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タイトル:公表特許公報(A)_2−エチルヘキサノールからイソノナン酸を製造する方法
出願番号:2015520835
年次:2015
IPC分類:C07C 51/235,C07C 53/126


特許情報キャッシュ

フライ・グイード・デー アイゼナッハー・マティアス コックリック・クリスティーナ シュトルッツ・ハインツ JP 2015522044 公表特許公報(A) 20150803 2015520835 20130618 2−エチルヘキサノールからイソノナン酸を製造する方法 オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング 507254975 江崎 光史 100069556 鍛冶澤 實 100111486 上西 克礼 100139527 虎山 一郎 100164781 フライ・グイード・デー アイゼナッハー・マティアス コックリック・クリスティーナ シュトルッツ・ハインツ DE 102012013969.1 20120713 C07C 51/235 20060101AFI20150707BHJP C07C 53/126 20060101ALI20150707BHJP JPC07C51/235C07C53/126 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN EP2013001798 20130618 WO2014008975 20140116 25 20150304 4H006 4H006AA01 4H006AA02 4H006AC46 4H006BC14 4H006BE10 4H006BE30 4H006BS10 本発明は、2−エチルヘキサノールから出発したイソノナン酸、2−エチルヘキサノールを脱水し、得られたオクテンをヒドロホルミル化し及びその後に酸化して対応するイソノナン酸とすることによるそれの製造方法、並びにそうして製造されたこのイソノナン酸から出発したビニルイソノナノエート、グリシジルエステル、カルボン酸エステル、イソノナン酸ハロゲン化物、イソノナン酸無水物及びイソノナン酸アミドの製造方法に関する。 構造分枝したC9モノカルボン酸からなる混合物であるイソノナン酸は、有機化学工業において重要な中間生成物であり、これは、様々な用途分野のための多くの二次生成物へと加工される。例えば、それの塩は乾燥促進剤としてまたは塗料のための乾燥剤として使用され、そしてエチレングリコールとのそのエステルは、PVCまたはポリビニルブチラールフィルムのための可塑剤として並びにプラスチックの水性分散液中の造膜助剤として役立つ(Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,p.145(非特許文献1);DE102009048771A1(特許文献1))。イソノナン酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたはジ−ペンタエリトリトールなどのポリオールとのエステル化は、冷凍機の稼働に使用される潤滑剤エステルを与える。この際、イソノナン酸は、しばしば、2−メチル酪酸、n−ペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸またはn−オクタン酸などの他のC4〜C12−モノカルボン酸との混合物中でエステル化される。(EP1281701A1(特許文献2);EP1199300A2(特許文献3);EP0903335A1(特許文献4);WO90/12849A1(特許文献5);EP0475751A1(特許文献6)) 更に、イソノナン酸は対応するビニルエステルへ変換され、これは、コモノマーとして、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロライド、ポリスチレンまたはポリアクリル酸エステルなどのポリマーの性質を変性する。対応するコポリマーはペイントへと加工でき、これは、向上した耐加水分解性及びより少ない湿分吸収性を特色とする。ビニルエステルは、イソノナン酸とアセチレンとを、好ましくは亜鉛塩の存在下で200〜230℃の温度において製造できるか(G.Huebner,Fette,Seifen,Anstrichmittel 68,290(1966)(非特許文献2);Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124(非特許文献3);EP1057525A2(特許文献7))、または他のカルボン酸のビニルエステル、多くの場合に酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルとの所謂ビニル交換反応によって、遷移金属触媒の存在下に製造できる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124(非特許文献4);Adelmann,Journal Organic Chemistry,1949,14,pp.1057−1077(非特許文献5);DE19908320A1(特許文献8),EP0497340A2(特許文献9),WO2011/139360A1(特許文献10),WO2011/139361A1(特許文献11))。 イソノナン酸の工業的な製造のための原料としては、ナフサの水蒸気分解からのC4カットが使用される。C2及びC3分解生成物と比べたそれの入手可能性は、水蒸気分解の条件によって制御され、そして市場の条件に依存する。 このC4分解生成物からは、先ず1,3−ブタジエンが抽出によってまたはn−ブテン類への選択的水素化によって除去される。ラフィネートIとも称される得られたC4ラフィネートは、主として、不飽和ブテン類であるイソブテン、1−ブテン及び2−ブテンを並びに水素化生成物であるn−ブタン及びイソブタンを含む。ラフィネートIからは、次の段階においてイソブテンが除去され、そして得られたイソブテン不含のC4混合物はラフィネートIIと称される。 イソブテン分離のためには、工業的生産では様々な方法が用いられ、これらの方法では、ラフィネートI中のイソブテンの比較的に非常に高い反応性が利用される。第三ブタノールへの可逆的プロトン触媒水素付加法またはメチル−第三ブチルエーテルへのメタノール付加法が知られている。これらの付加生成物からは、逆開裂(Rueckspaltung)によって再びイソブテンが回収できる(Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,pp.74−79(非特許文献6))。 同様に、ブタジエン不含のC4ラフィネートを、高められた温度及び加圧下に、懸濁した酸性イオン交換体と接触させることができる。イソブテンは、ジ−イソブテン及びトリ−イソブテンへ、並びに少量でより高級のオリゴマーへとオリゴマー化する。これらのオリゴマーは、未反応C4化合物から分離される。このオリゴマーからは、次いでジ−イソブテンまたはトリ−イソブテンを蒸留によって純粋な形で得ることができる。n−ブテン類とイソブテンとの二量化によって、コダイマーが少量形成する(Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,p.77(非特許文献7);Hydrocarbon Processing,April 1973,pp.171−173(非特許文献8))。 逆開裂によって得られた純粋なイソブテンのオリゴマー化によって製造されたかまたはブタジエン不含のラフィネートIの仕上げ処理の間に得られたジ−イソブテンは、次に、C原子一個分長鎖化されたC9誘導体へと変換される。ヒドロホルミル化またはオキソ反応が工業的に操業されており、それではジ−イソブテンは一酸化炭素及び水素と共に、ロジウム触媒またはコバルト触媒の存在下に対応するアルデヒドへと転化される。ジ−イソブテンは、主たる量で、オクテン類である2,4,4−トリメチル−1−ペンテン及び2,4,4−トリメチル−2−ペンテンを含むために、ヒドロホルミル化反応はC9アルデヒドである3,5,5−トリメチルヘキサナールを主成分として与える。少量で存在する他のC9異性体は、3,4,4−及び3,4,5−トリメチルヘキサナール並びに2,5,5−トリメチルヘキサナール、4,5,5−トリメチルヘキサナール及び6,6−ジメチルペンタナールである。このアルデヒド混合物の酸化によって、通常は3,5,5−トリメチルヘキサン酸を約90%の割合で含む工業的に利用可能なイソノナン酸が得られる(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume 9,pp.143−145(非特許文献9);EP1854778A1(特許文献12))。 同様に、ジ−イソブテンは、所謂ヒドロカルボキシル化またはコッホ反応に従い、一酸化炭素及び水により、硫酸の存在下に高分枝状イソノナン酸である2,2,4,4−テトラメチル−1−ペンタン酸へと転化できる。カルボキシル基に隣接する炭素原子上の二つのアルキル分枝の故に、このイソノナン酸はしばしばネオノナン酸とも称される。(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume 9,pp.143−145(非特許文献10))。 イソブテンの分離の後にラフィネートII中に含まれるn−ブテン類も工業的にブテンオリゴマーへと転化され、それから異性体オクテン類が分離され、そしてこれらは、ヒドロカルボキシル化を介して対応するイソノナン酸類へと転化される(DE19908320A1(特許文献13);DE19906518A1(特許文献14))。n−ブテン類のオリゴマー化は、ゼオライトまたは担体上のリン酸などの酸性触媒上で工業的に操業される。この場合、主生成物としてジメチルヘキセン類を含むオクテン類が得られる。他の方法としては、DIMERSOL法及びOCTOL法を挙げることができる。DIMERSOL法は可溶性のニッケル錯体触媒を用いて作動し、そしてジメチルヘキセン類及びn−オクテン類の他に3−及び5−メチルヘプタン類を高い割合で含むオクテン混合物を与える。OCTOL法では、担持型のニッケル固定床触媒が使用され、そして得られたオクテン混合物は、低い分枝度を特色とする(DE19908320A1(特許文献15)、WO03/029180A1(特許文献16)、Hydrocarbon Processing,February 1986,pp.31−33(非特許文献11))。DE19908320A1(特許文献17)では、様々に分枝したオクテン混合物のそれぞれをヒドロカルボキシル化を介して対応するイソノナン酸類に転化し、次いでこれを対応するビニルエステルへと転換する。OCTOL法からのオクテン混合物をベースとするイソノナン酸類からのビニルエステルは、可塑化性コモノマーとして適している。DE102009048771A1EP1281701A1EP1199300A2EP0903335A1WO90/12849A1EP0475751A1EP1057525A2DE19908320A1EP0497340A2WO2011/139360A1WO2011/139361A1EP1854778A1DE19908320A1DE19906518A1DE19908320A1WO03/029180A1DE19908320A1WO03/029180A1GB313426US2468764US2919973US3527809AUS4148830AUS4247486AUS4283562ADE10010771C1DE2604545DE950007DE10010771C1EP1854778A1US6433217Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,p.145G.Huebner,Fette,Seifen,Anstrichmittel 68,290(1966)Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124Adelmann,Journal Organic Chemistry,1949,14,pp.1057−1077Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,pp.74−79Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,pp.77Hydrocarbon Processing,April 1973,pp.171−173Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume 9,pp.143−145Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume 9,pp.143−145Hydrocarbon Processing,February 1986,pp.31−33Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 13,pp.579−584G.Huebner,Fette,Seifen,Anstrichmittel 68,290(1966)Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,p.152Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1976,Verlag Chemie,Volume 11,pp.89−96Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume9,pp.145−146Methoden der Organischen Chemie,Houben−Weyl,4.Edition,1958,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,Volume XI/2,pp.10−14,16−19 ナフサ分解からのC4カットをベースとするオクテン類の入手可能性が制限されそして局所的な場所の条件に依存するという背景の下、簡単に様々な場所に輸送できる低廉に入手可能な大規模材料をベースとする更なるオクテン源を開発することが望ましい。2−エチルヘキサノールは、工業的な大規模製品として安価に入手でき、これは問題なく広く販売することができる。周知のように、2−エチルヘキサノールは、n−ブチルアルデヒドへのプロピレンのヒドロホルミル化またはオキソ反応、その後の2−エチルヘキセナールへのアルカリ触媒アルドール縮合、次いで2−エチルヘキサノールへの完全水素化によって、大規模工業的に製造される(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 13,pp.579−584(非特許文献12))。 WO03/029180A1(特許文献18)は、オクテン混合物の製造のための2−エチルヘキサノールの使用を簡単に論じており、このオクテン混合物は、脱水、ヒドロホルミル化及び水素化を介してイソノナノール混合物へと加工される。この際、異性体ノナノール類とフタル酸またはフタル酸無水物とのエステル化によって得られる異性体フタル酸−ジ−アルキルエステルの粘度の調整が注目されている。2−エチルヘキサノールの脱水性生成物をイソノナン酸に転化することについては示唆はない。 オクテン源としての2−エチルヘキサノールの利用は、プロピレンをベースとするイソノナン酸の提供を可能とし、そしてブテンベースのオクテンの入手性に対する依存性を最小化する。 それ故、本発明は、2−エチルヘキサノールから出発してイソノナン酸を製造する方法にある。該方法は、(a)2−エチルヘキサノールを触媒の存在下にオクテンへ脱水し;(b)ステップa)に従い得られたオクテンを、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物の存在下に一酸化炭素及び水素と反応させてイソノナナールへと転化し;及び(c)ステップ(b)に従い得られたイソノナナールをイソノナン酸へと酸化する、ことを特徴とする。 本発明は、同様に、(a)2−エチルヘキサノールを触媒の存在下にオクテンへ脱水し;(b)ステップa)に従い得られたオクテンを、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物の存在下に一酸化炭素及び水素と反応させてイソノナナールへと転化し;及び(c)ステップb)に従い得られたイソノナナールをイソノナン酸へと酸化する、ことによって得ることができるイソノナン酸に関する。 2−エチルヘキサノールの脱水は、それに適した触媒上で、液相中でも、気相中でも行うことができる。好ましくは、脱水は、気相中で、200〜450℃、好ましくは250〜380℃の範囲の温度で、従来技術において慣用の反応器の使用下に、脱水化特性を持つ不均一系触媒、例えば様々な変態の酸化アルミニウム、酸化アルミニウム上に堆積したニッケル、または二酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウム上に堆積したリン酸の存在下に行われる。脱水に適したこのような不均一系触媒は、従来技術から既知であり(GB313426(特許文献19)、US2468764(特許文献20)、US2919973(特許文献21))、そして例えばBASF SEのAl3996として商業的に入手できる。US2919973(特許文献21)は、不均一系酸化アルミニウム触媒上で、約350℃の温度及び触媒1リットル及び1時間あたり2.4〜2.8リットルの2−エチルヘキサノールの触媒負荷下での、2−エチルヘキサノールの脱水を論じている。しかし、従来技術は、得られるオクテン混合物中の異性体分布についての情報を記載していない。 本発明の方法において2−エチルヘキサノールの脱水に使用される反応器は、触媒床の他に、更なるパッキングまたは内装品、例えばラッシヒリング、サドル、ポールリング、フィルタープレートまたは塔棚段を含むことができる。パッキングを使用する場合には、デッドボリュームを減らすために、これは好ましくは触媒床の上に取り付けられる。液相で脱水する場合は、攪拌装置、内装品及びパッキングを無しで済ませることができ、そのため、反応容器中には脱水触媒のみが存在する。好ましい作業方式では、2−エチルヘキサノールを、前流の蒸発器中で加熱し、そして場合によっては窒素、二酸化炭素または希ガスなどの不活性キャリアガスの使用下に、気体状態で触媒床上に案内する。不均一系触媒の負荷量V/Vhは、幅広い範囲で変えることができ、一般的には、触媒1リットル及び1時間あたりで2−エチルヘキサノール0.2〜3.5リットルである。脱水域から取り出される反応混合物は次いで凝縮される。脱離した水によって、水性相が生じ、これは、簡単な相分離によって有機オレフィン相から分離される。得られたオクテンは、主成分としてのモノ分枝したオクテン類である2−エチル−1−ヘキセン並びにシス/トランス3−メチル−3−ヘプテン及びシス/トランス3−メチル−2−ヘプテンを含む構造異性体のオクテン類の混合物である。顕著な量のジ−C8−エーテルは形成しない。 脱離水(Spaltwasser)を除去した後に存在するオクテンは、次いで、更に精製することなくまたは有利には蒸留して精製した後に、ヒドロホルミル化反応またはオキソ反応において一酸化炭素及び水との反応に使用される。使用される一酸化炭素と水との混合物は、合成ガスとも称される。ヒドロホルミル化反応は、均一触媒系中で行われる。均一反応系という用語は、溶媒(添加された場合)、触媒、オレフィン性不飽和化合物及び反応生成物から本質的に組成される均一な溶液を表す。ヒドロホルミル化の際に副生成物として生ずる、製造すべきアルデヒドのより高沸点の縮合化合物、特に製造すべきアルデヒドのトリマー、並びに製造すべきイソノナナールとのこれらの混合物が特に効果的な溶媒として判明しており、そのため、更なる溶媒添加は、必ずしも必要ではない。しかし、溶媒の添加が有利な場合があることが分かっている。溶媒としては、出発材料、反応生成物及び触媒が可溶性の有機化合物が使用される。このような化合物の例は、芳香族炭化水素、例えばベンゼン及びトルエンまたは各異性体のキシレン類及びメシチレン類である。他の慣用の溶媒は、パラフィン油、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタンまたはn−オクタン、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、ケトン類またはEastman社のTexanol(登録商標)である。反応媒体中での溶媒の割合は幅広い範囲で変えることができ、通常は、反応混合物を基準にして20〜90重量%の間、好ましくは50〜80重量%の間である。しかし、オクテンのヒドロホルミル化は、溶媒の添加なしでも行うことができる。 ヒドロホルミル化反応は、典型的には、均一な有機相中で、元素周期律表の第VIII族の少なくとも一種の遷移金属化合物の存在下に行われる。転化は、錯体配位子として働く錯体形成性有機元素化合物の存在下に、または不在下に、行うことができる。 ヒドロホルミル化反応を錯体配位子の存在下に行う場合は、有機元素化合物として有機リン化合物の使用が適している。このような錯体化合物及びそれらの製造方法は既知である(US3527809A(特許文献22)、US4148830A(特許文献23)、US4247486A(特許文献24)、US4283562A(特許文献25))。これらは、単一の錯体化合物として使用することができる。反応媒体中での遷移金属濃度は、それぞれ均一な反応混合物を基準にして、約1〜約1000重量ppmの幅広い範囲にわたり、好ましくは10〜700重量ppm、特に25〜500重量ppmである。触媒としては、化学理論量的に組成された遷移金属−錯体化合物が使用できる。しかし、ヒドロホルミル化を、遷移金属−錯体化合物と、遷移金属と配位結合を結んでいない遊離の錯体配位子とからなる触媒系の存在下に行うことが有利であることが判明した。遊離の錯体配位子は、遷移金属−錯体化合物中のものと同じでもよいし、これとは異なる錯体配位子を使用してもよい。好ましい錯体配位子としては、トリアリールホスフィン類、例えばトリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィン類、例えばトリ(シクロヘキシル)ホスフィン、アルキルフェニルホスフィン類、有機ホスフィット類またはジホスフィット類が挙げられる。遷移金属と錯体配位子とのモル比は一般的に1:1〜1:1000であるが、より高い比率であることもできる。好ましくは、遷移金属及び錯体配位子は、1:3〜1:500、特に1:50〜1:300のモル比で使用される。 錯体配位子の存在下でのヒドロホルミル化反応は、しばしば変性型(modifizierte Variante)とも称され、これは通常は50〜180℃、好ましくは100〜160℃の温度及び0.2〜30MPa、好ましくは1〜20MPaの総圧力下に行われる。 ヒドロホルミル化反応は、同様に、非変性型に従い錯体配位子の不在下に行うこともできる。例えばホスフィン類やホスフィット類で変性されていないこのような遷移金属触媒及びヒドロホルミル化用の触媒としてのそれらの適性は文献から既知であり、そしてこれらは、未変性触媒金属触媒と称される。専門書では、反応域中で互いに並んで進行する多くの化学機序の故に明らかには証明されてはいないものの、遷移金属化合物HM(CO)4が、未変性遷移金属触媒作用での触媒活性遷移金属種であることが推察されている。 好ましくは、元素周期律表の第VIII族の遷移金属として、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、鉄またはルテニウムが、特にコバルトまたはロジウムが使用される。変性または未変性遷移金属触媒は、ヒドロホルミル化反応の条件下に、使用した遷移金属化合物、例えばそれの塩、例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ペンタン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩もしくはイソノナン酸塩、それのカルコゲン化物、例えば酸化物もしくは硫化物、それのカルボニル化合物、例えばM2(CO)8、M4(CO)12、M6(CO)16、M2(CO)9、M3(CO)12、それの有機遷移金属化合物、例えばカルボニルアセチルアセトネート類もしくはシクロオクタジエニルアセテート類もしくは−クロライドから、一酸化炭素/水素混合物の存在下に、形成される。この際、遷移金属化合物は、固形物としてまたは有利には溶液の状態で使用することができる。触媒前駆体として使用される遷移金属化合物としては、特にロジウムイソノナノエート、ロジウムアセテート、ロジウム−2−エチルヘキサノエートもしくはコバルトイソノナノエート、コバルトアセテートもしくはコバルト−2−エチルヘキサノエート、またはCo2(CO)8、Co4(CO)12、Rh2(CO)8、Rh4(CO)12もしくはRh6(CO)16またはシクロペンタジエニルロジウム化合物、ロジウムアセチルアセトネートもしくはロジウムジカルボニルアセチルアセトネートが適している。好ましくは、酸化ロジウム、特にロジウムアセテート、ロジウム−2−エチルヘキサノエート及びロジウムイソノナノエートが使用される。 しかし、先ず、プリカルボニル化段階において遷移金属触媒を予備形成し、次いでそれを本ヒドロホルミル化段階に供給することも可能である。この際、予備形成の条件は、一般的にヒドロホルミル化条件に相当する。 錯体配位子で変性されていない遷移金属触媒の使用は、一般的により少ない遷移金属含有率を必要とするため、使用するオクテンを基準にして一般的には1〜100ppm、好ましくは2〜30ppmの遷移金属量で作業される。特に好ましくは、ロジウムまたはコバルトは、使用されるオクテンを基準として2〜30ppmの量で、好ましくは5〜10ppmの量で使用される。 非変性型に基づいてイソノナナールを生成するためのオクテンと水素及び一酸化炭素との反応では、有利には、5〜70MPa、好ましくは5〜60MPa、特に10〜30MPaのより高い圧力下で作業される。適当な反応温度は、50〜180℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲、特に100〜150℃の範囲内で変動する。 合成ガスの組成、すなわちガス混合物中での一酸化炭素及び水素の割合は広い範囲で変わり得る。一般的に、一酸化炭素と水素のモル比が5:1〜1:5である混合物が使用される。通常は、この比率は1:1であるか、またはこの値から少しだけずれている。オレフィン性化合物は、そのままでまたは溶液の状態で反応域に供給できる。適当な溶媒は、ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、低級脂肪族ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリルもしくはベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、線状もしくは分枝状飽和脂肪族モノヒドロキシ化合物、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、芳香族炭化水素、例えばベンゼンもしくはトルエン、及び飽和環状脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンもしくはシクロヘキサンである。 ヒドロホルミル化段階は、断続的にも、連続的にも行うことができる。粗製ヒドロホルミル化生成物からの所望のアルデヒドの獲得は、慣用の方法に従い、例えば蒸留によって行われる。イソノナナール及び他の揮発性成分は、塔頂生成物として引き抜かれ、そして必要に応じて更なる精密精製に付される。 使用した量の遷移金属は、蒸留残留物中にたまり、そして場合によっては新鮮な遷移金属化合物の添加及び反応中に形成したアルデヒド縮合生成物の一部の除去の後に、反応域中にリサイクルされる。 得られた異性体イソノナナール類の混合物は、有利には蒸留によって、精製し、次いで酸化によって、好ましくは液相中での酸化によって対応するイソノナン酸へと転化され、但しこの際、気相での酸化などの他の方法設計は排除されない。酸化剤としては、脂肪族アルデヒドの酸化に適した通常の化合物、例えば酸素、酸素含有ガス混合物、オゾン、オゾン含有ガス混合物、過酸化物、過酸、過酸の金属塩、または高い酸化状態の遷移金属、例えば過マンガン酸カリウムまたは二酸化マンガンなどが適している。入手がしやすいことから、酸化剤としては有利には分子状酸素か、または分子状酸素を含むガス混合物が使用される。このようなガス混合物の他の構成分は、不活性ガス、例えば窒素、希ガス及び二酸化炭素である。酸素含有ガス混合物の不活性構成分の割合は、90体積%まで、特に30〜80体積%である。好ましい酸化剤は酸素または空気である。 酸化は、触媒を添加して、または触媒の不在下のいずれでも行うことができる。触媒としては遷移金属または遷移金属化合物が適しており、これらは、少量で、例えば遷移金属として計算してかつ使用するアルデヒドを基準にして、0.1〜5ppmの量で添加することができ、例えばチタン、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムまたは銅などが挙げられる。このような方法のレジメは、例えばDE10010771C1(特許文献26)またはDE2604545(特許文献27)に記載されている。 同様に、反応は、弱酸のアルカリ−またはアルカリ土類金属塩の存在下に行うことができる。特に、カルボニル炭素原子に隣接する炭素原子が分枝を有するα−分枝状アルデヒドの酸化では、従来技術は、選択性の向上のための少量のアルカリ金属カルボキシレートの存在を推奨している(DE950007(特許文献28)、DE10010771C1(特許文献29))。EP1854778A1(特許文献30)で論じられているようなアルカリ−またはアルカリ土類金属カルボキシレートと遷移金属化合物との組み合わせも使用することができる。 本発明の方法に従い2−エチルヘキサノールから出発して脱水及び対応するオクテンのヒドロホルミル化を経て製造されたイソノナナールの酸化では、アルカリ−またはアルカリ土類金属として計算してアルデヒド1モルあたり一般的に1〜30mmol、好ましくは1〜15mmol、特に1〜8mmolのアルカリ−またはアルカリ土類金属カルボキシレートの存在が推奨される。 アルカリ−またはアルカリ土類金属カルボキシレートを単一の化合物として使用することは必要ではない。これらの化合物の混合物を使用することも同様に可能であり、但しこの際、有利にはイソノナノエート類が使用される。しかし、好ましくは、単一の化合物、例えばリチウム−、カリウム−、ナトリウム−、カルシウム−またはバリウムイソノナノエートが使用される。 一般的に、アルカリ−もしくはアルカリ土類金属イソノナノエートを含む溶液を、アルカリ−もしくはアルカリ土類金属化合物を含む水性の溶液を過剰のイソノナン酸で中和することによって調製し、そしてこの溶液を、酸化するイソノナナールに添加する。アルカリ−もしくはアルカリ土類金属化合物としては、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩が特に適している。 しかし、反応条件下にイソノナノエートに転化されるアルカリ−もしくはアルカリ土類金属化合物を添加することによって、反応混合物中でアルカリ−もしくはアルカリ土類金属イソノナノエートを生成することも可能である。例えばアルカリ−もしくはアルカリ土類金属水酸化物、−炭酸塩、−炭酸水素塩または−酸化物を酸化段階で使用することができる。これらの添加は、固体の形態でまたは水溶液のいずれかで行うことができる。 酸化剤、好ましくは酸素または酸素含有ガスとの反応は、20〜100℃の温度範囲で行われる。好ましくは、20と80℃の間、特に40と80℃の間で作業される。一定かまたは可変の温度である温度の管理は、出発材料の個々の要求及び反応状態に適合させることができる。 反応パートナーの転化は好ましくは大気圧下で行われる。しかし、高められた圧力の使用は排除されない。通常は、1.5MPaまでの大気圧の範囲で、好ましくは0.8MPaの大気圧下に作業される。 イソノナナールから対応するイソノナン酸への変換に必要な反応時間は、中でも、反応温度及び反応体の互いの量比に依存する。通常は、これは30分間〜20時間、特に2〜8時間である。 イソノナナールは、そのままでまたは反応条件下に不活性の溶媒中に溶解して使用することができる。適当な溶媒の例は、ケトン類、例えばアセトン、エステル類、例えば酢酸エチル、炭化水素、例えばトルエン、及びニトロ炭化水素、例えばニトロベンゼンである。アルデヒドの濃度は、溶媒中へのそれの溶解性によって制限される。 酸化ステップは、バッチ式にまたは連続式に行うことができる。未反応の反応体のリサイクルはどちらの場合でも可能である。 2−エチルヘキサノールから出発して得られたイソノナン酸は、主成分としてのα位置で非分枝状及びモノ分枝状のイソノナン酸を含む位置異性体の脂肪族C9モノカルボン酸の混合物である。 DIN51405によるガスクロマトグラフィ分析(FI%)によると、主成分として、4−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、3−エチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸及び2−エチル−4−メチルヘキサン酸が存在し、並びに少量の2−プロピル−3−メチル−ペンタン酸及び2−メチルオクタン酸が存在する。少量のn−ノナン酸も同様に存在する。 本発明の方法に従い製造されたイソノナン酸は、主成分である4−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、3−エチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸及び2−エチル−4−メチルヘキサン酸が、位置異性体の脂肪族C9−モノカルボン酸の層含有量を基準にして、合計で少なくとも80モル%を成すことを特徴とする。 酸化の後に生ずる粗製酸混合物から慣用の条件下に蒸留することによって、純粋なイソノナン酸が得られる。アルカリ−もしくはアルカリ土類金属イソノナノエート、場合により及び遷移金属含有蒸留残留物は分離され、そして場合により新鮮なアルカリ−もしくはアルカリ土類金属イソノナノエートまたは反応条件下にイソノナノエートに変化するアルカリ−もしくはアルカリ土類金属化合物、場合により並びに新鮮な遷移金属化合物を添加した後に、投入するアルデヒドに再び加えることができる。 本発明方法の有利であることが判明した実施形態の一つでは、イソノナナールを、適当な反応器中に、例えば分配プレートを備え及び場合によってはパッキングを更に含む管状反応器中に仕込み、そして酸素または酸素含有ガス混合物を下からアルデヒド中に導通する。 他の実施形態の一つでは、パッキングを含む流下式塔が反応器として使用される。パッキングを介して、アルデヒドを流下させ、そして同時に塔中に並流または向流で酸素または酸素含有ガス混合物を導入する。 本発明の方法に従い製造されたイソノナン酸は、例えばビニルエステル、カルボン酸エステル、イソノナン酸無水物、イソノナン酸ハロゲン化物またはイソノナン酸アミドの製造のためにそれ自体既知の方法に従い、使用することができる。ビニルエステルは、例えば、イソノナン酸とアセチレンとを、好ましくは亜鉛塩の存在下に200〜230℃の温度で反応させることによって(G.Huebner,Fette,Seifen,Anstrichmittel 68,290(1966)(非特許文献13)、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124(非特許文献14))、または所謂ビニル交換反応によって製造される。(ここでRはC8であり、そしてR1は多くの場合にメチルまたはエチルを意味し、それ故、ビニル交換試薬としては例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルが使用される(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7.Edition,2011,Wiley,Volume 38,pp.107−124(非特許文献15)。)化学平衡を所望のビニルエステルの方に移動させるためには、しばしば過剰量のビニル交換試薬R1−C(O)−CH=CH2を使用し、及び同時に、形成したカルボン酸を反応混合物から除去する。ビニル交換触媒としては、白金族のルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金、特にパラジウム及びルテニウムからの遷移金属の化合物が適しており、これらは、一座または多座有機窒素または有機リン配位子で変性してまたは未変性の形態で使用することができる。 得られたビニルイソノナノエートは、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロライド、ポリスチレンまたはポリアクリル酸エステル中でコモノマーとして適しており、これは、ペイントの耐加水分解性及び湿分吸収性に有利に影響を及ぼす。 また同様に、本発明に従い製造されたイソノナン酸からは、対応するグリシジルエステルを、例えばエピクロロヒドリンとの反応によって、それ自体既知の方法に従い製造することができ、これは、アルキド樹脂の変性に役立ち得る(Weissermel,Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,3.Edition,1988,p.152(非特許文献16);US6433217(特許文献31))。 同様に、本発明に従い製造されるイソノナン酸は、それ自体既知の方法で、一価または多価アルコールと反応させて対応するカルボン酸エステルに転化することができ(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1976,Verlag Chemie,Volume 11,pp.89−96(非特許文献17))、これは、潤滑剤組成物中に、熱可塑性ポリマーのための可塑剤としてまたは分散ペイント中の造膜助剤として使用できる。 同様に、本発明に従い製造されるイソノナン酸は、五塩化リン、オキシ塩化リン、スルフリルクロライドまたはチオニルクロライドなどのハロゲン化剤との反応によって、イソノナン酸ハロゲン化物に誘導体化することができ、それから、イソノナン酸との反応によってイソノナン酸無水物がまたは他のカルボン酸との反応によって混合無水物を得ることができる。イソノナン酸と無水酢酸との反応も、中間段階として混合無水物を与え、これは、更なる酸の添加及び酢酸の脱離の下に、イソノナン酸無水物にまたは他の混合無水物へと変換することができる(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,4.Edition,1975,Verlag Chemie,Volume9,pp.145−146(非特許文献18))。イソノナン酸クロライドまたはイソノナン酸無水物から出発して、アンモニア、第一アミンまたは第二アミンとの反応によって、対応するイソノナン酸アミドを得ることができる(Methoden der Organischen Chemie,Houben−Weyl,4.Edition,1958,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,Volume XI/2,pp.10−14,16−19(非特許文献19))。 以下の例では、2−エチルヘキサノールから出発したイソノナン酸の製造を記載する。I.2−エチルヘキサノールの脱水 脱水のために、長さ1.3メートル及び直径0.03メートルの石英管を使用した。この石英管では、加熱域が1.1メートルにわたって延在している。この石英管に、3×3ミリメートルの大きさのタブレットの形態のBASF SE社製の酸性触媒Al3996(250mL)を装填した。デッドボリュームは、ガラスリングで埋めた。2−エチルヘキサノールを、前流の蒸発器中で蒸発し、そしてキャリアガスとしての窒素流を用いて、常圧下に、触媒床上に、350℃の温度でかつ触媒体積1リットル及び1時間あたり0.5リットルの負荷量で運んだ。得られた反応混合物を後続の収集容器中で凝縮し、そして水性相を分離した。生じた有機相を、ガスクロマトグラフィで求めた以下の組成を有した(FI%、DIN51405)。II.ステップI.で得られたオクテンのヒドロホルミル化 ステップI.に従い得られた粗製オクテンを、ロジウム−2−エチルヘキサノエートの溶液の形で添加された、オクテン使用量に基づき5ppmのロジウムの存在下に、140℃の温度で及び19MPaの合成ガス圧下に、3時間の期間にわたってヒドロホルミル化した。合成ガスのモル組成は、1モルの水素と1モルの一酸化炭素であった。得られた粗製ヒドロホルミル化生成物は、ガスクロマトグラフィにより求められた以下の組成(FI%、DIN51405準拠)を有した。 2−エチルヘキサノールの脱水を介して得られたオクテンを用いた更なるヒドロホルミル化試験の結果を以下に表1にまとめて記す。使用前に、粗製オクテンを、終留の分離のためのクライゼ(Claise)ブリッジで、119〜122℃の塔頂温度で及び常圧下に蒸留した。使用したオクテン及び得られた反応生成物を、ガスクロマトグラフィにより分析した(FI%で表示、DIN51405準拠)。 2−エチルヘキサノールの脱水を介して得られたオクテンを用いた、錯体配位子としてトリフェニルホスフィンの使用下に行われたヒドロホルミル化試験を以下の表2にまとめて記す。蒸留していない材料を使用した。使用したオクテン類及び得られた反応生成物を、ガスクロマトグラフィにより分析した(FI%で表示、DIN51405準拠)。III.ステップII.に従い得られたイソノナナールからイソノナン酸への酸化 例IIaに従い得られたイソノナナールから、先ず、低沸点物及び未反応のオレフィンを塔頂生成物として、24棚段塔中で、200hPa、120℃の塔底温度及び2:1の還流比で分離した。低沸点物を分離した後に、塔底温度を140〜150℃に高め、そしてイソノナナールを塔頂から引き抜き(100hPaでの沸点:110〜114℃)、他方で高沸点物は蒸留残留物中に残った。 得られたイソノナナールは、ガスクロマトグラフィで求めた以下の組成並びに以下の特性値を有し、そしてこれを以下の液相酸化に使用した。 イソノナナールからイソノナン酸への液相酸化は、溶媒を添加せずに、気泡塔反応器中で、50℃で純粋な酸素を用いて常圧下に6時間の期間にわたり行った。使用したアルデヒドには、水酸化カリウムの50重量%濃度水溶液を、イソノナナール1モルあたり50mmolのカリウムが存在するような量で加えた。 得られた粗製酸は、次いで4.5棚段塔中で、148〜159℃の塔底温度及び136〜139℃の塔頂温度で、20hPa下に蒸留した。低沸点物及び未反応のアルデヒドを初留画分として分離し、そして難沸点物は蒸留残留物中に残った。イソノナン酸の蒸留収率は84.7%であり、そのガスクロマトグラフィで求めた純度は98.8%であった。 得られたイソノナン酸は、DIN51405に従いガスクロマトグラフィにより求めた以下の組成を有した(FI%): このイソノナン酸に求められた特性値を表6にまとめて記す。2−エチルヘキサノールから出発してイソノナン酸を製造する方法であって、(a)2−エチルヘキサノールを触媒の存在下にオクテンへ脱水し;(b)ステップa)に従い得られたオクテンを、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物の存在下に一酸化炭素及び水素と反応させてイソノナナールへと転化し;及び(c)ステップb)に従い得られたイソノナナールをイソノナン酸へと酸化する、ことを特徴とする、上記方法。ステップa)において、触媒として、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム上に堆積したニッケル、または二酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウム上に堆積したリン酸を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。ステップa)において、2−エチルヘキサノールを気相で脱水することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。ステップb)において、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物として、コバルトまたはロジウム化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。ステップb)による反応が、錯体形成性有機元素化合物の不在下に行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。ステップb)に従い得られるイソノナナールを蒸留することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。ステップc)における酸化が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートの存在下に行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートとして、リチウムイソノナノエート、カリウムイソノナノエート、ナトリウムイソノナノエート、カルシウムイソノナノエートまたはバリウムイソノナノエートが使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。ステップc)において、イソノナナールを液相で酸化することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。ステップc)において、イソノナナールを酸素または酸素含有ガスでイソノナン酸へ酸化することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。(a)2−エチルヘキサノールを触媒の存在下にオクテンへ脱水し;(b)ステップa)に従い得られたオクテンを、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物の存在下に一酸化炭素及び水素と反応させてイソノナナールへと転化し;及び(c)ステップb)に従い得られたイソノナナールをイソノナン酸へと酸化する、ことによって得ることができる、イソノナン酸。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、それ自体既知の方法でアセチレンと反応させることを特徴とする、ビニルイソノナノエートの製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、それ自体既知の方法で酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルと反応させることを特徴とする、ビニルイソノナノエートの製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、それ自体既知の方法で一価または多価アルコールでエステル化することを特徴とする、カルボン酸エステルの製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、それ自体既知の方法でハロゲン化剤と反応させることを特徴とする、イソノナン酸ハロゲン化物の製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、それ自体既知の方法でハロゲン化剤と、次いでカルボン酸と反応させることを特徴とする、イソノナン酸無水物の製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸を、イソノナン酸クロライドまたはイソノナン酸無水物に転化し、次いでそれ自体既知の方法でアンモニア、第一アミンまたは第二アミンと反応させることを特徴とする、イソノナン酸アミドの製造方法。請求項1〜10のいずれか一つに記載のイソノナン酸をそれ自体既知の方法でグリシジルエステルに転化することを特徴とする、イソノナン酸のグリシジルエステルの製造方法。 本発明は、2−エチルヘキサノールから出発したイソノナン酸;2−エチルヘキサノールを脱水しオクテンとし、次いでヒドロホルミル化してイソノナナールとし、その後、酸化してイソノナン酸とすることによるそれの製造方法、並びにこうして製造されたイソノナン酸から出発したビニルイソノナノエート、グリシジルエステル、カルボン酸エステル、イソノナン酸ハロゲン化物、イソノナン酸無水物及びイソノナン酸アミドの製造方法に関する。


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