生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ショ糖脂肪酸エステル粉末の製造法
出願番号:1993127447
年次:2004
IPC分類:7,C07H13/06


特許情報キャッシュ

小山 恭章 真鍋 康雄 飯塚 義明 加曽利 行雄 JP 3567468 特許公報(B2) 20040625 1993127447 19930528 ショ糖脂肪酸エステル粉末の製造法 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 小山 恭章 真鍋 康雄 飯塚 義明 加曽利 行雄 20040922 7 C07H13/06 JP C07H13/06 7 C07H 13/06 特開平1−290691(JP,A) 特開平6−122695(JP,A) 3 1994336490 19941206 12 20000202 中木 亜希 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ショ糖脂肪酸エステル(以下、SEと略記する)粉末の製造法に関する。詳しくは本発明は、SEの塊状体を特定条件下で粉砕してSE粉末を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】SEは優れた界面性能、良好な生分解性及び高い安全性を兼備しているので、従来、食品、化粧品、医薬品、台所用洗剤、飼料、樹脂等の添加剤として、また化学工業においては、例えば重合反応、酸化反応等の、反応系の助材として用いられており、極めて有用な化合物である。【0003】従来SEの製造方法として、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記する)等の有機溶媒中で、アルカリ触媒の存在下、ショ糖と脂肪酸アルキルエステルとを反応させる方法、有機溶媒を用いずに水を使用してショ糖を脂肪酸石鹸と共に溶融混合物とした後、アルカリ触媒の存在下、脂肪酸アルキルエステルを反応させる方法、更にはショ糖と脂肪酸とを特定酵素の存在下に直接反応させるいわゆるバイオ法等が知られている。【0004】これらの方法で製造されたSEは、後処理と精製工程を経て製品化され、最終製品の形態としては、ペ−スト、粉末等がある。ペ−ストはSEの希薄溶液を適宜濃縮して製造することができる。粉末の製造法としては、SEの希薄溶液を濃縮しながら乾燥する噴霧乾燥法などが知られている(特開平2−117691、特開平2−134391、特開平2−40390)。噴霧乾燥法は工程が簡単である利点はあるが、熱源費が大きい上に溶媒の切れが充分でなく、粉末品の固結の原因となり易い。噴霧乾燥法以外の方法として、濃縮されたSEを一旦冷却固化してペレットやフレ−クとし、更に粉砕する方法が考えられるが、SEは固結しやすく、またSE粉末は粉塵爆発の危険性がある等工業的に満足すべきものは未だ提案されていない。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明はSE塊状体を効率的に粉砕して、固結しにくく取扱いの容易なSE粉末を製造する方法を提供するものである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、水分含有量1.5重量%以下のSEの塊状体を粉砕して、SE粉末を製造する方法において、粉砕雰囲気を0〜40℃、露点0℃以下、酸素濃度15容量%以下とし、かつ該雰囲気中に存在するSE粉末濃度を60g/m3以下に維持することを特徴とするSE粉末の製造方法にある。【0007】以下、本発明を詳細に説明する。 本発明におけるSEとしては、通常、炭素数6〜30、好ましくは12〜22の飽和または不飽和脂肪酸(例えばカプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸;リノ−ル酸、オレイン酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノ−ル酸などの不飽和脂肪酸など)と炭素数1〜6の低級アルコ−ル(例えばメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ルなど)とのエステルを、ショ糖とエステル交換反応させることにより製造される。【0008】本発明における塊状体としては、水分含有量1.5重量%以下のものが用いられる。上記反応によってSEは通常、SEの有機溶媒溶液として得られるので、当該有機溶媒を充分除去し、場合によっては溶媒を水と置換した後、充分に水を除去することが必要である。かかる塊状体は水分含有量1.5重量%以下とした溶融状SEを、防湿条件下に、ドラムク−ラ−、ベルトク−ラ−、フレ−カ−等の冷却装置を使用して冷却固化し、更に粗粉砕することにより製造される。水分含有量が1.5重量%以上のSE塊状体の使用は、できた粉末品が粉砕後の工程で固結し易く、製品として好ましくないため、本発明では使用しない。SE塊状体の形状は、板状、フレ−ク状、ペレット状(粒状、円柱状、角状等)等である。大きさは粉砕機の種類、形式により限定され、通常縦横約10cm以下、好ましくは1〜5cmである。厚さは通常10mm以下、好ましくは、1〜5mmである。【0009】本発明におけるSEの粉砕は以下に述べる特定の雰囲気下に実施される。まず雰囲気温度は0〜50℃、好ましくは0〜30℃の範囲から選択される。40℃を越えると粉砕されたSE粉末が固結しやすく、一方あまり低温にしては冷却コストが大きくなり、不利であるので、0〜30℃の範囲が好ましい。温度の制御は粉砕機の種類、構造によっても左右されるが、粉砕による発熱を除去しつつ冷却気流を粉砕系に流通させる態様が好ましい。【0010】SE粉末の固結は、粉砕雰囲気の温度のみならず湿度によっても大きく左右される。本発明においては露点が0℃以下、好ましくは−70〜−10℃の範囲から選択される。実施に際しては、水分含有量が0.1g/m3以下の乾燥気流を砕砕系に流通させることが好ましい。SE粉末が粉塵爆発する可能性を皆無とするために本発明においては、粉砕雰囲気の酸素濃度を15容量%以下、好ましくは0〜13容量%に保持する必要がある。したがって空気はそのままでは使用できないので窒素ガス、炭酸ガス、あるいは空気をそれらで希釈したガスを用いることが好ましい。粉砕雰囲気は密閉系として雰囲気ガスを循環回収して使用することが好ましい。【0011】また、SE粉末の濃度は60g/m3以下、好ましくは0.1〜50g/m3に保する。粉末濃度が大きくなると粉塵爆発のおそれが生ずる一方、小さすぎては粉砕の生産性が上がらないので上記のような範囲から選択される。本発明における粉砕機の種類として、特に限定しないが、通常、ロ−ルクラッシャ−、ロ−ラ−ミル、エッジランナ−、スタンプミル、衝撃式粉砕機、切断ミル、剪断ミル、ロッドミル、自生粉砕機、タ−ボ型粉砕機、ボ−ルミル、ジェット粉砕機、コロイドミルなどが用いられる。好ましくは、衝撃式粉砕機であり、ハンマ−ミル、ケ−ジミル、ピンミル、ディスインテグレ−タ−、ディスメンブレ−タ−などである。最も好ましくは衝撃剪断型粉砕機であり、具体的には、円筒型固定ライナ−と高速で回転する粉砕盤との間隙で衝撃剪断作用によりSE塊状体を粉砕し、粉砕されたSE粉末を、粉砕盤と同軸に回転する分級ロ−タ−の遠心力と吸引される気流の向心力とのバランスによる分級作用で取得するものである。【0012】更に詳しく説明するために、分級機構を内蔵した衝撃剪断粉砕機の部分断面該略図を図1に、またその主要部品を図2、図3、図4に示した。図1に示した様に本発明で使用する粉砕機は、供給部A、粉砕部B、分級部C、及び集塵部Dから構成されている。供給部Aにおいてスクリュ−(6)を経て圧入供給されたSE塊状体は、高速回転するロ−タ−(1)及びロ−タ−(1)に取り付けられたハンマ−(2)と固定ライナ−(7)との間隙で、衝撃剪断作用によって粉砕される。図中、Bは粉砕部を示す。SE粉末は気流に同伴されてガイドリング(9)をのり越え、ロ−タ−(1)と同軸に回転する分級セパレ−トロ−タ−(3)によって与えられる遠心力と吸引される気流の向心力とのバランスによって分級作用を受ける。【0013】図中、Cは分級部を示す。所望の粒径を有するSE粉末は乾燥気流と共に集塵部D方向に吸引され、サイクロンなどで固体、気体分離装置(図示せず)を経て製品として取得される。一方、充分粉砕されなかったSE粗粒は、ガイドリング(9)の下方に落下し、ロ−タ−(1)で遠心力を受けて再び粉砕部Bに運ばれ、再度粉砕され、最終的には集塵部Dを経て製品化される。【0014】上記の様な分級機構を内蔵した粉砕機を用いると、過粉砕なしに目的粒度のものを効率的に得ることができる。また、分級セパレ−タ−の回転数と風量の調整による粒度調整が容易なため粒度分布のシャ−プな製品が得られる。更に、該分級機構を内蔵した粉砕機は、スクリ−ンを使用しないので粉砕室の通気性が良く温度上昇が少なく、SEの様な低融点化合物の粉砕に適している。【0015】図2は、ロ−タ−(1)及びそれにボルトで固定された3個のハンマ−(2)、及びロ−タ−(1)から取り外した1個のハンマ−(2)を示す部分分解斜視図である。ハンマ−(2)は摩耗すれば都度交換して使用することができる。図3は、固定ライナ−(7)の斜視図であり、円筒部の孔はスクリュ−(6)への接続孔である。円筒部の内側には凹凸が設けられており、遠心力により衝突してくるSE塊状体を衝撃粉砕する作用を一層高める役割を果す。【0016】図4は、セパレ−トロ−タ−(3)の斜視図であり、12枚羽根の一例を示すものである。羽根は回転方向に約45°傾斜して設けられている。本発明における分級機つき衝撃剪断型粉砕機のロ−タ−(1)の回転数は通常100〜10000rpmであり、好ましくは2000〜7000rpmである。セパレ−トロ−タ−(3)の回転数は通常100〜5000rpmであり、好ましくは100〜4000rpmである。セパレ−トロ−タ−(3)はロ−タ−(1)と同軸に回転し、その回転数は両者同一でも異なっても良い。セパレ−トロ−タ−(3)の回転数を変化させることによってSE粉末の粒径を容易に調節することができる。【0017】図5は、本発明の好ましい実施態様を示す粉砕フロ−図である。粉砕機(22)に、SE塊状体(21)と、ガス冷却器(28)を経由して乾燥冷却ガスが供給される。粉砕処理されたSE粉末は冷却ガス、及び新たに供給されたガス(26)と共にバックフィルタ−(23)に導入され、分離された固体粉末は篩い(24)で篩分けされる。所望粒径のSE粉末は製品タンク(25)に貯蔵され、篩上の粗大粒は乾燥冷却ガスと共に粉砕機(22)に循環供給され、再度粉砕処理される。バックフィルタ−(23)からの気流はガス循環モ−タ−(27)およびガス冷却器(28)を経由して粉砕機(22)へ循環される。ガス循環路には必要に応じてガス乾燥器(29)を設置することができる。【0018】【実施例】以下に実施例を挙げて詳述するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例によって限定されるものではない。【0019】実施例1図5に示した粉砕フロ−で水分含量0.74重量%の縦約2cm、横約3cm、厚さ3mmの形状をした板状のパルミチン酸SE(三菱化成社製:商品名リョト−シュガ−エステル、銘柄名P−1670相当品)をホソカワミクロン(株)製の衝撃式粉砕機構を有するホソカワミクロンビクトリミル(形式VP−4)を使用して、表−1に示した条件で粉砕した結果、粉砕品の平均粒子径は31μm(表−2に粒度分布を示した)であり、水分含量は0.80重量%であった。【0020】バックフィルタ−内の粉塵濃度を円筒ろ紙による等速吸引捕集法で測定したところ1.06g/m3であった。【0021】【表1】【0022】得られたパルミチン酸SE粉末を内容積70mlの内蓋付きマヨネ−ズ瓶に35gれて栓をし、35℃および40℃の電気恒温庫に入れ、経時的に取り出し固結の発生有無を観察し、固結が発生するまでの時間(以下、固結開始時間と記す)を測定した。その結果、35℃では1560時間経過しても固結は観察されず、40℃では25時間であった。これは夏場の貯蔵時に一時的に35〜40℃に昇温しても容易に固結しないことを示すものである。【0023】実施例2粉砕機の回転数を1750rpmにし、および処理速度を1200kg/Hrにした以外は実施例1と同様に行ったところ、平均粒子径は136μmであり、水分含量は1.12重量%であった。実施例1と同様に40℃で固結試験を行ったところ固結開始時間は8時間であった。【0024】実施例3粉砕機の処理速度を1400kg/Hrにした以外は実施例2と同様に行ったところ、平均粒子径は180μmであり、水分含量は1.12重量%であり、40℃の固結開始時間は8.5時間であった。【0025】【表2】【0026】参考例(粉塵爆発試験)内径70mm、高さ350mmのガラス製円筒(蕪木科学器械工業(株)製)の粉塵爆発試験装置を用い、実施例1で粉砕したSEを分級して63μm以下の粉末状SEを190mg( 粉塵濃度140g/m3)試験装置内に仕込んだ。粉塵吹き上げ圧力3.3Kg/cm2 粉塵吹き上げ時間1.0秒、点火時間0.3秒で、空気を使用して着火した結果、火炎長さはガラス製円筒内全体に広がり、爆発音がした。次いで、上記操作を10回繰り返した結果、10回とも火炎長さはガラス製円筒内全体に広がり、爆発音がした。10回のテストで10回着火したので爆発率は100%であった。【0027】次に、粉塵爆発試験装置への仕込み量を変えて粉塵濃度を変化させ、更に酸素濃度を変化させて、上記同様にして爆発率を調べた。その結果を表−3に示した。実施例1で製造したSE粉砕品を分級することなく(粒度分布は表−2参照)そのまま上記と同様にして粉塵爆発試験を行った結果を表−4に示した。【0028】【表3】【0029】【表4】表−3より空気中での爆発下限界濃度は100g/m3であることを示す。【0030】【表5】【0031】次いで、パルミチン酸SEの変わりにステアリン酸SE(三菱化成社製:商品名リョ−ト−シュガ−エステル、銘柄名S−570およびS−170相当品)を使用した以外は実施例1と同様に粉砕したところ粉砕後のSE微粉末の平均粒子径は32μmおよび28μmであった。次に、粉塵爆発試験装置を使用して空気中での爆発下限界濃度を測定し、その結果を表−5に示した。【0032】【表6】【0033】参考例から判るように62μm以下のSE微粉末は空気中で爆発する可能性がある。爆発の可能性は酸素濃度の低下および/または粉塵濃度の低下と共にゼロとなる。工業的には酸素濃度15容量%以下、SE粉末濃度60g/m3以下で取り扱うことが有利と結論される。【0034】【発明の効果】商品形態として有用な粉末状SEの製造時、粉塵爆発の危険性を回避し、工業的SEの製造方法として必要な安全操業方法を提供するものである。更に、得られたSE粉末は固結しにくく貯蔵安定性に優れるものである。【図面の簡単な説明】【図1】分級機つき衝撃剪断型粉砕機の断面構造図を示す。【図2】図1のロ−タ−(1)およびハンマ−(2)を示す。【図3】図1の固定ライナ−(7)を示す。【図4】図1のセパレ−トロ−タ−(3)を示す。【図5】粉砕フロ−図を示す。【符号の説明】1 ロ−タ− A 供給部2 ハンマ− B 粉砕部3 セパレ−トロ−タ− C 分級部4 ナット D 集塵部5 ラビリンスカバ−6 スクリュ−7 固定ライナ−8 フィ−ドブッシュ9 ガイドリングおよびガイドリング支持具10 ミルカバ−11 フィ−ドラフ21 SE塊状体22 粉砕機23 バッグフィルタ−24 篩い25 製品タンク26 窒素ガス27 ガス循環ヒ−タ28 ガス冷却器29 ガス乾燥器 水分含有量1.5重量%以下のショ糖脂肪酸エステルの塊状体を粉砕して、ショ糖脂肪酸エステル粉末を製造する方法において、粉砕雰囲気を0〜40℃、露点0℃以下、酸素濃度15容量%以下とし、かつ該雰囲気中に存在するショ糖脂肪酸エステル粉末濃度を60g/m3以下に維持することを特徴とするショ糖脂肪酸エステル粉末の製造方法。 乾燥窒素ガス気流下、衝撃式粉砕機を用いて粉砕することを特徴とする請求項1の方法。 ショ糖脂肪酸エステル粉末の平均粒径が5〜200μmである請求項1の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る