タイトル: | 特許公報(B2)_マクロファージ遊走阻止因子の阻害作用に基づく疾患の治療剤 |
出願番号: | 2015527333 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/352,A61P 43/00,A61P 25/04,A61P 25/00 |
田中 啓一 森本 貴美子 JP 5802868 特許公報(B2) 20150904 2015527333 20140717 マクロファージ遊走阻止因子の阻害作用に基づく疾患の治療剤 富山化学工業株式会社 000003698 特許業務法人浅村特許事務所 110000855 田中 啓一 森本 貴美子 JP 2013149690 20130718 20151104 A61K 31/352 20060101AFI20151015BHJP A61P 43/00 20060101ALI20151015BHJP A61P 25/04 20060101ALI20151015BHJP A61P 25/00 20060101ALI20151015BHJP JPA61K31/352A61P43/00 111A61P25/04A61P25/00 A61K 31/00−33/44 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) A61P 25/00 A61P 25/04 A61P 43/00 国際公開第94/023714(WO,A1) A new anti-rheumatic drug, T-614, effectively suppresses the development of autoimmune encephalomyel,Journal of Neuroimmunology,1998年,Vol.89,No.1,2,p.35-42 Synthesis and bradykinin inhibitory activity of novel non-peptide compounds, and evaluation of in vi,Bioorganic & medicinal chemistry,,2010年,Vol. 18, No. 6,pp.2327-36 Pharmacological Studies on 3-Formylamino-7-methylsulfonylamino-6-phenoxy-4H-1-benzopyran-4-one (T-61,J Pharmacobio Dyn,1992年,Vol.15, No.11,Page.641-647 ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎に対する抗リウマチ薬,T‐614の抑制作用,日本免疫学会総会・学術集会記録,1995年,Vol.25,Page.315 Role of IL-1 and potential therapies in multiple sclerosis.,Drug Discovery Today: Therapeutic Strategies,2007年,Vol. 4, No. 1,pp.19-24. 4 JP2014069026 20140717 WO2015008827 20150122 17 20150617 石井 裕美子 本発明は、神経障害性疼痛および多発性硬化症などの神経系疾患の治療または予防などの処置のために、マクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor、以下、MIF)阻害活性を有するベンゾピラン誘導体またはその塩を使用する方法に関する。また、神経系疾患の治療または予防などの処置に有用なベンゾピラン誘導体またはその塩を含有する医薬組成物に関する。 神経障害性疼痛(Neuropathic Pain、以下、NP)は、癌や物理的傷害による末梢および/または中枢神経の障害ならびに機能的障害による慢性疼痛疾患の一種である。これらの痛みは、本来の疼痛の意義である組織障害の警告という目的を失っており、単なる苦痛となっている。患者の生活の質(QOL)は、これらの痛みにより、著しく低下する。 NPの症状は、持続的な自発痛に加え、触刺激を激烈な痛みと感じてしまうアロディニアが主症状である。これらの疼痛は、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs、以下、NSAIDs)に強い抵抗性を示し、麻薬性鎮痛薬であるモルヒネに対しても抵抗性を示す(非特許文献1)。 NPの病態生理や病因は、未だ完全には解明されていないが、近年の基礎研究成果により、以下のことが判明している。(1)NPは、末梢および/または中枢神経の損傷により誘発される。(2)多種のサイトカインやケモカイン類が損傷を受けた神経細胞から放出される。(3)放出されたサイトカイン等により中枢神経系の免疫担当細胞として知られているミクログリアの顕著な活性化が引き起こされる。 NPの治療は、疼痛の緩和、患者の機能的能力の増進および活動性の向上を目的とする。そのために、抗うつ薬および麻薬性鎮痛薬などの投与、神経ブロックならびに鍼灸などが行われている。しかしながら、NPの発症メカニズムに基づいた優れた治療法は、知られておらず、NPの優れた治療法が望まれている。 多発性硬化症(Multiple Sclerosis、以下、MS)は、脳および脊髄などの中枢神経系に病巣ができ、さまざまな神経症状(視覚障害、運動障害、感覚低下、異常感覚、痛み、平衡障害、ふるえ、排尿障害、性機能障害、疲労、感情障害など)を引き起こす疾患である。MSは、病態の進行モードにより、再発と寛解を繰り返す「再発寛解型」および症状が徐々に悪化する「慢性進行型」に分けられる。さらに、慢性進行型は、再発寛解型が後に慢性進行を示す「二次性進行型」および明らかな再発はせずに発症初期から症状が徐々に悪化する「一次性進行型」に分けられる。 MSの病因は、未だ解明されていない。神経組織にT細胞やマクロファージが浸潤し、脳や脊髄の神経細胞の軸索を覆う自己のミエリンを異物とみなして攻撃し、その結果、ミエリンが炎症を起こし、脱髄することによってMSが発症するとの報告がある(非特許文献2)。 MSの治療法は、急性期の炎症の抑制、再発または進行の抑制および症状の緩和の3つに分けられる。 急性期の治療は、グルココルチコイド(ステロイド性抗炎症薬)を用い、ミエリンが壊されている部位の炎症を抑制する。MSは、再発と寛解を繰り返し、完治が難しい疾患である。MSの病因メカニズムに基づく免疫学的な治療法が各種研究されており(非特許文献2)、インターフェロンβや免疫抑制薬が有効と考えられている。しかしながら、十分に有効で安全な治療法は確立されていない。とりわけ、MSの再発時の優れた治療法が望まれている。 MIFは、活性化リンパ球から分泌される多種多様な生物活性を有するサイトカインである。たとえば、免疫系、内分泌系、細胞の分化増殖など多彩な機能を発揮することが知られている。とりわけ、MIFは、全身の炎症と免疫応答に重要な役割を果たしており、マクロファージのランダムな遊走を阻害する遅延型過敏反応にも関連する因子である。また、MIFは、ドパクロム互変異性化酵素(トートメラーゼ)活性を有している(非特許文献3)。 一方で、MIFは、グルタチオンS−トランスフェラーゼと相同性を持ち、解毒作用を示すこと、エンドトキシンショック時に下垂体前葉から分泌されること、低濃度のグルココルチコイドにより誘導され、その免疫抑制作用に拮抗することなどが知られている(非特許文献4)。すなわち、MIFは、グルココルチコイドの活性を阻害し、内因性または治療的に投与されたグルココルチコイドの抗炎症作用に拮抗し、炎症性疾患および炎症状態の原因または増悪因子しても作用する。 さらに、MIFは、T細胞の活性化に必須であり、さまざまな細胞に発現し、特に神経系で強く発現がみられる。 MIFと疾患との関連において、たとえば、MIFの阻害剤は、NPの動物モデルのアロディニア症状を軽減する。一方、ストレスにより増悪する刺激過敏反応を示すマウスモデルは、正常マウスにリコンビナントMIFを注入することで作製できる(非特許文献5)。また、NPの動物モデルである坐骨神経結紮障害によるアロディニアのモデルにおいて、MIFは、同側の脊髄後角で発現が上昇し、MIFの下流のシグナル伝達分子が活性化する(非特許文献6)。さらに、MIFノックアウトマウスでは坐骨神経結紮障害によるアロディニアが消失する(非特許文献5、6)。以上より、MIFは、NPの症状発現に必須であると考えられている。 一方、MS患者では、再発時に脳脊髄液中のMIF濃度が、寛解時に比べ、有意に高くなる(非特許文献7)。また、MSのモデル動物であるマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis、以下、EAE)は、MIF遺伝子のノックアウトにより再発を予防できる(非特許文献8)。これらの事実より、MIFは、NPおよびMSの形成に極めて重要な役割を担っていることは、明らかである。 MSのモデル動物であるEAEには、急性期の初発時発症(monophasic)と慢性的な再発寛解型(relapsing/remitting)を再現するモデルがあり、一般的に前者はラット、後者はマウスでモデルが構築されている。 たとえば、免疫抑制薬のシクロフォスファミドは、ラットの急性期のEAE発症を抑制するにもかかわらず、マウスの再発型や慢性進行型のEAEには無効であることが報告されている(非特許文献9)。 また、MS治療薬のナタリズマブと同等のラットまたはマウス型の抗α4 インテグリン抗体は、ラットの急性期のEAEで発症遅延と疾患の重症度の低減がみられ、マウスのEAEへの予防投与でEAE発症を抑制したものの、治療投与では症状が悪化したことが報告されている(非特許文献10、11)。 ベンゾピラン誘導体は、抗関節炎作用(特許文献1)、インターロイキン−1βおよびインターロイキン−6などの炎症性サイトカイン産生の抑制作用ならびに免疫調節作用を示し(非特許文献12、13、14)、関節リウマチおよびその他の関節炎ならびに自己免疫疾患の治療に有用であることが知られている(特許文献2)。また、ラットの急性期のEAEに有効であることが知られている(非特許文献15)。 しかしながら、上記、ベンゾピラン誘導体がMIFに結合し、その生物活性を阻害することは、全く知られていない。 また、上記、ベンゾピラン誘導体のNPに対する有効性は、全く知られておらず、再発時の再発寛解型または二次性進行型MSに対する有効性についても全く知られてない。特開平02−049778号公報国際公開第WO94/23714号パンフレットランセット(Lancet)、1999年、第353巻、第1959-1964頁ザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N. Engl. J. Med.)、2000年、第343巻、938-952頁ネイチャー・レビューズ・ドラッグ・ディスカバリー(Nat. Rev. Drug Discov.)、2006年、第5巻、第399-410頁モレキュラー・メディシン (Molecular Medicine)、1996年、第2巻、第143-149頁エクスペリメンタル・ニューロロジー(Exp. Neurol.)、2012年、第236巻、第351-362頁アネスセジオロジー(Anesthesiology)、2011年、第114巻、第643-659頁ジャーナル・オブ・ザ・ニューロロジカル・サイエンシズ(J. Neurol. Sci.)、2000年、第179巻、第127-131頁ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、2005年、第175巻、第5611-5614頁クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・イムノロジー(Clin. Exp. Immunol.)、2009年、第159巻、第159-168頁ザ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティックス(J. Pharmacol. Exp. Ther.)、2003年、第305巻、第1150-62頁ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、2001年、第107巻、第995-1006頁ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(Chem. Pharm. Bull.)、2000年、第48巻、第131-139頁ジャーナル・オブ・ファーマコバイオダイナミクス(J. Pharmacobiodyn.)、1992年、第15巻、第649-655頁インターナショナル・ジャーナル・オブ・イムノセラピー(Int. J. Immunotherapy)、1993年、第9巻、第69-78頁ジャーナル・オブ・ニューロイムノロジー(J. Neuroimmunol.)、1998年、第89巻、第35-42頁 NPおよびMSなどの疾患の治療または予防などの処置に有用な医薬品が望まれており、その病因として重要な因子であるMIFを阻害する医薬組成物が望まれている。 特に、NPおよび再発型のMSなどの治療または予防などの処置に有用な医薬組成物が望まれている。 このような状況下において、本発明者らは、一般式[1]「式中、R1は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を;R2およびR3の一方は、水素原子を;R2およびR3の他方は、水素原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、置換されていてもよいカルバモイル基または置換されていてもよいアリール基を示す。」で表されるベンゾピラン誘導体またはその塩が、MIFと結合し、MIF阻害作用を示し、MIFを阻害することで有効性を示す疾患の治療または予防などの処置に有用であることを見いだし、本発明を完成した。 一般式[1]で表されるベンゾピラン誘導体またはその塩は、MIF阻害作用を示し、NPならびに再発時の再発寛解型および二次性進行型MSなどのMIFを阻害することで有効性を示す疾患の治療または予防などの処置に有用である。 以下、本発明について詳述する。 本明細書において各用語は、特にことわらない限り、以下の意味を有する。 ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。 C1−6アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキル基を意味する。 C1−6アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシ基などの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキルオキシ基を意味する。 C2−12アルカノイル基とは、アセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリルおよびピバロイル基などの直鎖状または分枝鎖状のC2−12アルカノイル基を意味する。 アロイル基とは、ベンゾイルまたはナフトイル基を意味する。 複素環式カルボニル基とは、ニコチノイル、テノイル、ピロリジノカルボニルまたはフロイル基を意味する。 (α−置換)アミノアセチル基とは、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのアミノ酸が挙げられる。)から誘導されるN末端が保護されていてもよい(α−置換)アミノアセチル基を意味する。 アシル基とは、ホルミル基、スクシニル基、グルタリル基、マレオイル基、フタロイル基、C2−12アルカノイル基、アロイル基、複素環式カルボニル基または(α−置換)アミノアセチル基を意味する。 アシルアミノ基とは、アシル基で置換されたアミノ基を意味する。 アリール基とは、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニルまたはテトラヒドロナフチル基などを意味する。 R1のC1−6アルキル基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。 R2およびR3のアミノ基またはカルバモイル基は、1つ以上のC1−6アルキル基で置換されていてもよい。 R2およびR3のアシルアミノ基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。 R2およびR3のアリール基は、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基および1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい。 本発明の一般式[1]のベンゾピラン誘導体として、好ましいものは、以下の化合物が挙げられる。 R1が、置換されていてもよいC1−6アルキル基;R2およびR3の一方が、水素原子;R2およびR3の他方が、置換されていてもよいアシルアミノ基である化合物が好ましい。 N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミド、N−(3−アミノ−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミド、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]アセトアミド、N−(4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミド、7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−2−カルボキサミド、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−2−イル]アセトアミド、7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−カルボキサミド、N−[7−[(エチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミドおよびN−(4−オキソ−6−フェノキシ−2−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミドが好ましく、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミドがより好ましい。 本発明に使用される一般式[1]のベンゾピラン誘導体は、自体公知の方法を組み合わせることにより製造されるが、たとえば、特許文献1に記載の方法により製造することができる。 一般式[1]のベンゾピラン誘導体の塩としては、たとえば、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−ベンジル−β−フェネチルアミン、1−エフェナミンおよびN,N'−ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩などが挙げられる。 上記した塩の中で、好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられる。 MIFは、細菌の互変異性化酵素(トートメラーゼ)と高い相同性を持ち、ドパクロムの互変異性反応を触媒する(モレキュラー・メディシン(Molecular Medicine)、1996年、第2巻、第143-149頁)。そのため、ドパクロム誘導体を基質としたトートメラーゼ反応を用いて、MIFの生物活性を評価することができる。 本発明の一般式[1]のベンゾピラン誘導体またはその塩は、MIFのトートメラーゼ活性阻害作用(すなわち、MIF阻害作用)を有し、一般式[1]のベンゾピラン誘導体またはその塩を含有することを特徴とする薬剤は、MIFを阻害することで有効性を示す疾患の治療または予防などの処置に有用である。 MIFを阻害することで有効性を示す疾患としては、NPならびに再発時の再発寛解型および二次性進行型MSなどが挙げられ、好ましくは、NPが挙げられる。 NPとしては、線維筋痛症、帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、脊髄損傷後疼痛、脳卒中後疼痛、慢性疼痛、複合性局所疼痛症候群、NSAIDsが効果不十分な腰痛、坐骨神経痛、骨盤痛、三叉神経痛、NSAIDsが効果不十分な変形性関節症痛、求心路遮断性疼痛症候群、筋炎に伴う疼痛、筋膜炎に伴う疼痛および血清反応陰性関節炎に伴う疼痛などが挙げられる。求心路遮断性疼痛症候群としては、視床痛、MSによる疼痛、引き抜き損傷後疼痛、幻肢痛および手術後疼痛症候群などが挙げられる。血清反応陰性関節炎に伴う疼痛としては、軸関節障害疼痛、強直性脊椎炎疼痛、仙腸関節障害疼痛および血清反応陰性脊椎炎疼痛などが挙げられる。 好ましくは、線維筋痛症、帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、NSAIDsが効果不十分な腰痛、NSAIDsが効果不十分な変形性関節症痛、筋炎に伴う疼痛、筋膜炎に伴う疼痛および血清反応陰性関節炎に伴う疼痛が挙げられ、より好ましくは、帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、NSAIDsが効果不十分な腰痛、NSAIDsが効果不十分な変形性関節症痛、筋炎に伴う疼痛、筋膜炎に伴う疼痛および血清反応陰性関節炎に伴う疼痛が挙げられる。 再発寛解型MSは、急性に出現した神経症状が極期に達した後に数週間または数ヶ月かけて回復寛解し、その後神経症状が再現または悪化する再発を特徴とする。再発の後に寛解期が続く。数ヶ月または数年ごとに再発し、緩徐的または漸進的に回復することを繰り返す。 二次性進行型MSは、初期に再発寛解型MSを有した患者が、再発と寛解を繰り返しながら徐々に寛解時の状態が悪化していくことを特徴とする。 再発時の再発寛解型または二次性進行型MSの症状としては、視力低下、運動麻痺、感覚障害、複視、排尿障害および構音障害などが挙げられる。 本発明化合物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、固結防止剤、滑沢剤、担体、溶剤、増量剤、等張化剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、被覆剤、吸収促進剤、ゲル化促進剤、凝固促進剤、光安定化剤、保存剤、防湿剤、乳化安定化剤、懸濁安定化剤、分散安定化剤、着色防止剤、脱酸素剤、酸化防止剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、起泡剤、消泡剤、無痛化剤、帯電防止剤、希釈剤、pH緩衝剤およびpH調節剤などの各種医薬品添加物を配合して、経口剤(錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤およびシロップ剤など)、注射剤および点眼剤などの医薬品製剤とすることができる。 上記各種薬剤は、通常の方法により製剤化される。 錠剤、散剤および顆粒剤などの経口用固形製剤は、たとえば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、無水第二リン酸カルシウム、部分アルファ化デンプン、コーンスターチおよびアルギン酸などの賦形剤;単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸、かんてん末、デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;ステアリルアルコール、ステアリン酸、カカオバターおよび水素添加油などの崩壊抑制剤;ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、タルクおよび無水ケイ酸などの固結防止剤;カルナバロウ、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、硬化油、硬化植物油誘導体、胡麻油、サラシミツロウ、酸化チタン、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、リン酸水素カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリエチレングリコールなどの滑沢剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、尿素および酵素などの吸収促進剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびコロイド状ケイ酸などの担体などの医薬品添加物を用い、常法に従い調製すればよい。 さらに錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、たとえば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠および水溶性フィルムコーティング錠とすることができる。 カプセル剤は、たとえば、上記で例示した各種の医薬品添加物を用い、硬質ゼラチンカプセルおよび軟質カプセルなどに充填して調製される。 また、溶剤、増量剤、等張化剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤および増粘剤などの医薬品添加物を用い、常法に従い調製して、水性または油性の懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシル剤とすることもできる。 注射剤は、たとえば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸および水酸化ナトリウムなどの希釈剤;クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムなどのpH緩衝剤およびpH調節剤;ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸およびチオ乳酸などの乳化安定化剤、懸濁安定化剤および分散安定化剤;食塩、ブドウ糖、マンニトールおよびグリセリンなどの等張化剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、プロピレングリコール、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、ウレタン、エタノールアミンおよびグリセリンなどの溶解補助剤;グルコン酸カルシウム、クロロブタノール、ブドウ糖およびベンジルアルコールなどの無痛化剤;ならびに、局所麻酔剤などの医薬品添加物を用い、常法に従い調製すればよい。 点眼剤は、たとえば、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム、フェネチルアルコール、パラオキシ安息香酸メチルおよび塩化ベンゼトニウムなどの保存剤;ホウ砂、ホウ酸およびリン酸二水素カリウムなどのpH緩衝剤およびpH調節剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびコンドロイチン硫酸などの増粘剤;ポリソルベート80およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などの溶解補助剤;エデト酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの乳化安定化剤、懸濁安定化剤および分散安定化剤;ならびに、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよびグリセリンなどの等張化剤を適宜配合し、常法に従い調製すればよい。 上記製剤の投与方法は、特に限定されないが、製剤の形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の程度に応じて適宜決定される。 本発明製剤の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の形態、その他の条件などに応じて適宜選択されるが、通常、成人に対して1日0.1〜500mg、好ましくは、1日10〜200mgを1回から数回に分割して投与すればよい。 次に、本発明について試験例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 各試験例において各略号は、以下の意味を有する。MES:2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸DMF:N,N−ジメチルホルムアミドEDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩EDTA:エチレンジアミン四酢酸NHS:N−ヒドロキシスクシンイミドPLP:プロテオリピッド蛋白(Proteolipid Protein)TBST:ツイン20含有トリス緩衝生理食塩液 被験物質として、以下の化合物を使用した。試験例1 (化合物AとMIFとの結合の確認) 被験物質として、化合物A(N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミド)を使用した。(1)細胞抽出液の調製 1%牛胎児血清および50μmol/Lの2−メルカプトエタノールを含むRPMI1640培地中でTHP−1細胞を約6時間培養した後、最終濃度1μg/mLとなるようにリポポリサッカライド(E.coli0127:B8、シグマ・アルドリッチ社)を添加し、約30分間培養した。回収したTHP−1細胞をリン酸緩衝生理食塩液で洗浄した後、約2倍容の細胞溶解緩衝液(20mmol/L Tris、150mmol/L塩化ナトリウム、1mmol/L塩化マグネシウム、0.1%NP-40、1mmol/Lジチオスレイトール、0.1%TritonX-100、pH7.4)を加え、約30分間、時々攪拌しながら氷上に置いた。得られた混合物を遠心分離(20000×g、4℃、8分)し、回収した上清を細胞抽出液とした。BCAタンパクアッセイ試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用い、説明書に従って細胞抽出液中のタンパク質濃度を測定した。(2)4−アミノ−N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ブタンアミド塩酸塩の合成 N−(3−アミノ−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミド500mgのDMF5.0mL溶液に4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)酪酸293mgおよびEDC304mgを加え、室温で1時間30分間攪拌した。反応混合物にEDC111mgを加え、室温で3時間30分間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルおよび10%クエン酸水溶液を加え、室温で30分間攪拌後、固形物をろ取した。得られた固形物に、DMF、酢酸エチルおよび10%クエン酸水溶液を加え、室温で1時間攪拌した。固形物をろ取し、淡黄色固体のtert−ブチル=[4−[[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]アミノ]−4−オキソブチル]カルバマート397mgを得た。得られたtert−ブチル=[4−[[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]アミノ]−4−オキソブチル]カルバマート300mgを塩化メチレン3.0mLに懸濁し、氷冷下、トリフルオロ酢酸0.60mLを加え、室温で40分間攪拌後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物に酢酸エチル3mLおよび4mol/L塩化水素/酢酸エチル溶液0.25mLを加え、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物に酢酸エチル5.0mLおよび4mol/L塩化水素/酢酸エチル溶液0.50mLを加え、室温で2時間攪拌した。固形物をろ取し、淡黄色固体の4−アミノ−N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ブタンアミド塩酸塩232mgを得た。(3)ビーズの調製 Dynabeads M-270 Carboxylic Acid(Life Technologies社)への4−アミノ−N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ブタンアミド塩酸塩の固定化は、通常の方法で行った。 すなわち、ビーズ(Dynabeads M-270 Carboxylic Acid、Life Technologies社)約30mgのCOOH末端をNHSエステル化した後に、DMF0.010mLおよび0.01mol/L 4−アミノ−N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ブタンアミド塩酸塩/DMF溶液0.90mLおよび1mol/L N,N−ジイソプロピルエチルアミン/DMF溶液0.090mLを加え、室温で70分間振とうした。ビーズをDMF0.5mLで2回洗浄後、DMF0.94mLおよび2−アミノエタノール0.060mLを加え、室温で2時間振とうした。ビーズをDMF0.5mLで2回洗浄後、0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH6)1mLで4回洗浄し、化合物Aがリンカーを介して結合したビーズ(以下、化合物ビーズ)を得た。また、4−アミノ−N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ブタンアミド塩酸塩を加えずに同様に反応させたものを対照ビーズとした。それぞれ、0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH6)1mLに懸濁させて使用時まで冷蔵庫で保存した。使用直前にそれぞれのビーズの一部を分取して細胞溶解緩衝液で3回洗浄した。(4)細胞抽出液とビーズとの反応 タンパク質濃度2mg/mLに調製した細胞抽出液0.1mLおよび化合物ビーズもしくは対照ビーズ約0.9mgとを十分に混和させながら4℃で一晩反応させた。磁石でビーズと分離させて回収した上清をフロースルー画分とした。さらにビーズを細胞溶解緩衝液ですすいだ後、0.5mmol/Lの化合物Aを含む40μLの細胞溶解緩衝液と十分に混和させながら4℃で約8時間反応させた。磁石でビーズを分離した上清を化合物A溶出画分とした。さらにビーズを細胞溶解緩衝液で軽くすすいだ後、15μLの4倍に希釈したSDS−PAGE用サンプルバッファー(2ME+)(和光純薬工業)と混和し、熱処理(約95℃、5分間)を行った後、磁石でビーズと分離させて回収した上清を熱溶出画分とした。(5)ウェスタンブロットによるMIFの検出 ウェスタンブロットは、常法に従って実施した。 上記(4)のフロースルー画分および化合物A溶出画分の一部をそれぞれSDS−PAGE用サンプルバッファー(2ME+)と混和して熱処理を行ったものならびに上記の熱溶出画分をSDS−PAGE電気泳動に供した。30〜50mAで約80分間電気泳動したSDS−PAGEゲル(SuperSep Ace 15%、和光純薬工業)をPVDFメンブレン(Hybond-P、GEヘルスケア・ジャパン)と重ね、100mAで約60分間電気泳動し、ゲル中のタンパク質をPVDFメンブレンに転写させた。メンブレンを5%スキムミルクを含むTBST液(10mmol/L Tris、100mmol/L塩化ナトリウム、0.1%Tween-20、pH7.5)に浸して室温で約1時間振盪した。その後、1/50000容の抗MIF抗体(アブカム社)と5%スキムミルクを含むTBST液に浸してゆるやかに混和しながら4℃で一晩反応させた。メンブレンをTBST液で軽く3回すすいだ後、1/5000容のHRP修飾抗ヤギIgG抗体(SantaCruz社)および5%スキムミルクを含むTBST液に浸してゆるやかに混和しながら室温で1時間反応させた。メンブレンをTBST液で軽く3回すすいだ後、ECLprime試薬(GEヘルスケア・ジャパン)を用い、説明書に従ってMIFを検出した。 メンブレン上のMIFと抗体との結合反応物を化学発光により検出したメンブレンの写真を図1に示す。 ゲルの各レーンに泳動させた画分は以下の通りである。Lane1:化合物ビーズのフロースルー画分Lane2:化合物ビーズの化合物A溶出画分Lane3:化合物ビーズの熱溶出画分Lane4:組み換え合成品MIF(アブカム社)Lane5:対照ビーズのフロースルー画分Lane6:対照ビーズの化合物A溶出画分Lane7:対照ビーズの熱溶出画分 化合物ビーズの化合物A溶出画分には、化合物ビーズへの結合能を有し、かつ、過剰量の化合物Aの存在下で化合物ビーズから遊離するタンパク質が含まれる。同画分(Lane2)に検出されたバンドは、抗MIF抗体と結合し、かつ、組み換え合成品MIFと同じ分子量の位置にあることより、MIFであることが示された。 すなわち、MIFは、化合物ビーズへの結合能を有することが示された。 一方、対照ビーズの化合物A溶出画分および対照ビーズの熱溶出画分には、対照ビーズへの結合能を有するタンパク質が含まれる。これらの画分(Lane6および7)にはMIFが検出されなかったことから、MIFは対照ビーズへの結合能を有していないことが示された。 以上より、MIFと化合物Aとは特異的に結合することが示された。試験例2 (MIF阻害作用の確認) 被験物質として、化合物A〜Iを使用した。 MIFのトートメラーゼ活性に対する阻害作用は、ヘアリー(Healy)らの方法(キャンサー・エピデミオロジー・バイオマーカーズ・アンド・プリベンション(Cancer Epidemiology Biomarkers and Prevention)、2011年、第20巻、第1516-1523頁)を参考にして評価した。 この方法は、有色を呈するL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンメチルエステル(L−ドパクロムメチルエステル)から、無色である5,6−ヒドロキシインドール−2−カルボン酸メチルエステルへの互変異性反応を475nmの吸光度変化で測定する方法である。 酵素源としては、アブカム社製の組み換えMIFまたはルベツスキー(Lubetsky)らの方法(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)、2002年、第277巻、第24976-24982頁)を参考にして作製・精製したMIFを用いた。以下にMIFの精製方法を示す。 大腸菌BL21 Star(DE3)株(Life Technologies社)に、MIFの全長遺伝子配列を組み込んだpET15bベクター(メルク社)を導入し、大腸菌の大量培養を行った。培養液の吸光度(600nm)が0.5〜0.8を示した時点で、最終濃度0.1mmol/Lとなるようにイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(和光純薬工業)を加え、タンパク質の発現誘導を4時間行った。20mmol/L Tris(和光純薬工業)、20mmol/L塩化ナトリウム(和光純薬工業)および1mmol/Lジチオスレイトール(和光純薬工業)を含む緩衝液(pH7.5)で大腸菌を再懸濁し、超音波破砕を行い、15000rpmで10分間遠心分離した。得られた上清を0.20μmのフィルターで濾過した後、HiTrap Q HPおよびHiTrap SP HPカラム(GEヘルスケア・ジャパン)に通し、フロースルー画分を5mLずつ分取した。分取した各溶液10μLを5〜20%ポリアクリルアミドゲル(和光純薬工業)を用いて電気泳動を行い、クーマシーブリリアントブルー試薬(バイオラッド社)を用いて全タンパクを染色した。その結果より、多くのMIFを含み、かつ、他のタンパク質が少ない画分を選択し、精製MIFとした。BCAタンパクアッセイ試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いてタンパク質としてのMIF濃度を測定した。 化合物のMIFトートメラーゼ活性阻害効果の測定は、以下の手順で実施した。 最終濃度10〜50nmol/LのMIFおよび最終濃度30μmol/Lの被験物質、または対照として最終濃度0.5%のジメチルスルホキシド(和光純薬工業)を、50mmol/L Bis−Tris(同仁化学研究所)および1mmol/L EDTA(同仁化学研究所)を混合した緩衝液(pH6.2)に加え、室温で15分間反応させ、反応液1を得た。 一方、1/20容の12 mmol/L L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンメチルエステル(シグマ・アルドリッチ社)および1/20容の24mmol/L 過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業)を、反応液1で使用した緩衝液と同じ組成の緩衝液中に加え、反応させ、反応液2を得た。 次に、反応液1および反応液2を混合し、475nmの吸光度を経時的に測定した。 測定開始約1分後から約5分後までの値から時間あたりの吸光度変化量を求め、対照の変化量を100%として、化合物添加によるトートメラーゼ反応の阻害率を算出した。 結果を表2に示す。表2において、トートメラーゼ反応阻害率は、50%未満を−、50%以上75%未満を+、75%以上を++で表す。 実施例化合物は、いずれもMIFが持つトートメラーゼ活性を阻害した。 上記の結果より、一般式[1]の化合物またはその塩は、MIF阻害作用を示し、MIF阻害剤として有用であることが示された。試験例3(慢性絞扼神経損傷モデルラットにおける化合物Aの効果) ベネット(Bennett)らの方法(ペイン(Pain)、1988年、第33巻、第87-107頁)を参考に行った。 被験物質として化合物Aを、比較対照薬としてNSAIDsであるセレコキシブを使用した。化合物Aの投与量は、30mg/kgとした(化合物A群)。セレコキシブの投与量は、30mg/kgとした(セレコキシブ群)。対照群には、投与液の溶媒である0.5%メチルセルロース水溶液を投与した。 ソムノペンチル(共立製薬製、約52mg/kg、腹腔内投与)の麻酔下に、Sprague-Dawley系雄性ラット(7週齢)の左坐骨神経に神経絞扼術を施した。すなわち、左大腿部を切開し、坐骨神経を周りの組織から剥離した後、4−0縫合絹糸(Eticon製、サージカルシルク)で4箇所、約1mm間隔でくびれができる程度にゆるく結紮した。筋層および皮膚をそれぞれ縫合して術部を消毒した。投与液溶媒、被験物質または比較対照薬を、術後16日目から1日1回、14日間連日経口投与した。 投与開始日から1週間に1度、左後肢足底の疼痛感覚(機械刺激性アロディニア)をvon Frey試験で評価した。すなわち、さまざまな屈曲力を持つvon Freyフィラメント(Semmes- Weinstein Von Frey Anesthesiometer(Danmic Global, LLC製))を、屈曲力の弱いものから順に左後肢の足底部表面に垂直に押し当て、ラットが回避応答を示したフィラメントの屈曲力を疼痛閾値とした。 疼痛感覚評価は、疼痛閾値の平均値で表した。結果を表3に示す。 化合物A群の疼痛閾値は、投与開始から14日後(術後30日目)で13.5gに上昇し、化合物Aは対照群に比べて、機械刺激性アロディニア症状を抑制した。 一方、NSAIDsであるセレコキシブ(30mg/kg)の投与は、機械刺激性アロディニア症状を抑制しなかった。 上記の結果より、化合物Aは、NSAIDsとは異なる作用により、機械刺激性アロディニア症状を抑制することが示された。試験例4(マウスの慢性再発性EAEモデルに対する作用) 被験物質として化合物Aを、比較対照薬としてサラゾスルファピリジン(salazosulfapyridine、以下、SASP)を選択した。化合物Aの投与量は、30mg/kgとした(化合物A群)。SASPの投与量は、300mg/kgとした(SASP群)。対照群および誘発処置をしない正常群には、投与液の溶媒である0.5%メチルセルロース水溶液を投与した。 慢性再発性EAEは、SJL/J系雌性マウスにPLPの部分ペプチドを感作して誘発した。すなわち、PLPの139〜151残基に相当するペプチドを1mg/mLで溶解したリン酸緩衝生理食塩液および結核菌M. Tuberculosis H37Ra株の死菌4mg/mLを加えたフロイント不完全アジュバントを等容量混和してエマルジョンを作製した。エマルジョンを背部の4箇所に皮内注射(マウス当たりPLP50μg)して感作し、さらに、百日咳毒素を感作当日と2日後の計2回、マウス当たりそれぞれ150ngを腹腔内注射した。なお、投与液溶媒、被験物質または比較対照薬を感作当日より1日1回、44日間連日経口投与した。 本モデルは、感作後14〜16日目をピークに麻痺を発症し、症状は、一旦軽減するが、38日目をピークに再発した。 症状は、ウェーバー(Weaver)らの報告(ファシーブ・ジャーナル(FASEB Journal)、2005年、第19巻、第1668頁)に準じて評価した。すなわち、四肢および尾の緊張度をそれぞれ0〜3の4段階および0〜2の3段階にスコア評価し、その合計値を症状スコアとした(最大スコア14)。 初発時(感作後15日目)および再発時(感作後38日目)の各群の発症率(発症した例数/使用した例数)および平均の症状スコアを表4に示す。 化合物A群は、初発時、再発時とも発症率が低く、症状スコアを明確に低下させた。 一方、SASP群は、発症率および症状スコアを低下させなかった。 上記の結果より、化合物Aは、慢性再発性EAEの症状の発現を抑制した。その効果は、同じ薬効分類の免疫調節薬に属するSASPとは明らかに異なるものである。 以上の結果より、一般式[1]の化合物またはその塩は、MIF阻害剤として有用であり、NPならびに再発時の再発寛解型および二次性進行型MSなどのMIFを阻害することで有効性を示す疾患の治療または予防などの処置に有用である。メンブレン上のMIFと抗体との結合反応物を化学発光により検出したメンブレンの写真である。 一般式[1]で表されるベンゾピラン誘導体またはその塩は、MIFと結合し、MIF阻害作用を示し、MIFを阻害することで有効性を示す疾患の治療または予防などの処置に有用である。 一般式「式中、R1は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を;R2およびR3の一方は、水素原子を;R2およびR3の他方は、水素原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、置換されていてもよいカルバモイル基または置換されていてもよいアリール基を示す。」で表されるベンゾピラン誘導体またはその塩を含有することを特徴とする再発時の再発寛解型または二次性進行型多発性硬化症処置剤。 R2およびR3の一方が、水素原子;R2およびR3の他方が、置換されていてもよいアシルアミノ基である請求項1に記載の再発時の再発寛解型または二次性進行型多発性硬化症処置剤。 ベンゾピラン誘導体が、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミド、N−(3−アミノ−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミド、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]アセトアミド、N−(4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミド、7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−2−カルボキサミド、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−2−イル]アセトアミド、7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−カルボキサミド、N−[7−[(エチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミドまたはN−(4−オキソ−6−フェノキシ−2−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−7−イル)メタンスルホンアミドである請求項1に記載の再発時の再発寛解型または二次性進行型多発性硬化症処置剤。 ベンゾピラン誘導体が、N−[7−[(メチルスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミドである請求項1に記載の再発時の再発寛解型または二次性進行型多発性硬化症処置剤。