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タイトル:特許公報(B2)_ヒト腫瘍内のヒトMDM2遺伝子の増幅
出願番号:1993517759
年次:2009
IPC分類:C12Q 1/68,C07H 21/04,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

バレル,マリリー ヒル,デヴィッド・イー キンズラー,ケネス・ダブリュー ヴォーゲルシュタイン,バート JP 4381476 特許公報(B2) 20091002 1993517759 19930407 ヒト腫瘍内のヒトMDM2遺伝子の増幅 ザ・ジョーンズ・ホプキンス・ユニバーシティ 500121816 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 栗田 忠彦 100075236 小林 泰 100075270 バレル,マリリー ヒル,デヴィッド・イー キンズラー,ケネス・ダブリュー ヴォーゲルシュタイン,バート US 867,840 19920407 US 903,103 19920623 20091209 C12Q 1/68 20060101AFI20091119BHJP C07H 21/04 20060101ALI20091119BHJP C12N 15/09 20060101ALI20091119BHJP JPC12Q1/68 AC07H21/04 BC12N15/00 A C12Q1/18 C12N15/00 SCISEARCH/CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/ESBIOBASE/LIFESCI/WPIDS(STN) EMBO.J.,1991,VOL.10,NO.6,P.1565−1569 NATURE,1992,JULY,VOL.358,P.80−83 MOL.CELL.BIOL.,1985,VOL.5,NO.7,P.1601−1610 3 US1993003199 19930407 WO1993020238 19931014 1995505294 19950615 41 20000322 2006003059 20060220 鵜飼 健 吉田 佳代子 鈴木 恵理子 関連する出願本出願は、米国特許第07/867,840号(1992年4月7日に出願したが、現在出願を放棄した)の一部継続出願である米国特許第07/903,103号(1992年6月23日出願)の一部継続出願である。本発明は、NIH認可CA−57345,CA−43460,CA−02243及びCA−35494を含む米国政府からの援助を受けて行われた。従って、政府は本発明のいくらかの権利を保有する。発明の分野本発明は、癌の診断及び治療の領域に関する。より詳細には、本発明は、あるヒト腫瘍内で増幅された遺伝子の検出に関する。発明の背景Knudsonの腫瘍形成モデル(Cancer Research,第45巻、1482頁、1985年)に従うと、すべての正常細胞内に腫瘍サプレッサー遺伝子群があり、それらの遺伝子群が突然変異によって機能しなくなると、新生物発生の原因となる。このモデルの証拠は、網膜芽腫及び結腸直腸腫瘍で見つかっている。これらの腫瘍内に包含されたサプレッサー遺伝子、それぞれRB及びp53、は多くの腫瘍に関する研究に於いて欠失または変化していることが見つかった。それ故、p53遺伝子生成物は、正常細胞の増殖および細胞の癌化抑制を制御するタンパク質群の一員であると思われる。p53遺伝子の変異は腫瘍形成と結び付いており、p53タンパク質機能の変化は細胞の癌化にかかわる事を示唆している。p53遺伝子の不活性化は、ヒト結腸直腸癌(Bakerら、Science,244,217−221,1989)、ヒト肺癌(Takahashiら、Science,246,491−494,1989;Iggoら、Lancet,335,675−679、1990)、慢性骨髄性白血病(Kelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,6783−6787、1989)および骨原性肉腫(Masudaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7716−7719、1987)を含む、広範囲の種類の癌腫(Nigroら、Nature,342,705−708、1989)の発生または進行にかかわり合っている。p53遺伝子の変異がヒトの腫瘍形成に結びついていることの証拠は非常に多いが(Hollsteinら、Science,253,49−53、1991)、p53機能の細胞内での調節物および媒介物についてはほとんど知られていない。Hindsら(Cell Growth & Differentiation,1,571−580,1990)は、アミノ酸残基143、175、273、または281でのポイントミューテーションを含むp53cDNAクローンが、培養中のラットの始原胚繊維芽細胞を癌化する活性化されたras腫瘍遺伝子と協力しあうことを明らかにした。これらのp53遺伝子変異体はヒトの癌内に見出だされる大多数の変異を代表している。(Hollsteinら、Science,253,49−53,1991。)癌化(形質転換)した繊維芽細胞は、正常(野生型)p53タンパク質の半減期(20−30分)と比較すると長い半減期(1.5−7時間)を持つ高レベルのヒトp53タンパク質を生成することが見出だされた。アミノ酸残基143または175の変異したp53タンパク質変異体は、細胞の熱ショックタンパク質hsc70とオリゴマータンパク質複合体を形成する。残基273または281の変異体はhsc70との結合が検出されず、残基175の変異体より癌化した病巣の生成が少ないが、p53変異体とhsc70の間の複合体形成はp53が媒介する形質転換には必要でない。しかしながら、複合体の形成はこの機能を促進すると思われる。p53遺伝子変異体で形質転換された全ての細胞系は、胸腺(ヌード)マウス内で腫瘍を形成する。これに対して、野生型のヒトp53遺伝子はrasと協力して癌化(形質転換)するような活性は持っていない。(TuckおよびCrawford、Oncogene Res.,4,81−96,1989.)また、Hindsら(上記)は、形質転換したラットの細胞内にヒトp53タンパク質を発現させた。発現したヒトp53を、p53の別々の抗原決定基を基に作られた2種のp53に特異的な抗体と免疫沈降させたとき、未同定のMr90,000タンパク質が共に免疫沈降した。このことはラットのMr90,000タンパク質が形質転換したラットの細胞系内でヒトp53タンパク質と複合体をつくっていることを示唆した。上述のように、p53タンパク質のレベルは正常細胞内より癌化した細胞内の方がしばしば高い。これはp53タンパク質の代謝安定性を増加させる変異によるものである(Ovenら、Mol.Cell.Biol.,1,101−110,1981;Reichら、Mol,Cell.Biol.,3,2143−2150,1983)。p53の安定化はp53とウイルスまたは細胞のタンパク質の間での複合体形成と関連していた(LinzerおよびLevine,Cell,17,43−52,1979;Crawfordら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,78,41−45,1981;Dippoldら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,78,1695−1699,1981;LaneおよびCrawford,Nature(Lond.),278,261−263,1979;Hindsら、Mol.Cell.Biol.,7,2863−2869,1987;Finlayら、Mol.Cell.Biol.,8,531−539,1988;Sarnowら、Cell,28,387−394.1982;Gronostajskiら、Mol.Cell.Biol.,4,442−448,1984;Pinhasi−Kimhiら、Nature(Lond.),320,182−185,1986;RuscettiおよびScolnick,J.Virol.,46,1022−1026,1983;PinhasiおよびOren,Mol.Cell,Biol.,4,2180−2186、1984;ならびにSturzbecherら、Oncogene,1,201−211,1987)。例えば、p53タンパク質はSV40のラージT抗原、アデノウイルス5型EIB−Mr55,000タンパク質およびヒト乳頭腫ウイルス16または18型のE6生成物とオリゴマータンパク質複合体を形成することが認めらている。(LinzerおよびLevine,Cell,17,43−52,1979;LaneおよびCrawford,Nature,278,261−263,1979;Sarnowら、Cell,28,387−394,1982;Wernessら、Science,248,76−79,1990.)同様に、複合体はT抗原(DeCaprioら、Cell,54,275−283,1988)、アデノウイルスEIAタンパク質(Whyteら、Nature,334,124−129,1988)およびヒト乳頭腫ウイルス16又は18型のE7タンパク質(Mungerら、EMBO J.,8,4099−4105,1989)とp105RB(網膜芽細胞腫感受性遺伝子の生成物)の間にも認められらた。これらのウイルスタンパク質とp105RBとの間の相互作用は、p105RBの増殖抑制機能を不活性化することが示唆され、これによく似た欠失および変異は腫瘍細胞のRB遺伝子内で共通して見出だされた。同様に、これらのウイルスタンパク質とp53との間のオリゴマータンパク質の複合体形成はp53の機能を除去または変化させるかもしれない。(Finlayら、Cell,57,1083−1093,1989).Fakharzadehら(EMBO J.,10,1565−1569,1991)は、腫瘍形成性のマウスの細胞系(即ち、3T3DM、マウスBalb/c細胞の自発的に癌化した誘導体)内に存在する増幅DNA配列について分析した。研究は、癌化していない宿主細胞(例えば、マウスNIH3T3またはRat2細胞)内に増幅遺伝子を導入し、次いで任意の増幅遺伝子が腫瘍形成を誘導するか否かを決定することによって行われた。得られた細胞系は、ヌードマウスを用いてその腫瘍形成能について試験した。MDM2と名づけた遺伝子は、3T3DM細胞内で50倍より多く増幅されており、NIH3T3およびRat2細胞内で過剰に発現した時に腫瘍形成能を誘導した。マウスMDM2(mMDM2)のヌクレオチド配列およびそれより予想されるアミノ酸配列から、Fakharzadehは、この遺伝子は他の遺伝子の発現を調整する機能を持ち、且つ過剰に発現すると細胞増殖の正常な抑制を妨げる潜在性のDNA結合タンパク質をコードしていると推測した。発明の概要本発明の目的は、肉腫のような新生物組織をヒト内で診断する方法を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトのMDM2配列をコードするcDNA分子を提供することである。本発明の他の目的は、他のヒト細胞タンパク質を実質的に含まないヒトのMDM2タンパク質の調製物を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトMDM2遺伝子またはmRNA分子とハイブリッド形成する能力を持つDNAプローブを提供することである。本発明の他の目的は、ヒトMDM2タンパク質と免疫反応する抗体を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトMDM2の増幅又は高い発現を検出するためのキットを提供することである。本発明の他の目的は、ヒトp53へのヒトMDM2の結合を阻害する化合物を同定するための方法を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトの新生物細胞を治療するための方法を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトMDM2遺伝子の増幅を含む腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法を提供することである。本発明の他の目的は、ヒトp53へのヒトMDM2の結合を妨げるポリペプチドを提供することである。本発明の他の目的は、p53発現ベクターを含む宿主細胞が増殖するための方法を提供することである。これまで知られていなかったヒト遺伝子、hMDM2は、ヒトの癌の内で一つの役割を演じていることが明らかになった。hMDM2遺伝子はクローン化され、その組換え体はインビトロ(in vitro)でヒトp53に結合するhMDM2タンパク質を誘導した。hMDM2はある種の新生物細胞内で増幅していることが明らかにされ、hMDM2がコードする生成物の発現はこの遺伝子の増幅と相応じて腫瘍内で高くなっていることが発見された。高レベルのMDM2はp53を隔離し、細胞がp53による増殖制御を受けないようにすると考えられる。【図面の簡単な説明】第1図A−Cは、ヒトMDM2のcDNA配列を示している。この図では、ヒトおよびマウスのヌクレオチドならびにアミノ酸配列を比較しており、マウスの配列は関連するヒトの配列と異なる所のみを示している。第2図は、hMDM2がp53と結合することを示している。第3図は、肉腫内でのhMDM2遺伝子の増幅を説明している。第4図A−Cは、hMDM2の発現を説明している。第5図は、p53の仲介する転写活性化がMDM2によって阻害されることを示している。酵母は、示されているように、p53、lex−VP16、MDM2または適切なベクターのみの対照、をコードする発現プラスミドで安定してトランスフェクションされた。p−53応答(棒グラフa−c)またはlexA−応答(棒グラフd−f)のβ−ガラクトシダーゼレポータープラスミドが応答を評価するために用いられた。挿入図:代表的な酵母株内でのMDM2(90kD)およびp53(53kD)の発現を示すウェスタンブロット分析。+で示された株は全長のMDM2およびp53をコードする発現ベクターでトランスフェクションされ、−で示した株はp53発現ベクターのみでトランスフェクションされた。第6図は、MDM2およびp53のドメインの相互作用を示している。第6図Aおよび第6図B:MDM2のランダムフラグメントをlexA DNA結合ドメインをコードする配列に融合させ、得られたクローンを、pRS314SN(p53発現ベクター)及びpJK103(lexA−応答β−ガラクトシダーゼリポーター)を持つ酵母にトランスフェクションした。β−ガラクトシダーゼを発現している酵母クローンを青色発色によって同定し、lexA融合ベクター内のMDM2の配列を決定した。Aに於いてβ−ガラクトシダーゼ活性はp53の発現に依存せず認められたが、Bに於いてはp53の発現に依存していた。Bの下部、6クローンは遺伝子工学によって作られた。第6図C:p53のランダムフラグメントをB42酸性活性化ドメインおよび赤血球凝集素エピトープ標識をコードする配列と融合させた;得られたクローンはlexA−MDM2(全長のMDM2に融合させたlexA DNA結合ドメイン)およびpJK103を持つ酵母内にトランスフェクションした。上述の方法で酵母クローンを同定し、そのすべてがMDM2依存性であることが分かった。下の3クローンは遺伝子工学によって作られた。第7図は、第6図に記載した酵母株からのタンパク質の発現を示している。上述の方法(Oliner,J.D.ら、Nature,358,80−83,1992)に従って、一列あたり20μgのタンパク質を用いて、ウェスタンブロット分析を行った。融合ベクター内に含まれるMDM2およびp53のコドンはそれぞれAおよびBの最も上に見えている。第7図A:上のパネルはp53を検出するp53Ab2をプローブとした;下のパネルは30−50KdのMDM2融合タンパク質を検出する抗lexAポリクローナル抗体(lexAb)をプローブとした。第7図B:上のパネルは112kDのlexA−全長MDM2融合タンパク質を検出するlexAbをプローブとした;下のパネルはおおよそ25−30kDのp53融合タンパク質を検出するHA Ab(赤血球凝集素エピトープ片(tag)を型にして作られたモノクローナル抗体、バークレー(Berkeley)抗体)をプローブとした。第8図は、MDM2によるp53活性化ドメインの阻害を示している。酵母はlexA−p53(p53コドン1−73)融合(棒グラフaおよびb)またはlexAのみ(棒グラフc)をコードする発現ベクターでトランスフェクションされた。また、b株は全長のMDM2を発現しており、すべての株はlexA−応答β−ガラクトシダーゼリポータープラスミドを含んでいた。挿入図:上のパネルは全長のMDM2(90kD)を検出するMDM2ポリクローナル抗体をプローブとした;下のパネルは40kDのlex−p53融合タンパク質を検出するlexAbをプローブとした。第9図は、MDM2またはp53に対するモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析を示している。OsA−CLまたはSW480細胞から得られた全細胞タンパク質50μgをウェスタンブロット分析に用いた。分子量マーカーの位置をkdで右に示した。第10図は、インビトロで増殖させたOsA−CLおよびSW480細胞の免疫細胞化学分析を示している。MDM2に特異的なモノクローナル抗体IF−2、およびp53に特異的なmAb1801を用いた。MDM2タンパク質はSW480細胞よりOsA−CL細胞でより高く発現し、p53では逆のパターンが観察されたことから、両タンパク質は核内にのみ位置していることが明らかである。第11図は原発性柔部組織肉腫内でのMDM2の発現を示している。ヒト肉腫のクリオスタット切片をMDM2に特異的なIF−2抗体と共にインキュベーションした。腫瘍#3および#10では、MDM2は核内で発現していたが、腫瘍#2では染色されなかった。発明の詳細な説明本発明では、ある種のヒトの腫瘍内に増幅された遺伝子が存在することが発見された。それ故、MDM2と名付けたこの遺伝子の増幅は、新生物形成または潜在の症候である。また、ヒトMDM2のコードする生成物の高い発現を検出することは、新生物形成または新生物形成へと形質転換する潜在性の症候でもある。最も一般的な骨および柔組織型を含む調査した肉腫の1/3以上が、増幅したhMDM2配列を持っていることが認められた。hMDM2の発現は、遺伝子の増幅と相応じて腫瘍内で高くなっていることが認められた。また、高いhMDM2の発現を導くその他の遺伝子の変化、例えば遺伝子の調節領域内の突然変異も腫瘍形成に関与すると思われる。また、高いhMDM2の発現は、肉腫瘍以外の腫瘍にも関与すると思われ、そのような腫瘍としては、これらに限られるわけではないが、p53の不活性化が関与することが示唆される腫瘍が含まれる。これらの腫瘍には、結腸直腸癌、肺癌、および慢性骨髄性白血病が含まれる。本発明の一つの実施態様に従って、ヒトの新生物組織を診断する方法が提供される。組織または体液をヒトから分離し、ヒトMDM2のコピー数を定量する。別の方法として、ヒトMDM2遺伝子生成物の発現レベルを定量することができる。これらの生成物にはタンパク質およびmRNAが含まれる。試験されてよい体液には、尿、血清、血液、糞便、唾液、およびその類似物などが含まれる。新生物である疑いのある組織は、分析のため、正常と思われる組織から分離した。この分離は、この技術分野で知られているパラフィンもしくはクリオスタット切片化またはフローサイトメトリーによって行うことができる。非新生物細胞からの新生物細胞の分離を怠ると、分析が混乱することもある。隣接する非新生物組織または任意の正常組織は、発現またはコピー数の基準レベルを決定するために用いることができ、この基準レベルを対照としてhMDM2遺伝子または遺伝子生成物の量を比較することができる。細胞がヒトMDM2遺伝子を染色体当たりの正常なコピー数(2)より多く含んでいれば、この遺伝子は増幅されていると考えられる。遺伝子の増幅を検出するための様々な技術はこの技術分野で熟知されている。遺伝子の増幅は、例えば実施例4に記載したようなサザンブロット分析によって定量することができる。実施例4ではヒトの組織から得た細胞DNAを消化し、分離し、▲濾▼紙に移して相補的核酸を含むプローブとハイブリッドを形成させる。別の方法として、プライマーを用いた定量的ポリメラーゼ鎖反応(PCR)が、遺伝子増幅を定量するために用いられることもできる。適切なプライマーはヒトのMDM2をコードする配列を含む配列と結合するであろう。この技術分野で知られているような遺伝子のコピー数を決定するための他の技術は、制限なしに用いることができる。測定される遺伝子生成物はmRNAまたはタンパク質のどちらかであってよい。高い発現と言う言葉は、mRNA生成物またはタンパク質生成物が非癌性細胞によって正常に生産される以上に増加することを意味する。増幅はヒト肉腫内で認めらたが、MDM2の高い発現を導く他の遺伝子変化は、これらまたはその他の腫瘍内に存在すると思われる。その他の腫瘍には、肺、乳房、脳、結腸直腸、膀胱、前立腺、肝臓、皮膚、および胃の腫瘍が含まれる。これらの腫瘍もまた、本発明によって予測される。発現レベルの基準線を決めるために用いる非癌性細胞は、腫瘍周辺の細胞から、他人から、またはヒトの細胞系から得ることができる。どの様な増加で診断基準となりうるが、一般的に、mRNAまたはタンパク質の発現は非癌性細胞で見られるより少なくとも3倍、5倍、ある場合には最大で100倍まで高くなるであろう。mRNAまたはタンパク質を検出するために用いられる具体的な方法は、本発明の実施に重要ではない。例えば、増加したmRNAまたはタンパク質生成物は、それぞれ実施例4に記載したようなノーザンブロット分析もしくはウェスタンブロット分析、またはELISA,免疫沈降、RIAおよびそれに類似した他の既知技術を用いて検出されてよい。これらの技術もまた当業者に熟知されている。本発明の実施態様に従って、ヒトMDM2の遺伝子増幅またはmRNAの高い発現を定量するための核酸プローブまたはプライマーが提供される。プローブはリボ核酸またはデオキシリボ核酸からなってよく、ヒトのMDM2をコードする全配列、それに相補的な配列、またはそのフラグメントを含んでよい。例えば、プローブは、第1図に示すようなヌクレオチド1−949または1−2372を含んでよい。一般的に、プローブまたはプライマーは、ヒトの配列の少なくとも約14の隣接するヌクレオチドを含むであろうが、望ましくはおおよそ40、50または100のヌクレオチドを含んでよい。典型的には、プローブはそれらの検出を容易にするために蛍光、ラジオアイソトープ、またはその類似物で標識される。好適には、プローブは厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成されるであろう。その様な条件下では、プローブはマウスのMDM2とはハイブリッド形成しないであろう。本発明で用いたプローブは、ヒトMDM2遺伝子に相補的である。このことは、本発明で用いたプローブがヒトのMDM2配列と100%の同一性を持つことを意味している。hMDM2タンパク質は、本発明にしたがって、実質上ヒトの他のタンパク質を含まない遊離した状態で作ることができる。DNA配列が提供されると、当業者はヒト以外の細胞内にcDNAを発現させることができる。その様な細胞の溶解液は、ヒトの他のタンパク質を実質上含まないタンパク質を提供する。溶解液は、例えば、免疫沈降、p53との共沈、またはアフィニティークロマトグラフィーによってさらに精製することができる。本発明の抗体はhMDM2タンパク質と特異的に反応する。望ましくは、これらの抗体は他の種のMDM2と交差反応しない。これらの抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、自然発生のhMDM2またはhMDM2融合タンパク質または合成ペプチドを抗原として作ることができる。抗体はヒトの他のタンパク質上には存在しないhMDM2エピトープと特異的に免疫反応する。ある種の抗体は、ヒトMDM2に独特で且つマウスのMDMには存在しないエピトープと反応する。抗体は、ウェスタンブロット分析、ELISA、免疫組織化学、および他の免疫学的アッセイのような、タンパク質を検出するための普通の分析に有効である。ポリクローナル抗体を高め精製するための技術は、モノクローナル抗体を調整する技術と同様に、この技術分野で熟知されている。抗体の結合は、酵素標識した二次抗体、ブドウ球菌プロテインA、およびその類似物のような、この技術分野で知られた方法によって定量することができる。本発明のいくらかのモノクローナル抗体は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(the Amercan Type Culture Collection)、12301,Parklawn Drive,Rockville,MD”20852、に寄託した。これらは、それぞれHB11290およびHB11291として受け入れを許されたIF2、およびED9を含む。本発明の他の実施態様に従うと、MDM2の発現を干渉することによって、治療方法が提供される。この方法は、インビボ(in vivo)、インビトロ(in vitro)、またはエクスビボ(ex vivo)で適用することができる。例えば、発現は三本鎖形成物、またはそれぞれhMDM2遺伝子もしくはmRNAと結合して転写もしくは翻訳を妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することによってダウン制御されてよい。また、オリゴヌクレオチドはプロセッシングされていないmRNA前駆体またはプロセッシングされたmRNAと反応させてもよい。MDM2の発現を特異的に阻害する小分子およびペプチドを用いることもできる。同様に、MDM2のp53への結合を阻害するような分子は、p53の隔離を緩和することによって治療効果を示すであろう。その様な阻害分子はhMDM2/p53の相互作用を干渉する分子をスクリーニングすることによって同定することができ、その場合、一方の結合相手を固体支持体に結合させ他方の相手を標識する方法が用いられる。結合相互作用に含まれるhMDM2またはp53のエピトープに特異的な抗体は、その様な結合を干渉するであろう。用いられてよい固体支持体には、タンパク質を結合する既知の任意のポリマーが含まれる。支持体はフィルター、カラム充填マトリックス、ビーズ、およびその類似物の形態であってよい。タンパク質は、この技術分野で既知の任意の技術に従って標識化することができる。放射能標識、酵素標識、および蛍光標識を都合良く用いることができる。別の方法として、hMDM2およびp53の両方を溶液状態にし、その後、結合分子を非結合分子から分離させてもよい。標識されていない結合相手に特異的な抗体との免疫沈降または免疫親和性による分離を含む、この技術分野で既知の任意の分離技術が用いられてよい。p53のアミノ酸残基13−41(SEQ ID NO:1を参照されたい)が、MDM2およびp53の相互作用に必要であることが明らかになった。しかしながら、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端側のどちらかの残基もさらに必要であると思われる。p53のアミノ酸残基をさらに9−13を加えると、MDM2と十分に結合するが、必須残基はこれより少ないかもしれない。MDM2を過剰に発現する細胞は肉腫内でp53が制御する増殖調整を受けないので、過剰のMDM2に結合させるためにp53から誘導されたペプチドを用いることはp53制御の増殖調整を再び確立する。投与に適切なp53誘導ペプチドは、例えば、環状、直線状、または細胞膜の浸透性を良くするように誘導したペプチドである。また、本発明のペプチドと同じ三次元構造をとるように設計された有機化合物も用いることができる。MDM2に結合性、p53誘導ペプチド、またはその多くのコピーをコードするDNAもまた、ペプチドを投与する様式の一つとして腫瘍細胞に投与されてよい。典型的には、DNAは、MDM2結合ペプチドが発現するように適切に配置された発現に必要なDNAエレメントを持つ、レトロウイルス、DNAウイルス、またはプラスミドベクターのような発現構築物内に存在するであろう。DNAは、とりわけリポソーム、または細胞に能率的に取り込まれるためのこの技術分野で既知の任意の他の形態で、カプセル化して投与することができる。ペプチドの直接投与の目的は、MDM2によるp53の隔離を緩和することである。hMDM2をコードする配列を含むcDNA分子は、プローブおよびプライマーを作るために用いることができる。さらに、そのcDNA分子は、大腸菌のような培養細胞内で発現し、他のヒトタンパク質を実質的に含まないhMDM2タンパク質調製物を得ることができる。生成されたタンパク質は、例えば、上述の抗体を用いた免疫親和性の技術で精製することができる。hMDM2遺伝子に特異的なプローブまたはプライマー並びにその指示書といったような、遺伝子のコピー数を定量するために必要な試薬を含むキットが提供される。指示書によって、定量値と比較するための検定曲線が提供される。また、キットはmRNA(即ち、プローブを含む)またはhMDM2タンパク質(即ち、抗体を含む)の高い発現を定量するためにも提供される。指示書に従って試験すると、発現レベルが高いか否かを決定することができる。また、反応容器、および色素源、緩衝液、酵素などのような補助剤も、キットに含まれてよい。本発明によって、ヒトのMDM2遺伝子が同定されクローン化された。組換えhMDM2誘導体はヒトのp53と結合することが示された。さらに、hMDM2はある肉腫内で増幅されていることが明らかになった。増幅はhMDM2遺伝子生成物を相応して増加させる。その様な増幅は腫瘍の形成過程と関連する。この発見によって、個々の組織の新形成または新形成の潜在状態を評価するための特別なアッセイを遂行することができる。以下の実施例は本発明の様々な態様を例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものではない。実施例実施例1ヒトのcDNAクローンを得るために、cDNAライブラリーはマウスのMDM2(mMDM2)cDNAをプローブとしてスクリーニングした。cDNAライブラリーは、ランダムヘキサマープライム二本鎖cDNAを生産するための鋳型としてヒトの結腸癌細胞系CaCo−2から分離したポリアデニル化RNAを用いることによって調製した。GublerおよびHoffmann,Gene,25,263−268,1983。cDNAは、Elledgeらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,88,1731−1735,1991)に従って、アダプターへ結合させ、次いでラムダYESファージベクターと結合させ、パッケージングし、平板培養した。ライブラリーは、最初に、Pで標識した(Kinzler,K.W.,ら、Nucl.Acids Res.,17,3645−3653,1989;FeinbergおよびVogelstein,Anal.Biochem.,132,6−13,1983)mMDM2cDNAプローブ(ヌクレオチド259−1508(Fakharzadehら、EMBO J.,10,1565−1569,1991)でスクリーニングし、次いで、ヌクレオチド40−72を含むhMDM2cDNAクローンで再スクリーニングした。12のクローンが得られ、さらにそのクローンの内の一つを用いて同ライブラリーを再スクリーニングすることによってさらに13のクローンを得た。全部で25のクローンが得られ、部分的または全体の配列を決定し、マッピングした。25のクローンの配列分析によって、スプライシング位置が交互に変わる(オルタナティブスプライシング)幾つかのcDNAの形態が明らかになった。第1図に示した配列は、最も多く見られたスプライシングの形態を示しており、c14−2(ヌクレトチド1−949),c89(ヌクレトチド467−1737),およびc33(ヌクレオチド390−2372)の3つのクローンから組み立てられた。3´末端の翻訳されない領域は、マウスにおいても、またヒトにおいても、未だクローン化されていない。5´末端は、ヌクレオチド1、またはそれに近い位置にあると思われる。ヒトcDNA配列の5´末端からヌクレオチド1784までにわたってオープンリーディングフレームがあった。翻訳開始信号の位置は明確には決定できなかったが、ヌクレオチド312のATGがいろいろな理由から最も適当な位置であると考えられた。第一に、hMDM2とmMDM2の間での配列類似性がヌクレオチド312上流では著しく減少した。タンパク質間での類似性が高く保持されているにもかかわらず、このように類似性が保持されていないのは、ヌクレオチド312の上流の配列がタンパク質をコードしていなくてもよいことを示唆している。第二に、固定化したポリメラーゼ鎖反応(PCR)法を用いてさらに上流のcDNA配列を得るために努力した。Ochmanら、1985、PCR Technology:“DNA増幅の原理および応用(Principles and Applications for DNA Amplification)(Erlich編)105−111(Stockton,New York)。PCR法で誘導したクローンの5´末端は、cDNAライブラリーから得られたクローンの5´末端と(3塩基対以内で)非常によく似ており、この事は、第1図に示したhMDM2配列の5´末端が転写の5´末端である事を示唆している。第三に、第1図に示した配列をインビトロ(in vitro)で翻訳したところ、ヌクレオチド312のATGでコードされるメチオニンで始まり、ヒトの細胞内で観察されるのと同じ大きさのタンパク質が作られた。第1図では、hMDM2cDNA配列、hMDM2およびmMDM2のヌクレオチド、並びにアミノ酸配列を比較している。マウスの配列は、関連するヒトの配列と異なる所のみ示している。以前発表したmMDM2cDNAの5´および3´の境界を星印(*)で示す(Fakharzadehら、EMBO J.,10,1565−1569,1991)。ダッシュ(−)は挿入を示す。ヌクレオチド312の推定される翻訳開始部位からヌクレオチド1784の終止コドンまでのマウスとヒトのアミノ酸配列を比較する。ヒトおよびマウスのMDM2コード領域を比較すると、ヌクレオチド(80.3%)、およびアミノ酸(80.4%)レベルで高い相同性の保持を示した。hMDM2およびmMDM2は、現行のデータベースに記録されている他の遺伝子とほとんど類似性を持たないが、二つのタンパク質は幾つかのモチーフを共有している。これらの共有モチーフは、コドン181−185に塩基性核局在化シグナル(Tanaka,FEBS Letter,271,41−46,1990)を、コドン166−169、192−195、269−272、および290−293に様々なカゼインキナーゼIIセリンリン酸化サイト(Pinna,Biochem.et.Biophys.Acta.,1054,267−284,1990)を、コドン223−274に酸性活性化ドメイン(Ptashne,Nature,355,683−689,1988)を、コドン305−322および461−478に二つの金属結合サイト(Harrison,Nature,353,715,1991)を含んでいたが、どのドメインも既知のDNA結合ドメインと深い関係はなかった。mMDM2に認められたプロテインキナーゼAドメイン(Fakharzadehら、EMBO J.,10,1565−1569,1991)はhMDM2には保持されていなかった。実施例2hMDM2タンパク質がインビトロでヒトのp53タンパク質と結合するか否かを決定するために、hMDM2発現ベクターをcDNAクローンから構築した。hMDM2発現ベクターはオーバーラップするcDNAクローンからpBluescript SK+(Stratagene)に構築した。構築物は第1図に示すヌクレオチド312−2176の配列を含んでいた。hMDM2の高いレベルの発現を得るために、42塩基対のゴキブリウイルスのリボソーム侵入配列(Dasmahapatraら、Nucleic Acid Research,15,3933,1987)をこのhMDM2の直ぐ上流に配置した。この構築物、並びにp53(El−Deriyら、Nature Genetics,印刷中、1992)およびMCC(Kinzlerら、Science,251,1366−1370,1991)をpBluescript SK+内に構築し、T7RNAポリメラーゼで転写し、ウサギの網状赤血球溶解液(Promega)内で製造者の指示にしたがって翻訳した。構築物より生成されるタンパク質の予想される大きさはわずか55.2kd(ヌクレオチド312のメチオニンからヌクレオチド1784にわたる)にすぎなかったが、インビトロで翻訳されたタンパク質はおおよそ95キロダルトンであった。3つのタンパク質(hMDM2,p53およびMMC)を単独または対に混合して含む溶菌液10μlを37℃で15分間インキュベーションした。1μg(10μl)のp53Ab1(p53のC末端に特異的なモノクローナル抗体)もしくはAb2(p53のN末端に特異的なモノクローナル抗体)(Oncogene Science)、または5μlのMDM2Ab(ウサギの抗hMDM2ポリクローナル抗体)を含むウサギの血清もしくは免疫化前のウサギの血清(hMDM2 Abを生産したウサギより得た)を、示された通り加えた。ウサギのポリクローナル抗体は、hMDM2cDNAのヌクレオチド390−816を含む大腸菌生産hMDM2−グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質を用いて、生産した。次いで、90μlのRIPA緩衝液(10mMトリス、pH7.5、1%デオキシコール酸ナトリウム、1% NP40、150mM塩化ナトリウム、0.1% SDS)、SNNTE緩衝液、また結合用緩衝液(El−Deriyら、Nature Genetics,印刷中、1992)を加え、混合液を4℃で2時間インキュベーションした。2mgのプロテインAセファロースをそれぞれのチューブに加え、チューブを4℃で1時間、上下に回転させた。ペレット状にして洗浄した後、免疫沈降物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、乾燥させたゲルをEnhance(New England Nuclear)存在下で10−60分間オートラジオグラフした。第2図に、hMDM2とp53の共沈降を示す。3種類の緩衝液からは同様の結果が得られたが、共沈降は、0.1M−NaClを含む結合緩衝液中(第2図、第6および9列)より0.5M NaClを含むSNNTE緩衝液中(第2図、第5および8列)のほうが明らかに少なかった。インビトロで翻訳したhMDM2、p53およびMMCタンパク質を上記のように混合し、p53Ab1、p53Ab2、hMDM2Abまたは免疫化前血清と共に、インキュベーションした。第2図、第1、4、7、10および14列は、免疫沈降のために用いたタンパク質混合物のアリコートを含む。p53よりわずかに早く泳動する帯は内部の翻訳開始部位から生成したポリペプチドである。hMDM2タンパク質は、p53のC末端あるいはN末端領域のいずれかに特異的なモノクローナル抗体(第2図、第2および3列)とも免疫沈降しなかった。しかしながら、インビトロで翻訳したヒトp53をhMDM2翻訳生成物と混合したところ、抗p53抗体はp53と共にhMDM2タンパク質を沈降させ(第2図、第5および6列)、インビトロでの結合を示した。対照として、類似した電気泳動の移動度を示す他の遺伝子からの蛋白質MMC(Kinzlerら、Science,251,1366−1370,1991)をp53と混合した。MMCタンパク質の共沈降は認められなかった(第2図、第8および9列)。インビトロで翻訳したp53の変異体型(175his)をhMDM2タンパク質と混合したところ、hMDM2およびp53のタンパク質と同様の共沈降が認められた。上記の実験の逆で、抗hMDM2抗体は、hMDM2タンパク質を混合した場合にはp53を免疫沈降した(第2図、第15列)が、単独ではp53を沈降させなかった(第2図、第13列)。免疫化前のウサギの血清はhMDM2またはp53のどちらをも沈殿させなかった(第2図、第16列)。実施例3hMDM2の染色体での位置を確かめるために、体細胞ハイブリッドをhMDM2cDNAプローブでスクリーニングした。ヒトの染色体12のみを含むヒト−ハムスターハイブリッドがプローブとハイブリッド形成することが分かった。同プローブで染色体12の部分を含むハイブリッドをスクリーニングする(Turc−Carelら、Cancer Genet.Cytogenet.,23,291−299、1986)ことによって、染色体上の位置を12q12−14に限定した。実施例4以前の研究で、染色体12のこの領域はヒト肉腫で時折異常型になっている事が示されている。Mandahlら、Gene Chromosomes & Cancer,1,9−14,1987;Turc−Carelら、Cancer Genet.Cytogenet.,23,291−299、1986;Meltzerら、Cell Growth & Differentiation,2,495−501,1991.hMDM2がその様な癌で遺伝的に変化する可能性を評価するために、サザンブロット分析を行った。第3図に肉腫内でのhMDM2遺伝子の増幅例を示す。細胞DNA(5μg)は、ReedおよびMann,Nucl.Acids.Res.,13,7207−7215,1985に記載されている方法にしたがって、EcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、ナイロンに移した。細胞DNAは、5つの原発性肉腫(第3図、第1−4および6列)並びに一つの肉腫細胞系(OsA−Cl、第3図、第5列)から誘導した。次いで、フィルターはヌクレオチト1−949のhMDM2 cDNAフラグメントプローブ(第1図を参照されたい)、または類似したサイズのフラグメントを同定する対照プローブ(DCC遺伝子、1.65cDNAフラグメント)でハイブリッドを形成させた。Fearon,Science,247,49−56,1989.ハイブリッド形成は、Vogelsteinら、Cancer Research,47,4806−4813,1987に記載の方法に従って行った。hMDM2配列の著しい増幅がこれらの腫瘍の幾つかに認められた(第3図、第2、3、および5列を参照されたい)。47例の肉腫を分析したところ、17例が5−50倍の範囲でhMDM2の増幅を示した。これらの腫瘍は、脂肪肉腫では13例中7例に、悪性線維性組織球腫(MFH)では22例中7例に、骨原性肉腫では11例中3例に、および横紋筋肉腫では1例中0例に認められた。また、5例の良性柔組織腫瘍(脂肪腫)および27例の癌(結腸直腸または胃)をサザンブロット分析によって試験したが、増幅は認められなかった。実施例5実施例5では遺伝子の増幅が発現の増加と関連していることを具体的に説明する。第4図Aは、ノーザンブロット分析で証明されるhMDM2の発現を具体的に説明している。原発性肉腫内ではRNAが分解されているために、ライン化した細胞系のみをノーザンブロットで生産的に分析することができる。RNAはMOPSホルムアルデヒドゲル電気泳動で分離し、電気泳動でナイロンフィルターに移した。フィルターへの移送およびハイブリッド形成はKinzlerら、Nature,332,371−372,1988に記載の方法に従って行った。RNAは第3図に記載のhMDM2フラグメントとハイブリッドを形成させた。2種類の肉腫細胞系(第1列にOsA−CLおよび第2列にRC13)および結腸直腸癌細胞系(CaCo−2)よりそれぞれ誘導した全RNA10μgを用いてcDNAライブラリー(第3列)を作った。第4列は10μgのポリアデニル化CaCo−2 RNAを含む。RNAサイズをkbで示す。hMDM2の増幅が認められた一種類の肉腫細胞系では、おおよそ5.5kbの単一な転写物が認められた(第4図A,第1列)。この転写物の量は増幅されていない肉腫細胞系内(第4図A、第2列)または癌細胞系(第4図A、第3列)内により非常に多い。癌細胞系より精製した(全RNAよりむしろ)mRNAを用いて分析を行ったところ、5.5bpのhMDM2転写物が再び認められた(第4図A,第4列)。第4図Bは、肉腫細胞系RC13(第1列)、OsA−Cl(第3列)、HOS(第4列)、および癌細胞系CaCo−2(第2列)のウェスタンブロット分析によって示される、hMDM2の発現を具体的に説明している。第4図Cは、原発性肉腫のウェスタンブロット分析によって示される、hMDM2の発現を具体的に説明している。第1列から第3列はhMDM2が増幅された肉腫のタンパク質であり、第四列および第五列はhMDM2の増幅されていない肉腫のタンパク質である。アフィニティーで精製したMDM2Abを用いたウェスタンブロットは、Kinzlerら、Mol.Cell.Biol.,10,634−642,1990に記載の方法に従って、一列あたり50μgのタンパク質を用いて行ったが、脚は10%脱脂粉乳および10%ヤギ血清内でブロックし、二次抗体は西洋ワサビのペルオキシダーゼに結合させ、化学発光による検出を可能にした(Amersham ECL)。MDM2 AbはKinzlerら、Mol.Cell.Biol.,10,634−642,1990、に記載の方法を用いて、pATH−hMDM2融合タンパク質でアフィニティー精製した。約75−85、105−120および170−200kdの非特異的に反応するタンパク質はすべての列に認められ、hMDM2の増幅状態とは関係ない。約90−97kbのhMDM2タンパク質はhMDM2の増幅された腫瘍内にのみ認められた。タンパク質マーカーのサイズをkdで示す。hMDM2の増幅された肉腫細胞系内ではおおよそ97キロダルトンのタンパク質が高いレベルで発現していた(第4図B、第3列)が、hMDM2が増幅されていない二例の肉腫細胞系内または癌細胞系内では発現が認められなかった(第4図B、第1、2および4列)。さらに、別の五例の原発性肉腫をウェスタンブロット分析で試験した。増幅の認められる三例の原発性肉腫は肉腫細胞系で認められるのと同じ大きさのタンパク質を発現していた(第4図C、第1−3列)が、増幅されていない二例の肉腫にはタンパク質は認められなかった(第4図C、第4および5列)。増幅された肉腫瘍内のhMDM2RNAの発現は試験した他の細胞系より少なくとも30倍高いと概算された。このことは、ウェスタンブロット分析の結果と一致する。上記の実施例では、hMDM2がインビトロでp53に結合すること、並びにhMDM2はMFH、脂肪肉腫、および骨肉腫を多く含む肉腫で遺伝的に変化(即ち増幅)していることが証明された。これらの肉腫は柔組織および骨の最も一般的な肉腫である。WeissおよびEnzinger、Cancer,41,2250−2266,1978;Malawerら、1985、Cancer,「腫瘍学の原理および実践」(Principles and Practice of Oncology),DeVitaら編、1293−1342(Lippincott,Philadelphia).ヒトMDM2の増幅は、これらの時として致命的な癌の病因を理解する上で有効である。MDM2は、SV40 T−抗原、アデノウイルスE1B、およびHPV E6のようなウイルスにコードされた癌タンパク質が用いる方法と類似した方法でp53を機能的に不活性化すると思われる。LaneおよびBechimol,Genes and DeveloPment,4,1−8,1990;Wernessら、Science,248,76,1990.この仮説と矛盾なく、hMDM2の増幅された肉腫はすべて、他の腫瘍に共通して起こるp53遺伝子の変異を全く持たなかった。hMDM2の増幅は、ウイルス性の発癌にも自然発生の遺伝的変化が根源となる散発性のヒトの癌にも同じように起こる。hMDM2の発現が遺伝子の増幅を伴う腫瘍内で相応じて高いという事実は、MDM2がp53と結合するという事実、および、肉腫内でMDM2が過剰に発現するとp53が制御する増殖調節が利かなくなるという仮説と矛盾しない。この様な腫瘍形成の機構は、ウイルス性癌遺伝子生成物がp53と結合し、かつp53を機能的に不活性化するという、ウイルス誘導腫瘍にすでに認められている機構(LaneおよびBechimol,Genes and Development,4,1−8,1990;Wernessら、Science,248,76,1990)と著しく相似している。実施例6実施例6では、MDM2の発現がp53の仲介するトランス活性化を阻害することを示す。MDM2がp53の転写活性化能力に影響を及ぼすことができるか否かを決定するために、2つのタンパク質をコードする発現ベクターをp53応答リポーター構築物と共に酵母内に安定的にトランスフェクションした。リポーターは最小プロモーターの転写調節下にあるβガラクトシダーゼ遺伝子、およびインビトロでp53と強く結合するマルチマのヒトのDNA配列からなる(Kern,S.E.,ら、Science,256,827−830,1992)。リポーターの発現は、本実施例のアッセイでは、完全にp53に依存していた(第5図、棒グラフaおよびcを比較されたい)。MDM2の発現は、MDM2が発現していない同質遺伝子の酵母に比較して、本リポーターのp53仲介トランス活性を1/16に阻害することが分かった(第5図、棒グラフaおよびbを比較されたい)。ウェスタンブロット分析によって、p53(53kD)は株内にMDM2を持っている場合も持っていない場合も等しく発現していることが確かめられた(第5図、挿入図)。方法:MDM2発現プラスミド、pPGK−MDM2は、ホスホグリセリン酸キナーゼの直ぐ下流にプロモーターを持つpPGK(Poon,D.ら、Mol.and Cell.Biol.,11,4809−4821,1991)に、全長のMDM2 cDNA(Oliner,J.D.ら、Nature,358,80−83,1992)を挿入することによって構築した。ガラクトースで誘導されるp53(pRS314SN,Nigro,J.M.ら、Mol.and Cell.Biol.,12,1357−1365,1992)、lexA−VP16(YVLexA、Dalton,S.ら、Cell,68,597−612,1992)、およびlexA(YVLexAマイナスVP16)のプラスミドを示す通り用いた。リポーターには、PG16−lacZ(Kern,S.E.ら、Science,256,827−830,1992)(p53応答)およびpJK103(Kamens,J.ら、Mol.Cell.Biol.,10,2840−2847,1990)(lexA−応答)を用いた。S.cerevisiae株pEGY48は、Kinzler,K.W.ら、Nucl.Acids Res.,17,3645−3653,1989に記載の方法に従って形質転換した。棒グラフa−cで示す酵母株は、Kern,S.E.ら、Science,256,827−830,1992に記載の方法に従って、30℃、炭素源2%ラフィノースを含む選択液体培地内で、対数増殖中期(mid−log phase)に成長させ、2%ガラクトースを加えて30分間誘導し、集菌し、溶菌した。棒グラフd−fで示した株は、測定可能な程度のβ−ガラクトースを得るために細胞をガラクトシダーゼで4時間誘導したことを除いて、同様に処理した。第5図に示したβ−ガラクトシダーゼ活性は、3−5回の実験値の平均を示している[誤差を示す細い棒グラフは標準誤差(s.e.m.)を示している)。タンパク質濃度は、クーマシーブルー(bio−Rad)を用いたアッセイで定量した。β−ガラクトシダーゼのアッセイは、製造者の指示にしたがってAMPGD化学発光基質およびエメラルドエンハンサー(Tropix)を用いて行った。棒グラフbおよびcのβ−ガラクトシダーゼ活性は、棒グラフaの活性との比較で示しており;棒グラフeおよびfのβ−ガラクトシダーゼ活性は、棒グラフdとの比較で示している。ウェスタンブロットは、Oliner,J.D.ら、Nature,358,80−83,1992に記載の方法に従って、p53Ab1801(パネル下側、Oncogene Science)またはMDM2ポリクローナル抗体(Oliner,J.D.ら、Nature,358,80−83,1992)(パネル上側)を用いて行った。この阻害は外来MDM2遺伝子の発現によって仲介される一般的な転写の単なるダウンレギュレーションでないことを証明するために、異なる転写活性化因子(lexA−VP16、VP16の酸性活性化ドメインに融合させたlexA DNA結合ドメインからなる)、類似したリポーター(β−ガラクトシダーセ遺伝子の上流にlexA応答部位をもつ)、および同じMDM2発現ベクターを含む酵母株を作った。第5図(棒グラフdおよびe)に示す結果は、lexA−VP16の転写活性化がMDM2の存在に影響されないことを説明している。さらに、MDM2の発現は細胞の増殖速度に明白な影響を与えなかった。実施例7実施例7では、互いに作用しあうp53およびMDM2のドメインを示す。MDM2の仲介するp53阻害の機構を洞察するために、お互いの結合の原因となるMDM2およびp53のドメインをマッピングした。タンパク質−タンパク質結合を検出するための酵母システムには、転写因子ドメインのモジュール的性質を利用した(Keegan,L.ら、Science,231,699−704,1986);Chien,C.−T.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,88,9578−9582,1991;Brent,R.ら、Cell,43,729−731,1985;Ma,J.ら、Cell,55,443−446,1988)。一般的には、(配列特異的DNA結合ドメインと融合した)タンパク質1が(転写活性化ドメインと融合した)タンパク質2と結合する能力を持つならば、次いで両融合タンパク質が共発現し、結果として適当なリポーターの転写が活性化されるであろう。本実験では、lexA DNA 結合ドメイン(アミノ酸2−202)およびB42酸性活性化ドメイン(AAD)を融合構築物として用いた。リポーター(Kamens,J.ら、Mol.Cell.Biol.,10,2840−2847,1990)は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子の上流にlexA応答部位を含む。最初に、対照実験として、全長のMDM2をlexA融合ベクター内に挿入し、固有の活性化ドメインを持つ全長のp53は、非融合ベクター内に挿入した。組み合わせの結果、lex応答リポーターが活性化されたが、MDM2またはp53 cDNAのどちらか一方が挿入されていない同じ発現構築物はβ−ガラクトシダーゼを活性化しなかった(第1表、第1、2、および3株)。この様に、活性化はMDM2−p53の結合に依存する。次いで、本アッセイを適用して、それぞれのタンパク質の相互作用ドメインをマッピングした。MDM2またはp53をコードする全長のcDNAフラグメントを音波処理によってランダムに切断し、ポリメラーゼ鎖反応によって増幅し、大きさで分画し、適切な融合ベクター内にクローン化し、さらに、リポーターおよび他のタンパク質の全長の翻訳物と共に酵母内にトランスフェクションした。方法:pBluescript SK+(Stratagene)内の全長のMDM2 cDNAは、完全な挿入物(全MDM2)を切り出すために、XhoIおよびBamHIで消化した。アガロースゲルで精製した後、挿入物は音波処理でランダムフラグメントに剪断し、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントで末端を整え、キャッチリンカーと結合させ、さらにポリメラーゼ鎖反応で増幅させた(Kinzler,K.W.ら、Nucl.Acids Res.,17,3645−3653,1989に記載)。フラグメントはアクリルアミドゲルで100− 00bpまたは400−1000の大きさの範囲に分画し、leXA(1−202)+PL(Ruden,D.M.ら、Nature,350,250−252,1991)にクローン化し、細菌(XL−1 Blue,Stratagene)にトランスフェクションした。少なくとも10,000個の細菌コロニーを寒天平板からこすり取り、プラスミドDNAはpRS314N(p53発現ベクター)およびpJK103(lexA−応答β−ガラクトシダーゼリポーター)を含むpEGY48株にトランスフェクションした。おおよそ5,000個の酵母クローンを2%デキストロースを含む選択培地に塗布し、さらにガラクトース−およびX−galを含む選択培地上にレプリカ塗布した。青色コロニー(17)は大きなMDM2フラグメントを含む平板上にのみ現れた。分離した17コロニーは、ガラクトース(p53誘導物)の存在下または非存在下の両方で本アッセイの青色発色について試験した;ガラクトースの存在下では、全てのクローンが陽性であったが、非存在下では17クローンのうち2個だけが陽性を示した。17個の酵母クローンから抽出したMDM2含有プラスミドDNAは細菌のKC8株に選択的に伝達し、lexA−MDM2接合部位から配列を決定した。2個のp53−非依存性クローンのMDM2配列を第6図Aに示す。残り15個のp53ー依存性クローンのMDM2配列は長さ135−265のアミノ酸からなるペプチドをコードしており、すべてイニシエーターのメチオニンから始まっていた。得られたMDM2配列のうちの3例を第6図Bの上部に示す。下方の6つの配列は、(ポリメラーゼ鎖反応および適切なプライマーを用いて)lexA(1−202)+PLにクローン化することによって遺伝子工学で得られた配列で、より狭い結合領域について試験した。また、p53のフラグメントは、C末端にB42酸性活性化ドメインを融合したタンパク質を作り、赤血球凝集素のエピトープを合体させ、pJG4−5にクローン化した。得られたクローンは、すでにlex−MDM2(全長のMDM2を含むplex−202+PL)およびpJK103を含んでいるpEGY48株にトランスフェクションした。第6図Cに示した上から3つまでのp53配列がコロニースクリーニングによって得られた酵母より誘導されたが、下から3つは遺伝子工学によって得られたもので、示されているフラグメントを含む。得られた酵母クローンは生体内原位置(in situ)でのβ−ガラクトシダーゼ活性について試験した。lexA DNA結合ドメインに融合させたMDM2フラグメントを持つおおよそ5000のクローンのうち、17クローンが本アッセイで陽性であった。クローンは2つのクラスに分けることができた。第一のクラス(2クローン)は低レベル(他の15クローンの約1/5より少ない)のβ−ガラクトシダーゼを発現し、β−ガラクトシダーゼの発現はp53の発現に依存しなかった(第6図A)。この様な2つのクローンはそれぞれMDM2のアミノ酸190−340および269−379をコードしていた。この様な2つのクローンが共有する領域はMDM2の唯一の酸性ドメイン(アミノ酸230−301)とオーバーラップした。このドメインは37.5%はアスパラギン酸およびグルタミン酸残基からなり、塩基性アミノ酸は含まれていなかった。lexAと融合した完全なMDM2タンパク質は同じアッセイを行っても測定できるようなβ−ガラクトシダーゼ活性を示さなかった(第1表、第3株)ことから、この酸性ドメインはMDM2配列の残りの部分から分離した場合にのみ転写を活性化すると思われる。他のクラス(15クローン)はそれぞれMDM2のアミノ末端領域を含んでいた(第6図B)。この様なクローンのβ−ガラクトシダーゼ活性はp53の共発現に依存していた。相互作用する領域を局限するために、さらに6クローンを遺伝子工学により作った。試験した中で全長のp53と機能的に相互作用することので来た最も小さいMDM2領域はMDM2コドン1−118を含んでいた。相互作用に比較的大きなサイズのドメインが必要であるということは、MDM2を小さく音波処理したフラグメント(600bpの平均サイズの代わりに200bp)をスクリーニングアッセイに用いた場合に陽性を示すクローンが得られなかった事実と一致する。逆に、B42 AADに融合させたp53のフラグメントを含む酵母のクローンを、lexA−MDM2融合タンパク質存在下、lexA応答リポーターの発現についてスクリーニングした。スクリーニングで得られた14クローンを配列決定した結果、それらを3つのサブセットに分けうることが明らかになった。第一のサブセットは1−41のアミノ酸を含み、第2のサブセットは13−57のアミノ酸を含み、第3のサブセットは1−50のアミノ酸を含む(第6図C)。これらの3フラグメント間でオーバーラップする最小領域はコドン13−41を含んでいた。この最小ドメインはMDM2との相互作用に必要であることが明らかであるが、これだけでは不十分であり、活性を示すために、フラグメントはコドン13−41のどちらかの側に9−12のアミノ酸を必要とした(第6図C)。p53のアミノ末端領域がMDM2の結合に必要とされるという考えをさらに試験するために、さらに、p53のコドン74−393に融合させたlexA−DNA結合ドメインおよび全長のMDM2に融合させたB42酸性活性化ドメインを発現する酵母株を作った。これらの株は同じlexA応答リポーターを活性化しなかった(第1表、第8株)ので、p53のN末端は相互作用に必要であると予想される。配列決定分析によって、第6図に示した全てのp53およびMDM2フラグメントはフレームシフトせず、それぞれB42およびlexAドメインに関して正しい方向で結合されていることが示された。さらに、第6図で比較した全てのクローンは、第7図のウェスタンブトットに示すように、同程度の適切なタンパク質を発現していた。適切なリポーターと共に、それぞれの株に発現したMDM2およびp53タンパク質を示した。括弧内の数字はコードするMDM2またはp53のアミノ酸を示している。(括弧の付いていないものは全長のタンパク質、すなわち、MDM2アミノ酸1−491またはp53アミノ酸1−393を示している。)lexA−応答β−ガラクトシダーゼリポータープラスミド(pJK103、Kamens,J.ら、Mol.Cell.Biol.,10,2840−2847,1990)がすべての株に存在していた。apSR314ベクター(Nigro,J.M.ら、Mol.and Cell.Biol.,12,1357−1365,1992)bplex(1−202)+PLベクター、挿入物に融合したlexA DNA結合ドメインを含む(Ruden,D.M.ら、Nature,350,250−252,1991)cpJG4−5ベクター、挿入物に融合したB42活性化ドメインを含むd(+)、はX−gal含有選択培地上で24時間インキュベーションした後にコロニーが青色に変化することを示し、(−)は72時間インキュベーションしてもコロニーが白色のままであることを示している。これらのマッピング実験で得られた最も顕著な結果は、MDM2の結合に必要とされるp53の領域はすでに同定されているp53の酸性活性化ドメイン(アミノ酸20−42)(Unger,T.ら、EMBO J.,11,1383−1390,1992;Miller,C.W.ら、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.,33,386,1992)にほぼ一致することである。この事は、MDM2は、転写機構からp53の活性化ドメインを隠す“concealing”することによって、p53の仲介する転写活性化を阻害することを示唆した。もしこのことが事実であれば、p53タンパク質の残りから分離した状態にあるp53活性化ドメインは、全長のMDM2によって阻害されるはずである。この仮説を試験するために、lexA−DNA結合ドメインに融合させたp53活性化ドメイン(コドン1−73)を含むハイブリッドタンパク質を作った。この構築物は、p53活性化ドメインを他のDNA結合ドメインに融合させた前の実験結果(Fields,S.ら、Science,249,1046−1049,1990;Raycroft,L.ら、Science,249,1049−1051,1990)から予想されるように、lexA応答リポーターの転写活性化を強く阻害した。lexA−p53DNA構築物は、全長のMDM2発現ベクター(またはベクターのみ)と共に酵母内で安定に発現した。MDM2の発現の結果、リポーターの活性は1/5に減少した。このことは、MDM2は、DNAにp53を繋ぎ止めるための隣接したタンパク質の配列に関係なく、p53活性化ドメインの機能を特異的に阻害できる(第8図)ことを証明している。方法:株は2%デキストロースで対数増殖中期まで成長させた後、2%ガラクトースを加えて2時間p53の発現を誘導した。lexA−p53構築物は、lex−VP16(YVlexA,Dalton,S.ら、Cell,68,597−612,1992)のVP16配列を、アミノ酸1−73をコードするp53配列に置き換えたものと同じである。得られた実験結果より興味あるパラドクスが浮かび上がった。MDM2が、p53活性化ドメインに結合し(第6図)、そして転写機構からp53活性化ドメインを隠す(第8図)のであれば、どの様にしてlexA−MDM2−p53複合体はlexA応答リポーターの転写を活性化できるのであろうか(第1表、第2株)。その理由は、株2のlexA−MDM2−p53複合体のうちの機能的活性化ドメインはp53のみによって与えられていると予想されることから、その機能的活性化ドメインのみがMDM2の結合によって隠され、その結果活性化されなくなると予想して良い。このパラドクスはp53がホモテトラマーとして存在する(Stenger,J.E.ら、Mol.Carcinogenesis,5,102−106,1992;Sturzbecher,H.W.ら、Oncogene,7,1513−1523,1992)という知識によって解決することができる。つまり、lexA−MDM2−p53複合体の活性化は、p53がテトラマーであることによって4つの別々の活性化ドメインが存在し、その全てがMDM2によって隠される訳ではない、ことにより可能であろう。この論点を直接試験するために、ホモオリゴマー化に必要なp53ドメイン(Stenger,J.E.ら、Mol.Carcinogenesis,5,102−106,1992;Sturzbecher,H.W.ら、Oncogene,7,1513−1523,1992)(C末端)をp53発現構築物から除去した。得られた構築物はコドン1−137のみからなる。この切り縮めたp53ポリヌクレオチドは完全な活性化ドメイン(第8図、棒グラフa)およびMDM2との相互作用に必要とされるドメイン全体(第1表、第6株)を保持していた。しかしながら、lexA−MDM2と相互作用させたところ、lexA応答リポーターの転写活性化は認められなかった(第1表、第9株)。p53はlexAリポーターに結合するlexA−MDM2を阻害しないため(第1表、第2株)、第9株の結果は分離されたp53活性化ドメインがMDM2によって直接阻害されたことによると考えられる。実施例8本実施例では、MDM2のエピトープに特異的な抗体の生成および特徴について具体的に説明する。雌の(BALB/c X C57BL76)F1 マウスを腹こう内で免疫化するために用いた抗原調製物は、細菌で発現させ、グルタチオンカラムで精製したグラタチオン−S−トランスフェラーゼ−MDM2(GST−MDM2)融合タンパク質からなる。(一つの調製物はポリアクリルアミドゲルでさらに精製し、電気溶出した。)融合タンパク質はヒトMDM2タンパク質のアミノ末端部分1.6kD(アミノ酸27−168)を含んでいる。免疫処置のために、融合タンパク質はRibiアジュバンド(Ribi Immunochem Research,Inc.)と混合した。2匹のマウスを殺し、そのひ臓細胞をSP2/0s骨髄腫細胞に融合させた(McKenzie,ら、Oncogene,4,543−548,1989)。得られたハイブリドーマはtrpE−MDM2融合タンパク質をコーティングした微量滴定用の穴でELISAによってスクリーニングした。trpE−MDM2融合タンパク質は、GST−MDM2融合タンパク質と同じMDM2部分を含んでいる。抗原は1μg/mlの濃度でコーティングした。第二の融合物は、ハイブリドーマを電気溶離し、グルタチオンで精製したGST−MDM2によって、スクリーニングすることを除いて、同じ方法で作成した。両融合物から陽性のハイブリドーマが得られ、単一細胞をサブクローン化した。サブクローンは、ウェスタンブロットを行い、55kDのtrpE−MDM2および43kDのGST−MDM2融合タンパク質に対する特異性について試験した。ウェスタンブロットで陽性を示した2個のサブクローン(1F2およびJG3)は腹水を発生させるためにマウス内にいれた。得られた腹水はプロテインAで精製した。精製した両モノクローナル抗体は、ウェスタンブロットおよび免疫沈降で試験した結果、MDM2を過剰に発現するヒトの骨肉腫細胞系(OsA−CL)に存在する90kDに泳動するMDM2タンパク質を陽性に検出したが、MDM2を過剰に発現していないHOS骨肉腫では陰性であった。ED9は腹水からプロテインGで精製され、クリオスタットを用いた免疫組織化学で、IF2と同じ様に、骨肉腫細胞内のMDM2に対して特異的であることが分かった。実施例9本実施例は、細胞レベルでのMDM2の発現および検出について説明する。細胞レベルでのMDM2の発現を高めるために、細菌に生産させたMDM2のアミノ酸残基27−168を含む融合タンパク質に対するモノクローナル抗体を作った(実施例8を参照されたい)。試験した幾つかの抗体のうちで、mAbIF−2が、いろいろなアッセイ方法でMDM2を検出すると言う点で最も有効であった。まず最初の試験では、OsA−CL[MDM2は増幅されているがp53の変異は伴わない肉腫細胞系(第II表)]より誘導されたタンパク質、およびSW480[p53は変異している(Barakら、EMBO,12,461−468,1993)がMDM2は増幅されていない(データは示していない)結腸直腸癌の細胞系]より誘導されたタンパク質を比較した。第9図に示すように、mAb IF−2によって、OsA−CL抽出物中には濃い90kdの帯に加えてこれより低分子量の他の帯が幾つか検出され、SW480抽出物には非常に淡い90kdの帯が検出された。OsA−CL抽出物にみられる低分子量の帯がタンパク質の分解によるものか、MDM2転写の交互プロセシングによるものかを区別することはできなかった。OsA−CLおよびSW480に認められるシグナルの間の強度の差が20倍より大きいことは、これら2種の細胞系でのMDM2遺伝子のコピー数の差が20倍より大きいことと一致する。逆に、p53に特異的なmAb1801で検出される53kdのシグナルは、OsA−CLよりSW480で非常に強く、このことはSW480に変異したp53が存在することと一致する(第9図)。次いで、カバーガラス上で増殖させた細胞を用いて、MDM2タンパク質の細胞内での位置を査定した。IF−2mAbを持つOsA−CL細胞では、もっぱら核内にのみ強いシグナルが認められたが、SW480でも、厳密な意味で核に対してのみ弱いシグナルが認められた(第10図)。MDM2の核局在は、マウス細胞で先に得られた研究結果(Barakら、EMBO,12,461−468,1993)、およびヒトのMDM2はアミノ酸残基179−186に核局在化シグナルを含んでいると言う事実と一致する。p53特異的抗体との反応も、また、これら2種の細胞系の核内に限定され(第10図)、その強度比はウェスタンブロットの結果(第9図)と一致する。次いで、IF−2mAbを用いて上記の7例の原発性肉腫を染色した。7例のうち2例(腫瘍#3および#10)の核は強く染色された(第11図)。これらの両腫瘍はMDM2遺伝子の増幅を含んでいた(第II表)。増幅されていない5例の腫瘍において、MDM2反応はほとんど又は全く認められなかった(第11図)。配列表(2)配列情報SEQ ID NO:1:(i)配列の特性:(A)配列の長さ:64アミノ酸(B)型:アミノ酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直線状(ii)配列の種類:タンパク質(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチセンス:NO(v)フラグメント型:N-末端(vi)起源:(A)生物名:ヒト(viii)ゲノム内での位置:(A)クロモゾーム/セグメント名:17q(xi)配列:SEQ ID NO:1:(2)配列情報SEQ ID NO:2:(i)配列の特性:(A)配列の長さ:2372塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:直線状(ii)配列の種類:cDNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチセンス:NO(vi)起源:(A)生物名:ヒト(H)セルライン:CaCo-2(viii)ゲノム内での位置:(B)染色体上の位置:12q12-14(ix)特徴:(A)NAME/KEY:CDS(B)存在位置:312..1784(xi)配列:SEQ ID NO:2:(2)配列情報SEQ ID NO:3:(i)配列の特性:(A)配列の長さ:491アミノ酸(B)型:アミノ酸(D)トポロジー:直線状(ii)配列の種類:タンパク質(xi)配列:SEQ ID NO:3:(2)配列情報SEQ ID NO:4:(i)配列の特性:(A)配列の長さ:1710塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:直線状(ii)配列の種類:cDNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチセンス:NO(vi)起源:(A)生物名:Mus musculus(ix)特徴:(A)NAME/KEY:CDS(B)存在位置:202..1668(xi)配列:SEQ ID NO:4:(2)配列情報SEQ ID NO:5:(i)配列の特性:(A)配列の長さ:489アミノ酸(B)型:アミノ酸(D)トポロジー:直線状(ii)配列の種類:タンパク質(xi)配列:SEQ ID NO:5: ヒトp53へのヒトMDM-2(SEQ ID NO: 3)の結合を妨げる化合物の同定方法であって、検出可能なように標識し、且つあらかじめ定めた量のヒトの第一タンパク質をヒトの第二タンパク質に結合させ;該第一タンパク質と第二タンパク質のお互いの結合を阻害する能力について試験される化合物を加え;ヒトの第二タンパク質との結合から置き換えられるまたは妨げられるヒトの第一タンパク質の量を測定する;ことからなり、ヒト第一タンパク質がMDM-2であり且つヒトの第二タンパク質がp53であるか、または、ヒト第一タンパク質がp53であり且つヒトの第二タンパク質がMDM-2である:前記ヒトp53へのヒトMDM-2の結合を妨げる化合物の同定方法。 該ヒトタンパク質の2つのうちの一つが固体支持体に固定されている、請求項1記載の方法。 該ヒト第二タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を用いて非結合のヒト第一タンパク質から結合したヒト第一タンパク質を分離する、請求項1記載の方法。


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