タイトル: | 特許公報(B2)_β−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩の製造方法 |
出願番号: | 1994058300 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C227/26,C07C229/16 |
山本 浩 高柳 恭之 JP 3623809 特許公報(B2) 20041203 1994058300 19940304 β−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩の製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 山本 浩 高柳 恭之 20050223 7 C07C227/26 C07C229/16 JP C07C227/26 C07C229/16 7 C07C227/00 C07C229/00 特開平04−290854(JP,A) 特開平02−101054(JP,A) 特開昭58−198449(JP,A) 特開昭57−080346(JP,A) 5 1995242607 19950919 7 20001227 星野 紹英 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、3−アミノプロピオニトリルからβ−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩を製造する方法に関し、更に詳しくは3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒド、あるいは、グリコロニトリルを反応させることにより、β−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩を製造する方法に関するものである。【0002】β−アラニン−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩は、生分解性キレート剤として洗剤組成物、洗剤ビルダー、重金属封鎖剤、過酸化物安定剤などに広く用いられる。【0003】【従来の技術】β−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩を製造する方法は、従来から種々知られている。例えばイミノ二酢酸のナトリウム塩にアクリル酸を反応させる方法(特開平2−160731号公報)、β−アラニンのナトリム塩にホルムアルデヒドと青酸ナトリウムを反応させる方法(特開平4−290854号公報)などがある。【0004】また、β−アラニンをシアノメチル化してβ−アラニンジアセトニトリルを製造する方法(Helv. Chim. Acta, 1949年 32 巻 1175 ペ−ジ)および、イミノ二酢酸にアクリルアミドを反応させてβ−アラニン二酢酸アミドを製造する方法(西独特許出願公開2727555号公報)も関連技術として知られている。【0005】しかしながら、イミノ二酢酸やβ−アラニンやを出発原料とする従来の技術は、β−アラニン−N,N−二酢酸の製造のために相応しい原料を選んでいるとは言い難い。すなわち、イミノ二酢酸は、アンモニア、ホルマリンと青酸の反応によって得られるイミノ二アセトニトリルを加水分解、酸析することによって合成されるが、煩雑な精製工程および低収率の点で問題を残している。また、β−アラニンは、アクリロニトリルとアンモニアの反応によって得られる3−アミノプロピオニトリルを加水分解、酸析することによって合成されるが、この場合もまた煩雑な製造工程および収率の点で問題を残している。【0006】更には、イミノ二酢酸とアクリル酸を用いてβ−アラニン−N,N−二酢酸を合成する従来技術は、目的物の純度に不満足な点を残しており、一方、β−アラニンとホルムアルデヒドおよび青酸ナトリウムを用いてβ−アラニン−N,N−二酢酸を合成する従来技術は、目的物の収率が未だ充分とは言い難い。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、β−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩の効率的な製造法を提供することを目的としており、具体的には、入手の容易な原料から効率的な工程で、目的とするβ−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩を高収率、高純度で取得する製造方法の提供を課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前期目的を達成すべく鋭意研究の結果、汎用化学原料から容易に誘導される3−アミノプロピオニトリルを原料として選び、青酸とホルムアルデヒドと反応させることにより、目的とするβ−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩が高純度、高収率で得られることを見いだして本発明に到達したものである。【0009】すなわち、本発明の第一の発明は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の三アルカリ金属塩の製造方法を要旨とする。本発明の第二の発明は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させ、さらに、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法を要旨とする。本発明の第三の発明は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで鉱酸で加水分解および結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法を要旨とする。本発明の第四の発明は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の製造方法を要旨とする。本発明の第五の発明は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解し、さらに、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法を要旨とする。【0010】以下に本発明を詳細に説明する。【0011】本発明の方法は、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒド、あるいは、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させながら加水分解を行なってβ−アラニン−N,N−二酢酸の三アルカリ金属塩を得るカルボキシメチル化工程からなる。あるいは、3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒド、あるいは、グリコロニトリルを反応させるシアノメチル化工程と、得られたN−ビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルの反応液を段階的に加水分解してβ−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩を得る加水分解工程からなる。さらに、カルボキシメチル化あるいは加水分解により得られたβ−アラニン−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩を、鉱酸で処理して、β−アラニン−N,N−二酢酸の結晶を得る酸析結晶化工程からなる。【0012】本発明における原料である3−アミノプロピオニトリルは、いかなる方法で得られたものでも用いられるが、工業的にはアクリロニトリルとアンモニアとの反応物を減圧下、精密蒸留して得たものを用いるのが有利である。他のアミン類を不純物として含まない高純度の3−アミノプロピオニトリルを用いることが、最終的に高純度のβ−アラニン−N,N−二酢酸を得るためには好ましい。3−アミノプロピオニトリルの詳細な製造方法は、従来から種々知られており、例えば、アクリロニトリルをラネ−ニッケル存在下、液体アンモニア中で反応させる方法(特開昭45−39085号公報)、アクリロニトリルと液体アンモニアをタ−シャリ−ブタノ−ル中で反応させる方法(米国特許明細書第2538024号)などがある。【0013】カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程における各化合物の混合モル比は、3−アミノプロピオニトリルに対し、青酸とホルムアルデヒドをそれぞれ、2.0〜3.0倍モル量の範囲で、好ましくは、2.0〜2.5倍モル量の範囲で使用するのがよい。青酸とホルムアルデヒドに代えてグリコロニトリルを用いる場合も全く同様であり、2.0〜3.0倍モル量の範囲で、好ましくは、2.0〜2.5倍モル量の範囲で使用するのがよい。【0014】カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において用いられる青酸は、青酸を反応液に導入する方法、シアン化アルカリ金属塩を用いる方法、反応槽に用意されたアルカリ金属水酸化物水溶液中に青酸を導入し、シアン化アルカリ金属塩として捕捉して用いる方法など種々の形態で使用できる。青酸をシアン化アルカリ金属塩の形態として利用する際、用いるアルカリ金属の種類としては、Li、NaまたはK、好ましくはNaまたはK、更に好ましくはNaが選ばれる。【0015】カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において用いられるホルムアルデヒドは、ガス状品、水溶液品、あるいは固体品のパラホルムアルデヒドなど種々の形態のものが用いられるが、工業的には、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは35〜40重量%の水溶液品を使用するのがよい。【0016】カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において青酸とホルムアルデヒドの代わりに用いられるグリコロニトリルは、通常、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ触媒存在下あるいは非存在下の水溶液中で、青酸とホルムアルデヒドを混合することによって得られるが、予め調製された10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の水溶液として使用することも可能である。【0017】カルボキシメチル化工程において用いられるアルカリ金属水酸化物は、青酸とホルムアルデヒド、あるいは、グリコロニトリルに対して総計3.0〜5.5倍モル量の範囲で、好ましくは、3.0〜4.0倍モル量の範囲で使用するのがよい。用いるアルカリ金属水酸化物は、Li、NaまたはK,好ましくはNaまたはK、更に好ましくはNaの水酸化物から選ばれ、純度80%以上の固体品、あるいは濃度10〜60重量%の水溶液が用いられる。【0018】カルボキシメチル化工程における反応温度は、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲で実施するのがよい。【0019】カルボキシメチル化工程における各化合物の混合順序には特に制約は無いが、反応に供した3−アミノプロピオニトリルに対し、最終的に約2倍モル量に相当するアンモニアが発生する。アンモニアの発生を適切な速度に調節することは、目的物であるβ−アラニン−N,N−二酢酸を高純度、高収率で得るために極めて重要であり、通常、3−アミノプロピオニトリル、アルカリ金属水酸化物、青酸とホルマリンの混合物、あるいは、グリコロニトリルのいずれかの添加速度を調節することによって達成される。空気、窒素ガス、不活性ガス等の導入、あるいは連続蒸留などを実施することにより反応混合物中のアンモニアを除去することも有効な手段である。【0020】カルボキシメチル化工程の代わりに、シアノメチル化工程と加水分解工程を段階的に行う場合、シアノメチル化工程は、アルカリ金属水酸化物の非存在下で行う以外、カルボキシメチル化工程と同様に実施される。【0021】シアノメチル化工程においては、結晶性の高いビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルが合成中間体として得られるが、一旦単離してから次の加水分解工程に用いても、あるいは単離せず連続的に加水分解工程を行ってもよい。【0022】加水分解工程は、シアノメチル化工程において得られるビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルの水溶液に、アルカリ金属水酸化物あるいは酸を作用されることによって達成される。【0023】加水分解工程において用いるアルカリ金属水酸化物は、カルボキシメチル化工程と同じく、Li、NaまたはK,好ましくはNaまたはK、更に好ましくはNaの水酸化物から選ばる。ビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルを一旦単離する場合は、反応に供した3−アミノプロピオニトリルに対し3.0〜4.0倍モル量用いるのがよく、シアノメチル化工程から連続的に行う場合は、3.0〜5.0倍モル量、好ましくは、3.0〜4.0倍モル量用いるのがよい。【0024】アルカリ金属水酸化物による加水分解工程は、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲で実施するのがよい。反応に供した3−アミノプロピオニトリルに対し約3倍モル量に相当するアンモニアが最終的に発生するまで、0.5〜8.5時間、好ましくは0.5〜3.5時間実施するのがよい。【0025】酸による加水分解工程は、硫酸、塩酸、硝酸または塩酸、好ましくは硫酸または塩酸、更に好ましくは硫酸を使用するのがよい。酸加水分解は、pH0.5〜2.5、好ましくはpH0.5〜1.5の範囲で実施することが望ましい。反応温度は、60〜120℃、好ましくは80〜100℃の範囲がよく、また、反応時間は、1〜20時間、好ましくは2〜14時間実施するのがよい。【0026】カルボキシメチル化工程あるいはアルカリ金属水酸化物による加水分解工程の後、所望の場合は、反応混合物を蒸発乾固あるいはスプレ−乾燥等の手段で結晶化することにより、β−アラニン−N,N−二酢酸の三アルカリ金属塩を単離することができる。【0027】β−アラニン−N,N−二酢酸の結晶を取得する場合は、カルボキシメチル化工程あるいは加水分解工程の反応液を酸析結晶化する。酸析結晶化工程で用いる酸は、硫酸、塩酸、硝酸または塩酸、好ましくは硫酸または塩酸、更に好ましくは硫酸がよい。目的とするβ−アラニン−N,N−二酢酸を高純度、高収率で得るには、反応混合物中に酸を温度5〜90℃、好ましくは温度15〜50℃の範囲で、pH0.5〜3.5、好ましくはpH1.5〜2.5の範囲に調節することが望ましい。得られるβ−アラニン−N,N−二酢酸の結晶は、通常、結晶表面に付着した微量の母液を少量の水を用いて洗浄する以外、再結晶化を行わなくても充分高純度である。【0028】また、このようにして得られたβ−アラニン−N,N−二酢酸を所定量のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、有機アミンなどの塩基で、中和または部分中和することにより、所望の塩を製造することができる。【0029】【実施例】次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。実施例1攪拌装置、自動温度制御装置、滴下装置、青酸導入装置および蒸留装置を付した反応器に、40重量%水酸化ナトリウム水溶液3.03トン(30.3キロモル)と37重量%ホルムアルデヒド水溶液1.87トン(23.1キロモル)を混合した。この混合液に青酸0.56トン(20.7キロモル)を密閉条件下導入して完全に溶解吸収させた。次いで、3−アミノプロピオニトリル0.67トン(9.6キロモル)を、50〜90℃の範囲で反応温度を序々に昇温させながら、3時間かけて滴下した。この間、アンモニア38重量%の凝縮水0.98トンを留去した後、更に3時間かけて反応混合物を熟成し、アンモニア11重量%の凝縮水1.48トンを留去した。アンモニアの発生が終了したのを確認した後、反応液に水4.17トンを加えて希釈し、50℃まで放冷した。次に、この反応液に98%硫酸2.27トン(15.2キロモル)を1.5時間で滴下し、この間温度は80℃に昇温した。反応液を再び33℃までに放冷し、析出したβ−アラニン−N,N−二酢酸の結晶を吸引濾過にて単離した。結晶は、10℃の水0.25トンで二回洗浄された。送風乾燥後のβ−アラニン−N,N−二酢酸(1.94トン,9.3キロモル、収率98%)は、融点195−197℃の均一な白色結晶であり純度99.9%以上であった。【0030】実施例240重量%水酸化ナトリウム水溶液3.03トンの代わりに、水1.81トンを用い、アンモニアを留去せずに50〜70℃の反応温度範囲下で3−アミノプロピオニトリルの滴下および反応混合物の熟成を行った以外、実施例1と同様の操作を実施した。次に、この反応液を5℃まで冷却し、析出したN,N−ビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルの湿結晶1.71トンを吸引濾過にて単離した。単離したN,N−ビスシアノメチル−3−アミノプロピオニトリルを40重量%水酸化ナトリウム水溶液2.88トン(28.1キロモル)に懸濁した後、反応温度を序々に105℃まで昇温した後、3時間でアンモニア22重量%の凝縮水1.60トンを留去した。アンモニアの発生が終了したのを確認した後、反応槽に残ったスラリ−をスプレ−ドライ方式により120℃で乾燥粉末化し、β−アラニン−N,N−二酢酸の三ナトリウム塩を得た(2.48トン、9.2キロモル、収率95%)。得られたβ−アラニン−N,N−二酢酸の三ナトリウム塩は、均一な白色結晶であり、純度99.9%以上であった。【0031】【発明の効果】本発明の方法によれば、入手の容易な3−アミノプロピオニトリルを用い、高収率、高純度でβ−アラニン−N,N−二酢酸およびその塩類を得ることができる。また、本発明は次のような利点もある。(1)3−アミノプロピオニトリルは、アクリロニトリルとアンモニアとの反応物を蒸留することによって容易に得ることができ、原料としての入手が容易である。(2)3−アミノプロピオニトリルは、非揮発性の液体で、しかも水に対する溶解性に優れており、反応操作上あるいは生産効率上、極めて有利な原料である。(3)反応が高収率、高選択率で進むため不純物の生成がほとんど無く、煩雑な精製工程無しに高純度の目的物を得ることができる。(4)工程中アンモニア以外の副生物は、ほとんどなく、目的物の約3倍モル量生成するアンモニアは、高純度、高収率で効率的に回収され、工業原料として他に利用することができる。 3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の製造方法。 3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させ、次いで、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法。 3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで、鉱酸で加水分解および結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法。 3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の製造方法。 3−アミノプロピオニトリルに、青酸とホルムアルデヒドをアルカリ金属水酸化物の非存在下で反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解し、さらに、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするβ−アラニン−N,N−二酢酸の製造方法。