タイトル: | 特許公報(B2)_耐火物の構造スポーリング試験方法、焼成起因割れの評価方法及び試験装置 |
出願番号: | 1993197179 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/38 |
宇田川 悦郎 前田 榮造 野崎 努 JP 3754094 特許公報(B2) 20051222 1993197179 19930809 耐火物の構造スポーリング試験方法、焼成起因割れの評価方法及び試験装置 JFEスチール株式会社 000001258 小杉 佳男 100079175 山田 正紀 100094330 宇田川 悦郎 前田 榮造 野崎 努 JP 1993086038 19930413 20060308 G01N 33/38 20060101AFI20060216BHJP JPG01N33/38 G01N33/38 特開昭64−65227(JP,A) 特開昭58−146834(JP,A) 特開平3−150261(JP,A) 窯業協会編「新版 窯業辞典」、丸善株式会社、昭和41年2月20日第2刷発行、第144〜145頁 3 1994347457 19941222 11 20000322 2002019718 20021010 鐘尾 みや子 櫻井 仁 菊井 広行 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、不定形耐火物、特に流し込み施工用耐火物の開発にあたって、評価、解析に用いるスラグ浸透スポーリング試験方法、焼成起因割れの評価方法及び試験装置に関する。【0002】【従来の技術】従来から取鍋内張り用流し込み耐火材として、珪石、ロー石、アルミナ質、ジルコン質、マグネシア質などの耐火材が使用されてきた。近年、高純度鋼溶製のための取鍋精錬技術の進歩により、溶鋼温度の上昇、溶鋼滞留時間の延長など、取鍋耐火物の使用環境は過酷化している。このため、従来の材質の耐火材では、耐食性、耐スポーリング性の点で対応できなくなってきている。【0003】これまでに、ジルコン質、高アルミナ質、アルミナ−スピネル質など耐火材の材質面から様々な改良が加えられ、耐用性の向上が図られてきた。そして、これらの改良により鋼浴部においては高耐用性が実現している。この改良により、さらに耐用性の要求されるスラグライン部への拡大適用も試みられてきたが、いまだに工程実施レベルの耐用性は得られていない。スラグライン部への適用を可能とするには、材質面での一層の改良が必要となる。【0004】酸性材であるジルコン質においては、その主な損耗形態が化学反応による溶損であることから、改良には限界があると思われる。また中性材であるアルミナ−スピネル質では、スラグ浸透に伴う構造スポーリングの発生が問題となっており、この問題解決にも様々な検討がなされている。塩基性材であるマグネシア質については、耐溶損性は問題が少ないものの、その熱膨張性などからくるスポーリングの問題が解決されていないのが現状である。従来、このようなスポーリング問題の解決が十分でない原因の一つとして、実使用上発生する構造スポーリングを再現できる評価・試験方法がなかったことがあげられる。【0005】従来の耐火物評価・試験方法としては、(1)スラグ回転浸食法(2)高周波溶解炉内張法(3)熊谷らによるAE計測法(窯業協会誌87(5)259〜296(1979)など)(4)末川らによる耐剥離性評価(材料とプロセスvol.1(1992)、250などがあげられる。【0006】【発明が解決しようとする課題】上記(1)、(2)については、スポーリング現象を評価するのに必要な大きさの試料が得られないこと、試料内に適度な温度勾配をつけられないことなどの問題があった。上記(3)についてはスラグ浸透の影響を評価することができないなどの問題があった。また、流し込み材は不焼成品であり、溶鋼を受けて始めて片面から焼結が始まるので、AEセンサによる耐スポーリング性評価は試みられていない。上記(4)ではスラグ浸透後の保持時間が短いためか、スラグ浸透深さ、亀裂発生深さが実炉結果と一致しないという問題があった。【0007】また、これらのスラグ浸透試験、スポーリング試験によって発生した様々な亀裂については、数例の試み(例えば特開昭60−60985号公報、特開平4−42868号公報等)を除けば、切断面での目視観察にとどまっており、亀裂発生の原因となる応力分布や弾性率、強度などの物性変化と関連付ける試みがなされていないのが現状である。【0008】以上の問題点により、これまでの耐火物開発、特に不定形耐火物、流し込み材の開発においては、その開発段階で十分に実使用を反映するような評価方法や試験方法がなかった。本発明では、不焼成品である流し込み材耐火物の材料開発にあたり、焼結の影響、スラグ浸透深さ、及びスラグ浸透量が及ぼす亀裂発生について、実炉使用、特に溶鋼取鍋の操業条件を再現することができるような評価方法、試験方法及びその装置を提供することを目的とする。また、片面から焼結が進行することによって生ずる物性変化の不均一性と相関を持つ耐スポーリング性を評価する方法を提供することを目的とする。【0009】さらに、亀裂発生の原因となる応力分布や耐火材料の弾性率、強度などの物性変化と関連付けるために必要となる定量化方法を提供することを目的とする。【0010】【課題を解決するための手段】発明者等は、流し込み材へのスラグ浸透深さと時間の関係を調査し、取鍋での使用を考えた場合のような、十分長い使用条件のもとでのスラグ浸透の深さは温度のみによって決定されること、スラグ量と亀裂発生の間に密接な関係があることを見出し、実炉使用を再現できる評価方法、試験方法及びその装置を開発した。【0011】 すなわち、本発明の第1の発明は、炉の底部に設置された、一辺の長さが100乃至400mm、厚さが50乃至200mmの耐火物試料の上面でスラグを溶融させた後、炉の温度を上昇、下降させて、耐火物試料内に発生した割れを判定評価する耐火物の構造スポーリング試験方法であって、前記耐火物試料上面における加熱温度を1200℃以上とし、試料内温度勾配を2〜10℃/mmとし、耐火物試料上面の面積1cm2当り、0.3g以上のスラグを耐火物試料上面で溶融させ、スラグ溶融後の最高温度域で4時間以上加熱することを特徴とする耐火物の構造スポーリング試験方法である。【0012】次に発明者らは、本発明により、不焼成品である流し込み材の耐スポーリング性が、片面加熱によって生ずる、鉱物相、強度、弾性率等の変化が主因であることを見出した。流し込み材が片面加熱によってどのように割れるのかをAEセンサを用いてリアルタイムで観察することによって、バインダや化学成分等の流し込み材料構成がどうあるべきかを発見するに至った。【0013】 すなわち、本発明の第2の発明は、不定形耐火物試料を炉の底部に炉内に一面を露出させて配置し、該不定形耐火物試料の上面でスラグを溶融させた後、炉の温度を上昇、降下させ、該不定形耐火物の下面側すなわち冷却面側で検出した音響情報から、不定形耐火物試料内に発生した割れを判定評価することを特徴とする不定形耐火物の焼成起因割れの評価方法である。すなわち、炉の底部に設置された耐火物試料の下面側に取りつけたAEセンサにより、炉の温度を上昇、降下させることによって生ずる試料内の割れを判定評価する。 上記発明を好適に実施することができる本発明の装置は、内部に溶融スラグを保持する炉と、該炉の底部に設置された耐火物試料設置部と、該耐火物試料に取り付けたアコースティックエミッション(AE)センサと、該耐火物試料の上面側から加熱する発熱体と、炉温を上昇下降させる装置とを備えたことを特徴とする耐火物の構造スポーリング試験装置である。【0014】本発明者らは、流し込み材へのスラグ浸透量、溶融浸透時間、熱負荷条件などを変えて、スポーリング試験を行い、この試験によって発生した亀裂を数値化した。本発明と関係の深い、スラグ浸透スポーリング試験については、スラグ浸透(量と深さ)と加熱条件の関係を調査し、取鍋での使用を考えた場合のような十分長い使用条件のもとでのスラグ浸透の深さは温度のみによって決定されること、スラグ量と亀裂発生の間に密接な関係があることを見出し、実炉使用を再現できる評価方法及び試験方法を用いた。【0015】【作用】スラグ浸透による構造スポーリングの発生を確認するためには、十分な量のスラグを溶融させ、実炉と同様の温度勾配を持たせたうえで、十分な時間保持し、スラグを十分に試験片に浸透させる必要がある。試験片を炉の底部に置き、試験片を上方から加熱することによって、加熱面側でスラグを溶融させることが可能となる。またこうすることで上から下に向かって温度が低下するような温度勾配を作り出すことが可能となる。【0016】 試験方法としては、試験片上面から加熱し、十分温度が平衡に達するまで保持し、スラグを溶融させ試験片に浸透させる。この状態で実炉に近い温度変化を与え、亀裂発生の有無を調べることによって、実炉の再現を得ることが可能となる。また、不焼成品である不定形耐火物内に、焼成起因の不均一さを作り出すことが可能となり、試料形状のうち、特に厚さを実使用に合わせることによって、実炉に近い温度変化を与える。【0017】図1に本発明の試験装置の模式的断面図を示す。鉄皮3内に断熱材2を詰め、耐火物試料6をおき、その上方に発熱体1を備えている。耐火物試料6にはAEセンサ4、熱電対5を備え、また耐火物試料6上にスラグ7を載置するようになっている。耐火物試料6のサイズは、一辺の長さが100〜400mm、厚さが50〜200mmとするのが好ましい。一辺の長さが100mm未満では亀裂の発生が実炉の再現とならない。400mmを越えると亀裂の発生状況に変化はなく、しかも試験上装置が大きくなりすぎて経済的でない。好適には一辺の長さが150〜300mmの範囲である。厚さは、50mm未満では薄すぎて亀裂が発生しにくい。200mmを越えると厚すぎて異なったタイプの亀裂発生がみられるようになる。好適には80〜150mmである。【0018】耐火物試料内の温度勾配は2〜10℃/mmとするのが好ましい。この値は実炉での耐火物内の温度勾配に近い値であるが、発明者らの発見では、スラグ浸透深さは温度によってのみ決まるため、温度勾配が変化するとスラグの浸透深さが変化することになり、実炉の再現とならない。好適には3〜7℃/mmである。所定の温度勾配にするには、耐火物試料の冷却側(下面)に断熱材を入れるか、もしくは空冷するなどすればよい。【0019】最高温度は1200℃以上が好ましい。1200℃未満ではスラグが溶融されない。好ましくは実炉温度である1450〜1600℃である。スラグ溶融後の最高温度域での加熱時間は4時間以上が好ましい。4時間未満ではスラグ浸透が十分でなく、本来より浅い位置で亀裂が発生してしまう。好ましくは10時間以上とするのがよいが、15時間以上であればなおよい。45時間以上加熱しても結果に大差なく経済的でない。【0020】耐火物試料上で溶融させるスラグ量は0.3g/cm2 以上が好ましい。これを下回るとスラグ量が十分でなく、亀裂の発生が見られないこともある。望ましくは0.8g/cm2 以上である。試験中の耐火物試料にAEセンサを取り付けることによって、加熱条件、流し込み材の材質に応じたAE信号が検出され、より正確な判定が可能となる。従来法では冷却後の切断面から亀裂を観察していたため、温度変化の際に亀裂が発生したのか、冷却中に発生したのか判定することができなかった。AEセンサを取り付け、亀裂の量、発生時間、発生位置を評定することによってより正確な判定ができるようになる。【0021】本発明方法による耐火物試料の判定は、試料内に発生した加熱面に垂直な亀裂(縦亀裂)と加熱面に平行な亀裂(横亀裂)の大きさと数を図2に示すような方法で評価した。なお、亀裂は最大亀裂幅0.1mm以上のものについて計測した。亀裂定量化の手順を図2を参照して説明する。(1)加熱面8から深さ方向にY軸12をとる。(2)Y軸12を10mmピッチ14で刻んで加熱面8と背面9との間に多数の平行な測定線13を引く。(3)測定線13と縦亀裂11との交点10を計数する。(4)横軸に測定線13の加熱面8からの距離をとり、縦軸に交点10の数を取り、グラフ化する。このようにしてグラフ化した例を図3に示す。ハッチングを施した部分の面積を損傷量と定義する。【0022】同様に、加熱面と平行な亀裂についても、(a)試料の1側面からもう一方の側面方向に加熱面に沿ってY軸をとる。(b)Y軸を5mmピッチで刻んで、加熱面と垂直な測定線を引く。(c)測定線と横亀裂の交点を計数する。(d)横軸に測定線の加熱面からの距離をとり、縦軸に交点の数をとり、グラフ化する。【0023】グラフ化した1例を図3に示す。このようにすれば横亀裂も同様にグラフ化し、亀裂量を定量化することができる。図3に示す亀裂発生パターンは先に述べた実使用に基づいたスポーリング試験方法において、計算機による熱応力シミュレーションの結果と強い相関を持っていることがわかった。具体的には加熱面側(1500℃)から冷却面側(900℃)にかけて弾性率を図9に示す曲線50のように変化させて、熱応力計算を行い、試料内に発生する熱応力分布を求めた結果と良い一致をみた。図11に、加熱面と平行な応力成分(横亀裂発生要因)、図12に、加熱面と垂直な応力成分(縦亀裂発生要因)の等応力線図をそれぞれ示す。【0024】本発明方法は取鍋流し込み材の試験でだけでなく、樋、RH装置、転炉、タンディッシュ等の不定形耐火物開発の場合の評価・試験にも適用可能である。【0025】【実施例】実施例−1アルミナ系流し込み材(試料名A〜H)の230t溶鋼取鍋での使用実績と、本発明によるスラグ浸透スポーリング試験結果との関係を調べた。230t取鍋における損傷は、スラグ浸透による構造スポーリングが主であることが、観察、解析の結果から判明している。【0026】スラグ浸透スポーリング試験は次のように行った。耐火物試料サイズは200×200×100mmとし、200×200mmの面を加熱した。最高温度は1500℃とし、耐火物内に4.2℃/mmの温度勾配をつけた。最高保持温度に達して5時間後、転炉スラグを400g(1g/cm2 )投入し18時間保持した後、900〜1500℃の温度変化を6回与えた後冷却した。この耐火物試料にはAEセンサを4個取り付け、亀裂の発生位置、時間を記録した。冷却後、耐火物試料を切断し、図3に示したのと同じ方法で亀裂の評価を行った。【0027】図4に本発明によるスラグ浸透スポーリング試験結果と実鍋使用結果との関係を示す。また、比較のため、スラグ回転浸食試験及び先に述べた末川らの方法と実使用結果の関係を図5に示す。これらの図から明らかなように、本方法が実使用結果と最もよく一致することがわかる。【0028】実施例−2実施例1と同様のアルミナ系流し込み材(試料名A〜H)について、同一寸法の試験片を作成し、次の条件で試験を行った。最高温度:1550℃温度勾配:5.6℃/mmスラグ投入:転炉スラグ800g(Ig/cm2 )保持時間:20時間温度変化:(900〜1550℃)×8回結果は図4と実質的に同じであった。【0029】実施例−3マグネシア−ジルコン質(アルミナセメント使用)、マグネシア−アルミナ質(アルミナセメント使用)、及びアルミナ−スピネル質(シリカゾル使用)流し込み材を用いた。スラグ浸透スポーリング試験は次のように行った。試験片サイズは200×200×100mmとし、200×200mmの面を加熱した。昇温速度は8℃/分、最高温度は1500℃とし、3種類の使用に対して4〜5℃/mmの温度勾配を付けた。本試験においては、亀裂位置の評定を行うための4本のAEセンサを取り付けた。【0030】 図6に、ヒートパターンとAE信号の計測数(カウントレイト)の関係をそれぞれの試料に対して示す。図6(a)に示すマグネシア−ジルコン質では、1500℃の保持開始後400分ほどで計測数が急増した。急激な増加は200分ほど続き、その後冷却に入るまでの600分ほど高いカウントレイトを維持した。冷却開始から、800℃まで計測数は激減し、冷却後約100分はほぼ0となった。その後室温に下がるまでの間、3回の大きなピークを計測しながら低下した。図6(b)に示すマグネシア−アルミナ質では、昇温過程、保持過程で計測数はほぼ0であった。冷却開始後、計測数が急増し、冷却後約100〜200分でピークとなった。その後室温まで単調に低下した。図6(c)に示すアルミナ−スピネル質では、昇温過程、保持過程で、小さなピークが現れたものの、計測数は少ない。冷却開始直後に計測数は急増し、1回目のピークとなり、再び減少し、冷却後約120分で2回目のピークとなった。 なお、図6(a)〜(c)中の符号30は温度1500℃(コントロール温度)を示しており、符号31〜33はAE信号のカウントレイト(データプロット)を示したものである。いずれも最大値を1.0として規格化して示してある。【0031】本発明によると、流し込み材の材質によって異なるAE信号の検出パターンは、以下のように整理することができる。(a)マグネシア−ジルコン質マグネシア−ジルコン質では、試験後の切断面観察では、加熱面に垂直な亀裂が見られた。この亀裂は図6(a)で示したa点で発生し始めて、b点まで成長し続けることが、2次元位置評定の結果から分かっている。マグネシア−ジルコン質では、焼成温度と室温での曲げ強度及び弾性率の関係から、昇温、温度保持過程で焼結が進行することがわかった。以上のことから、マグネシア−ジルコン質は片面加熱による焼結の不均一差が大きい材料であるといえる。(b)マグネシア−アルミナ質図6(b)に示すマグネシア−アルミナ質では、試験後の切断面の観察では、加熱面に垂直な亀裂が見られた。マグネシア−ジルコン質では、焼成温度と室温での曲げ強度及び弾性率の関係から、昇温、温度保持過程で亀裂発生にいたらない程度のマトリックスの破壊が起こり強度と弾性率が低下し、冷却過程に入って亀裂が発生したものと考えられる。(c)アルミナ−スピネル質図6(c)に示すシリカゾルをバインダとして用いたこの系では、焼成温度と共に室温強度が著しく増加するものの、気孔率はほとんど変化しなかった。強度の増加に伴って、弾性率はごくわずか増加した。この系は加熱面側と冷却面側での不均一差の小さい材料といえる。【0032】実施例−4スラグ浸透スポーリング試験を次のように行った。用いた試料は、マグネシア質である。試験片サイズは200×200×100mmとし、200×200mmの面を加熱した。最高温度は1500℃とし、耐火物内に4.2℃/mmの温度勾配を付けた。最高保持温度に達して5時間後、転炉スラグを400g(0〜2g/cm2 )投入し、18時間保持した後、900〜1500℃の温度変化を6回与えた後冷却した。この試験片にはAEセンサを4個取付け、亀裂の発生位置、時間を記録した。冷却後、試験片を切断し、図1、2に示したのと同じ方法で亀裂の評価を行った。【0033】図7、図8に本発明による、発生亀裂のグラフ化の結果の一部を示す。曲線40はスラグ400g、曲線41はスラグ800gの交点の数を示している。スラグ400gでは加熱面からの距離14mm、スラグ800gでは18mmとなっており、スラグ投入量の増加にともなって、横亀裂がより深いところで発生しているのがわかる。また、加熱面側から冷却面側にかけての弾性率(室温値)が、図9に示すように、スラグを投入しない場合曲線51であり2g/cm2 投入した場合では曲線50に示す通りとなる。これに基づいた熱応力計算から、試料中心部で発生する加熱面と垂直方向の応力(横亀裂の発生要因)は、それぞれ弾性率曲線50、51に応じ図10に示した曲線60、61のようになり、図8に示した横亀裂のグラフ化の結果と良い一致をみた。【0034】【発明の効果】本発明によるスラグ浸透スポーリング試験方法は、開発品の実鍋使用結果と良く一致し、実鍋への適用判定に有効であるといえる。また、本来不焼成である流し込み耐火物の持つ、不焼成起因の割れを加熱中にリアルタイムで観察でき、片面からの加熱によって引き起こされる物性の不均一さの程度を評価できる。【0035】さらに、本発明によるスラグ浸透スポーリング試験方法と、これによって発生した亀裂の定量化は、これまで目視観察にとどまっていた亀裂評価を例えば弾性率の変化といった物性値と結び付けて評価することを可能とした。【図面の簡単な説明】【図1】スラグ浸透スポーリング試験装置の模式図である。【図2】亀裂定量化の手順を説明する説明図である。【図3】亀裂の定量化を示す図である。【図4】スラグ浸透スポーリング試験装置による試験結果と実鍋使用実績を示すグラフである。【図5】スラグ回転浸食法と末川らの方法による試験結果と実鍋使用実績との関係を示すグラフである。【図6】AE信号のカウントレイトのグラフである。【図7】加熱面からの距離と交点の数の関係を示すグラフである。【図8】加熱面からの距離と交点の数の関係を示すグラフである。【図9】加熱面からの距離と弾性率の値を示すグラフである。【図10】加熱面からの距離と応力との関係を示すグラフである。【図11】熱応力計算による量応力分布図である。【図12】熱応力計算による量応力分布図である。【符号の説明】1 発熱体 2 断熱材3 鉄皮 4 AEセンサ5 熱電対 6 耐火物試料7 スラグ 8 加熱面9 背面 10 交点11 縦亀裂 12 Y軸13 測定線 14 ピッチ 炉の底部に設置された、一辺の長さが100乃至400mm、厚さが50乃至200mmの耐火物試料の上面でスラグを溶融させた後、炉の温度を上昇、下降させて、耐火物試料内に発生した割れを判定評価する耐火物の構造スポーリング試験方法であって、前記耐火物試料上面における加熱温度を1200℃以上とし、試料内温度勾配を2〜10℃/mmとし、耐火物試料上面の面積1cm2当り、0.3g以上のスラグを耐火物試料上面で溶融させ、スラグ溶融後の最高温度域で4時間以上加熱することを特徴とする耐火物の構造スポーリング試験方法。 炉の底部に設置された、一辺の長さが100乃至400mm、厚さが50乃至200mmの耐火物試料の上面でスラグを溶融させた後、炉の温度を上昇、下降させて、前記耐火物試料の下面側で検出した音響情報から耐火物試料内に発生した割れを判定評価する耐火物の構造スポーリング試験方法であって、前記耐火物試料上面における加熱温度を1200℃以上とし、試料内温度勾配を2〜10℃/mmとし、耐火物試料上面の面積1cm2当り、0.3g以上のスラグを耐火物試料上面で溶融させ、スラグ溶融後の最高温度域で4時間以上加熱することを特徴とする耐火物の構造スポーリング試験方法。 内部に溶融スラグを保持する炉と、該炉の底部に設置された耐火物試料設置部と、該耐火物試料に取り付けたアコースティックエミッションセンサと、該耐火物試料の上面側から加熱する発熱体と、炉温を上昇下降させる装置とを備えたことを特徴とする耐火物の試験装置。