生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_温度感受性プラスミド
出願番号:1993515412
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/09


特許情報キャッシュ

グリュス,アレクサンドラ マガン,エマニュエル JP 3573347 特許公報(B2) 20040709 1993515412 19930312 温度感受性プラスミド アンスティテュ ナショナール ド ラ ルシェルシュ アグロノミク 500470471 佐藤 一雄 100064285 紺野 昭男 100094640 グリュス,アレクサンドラ マガン,エマニュエル FR 92/03034 19920313 20041006 7 C12N15/09 JP C12N15/00 A PLASMID vol.26 p.55-66(1991) J.Bacteriology 137(1)p.635-643(Jan.1979) J.Bacteriology 169(10)p.4822-4829(Oct.1987) Applied and Enviromental Microbiology(1991),57(2)p.539-548 19 FR1993000248 19930312 WO1993018164 19930916 1995504567 19950525 40 20000120 2003002159 20030210 佐伯 裕子 種村 慈樹 鵜飼 健 本発明はグラム陽性染色性を示す細菌、特に産業上および医学上重要な乳酸菌、の遺伝子修飾に使用できるプラスミドに関する。本発明はまたこのようなプラスミドを含有した細菌にも関する。最終的に、本発明は細菌染色体中に通常存在する遺伝子を不活化するか、または関心ある遺伝子を導入および発現させるためにこのようなプラスミドを用いる遺伝子修飾方法に関する。グラム陽性染色性を示す多くのグラム細菌は生物学的モデル(例えば、Bacillus属の細菌)、産業上重要な発酵株(乳酸菌)または病原体(例えば、Clostridia、Listeria、Staphylococcus、Streptococcus)として研究の対象とされている。これらの株の多くは生理学的観点から特徴付けられているが、遺伝学的にはほとんど研究または改変されていない。株の研究または改変は、細菌染色体中に直接的または非特異的な挿入を行えるベクターの使用により促進される。非複製ベクターに基づくデリバリー系は高頻度で形質転換しうる細菌に限定され、ある条件下だけで活性なレプリコンを利用するものはそれらの宿主範囲に通常は制限される。このため、組換え株の作成には多大な努力を要し、効率上はある特定の微生物に適用できるだけである。遺伝子の付加、削除または修飾は、発酵のような工業プロセスにおいて生物の役割を変化させることができる。バイオテクノロジーによって微生物の産業使用を促進しようとされている。例えば、乳酸菌は農業食品において、主に発酵酪農製品の製造で、但し乳工業以外にもワイン、サイダー、調理肉およびサイレージの製造で、用いられる。このため、これらの生物において遺伝子を特異的および永続的に導入または修飾するために役立つ有効な手段を有することが特に望まれる。現在、乳酸菌における染色体の修飾は非複製プラスミドの形質転換により系を介して行われている。単一の工程において、2つの頻度の低い現象、即ちプラスミドによる形質転換と染色体の組換えとが必要となる。単一の工程でこれら2つの現象を得る確率は、各々の確率の積である;このため修飾を得る見込みは非常に小さい。プラスミドpWV01はLactococcus lactis亜種cremorisで最初に単離された潜在プラスミドである;それはグラム陽性およびグラム陰性菌の双方、特に大腸菌、Bacillus subtilis、Lactococcus lactis、StreptococcusおよびLactobacillus、で複製しうる広宿主範囲プラスミドである。それは特徴付けられて、そのヌクレオチド配列はLeenhouts et al.(1991)により公表された。出願WO85/03495では、このプラスミドの大きな断片がエリスロマイシン耐性の遺伝子および/またはクロラムフェニコール(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))耐性の遺伝子で標識された組換えプラスミドpGK12を構築するために用いられている。このプラスミドpGK12は細菌染色体の組込みに用いることはできない。従来用いられてきた非複製プラスミドでこの問題を解決できるが、但しこの系には、染色体での転移または組換えのような低頻度現象を検出しうるほど高度の形質転換が必要となる;現在、ほとんどの乳酸菌は弱い形質転換性である。乳酸菌または他の細菌でデリバリーベクターとして使用されうる温度感受性レプリコンを得ることによりすべてのこれら困難を克服することは可能であろう。プラスミドpE194およびpSH71は51℃の温度以上で自然温度感受性として記載されている(J.Bacteriol.,1990,172,4543−4548)。このため、本発明の目的は、少くとも:−細菌宿主株で発現されるマーカー遺伝子−宿主株の生存と適合しうる温度以上で温度感受性(Ts)である有効な複製系を含み、かつ、複製の阻害温度が約37℃以下であることを特徴とする、グラム陽性菌で有効である複製起点を含んだ種類の細菌ベクタープラスミドである。本発明によるプラスミドが37℃で非複製性であるという事実は、細菌が比較的低い増殖温度を有する場合、または実質的な熱ショックが望まれない場合に特に適する。本発明によるプラスミドは単独で使用でき、他のプラスミドと組合せる必要はない。約37℃以上の温度による複製の阻害は株依存性でない。それは広宿主範囲を有し、特にBacillus、Enterococcus、Lactobacillus、Lactococcus、Streptococcus、Listeria、Pediococcus、Staphylococcus、Clostridia、Leuconostoc、大腸菌を含めた群に属する伝統的な株で自己定着することができる。これらの中では、下記種、例えばB.subtilis、E.faecalis、L.fermentum、L.helveticus、L.bulgaricus、L.lactis、S.pyogenes、S.thermophilus、S.sanguis、L.monocytogenesが挙げられる。本発明によるプラスミドは選択マーカーについてコードする少くとも1つの遺伝子と、プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター等のようなその発現に必要な要素を有している。選択しうる遺伝子は、例えば抗生物質(エリスロマイシン、クロラムフェニコール)耐性の遺伝子、またはある成分を欠いた培地上で増殖を行える遺伝子等である。マーカー遺伝子は組換えの場合に染色体に組込まれる。「複製系」を複製起点とその機能化を誘導するタンパク質を含んだ系を意味するとして理解される;上記タンパク質は複製系を阻害する温度以上で不活化される。このようなプラスミドは、多数の細菌において通常28℃で複製する。約35℃以上の温度で、このプラスミドの複製は阻害される;プラスミドの複製を阻害するこの温度は比較的低く、ほとんどの細菌、特に乳酸菌の増産および正常増殖を可能にする。このプラスミドの有効な不活化に勧められる温度は37℃である。その態様の1つによれば、本発明の主題は、プラスミドpWV01の大きなCla I断片を含み、Tha I−Rsa I領域に少くとも1つの変異を有することを特徴とするベクタープラスミドである。更に詳しくは、本発明による温度感受性複製を示すベクタープラスミドは、プラスミドpWV01のRepAに相当する領域で少くとも1つの変異を有する。RepAタンパク質はpWV01上で確認される4つの読取り枠(ORF)のうち1つ、すなわちORF Aによりコードされ、複製に必要である。このプラスミドの好ましい変異は、pWV01のヌクレオチド配列の972、977、980および987位に位置している。本発明によるプラスミドでコードされるRepAタンパク質は、野生型と比較して、図3に示された修飾、即ち下記の置換を有する:−Serの代わりにAsn−Aspの代わりにAsn−Valの代わりにIle−Argの代わりにGln。このようなプラスミドは、乳酸菌の分野においてユニークなタイプの広宿主範囲自殺ベクターを構成する。その結果、染色体への組込みを2工程に分割することが可能となる。第一の形質転換工程で、プラスミドが細胞に定着される。第二工程において、染色体での組換え現象が温度を上昇させることにより選択される。こうして、形質転換が難しいと思われる細菌は遺伝的に改変される。更に詳しくは、本発明によるプラスミドは図9、10および11のうち1つで示された配列、またはこれらの配列と少くとも80%相同性である配列のうち1つを含んでいる。こうして開発された遺伝手段により、遺伝子を細菌染色体中に導入して、そこで安定させることができる。例えば、相同的組換えを用いる方法の適用が選択される。この目的のため、改変が望まれる細菌の染色体DNAと相同的な少くとも1つのDNA断片を更に含んだ本発明による温度感受性レプリコンが用いられる。その態様の1つによれば、本発明の主題は:a)本発明によるプラスミドが形質転換により細菌中に導入される;b)細菌が複製起点の阻害温度以下の温度にて選択培地上で培養される;c)培養温度が上記阻害温度以上の温度に上げられる;d)生存細菌がプラスミド複製の阻害温度で何回かの増殖サイクル後に回収される;ことを特徴とする、細菌の染色体に存在する遺伝子の不活化方法である。工程d)によれば、プラスミドマーカーを有した細菌を選択することができる。プラスミドに組込んでクローニングされた染色体断片は正確な遺伝子に相当しうるが、これは遺伝子の染色体コピーにおけるプラスミドの組込みで特異的に不活化される。細菌群では、この組込み部位だけが見い出される。もう1つの態様において、プラスミドに存在する細菌DNAはクローニング用に染色体断片のライブラリーから選択され、ランダムな組込みが起きる;プラスミドの組込み部位は細菌毎に異なり、こうして変異誘発が生じる。その方法はトランスポゾンを有する温度感受性レプリコンに適用してもよい。異なるトランスポゾンが染色体を変異誘発させる上で利用しうる。Tsプラスミドはこれらトランスポゾンの1つのキャリアとして用いられ、適宜にL.lactisで活性であるように修飾される。各トランスポゾンはマーカー遺伝子(例えば、耐性遺伝子)を有する。前記プロトコール(a〜c)を適用することにより、染色体にトランスポゾンを組込んだ細胞が得られる。これらの細胞はトランスポゾンマーカーにより選択される。転移の場合には、プラスミドは染色体に組込まれない。変形として、本発明によるベクタープラスミドは接合を行える移動可能な遺伝子座も含んでいる。好ましくは、この移動可能な遺伝子座はグラム陽性菌のプラスミドから抽出されるori T遺伝子座であり、これは好ましくはStreptococcusプラスミドから抽出できる。この遺伝子座を有するベクタープラスミドは移動可能とされて、接合により非形質転換性細菌種中に移すことができる。細菌中における遺伝子の不活化方法は下記工程を含んでなる:a)移動可能な遺伝子座と、染色体に相同的な断片および/またはトランスポゾンとを有する本発明のプラスミドが接合により細菌中に導入される;b)細菌が複製起点の阻害温度以下の温度にて選択培地上で培養される;c)培養温度が上記阻害温度以上の温度に上げられる;d)生存細菌がプラスミド複製の阻害温度で何回かの増殖サイクル後に回収される。工程d)の最後に得られた細菌は組換えまたは転移現象をうけ、トランスポゾンまたはプラスミドのマーカーを有している。変形として、本発明によるベクタープラスミドは大腸菌で活性なレプリコンも含んでいる。この遺伝子座を有するベクタープラスミドとこれらの誘導体は、大腸菌で増殖させてよい。次いで、(第二レプリコンにより)37℃において大腸菌で調製および増殖された構築物は、Tsレプリコンのみが活性である乳酸菌に移してもよい。上記方法において、工程a)の形質転換または接合による細菌中へのベクタープラスミドの導入後に、プラスミドは28〜30℃で複製により細菌群で自己定着させることができる。選択しうる特徴はすべての細菌で発現される。温度が35℃以上に上がると、遊離形のプラスミドは複製できなくなり、こうして細胞分裂中に失われる。このプラスミドが染色体中に組換えで組込まれるようになったか、またはトランスポゾンが染色体に組込まれるようになった細菌のみが、プラスミドまたはトランスポゾンにより保有される遺伝情報を維持および伝達して、選択培地でそれらを増殖させることができる。このため、低頻度組込み現象は、選択培地上35〜37℃で増殖する細菌を回収することにより選択される。プラスミドが染色体に組込まれると、それは優れた安定性を有しており、37.5℃で75世代後に99%程度である。相同的組換えによるプラスミドの組込みで行われる実施法は図6で示されている。本発明によるプラスミドpVE6002を含んだL.lactis株VE6002は、受託番号I−1179のもと、25−28 rue du Docteur Roux,Paris,Pasteur Instituteの国立機関に寄託された。その態様のもう1つによれば、本発明の主題は異種遺伝子を細菌中に導入させることができる方法である。その実施は、前記のように定義することができて、更に関心あるタンパク質についてコードする遺伝子を含んだ温度感受性ベクタープラスミドは、その発現に必要で当業者に公知な要素の制御下で用いられる。適宜に、この遺伝子はトランスポゾンに保有させてもよい。この工程は下記の通りである。a)本発明によるプラスミドが形質転換または接合により細菌中に導入される;b)細菌が複製起点の阻害温度以下の温度にて選択培地上で培養される;c)培養温度が上記阻害温度以上の温度に上げられる;d)生存細菌がプラスミド複製の阻害温度で何回かの増殖サイクル後に回収される。工程d)によれば、プラスミドまたはトランスポゾンのマーカーを有した細菌を選択することができる。本発明の主題は、更に、本発明によるプラスミドを遊離形でまたは染色体に組込んで含んだ細菌である。このような細菌は農業食品、特に酪農またはチーズ製造産業の分野でも用途を有する。前記ケースの一部においては、本発明による方法で細菌染色体中に導入された遺伝物質の全部または一部を除去しうることが望ましい。相同的組換え法によれば2工程にできる:第一はプラスミドの組込み現象を選択することからなり、任意である第二工程はレプリコンと食品標準に相当しないマーカーを染色体から切出すことからなる。レプリコンの切出し:相同的組換えによる組込みはTsプラスミドの両端で重複を生じる(図7a)。染色体に組込まれた複製ローリングサークル(rolling−circle)プラスミドは隣接配列間で相同的組換えを強く促進することが示された。Tsプラスミドにより保有される染色体断片がマーカーを含む場合には、組込みにより生じる重複でレプリコンを切出すことができ、不活性染色体遺伝子を残す(図7a)。実験上、操作では(37℃で既に選択された)組込みプラスミドを含んだ株を28℃で培養する。許容温度で、複製は反復配列間で組換えを再開および促進し、レプリコンを欠失させる(図7a)。本発明の主題は、更に、温度感受性複製性を示し、既に記載された特色のうち1以上を有し、しかも内部領域が重複しているベクタープラスミドである。2つの同一配列は、除去することが望まれる領域と隣接するようにおかれる。このようなプラスミドは、前記のように、細菌染色体で遺伝子の不活化のための、または組換えによる異種遺伝子の導入のための方法に用いられる。工程d)の最後に、生存細菌は阻害温度以下の温度、例えば28〜30℃で、非選択培地上において再び培養される。実際に、複製プラスミドは隣接配列間の相同的組換えを強く促進する。組込みプラスミドを含んで、35〜37℃で既に選択された株は許容温度で培養される:プラスミド複製が再開し、反復配列間の組換えを促進する。例えば農業食品でこの系の使用と適合しないマーカーとレプリコンは切出されるが、修飾遺伝子の保持は可能である。望ましくないマーカーを切出した細菌の選択は、非許容温度でプレート培養後に行われる。このメカニズムは図7bに示されている。下記例は、本発明の範囲を何ら制限せず、本発明を説明するために記載されている。下記図が参照される:図1:本発明によるpVE6002および非Ts pVE6001の消失の動態とコピー数の分析。プラスミドpGK12、pVE6001またはpVE6002を保有したL.lactis亜種lactisIL1403が28℃または37.5℃で培養される。異なる培養時間後にサンプルが取り出され、選択および非選択培地上28℃で培養される。100のコロニーが、群においてプラスミドを含む細胞の割合を評価するために、選択培地(Em5μg/ml)上で非選択培地から継代培養される。全DNAの抽出は28℃または37.5℃で5時間30分にわたり選択せずに培養物で行われる。図2:pGK12およびpVE6002のハイブリッドプラスミド。pVE6043はpVE6002の3384bpTha I−Sac I断片に結合されたpGK12の994bpSac I−Tha I断片からなる。pVE6044はpGK12の3384bpTha I−Sac I断片に結合されたpVE6002の994bpSac I−Tha I断片、逆対を含んでいる。細い線はpGK12DNAに相当し、太い点線はpVE6002DNAに相当する。図3:pVE6002のRepA遺伝子におけるTs変異の位置決定。RepA遺伝子を含んだpVE6002のTha I−Rsa I断片を双方の鎖で配列決定した。配列は972、977、980および987位で4つの変異を示し、残りの配列は親レプリコンpWV01に関して公表された配列と異ならない。図4:温度感受性誘導体の記載。pVE6006はpVE6002のCla I部位中へのpブルースクリプトSK+の445bpPvu II断片の挿入により構築される。pVE6007はpVE6006からSac I欠失により得られ、エリスロマイシン耐性の遺伝子を失う。pVE6004は、クロラムフェニコール耐性の遺伝子を欠いたpVE6002のCla I−Hpa II断片中へのpブルースクリプトSK+の445bpPvu II断片の挿入により構築される。図5:PE.194のRepと類似したタンパク質の比較図6:遺伝子の不活化方法の図図7a:2つの工程におけるTsレプリコンの切出し例の図図7b:プラスミド重複によるレプリコンの切出し図図8:プラスミドpG+host4(またはpVE6004)からのプラスミドpG+host5およびプラスミドpG+host6の構築:プラスミドpG+hostは、Nsi Iで直鎖化されたpG+host4中へのpBR322のAva I−AlwN I断片(pBR322の複製起点を含む)の挿入により構築される。pG+host6は、Nsi Iで直鎖化されたpG+host4中へのpBR322のAva I−EcoR I断片(pBR322の複製起点とアンピシリン耐性遺伝子を含む)の挿入により構築される。図9:pG+host4のヌクレオチド配列図10:pG+host5のヌクレオチド配列図11:pG+host6のヌクレオチド配列例1:温度感受性ベクタープラスミドの製造および特徴物質および方法研究はLaboratoire de Genetique Microbienne,Institut de Biotechnologie[Microbial Genetics Laboratory,Biotechnology Institute],INRA,78352 Jouy−en−Josas cedex Franceで実施した。細菌株、プラスミドおよび培養条件用いられたプラスミドおよび細菌株は表1に示されている。pVE6043およびpVE6044の構築は図2に記載され、プラスミドpVE6004、pVE6006およびpVE6007は図4に示される。pVE6004(またはpG+host4)は、Cm耐性遺伝子を欠いた、原Ts単離物の平滑末端化3340bpCla I−Hpa II断片中への445bpPvu II DNA断片の挿入により構築する。445bpPvu II断片はマルチクローニング部位、すなわちT7およびT3プロモーター並びにベクターから直接配列決定できるM13〜20、T7、T3および逆プライマー用の部位、を含んでいる。このプラスミドは大腸菌を含めて試験されたすべての宿主において温度感受性であり、28℃で維持されねばならない。大腸菌およびBacillus subtilisをLB培地で培養した。L.lactis亜種lactis(L.lactis)は、ラクトースがグルコースに代えられたM17培地で培養する。クロラムフェニコール(Cm)をL.lactisおよびB.subtilisで各々5μg/mlの濃度、エリスロマイシン(Em)を各々5μg/mlおよび0.5μg/mlの濃度で用いた。Cm、アザエリスロマイシンおよびエリスロマイシンを大腸菌の場合に15μg/ml、100μg/mlおよび150μg/mlの各最終濃度で用いた。分子クローニング、受容能および形質転換操作市販酵素を供給業者による指示通りに用いた。全細胞およびプラスミドDNAのミニ溶解物を文献で記載されたように調製した。大腸菌およびB.subtilisの受容能誘導と形質転換を標準操作(Hanahan,1985またはNiaudet et al.,1979)により行った。L.lactis株をLangellaおよびChopin,1989aで記載されたように電気的に形質転換させたが、その操作はHoloおよびNes,1989により変更されている。プラスミドの変異誘発ヒドロキシルアミン変異誘発をThomas,1987に記載された条件下においてプラスミドpGK12DNAで行った。70℃で110および120分間の処理後、ヒドロキシルアミンをDNAのイソプロパノール沈降により除去する。DNA配列決定DNAの配列決定のため、pVE6002のTha I(756bp)−Rsa I(1620bp)をプラスミドpブルースクリプトに組み込んでクローニングした。一連の重複クローンをエキソヌクレアーゼIIIおよびヤエナリヌクレアーゼ(Strategene)の使用により作成する。変異誘発に用いられるプラスミドpGK12の調製のTha I(756bp)−Nde I(1140bp)断片も同操作により配列決定する。DNA配列決定は、Perkin ElmerPCR装置を用いて、Taq Dye Primer Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystem)で二本鎖DNAにおいてジデオキシチェインターミネート法により行う。直列決定反応をケイ光オリゴヌクレオチド(Applied Biosystem)で開始し、自動シーケンサー(370A DNAシーケンサー、Applied Biosystem)で分析する。得られた配列を両鎖で調べた。結果変異体の単離これらの実験で用いられるプラスミドpGK12は、抗生物質耐性の2つのマーカーを含んだpWV01の誘導体である(Kok et al.,1984)。プラスミドDNA10μgをインビトロにおいてヒドロキシルアミンで変異誘発させ、変異誘発剤の除去後にlactococcus株IL1403中にエレクトロポレーションで導入する。変異誘発の効率はプラスミドの生存率の現象と、エリスロマイシンまたはクロラムフェニコールに感受的な変異体の出現により評価する。110〜120分間の処理後、プラスミドの生存率は0.1%以下に下がり、形質転換株の約10%は抗生物質の1つに感受性のプラスミドを含んでいる。これらの変異誘発条件は温度感受性プラスミドを捜すために選択されるが、これはエリスロマイシン含有培地上28℃で得られる形質転換株の複製により確認し、形質転換株を37.5℃でインキュベートする。pVE6001およびpVE6002と表示される2つの温度感受性候補は約5000クローンをスクリーニングして得ている。それらのプラスミドコピー数を比較し、37.5℃で消失数を調べる。変異体の特徴:pVE6001は非Ts変異体である。プラスミドpVE6001は28℃でpGK12よりも不安定であり、この欠陥は37.5℃でより顕著になる。しかしながら、細菌株の7%は37.5℃で8時間の非選択的増殖後にもなおプラスミドを含んでおり、このことは複製が制限条件下で起きることを示唆している(図1A、左)。pGK12と比較して、pVE6001のコピー数は、選択してもまたはしなくても、28℃および37.5℃で減少していることがわかり(図1A)、これがその低い安定性についての説明になるであろう。高温でのプラスミドの消失は高温における宿主の生理学的変化のためであり、プラスミドの温度感受性のためではないであろう。変異体の特徴:pVE6002は35℃以上で温度感受性変異体である。抗生物質なしでの増殖中におけるプラスミドの安定性の測定では、pVE6002が28℃でpGK12と同じくらい安定であるが、37.5℃で劇的に消失することを示している(図1B)。37.5℃におけるpVE6002の急速な消失は、複製が温度変化後直ちに遮断されることを示唆している。8時間の増殖後、エリスロマイシン耐性細胞の約0.1%が残っているだけである。pGK12およびpVE6002のコピー数は選択および非選択下28℃で同様であるが、しかしながら37.5℃で5時間後にpVE6002は検出不能であり、一方pGK12のコピー数も大体同様である(図1B)。pVE6002における変異が複製の温度感受性欠陥をまさに構成していることが、これらの実験から結論付けられる。pVE6002を消失させる最小温度を調べた。pVE6002を含んだ株IL1403を、28、30、33、35および37.5℃で8時間の非選択的増殖後に、プラスミド消失について試験した(表2)。表2:群中のEmr細胞率時間(hr) 増殖温度28℃ 30℃ 33℃ 35℃ 37.5℃0 100 100 100 100 1002 100 100 99 97 984 100 100 48 47 386 100 100 9 3 48 100 99 5 1 1Em含有M17でpVE6002保有IL403を一晩培養した物を新鮮な選択培地で希釈し、28℃で3時間増殖させる。次いで培養物を非選択培地で10,000倍希釈し、異なる温度でインキュベートする。様々な時間間隔でサンプルを採取し、28℃でM17上におく。各温度および時点において、プラスミドの消失は28℃にて選択培地(Em)のデッシュ上で約100のコロニーを継代培養することにより評価する。プラスミド消失は37.5℃および35℃で同等であることが分かった。プラスミドの一部消失は33℃で既に観察されており、一方プラスミドは28℃および30℃で安定であった。このため、pVE6002を有する細胞は、温度を35℃以上に上げることでこのプラスミドを消失させることができる。pVE6002は、パルスフィールド電気泳動プロフィールの比較によればIL1403と異なるLactococcusのもう1つの株、MG1363(Gasson,1983)中にも導入した。配列分析では、MG1363がおそらくL.lactis亜種cremoris株(Godon et al.,1992)であることを示している。pVE6002はこの環境で同様の温度感受性を示し、このことはプラスミド変異体の表現型が株と関連していないことを実証している。pVE6002の広宿主範囲およびTs表現型Tsプラスミドは他の生物で有用なクローニング手段にもなる。そこで、pVE6002の温度感受性挙動をB.subtilisおよび大腸菌で試験した。これらの株は原レプリコンpWV01の広宿主範囲の代表例として選択した。プラスミドDNAを28℃で形質転換および選択により双方の種に導入した。B.subtilisおよび大腸菌がL.lactis亜種の場合より高い最大増殖温度を有するという事実から、pVE6002の複製を28℃、37℃および42℃で試験した。結果は、pVE6002が双方の宿主で温度感受性であることを示している。pVE6002はそれが定着しうる広範囲の宿主でその温度感受的性質を保持しているらしい。Ts変異のマッピングpWV01のDNA配列はオリジン−プラス(origin−plus)と4つのORFの存在を示す。Leenhoutsは、よりよく特徴付けられたプラスミドDNAとそれとの類似性から、ORF Aがオリジン−プラスでDNA鎖の開裂に関与する複製タンパク質(RepA)についてコードしていることを導き出している。更に、相同性は、ORF CがRepAの発現を調節しうることを示唆している。機能はORF BおよびORF Dについてまだ明らかには判明していないが、後者は複製に不要であることが知られている。pVE6002に温度感受性を付与する変異を位置決めするために、温度感受性レプリコンの部分と未変異部分を組み合わせたハイブリッドプラスミドを構築した。pVE6043はオリジン−プラス、ORF BおよびORF Cを含んだpGK12の断片と、そのプロモーターを欠いたORF A(RepA)、PRF D並びにEmおよびCm耐性のマーカーを含んだpVE6002断片(Ts)とからなる(Sac IおよびTha I制限部位が用いられる、図2)。このハイブリッドはpVE6002と同じ速度で37.5℃にて消失し、一方逆ハイブリッド(pVE6044)はpGK12と同じ安定性で維持される(図2)。このため、pVE6002に温度感受性を付与する変異はRepA、ORF Dおよび抗生物質のマーカーについてコードするDNA断片の中に位置している。ORF Dは必須でなく、抗生物質のマーカーは候補でないという事実から、温度感受機構はRepAタンパク質であると結論付けられるであろう。配列決定データTs変異を位置決めするために、pVE6002のRepAタンパク質についてコードする864bp断片を配列決定した。4つの変異を972、977、980および987位で確認した(図3)。変異誘発に用いられた親プラスミドpGK12の対応領域はpWV01に関して公表された配列と一致することが確認された(Leenhouts et al.,1991)。4つの変異は、ヒドロキシルアミンの既知変異誘発効果と一致する、GからAへのトランジションである。塩基の各変化はアミノ酸を変え(図3)、そのうちの1つ、ValからIleへは保存的である。これら変化の1以上の関与がTs表現型に係わっているのであろう。Tsプラスミドの誘導体クローニングの目的で、最初のTsプラスミドpVE6002の誘導体を開発した(図4)。これらの誘導体は双方の抗生物質耐性(EmおよびCm)または一方だけ(EmまたはCm)を含むように修飾され、それらはすべてプラスミドpブルースクリプトSK+に由来する多部位配列を有している。レプリコンの切出し図7aに示されるように、抗生物質耐性の遺伝子(Abr)で遮断された細菌染色体と相同的な領域を保有するpVE6002に由来したプラスミドから二重逆交換現象を得ることが可能であった。28℃で細菌中へのプラスミドの導入後、第一工程は抗生物質含有培地上37℃で培養により染色体で組込体を選択することからなる。相同性の領域は組込み後に重複化される(図7a)。第二工程において、レプリコンの切出しは、28℃のインキュベートにより得られ、プラスミド複製を再開させて、第二組換え現象を促進する。切出し現象を37℃培養により選択し、染色体遺伝子をAbr遺伝子により不活化させる。例2:L.lactisの染色体における温度感受性プラスミドの組込みこの研究で用いられた細菌株とプラスミドは表3で示されている。大腸菌株はLBブロスで培養する。L.lactisは、M17-グルコースブロス、またはそれがilv表現型について試験される場合には最少培地、で培養およびプレート培養する。エリスロマイシン(Em)は、L.lactis亜種lactisの場合5μg/mlおよび大腸菌の場合150μg/mlの濃度で加え、テトラサイクリンはL.lactisの場合12.5μg/mlの濃度で用いる。L.lactis亜種lactisのエレクトロポレーション(Appl.Env.Microbiol.55,3119−3123,1989)では、IL1403の場合でプラスミドDNAμg当たり形質転換株105〜106および遺伝子置換実験に用いられたilv+株NCDO2118の場合でプラスミドDNAμg当たり形質転換株約102を生じる。大腸菌はHanahan(1985,DNA cloning:A practial approach,Vol 1:109−135,IRL Press Ed Glover)で記載された方法により形質転換させる。組込み用プラスミドの構築a) ベクターの構築プラスミドpG+host4(またはpVE6004)は例1に従い調製されたpWV01のTs誘導体である。大腸菌でクローニングを促進するために、pBR322の起点を含む1.4Kb断片をpG+host4に挿入する。プラスミドpG+host5はNsi Iで切断された直鎖化pG+host4中へのpBR322のAva I−AlwN I(pBR322の複製起点を含む)の挿入により構築される。その構造は図8で示されている。pG+host5(Appligene,Illkirch,France)と称される得られたプラスミドを、すべてのクローニングに用いる。pBR322の起点の活性は大腸菌37℃でそれを維持でき、Ts起点はグラム陽性菌中28℃でpG+host5を維持する。b)pG+host5中に組込まれたランダム染色体断片のクローニング株IL1403の染色体DNAをEcoR VおよびHind IIIで切断する。サイズが0.9〜1.4Kbの染色体断片をアガロースゲルから精製し、Sma I−Hind IIIで処理されたpG+host5と結合させる。組換えプラスミドを大腸菌で定着させ、その後エレクトロポレーションでL.lactisに導入する。後者の生物はプラスミドの構築とインサートのサイズを確認するために用いる。結果は下記表4で示されている。制限酵素Hpa I(ベクター部分で単一の部位)とHind III(インサートとベクターとの間で単一の部位)を用いて、構築物を分析する。c)ilvオペロン断片のクローニングおよび欠失IL1403のilvオペロンの3949bpEcoR I断片(J.Bacteriol.,174,6580−6589(1992))を(pVE7009およびpVE7009Rを得るために)pG+host5のEcoR I部位でいずれかの向きでクローニングする。L.lactis染色体での単一交差(sco)による組込み試験プラスミドを含むLactococcus株をエリスロマイシンの存在下28℃で一晩培養し、その後同培地で100倍希釈し、28℃で2〜2 1/2時間培養する(指数的増殖相)。培養物は、プラスミドのコピー数/細胞を減少させるために、37.5℃で3時間おく。次いでサンプルを希釈し、組込み現象を検出するためにM17 Em培地上37℃で、更に生存細胞の数を調べるために非選択培地上28℃でプレート培養する。組込み頻度/細胞(ipc)は、37℃のEmr細胞数対28℃の生存細胞数の比率としてみる。37℃で単離された組込体は、後の使用のために、37.5℃でEmを含むM17培地で維持する。L.lactis染色体で二重交差(dco)による組込みプラスミドpIL1263およびpIL1202は、Tsベクター(pG+host4、Emr)と、Tn1545のTet遺伝子により遮断された各々2.3Kbまたは3.6Kb染色体領域から構成される(Nucl.Acids Res.,14,7047−7058,1986)。pIL1202またはpIL1263を保有する株をTetまたはEm含有M17中37.5℃で一晩培養して、組込体の群を得る。次いで培養物を無抗生物質M17培地で1/105まで希釈し、プラスミド複製で組換えを促進するため28℃にする。28℃で12時間以上の培養により、最大遺伝子置換頻度を得る。28℃の一晩培養した物は、Tetによる選択下または非選択下、37℃にて異なる細胞濃度でプレート培養する。遺伝子置換が起きたコロニーはTetrおよびEm感受性(Ems)表現型を有する。染色体DNAは既知方法に従い調製する(Gruss et al.,1988)。精製DNAを制限酵素で処理し、アガロースゲル電気泳動で分離し、DNAプローブとのサザンハイブリッド形成により分析して、相同的組換えを検出する(Sambrook et al.,1989)。結果1)単一交差による組込み大腸菌でpG+host5に組込まれたL.lactisの染色体断片のクローニングにより、0.9〜1.4Kbの異なる染色体インサートを各々含んだ14の異なるプラスミドを単離することができる。IL1403中28℃で定着されたこれらのプラスミドを用いて、L.lactis染色体での組込み頻度を測定する。組込み頻度/細胞は10-2〜10-7である。染色体インサートのないpG+host5ベクターのipcは10-6〜10-7である。染色体インサートを保有するプラスミドは、それらの組込み頻度に従い2群に分類してもよい。グループIにおいて、ipcは3×10-2〜4×10-4である。これらの変動は、そのサイズよりもむしろ、インサートの位置または性質に基づいているにちがいない。グループIIにおいて、プラスミドのipcは10-5〜3×10-7である。これは、非相同的組込みのみを観察できる必須染色体遺伝子の遮断におそらく基づいている。これらプラスミドのうち2つ(pVE7028およびpVE7034)だけが高分子量(HMW)分子を生じる。酵素制限と、プローブとしてプラスミドpG+host5を用いるサザンハイブリッド形成により、37℃で維持された組込み株から得られた染色体DNAの分析では、8プラスミドの場合で単および多タンデム組込み、2プラスミドの場合で多数コピーによる組込みを示す。Hind IIIによる組込体のDNAの切断から、組込みが単一交差により起きることを確認した。各プラスミドはベクター−インサート結合箇所で1つのみのHind III部位を含んでおり、切断でプラスミドサイズ化DNAの単一バンドを遊離するはずである。非切断全DNAのサザンハイブリッド形成ではいずれのグループIプラスミドでも遊離プラスミドを出現せず、このことはプラスミドのコピーが組込まれたことを示している。プラスミドpVE7028およびpVE7034の類似分析から、これらのプラスミドも単一交差で組込まれていることを確認した。ベクター内の単一部位を認識するHpa Iの使用により、各プラスミドが異なる位置で組込まれたことを調べることができる。4つのグループIIプラスミド(低い組込み頻度)はランダムに組込まれたようであり、その理由はHind III切断がプラスミドのモノマーバンドを遊離せず、同プラスミドの3組込体のHpa I切断がゲルで同様のプロフィールを与えないからである。Sma IおよびApa Iに関して作成されたL.lactis染色体の制限地図から、単一交差によるプラスミドの組込み部位を染色体地図で位置決めすることができる。各組込体は異なるセグメント上に存在する。これらの結果はまとめてみると染色体挿入が染色体上でランダムに位置していることを示し、こうして操作上いかなる偏りも排除している。組込み頻度は相同部分の鎖長に依存している。配列決定されたIL1493のilvオペロンの3.9KbセグメントをpG+host5に組込んでクローニングし、その断片からの一組の欠失を同ベクターで生じさせる。2方向のうち一方で3.9Kbの全インサートを保有するプラスミド(pVE7009およびpVE709R)はL.lactisである程度の構造不安定性を有するが、pVE7009Rの8つの欠失誘導体は安定である。これらのクローンを用いて、相同部分の鎖長と組込みの頻度との関係を研究する。対数関係が組込みの頻度と長さ0.35〜2.5Kbの相同鎖長との間に存在する。2.5Kb超の断片では、組換えの頻度が一定水準に達するらしく、その理由は2.5、3.3および3.9Kbの相同的セグメントのipc値が有意には異ならないからである。鎖長以外のファクターも重要であるらしい。ベクター、インサートまたはベクター−インサート結合箇所で単一部位を認識する制限酵素による分析から、組込みが単一交差による相同的組換えで起きることを確認した。用いられた各プラスミドで、プラスミドの多コピー組込みが起きる。これらの結果は、pG+hostが330塩基対と小さな相同的セグメントを保有するならば、それが単一交差による組込みの有効手段を提供しうることを示している。2)二重交差による組込み上記単一交差(sco)系において、組込みプラスミドを反復配列で隣接させる。このため、37℃で生じた組込み株を28℃でおくときには、プラスミドの複製は第二組換え現象を強く促進する。この現象の帰結はレプリコンの高頻度の切出しであり、親構造またはdco(二重交差)染色体構造に至る。分岐アミノ酸(Ilv、Leu、Val)に関して原栄養性であり、しかも遺伝子修飾が今まで行えなかったL.lactisの弱形質転換性株、NCDO2118を用いる。隣接または非隣接染色体セグメントを保有するpG+host4の2誘導体を用いる。pIL1263は、テトラサイクリン耐性のマーカー(Tetr)を含む4KbDNAセグメントで遮断された2.3Kb染色体断片をilvオペロンの上流に含んでいる。遺伝子の置換で染色体中にTetrマーカーを挿入させ、ilv+オペロンをそのまま残すはずである。プラスミドpIL1202は、4KbTetrマーカーを介して結合された、ilvオペロンを含む18.5Kb領域の末端に相当する非隣接1.1Kbおよび2.5Kbセグメントを含んでいる。遺伝子の置換でilvオペロンを含む14.9Kbの染色体から欠失を起こし、ilv-表現型を生じるはずである。置換遺伝子の選択:pIL1202またはpIL1263を含む株を、選択マーカーとしてTetを用いて、前記条件下で培養する。pIL1263との独立実験では、Tetrコロニーの69〜98%がEmsであった;PIL1202では、Tetrコロニーの50〜91%がEmsである。同期間にわたり37℃で維持されたコントロール培養では、すべてのTetrコロニーがEmrである。この結果は、(環状複製を示す)rcプラスミドの複製が染色体からの切出しを促進することを示している。pIL1202の組込みにより得られた5つのEmsコロニーは、分岐アミノ酸を欠く最少培地で培養したところ、ilv-であり、それにより組換えが起きたことを確認した。5つのTetrEms単離物の対応染色体領域の構造をサザンハイブリッド形成により研究し、すべての場合で遺伝子の置換を確認した。非選択:プラスミドに保有される染色体断片が選択マーカーを有しないケースを扱えるように、同一プロトコールをTetによる選択なしに用いた。pIL1263を用いた3回の実験(遺伝子挿入)では、選択せずに37℃で得られたコロニーの10〜40%がTetrEmsであり、遺伝子置換現象が起きたことを示している。pIL1202(染色体欠失)では、コロニーの1〜7%がTetrEmsであって、遺伝子置換を示している;試験された4つのTetrEmsコロニーのうち、すべてがilv-である。各タイプの4つのdco組込体の染色体構造の分析から、置換が新たな挿入断片の選択なしに起こることを確認した。これらの結果は、染色体に抗生物質マーカーを残すことのない遺伝子置換の実行可能性を実証している。そのため、このプロトコールは選択マーカーを使用しない染色体修飾に合っている。他のグラム陽性菌におけるpG+hostの使用B.subtilis染色体の12の異なる位置における分子間組換えの効率を、コンピテント細胞を非複製プラスミドで形質転換することにより調べた(J.Bacteriol.,174,5593−5587,1992)。これらの実験において、相同的セグメントは不変である(pBR322の断片の挿入)。効率は組込みの位置に応じて約3倍違う。非複製ベクターの代わりにsco pG+host系を用いて、同一組換えの実験を、組込み頻度について3倍程度の差異で、2種のB.subtilis株で行ってもよい。pBR322の1.4Kb断片を保有するpG+host5を関心あるB.subtilis株に導入する。前記sco操作を用いたところ、組込みの頻度は1.8±0.6×10-3〜6.1±0.9×10-4である。同じ3倍のバリエーションが非複製系で得られた場合のように2つの異なる位置の間で観察される。この結果は系の有効性を実証している。例3:非形質転換性生物の遺伝子修飾一部のlactobacilliのような産業上重要な生物は現在形質転換しえない;しかしながら、接合でそれらの中にプラスミドを導入することは可能である。プラスミドpIP501の移動可能な遺伝子座oriTを特徴付けた。pIP501はこれらlactobacilliの一部の中に自己移動しうる。このoriT断片をTsプラスミド(プラスミドTs:oriT)に組込んでクローニングした;トランス移動のためのタンパク質を与えるヘルパープラスミド(pIP501に由来する)の存在下で移動されるその能力について試験した。何回かの種内または間交配をうまく実施した(表5);プラスミドTs:oriTのみを含む接合完了体で、組換えによる組込みの将来の方法が適用できる。このため、酪農産業でますます用いられてきている非形質転換性種、Lactobacillus bulgaricusの染色体に遺伝情報を導入することが可能である。組換えによる組込み方法の目的は、細菌株の遺伝特徴の変更である;これは変更される性質が分子レベルで特徴付けられることを想定している。機能的転移系(トランスポゾンのTsプラスミドの組合せ)の開発は、L.lactisの分析用の遺伝手段として相当な貢献を果たすようになる。例4:トランスポゾン用のベクターとして温度感受性プラスミドの使用pVE6004の誘導体に組込んでクローニングされた転移カセットTn10を転移試験に用いる。細胞の約1%は37℃でEmrであり、これはトランスポゾンまたはプラスミドが染色体に組込まれていることを示している。転移カセットがないプラスミドの非特異的組込みは、10-7以下の頻度で起きる。転移は8コロニーからのHind IIIで切断されたDNAの分析により判断する。Hind IIIはプラスミドに2つの制限部位を有するが、転移性単位にはない。染色体DNAを8つのEmr耐熱性クローンから抽出し、Hind IIIで切断する;次いで処理されたDNAをアガロースゲル電気泳動で分離し、プローブとしてEmrトランスポゾンを含むDNA断片とハイブリッド形成させる。これらの条件下、全ベクターの組込み(即ち、転移なし)で1.3Kbハイブリッド形成バンドを作るようになるが、それはここでは観察されない。各染色体サンプルは、トランスポゾンを含むDNA断片がプローブとして用いられる場合に、単一のプロフィールを示す。ハイブリッド形成バンドはいずれも1.3Kbのサイズを有さず、これは全プラスミドがベクターの一部位に組込まれたときに考えられる。加えて、ハイブリッド形成は、Tsベクタープラスミドがプローブとして用いられたときに観察されない。これらの結果は、転移が異なる部位で起き、しかもプラスミドDNAがトランスポゾンと共に染色体に組込まれていないことを示している。このため、温度感受性プラスミドはデリバリーベクターとして用いられる。 グラム陽性菌で有効である複製起点を含んだ細菌ベクタープラスミドであって、少くとも:−細菌宿主株で発現されるマーカー遺伝子と、−宿主株の生存と適合しうる温度で温度感受性である有効な複製系とを含み、複製系が、Tha I−Rsa I領域に下記位置:972、977、980、987位の4つの変異を有した、プラスミドpWV01の大きなCla1断片により保有されている系であることを特徴とする、細菌ベクタープラスミド。 Bacillus、Enterococcus、Lactobacillus、Lactococcus、Streptococcus、Listeria、Pediococcus、Staphylococcus、Clostridia、Leuconostoc、および大腸菌を含んでなる群から選択される細菌で有効である複製系を有する、請求項1に記載のプラスミド。 組換えを行えるように、染色体DNA配列と相同的な少くとも1つのDNA配列を更に含んでなる、請求項1または2に記載のベクタープラスミド。 マーカー遺伝子が組換えの場合に染色体に組込まれるように置かれている、請求項3に記載のベクタープラスミド。 マーカー遺伝子が化合物耐性を付与するか、または栄養要求性の相補性を許容する遺伝子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベクタープラスミド。 温度感受性複製系が約35℃以上で阻害される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベクタープラスミド。 プラスミドが接合を行える移動可能な遺伝子座を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のベクタープラスミド。 プラスミドの配列に隣接した2つの同一反復配列を含んでいる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のベクタープラスミド。 複製系に相当する断片が下記に示された変異を有するタンパク質をコードしている、請求項1に記載のプラスミド。 下記(a)、(b)、および(c)のいずれかで示された配列のうち1つを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラスミド。 28℃で複製性であって、約35℃以上の温度で非複製性である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプラスミド。 移動可能な遺伝子座がグラム陽性菌のプラスミドから抽出されたori T遺伝子座である、請求項7〜11のいずれか一項に記載のプラスミド。 大腸菌で活性であるレプリコンを更に含み、グラム陰性、グラム陽性シャトルプラスミドを形成している、請求項7〜12のいずれか一項に記載のプラスミド。 トランスポゾンを保有している、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプラスミド。 目的タンパク質をコードする遺伝子を、その発現に必要な要素の制御下で更に含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラスミド。 遊離形で、または染色体に組込まれた形で、請求項1〜15のいずれか一項に記載されたプラスミドを含むことを特徴とする細菌。 a)請求項15に記載されたプラスミドが形質転換または接合により細菌中に導入され、b)細菌が複製起点の阻害温度以下の温度にて選択培地上で培養され、c)培養温度が上記阻害温度以上の温度に上げられ、そしてd)生存細菌が何回かの増殖サイクル後に回収されることを特徴とする、細菌中への異種遺伝子の導入方法。 工程d)の最後に得られた生存細菌が、複製起点の阻害温度以下の温度で、非選択培地上において再び培養される、請求項17に記載の方法。 工程b)が約28℃の温度で行われる、請求項17または18に記載の方法。


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