高め、それにより必須食品ミネラルの生体内での取込・吸収性を高めるために次の方法の開発が考えられる:a.酵素による植物性原材料の前処理により、植物性原材料中の消化可能なリンを増やす方法;b.酵素によって飼料や食品を前処理する方法;及びc.生体内におけるフィターゼ作用。しかし、植物由来のフィターゼは、植物性材料及び飼料、食品の前処理(中性の pH 値)では重要な役割を果たすが、生体内での作用(胃内での pH 値は2)では、その利用価値は低下する。【0033】生体内でのフィチンの加水分解は、微生物由来、特に真菌類由来のフィターゼによってより効果的になされる。何故ならば、真菌類由来のフィターゼは、胃内の酸性 pH 条件下で高い活性を示し、また pH 安定性が高いためである。フィチンを加水分解する酵素は、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、リゾプス(Rhizopus) 属、ボトリチス(Botrytis)属等の真菌類によって産生される。これらの真菌類は酸性ホスファターゼ(E.C.3.1.3.2)とフィターゼ(E.C.3.1.3.8)の混合物を産生する。この両酵素は、どちらもフィチンを加水分解するが、フィチン酸やリン酸モノエステルに対して、異なった特異性を示す。しかし、これらの生物は低レベルにしか酵素を産生しない。これらの酵素の産生量が、上述の方法を経済的なものにするために最も重要であるため、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)NRRL 3135 株が高産生の株として選ばれた。産生量は低下するが、アスペルギルス ニガー(A. niger)及びアスペルギルス テレウス(A. terreus)も代用できる。【0034】真菌類由来の酸性ホスファターゼもフィターゼも、それぞれ精製されて溶解しているフィチンを加水分解することはできる。しかし、酸性ホスファターゼは、植物性材料や、飼料、食品に含まれるフィチンに対しては、イン ヴィトロ(in vitro)でもイン ヴィヴォ(in vivo)でもほとんど活性を示さない。そのため、酸性ホスファターゼは最近までフィチン加水分解酵素とは考えられていなかった。ところが、単独ではフィチン加水分解活性が低い酸性ホスファターゼであるが、酸性ホスファターゼをフィターゼに対しある一定の活性単位量比で加えると、両酵素間の相乗作用により、フィターゼのフィチン加水分解活性が向上する。この相乗作用は、フィターゼと酸性ホスファターゼを適切な比で混合し、かつ両酵素の濃度が低いときにあらわれる。【0035】飼料及び食品生産工程では、フィチン加水分解酵素の pH 安定性の他に熱安定性が重要な要因となる。現在一般に行なわれている複合飼料の生産では、ぺレット状の飼料を生産することが多いので、ぺレット化する前の飼料に添加される酵素は、その後のフィチンの加水分解を確実なものにするために、飼料製粉機の中での高温(75−80oC)に耐えられなければならない。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼは、その温度では部分的に変性するので、30 % 増の量を加えておく必要がある。一方、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼは、フィターゼよりも高温で安定しており、変性も少ない。それ故、酸性ホスファターゼとフィターゼの混合物は、ぺレット状飼料の生産工程において、フィターゼのみよりも、より安定した活性を示す。【0036】フィターゼそのものよりも酸性ホスファターゼとフィターゼの混合物を使う方が植物性フィチンの加水分解が改善されるのは、この酵素組成物の熱安定性が高いからだけではない。その主な理由は、両酵素の熱による変性度が異なるので、pH 値が 2.5 及び pH 値 5.0 におけるフィチン分解活性の比 (pH 2.5/5.0 活性比) が高くなり、両酵素間の相乗的な相互作用が改善されるためである。【0037】真菌類のアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)もしくはアスペルギルスニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼ(E.C.3.1.3.2)と、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ(E.C.3.1.3.8)は、どちらもフィチン酸ドデカナトリウム(dodecasodium phytate)を溶液中で加水分解できるが、両酵素の主要活性は互いに異なっている。フィターゼは主に、フィチン酸に働き(1)、副次的にモノリン酸エステルに働く(2)。酸性ホスファターゼは主にモノリン酸エステルに働き、副次的にフィチン酸に働く(実施例1参照)。フィチン酸に対する活性(1)の、β−グリセロールリン酸ジナトリウム(disodium−β−glycerophosphate)に対する活性(2)に対する比[(1)/(2)]は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼの場合、6.6 であり、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼの場合 0.13 である。この数値は、フィターゼのフィチン酸に対する高い特異性を示している。アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼの場合(1)/(2)は 0.17 である。これ以下、「酸性ホスファターゼの活性」とはフィチン酸に対する加水分解活性を意味する。酸性ホスファターゼの最適 pH は 2.3 であり、一方フィターゼの最適 pH は 5.0 であり、2番目の最適値は 2.5 である。両酵素の混合物は、これから、pH 値 2.5 における混合物のフィチン酸加水分解活性(a)と pH 値 5 における混合物の活性(p)の比(a/p)によって識別する。純粋のフィターゼのみの時の a/p 比はおよそ 0.6/1 であり、また純粋の酸性ホスファターゼのみの時の a/p 比は 1/0 である。【0038】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 株、及びアスペルギルス ニガー(A. niger)株由来のフィターゼと酸性ホスファターゼの混合溶液は、既知の方法によって得ることができる。フィターゼ溶液中の活性要素を同定するために、イン ヴィトロ(in vitro)において標準的ブタ用飼料を用いて低湿度(70 %)、pH 2.5、40oCで3時間のテストを行なった(添付図参照)。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 株由来の異なる a/p 比を持つフィターゼ製剤を数種用意し、フィターゼに対する pH 2.5 における活性単位量(Ua)又は pH 5 における活性単位量(Up)に基づいて決められる量を、それぞれ、ブタ用飼料に添加した。pH 2.5 でフィチン酸は実際に分解され(図1参照)、酸性ホスファターゼは液体に溶解しているフィチン酸ナトリウムは加水分解することができたが、フィターゼ製剤の pH 2.5 における活性と、フィチン酸の加水分解活性との間には直接の相関はみられなかった。一方、フィターゼ製剤の pH 5 における活性と、フィチン酸に対する加水分解活性との間は相関があり、特にフィターゼ製剤を、a/p 比が 1.5/1 未満であるフィターゼ製剤と a/p 比が 1.5/1 〜 3/1 の間にあるフィターゼ製剤とに分類すると、上記の相関が明らかであった(図2参照)。【0039】以上から、飼料中のフィチン酸に対する酸性ホスファターゼの活性は支配的ではないということが結論づけられる。しかしながら、多種の異なったフィターゼ製剤の間では、pH 5.0 における活性量が同じになるようにしてそれらを添加しても、フィチンに対する加水分解活性に差がみられた。この差は、フィターゼ溶液中の酸性ホスファターゼの異なる活性に対応するものであることがわかった(実施例2参照)。a/p 比が 0.6/1 から 3/1 に高くなる、すなわち酸性ホスファターゼの割合が高くなると、ブタ用飼料のフィチンの加水分解に好ましい影響を与え、該フィターゼ混合物のフィチン加水分解効率(pH 値 5.0における活性単位量で示した添加量、例えば 500 単位、のフィターゼ製剤によって脱離したフィチン性リン量“g pp/500 Up”)が向上した(図3参照)。【0040】a/p 比が 0.6/1 より高い値をとるフィターゼ製剤中での、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼ(1/0)の重要性は、a/p 比がそれぞれ 0.6/1 と 1/1 である2種のフィターゼ製剤に、酸性ホスファターゼを a/p 比で 2/1 まで加えて用いる場合と、酸性ホスファターゼを加えない場合との両者について、ブタ用飼料のフィチンをイン ヴィトロ(in vitro)で加水分解することにより証明された(実施例3参照)。さらに、フィターゼと酸性ホスファターゼ間の相乗作用が見られた。同じ Up 活性をもつフィターゼ(0.6/1)に酸性ホスファターゼ(1/0)を加えて a/p 比を 2/1 にして、ブタ用飼料に添加すると、フィターゼ効率は 0.55 g pp/500 Up から 1.25 g pp/500 Up に増加し、0.49 g pp/500 Up の相乗作用がみられた。ブタ用飼料に対する、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼと、酸性ホスファターゼとの間の相乗作用は a/p 比が 1.5/1 から 2/1 の時に最高であり、a/p 比が 3/1 へと高くなると相乗作用が減少することが示された。3/1 を超えると、相乗作用の上昇は見られなくなった(図3参照)。【0041】飼料は、その組成に各々違いがあり、フィターゼの作用及びフィターゼと酸性ホスファターゼ間の相乗作用に影響を及ぼすことが考えられる。子ブタ用、家禽用のそれぞれ異なる飼料、例えば小ブタ用、雌ブタ用、雄ブタ用、ブロイラー用、産卵鶏用の飼料を、a/p 比 1.6/1,0.6/1 のフィターゼ製剤、及びフィターゼ(0.6/1)と酸性ホスファターゼ(1/0)を a/p 比 2/1 になる様にした混合物を用いて、イン ヴィトロ(in vitro)でインキュベートした。ホスファターゼと酸性ホスファターゼのフィチン分解効率は飼料の種類によってすべて大きく違う(0.6/1 のフィターゼは0.25 から 1.5 g pp/500 Up、酸性ホスファターゼは 0.025 から 0.15 g pp/500 Ua)。これらの事実は、異なった植物性材料の中では、フィチンの存在が異なっており、それが酵素による加水分解にも影響を与えることを示している。【0042】標準的ブタ用飼料において見られたアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼによるフィターゼとの相乗作用は、他の種類の飼料でも見られるが、異なる飼料間で大きな差がある(0.25 → 0.94 g pp/500 Up)。フィチンを含む植物性材料の違いが、フィターゼと酸性ホスファターゼの間の相乗作用に与える上記の影響については、エンドウマメ、小麦ふすま、大豆、米ぬか等の、頻繁に家畜用複合飼料に使われる異なる植物性材料を、イン ヴィトロ(in vitro) でフィチン加水分解して検証を行った(実施例5参照)。その際、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ(0.6/1)にアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼ(1/0)を、a/p 比が 2/1 になるように混合して用いた。【0043】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)のフィターゼ(a/p 比 0.6/1 と2/1)は、酸性ホスファターゼ(a/p 比 1/0)と同様、その加水分解効率に非常にばらつきがあった。酸性ホスファターゼは、標準的ブタ用飼料に対しては低い効果しか示さないが(0.15 g pp/500 Ua)、ある種の植物性フィチン、例えば米ぬかに含まれるフィチンはこの酸性ホスファターゼにより容易に加水分解される(0.8 g pp/500 Ua)。ところが他の植物性フィチン、例えば小麦ふすまや粉状の大豆のフィチンはほとんど分解されない(0.2 g pp/500 Ua)。【0044】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼと酸性ホスファターゼの、飼料に使った際に見られる相乗作用は、酸性ホスファターゼが単独では加水分解効率が低い(0.2 g pp/500 Ua)植物性材料においてのみに見られる。例えば粉状大豆における相乗作用は 0.57 g pp/500 Up であり、小麦ふすまでの相乗作用は 0.47 g pp/500 Up である。フィチンが酸性ホスファターゼ自身によってすでに加水分解される場合には、フィターゼと酸性ホスファターゼ間の相乗作用は低い。米ぬかにおいて見られる相乗作用は、 0.13 g pp/500 Up である。エンドウマメのフィチンはどちらの酵素によってもほとんど加水分解はできず、よって両酵素の相乗作用も見られなかった。【0045】結局、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)の酸性ホスファターゼ(1/0)とフィターゼ(0.6/1)の飼料中での相互作用は、通常の相加的効果と、それに加えて、飼料を構成しているそれぞれの異なる植物性材料によって程度の異なる相乗効果の結果であると説明できる。【0046】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 の他にも、アスペルギルス ニガー(A. niger)株によってフィターゼ及び酸性ホスファターゼが産生される。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)と同様、アスペルギルスニガー(A. niger)も、細胞外フィターゼと酸性ホスファターゼの混合物を産生する。アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファタ−ゼ(a/p 比 1/0)は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のものと pH 活性について同じ特性をもち、最適 pH は 2.3 である。後述の実施例により、異種の真菌に由来する、フィターゼと酸性ホスファターゼ間にも相乗作用がおこることが証明されている。【0047】標準的ブタ用飼料を使ったアスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼ製剤によるイン ヴィトロ(in vitro)のフィチン加水分解は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来のフィターゼ製剤によるフィターゼ加水分解と同様であった(実施例6参照)。アスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼの加水分解効率は、フィターゼ製剤の a/p 比が 0.9/1から 1.6/1 に高まるにつれて 0.75 から 1.15 g pp/500 Upに上昇した。アスペルギルス ニガー(A. niger)もしくはアスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来の酸性ホスファターゼを、a/p 比が 1.15/1 であるアスペルギルス ニガー(A. niger)由来フィターゼ製剤と混合して得られる、それぞれ a/p 比が 1.9/1 と 1.6/1 である組成物は、これらの酵素間で相乗作用があることを示した(実施例7参照)。【0048】これら2種類の酸性ホスファターゼの加水分解効率は類似している。a/p 比が 1.15/1 のアスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼ製剤に、酸性ホスファターゼを加えると、飼料中の残存フィチン性リン量が0となり、基質であるフィチン酸が無くなるために、酵素活性や酵素間相乗作用について正確な計測はできなかった。【0049】酵素間相乗作用は、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼとアスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来のフィターゼの間にも見られた。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の a/p比 0.6/1 フィターゼに、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の a/p 比 1/0 の酸性ホスファターゼを加えて a/p 比を 1.9/1 にすると、加水分解効率は2倍になり(0.85 から 1.8 g pp/500 Up)、0.62 g pp/500 Up の相乗効果を示す(実施例8参照)。【0050】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来の a/p 比 1/0 の酸性ホスファターゼは、液状で且つ飼料のペレット化中に高い熱安定性を示して有利であり、そのためフィターゼ(0.6/1)と酸性ホスファターゼ(1/0)の相乗作用は、ペレット化飼料においてより大きくなる。液状フィターゼ(0.6/1)は、80oC、pH 5(0.5 M アセテートバッファー)で1分間インキュベートすると、pH 2.5 と pH 5 両方での活性において、60 % の変性が起きている。一方、酸性ホスファターゼ(1/0)は同条件下でのインキュベート後も、10 % しか失活していない。【0051】飼料粉砕条件下での熱安定性について模擬実施を行なった。ガラスびんに標準的ブタ用飼料を満たし、次いで液状のフィターゼ(0.6/1)または酸性ホスファターゼ(1/0)製剤を加える。この混合物の湿度は 12.2 % であった。ガラスびんは密閉し、それぞれウオーターバスにて異なった温度条件(60−90oC)のもとで、加熱した(実施例9参照)。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)の酸性ホスファターゼ(1/0)の活性(ph 2.5 における)は、70oC で 10 分間加熱した後も100 %の活性を示した。一方、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)のフィターゼ(0.6/1)は、同条件で 40 % の失活を示した(pH 2.5 における)。80oCの条件下では、酸性ホスファターゼの活性は 65 % に、フィターゼの活性は 35 % に減少した。【0052】すでに液体中及び飼料の中では示された、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)の酸性ホスファターゼ(1/0)の高い熱安定性は、更にパイロット及び工業用粉砕機においても確認された。ブタ用飼料にアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)のフィターゼ(0.6/1)または酸性ホスファターゼ(1/0)溶液を加えたものを(3000 Ua/飼料 kg)パイロットの規模でペレット化した(実施例10参照)。ペレットの温度は、粉飼調整機の中に水蒸気を送り込んで調節した。その結果、フィターゼ(0.6/1)は 68.6〜72.1oC ペレット化温度範囲で平均 55 % の失活したのに対し、酸性ホスファターゼ(1/0)は 71.6〜73.1oC の温度範囲で 25 % 失活したにすぎない(pH 2.5 における活性で)。【0053】工業的ペレット化実験を、乾燥フィターゼ製剤を用いて行なった。a/p 比 0.6/1 フィターゼまたは 1.25/1 のフィターゼ混合物を加えた標準ブタ用飼料(900 Up/飼料 kg)を、工業用飼料粉砕・ペレット成形機に通した(実施例11参照)。粉飼中の、1.25/1 フィターゼ混合物の酵素活性は、ペレット成形する前は 0.6/1 フィターゼの活性の 160 % であった(0.95 g pp/500 Up/0.6 g pp/500 Up)。ペレット成形した後は、約 75 oC のペレット温度でフィターゼ混合物(1.25/1)の酵素活性は、フィターゼ(0.6/1)活性の 190 % であった(0.75 g pp/500 Up/0.4 g pp/500 Up)。この活性の差は、フィターゼ混合製剤(1.25/1)に存在する酸性ホスファターゼ(1/0)の高い熱安定性と、2つの酵素の相乗作用効果との組合せによって生まれたと考えられる。例えば、フィターゼ混合製剤(1.25/1のフィターゼ酵素(0.6/1)の失活(33 %)は、ペレット飼料中における酵素組成物の a/p 比が 1.9/1 (=1.25/0.66)に高まることによって補償されている。【0054】イン ヴィトロ(in vitro)のフィチン加水分解でみられた、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum) NRRL 3135 由来のフィターゼ(0.6/1)と酸性ホスファターゼ(1/0)の相乗作用及び、酸性ホスファターゼの高い熱安定性は、ペレット化飼料内フィチンの生体内加水分解においても好ましく働くと思われる。【0055】アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼ(1/0)をアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ(0.6/1)に加えることの効果を確かめるため、イン ヴィヴォ(in vivo)の消化試験をブタを使って行なった(実施例12及び13参照)。生体内のフィターゼや酸性ホスファターゼの作用は、酵素作用によるフィチン加水分解に由来するところの、糞便検定から得られる消化性リン(dP)によって測定する。このような生体内消化性リン dP は、摂取リン全量−排出リン全量の計算式によって算出される。生体内におけるフィターゼや酸性ホスファターゼの作用による dP 量の増加は、このようにして求められるイン ヴィヴォ消化性リン dP と飼料調製中の工程で定まる飼料が生体内投与前に有している dP との差によって算出できる。【0056】ブタを使った試験I(実施例12参照)では、フィターゼ(0.6/1)を 750 Up/飼料 kg 加えることにより、dP 値は 0.78 g/飼料 kg増加した。フィターゼに酸性ホスファターゼ(1/0)を 1050 Ua/飼料 kg 加え、a/p 比を 2/1 にまで上げると、dP 値は 0.89 g/飼料 kg 増加し、相乗作用は0.055 g dP/500 Up であった。酸性ホスファターゼが単独で飼料に加えられた場合(1050 Ua/飼料 kg)、飼料中 dP 値には全く影響がなかった。また dP 値は試験の後も変化はなかった。 この試験中のフィターゼによる加水分解効率は、高濃度で使われたために低かった(0.52 g dP/500 Up)。フィターゼに酸性ホスファターゼを加えることにより、全体の加水分解効率は 0.52 g dP/500 Up から 0.59 g dP/500 Up へと 13 % 増加した。【0057】フィターゼ及びフィターゼ/酸性ホスファターゼの混合物の両方の、dP 値により示される生体内での相乗作用は、リン排出量が酸性ホスファターゼの添加により減少するという事実にも反映されている。フィターゼ(750 Up/飼料 kg)の添加により、リン排出量は統制飼料に比べて 37 % 減少する一方、フィターゼ/酸性ホスファターゼ混合物の添加により、リン排出量は 41 % 減少する。リン排出量のこのような減少(11 %)は、リン排出に関する法律による経費の縮小に役立つ。【0058】ブタを使った試験II(実施例13参照)では、0.6/1 フィターゼが適量と認められるレベルである 400 Up/飼料 kg、ブタ飼料に加えられた。フィターゼの添加により dP 値は 0.58 g/飼料 kg 増加し、フィターゼに 1/0 酸性ホスファターゼを a/p 比 2/1 まで加えると(580 Ua/飼料 kg)、dP 値は 0.72 g/飼料 kg増加した。フィターゼの濃度を下げると、その活性は 0.725 g dP/500 Up にまで増加した。酸性ホスファターゼを添加すると、混合物による全体の加水分解効率は 24 % 増加し、0.9 g dP/500 Up を示し、相乗作用は0.125 g dP/500 Upであった。生体内におけるアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼと酸性ホスファターゼの相乗作用は、フィターゼ及び酸性ホスファターゼの濃度が低いほどより顕著であることが、試験I,IIの両方から結論できる(実施例14参照)。フィターゼ+酸性ホスファターゼの混合物の添加量が、750 Up+1050 Ua/kg から400 Up +580 Ua/kgに減少すると、加水分解効率は0.59 g dP/500 Upから0.9 g dp/500 Up に高まった。【0059】次に、添付の図1〜3について更に説明する。図1〜3を作成するための実験は次のようにして行った。フィチン性リンを 0.33 % の割合で含有する標準的ブタ用飼料を用いて、a/p 比が 1/0 から 16/1 の範囲で異なる種々のアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ製剤により、イン ヴィトロ(in vitro)で植物性フィチンを加水分解した。ブタ用飼料の平均的構成成分は、エンドウマメ、タピオカ、グルテン状トウモロコシ飼料、グルテン状小麦飼料及び成分濃縮大豆である。フィターゼ製剤は活性単位量を変えて添加された。1.0 − 2.5 Ua (pH 2.5 活性)/飼料 g (図1)2.0 − 2.8 Up (pH 5 活性)/飼料 g (図2)飼料に含まれるフィチン性リン全量は、エリス及びモリス(Ellis and Morris, 1983, 1986)の方法に従って測定した。2 g の飼料に適当に希釈されたフィターゼ製剤を加えた。0.2M の pH 2.5 セーレンセン−塩化水素バッファーを加え、混合物の湿度を 70 % に調整した。混合物を 40oC で3時間インキュベートした。その後、飼料は 40 ml の 2.4 % 塩酸で3時間抽出にかけ、抽出液中の残存フィチン性リンはイオン交換クロマトグラフィー処理及びフィチン破壊処理後に測定した。フィチン酸に対する pH 5 におけるフィターゼの 1 活性単位はここでは1 Up で示し、フィチン酸に対する pH 2.5 における酸性ホスファターゼの1活性単位は1 Ua で示す。【0060】図1は、フィターゼの作用後のフィチン性リン残存率を、添加したフィターゼ製剤の pH 2.5 における活性単位量で表わした添加量との関係により表したものである。飼料に pH 2.5 における活性が同一のフィターゼを添加した(例えば、 0.5 〜 1 Ua/g)が、残存フィチン性リン(95 〜 10 %)と添加された酵素活性単位量との間に相関は見られなかった。つまり、pH 2.5 における活性とブタ用飼料におけるイン ヴィトロ(in vitro)のフィチン加水分解とは、相関がないという事を示している。【0061】図2は、フィターゼの作用後のフィチン性リン残存率を、添加したフィターゼ製剤の pH 5 における活性単位量で表わした添加量との関係により表したものである。飼料に pH 5 における活性が同一のフィターゼを添加すると(例えば、0.4 〜 0.5 Up/g)、残存フィチン性リンは添加された酵素活性単位量と相関を示した。更にフィターゼ製剤を a/p 比が 1.5/1 から 3/1 であるものと 1.5/1 未満のものに分けると、pH 5 にて同じ活性単位量を有する数種の酵素の添加によるフィチン性リン残存率の差が小さくなった。a/p 比が 1.5/1 未満のフィターゼ製剤は 1.5/1 から 3/1 であるものに比べ、フィチン加水分解の効率が低い。【0062】図3は、1 kg の飼料に 500 Up のフィターゼを加え 40oC で3時間インキュベートした際に遊離されるフィチン性リン量で表わされる、イン ヴィトロ(in vitro)のフィチン加水分解効率を示す。a/p 比の異なるフィターゼ製剤の示すフィチン加水分解効率(実験値)を、そのフィターゼ製剤を構成するフィターゼ(0.6/1)と酸性ホスファターゼ(1/0)の2つの酵素間の相加効果を実施例3に準じて算出した加水分解効率(計算値)と比較した。両酵素間の相乗効果は、実験値と相加効果(計算値)との差として算出した。相乗効果は a/p 比 2/1 周辺で最大となった。a/p 比が 2/1 より高くなっても相乗効果がさらに増大することはなかった。【0063】【実施例】実施例1フィターゼと酸性ホスファターゼの pH 値 2.5 での活性は、リン遊離量の測定により分析された。0.5 ml の適切に希釈した酵素溶液を、0.2 M の pH 2.5 セーレンセン バッファー(Sorensenbuffer)と 12.5 mM のフィチン酸ドデカナトリウムもしくは 25 mM のβ−グリセロールリン酸ジナトリウム溶液の1対1混合液 2 ml に添加した。この反応液を 40oC で 10 分間インキュベートした。反応は 10 % トリクロロ酢酸溶液を 2.5 ml 加えて停止させた。遊離したリンは公式のEEC法(official EEC method)に従って、5 ml のヴァナデイト/モリブデイト(Vanadate/molybdate)試薬を加えて分光光度法により測定した。フィチン酸ドデカナトリウムに対する pH 5 でのフィターゼ活性は、pH 2.5 のセーレンセン バッファーの代わりに 1M pH 5 の酢酸バッファーを使って上記方法と同様に測定した。フィターゼ活性または酢酸ホスファターゼ活性の1ユニットは、それぞれ pH 5 または pH 2.5 おいて、40oCで1分間に1μmoleのリンを遊離する酵素の量と定義する。pH 2.5 における(1)フィチン酸に対する酵素活性と(2)β−グリセロールリン酸ジナトリウムに対する酵素活性の比、(1)/(2)は、両酵素の基質特異性を示している。フィターゼ及び酸性ホスファターゼの(1)、(2)及び(1)/(2)の測定値を表1に示す。a/p 比が 0.6/1 のフィターゼはフィチン酸に対して最も高い活性を示し、酸性ホスファターゼはβ−グリセロールリン酸ジナトリウムに対して最高活性を示す。【0064】【表1】【0065】実施例2フィチン性リンを 0.33 % の割合で含有する標準的ブタ用飼料を用いて、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の種々のフィターゼ製剤によりインヴィトロ(in vitro)でフィチンを加水分解した。ブタ用飼料の平均的構成成分は、エンドウマメ、タピオカ、グルテン状トウモロコシ飼料、グルテン状小麦飼料及び抽出大豆(soya beans extracted)である。飼料に含まれるフィチン性リン全量は、エリス及びモリス(Ellis and Morris, 1983, 1986)の方法に従って測定した。2 g の飼料に 1.4 Up の液状フィターゼ製剤を加えた。0.2M の pH 2.5 セーレンセン−塩化水素バッファー(Soerensen−HCl buffer)を加え、混合物の湿度は 70 % に調整した。混合物を 40oC で3時間インキュベートした。その後、飼料は 40 ml の 2.4 % 塩化水素で3時間抽出にかけ、抽出液中の未分解フィチン性リンを、イオン交換クロマトグラフィー処理及びフィチン破壊処理後に測定した。フィチン加水分解効率はフィターゼによる処理前と処理後の飼料に含まれるフィチン含有量の差によって算出した。イン ヴィトロ(in vitro)のフィターゼの効率は、500 Up/飼料 kg のフィターゼによる 40oC で3時間の反応によって遊離されるフィチン性リン量(g pp)から算出した。フィターゼ製剤の a/p 比とフィチン加水分解効率を表2に示す。フィターゼ製剤の a/p が低い(0.6/1 〜 2/1)ところで a/p 比を上げると、フィターゼ製剤の効率は直線的に上昇した。例えば純粋なフィターゼ(0.6/1)が 0.55 g pp/500 Up の効率を示したのに対し、a/p 比が 2/1 のフィターゼ製剤は 1.75 g pp/500 Up もの効率を示した。従って、同じ 500 Up のフィターゼ活性をもつフィターゼ製剤を 1 kg のブタ用飼料に加えても、a/p 比の違いによってリン遊離量は 0.55 g から 1.75 g の幅をもって変化する。a/p 比が高いところでは効率の上昇(相乗効果)は頭打ちとなる。【0066】【表2】【0067】実施例3標準的ブタ用飼料(実施例2参照)を使い、イン ヴィトロ(in vitro)でアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ製剤によるフィチン加水分解を行った。その際、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の酸性ホスファターゼ(1/0)を添加して実験を行ない、酸性ホスファターゼ/フィターゼ混合物における酸性ホスファターゼの重要性を証明した。1.4 Up の活性単位量を有するフィターゼ(0.6/1)にそれぞれ 2 Ua 又は 3.4 Ua の活性単位量を有する酸性ホスファターゼを添加して、a/p 比を 2/1 又は 3/1 にした。1.4 Up の活性単位量を有する a/p 比 1/1 のフィターゼ製剤にそれぞれ 1.4 Ua 又は 2.8 Ua の活性単位量を有する酸性ホスファターゼを添加して、a/p 比を 2/1 又は 3/1 にした。1.4 Up の液状フィターゼ製剤(a/p 比はそれぞれ 0.6/1、1/1、2/1 及び 3/1)を 2 gの飼料に添加した。0.2 M の pH 2.5 セーレンセン−塩化水素バッファーを加え、混合物の湿度を 70 % もしくは 80 % に調節した。混合物を 40oC で3時間インキュベートした。酸性ホスファターゼ自身の効率は、2 Ua の活性単位量を 2 g のブタ用飼料に添加し、上記と同様の方法でインキュベートして求めた。フィチン加水分解効率は実施例2と同様にして算出した。フィターゼ、酸性ホスファターゼ及びそれらの混合物のフィチン加水分解効率、計算による相加効果及び相乗効果は表3に示す。フィターゼと酸性ホスファターゼを飼料に添加する前に a/p 比 2/1 又は 3/1となるよう混合すると、両酵素間の相加効果と相乗効果の両方により、酵素混合物の効率は高まる。例えば、500 Up のフィターゼ(0.6/1)をブタ用飼料に加えると 0.95 g のフィチン性リンが遊離する。一方、500 Ua の酸性ホスファターゼ(1/0)を加えると、0.25 gのフィチン性リンが遊離する。500 Up のフィターゼ(0.6/1)は 300 Ua の pH 2.5 時活性をもつので、a/p 比が 2/1 となる酸性ホスファターゼ/フィターゼ混合物を用意するためには、700 Ua の酸性ホスファターゼ(1/0)が必要である。もし両酵素が単純な相加効果しか有さないのであれば、効率は下記のように計算される。(500 Up フィターゼ × 0.95 g pp/500 Up)+(700 Ua 酸性ホスファターゼ× 0.25 g pp/500 Ua)=1.3 g pp (/500 Up フィターゼ)。しかし、この実験観察された効率は 1.3 g pp/500 Up ではなく 2.1 g pp/500Up である。従って 0.8 g pp/500 Up の相乗効果があったことになる。【0068】【表3】【0069】実施例4種々の標準的飼料(ブタ、子ブタ、雌ブタ、ブロイラー及び産卵鶏用)を使い、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の種々のフィターゼ製剤によるイン ヴィトロ(in vitro)での加水分解を行ない、一般的に飼料におけるフィターゼと酸性ホスファターゼとの間の相乗作用について検討した。各種飼料の主要成分は以下の通りであった。子ブタ:大麦、小麦、抽出大豆、小麦ふすま、乳漿(whey)パウダー及び魚の粉餌雌ブタ:タピオカ、エンドウマメ、抽出ヒマワリ種子(sunflower seed extracted)、米ぬか及びココナッツの搾油かす雄ブタ1:タピオカ、エンドウマメ、抽出大豆及びグルテン状小麦飼料雄ブタ2:タピオカ、エンドウマメ、抽出大豆、グルテン状小麦飼料及びグルテン状トウモロコシ飼料ブロイラー:モロコシ、抽出大豆、エンドウマメ及び肉餌産卵鶏:トウモロコシ、大豆、抽出ヒマワリ種子及び石灰石0.7 Up/g の活性単位量を有するフィターゼ(0.6/1)又は、1 Ua/g の活性単位量を有する酸性ホスファターゼ(1/0)を各飼料に添加した。0.7 Up の活性単位量を有するフィターゼ(0.6/1)に 1 Ua の活性単位量を有する酸性ホスファターゼ(1/0)を添加して、a/p 比を 2/1 にした。インキュベーション条件は、実施例3(湿度 80 %)と同様にした。相乗効果は、実施例3と同様にして算出した。フィターゼ及び酸性ホスファターゼのフィチン酸加水分解効率は、ともに、飼料により大きく異なった。両酵素の相乗効果はすべての飼料について見られたが、飼料によって異なっていた。0.7 Up/g の活性単位量を有するフィターゼ製剤(a/p 比 1.6/1)を種々の飼料に添加した。このフィターゼ製剤のフィチン酸加水分解効率は、酸性ホスファターゼ/フィターゼ混合物中の酸性ホスファターゼ(1/0)の効果を実証した。【0070】【表4】【0071】実施例5酵素によるフィチンの加水分解効率は飼料により大きく異なった(実施例4)ので、フィチンの加水分解効率は飼料を構成する植物性材料に影響を受けることが予想できた。種々の異なる植物性フィチンの加水分解効率及び種々の植物性材料に単独、あるいは混合されて添加されたアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)フィターゼ(0.6/1)及び酸性ホスファターゼ(1/0)のフィチン酸加水分解効率をインヴィトロ(in vitro)で試験した。0.35 〜 0.7 Up/g 飼料材料の活性単位量を有するフィターゼ(0.6/1)又は、 1 Ua/g 飼料材料の活性単位量を有する酸性ホスファターゼ(1/0)を各飼料材料に添加した。フィターゼ(0.6/1)にそれぞれ 0.5 Ua/g 又は 1 Ua/g の活性単位量を有する酸性ホスファターゼを添加して、a/p 比を 2/1 にした。インキュベーション条件は、実施例2(湿度 80 %)と同様に行なった。フィチンの加水分解は実施例2と同様に分析され、フィターゼの加水分解効率は実施例2と同様にして算出した。相乗効果は、実施例3と同様にして算出した。エンドウマメに対するフィターゼの効率はきわめて低く(0.15 g PP/500 Up)、酸性ホスファターゼによる相乗効果はなかった。最大の相乗効果は、フィチンがフィターゼにより容易に加水分解されるが、酸性ホスファターゼによってほとんど加水分解されない植物性材料、例えば大豆及び小麦ふすまにおいて見られた。酸性ホスファターゼ自身が植物性フィチンをより効率よく加水分解する場合での相乗効果は低かった。【0072】【表5】【0073】実施例6標準的ブタ用飼料(実施例2)を用いて、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来の異なる a/p 比を有する種々のフィターゼ製剤によりイン ヴィトロ(in vitro)でのフィチン加水分解を行なった。フィターゼは 0.7 又は 1 Up/g 飼料の活性単位量相当量を添加した。インキューベーション条件は、実施例2(湿度 70 %)と同様にした。フィチン加水分解は、実施例2と同様に行ない、フィターゼ効率は実施例2と同様に算出した。アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の種々のフィターゼ製剤の a/p 比が0.8/1〜3/1の様に低い範囲で高まるとともに、これらの製剤のフィチン酸加水分解効率は増加した。すなわち、フィターゼのフィチン酸加水分解効率は、フィターゼの a/p 比によって、0.75 と 1.15 g PP/500 Up の間で変化する。【0074】【表6】【0075】実施例7標準的ブタ用飼料(実施例2参照)を使いイン ヴィトロ(in vitro)で、a/p比が 1.15/1 のアスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼ製剤にアスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼもしくはアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)NRRL 3135 由来の酸性ホスファターゼを添加し、それぞれ a/p 比を 1.9/1 及び 1.6/1 に増し、加水分解を行なった。ブタ用飼料にアスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼ(1.15/1)を 0.7 Up/飼料 g で加え、0.5 Ua/g のアスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼもしくは 0.3 Ua/g アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)NRRL 由来の酸性ホスファターゼを上記フィターゼに添加し、それぞれ a/p 比を 1.9/1 及び 1.6/1 にした。上記混合物を湿度を 80 % にした以外は実施例2と同様の条件でインキュベートした。フィターゼの加水分解結果を解析しフィチン加水分解効率を実施例2と同様にして算出した。a/p 比が 1.15/1 のアスペルギルス ニガー(A. niger)由来のフィターゼとアスペルギルス ニガー(A. niger)もしくはアスペルギルス フィキューム 由来の酸性ホスファターゼ(1/0)の間の相加効果及び相乗効果を実施例3と同様にして算出した。【0076】【表7】【0077】実施例8標準的ブタ用飼料を使い、イン ヴィトロ(in vitro)でアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼに、アスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼを添加してフィチン加水分解を行った。フィターゼ(0.6/1)を0.7 Up/飼料 g 加え、0.85 − 0.9 Up/飼料 g の酸性酸性ホスファターゼ(1/0)を添加してそれぞれの a/p 比が 1.8/1 及び 1.9/1 フィターゼ製剤を得た。酸性ホスファターゼを 1 Ua /飼料 g 加えた。上記フィターゼ製剤を、湿度 80 % にした以外は実施例2と同様の条件下でインキュベートした。フィチン加水分解結果を解析したフィターゼの加水分解を実施例2と同様にして算出した。アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ(0.6/1)とアスペルギルス ニガー(A. niger)由来の酸性ホスファターゼ(1/0)の両酵素間の相乗効果を実施例3と同様にして算出した。【0078】【表8】【0079】実施例9標準的ブタ用飼料(実施例2参照)を使い、イン ヴィトロ(in vitro)でアスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ(0.6/1)及び酸性 ホスファターゼの熱安定性について実験を行った。この際、上記フィターゼ及び酸性ホスファターゼを、それぞれガラスびんに密閉し、ウォーターバスに浸漬し、飼料粉砕時の条件と同じ条件を得るようにした。1750 Ua のフィターゼもしくは酸性ホスファターゼを含む 20 g のブタ用飼料を 480 g のブタ用飼料と混合し、3500 Ua/kg の飼料を得た。10.5 Ua のフィターゼもしくは酸性ホスファターゼを含む酵素入り飼料 7 g を複数のガラスびんに満たした。飼料の湿度は 12.2 % であった。ガラスびんを密閉し、それぞれ種々の温度条件(70〜90oC)下でウォーターバスに浸漬し、10 分間温めた。pH 2.5における残留酸性ホスファターゼ及びフィターゼの活性を、酵素抽出後、以下の様に測定した。即ち、熱処理された飼料 3 g を 50 ml の 0.1 M の pH 2.5 セーレンセン バッファー(Soerensenbuffer)で 30 分間抽出し、飼料抽出後におけるフィチン酸ドデカナトリウムに対する pH 2.5 でのフィターゼ又は酸性ホスファターゼの活性を実施例1と同様にして測定した。未処理の飼料における活性を 100 % と設定し、それぞれの温度で処理された飼料における酵素の残存活性をパーセンテージ(%)で算出した。フィターゼ及び酸性ホスファターゼの残存活性を表9に示す。【0080】【表9】【0081】実施例10ブタ用飼料を、アスペルギルス フィキューム フィターゼ(0.6/1)又は酸性ホスファターゼ(1/0)の溶液を添加した後、パイロットの規模でペレット化した。各酵素は、活性が 165000 Ua/ 混合物 550 g となるように混ぜ、ペレット化する前のブタ用飼料 55 kg に添加した。このブタ用飼料は主としてエンドウマメ、抽出セイヨウアブラナ種子(rape seed extracted)、グルテン状トウモロコシ飼料及びタピオカを含んでいた。飼料粉砕・ペレット成形機のダイスから取り出すペレットの温度を、水蒸気を送りこむことにより 69 〜 74oC の間に調整した。飼料(粉飼)とペレット化飼料中のフィターゼ及び酸性ホスファターゼのpH 2.5 における各活性を、以下の酵素抽出操作の後測定した:飼料 5 g を 50 ml の 0.1 M セーレンセンバッファー(pH 2.5)で 30 分間抽出し、実施例1と同様にしてフィチン酸ドデカナトリウムに対するフィターゼ又は酸性ホスファターゼの pH 2.5 での活性を測定した。粉末飼料における各酵素活性(3 Ua/g)を 100 % とした。フィターゼ又は酸性ホスファターゼを含む飼料の各湿度は、それぞれ 11.6 と 11.9 (粉飼調整機における)から、10.6 と 10.8 (冷却したペレットにおける)と低下した。【0082】【表10】【0083】実施例11アスペルギルス フィキューム フィターゼ(0.6/1)及びアスペルギルス フィキューム フィターゼ(1.25/1)の各調製物をブタ飼料に 900 Up/飼料 kg となるように加えた後、工業規模で飼料をペレット化した。このブタ用飼料は主としてエンドウマメ、グルテン状トウモロコシ飼料、抽出大豆及びタピオカを含んでいた。飼料中フィチン性リン(PP)濃度は、実施例2の方法で測定したところ 0.37 % だった。飼料粉砕・ペレット成形機のダイスから取り出すペレットの温度は、実施例10と比較し得る温度であった(74.5oC)。フィターゼの残存活性を、以下のペレット化飼料のイン ヴィトロ(in vitro)フィチン加水分解により測定した:フィターゼを含む 2 g の飼料を実施例2と同様にしてインキュベートした(湿度 80 %)。実施例2と同様にしてフィチンの加水分解度を分析し、フィターゼ効率を計算した。ペレット化する前の粉飼のフィターゼ効率を 100 %とした。ペレット化飼料におけるフィターゼ(1.25/1)効率(0.75 g PP)はフィターゼ(0.6/1)効率(0.4 g PP)の 190 % であったが、粉飼におけるフィターゼ(1.25/1)効率(0.95 g PP)はフィターゼ(0.6/1)効率(0.6 g pp)の 160% にとどまった。【0084】【表11】【0085】実施例12リン消化試験 II(ブタ 12 頭、ブタ 3 頭/飼料):ブタの対照用飼料には、消化性リンが 2 g/kg、リン全量が 5.8 g/kg となるように調製した(飼料I)。飼料Iは主としてエンドウマメ、タピオカ、グルテン状トウモロコシ飼料、グルテン状小麦飼料及び抽出大豆を含んでいた。フィターゼ含有飼料は、消化性リンが 1.17 g/kg、リン全量が 4.4 g/kg となるようにし、主成分が飼料Iと同じになるように調製した。これらは飼料にそれぞれ異なるアスペルギルス フィキューム フィターゼ 調製物を加えたもの、即ち750 Up/kg のフィターゼ(0.6/1)を加えたもの(飼料 II)、1050 Ua/kg の酸性ホスファターゼ(1/0)を加えたもの(飼料IV)、及び 750 Up/kg のフィターゼ(0.6/1)と 1050 Ua/kg の酸性ホスファターゼ(1/0)の混合物を加えて a/p 比=2/1 としたもの(飼料III)である。濃縮した各酵素溶液をそれぞれ粉飼に加えて与えた。12 頭のブタをそれぞれ別の檻に入れ、飼料I〜IVをそれぞれ 3 頭ずつに 17 日間与えた(最初の 7 日間を予備期間とし、残りの 10 日間を試験期間とした)。1日当りの1頭の飼料摂取量は 1800 g で、試験期間の全摂取量は 18 kg であった。試験期間の 10 日間にわたってそれぞれのブタにつき糞を集め、集めた糞につきリンの全排出量をEEC法で測定した。見かけのリン消化係数(DC−P(%))をリン全摂取量とリン全排出量との差から計算した。例えば、飼料Iについて:リン全摂取量: 104.4 g = 100 %リン全排出量: 70.9 g = 67.9 %DC−P (%) = 100 − 67.9(%) = 32.1(%)消化性リン(g dP/kg) = 飼料中のリン濃度 × DC−P = 5.8 (g P/kg) × 0.321 = 1.86 (g P/kg)【0086】【表12】【0087】実施例13リン消化試験 II(ブタ 24 頭、ブタ 8 頭/飼料):ブタの対照用飼料は、消化性リンが 2 g/kg、リン全量が 6.1 g/kg となるように調製した(飼料I)。飼料Iは主としてエンドウ、タピオカ、小麦グルテン飼料及び抽出大豆を含み、リンの一部はモノカルシウムホスフェートによって供給した。フィターゼ含有飼料は、消化性リンが 1.4 g/kg、リン全量が 5.2 g/kgとなるように調製した。フィターゼ含有飼料の成分は、モノカルシウムホスフェートを用いないこと以外は飼料Iと同様にした。フィターゼ含有飼料については、フィターゼ(0.6/1)を推奨レベルである 400 Up/kg 加える(飼料 II)か、又は 580 Ua/kg の酸性ホスファターゼ(1/0)と 400 Up/kg のフィターゼ(0.6/1)の混合物を加えて a/p 比=2/1 とした(飼料III)。フィターゼ溶液及びフィターゼ/酸性ホスファターゼ溶液を飼料(粉飼)に加えて与えた。24 頭のブタをそれぞれ別の檻に入れ、飼料I〜IIIをそれぞれ 8 頭ずつに 17 日間与えた(最初の 7 日間を予備期間とし、残りの 10 日間を試験期間とした)。1日当りの1頭の飼料摂取量は 1800 g で、試験期間の全摂取量は 18 kg であった。試験期間の 10 日間にわたってそれぞれのブタにつき糞を集め、集めた糞につきリンの全排出量をEEC法で測定した。消化性リン(DC−P % 及び g dp/kg)を実施例 12 と同様に計算した。【0088】【表13】【0089】実施例14アスペルギルス フィキューム由来のフィターゼと酸性ホスファターゼのブタの飼料(粉飼)への添加量の違いと生体内(in vivo)のフィターゼ効率(実施例 12 及び 13参照):生体内(in vivo)のフィターゼ効率(g dp/500 Up)は、飼料に添加した 500単位(Up) のフィターゼ(0.6/1 又は 2/1)によって消化中に遊離されるリンの量として定義した。酵素によって遊離したリンの量は、飼料に配合した消化性リンの量と実施例12におけるような動物実験から算出した消化性リンの量の差として定義した。例えば:飼料に配合した消化性リンの量: 1.17 g/kg動物実験から計算した消化性リンの量: 2.06 g/kg飼料のフィターゼ含量: 750 Up フィターゼ/kg + 1050 Ua 酸性ホスファターゼ/kgフィターゼ効率(g dP/500 Up) = (2.06 − 1.17) × 500/750 = 0.59酸性ホスファターゼの生体内(in vivo)効率は0であるから、相乗的効率は酸性ホスファターゼ(2/1)/フィターゼ混合物の効率とフィターゼ(0.6/1)の効率の差として求める。【0090】【表14】【0091】【発明の効果】本発明の酵素組成物は、動物の生体内及び家畜用飼料の生産工程において、飼料又は飼料原材料中に含まれるフィチン酸に対して高い加水分解効率を有するため、家畜の生体内でのフィチン性リンの取込・吸収性を高める。従って、環境的に問題の多い家畜からのリン排出量及び飼料中のリン含有量を減らすために非常に有用である。【0092】【参考文献】E.P.0 321 004 B1 (1988). 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Food Agric. 49, 315−324.【図面の簡単な説明】【図1】図1は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ製剤によるイン ヴィトロ(in vitro)でのフィチン加水分解効果(pH 2.5 における活性単位量で表わした添加量に対するフィチン酸性リン残存率で示す)を示す図である。【図2】図2は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来のフィターゼ製剤によるイン ヴィトロ(in vitro)でのフィチン加水分解効果(pH 5.0 における活性単位量で表わした添加量に対するフィチン酸性リン残存率で示す)を示す図である。【図3】図3は、アスペルギルス フィキューム(A. ficuum)由来の異なる pH 2.5/pH 5.0 活性比を有する種々のフィターゼ製剤におけるフィターゼ(0.6/1)及び酸性ホスファターゼ(1/0)のイン ヴィトロ(in vitro)での相乗効果を示す図である。 フィチン酸加水分解活性を有する酵素組成物にして、2.5〜5.0 の pH 領域にてフィチン酸加水分解活性を持つフィターゼ及び 2.5 の pH 値でフィチン酸加水分解活性を持つ酸性ホスファターゼを含み、該フィターゼ及び該酸性ホスファターゼは、該酵素組成物の pH 値 2.5 及び pH 値 5 におけるフィチン酸加水分解活性の比と定義される pH 2.5/5.0 活性比がフィチン酸加水分解に対して相乗作用を有するところの 0.8/1.0〜3/1 の範囲になるような量比で含有されてなることを特徴とする酵素組成物。 該フィターゼ及び該酸性ホスファターゼが、該酵素組成物のpH 2.5/5.0 活性比が 1/1〜2.5/1 の範囲になるような量比で含有されている請求項1に記載の酵素組成物。 該フィターゼ及び該酸性ホスファターゼが、該酵素組成物のpH 2.5/5.0 活性比が 1.5/1〜2/1 の範囲になるような量比で含有されている請求項1に記載の酵素組成物。 該フィターゼが真菌類由来のフィターゼである、請求項1〜3のいずれかに記載の酵素組成物。 該真菌類由来のフィターゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属由来のフィターゼである請求項4に記載の酵素組成物。 該真菌類由来のフィターゼが、アスペルギルス フィキューム(Aspergillus ficuum)由来のフィターゼ、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のフィターゼ及びアスペルギルス テレウス(Aspergillus terreus)由来のフィターゼよりなる群から選ばれる請求項4に記載の酵素組成物。 該酸性ホスファターゼが真菌類由来の酸性ホスファターゼである請求項1〜3のいずれかに記載の酵素組成物。 該真菌類由来の酸性ホスファターゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属由来の酸性ホスファターゼである請求項7に記載の酵素組成物。 該真菌類由来の酸性ホスファターゼが、アスペルギルス フィキューム(Aspergillus ficuum)由来の酸性ホスファターゼ、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来の酸性ホスファターゼ及びアスペルギルステレウス(Aspergillus terreus)由来の酸性ホスファターゼよりなる群から選ばれる請求項7に記載の酵素組成物。 該酸性ホスファターゼが熱安定性を有する酸性ホスファターゼである請求項1〜9のいずれかに記載の酵素組成物。 該酸性ホスファターゼがフィターゼよりも高い熱安定性を有する酸性ホスファターゼである請求項1〜9のいずれかに記載の酵素組成物。 熱処理によって該 pH 2.5/5.0 活性比が変化する請求項1〜11のいずれかに記載の酵素組成物。 請求項1〜12のいずれかに記載の酵素組成物を含む、食品、飼料又はかいば製品、或いはそれらのための成分材料。 請求項1〜12のいずれかに記載の酵素組成物を含む、熱処理された食品、飼料又はかいば製品、或いはそれらのための成分材料。 請求項1〜12のいずれかに記載の酵素組成物により、該酵素組成物に含まれる該フィターゼと該酸性ホスファターゼがフィチン酸の加水分解活性を持つ pH 条件下で、フィチン酸を含有する原材料を処理する工程を含む、フィチン酸の加水分解方法。 該処理を pH 値約 2 から約 6 の範囲で行なう請求項15に記載の方法。 該処理を pH 値約 2.5 で行なわれる請求項15に記載の方法。 フィチン酸を含有する原材料が植物性原材料である請求項15〜17のいずれかに記載の方法。 該植物性原材料が大豆又は小麦材料である請求項18に記載の方法。 請求項1〜12のいずれかに記載の酵素組成物を含む飼料又はかいばで家畜を飼養することを含む、家畜飼養における飼料又はかいばの消化を向上させ、且つ家畜の堆肥に含まれるリン排出量を減らす方法。