タイトル: | 特許公報(B2)_物質の測定用試薬 |
出願番号: | 1993350773 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12Q 1/50,C12Q 1/32,C12Q 1/40,C12Q 1/48 |
白波瀬 泰史 高橋 正光 一色 健二 渡津 吉史 JP 4400936 特許公報(B2) 20091106 1993350773 19931227 物質の測定用試薬 シスメックス株式会社 390014960 廣瀬 孝美 100085486 白波瀬 泰史 高橋 正光 一色 健二 渡津 吉史 20100120 C12Q 1/50 20060101AFI20091224BHJP C12Q 1/32 20060101ALI20091224BHJP C12Q 1/40 20060101ALI20091224BHJP C12Q 1/48 20060101ALI20091224BHJP JPC12Q1/50C12Q1/32C12Q1/40C12Q1/48 Z C12Q1/25-1/66 特開平4−287698(JP,A) 特開平5−284996(JP,A) 特開昭64−37300(JP,A) 2 1995184692 19950725 13 20001219 2007016838 20070615 鈴木 恵理子 深草 亜子 平田 和男 【0001】【産業上の利用分野】 本発明は物質の測定用試薬に関する。より詳細には、主として臨床検査などの分野で利用され、生体試料中の各種物質や酵素活性などを酵素反応を用いて測定する際に使用される試薬に関する。【0002】【従来の技術】従来から、臨床検査、生化学検査などの分野では、生体試料中の各種物質の定量や酵素活性の測定が頻繁に行われており、この測定には反応特異性が高いことから酵素反応を用いた方法が汎用されている。このような酵素反応を用いた測定法においては、酵素の活性化に二価金属イオンを必要とする酵素(以下、二価金属要求酵素という)を用いることがあり、例えば、クレアチンキナーゼはマグネシウムイオンの存在下に酵素反応が進行し、アミラーゼはカルシウムイオンの存在下に酵素反応が進行する。また、酵素反応を用いた測定法においては、基質としてスルフヒドリル化合物(スルフヒドリル基を有する化合物)が用いられたり、酵素の活性化剤としてスルフヒドリル化合物が用いられることがある。従って、検体中の各種成分を酵素反応により測定する方法においては、二価金属イオンとスルフヒドリル化合物の存在下に測定を行うケースが多く存在する。【0003】しかし、かかる方法に用いられるスルフヒドリル化合物は還元性を有し、自身は容易に酸化されるため安定性がよくない。特に、二価金属イオンはスルフヒドリル化合物の酸化を促進する。従って、スルフヒドリル化合物を含む試薬の調製・使用にあたっては、その安定性を高めるため、pHを下げたり、他の還元剤の添加、EDTAなどのキレート剤の添加が行われている。しかしながら、pHを下げる方法は試薬中に共存している他の成分(基質、酵素など)の安定性を悪くしたり、それらの変性により沈殿物が生成する。また、使用時、測定に適したpH域に戻す必要があるために2試薬にした場合、もう一方の試薬はアルカリ側にする必要も生じ、これにより試薬の安定性が悪くなったり、混合比率が変わると測定pHが変化するため再現性が悪くなる。また、他の還元剤を添加する方法においては、他の還元剤としてアスコルビン酸などが使用されたり、反応に関与しないスルフヒドリル化合物(例えば、L−システインなど)が使用されるが、それ自身が安定ではない。キレート剤を添加する方法に関して、EDTAなどのキレート剤の添加は有効であるが、キレート剤の量が少ないと、スルフヒドリル化合物の安定性を高めることはできない。【0004】このような問題から、特開昭62−104598号公報に記載の方法では、N−アセチル−L−システイン(NAC)とMgイオンを共存させるとNACの安定性が悪くなるため、各々別の2液に分け、NACとEDTAを共存させる方法が開示されている。この場合の条件として、第一試薬と第二試薬が混合された時のEDTAの濃度はマグネシウムイオンの濃度より低い濃度にする必要がある。EDTAの方が多いと金属要求酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)やヘキソキナーゼ(HK)の活性が低下し、場合によっては全く活性を失ってしまう。また、NACと分離してクレアチンリン酸(CP)とマグネシウムイオンを共存させると、液状保存でCPの自己水解によりリン酸が遊離してマグネシウムイオンと不溶性のリン酸マグネシウムの沈殿が析出し、CK活性測定ができなくなることがある。【0005】また、酵素反応を用いて生体試料中の各種成分を測定する方法においては、一般に溶媒としてリン酸緩衝液が汎用されるが、二価金属を含有する場合には、二価金属イオンとリン酸塩により不溶性沈殿物を形成し易く、試薬が濁ったり酵素反応が阻害される。例えば、2mM塩化カルシウムを含むリン酸緩衝液は用時調製だけに有効であり、冷蔵中で1日保存すればリン酸カルシウムの結晶が析出してしまう。そのため、リン酸緩衝液に代えて、他の緩衝液(例えば、グッド緩衝液など)を使用する必要があるが、試薬ブランクが上昇するなどの問題を有していた。また、リン酸が酵素の安定化、活性化に重要である場合も少なくなく、測定系によってはどうしてもリン酸緩衝液を使用しなければならないときがある。このような酵素と二価金属イオンを同時に共存させる必要が生じたとき、試薬を二液に分けて用時に混合したり、性能が劣るのを覚悟して他の緩衝液を使用する必要があった。また、二価金属イオンは、大気中の炭酸ガスを吸収して不溶性塩を形成し、自動分析装置のノズルが詰るような問題もある。【0006】【発明が解決しようとする課題】上述のように、二価金属イオン及びスルフヒドリル化合物の存在下、二価金属要求酵素を用いて生体成分を測定する方法においては、二価金属イオンがスルフヒドリル化合物の酸化を加速して試薬の安定性を阻害するため、試薬を2つに分離したり、各種の安定化剤を加えるなど複雑な試薬組成とする必要があった。また、このような組成にしても長期間液状で安定な試薬を提供することは困難であった。また、リン酸緩衝液中では、酵素の必要とする十分量の二価金属イオンを使用すると、水に不溶の塩を生成し沈殿を生じるため、極少量の二価金属イオンを添加したり、性能が劣るの覚悟して他の緩衝液に代えなければならなかった。また、リン酸緩衝液を他の緩衝液に代えても、添加する基質がリン酸化合物である場合は、経時的にリン酸化合物が自己水解し、生成するリン酸と二価金属イオンが沈殿を形成するため、使用不能になる場合もある。【0007】本発明者等は、上記の課題を解決するために、二価金属イオンの存在下におけるスルフヒドリル化合物の安定化及び二価金属イオンとリン酸塩による不溶性塩の生成抑制について検討を重ねた結果、EDTAを二価金属イオンに対して過剰に加えるとスルフヒドリル化合物が安定化し、リン酸緩衝液中でもリン酸と不溶性の塩を形成しないことがわかった。しかしながら、二価金属要求酵素の活性が低下したり、ときには全く反応しなくなる(EDTAによりマグネシウム要求性酵素が容易に失活することは特開昭61−247400号公報などに示されている)。【0008】 本発明者等は、こうした現象がキレート剤のキレート安定度定数と関係があるのではないかと考え、各種キレート剤の金属要求酵素に対する感受性、スルフヒドリル化合物に対する安定性作用、二価金属イオンに対する不溶性塩生成抑制作用について鋭意検討したところ、二価金属要求酵素とキレート剤の二価金属イオンの取り合いにおいて、キレート安定度定数の大きいキレート剤は酵素の活性に必要な金属までもマスキングするため活性が発現されないこと;逆にキレート安定度定数の小さいキレート剤は二価金属要求酵素の活性発現を阻害しないが、スルフヒドリル化合物の安定化効果は低くなり、またリン酸との沈殿形成を抑制する効果も減少することが判明し、キレート剤の種類及び量を適宜調整することにより、二価金属要求酵素の活性に大きな影響を与えずに、スルフヒドリル化合物を安定化でき、またリン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈殿物の生成を抑制できることを見出した。 本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、リン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈殿物の生成を防止し、試薬の安定性を飛躍的に高めることができる測定用試薬を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するためになされた本発明の測定用試薬は、二価金属要求酵素の酵素反応を用いて生体試料中の測定対象物質を測定するための試薬であって、リン酸緩衝液中に、前記酵素、スルフヒドリル化合物、二価金属イオン及び二価金属イオンに対するキレート安定度定数が5〜7であるキレート剤を含有し、前記キレート剤を、前記スルフヒドリル化合物を安定化させ、前記酵素の活性を阻害せず且つリン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈澱の生成を抑制できる有効量含有することを特徴とする物質の測定用試薬である。【0010】 更に、本発明の測定用試薬は、二価金属要求酵素の酵素反応を用いて生体試料中の測定対象物質を測定するための試薬であって、前記酵素、二価金属イオン、スルフヒドリル化合物、自己水解によりリン酸を遊離するリン酸化合物及び二価金属イオンに対するキレート安定度定数が5〜7であるキレート剤を含有し、前記キレート剤を、前記スルフヒドリル化合物を安定化させ、前記酵素の活性を阻害せず且つリン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈澱の生成を抑制できる有効量含有することを特徴とする物質の測定用試薬である。【0011】以下、本発明をより詳細に説明する。前述のように、本発明者等は、各種キレート剤の金属要求酵素に対する感受性、スルフヒドリル化合物に対する安定性作用、二価金属イオンとの不溶性塩の生成性は、キレート剤のキレート安定度定数と関係があるのではないかと考え、代表的なキレート剤を用いて、これらの点について検討した。用いたキレート剤は、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン二プロピオン酸(EDDP)、1,2−ビス(o−アミノフェノキ)エタン四酢酸(BAPTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジアミノプロパノール四酢酸(DPTA−OH)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンフォスフォン酸)(EDTPO)、ニトリロトリス(メチレンフォスフォン酸)(NTPO)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジアミノプロパン四酢酸(Methyl−EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)である。なお、これらのキレート剤のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンに対するキレート安定度定数は文献的に知られており、その値を下記表1に示した。【0012】【表1】【0013】まず、二価金属イオン存在下における各種キレート剤のスルフヒドリル化合物に対する安定化作用を検討した。その結果、スルフヒドリル化合物を安定化するにはキレート安定度定数が5以上のキレート剤を添加するのがよいことが判った。そして、このとき、キレート剤は2種類以上の複数のものが使用できることが判った。そしてキレート剤を2種類以上使用するとき、一のキレート剤のキレート安定度定数が7より大きい場合には、他のキレート剤のキレート安定度定数が3以上のものでも使用できることが判った。なお、このときには添加するキレート剤の量は総量として二価金属イオンのモル濃度より多くする必要がある。また、各種キレート剤の二価金属要求酵素に対する影響を調べたところ、キレート剤のモル濃度が二価金属イオンのモル濃度より多いときは、キレート安定度定数が7より大きいキレート剤を使用すると当該酵素の活性が発現できないことも判った。【0014】これらの結果は組み合わせても成立することが判り、その結果、二価金属イオンとスルフヒドリル化合物の存在下で、二価金属要求酵素の活性を低下させずにスルフヒドリル化合物を安定化するには、キレ−ト安定度定数が5〜7のキレート剤の1種類以上を、その総量が二価金属イオンのモル濃度より多く添加するのがよいことが判った。更に、キレート安定度定数が7より大きいキレート剤の1種類以上を、その総量が二価金属イオンより少ないモル濃度で添加するときは、キレート安定度定数が3〜7のキレート剤の1種類以上を、全キレート剤の総計が二価金属イオンのモル濃度より多くなるように添加すればよいことも判った。【0015】次に、リン酸緩衝液の存在下、二価金属イオンとリン酸塩との不溶性塩の生成に対する各種キレート剤の影響についても、キレート安定度定数に基づいて詳細に検討した。その結果、キレ−ト安定度定数が5以上のキレ−ト剤を1種類以上添加すれば、この不溶性塩の生成が防止できることが判った。この場合のキレ−ト剤の添加総量は通常二価金属イオンのモル濃度の0.5倍以上で使用できるが、好ましくは1〜2倍加えるのがよい。これらは前述の多くのキレ−ト剤に適応できるが、DPTA−OHは二価金属イオンのモル濃度のより低い濃度で添加できる例である。そして、このときも同様に、二価金属要求酵素にキレ−ト剤を添加するとき、キレ−ト剤のモル濃度が二価金属イオンより多い場合は、キレ−ト安定度定数が7より大きいキレ−ト剤を使用すると当該酵素の活性が発現できない、という上述の知見が適用できることも判った。これらの結果から、二価金属イオンとリン酸塩の存在下で、二価金属要求酵素の活性を低下させずに二価金属イオンとリン酸塩の不溶性塩生成を防止するには、キレ−ト剤の総量が二価金属イオンのモル濃度以下のときは、キレ−ト安定度定数が5以上のキレ−ト剤を1種類以上添加するのがよく、またキレ−ト剤の総量が二価金属イオンのモル濃度を越えるときはキレ−ト安定度定数が5〜7のキレ−ト剤を1種類以上添加するか、又はキレ−ト安定度定数が7より大きいキレ−ト剤の1種類以上を二価金属イオンのモル濃度より少なく添加するとともにキレ−ト安定度定数が5〜7のキレ−ト剤を1種類以上添加するのが、よいことが判った。以上の結果から本発明は完成するに至った。【0016】 本発明の測定用試薬の態様としては、二価金属イオン存在下、スルフヒドリル化合物を酵素反応の基質、酵素の活性化又は試薬の安定化剤として使用する試薬、又は二価金属イオン存在下にリン酸緩衝液を使用する試薬を用いて、生体試料などに含まれる各種成分や酵素活性を測定する試薬などが例示でき、従来の測定用試薬と同様に使用することができる。測定に使用される酵素反応系は1種類のみならず、複数の酵素反応系を共役させたものであってもよい。 生体試料としては、血液、尿、髄液などが例示される。 なお、本発明において使用されるキレート剤は、前述の表1に示されるキレート安定度定数を参照して適宜選択するすることができるが、表1に示されたキレート剤に限定されるものではない。また、キレート安定度定数がpHにより多少の変動を起こすことは当業者にとって自明である。【0017】一般に酵素の活性発現に必要な二価金属イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、マンガンイオンなどが挙げられ、酵素の活性化に必要な濃度は通常0.01〜20mMである。また、通常使用されるスルフヒドリル化合物としては、NAC、コエンザイム−A(CoASH)、L−システイン、還元型グルタチオン、ジチオスレイトール(DTT)などがある。より具体的には、例えば、NACはクレアチンフォスフォキナーゼ(CK)の活性化剤として、CoASHは遊離脂肪酸の定量に使用されるアシルCoAシンセターゼの基質として、また特開平5−95798号公報に示されるように、ピルビン酸脱水素酵素(PDHL)の基質として使用される。還元型グルタチオンは、試薬の安定化及びグルタチンリダクタ−ゼの基質として、L−システイン及びDTTは試薬の安定化剤として使用されている。二価金属イオン存在下、リン酸緩衝液を使用する場合としては、アミラーゼ活性測定においてマルト−スフォスフォリラーゼ(ロッシュマルトテラオース法)又はシュ−クロ−スフォスフォリラ−ゼ(特開平2−177900号公報参照)を使用した測定方法などがある。【0018】【発明の効果】 本発明の測定用試薬によれば、リン酸(リン酸緩衝液中のリン酸又はリン酸化合物が自己水解もしくは混在酵素による水解のために生じたリン酸)と二価金属イオンとによる不溶性沈殿の析出を抑制することができる。従って、本発明によれば、長期間にわたり安定性の高い試薬となり、また不溶性沈殿の生成が抑制されるため、二価金属要求酵素の至適な条件で試薬を調製することが可能となり、酵素の触媒作用を高めることができ、更に沈殿物による自動分析装置のノズルの詰りなどの問題も回避することができる。【0019】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例10.1M イミダゾール緩衝液(pH6.6)に10mM 酢酸マグネシウム、10mM NACを添加し、▲1▼表1に示すキレート剤を各々12mM添加したもの、▲2▼EDTAをあらかじめ2mM添加して同様の表1に示すキレ−ト剤を各々10mM添加したものを、30℃で1週間保存後、NACのスルフヒドリル基を5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)で発色させ、412nmで比色定量してNACの残存量を測定した。これらの結果を表2に示した。なお、キレ−ト剤無添加の系をコントロールとした。【0020】表2に示される結果に関し、実用上の観点から、NAC残存量80%以上をNAC安定化の判断基準とした場合、二価金属イオンであるマグネシウムの存在下でNACを安定化できるような系は、DPTA−OHを含むこれよりキレ−ト安定度定数の大きいキレ−ト剤を添加した場合、即ち、キレ−ト安定度定数が5以上であるキレ−ト剤を添加した場合であることが判った。また、キレ−ト安定度定数が7より大きいEDTAのようなキレ−ト剤を二価金属イオンの濃度より少なく添加した系においては、同様にIDAを含むこれよりキレ−ト安定度定数の大きいキレ−ト剤を添加した場合、即ち、キレ−ト安定度定数が3以上であるキレ−ト剤を添加した場合にNACを安定化できることが判った。【0021】【表2】【0022】実施例2終濃度が10mM 塩化マグネシウムに終濃度が15mM各種キレ−ト剤、又は終濃度1mM 塩化カルシウムに終濃度1.5mM各種キレ−ト剤を添加したものに、終濃度が0.1Mリン酸になるようにリン酸緩衝液を加えpH7.0に調整し、冷蔵下、1週間保存し、不溶性沈殿物の有無について肉眼で観察した。その結果を表3に示した。マグネシウム及びカルシウムとも、キレート剤のキレ−ト安定度定数が5以上であればリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムの沈殿を生成しないことが判った。【0023】【表3】【0024】実施例3二価金属要求酵素であるHK、CK、ピルビン酸脱水素酵素(PDHL)、ヒト膵由来アミラーゼ(pAMY)及びヒト唾液由来アミラーゼ(sAMY)について、酵素活性に対するキレ−ト剤の影響を調べた。即ち、HKについては、0.1M リン酸緩衝液(pH8.0)に0.11M グルコース、0.55mM ATP、0.23M NADPに1.25mM 塩化マグネシウムを加えた溶液に、4mMの各種キレ−ト剤を添加し、HK(saccharomyces sp由来)活性を定量した。CKについては、0.1M イミダゾール緩衝液(pH6.6)に10mM 酢酸マグネシウム、2mM アデノシン−5’−2リン酸、5mM アデノシン−5’−1リン酸、20mM NAC、20mM グルコース、2mM β−NADP、3U/ml HK、1.5U/ml グルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mM CPに、15mMの各種キレ−ト剤を添加してヒト血清中のCK活性を測定した。PDHLについては、50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH7.5)、20mM リン酸一カリウム、10mM 塩化アンモニウム、2.5mM NAD、0.2mM チアミンピロリン酸、4mM ピルビン酸ナトリウム、0.2mM CoASH、1.0mM 塩化マグネシウムを加えた溶液に、2mMの各種キレ−ト剤を添加し、PDHL(ブタ心筋由来)活性を測定した。pAMY及びsAMYについては、0.1M リン酸緩衝液に2mM p−ニトロフェニル−4,6−ベンジリデンマルトヘプタオシド、30U/ml α−グルコシダ−ゼ、30U/ml グルコアミラ−ゼ、50mM 塩化ナトリウムに1.0mM 塩化カルシウムを加えた溶液に、2mMの各種キレ−ト剤を添加し、pAMY(ヒト膵由来)及びsAMY(ヒト唾液由来)活性を測定した。【0025】その結果を表4に示す。なお、各酵素活性は、コントロールの酵素活性を100とする相対活性で示した。本実施例のように、二価金属イオンよりキレ−ト剤の添加量が多い場合、キレート剤のキレ−ト安定度定数が高くなるにつれて二価金属要求酵素の活性は低下し、特にキレ−ト安定度定数が7以上で阻害が大きい。従ってキレ−ト安定度定数が7以下のキレ−ト剤を使用すれば、酵素の触媒活性を低下させないで測定試薬の共役酵素として使用可能であり、またこれら二価金属要求酵素の酵素活性においても適正な酵素活性測定が可能となる。【0026】【表4】【0027】実施例4DPTA−OHの濃度を代えて、実際に試薬を調製し、CK活性及びNACの安定性について検討した。即ち、0.1M イミダゾール緩衝液(pH6.6)に10mM 酢酸マグネシウム、2mM アデノシン−5’−2リン酸、5mM アデノシン−5’−1リン酸、20mM NAC、20mM グルコ−ス、2mM β−NADP、3U/ml HK、1.5U/ml グルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mM CPを加えた溶液に、DPTA−OHを0〜20mMまで濃度を変化させて添加して、ヒト血清中のCK活性及び30℃で1週間保存したときのNAC残存量を実施例1に従って測定した。その結果を表5に示した。DPTA−OHは、NACなどのスルフヒドリル化合物に対して安定性を高める効果が高く、またCKを活性化する効果も高い。従って、CK測定用試薬に添加すると安定且つ定量性のよい試薬を提供できることが明らかになった。【0028】【表5】 酵素の活性化に二価金属イオンを必要とする酵素の酵素反応を用いて生体試料中の測定対象物質を測定するための試薬であって、リン酸緩衝液中に、前記酵素、スルフヒドリル化合物、二価金属イオン及び二価金属イオンに対するキレート安定度定数が5〜7であるキレート剤を含有し、前記キレート剤を、前記スルフヒドリル化合物を安定化させ、前記酵素の活性を阻害せず且つリン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈澱の生成を抑制できる有効量含有することを特徴とする物質の測定用試薬。 酵素の活性化に二価金属イオンを必要とする酵素の酵素反応を用いて生体試料中の測定対象物質を測定するための試薬であって、前記酵素、二価金属イオン、スルフヒドリル化合物、自己水解によりリン酸を遊離するリン酸化合物及び二価金属イオンに対するキレート安定度定数が5〜7であるキレート剤を含有し、前記キレート剤を、前記スルフヒドリル化合物を安定化させ、前記酵素の活性を阻害せず且つリン酸塩と二価金属イオンによる不溶性沈澱の生成を抑制できる有効量含有することを特徴とする物質の測定用試薬。