タイトル: | 公表特許公報(A)_デイノコッカス細菌を培養するための方法 |
出願番号: | 2015519181 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 1/20,C12P 19/00,C12M 1/00,C12P 7/08 |
コズ,ファビアン イーヴァン,パトリック レオネッティ,ジャン−ポール JP 2015521486 公表特許公報(A) 20150730 2015519181 20130701 デイノコッカス細菌を培養するための方法 ディノベ 513111145 DEINOVE 井関 勝守 100121728 金子 修平 100165803 コズ,ファビアン イーヴァン,パトリック レオネッティ,ジャン−ポール EP 12305794.5 20120702 US 61/667,060 20120702 C12N 1/20 20060101AFI20150703BHJP C12P 19/00 20060101ALI20150703BHJP C12M 1/00 20060101ALI20150703BHJP C12P 7/08 20060101ALI20150703BHJP JPC12N1/20 AC12P19/00C12M1/00 DC12P7/08 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2013063871 20130701 WO2014006010 20140109 23 20150218 4B029 4B064 4B065 4B029AA02 4B029BB02 4B029CC01 4B029DA10 4B029DF03 4B064AC03 4B064CA02 4B064CA19 4B064CC24 4B064CD01 4B064DA16 4B064DA20 4B065AA01X 4B065AA01Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BB02 4B065BC12 4B065CA06 4B065CA55 本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養する改善された方法に関する。より具体的に、本発明は、酸化剤を用いるデイノコッカス細菌又はその関連細菌の培養(例えば、増殖、発酵若しくは維持)方法、及びデイノコッカス細菌又は他の微生物のうちのデイノコッカス関連細菌の好ましい増殖のための培養プロセス又は培地における酸化剤の使用に関する。本発明は、発酵プロセス、例えば目的の化合物を生成するための発酵プロセスに用いられ得る。さらに、本発明は、デイノコッカス細菌と共に酸化剤を用いることにより最適化された発酵プロセスを行うのに適する装置に関する。 発酵若しくは生物生産又は複合基質の分解若しくは変換を行うための微生物の使用が、本技術分野において提案されている。 発酵プロセスは、実質的な量の微生物酵素(例えばカタラーゼ、リパーゼ等)、代謝物質(例えばエタノール、アミノ酸、ビタミン等)、組換え産物(例えばインスリン、インターフェロン等)の生成のために、及び/又は基質を生体内変換のために用いられ、生じる発酵産物は、化学、医薬、生物工学及び食品産業を含むいくつかの産業において適用される。 一般に、選択された微生物の純粋培養は、発酵プロセスを行うのに適合されたシステムに導入され、該システムは、さらに無菌増殖培地を含む。 しかしながら、発酵プロセスの主な制限の1つは、培地を汚染する微生物の存在及び増大である。 近年、熱、放射線照射及び/又は酸/塩基が、選択された微生物の播種前に装置を除染するのに用いられている。それにもかかわらず、そのような除染は、選択的でなく、発酵プロセス自体の際に行うことができない。その装置及び/又は培養培地が予め無菌化されていたとしても、汚染の根絶は、多くの場合、十分でなく、少なくとも部分的に選択された微生物及び/又は培養培地と共にその装置が汚染される。さらに、発酵プロセスが連続的である場合、培養培地の上流のフラックスが装置に流れる。その上流のフラックスが更なる汚染を含み得るため、この外因性の寄与は、発酵プロセスの汚染のリスクを増大させ得る。 これらの汚染は、発酵プロセスの実行に大きな影響を与える。汚染する微生物は、最初に播種された選択された微生物と競合し、それらを根絶し得る。多くの場合、その発酵プロセスを中断する必要があり、新鮮な培養培地及び選択された微生物を装置に再度入れる前に、装置を空にし、洗浄する必要がある。 時折、抗生物質は汚染物質の一部を抑制するために発酵タンクに加えられる。しかしながら、一般に有効であるが抗生物質はいくつかの不利益を有する。コストを除くそれらの1つは、抗生物質が発酵プロセスを最後まで実施させても、結局副産物となる。抗生物質の第2の不利益は、いくつかの細菌が時間と共に抵抗性を得て、抗生物質の使用の効果が小さくなることである。 今日では、これらの汚染の発生は、確実には避けられず、それらは装置の利益率、及び生産コストに影響する。 最近数十年において、エタノール等のバイオ燃料の発酵及び抽出のためにデイノコッカス細菌を用いる産業プロセスが開発されている。バイオマスを発酵し、それらから有益な代謝物質を産生するためのそれらの能力は、より安く、より容易に改善される発酵産物を生成し得る改善されたプロセスの開発に関与してきた。 これに関して、デイノコッカス細菌は、産業プロセス又は反応に用いるのに有益な特性を有する。特に、WO2009/063079には、バイオマスからバイオエネルギー産物及び代謝物質の生成のためのデイノコッカス属の細菌の使用が記載されている。 WO2010/094665には、産業プロセスに適する条件下で、セルロース、ヘミセルロース(主にキシラン)及びリグニンを含むリグノセルロースバイオマスの主要成分を加水分解する能力を有するデイノコッカス属の細菌が記載されている。 WO2010/081899は、抗生物質を含む有益な薬物を生成するデイノコッカス細菌の能力が記載されている。 そのような産業プロセスは、大量の細菌、大きい発酵槽、原料基質及び/又は高い無菌条件を必要とするので、目的の細菌の増殖及び活性を維持するのに適する費用効果条件及びプロセス、並びにプロセスの際の低い汚染を規定することが重要である。 デイノコッカス細菌において更なる試験及び研究を行うことにより、本発明者らは、デイノコッカス属の細菌が、Z. mobilis、E. Coli及びS.cerevisiae等の参照細菌及び酵母と比較して、過酸化水素等の酸化剤に対して増大された耐性を示すことを証明した。さらに、本発明者らは、デイノコッカス細菌が、培養物の酸化、他の微生物による汚染の防止、低減又は抑制に適し、デイノコッカス細菌の増殖に良好で、デイノコッカス細菌の生物学的活性を最適化する条件下において、酸化剤の存在下で培養され得ることを示した。 より具体的に、デイノコッカス細菌は、発酵のプロセスに用いられるのに有利となり得て、酸化剤は、耐性が低い感染性微生物による汚染を低減するのに寄与する。多くの微生物は、デイノコッカス細菌には非致死性のH2O2等の酸化剤の適合量を用いて、根絶され得る、又は少なくとも影響を及ぼされ得る。 本発明の一態様は、少なくとも1つの酸化剤を含むデイノコッカス細菌又はその関連細菌の培養に関する。 また、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養するためのプロセスに関し、そのプロセスは、酸化剤の存在下で当該細菌を培養することを含む。酸化剤は、プロセスの間のいずれかの時に、例えば細菌を加える前、加える時及び/又は加えた後に加えられ得る又は添加され得る。また、酸化剤は、培養物に繰り返し又は連続的に添加又は加えられ得る。 本発明は、バイオマスを分解又は変換し、基質又は環境を解毒する発酵又は生物生産方法において、より一般的には、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の使用に関わるいずれかの反応又はプロセスにおいて、優先的に又は選択的にそのような細胞を増大するために、また、そのような細胞を同定又は選択するために、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養、増殖又は拡大するのに用いられ得る。 また、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌、及び酸化剤源を含んだ発酵槽又は反応槽を含むシステム又は装置に関する。 さらに、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養、維持又は増殖するプロセスに少なくとも1つの酸化剤を使用することに関する。 また、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の培養物を無菌化する又は除染するためのプロセスに関し、該プロセスは、酸化剤に該培養物を曝露することを含む。 また、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の使用と過酸化水素の使用とを組み合わせる培養培地から目的の化合物を生成するための発酵プロセスに関する。 本発明において、少なくとも1つの酸化剤は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を増殖させる条件下、例えば酸化剤の濃度がデイノコッカス細菌又はその関連細菌に対する抑制濃度(ICD)以下である条件下で好適に用いられる。好ましくは、酸化剤は、例えばE.coli等の少なくとも1つの他の微生物の増殖を阻害又は低減する条件下で用いられる。典型的な実施形態において、酸化剤は、0.05ICD〜0.95ICD、好ましくは0.25ICD〜0.90ICDの濃度で用いられる(例えば加えられる又は維持される)。 これに関して、特定の実施形態において、本発明は、培養培地を選択的に除染し、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を救うための酸化剤の使用に関する。酸化剤は、デイノコッカス細菌の増殖及び培養培地内の汚染のリスクの低減を促進する強い抗菌因子として作用する。そのような選択的除染は、他の微生物のうちデイノコッカス細菌を選択するため、及び/又はデイノコッカス細菌又はその関連細菌を用いて発酵プロセスを改善するために用いられ得る。 さらに、発酵プロセスの初期段階(すなわち、バイオマスを発酵性糖に分解する分解ステップ)の間の酸化剤の使用は、培養培地の酸化に好ましく、これにより外因性酸素要求量を低減する。 さらに、H2O2は、リグノセルロース系バイオマス等のバイオマスを前処理するために用いられ得る。H2O2は、リグニンを部分的に分解し得る。この脱リグニンは、炭素源としてのリグノセルロース系バイオマスを用いるためにデイノコッカスの能力を増大し、そして、発酵プロセスを改善する。さらに、少なくとも部分的な、加熱前処理の代わりのH2O2の使用は、細菌の増殖を阻害するヒドロキシメチルフルフラール及びフルフラール等の生体異物化合物の生成を有利に低減し得る。デイノコッカス細菌は、除染及びバイオマスの前処理の両方のために用いられ得るH2O2に対する耐性をもつので、発酵プロセス等の微生物生産プロセスにおけるデイノコッカス細菌とH2O2との組み合わせ利用が特に興味深い。 従って、好ましい実施形態において、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の培養のプロセスに関し、少なくとも1つの酸化剤がデイノコッカス細菌又はその関連細菌を増殖させ、少なくとも1つの他の微生物の増殖を抑制する条件下で用いられる。 その酸化剤は、好ましくは、臭素、臭素酸塩、塩素化イソシアニド、塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、ヒドロペルオキシド、次亜塩素酸塩、無機過酸化物、ケトンぺルオキシド、硝酸塩、硝酸、過ホウ酸塩、過塩素酸塩、過塩素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化水素、オゾン、過酸化物、過酸、及び過硫酸塩のうちから選択される。酸化剤は、より好ましくは、過酸化水素である。 本発明は、競合細菌(例えばZ. mobilis、E. Coli)、病原菌、酵母(例えばS. cerevisiae)等の他の微生物の少なくとも1つのうちデイノコッカス細菌又はその関連細菌を選択するために用いられ得る。 また、本発明は、デイノコッカス細菌又はその抽出物を含む発酵スターターを調製するために用いられ得る。 さらに、本発明は、増殖培地、好ましくは発酵槽、バイオリアクター又はケモスタット等の発酵システム内の増殖培地を発酵するのに用いられ得る。 さらに、本発明のプロセスは、基質を目的の物質に、例えば脂肪族化合物をジカルボン酸に生物変換するために用いられ得る。 本発明の更なる対象は、増殖培地、少なくとも1つの酸化剤又は酸化剤源、及びデイノコッカス細菌又はその関連細菌又はそれらの抽出物を含む発酵槽、バイオリアクター又はケモスタット等の発酵タンクに関する。 本発明の更なる対象は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を増殖させ、少なくとも1つの他の微生物の増殖を抑制し得る条件下において、発酵タンク内で酸化剤を使用することに関する。 また、本発明は、デイノコッカス細菌を用いる微生物生産プロセスの際の発酵槽における細菌汚染を低減するための方法に関し、その方法は発酵槽にH2O2を加えることを含む。 本発明の更なる対象は、細菌を用いる発酵の方法に関し、細菌はデイノコッカス細菌又はその関連細菌であり、その方法H2O2の存在下で行われる。 本発明のこれら及び他の対象及び実施形態は、以下の本発明の詳細な説明により、さらに明確となるであろう。M36-7D_21の増殖におけるH2O2の効果を経時的に示すグラフである。H2O2は、M36-7D_21の培養の開始時又は対数増殖期に添加される。 他の微生物と比較して、酸化剤に対するデイノコッカス細菌又はその関連細菌のより大きい耐性は、デイノコッカス細菌の増殖の促進及びデイノコッカス細菌を用いる方法の改善のために有利に用いられ得る。酸化剤の使用は、デイノコッカス細菌の増殖を可能とする条件及び発酵産物の生成を可能とする条件の両方に適合するため、適合された酸化剤の量は、予めの除染のみならず、発酵プロセス全体における選択的除染としても用いられ得る。 以下に、一般用語で本発明の好ましい実施形態を含む本発明の説明を示す。本発明は、本明細書の下記「実施例」の項目における開示に例示され、それは、本発明を支持する実験データ、本発明に係る発酵プロセスの例、及び本発明を実行する手段を示す。 定義 本発明は、以下の定義を参照することによって、より良く理解されるであろう。 本発明において、「デイノコッカス細菌」の用語は、デイノコッカス細菌の野生型又は自然変異株、例えばDNAシャッフリング技術による促進的進化を介して得られた菌株、又は真核生物、原核生物及び/又は合成核酸の挿入により得られた組換え菌株を含む。デイノコッカス細菌は、以下のものに限られないが、D.geothermalis, D. cellulolysiticus, D. radiodurans, D. proteolyticus, D.radiopugnans, D. radiophilus, D. grandis, D. indicus, D. frigens, D. saxicola,D. maricopensis, D. marmoris, D. deserti, D.murrayi, D. aerius, D.aerolatus, D. aerophilus, D.aetherius, D. alpinitundrae, D. altitudinis, D. apachensis,D. aquaticus, D. aquatilis, D. aquiradiocola, D. aquivivus,D. caeni, D. claudionis, D.ficus, D. gobiensis, D. hohokamensis, D. hopiensis, D.misasensis, D. navajonensis, D. papagonensis, D.peraridilitoris, D. pimensis, D. piscis, D. radiomollis,D. roseus, D. sonorensis, D.wulumuqiensis, D. xibeiensis, D. xinjiangensis, D.yavapaiensis又はD. yunweiensis等のデイノコッカス属の細菌のいずれかが指定され得る。好ましいデイノコッカス細菌は、D.geothermalis, D. cellulolysiticus, D. deserti, D.murrayi及びD.radioduransである。 デイノコッカスの「関連」細菌とは、(i)GTTACCCGGAATCACTGGGCGTA (SEQ ID NO :1)プライマー及びGGTATCTACGCATTCCACCGCTA (SEQ ID NO :2)プライマーを用いた増幅で、約158塩基対の断片を生じる16SrDNAを含み、(ii)4mJ/cm2のUV処理に耐性を有する細菌を意味する。特定の実施形態において、デイノコッカス関連細菌は、デイノコッカスの16S rDNA配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の同一性を有する16S rDNAを有する細菌である。 「酸化剤(oxidizer)」又は「酸化剤(oxidizing agent)」は、酸素原子を基質に移動させ得る物質、及び/又はそれらの自発的な分解により酸素を生成し得る物質を意味する。酸化剤は、液体、気体及び/又は固体の形態であってもよい。酸化剤は、好ましくは、例えば微生物の培養プロセスに用いるのに適する生体適合性を有する。酸化剤は、過酸化水素であることが有利である。 本発明において、「増殖培地」又は「培養培地」は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌等の微生物の増殖を支持するのに適する培地を意味する。代表的に、増殖培地は、少なくとも炭素源、アミノ酸源及び窒素源、並びにリン源を含む。増殖培地は、任意に、特定の微生物の増殖を選択的に阻害する及び/又は選択的に促進する抗生物質等の化合物を含み得る。特定の実施形態において、増殖培地は、生体内変換プロセスに用いられる基質等の特定の化合物を生成するのに必要とされる基質を含み得る。特定の実施形態において、増殖培地は、バイオマスを含む又はバイオマスからなる。 本発明において、「バイオマス」の用語は、概して、生存生物又は最近まで生きていた生物由来の生物材料を意味する。特にバイオマスの用語は、植物又は動物バイオマスを含む生物由来の未処理材料を含む。バイオマスの例は、以下のものに限られないが、用材又は紙製品に適さない成木、パルプ、再生紙、有機廃棄物含む林産物、草、わら、作物及び動物糞尿等の農業製品、並びに藻類及び海藻等の水産製品を含む。バイオマスの例は、ススキ、麻、スイッチグラス、テンサイ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、米、大豆、ナタネ(カノーラを含む)、モロコシ、サトウキビ、ラッカセイ、綿、ハウチワマメ、並びにユーカリからアブラヤシ、ポプラ、ヤナギに至る種々の樹木種の多くのタイプの植物由来の木材又は植物性材料を含む。具体的なバイオマス原料は、以下のものに限られないが、植物残渣、広葉樹又は針葉樹の幹、穂軸、わら、草、葉、種、紙等を含む(例えば、Sun et al., Bioresource Technology 83 (2002) 1-11を参照)。バイオマスの用語は、変換されたバイオマス又は二次バイオマスを含み、それらは本質的に加水分解された前処理済みバイオマス製品を含む。好ましい実施形態において、本発明に係るバイオマスは、例えばセルロース、ヘミセルロース及び/又はキシランといったリグノセルロース系材料を含む。 本発明に係る「リグノセルロース系バイオマス」の用語は、リグニン、セルロース及び/又はキシランを含むバイオマス原料を意味する。従って、リグノセルロース系バイオマスの用語は、本質的に、生物由来の未処理材料を意味する。リグノセルロース系バイオマスの用語は、変換されたバイオマス又は二次バイオマスを含み、それらは本質的に加水分解された前処理済みバイオマス製品を含む。リグノセルロース系バイオマスの例は、以下のものに限られないが、ススキ、ナタネ、スイッチグラス、麻、テンサイ、コムギ、コムギわら、トウモロコシ、ポプラ、ヤナギ、モロコシ、サトウキビ及びユーカリからアブラヤシの範囲の種々の樹木種を含む多くのタイプの植物由来の木材又は植物性材料を含む。 本発明において、「発酵方法」の用語は、微生物により炭素源から生成物を生産するプロセスを意味する。発酵方法は、酸化、還元、重合及び加水分解等の化学的反応並びに生合成を含み、空気の存在又は非存在が必要とされ得る。好ましくは、その発酵方法は、装置、又は、特に目的の化合物を生成するための専用の発酵タンク内で行われ得る。 本発明において、「生体内変換」又は「生物変換」は、所定の物質を目的の物質に変換するために細菌又はその抽出物により媒介される作用である。基質は炭素源と異なり、通常、細菌により消化されない。 「発酵タンク」の用語は、1つ又はそれ以上の管及び/又はタワー若しくは配管を含む発行システムを含む。本明細書において後に説明するように、いくつかの実施形態において、発酵タンクは、第1の増殖リアクター及び第2の発酵リアクターを含み得る。従って、発酵タンク又は発酵反応物に酸化剤を加えると言及する場合、必要に応じてそれらのリアクターのいずれか又は両方に加えることを含むと理解されるべきである。 本発明において、「微生物に対する酸化剤の抑制濃度(IC)」は、培養の3日後、好ましくは2日後にその微生物の増殖が検出できないといったその微生物の増殖を阻害する又は抑制する培養培地における酸化剤の最小濃度を意味する。また、「デイノコッカス細菌又はその関連細菌に対する酸化剤の抑制濃度(ICD)」は、デイノコッカス細菌の増殖を阻害する又は抑制する培養培地における酸化剤の最小濃度を意味する。ICは、試験培養を行うことにより、微生物ごと又はその菌株ごとにおいて、また酸化剤ごとに容易に確認され得る。例えば、目的の菌株は、いくつかの増大された濃度の酸化剤を含む培養培地のそれぞれで、同様に培養され得る。2日又は3日後に、培養培地を観察して微生物の増殖を測定し、これによりICの測定がなされる。 培養プロセス 本発明者らは、培養培地に少なくとも1つの酸化剤を用いることがデイノコッカス細菌又はその関連細菌の増殖に好ましい状態を維持し、他の微生物の増殖を抑制することに寄与し得ることを見出した。 また、本発明者らは、酸化剤の存在がデイノコッカス細菌の培養/発酵性能を改善し得ることを見出した。従って、本発明は、デイノコッカス細菌の培養、増殖、発酵及び/又は単離/選択の改善された方法に用いられ得る。 発酵プロセス 上記のように、細菌、ウィルス又は真菌の汚染等の微生物汚染は、発酵プロセスを繰り返す前に、生産ラインを停止し、装置を空にし、洗浄する必要が生じるような発酵プロセスにおける重大な被害を与え得る。予備的な除染工程が発酵を行う前に装置を無菌化するのに用いられたとしても、微生物汚染が未だ装置内に残り得る、及び/又は微生物汚染が播種される選択された微生物を含む増殖培地及び/又は培養培地により起こり得る。 従って、本発明の目的は、デイノコッカス細菌を用いる改善された発酵方法を提示することであり、本発明では、酸化剤が該酸化剤に対する耐性が低い感染性微生物による汚染を抑制する又は根絶するために用いられる。 本発明の発酵方法は、大量の微生物酵素(例えばカタラーゼ、リパーゼ等)、代謝物質(例えばエタノール、アミノ酸、ビタミン等)、組換え産物(例えばインスリン、インターフェロン等)を生成するために、及び/又は基質を生体内変換するために、また、化学、医薬、生物工学、及び食品産業といったいくつかの産業に適応される発酵産物を生成するために用いられ得る。 一態様において、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の使用と、酸化剤、特にH2O2の使用とを組み合わせることにより、いくつかの種類の化合物を生成するのに適する改善された発酵方法を提供する。 特に、本発明は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の使用と、H2O2の使用とを組み合わせることにより、バイオマスから目的の化合物を生成するための改善された発酵方法を提供する。 H2O2は、発酵方法の際に特に有益となり得る。実際に、H2O2を加えることは、デイノコッカス細菌の増殖と発酵産物の生成との両方を行う条件に適合する。H2O2の適切な容量は、予備の除染としてのみならず、発酵のプロセスの全体の間における選択的除染として用いられ得る。 そのような発酵方法は、現行の発酵方法と比較して抗生物質を用いずに、又は抗生物質の量を少なくして行われ得る。一実施形態において、酸化剤は、発酵のプロセスの間、汚染微生物のりょうを低減するための抗生物質の代わりに用いられ得る。 特定の実施形態において、発酵方法は、 a)炭素源を含む増殖培地を酸化剤と接触させるステップと、 b)その増殖培地をデイノコッカス細菌又はその関連細菌と、その細菌の培養及び/又は増殖に適する条件で接触させるステップと、 c)目的の化合物を生成するためのデイノコッカス細菌を培養するステップと、 d)任意に、発酵により生成する目的の化合物を回収するステップと、を備えている。 本発明において、ステップa)及びb)は、培養培地、培養体積、化合物等に依存して、同時に又は順次行われ得る。 本発明の発酵方法は、広い範囲の生成物を生産するために実施され得る。当業者は、目的の生成物の最適量を回収するために、培養培地の組成/性質、酸化剤及び/又はデイノコッカス細菌等の量を調整することにより、目的の生成物の生産に好ましい条件を容易に適応し得る。 特定の実施形態において、発酵方法は、ヒト及び/若しくは動物による消費、又は産業的使用、生体内変換による化合物の変換、組換え産物の生成、及び微生物自体の生成(例えば動物飼料として使用)のためのアミノ酸、タンパク質(酵素を含む)、ビタミン、アルコール等の代謝物質の生成に用いられる。 本発明において、培養培地はバイオマスを含み得る。 特定の実施形態において、培養培地は、デイノコッカス細菌の増殖及び/又は目的の化合物の生成/生物変換に好ましい1つ又はそれ以上の物質(例えばアミノ酸、ビタミン又はミネラル塩)をさらに含み得る。 デイノコッカス細菌の増殖に好ましい最適な条件は、当業者により設定される。同様に、当業者は、所定の化合物を生成するのに必要な物質及び/又は炭素源を知っている。当業者により容易に適応され得る発酵方法の例は、バイオエネルギー産物の生成に関するWO2009/063079、医薬化合物の生成に関するWO2010/081899及び/又は発酵性糖の生成に関するWO2010/094665に開示されている。 選択プロセス さらなる態様において、本発明は、いくつかの微生物を含むサンプルからデイノコッカス細菌を選択的に培養する方法を提供する。 実際に、細菌、真菌、ウィルスを含む他の微生物と比較して、過酸化物化合物(例えばH2O2)等の酸化剤に対するデイノコッカス属の細菌の高い耐性は、他の特徴付けられていない微生物のうちからデイノコッカス細菌を単離/選択するのに有益となり得る。 一実施形態において、特徴付けられていない微生物を含むサンプルには、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を増殖させるのに適する、又は少なくとも1つの他の微生物の増殖を抑制するのに適する条件下で酸化剤が加えられる。その後、生存する又は増殖する微生物が、その処理されたサンプルとさらに選択されたデイノコッカス細菌又はその関連細菌とから単離され得る。 特定の実施形態において、培養の更なるパラメータは、選択を実行するために調整され得る。 例えば、培地のpHは4〜10に維持されてもよく、培地の温度は4℃〜70℃に維持されてもよい。 当業者は、培養の条件をプロセスの特異性に容易に適応し得る。 他の態様において、本発明は、デイノコッカス細菌、その関連細菌又はその抽出物を含む発酵スターターを調製する方法を提供する。スターターは、一般に、発酵方法を開始するために、及び/又は発酵方法の少なくとも開始を助けるために用いられる。 本発明の発酵スターターは、他の成分のうち、デイノコッカス細菌若しくはその関連細菌、又はその抽出物の培養物を有利に含む。例えば、デイノコッカス細菌又はその関連細菌の培養及び/又は選択の後、その細菌は、適応された培養培地及び任意に外因性酵素、抗生物質等の付加成分を含むペーストに変換される。 本発明の発酵スターターは、いくつかの発酵方法、及びより具体的にはバイオマスを分解するための発酵プロセスに用いられ得る。有利には、適切な量の発酵スターターは、発酵方法の開始のためにバイオマスと混合される。その量の発酵スターターは、例えばバイオマス及び/又は発酵産物に依存して容易に適応され得る。 本発明の方法における酸化剤の供給 本発明において、酸化剤は、発酵方法に依存して、一度に添加、連続的に添加又は定期的に添加され得る。また、酸化剤の濃度は、適当なセンサを用いて、その方法の全ての段階において制御又は監視され得る。その濃度は、例えば更なる量の酸化剤の追加、又は逆に、さらなる希釈剤及び/若しくは新鮮な培養培地及び/若しくは新鮮な微生物の追加により調整されうる。 本発明の発酵方法は、バッチ処理方式、フェドバッチ処理方式、連続処理方式を含む発酵方法の全ての種類に適応され得る。当業者は、プロセスの特異性に培養条件を容易に適応し得る。 一実施形態において、追加量の酸化剤は、デイノコッカス細菌の増殖を阻害せずに微生物汚染の増大に影響するのに適する酸化剤濃度が残存するように、新鮮培地と共に発酵タンクに加えられる。 例えば、発酵方法がバッチ処理方式を用いて行われる場合、単一の量の酸化剤が用いられ、新しいバッチになるごとに供給され、好ましくは新しいバッチと混合されて供給される。 発酵方法が連続処理方式を用いて行われる場合、新鮮培地がケモスタットに連続的に加えられ、酸化剤も連続的に加えられてもよく、好ましくは新鮮な培地と共に加えられる。 他の実施形態において、酸化剤の濃度は、定期的に確認され、必要であれば適切な量の酸化剤が加えられる。 一実施形態において、2つ又はそれ以上のケモスタットは、前のケモスタットのオーバーフローを後のケモスタットで回収するように連続して接続され得る。有利には、システムの各ケモスタットには所定量の酸化剤が含有されている。この他に、又はこれに加えて、ケモスタット間の相互汚染のリスクを低減するために、酸化剤はそのオーバーフローと共に添加され得る。 特定の実施形態において、酸化剤は、その方法の分解ステップの間にのみ用いられる。有利には、さらなる酸化剤が発酵ステップ自体の間に用いられない。 分解ステップの間に、酸素需要量は有利に、培地中で酸素を生成する酸化剤の培養培地中への添加により満たされる。 例えば、過酸化水素は、分解ステップの間に酸化剤として用いられ得る。過酸化水素は、培養物を除染し、自然に水及び酸素に分解する。培地中での酸素のこの内因性生成のため、さらなる外因性酸素は必要とならない。この方法の第2の部分(すなわち発酵ステップ)の間、酸化剤はさらに追加されない。酸化剤が事前に分解するため、培地には酸化剤及び酸素の両方が遊離する。発酵ステップは、嫌気条件下で行われ得る。 さらなる実施形態において、発酵タンクに培養培地を充填する前、充填すると同時、又は充填した後に、酸化剤と微生物との混合物が発酵タンクに播種される。酸化剤は、少なくとも1種のデイノコッカス細菌又はその関連細菌を選択するように、微生物の混合物から非耐性微生物を除去するための選択因子として作用する。例えば、デイノコッカス細菌以外の多くの微生物の増殖を阻害するために、H2O2は200mM以下、好ましくは180mM以下で用いられ得る。 さらに、培養条件(例えば温度、pH,濃度、反応時間、触媒の存在/非存在等)の変更により、酸化剤の選択的致死効果は増大し得る。例えば、指数関数的に増殖する微生物は、非増殖細菌よりもH2O2に対する感受性が高いであろう。 同様に、補助剤が選択された微生物における致死特性に集中するために酸化剤と共に用いられ得る。例えば、H2O2とアスコルビン酸とを組み合わせることにより、グラム陰性細菌を選択的に根絶できる。この他に又はこれに加えて、2つ又はそれ以上の酸化剤が同時に用いられ得る。 本発明において、少なくとも1つの酸化剤は、デイノコッカス細菌又はその関連細菌を増殖し得る条件下で、例えばICD未満で、好適に用いられる。好ましくは、少なくとも1つの酸化剤は、少なくとも1つのE.coli等の他の微生物の増殖を阻害する又は抑制する条件下で用いられる。 代表的な実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、0.05ICD〜0.95ICD(すなわちICDの5%〜95%)の濃度、例えば0.1ICD、0.2ICD、0.3ICD、0.4ICD、0.5ICD、0.6ICD、0.7ICD、0.8ICD又は0.9ICD以下の濃度で用いられる(例えば加えられる又は維持される)。その濃度は、用いられる微生物、プロセス条件、酸化剤の性質及び/又は培養系に依存して当業者により調整され得る。 例として、H2O2は、少なくともE.Coli、S.Cerevisiae及び/又はZ.mobilisを除去するために、10mM〜300mM、好ましくは30mM〜180mMの濃度で用いられ得る、又はその濃度に維持され得る。 リグノセルロース系バイオマスの前処理 リグノセルロース系バイオマスの変換は、1970年代から徹底した研究努力の対象となっている(Blumer-Schuette等.,2008, “Extremely thermophilic microorganisms for biomassconversion: status and prospects”, Curr Opinion Biotechnol 19, pp. 210-217;Perez et al., 2002, Int Microbiol 5, pp 53-63)。Mosier等(BioresourceTechnology 96 (2005) 673-686)により報告されているように、リグノセルロース系バイオマスの前処理は、炭水化物ポリマーを発酵性糖に変換する酵素により近づくことが可能なセルロースを生成するために、セルロース系バイオマスの構造を変換するのに必要である。これに関して、本発明の方法は、リグニンを部分的に分解することによりリグノセルロース系バイオマスを前処理するための酸化剤を用いることを提案する。この脱リグニンは、炭素源としてリグノセルロース系バイオマスを用いるためのデイノコッカス細菌の能力を増大し、発酵方法を改善する。 例えば、リグノセルロース系バイオマスは、リグニンを部分的に分解又は可溶化させる1mM〜1Mの濃度の酸化剤で前処理され得る。 この前処理ステップは、少なくとも10%、好ましくは20%〜80%のリグニンを分解するのに十分な時間で行われ得る。その後、必要であれば、細菌の播種前に、生じた混合物は、デイノコッカス細菌を増殖させ得る範囲に酸化剤の濃度を低減するために、水又は他の適当な希釈剤の追加により希釈され得る。 発酵タンク 本発明の目的は、本発明の発酵方法の実施専用の手段を含む発酵タンクを提供することである。 本発明において、発酵方法は、容量/体積が数リットルから数千リットルまで変更し得る発酵タンク内で行われ得る。 有利に、発酵タンクは、必要量の酸化剤を発酵タンク内に輸送するのに適応された導入手段等の専用の手段を含む。 特定の実施形態において、発酵タンクは、酸化剤を発酵タンクに輸送し、拡散するためのスパージャ(例えばザルトリウス社の“Ring sparger UniVessel”)を含む。 特定の実施形態において、酸化剤は、発酵領域において直接生成され得る。そのような発酵領域における生成は、不安定な酸化剤の輸送及び貯留を避けるのに有益となり得る。例えば、Rusty Pittmanら(“On siteproduction of Hydrogen peroxide”, UOPLLC-2003)により示されるように、H2O2は、水素と酸素とから直接的合成により生成され得る。 さらに、管等の酸化剤をベッセル内に輸送するための手段が設けられ得る。例えば、その管は、酸化剤を輸送するだけの専用の管であってもよい。このほかに、その管は、培養培地及び/又は微生物と、酸化剤とを発酵タンク内に二者択一的に又は同時に輸送するのに用いられる一般的な管であってもよい。 発酵タンクは、温度を一定に保つために熱交換器又はサーモスタットをさらに含み得る。特に、酸化剤から酸素が解離させる温度の増大を平均化するための冷却手段が設けられ得る。 特手の実施形態において、発酵タンクは曝気装置を備えておらず、酸化剤が必要な酸素を供給する。 一実施形態において、発酵タンクは、発酵のプロセス中の酸化剤の濃度を測定/制御するためのセンサ及び/又は制御システムを含む。 一般に、当業者は、発酵タンクの設計を実施される本発酵方法に容易に適合し得る。 実施例1:野生型及び組換え型デイノコッカス細菌に対する過酸化水素の抑制濃度(IC)の決定 プロトコール 参照菌株 ザイモモナス・モビリス DSM424、30℃ エシェリキア・コリ K12、30℃ サッカロマイセス・セレビシエ 2640、30℃ 試験菌株 デイノコッカス・ラディオデュランス R1、30℃ M36−7Dwt、45℃ 前培養 前培養をCMG1%中で3日間行った。その培養物の純度を確認した後、細胞ペレットを無菌水で3回洗浄し、その後、DOを2に調整した。 過酸化水素 過酸化水素保存溶液:H2O2(30%wt溶液、SIGMA ref.216763、4℃保存) 試験濃度:0、50、100、120、140、160、180、200、300及び400mM 溶液nO1;1M:20mLのCMG培地中に2.3mLのH2O2保存溶液を含有 溶液nO2;100mM:30mLのCMG培地中に340μLのH2O2保存溶液を含有。 H2O2範囲の準備 マイクロプレートの準備 180μlの培地を培養ウェルに分注(ブランクウェルには200μl)し、 ウェルに2の光学濃度(600nm)の洗浄した20μlの細胞ペレットを添加し、 蒸発を制限するためにウェルの表面に50μLのミネラルオイルを緩やかに添加し、 マイクロプレートを実施例の最初に示す最適増殖温度に係る30℃又は45℃で3日間インキュベートした。吸光度の測定により増殖を監視した。 結果 結果を以下の表に要約する。 参照微生物(Z.mobilis, E. coli及びS. cerevisiae)と比較して、D.radiodurans R1並びにD. geothermalis M36-7Dwt及びその変異体は、高濃度(190mMまで)の過酸化水素の存在下で増殖できる。 実施例2:異なる温度における2つの組換え型デイノコッカス細菌に対する過酸化水素の抑制濃度(IC)の決定 プロトコール Deinococcusgeothermalis M36-7D_21及びMX61E_04は、15 mM NH4Cl及び5.30 mM K2HPO4を含む20%デンプン溶出液で培養した。5mlの培養液を室温又は45℃において、異なる濃度のH2O2(20、50、100、150及び200mM)で1時間処理した。コントロールのサンプルは、未処理のサンプル(0mMH2O2)に対応する。コントロール及び処理サンプルを、10%溶出デンプンを含むアガープレートに播種し、45℃で24及び96時間培養した。抑制濃度(mMで表されるIC)は、24又は96時間後に増殖が無い過酸化水素濃度である。 結果 結果 D.geothermalisの両方の菌株は、(実施例1に示すような)参照微生物と比較して過酸化水素に対する良好な耐性を示した。さらに、過酸化水素に対するD.geothermalisの耐性は、室温で培養された場合のほうが高かった。 実施例3:D.geothermalisの増殖における過酸化水素の添加の影響 プロトコール Deinococcusgeothermalis M36-7D_21の増殖を、ペプトン 2 g/L ; 酵母エキス 5 g/L ; グルコース 55 mM (10 g/L) ; MOPS酸 40 mM ; NH4Cl 20 mM ; NaOH 10 mM ; KOH 10mM ; CaCl2.2H2O 0,5 μM ; Na2SO4.10H2O0,276 mM ; MgCl2.6H2O 0,528 mM ; (NH4)6(Mo7)O24.4H2O3 nM ; H3BO3 0,4 μM ; CoCl2.6H2O30 nM ; CuSO4.5H2O 10 nM ; MnCl20,25 μM ; ZnSO4.7H2O 10 nM ; D-ビオチン 1 μg/L ; ナイアシン(ニコチン酸) 1 μg/L ; ピリドキシン(ピリドキサール HCl、ビタミンB6) 1 μg/L ; チアミンHCl(ビタミンB1) ; FeCl3 20μM ; クエン酸ナトリウム.2H2O 20 μM ; K2HPO45,7 mMを含むCMG培地が入っているマイクロプレート内で行った。100mMの過酸化水素の添加を、T0(増殖の開始)又は対数期に行った。増殖をOD600の測定により監視した。 結果 過酸化水素の添加は、T0又は対数増殖期のどちらで行ってもM36-7D_21の増殖に影響しなかった。 実施例4:H2O2を用いたバイオリアクターでのデイノコッカス細菌の培養 以下の試験において、Zymomonas mobilisからのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子及びアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する組換え型Deinococcus geothermalisを用いる。 4.1:バイオマスの前処理を行わないエタノールの生成 1g乾燥重量/Lの菌株を1Lバイオリアクター(Biostat Q + Sartorius)を用いて40g/Lの乾燥コムギで培養する。温度を40℃に維持し、pHを8に維持する。 デイノコッカス細菌の増殖及びエタノール生合成のための酸素需要量を満たすためにH2O2が用いられる。この目的のために、バイオリアクター内のH2O2濃度を170mM〜180mMに維持するように、3MのH2O2溶液を0.0015vvm(酸化剤体積/培養体積/分)で輸送するポンプを用いてバイオリアクターに連続的に加える。数日間にわたってエタノールが継続的に生成される。 4.2:バイオマスの前処理を行ったエタノールの生成 前処理ステップ:乾燥コムギを含む1Lバイオリアクター(Biostat Q + Sartorius)内に、0.0025vvmで輸送するポンプを用いて24時間連続的に5MのH2O2溶液を加える。その後、H2O2の濃度を低減するためにバイオリアクター内に純粋なH2Oを加える。 発酵ステップ:バイオリアクター内のH2O2濃度をセンサを用いて監視し、H2O2濃度が150mM未満になった時に、2g乾燥重量/Lのデイノコッカス細菌をバイオリアクター内に供給する。温度を55℃に維持し、pHを7に維持する。バイオリアクター内のH2O2濃度を170〜180mMに維持するために、0.0025vvmで輸送するポンプを用いてバイオリアクター内に2MのH2O2溶液を連続的に加える。数日間にわたってエタノールの生成が維持され、酸化剤による前処理がリグニン分解を増大し、エタノールの生合成を増強することを示す。 実施例5:培養液の除染及び酸素供給のための過酸化水素を用いたデイノコッカス細菌の培養の工業的プロセス Deinococcusgeothermalisを1Lバイオリアクター(Biostat Q + Sartorius)において40g/Lの乾燥コムギで培養する。温度を45℃で維持し、pHを6で維持する。H2O2が増殖のための酸素需要量を満たすために用いられ得る。この目的のために、1〜5Mの範囲のH2O2濃縮溶液を、2.5〜0.15mLH2O2/minで輸送するポンプを用いてバイオリアクター内に連続的に加える。 デイノコッカス細菌又はその関連細菌の使用と過酸化水素(H2O2)の使用とを組み合わせて培養培地から目的の化合物を生成するための発酵方法。 (a)炭素源を含む培養培地を過酸化水素に接触させるステップと、 (b)前記デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養及び/又は増殖させるのに適する条件で前記培養培地を前記デイノコッカス細菌又はその関連細菌に接触させるステップと、 (c)前記目的の化合物を生成するために前記デイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養するステップと、 (d)任意に、前記発酵により生じる前記目的の化合物を回収するステップとを含む請求項1に記載の方法。 前記培養培地におけるH2O2の濃度は、前記デイノコッカス細菌又はその関連細菌に対する酸化剤の抑制濃度(ICD)の5%〜95%であり、好ましくは前記ICDの25%〜90%である請求項1又は2に記載の方法。 前記デイノコッカス細菌又はその関連細菌を前記培養培地に供給する前に、供給すると同時に、及び/又は供給した後に、H2O2が前記培養培地に加えられる又は添加される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 前記培養培地にH2O2が連続的又は経時的に加えられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 前記培養培地におけるH2O2の濃度は監視され、前記ICDの95%未満に維持される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 前記培養培地は、リグノセルロース系バイオマス等のバイオマスを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 前記バイオマスを変換、転換又は分解するための請求項7に記載の方法。 アルコール、好ましくはエタノールを生成するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 目的の発酵性糖、代謝物質及び/又は薬物を生成するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 基質を目的の物質に転換するための請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。 バイオリアクター又はケモスタット等の発酵タンクであって、 増殖培地と、H2O2又はH2O2源と、デイノコッカス細菌又はその関連細菌又はその抽出物と、H2O2を前記発酵タンクに輸送する手段及び/又はH2O2を生成する手段及び/又はH2O2の濃度を監視する手段とを備えているバイオリアクター又はケモスタット等の発酵タンク。 デイノコッカス細菌又はその関連細菌を用いる微生物生産の際の発酵槽における細菌汚染を抑制するための方法であり、前記発酵槽にH2O2を加えることを含む方法。 細菌を用いて発酵する方法であって、 前記細菌はデイノコッカス細菌又はその関連細菌であり、 H2O2の存在下で行われる方法。 本発明は、デイノコッカス細菌の増殖及び少なくとも1つの他の微生物の増殖の抑制に適する条件下で酸化剤を用いてデイノコッカス細菌又はその関連細菌を培養する方法に関する。【選択図】図1 配列表