生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_細胞培養培地の作製方法
出願番号:2015516500
年次:2015
IPC分類:C12N 5/00


特許情報キャッシュ

フォン ハゲン、 ヨルク JP 2015523069 公表特許公報(A) 20150813 2015516500 20130517 細胞培養培地の作製方法 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 591032596 Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 フォン ハゲン、 ヨルク EP 12004517.4 20120615 C12N 5/00 20060101AFI20150717BHJP JPC12N5/00 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2013001486 20130517 WO2013185876 20131219 22 20141211 4B065 4B065AA87X 4B065AA91X 4B065BB02 4B065BB03 4B065BD11 4B065CA25 4B065CA44 4B065CA60 本発明は、乾燥粉末細胞培養培地の製造方法に関する。共凍結乾燥により生成される混合粒子の調製および使用により、均一に混和された細胞培養培地がもたらされる。 発明の背景 水溶液での細胞培養培地は、細胞の増殖を補助および維持するならびに/または目標とする特定の産物の生成に付随的な(adventitious)、所望の生理学的な細胞条件を維持する環境を提供することができる。 細胞培養培地は、増殖および/または目標とする生理学的状態を補助すべき生物の種類に応じて成分(component)の複雑な混合物を含み、100種を超える異なる成分の複雑な混合物を含む場合がある。 哺乳動物、昆虫または植物の細胞の増殖に必要な細胞培養培地は、典型的には、細菌、酵母または菌類の増殖を補助するための培地よりも格段に複雑である。 開発された初期の細胞培養培地は、血漿、血清、胚抽出物もしくは他の明確でない生物学的抽出物またはペプトン等の不明確な成分から成った。そのため、化学的に明確な培地の開発によって大きな進歩がもたらされた。化学的に明確な培地は、しばしばアミノ酸、ビタミン、金属塩、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子、緩衝剤、ホルモンおよび当業者に既知である更に多くの物質を含むが、これらのみに限定されない。 一部の細胞培養培地は滅菌水性液体として提供されている。液体細胞培養培地の欠点は、その短縮された貯蔵寿命ならびに輸送および貯蔵の困難さである。結果として、多くの細胞培養培地は、現在、微粉砕された乾燥粉末混合物として提供されている。微粉砕された乾燥粉末混合物は水および/または水溶液に溶解させる目的で製造され、溶解した状態で、多くの場合は他の補助剤と共に、増殖用のおよび/または同じ前記細胞からの生物学的製剤の生成用の実質的な栄養基礎培地(nutrient base)を細胞に供給するように設計されている。 粉末の形態での細胞培養培地の作製は極めて厳密である。粉末化培地は典型的には、混合および粉砕プロセスによって、例えばボールミル粉砕によって培養培地の乾燥成分を混合することにより作製される。 一方、濃度で最大9桁の差がある配合成分(ingredient)を均質化する必要があることから、粉砕プロセスでは均質な混合物を生成することは困難であることが多い。このことは、1キログラムの培地組成物中にマイクログラム未満で存在する成分を細胞培養培地中に均一に分散させる必要があることを意味する。 予め作製した液体培養培地を凍結乾燥させることにより、この困難を克服することが試みられている。しかしながら、凍結乾燥プロセスでは、凍結乾燥時に培地の成分の内の一部が不溶性となるまたは凝集体となる可能性があり、その結果、再溶解は困難である、または不可能である。加えて、凍結乾燥等のプロセスにより粉末化補助剤を生成しようする場合、多くの培地補助剤、特にFBS等の血清補助剤は、実質的な失活を示す、または完全に不活性化される。 従って、前述した欠点を有しない粉末化細胞培養培地の改善された製造方法を見出すことが明らかに必要である。 発明の簡単な説明 特に少量で存在する成分が、均一に分散されている粉末化細胞培養培地を作製することができることが見出された。このことは、少なくとも1種の低存在量成分(low abundant component)とより高濃度で培地中に存在する1種の担体成分との混合粒子を調製することにより実現される。この混合粒子は共凍結乾燥により調製され、次いで、粉砕にかける成分の混合物に添加され得る。 そのため、本発明は、細胞培養培地の製造方法であって、a)細胞培養培地の少なくとも2種の成分を共凍結乾燥する工程と、b)工程a)で生成した1種または複数種の共凍結乾燥物と細胞培養培地の他の成分とを混合する工程と、c)工程b)の混合物を粉砕にかける工程とによる、細胞培養培地の製造方法を対象とする。 好ましい実施形態では、工程a)において、一方の成分の量、即ち低存在量成分の量は他方の成分の量、即ち高存在量成分(high abundant component)の量の5(重量)%未満である。このことは、100gの高存在量成分を使用する場合に5g未満の低存在量成分を使用することを意味する。 好ましい実施形態では、高存在量成分は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)または塩化マグネシウム(MgCl2)である。 別の好ましい実施形態では、工程a)において、共凍結乾燥を、成分の水溶液を生成し、混合物を凍結して減圧下で液体を除去することにより実施する。 別の好ましい実施形態では、工程b)由来の混合物を、ピンミル、フィッツミル(fitz mill)またはジェットミル中で粉砕する。 別の好ましい実施形態では、工程b)由来の混合物を粉砕前に0℃未満の温度に冷却する。 別の実施形態では、工程a)において、細胞培養培地の少なくとも2種の成分を共凍結乾燥することにより、2種以上の異なる共凍結乾燥物をそれぞれ生成する。 本発明は、本発明に係る方法により作製される粉末化細胞培養培地を更に対象とする。 本発明は、1種または複数種の共凍結乾燥物を含む粉末化細胞培養培地を更に対象とする。 好ましい実施形態では、粉末化細胞培養培地は2種以上の共凍結乾燥物を含む。 好ましい実施形態では、少なくとも1種の共凍結乾燥物において、少なくとも1種の成分の量は少なくとも1種の他の成分の量の1%未満である。 別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の共凍結乾燥物は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)または硫酸マグネシウム(MgSO4)を含む。他の培地と比較して本発明に係る培地により達せられるCHO S細胞の積算生細胞密度(integrated viable cell density)を示す。更なる詳細を例3中に見出すことができる。他の培地と比較して本発明に係る培地により達せられる、モノクローナル抗体を発現する容積力価(volumetric titer)を示す。更なる詳細を例3中に見出すことができる。本発明の方法に従って作製された3バッチの細胞培養培地の粒度分布を示す。更なる詳細を例3中に見出すことができる。 本発明に係る細胞培養培地は、細胞のインビトロでの増殖を維持するおよび/もしくは補助するならびに/または特定の生理学的状態を補助する成分の任意の混合物である。本発明に係る細胞培養培地は複雑な培地であってもよく、または化学的に明確な培地であってもよい。細胞培養培地は、細胞のインビトロでの増殖を維持するおよび/もしくは補助するのに必要な全ての成分を含むことができ、または更なる成分が別途添加されるように一部の成分のみを含むことができる。本発明に係る細胞培養培地の例は、細胞のインビトロでの増殖を維持するおよび/もしくは補助するのに必要な全ての成分を含む完全培地、培地補助剤またはフィードである。好ましい実施形態では、細胞培養培地は完全培地である。 典型的には、本発明に係る細胞培養培地は、バイオリアクタ中で細胞の増殖を維持するおよび/もしくは補助するために使用される、ならびに/または特定の生理学的状態を補助するために使用される。 哺乳動物細胞培養培地は、哺乳動物細胞のインビトロでの増殖を維持するおよび/または補助する成分の混合物である。哺乳動物細胞の例は、ヒトまたは動物の細胞、好ましくはCHO細胞、COS細胞、I VERO細胞、BHK細胞、AK−1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞またはヒト細胞である。 化学的に明確な細胞培養培地は、化学的に不明確な物質を全く含まない細胞培養培地である。このことは、培地で使用する全ての化学物質の化学組成が既知であることを意味する。化学的に明確な培地は、酵母、動物または植物の組織を全く含まず、フィーダー細胞、血清、抽出物もしくは消化物または化学的に十分に明確でないタンパク質を培地にもたらす可能性がある他の成分を含まない。化学的に不明確なまたは十分に明確でない化学成分は、その化学的な組成および構造が既知ではない化学成分であり、様々な組成物中に存在する化学成分であり、または膨大な実験的努力(アルブミンまたはカゼインのようなタンパク質の化学的な組成および構造の評価に匹敵する)によってのみ明確にされ得るかもしれない化学成分である。 粉末化細胞培養培地は、粉砕プロセスにより生じる細胞培養培地である。このことは、粉末化細胞培養培地は乾燥した粒子状培地であり液体培地ではないことを意味する。 本発明に係る培地で培養される細胞は、細菌細胞のような原核細胞または植物細胞もしくは動物細胞のような真核細胞であることができる。細胞は正常細胞、不死化細胞、異常細胞(diseased cell)、形質転換細胞、変異体細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆体細胞または胚細胞であることができ、これらはいずれも樹立細胞株もしくは形質転換細胞株であることができ、または天然の供給源から入手され得る。 粒子のサイズは粒子の平均直径を意味する。粒子直径をシリコーンオイル中でのレーザー光散乱により決定する。 本発明に係る凍結乾燥は、物質を凍結し、次いで周囲圧力を低下させて物質中の凍結した水を固相から気相へ直接昇華させることを可能にすることによる凍結−乾燥である。 本明細書で使用する場合、「共凍結乾燥」または「共凍結乾燥物」は、同一の容器中での溶液中の1種を超える化合物の凍結乾燥、凍結−乾燥または真空乾燥により生じる産物を指す。例えば、2種の溶液を同じ容器中で組み合わせてもよく、生じた溶液の組み合わせを共に凍結乾燥し、その結果、溶液中の成分が同時に凍結乾燥される。あるいは、培地成分とも称される2種以上の化合物を同じ液体に溶解させ、その後に共に凍結乾燥することができる。そのような共凍結乾燥の結果として生じた産物は、共凍結乾燥されている全ての成分の混合物を含む固体物質から成る共凍結乾燥物である。 各容器または装置に不活性ガスを充填することにより、不活性雰囲気が生じる。適切な不活性ガスは、アルゴンのような希ガスであり、または好ましくは窒素である。これらの不活性ガスは非反応性であり、望ましくない化学反応が起こるのを防止する。本発明に係る方法では、不活性雰囲気の発生は、例えば液体窒素または窒素ガスの導入により、酸素の濃度が10%(体積/体積)絶対未満に低下することを意味する。 様々な種類のミルが当業者に既知である。遠心式衝撃粉砕機(centrifugal impact mill)とも称されるピンミルは、高速回転するディスク上に突出するピンが破砕エネルギーを供給することにより、固体を微粉砕する。ピンミルは、例えばMunson Machinery(アメリカ合衆国)、Premium Pulman(インド)またはSturtevant(アメリカ合衆国)から販売されている。ジェットミルは、圧縮ガスを使用して粒子を加速させ、処理室中で粒子を互いに衝突させる。ジェットミルは、例えばSturtevant(アメリカ合衆国)またはPMT(オーストリア)から販売されている。Fitzpatrick(アメリカ合衆国)により商品化されているフィッツミルは、粉砕用の羽根を備えるローターを使用する。 連続的に実施されるプロセスとは、バッチ式では実施されないプロセスである。粉砕プロセスが連続的に実施される場合、該粉砕プロセスは、ある期間にわたって培地の配合成分が持続的におよび着実にミル中に送られることを意味する。 本発明の方法に従って製造される細胞培養培地は、少なくとも1種または複数種の糖成分、1種または複数種のアミノ酸、1種または複数種のビタミンまたはビタミン前駆体、1種または複数種の塩、1種または複数種の緩衝成分、1種または複数種の補助因子、および1種または複数種の核酸成分を典型的には含む。 培地はまた、ピルビン酸ナトリウム、インスリン、植物性タンパク質、脂肪酸および/もしくは脂肪酸誘導体ならびに/またはプルロニック酸(pluronic acid)ならびに/または化学的に調製された非イオン性界面活性剤のような表面活性成分も含むことができる。適切な非イオン性界面活性剤の一例は、ポロクサマーとも称される、第1級ヒドロキシル基で終了する二官能性ブロックコポリマー界面活性剤であり、例えばBASF、ドイツから商品名pluronic(登録商標)で入手可能である。 糖成分は、グルコース、ガラクトース、リボースもしくはフルクトース(単糖の例)またはスクロース、ラクトースもしくはマルトース(二糖の例)のような全ての単糖または二糖である。 本発明に係るアミノ酸の例は、タンパク質構成アミノ酸、特に必須アミノ酸、即ちロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリン、ならびにD−アミノ酸のような非タンパク質構成アミノ酸である。 ビタミンの例は、ビタミンA(レチノール、レチナール、様々なレチノイドおよび4種のカロテノイド)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸、フォリン酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)、ならびにビタミンK(フィロキノン、メナキノン)である。ビタミン前駆体も含まれる。 塩の例は、炭酸水素、カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン酸、カリウムおよびナトリウム等の無機イオン、またはCo、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、Se、Si、Ni、Bi、VおよびZn等の微量元素を含む成分である。例は、硫酸銅(II)五水和物(CuSO4・5H2O)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)、塩化カリウム(KCl)、硫酸鉄(II)、無水モノ塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)、無水二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O)、硫酸亜鉛七水和物である。 緩衝剤の例は、CO2/HCO3(炭酸塩)、リン酸塩、HEPES、PIPES、ACES、BES、TES、MOPSおよびTRISである。 補助因子の例は、チアミン誘導体、ビオチン、ビタミンC、NAD/NADP、コバラミン、フラビンモノヌクレオチドおよび誘導体、グルタチオン、ヘムヌクレオチドホスフェート(heme nucleotide phophate)および誘導体である。 本発明に係る核酸成分は、シトシン、グアニン、アデニン、チミンまたはウラシルのような核酸塩基、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシンおよびチミジンのようなヌクレオシド、ならびにアデノシン一リン酸またはアデノシン二リン酸またはアデノシン三リン酸のようなヌクレオチドである。 本発明に係る凍結は、0℃未満の温度に冷却することを意味する。 本発明の主旨は、粉砕による粉末化細胞培養培地を提供することである。粉砕は非常に単純および確実であり、そのため粉末化細胞培養培地の作製に有利な方法である。これまでの粉砕の主な欠点は、低存在量成分の非効率的な分散であった。たった1つの微小な結晶が1キログラム以上の他の成分の混合物に添加されている低存在量成分を、粉砕された粉末化細胞培養培地中に均一に分散させることはほとんどできないことが容易に理解される。本発明は、容易で確実な改善を提供する。細胞培養培地の1種または複数種の低存在量成分は、担体として作用する細胞培養培地の1種または複数種の好ましくは高存在量成分と共凍結乾燥される。この共凍結乾燥により、低存在量成分は、生じた固体の共凍結乾燥物内に均一に分散される。共凍結乾燥物の質量の大部分は高存在量成分により生じるので、共凍結乾燥物は純粋な低存在量成分と比較して大量に細胞培養培地に添加することができ、そのため共凍結乾燥物は容易に測定することができ、共凍結乾燥物は粉砕により生じた培地内により一層均一に分散させることができる。 低存在量成分は、粉末化細胞培養培地中に1%未満で、好ましくは0.1%未満(乾燥粉末培地中の重量%)で存在する成分である。 高存在量成分は、粉末化細胞培養培地中に5%を超えて、好ましくは10重量%を超えて(乾燥粉末培地中の重量%)存在する成分である。 低存在量の細胞培養培地成分の例は当業者に既知である。低存在量の細胞培養培地成分は細胞培養培地の種類に応じて異なることができる。典型的な例は、スズまたはスズ塩、マンガンまたはマンガン塩、ニッケルまたはニッケル塩、バナジウムまたはバナジウム塩、カドミウムまたはカドミウム塩、モリブデンまたはモリブデン塩、銅または銅塩、セレンまたはセレン塩、ビオチンおよびメタケイ酸塩、ならびに上述の元素の内の1種または複数種を包含する他の化学化合物である。低存在量の細胞培養培地成分または低存在量の細胞培養培地成分を含む化学成分の例は、亜セレン酸ナトリウム亜セレン酸酢酸バリウム二酸化ゲルマニウムヨウ化カリウム硝酸銀塩化ジルコニル8H2O塩化アルミニウム、6H2Oメタバナジン酸アンモニウムモリブデン酸アンモニウム、4H2O塩化カドミウム、無水塩化クロム、6H2O塩化コバルト、6H2O硫酸第一マンガン、H2O硫酸ニッケル、6H2O臭化カリウム塩化ルビジウム塩化第一スズ、2H2Oである。 微量元素、即ち本発明に係る細胞培養培地中に存在することが多い低存在量成分は、例えば亜セレン酸ナトリウムまたは亜セレン酸の形態でのセレンである。 高存在量の細胞培養培地成分の例は当業者に既知である。高存在量の細胞培養培地成分は細胞培養培地の種類に応じて異なることができる。典型的な例は、グルコースおよび他の糖成分、または塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2)もしくは硫酸マグネシウム(MgSO4)のような塩である。好ましくは塩であり、特に好ましくは塩化ナトリウムである。 好ましくは、共凍結乾燥を、少なくとも1種の低存在量成分と少なくとも1種の高存在量成分とを共凍結乾燥することにより実施する。好ましい実施形態では、1種の低存在量成分を1種の高存在量成分と共凍結乾燥する。 共凍結乾燥にかける低存在量成分の量は、高存在量成分より少ない。好ましくは、低存在量成分の量は高存在量成分の量の5%未満である。このことは、100gの高存在量成分を使用する場合に5g未満の低存在量成分を使用することを意味する。塩の化学成分の一部のみが細胞増殖に必要な低存在量成分である塩の形態で低存在量成分が存在する可能性がある場合、上記の計算および上記の所与の量は、細胞増殖に必要な低存在量の化学成分の純質量に関する。例えば、使用する成分は硫酸カドミウム水和物(3CdSO4x8H2O)であるが、カドミウムが細胞増殖に必要な低存在量成分である。このことは、硫酸カドミウム水和物のモル重量は769.51g/molであるが、カドミウムのモル重量は337.23g/molであることを意味する。従って、前記成分中に存在するカドミウムのパーセンテージに基づいて必要な低存在量成分の量を算出することができるだろう。 共凍結乾燥するために、最初の工程では、共凍結乾燥する全ての成分を溶媒に溶解させる。成分を1つの溶媒中に可溶化させることができる。あるいは、各成分を別々の溶媒に溶解させ、次いで生じた2種以上の異なる成分の溶液を混合させることができる。典型的には、混合する全ての溶液の溶媒は同じである。 適切な溶媒は、全ての成分が可溶なものである。適切な溶媒の例は、有機溶媒もしくは水またはそれらの混合物である。好ましくは水である。 溶媒を選択して成分を溶解させ、生じた混合物を凍結し、凍結乾燥させる。追加の溶媒を混合物に添加して凍結乾燥を促進させる場合がある。典型的には、凍結乾燥を−20℃未満の温度で、好ましくは−約80℃で実施する。典型的には、減圧により液体を除去する。生じた共凍結乾燥物を混合粒子または混合固体と称することもできる。 次いで、例えばボールミル中で、混合固体を好ましくは粉砕して均一なサイズの粒子を生成する。生じた粒子は200μm未満の粒子サイズを典型的には有する。好ましくは、粒子サイズは100μm未満である。有利な粒子サイズは15μm〜100μmである。 次いで、粉砕した共凍結乾燥物を微量元素の定量化にかけて共凍結乾燥物中における低存在量成分の濃度を決定することができる。必要に応じて追加の量の高存在量成分を混合することにより、低存在量成分の濃度を低下させることができる。 次いで、規定の濃度の低存在量成分を含む最終の共凍結乾燥物を貯蔵することができ、または細胞培養培地の作製に使用することができる。 後者のためには、適切な量の共凍結乾燥物を細胞培養培地の他の成分と混合する。2種以上の共凍結乾燥物を生成して2種以上の共凍結乾燥物と細胞培養培地の他の成分とを混合することも可能である。成分の混合は、粉砕による乾燥粉末化細胞培養培地の作製に関する当業者に既知である。好ましくは、混合物の全ての部分がほぼ同じ組成を有するように全ての成分が完全に混合される。組成の均一性が高くなるほど、生じた培地の均一な細胞増殖に関する品質が良好になる。 粉末化細胞培養培地の作製に適した任意の種類のミルにより粉砕を実施することができる。典型的な例は、ボールミル、ピンミル、フィッツミルまたはジェットミルである。好ましくはピンミル、フィッツミルまたはジェットミルであり、非常に好ましくはピンミルである。 そのようなミルをどのようにして作動させるかは当業者に既知である。 ディスク直径が約40cmである大規模な設備のミルは、例えばピンミルの場合に分当たり1〜6500回の回転で典型的には作動し、好ましくは分当たり1〜3000回の回転である。粉砕を、10〜300μmの、最も好ましくは25〜100μmの粒子サイズを有する粉末を生じさせる標準的な粉砕条件下で行なうことができる。 好ましくは、粉砕にかける混合物の全ての成分は乾燥している。このことは、成分が水を含む場合、成分は結晶水のみを含み、結合していないまたは配位していない水分子は10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは2重量%以下であることを意味する。そのような乾燥成分の粉砕により生じる培地はまた、乾燥粉末化細胞培養培地とも称される。 好ましい実施形態では、粉砕を不活性雰囲気中で実施する。好ましい不活性保護ガスは窒素である。 別の好ましい実施形態では、混合物の全ての成分を粉砕前に凍結させる。粉砕前の配合成分の凍結を、配合成分を0℃未満の温度へ、最も好ましくは−20℃未満の温度へ確実に冷却する任意の手段により行なうことができる。好ましい実施形態では、凍結を液体窒素により行なう。このことは、例えばミルへの導入前に配合成分が貯蔵される容器中に液体窒素を注ぐことにより、配合成分を液体窒素で処理することを意味する。好ましい実施形態では、容器はフィーダーである。容器がフィーダーである場合、液体窒素はフィーダーの配合成分が導入される側でまたは該側の近くで好ましくは導入される。 典型的には、配合成分を2〜20秒にわたって液体窒素で処理する。 好ましくは、ミルに入れる全ての配合成分が0℃未満の温度、最も好ましくは−20℃未満の温度であるように配合成分の冷却を行なう。 好ましい実施形態では、全ての配合成分を容器に収納して該容器から混合物をフィーダーに移し、最も好ましくは計量スクリューフィーダーに移す。フィーダー中において、(フィーダーの種類に応じて)配合成分を更に混合するおよび追加で冷却する場合がある。次いで、ミル中で粉砕する混合物が、好ましくは0℃未満の温度を有し続けるように、より好ましくは−20℃未満の温度を有し続けるように、凍結した混合物をフィーダーからミルに移す。 典型的には、フィーダー中における配合成分の混合物の滞留時間を意味する混和時間は1分を超えており、好ましくは15〜60分である。 ドーセージスネイル(dosage snail)とも称される計量スクリューフィーダーは、典型的には分当たり10〜200回の回転速度で作動し、好ましくは分当たり40〜60回の回転で作動する。 典型的には、ミルの温度を−50〜+30℃に保持する。好ましい実施形態では、温度を約10℃に保持する。 粉砕中の酸素レベルは、好ましくは10%(体積/体積)未満である。 本方法を例えばバッチ式でまたは連続的に実施することができる。好ましい実施形態では、ある時間にわたって、配合成分の混合物を冷却用のフィーダーに持続的に充填し、冷却した混合物をフィーダーからミルに持続的に充填することにより、本発明に係る方法を連続的に行なう。 他の粉砕方法とは対照的に、本発明に係る方法により、たとえ1種または複数種の低存在量成分が細胞培養培地のkg当たり1μg未満の量で存在していても、均一に混和されることが見出されている。 本発明は、少なくとも1種の共凍結乾燥物を含む乾燥細胞培養培地を更に対象とする。そのような培地を本発明に係る方法により得ることができる。 典型的には、共凍結乾燥物は、1種の低存在量成分と1種の高存在量成分との共凍結乾燥物である。 好ましくは、細胞培養培地は、1〜10種の異なる共凍結乾燥物を含む。 粉砕した粉末化培地を使用するために、溶媒、好ましくは水(最も具体的には蒸留されたおよび/もしくは脱イオン化された水または精製水もしくは注射用水)または水性緩衝液を培地に添加し、培地が溶媒に完全に溶解するまで成分を混合する。 溶媒はまた、塩類、1.0〜10.0の範囲のpHを付与する可溶性の酸性イオンまたは塩基性イオン、安定剤、界面活性剤、防腐剤、およびアルコールまたは他の極性有機溶媒を含むこともできる。 pHの調整用の緩衝物質、ウシ胎児血清、糖等のような更なる物質を細胞培養培地と溶媒との混合物に添加することも可能である。次いで、生じた液体細胞培養培地を、増殖させるまたは維持する細胞と接触させる。 そのため、本発明は、細胞の培養方法であって、a)本発明に係る細胞培養培地を準備する工程と、b)前記細胞培養培地と水または水性緩衝液とを混合する工程と、c)バイオリアクタ中において、培養する細胞と工程b)の細胞培養培地とを混合する工程と、d)工程c)の混合物をインキュベートする工程とによる、細胞の培養方法を更に対象とする。 バイオリアクタは、細胞を培養することができる任意の容器(container)、容器(vessel)またはタンクである。適切な温度等のような適切な条件下でインキュベーションを典型的には行なう。当業者は、細胞の増殖/培養の補助または維持に適したインキュベーション条件を認識している。 培地作製用の共凍結乾燥物を使用することにより、微量元素(低存在量成分)の総量は配合表で示されたものと同じままで残り続けるが、低存在量成分が担体塩と組み合わされていることから、大量の物質中における秤量での精度および低存在量成分の混合は著しく高い。 本発明を以下の図および例により更に説明するが、これらに限定しない。 上記で引用したおよび以下で引用する全ての出願、特許および刊行物ならびに2012年6月15日に出願された対応する欧州特許出願EP12004517.4の開示全体を参照により本明細書に援用する。 以下の例は、本発明の実際の適用を表す。 1.共凍結乾燥物の調製 上記の共凍結乾燥物を、チャイニーズハムスター卵巣細胞用の化学的に明確な細胞培養培地の調製に使用している。共凍結乾燥物を使用することにより、微量元素(低存在量成分)の総量は配合表で示されたものと同じままで残り続けるが、微量元素が担体塩と組み合わされていることから、大量の物質中における秤量での精度および凍結乾燥物の混合は著しく高い。 2.細胞培養培地の作製 共凍結乾燥物を含む培地の全配合成分を混合しドーセージスネイルおよびピンミルを使用して粉砕する。ドーセージスネイル中において、配合成分を液体窒素で処理する。粉砕を以下の条件下で実施する。温度−ミル:10℃酸素レベル:10%絶対未満Rpm−ミル:2800 1/分以下混和時間:30分Rpmドーセージスネイル:40 1/分 生じた粉末化細胞培養培地は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞の培養に適している。 3.適用データ 所望の物理化学特性および細胞性能を有する化学的に明確な乾燥粉末培地の作製での再現性を、他の培地と比較してCHO S細胞の経時的な積算生細胞密度(IVCD)を示すバッチ増殖において以下に概説するように試験する。不活性条件を使用するピンミル技術を使用して培地を作製する。アルファCHO(パイロットロット1、2および3)は本発明の方法に従って作製された培地である。図1は積算生細胞密度を示す。本発明の方法に従って作製していない他の培地は異なる成分を有するが、全てCHO細胞専用である。追加で、モノクローナル抗体を発現する容積力価について培地性能を試験する。図2は容積力価を示す。細胞試験に加えて、乾燥粉末培地のバッチ間における一貫した作製を分析するために、3つの独立した作製バッチに関して、3つの作製の粒度分布を試験する。図3は粒度分布を示す。 細胞培養培地の製造方法であって、 a)細胞培養培地の少なくとも2種の成分を共凍結乾燥する工程と、b)工程a)で生成した1種または複数種の共凍結乾燥物を前記細胞培養培地の他の成分と混合する工程と、c)工程b)の混合物を粉砕にかける工程とによる、細胞培養培地の製造方法。 工程a)において、少なくとも1種の成分の量、より低存在量の成分の量が、少なくとも1種の他の成分の量、即ち高存在量成分の量の5重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 前記高存在量成分が、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)または硫酸マグネシウム(MgSO4)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。 工程a)において、前記共凍結乾燥が、前記成分の水溶液を生成し、前記混合物を凍結して減圧下で液体を除去することにより実施されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。 工程b)由来の前記混合物がピンミル、フィッツミルまたはジェットミル中で粉砕されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 工程b)由来の前記混合物が粉砕前に0℃未満の温度に冷却されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。 工程a)において、2種以上の異なる共凍結乾燥物が、前記細胞培養培地の少なくとも2種の成分を共凍結乾燥することによりそれぞれ生成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。 1種または複数種の共凍結乾燥物を含む粉末化細胞培養培地。 2種以上の共凍結乾燥物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の粉末化細胞培養培地。 少なくとも1種の共凍結乾燥物において、少なくとも1種の成分の量が少なくとも1種の他の成分の量の1%未満であることを特徴とする、請求項8または9に記載の粉末化細胞培養培地。 少なくとも1種の共凍結乾燥物が、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)または硫酸マグネシウム(MgSO4)を含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の粉末化細胞培養培地。 細胞の培養方法であって、 a)請求項8から10のいずれかに記載の細胞培養培地を準備する工程と、b)前記細胞培養培地と水または水性緩衝液とを混合する工程と、c)バイオリアクタ中において、培養する細胞と工程b)の前記細胞培養培地とを混合する工程と、d)工程c)の混合物をインキュベートする工程とによる、細胞の培養方法。 本発明は、乾燥粉末細胞培養培地の製造方法に関する。共凍結乾燥により生成される混合粒子の調製および使用により、均一に混和された細胞培養培地がもたらされる。


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