生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_参照電極
出願番号:1993307783
年次:2005
IPC分類:7,G01N27/30


特許情報キャッシュ

入谷 有一 長田 文夫 宮崎 明 JP 3684244 特許公報(B2) 20050603 1993307783 19931208 参照電極 日機装株式会社 000226242 福村 直樹 100087594 入谷 有一 長田 文夫 宮崎 明 20050817 7 G01N27/30 JP G01N27/30 311Z 7 G01N27/28-27/419 特開昭63−135853号公報(JP,A) 特開平3−162662号公報(JP,A) 特開平3−221858号公報(JP,A) 特開平5−18930号公報(JP,A) 実開平4−79201号公報(JP,U) 特開平4−264248号公報(JP,A) 1 1995159367 19950623 9 19990330 2002013767 20020722 渡部 利行 水垣 親房 長井 真一 【0001】【産業上の利用分野】本発明は参照電極に関し、詳しくは液絡部をイオン交換膜により形成することによって小型で、安定化された参照電極に関する。【0002】【従来の技術と発明が解決しようとする課題】参照電極は、照合電極、基準電極、基準半電池などと呼称されることもあり、電極電位の相対値を測定するときの電位の基準とする電極装置である。参照電極は、その性質上、その電極電位が安定であり、再現性の高いことが要求される。【0003】水溶液電解質に対する参照電極としては、金属(銀、水銀)とその金属の難溶解性化合物(ハロゲン化物、酸化物、硫化物)が実用的であることが知られている(藤島、相沢、井上共著 電気化学測定法(上)、p.89、技報堂出版、1986参照)。【0004】これらの参照電極においては、その金属層と微量に溶解するその金属イオンとが平衡な系を成している。これらの金属イオンがその酸化還元電位(例えば、銀イオンは+0.799V、水銀イオンは+0.789V(いづれもSHEに対する電位である。)より低い電位の電極においては還元されて析出する。このことが参照電極の安定性における大きな問題となっている。【0005】ところで、液体中の電気化学的に活性な化学種の濃度測定装置には、前記化学種を消費しない装置(以下、平衡方式の装置と称する。)と前記化学種を不可逆的に消費する装置(以下、非平衡方式の装置と称する。)とに分類される。前者の例としては、J.W.Rossによる米国特許第3,260,656号やJ.G.Conneryらによる特公昭56−51582号公報(米国特許第4,076,596)にそれぞれ提案されている装置、後者の例としてはクラークらによる米国特許第2,913,386号に記載のクラークセルとして有名な装置を挙げることができる。【0006】前記平衡方式の装置は、流体から前記化学種を選択的に透過しうる隔離膜の内部に電解液を有し、前記隔離膜に接し、相互に接近した作用極と対極とが設けられている。作用極は、膜を透過してきた化学種に対し電極反応(還元または酸化)により、化学種を消失させることができる一定電位に設定される。一方、対極は、前記電極反応の生成物に対し逆の電極反応(酸化または還元)により、作用極で消費されたのに等しい化学種を再生するような電位に調節されている。これらの調節は、作用極と対極とに、さらに参照極を加えた三電極をポテンシオスタットに接続することにより容易に行なうことができる。【0007】このような平衡方式の装置においては、前記化学種に対する電極反応がその他の反応に比べて十分に大きな反応速度を有するように、電解質および電極の材料を選択することが必要であり、さらに、参照電極での電極反応生成物が作用極や対極と反応することを防止することが重要である。【0008】なぜならば、参照極から流出した金属イオンは、還元反応を受け持つ電極に析出し易いからである。作用極に析出した場合には、析出電流による暗電流の増加や析出による被覆による感度の減少がおこる。一方、対極に析出した場合には、析出被覆による逆反応の低下や印加電圧の上昇による電極の損傷といった問題を生じる。また、被膜が厚くなると、近接する作用極と対極が短絡するに至る。【0009】このように、参照電極よりイオン流出を抑制または防止することが特に平衡方式の装置にとって重要である。【0010】一般に広く行なわれているイオン流出を抑制または防止する手段として、厚い液絡部を設けること、液絡部を二重構造にすることなどの方法が広く用いられている。【0011】市販の典型的な銀−塩化銀電極の例を図2に示した。図2に示す参照電極30においては、白金線31の表面に銀を電着して形成された銀電極32にはその表面にポーラスな塩化銀が形成され、電極反応により塩化銀が消耗してもよいように、塩化銀結晶33がその廻りに充填されている。液絡部は二重に設けられており、内部液絡部34には厚さ1cm程度に多孔性のセラミックまたはガラスが装填され、外部液絡部35には厚さ2mm程度にグラスファイバーまたはセラミックが装填される。なお、図2において、36で示されるのは前記白金線31を挿通保持し、かつ電極用ガラス製筒状体37を保持するホルダーであり、38a,38bで示されるのはたとえば塩化カリウムもしくは塩化ナトリウムなどの飽和水溶液を組成とする内部電解液であり、39で示されるのは前記塩化カリウムもしくは塩化ナトリウムの結晶である。40で示すのは、一端部が前記ホルダーに保持され、その全体が前記電極用ガラス製筒状体37の内部に装入され、先端部には前記内部液絡部34を形成するための凹陥部41が形成され、その凹陥部41内に前記白金線31の先端部を露出し、かつその凹陥部41内には内部電解液38が充填されたガラス製ホルダーである。【0012】特に、銀−塩化銀電極では、流出するイオンは銀イオンだけではなく、銀の塩素イオンとの錯イオン(たとえばAgCl2- 、AgCl32- 、AgCl43- など)としても流出する。平衡定数に基づいて算出した具体的な濃度は、1Mの塩素イオンを添加した場合には、銀イオン(Ag+ )が1.2×10-8Mと低濃度であるのに対し、AgCl2-は1.3×10-3M、AgCl32- は1.3×10-3M、AgCl43- は2.4×10-3Mであるように、このように錯イオンの濃度が高い。【0013】このことから、銀−塩化銀電極においては、イオンの流出を防止または抑制するために特に厚い液絡部を設けることが必要であり、さらに安定した電極特性を維持するという意味での寿命の長期化を図るためには、液絡部をさらに厚くすること、多重構造にすることなどの工夫が必要となり、電極の大型化が避けられない。【0014】このことは、逆に参照電極の小型化を図るためには安定性の低下が避けられないことを意味し、小型化にとって致命的な障害となっている。【0015】イオン流出を抑制または防止する別の手段として、塩化銀の量を最小限にとどめ、塩素イオンの添加量を5mM前後の濃度にすることで、銀イオン、錯イオンの総量を最小値(たとえば2.3×10-5M)に設定する方法が提案されている。【0016】しかしながら、この手段では、参照電極に対する外部雑音の影響が大きくなる問題がある。すなわち、負の電位変動により、塩化銀が還元されて消滅しやすく、その復帰に時間がかかる(反応;Ag+Cl- →AgCl+e- )。また、正の電位変動により塩化銀と競合して、酸化銀(たとえばAg2 O、AgO)が生じると、電極反応の可逆性が消失する[ M.L.Teijero et al., J. Appl. Electrochem., 18,(1988),691参照 \。【0017】以上に説明したとおり、従来においては、参照電極はその安定性を維持しつつ小型化を図ることができなかった。また逆に安定性を向上させようとすると、応答時間が遅くなるという別の問題が生じるという問題があった。【0018】本発明は前記事情に基づいて完成された。すなわち、本発明の目的は、金属イオンの流出が少なくて安定性に優れ、しかも小型化の可能な参照電極を提供することにある。本発明の他の目的は、金属イオンの流出および中性の溶解成分の流出が少なくて安定性に優れ、しかも小型化の可能な参照電極を提供することにある。【0019】【前記課題を解決するための手段】かかる事情に鑑みて本発明者らが鋭意検討した結果、参照電極と外部電解液とをイオン交換樹脂膜で隔絶することによって、金属イオンの流出が少なく、かつ安定性を長期間に渡って低下させることなく、しかも小型化にすることのできる参照電極が得られることを見出して、本発明を完成した。【0020】 すなわち、請求項1に記載の発明は、内部電解液と、これに浸漬された銀−塩化銀電極線と、外部電解液と内部電解液とを隔絶するように多孔質材料を装填した液絡部とを有し、前記多孔質材料の内部電界液側に陰イオン交換樹脂膜及び前記多孔質材料の外部電界液側に陽イオン交換樹脂膜を設けてなることを特徴とする参照電極である。【0021】本発明の参照電極を動作させると、参照電極線において電極反応が起こり、金属イオンやその錯イオンが発生する。すなわち、発生した陽イオン(金属イオン例えばAg+ )に着目すると、陽イオンが内部電解液から拡散して外部電解液との境界に配置された陰イオン交換樹脂膜に到達しても、陰イオン交換樹脂中の固定陽イオン基から生じている正の膜電位により、陽イオンの陰イオン交換樹脂膜透過が阻止される。換言すると、参照電極の内部電解液中に発生した金属イオンの外部電解液への流失が抑制される。したがって、通常の多孔質液絡において問題になる金属塩としての沈殿(この沈殿は、例えば金属イオンとカウンターイオンとの再結合による。例えば、Ag+ +Cl− →AgCl)も抑制される。同様に、陰イオン(例えばAgCln−(n−1) などの錯イオン)も陽イオン交換樹脂膜によって外部電解液への流失が抑制される。【0022】このように参照電極線と外部電解液とがイオン交換樹脂膜とで隔絶されていると、難溶解性塩の生成がないので、参照電極の安定性が長期間に渡って保証されることになる。また、イオン交換樹脂膜は薄膜であればよいのであるから、従来の参照電極におけるように液絡部を厚みの大きな構造にする必要もなく、また液絡部を多重構造にするなどの必要もなくなるので、その分参照電極が小型になる。【0023】また、これまでに説明した参照電極線と外部電解液とを隔絶するイオン交換樹脂膜に加えて、液絡部に多孔質材料(例えばイオン交換樹脂膜と一体になった膜状物でも良い。)が装填されていると、中性の微量溶解性分子例えばAg、AgClなどの透過を効果的に抑制することができる。【0024】【実施例】以下、本発明の参照電極を具体的かつ詳細に説明する。【0025】本発明において重要なことは、参照電極線と外部電解液とをイオン交換樹脂膜で隔絶することである。【0026】本発明における参照電極線としては、電極の動作において金属イオンが関与する限りいかなる構造であっても良い。【0027】参照電極線としては、例えば、金属とその金属のイオンとを有する電極、金属とその金属のハロゲン化物とを有する電極(例;Hg/Hg2 Cl2 、Ag/AgClなど)、金属とその酸化物とを有する電極(例;Hg/HgOなど)、金属とその硫化物とを有する電極、金属とその硫酸塩とを有する電極(例;Hg/Hg2 SO4 など)等の電極を挙げることができる。この中でも特に銀とハロゲン化銀とを有する電極を備えた参照電極線は、従来においては上述したように参照電極の小型化が特に困難であったので、これを使用することにより参照電極を大幅に小型化できる意義は大きい。【0028】前記イオン交換樹脂膜としては、特に制限がなく各種のイオン交換樹脂膜を用いることができる。ただし、参照電極の動作に伴って用いるイオン交換樹脂膜を以下のように決定するのが好ましい。【0029】すなわち、電極反応に関与するイオンが陽イオンだけの場合には、イオン交換樹脂膜としては、そのイオンに対して透過性阻止能を有する陰イオン交換樹脂膜でよく、電極反応に関与するイオンが陰イオンだけの場合には、そのイオンに対して透過性阻止能を有する陽イオン交換樹脂膜を配置すれば良い。もっとも、いづれの場合にも両方のイオン交換樹脂膜を設けることもできる。電極反応に陽イオンと陰イオンとの両方が関与する場合には、両方のイオン交換膜が必要になり、また、この場合には、両イオン交換樹脂膜の順序に限定はなく、いづれの順序によっても同様な効果が得られる。【0030】また、陽イオン交換樹脂膜または陰イオン交換樹脂膜を、それぞれ複数用いることもできる。この場合、ラミネーションにより多重膜にしてもよいし、間に電解液を満たしてもよい。【0031】前記陽イオン交換樹脂膜としては、カルボン酸基やスルホン酸基を有する高分子膜を好ましく用いることができる。なかでも、塩素等の酸化作用に対する耐性に優れるという点でフッ素系陽イオン交換樹脂膜を特に好ましく用いることができる。【0032】前記陰イオン交換樹脂膜としては、アミノ基、クロロメチル基、第四アンモニウム基等を有する高分子膜を挙げることができる。なかでも成膜性に優れると言う点で、塩化ビニル系の陰イオン交換樹脂膜を好ましく用いることができる。【0033】イオン交換樹脂膜を設ける位置については、外部電解液と参照電極線を浸漬する内部電解液とを隔離することのできる限り制限がない。【0035】 また、液絡部を設けることによって、中性の溶解成分たとえば溶解している銀分子及び塩化銀分子などの流出を防止することができる。【0036】この液絡部を形成する素材としては、たとえばセラミックス、バイコールガラス、ヴィトリアス炭素(Vitreous Carbon )、多孔質高分子膜、ガラスウールなどを挙げることができる。【0037】イオン交換樹脂膜は一層であっても多層であってもよい。イオン交換樹脂膜を多層にする場合、各層が隙間なく積層された構造であっても良く、各層間に電解質液が存在する積層構造であってもよい。【0038】多層に形成されたイオン交換樹脂膜においては、各層を構成するイオン交換樹脂膜の種類は同一であっても相違していてもよい。【0039】上述したような本発明の構成を採用する限り、本発明の参照電極は参照電極線およびイオン交換樹脂膜に加えて種々の部材を有していてもよい。【0040】本発明の一例としての参照電極を図1に示す。【0041】図1に示すように、この一実施例としての参照電極1は、ホルダー2、ガラス筒3、参照電極線4、内部電解液5、第1イオン交換樹脂膜6、石英ウール7および第2イオン交換樹脂膜8を有する組み立て体である。前記ガラス筒3は、端面円形に形成された開口部となっている一端を有し、他端は球形に閉塞し、その閉塞端に小径貫通孔3aを備えてなる円筒形をなす。前記ホルダー2は、前記ガラス筒3および前記参照電極線4を保持する機能を有し、このホルダー2の一端面に前記ガラス3を装着する。銀製の電線9が、このホルダー2の他端面から一端面に貫通し、このホルダー2に装着されたガラス筒3内に延在し、ヘアーピン状に折曲される。ヘアーピン状に折曲された電線9の表面には塩化銀が被覆され、Ag/AgClの参照電極線4が形成される。ガラス筒3の閉塞端内部には石英ウール7が充填されて液絡部が形成される。ガラス筒3内では、この液絡部に接するようにして第1イオン交換樹脂膜6が所定の厚みとなるように形成されている。この第1イオン交換樹脂膜6は陰イオン交換樹脂で形成される。ガラス筒3の球形閉塞端およびその球形閉塞端に連絡するガラス筒3の外周には、第2イオン交換樹脂膜8が被覆形成される。この第2イオン交換樹脂膜8は陽イオン交換樹脂で形成される。【0042】前記構成の参照電極は、たとえば次のようにして組み立てて製造される。【0043】まず、ガラス筒3の底部に石英ウールを敷き、次いで第1イオン交換樹脂の有機溶媒溶液を流し、溶媒を蒸発乾固する。次いで、このガラス筒3の先端部に、第2イオン交換樹脂の有機溶媒溶液を塗布し、乾燥する。一方、ホルダ2に挿通してある銀線の表面に、アノード電解法により塩化銀を被覆する。ガラス筒3内に電解液を収容してから、ホルダー2にガラス筒3の開口部を装着して参照電極を完成する。【0044】以下、本発明の参照電極を具体例を用いて詳細に説明する。【0045】(実験例1)図1に模式的に示す銀−塩化銀電極を試作した。この銀−塩化銀電極は陽イオンおよび陰イオンの両方が生じるので、陰イオン交換樹脂である第1イオン交換樹脂膜6および陽イオン交換樹脂である第2イオン交換樹脂膜8の二種が必要である。【0046】参照電極線4は、通常のアノード電解法により、銀線9(直径0.4mm、長さ15mm)の表面に塩化銀を総電気量が250mCとなるように形成した。この参照電極線4をホルダー1に装着した。【0047】Ag+ イオンの流出防止のために陰イオン交換樹脂である第1イオン交換樹脂膜6を次に示す方法により形成した。先ず、市販の強塩基性イオン交換膜を、有機溶媒に浸漬し、1週間程度室温で撹拌することによって、樹脂溶解溶液を得た。この樹脂溶解溶液を、ホルダー2の内側先端部に流し込み、真空乾燥して固定した。乾燥後の第1イオン交換樹脂膜の厚さは約1mmであった。なお、樹脂溶解溶液がホルダー2の穴(直径0.5mm)から漏出しないように、石英ウールを敷き込んだ。【0048】次に、陽イオン交換樹脂膜である第2イオン交換樹脂膜8を、錯イオン(アニオン)の流出防止のために次に示す方法により設けた。すなわち、Nafion(5%溶液、E.I.du Pont社製)にホルダー2を浸し、乾燥することによりホルダー2の外側先端部に第2イオン交換樹脂膜を形成した。形成された膜の厚さは約0.1mmであった。【0049】上記の方法により得られた陽イオン交換樹脂膜および陰イオン交換樹脂膜を有する参照電極を参照電極▲1▼とする。【0050】参照電極▲1▼の外に、比較のため、陽イオン交換膜のみ形成した参照電極▲2▼およびイオン交換膜を有しない参照電極▲3▼を作成した。【0051】前記3種類の電極は形式的に以下のように示すことができる。【0052】参照電極▲1▼;Ag/AgCl/電解液/第1イオン交換樹脂膜/石英ウール/第2イオン交換樹脂膜参照電極▲2▼;Ag/AgCl/電解液/石英ウール/第2イオン交換樹脂膜参照電極▲3▼;Ag/AgCl/電解液/石英ウールただし、石英ウールは厚さ約1mmであり、電解液は炭酸ナトリウム(濃度1M)と塩化ナトリウム(濃度0.1M)とを溶解する水溶液であり、参照電極▲1▼〜▲3▼のいずれにおいても各部の寸法を同一にし、また電解液の容積を0.03cm3 にした。中性塩濃度(塩化ナトリウム濃度)は、M.Cappadoniaらによる「Nafionによる陰イオン阻止能を保持するためには、電解液のイオン濃度をNafion内部の固定陰イオン濃度(0.6±0.1M)以下にする必要がある」という報告(M.Cappadonia et al., J.Colloid and Interface Science,143,1,p221(1991))に基づき、通常の飽和濃度に比べ低濃度(0.1M)に設定した。【0053】試作した参照電極を評価するため、サイクリックボルタンメトリイ測定を行なった。作成した参照電極をポテンシオスタットの作用極に接続し、対極には白金(0.02cm2 )電極を、参照電極には市販の銀−塩化銀電極を接続した。作用極と対極とは小型容器(容積0.3cm3 )に収納し、ピンホールの液絡部により参照電極線の収納されたガラス容器3と連絡した。【0054】作用電極を市販の銀−塩化銀電極に対して、−100mVから+300mVの範囲について5mV/sの掃引測定を行なった。結果は表1に示すように、いずれの電極も良好な可逆性を示し、レストポテンシャルも安定していた。すなわち、陰陽両イオン交換樹脂膜を配置した参照電極▲1▼も、イオン交換樹脂膜を配置していない参照電極▲3▼とほとんど変わらないレストポテンシャルを示した。さらに、参照電極▲1▼の発生電流値も参照電極▲3▼の1/20に減少したものの、実用的な値例えば10μAのオーダーを保持することができた。【0055】このように、本発明の参照電極は液絡部液間電位、膜電位、中性塩濃度の違いなどにより、銀−塩化銀(飽和塩化カリウム)電極と一定の差を生じるが、実際の利用に際して、その一定値を補正して用いるので問題はない。【0056】【表1】【0057】(実験例2)前記実験例1における参照電極▲1▼におけるイオン流出防止の効果を確認するために、前記J.G.Conneryらによる特公昭56−51582号公報(米国特許第4,076,596)で提案された平衡方式の酸素電極の内で、微小量の内部電解液が可能な平面クシ型電極(作用極および対極が交互に並び、それらの電極幅および間隔が10μm、長さが6mm、各40本、材質が共に白金である。)を製作した。今回の参照電極と平面クシ型電極とを容器(電解液容積0.2cm2 )に入れて、作用電極に−500mVを印加して、銀の析出を検討した。【0058】酸素の選択的透過膜としては、フッ素系高分子膜(厚さ10μm)をクシ型電極表面に近接(10μm前後)するように容器に固定した。【0059】参照電極▲1▼の場合、大気に対して20μAの還元電流が400時間に渡って測定され、EPMA(X線マイクロアナライザー)分析によると作用極上に銀の析出がなかった。また、標準参照電極に対してのレストポテンシャルの変化は6mVであって良好な安定性を示した。他方、参照電極▲3▼については、印加開始時には20μAの還元電流を示すものの、10時間後に40μAと急激な上昇を起こし、用いることは不可能であった。【0060】このように、本発明の参照電極はイオン交換樹脂膜を用いることにより参照電極の小型化を達成すると同時に、安定した性能を有する。【0061】【効果】本発明によるとイオン交換樹脂膜を用いるので小型化を達成すると共に安定した性能を有する参照電極を提供することができる。また、液絡部に多孔質材料を備えた参照電極にすると、参照電極線を浸漬した内部電解液と外部電解液とをイオン交換樹脂膜及び液絡部で隔絶した構造にすることと相俟て、更に安定した性能の持続する参照電極を提供することができる。【図面の簡単な説明】【図1】図1はこの発明の一実施例である参照電極を示す断面説明図である。【図2】図2は従来の参照電極の一例を示す断面説明図である。【符号の説明】1・・・参照電極、2・・・ホルダー、3・・・ガラス筒、3a・・・小径貫通孔、4・・・参照電極線、5・・・内部電解液、6・・・第1イオン交換樹脂膜、7・・・石英ウール、8・・・第2イオン交換樹脂膜、9・・・銀製の電線 内部電解液と、これに浸漬された銀−塩化銀電極線と、外部電解液と内部電解液とを隔絶するように多孔質材料を装填した液絡部とを有し、前記多孔質材料の内部電界液側に陰イオン交換樹脂膜及び前記多孔質材料の外部電界液側に陽イオン交換樹脂膜を設けてなることを特徴とする参照電極。


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