タイトル: | 特許公報(B2)_ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法 |
出願番号: | 2015513932 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C08G 59/04,C07D 303/30,C07D 301/28 |
葭本 泰代 森永 邦裕 木下 宏司 JP 5812222 特許公報(B2) 20151002 2015513932 20140515 ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法 DIC株式会社 000002886 河野 通洋 100124970 葭本 泰代 森永 邦裕 木下 宏司 JP 2013103011 20130515 20151111 C08G 59/04 20060101AFI20151022BHJP C07D 303/30 20060101ALI20151022BHJP C07D 301/28 20060101ALI20151022BHJP JPC08G59/04C07D303/30C07D301/28 C08G 59/00 C07D303/30 米国特許第03374203(US,A) 特開平02−209971(JP,A) 米国特許第03721644(US,A) 特開平06−264301(JP,A) 米国特許出願公開第2004/0254327(US,A1) 4 JP2014062936 20140515 WO2014185485 20141120 20 20150313 中村 英司本発明は、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法およびエポキシ樹脂に関する。 多価ヒドロキシ化合物及びそれを用いたエポキシ樹脂は、硬化時の低収縮性(寸法安定性)、電気絶縁性、耐薬品性などに優れた硬化物を与える点から、半導体封止材やプリント回路基板等の電子部品、電子部品分野、導電ペースト等の導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。近年、これらの各種用途、とりわけ先端材料分野において、耐熱性や耐吸湿性、低熱膨張性に代表される性能の一層の向上が求められている。さらに、環境問題に対する法規制等により、鉛を使用しない高融点半田(鉛フリー半田)が主流となっており、この鉛フリー半田は従来の共晶半田よりも使用温度が約20〜40℃高くなることから、エポキシ樹脂硬化物にはこれまで以上に高い耐熱性が要求されている。 特許文献1に代表されるビフェニルを分子骨格内に有するエポキシ樹脂は、高耐熱性、低熱膨張性、耐湿性などの諸物性で特に優れている。さらに、該エポキシ樹脂は、常温で結晶性状をもつことから、固形樹脂でありながらも、溶融時には液状樹脂並みの低粘度になるため、封止材に使用した場合,シリカを高充填化しても良好な流動性を保つことができる点で、作業性および性能の面で優れている。しかしながら、近年、耐熱性においてはより高い性能が求められ、一層の改善が必要となっている。耐熱性の向上には架橋密度の増加、すなわち多官能化が効果的であり、特許文献2および3のように、ビフェニル骨格に対して、フェノール類を繰り返し構造として導入したフェノール化合物を骨格とするエポキシ樹脂は、多官能化が行なわれているが、高分子量化する事で、軟化点や溶融粘度の上昇が起きる。また、高分子量化による多官能化では、近年の高い耐熱性の要求に応えるには不十分である。液状あるいは低溶融粘度を維持したまま耐熱性を向上させるためには、多官能かつ低分子量エポキシ樹脂を高純度で得る必要がある。特許第3947490号特許第3989458号特許第3476027号本発明が解決しようとする課題は、その硬化物が、優れた耐熱性、低熱膨張性、高熱伝導性を発現し、かつ、液状もしくは低溶融粘度のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂及びその製造方法を提供することにある。本発明者らは鋭意検討した結果、フェノール誘導体の位置選択的クロスカップリング反応で得られた高純度の多価ヒドロキシビフェニルをグリシジル化したエポキシ樹脂は液状もしくは低溶融粘度であり、その硬化物は、耐熱性、低熱膨張性、熱伝導性において優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の[1]〜[5]に関する。[1]位置選択的クロスカップリング反応を含む製造工程により得られた多価ヒドロキシビフェニルと、エピハロヒドリンとを反応させる工程とを有することを特徴とする、下記式(1)で示されるビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法。(式中、k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。(但し、ビフェニル骨格の左右のそれぞれのフェニル構造は異なる。))[2]下記式(2)で表されるアリールボロン酸類、その無水物、エステルおよびボレート塩から選ばれる少なくとも一つの化合物と、下記式(3)で表されるハロゲン化アリールまたはアリールスルホネートから選ばれる少なくとも一つの化合物とを用いるクロスカップリング反応である、[1]に記載のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法。(k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良く、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートを表す。)[3][1]〜[2]のいずれかに記載の製造方法で得られることを特徴とする、式(1)で示されるビフェニル骨格含有エポキシ樹脂。(式中、k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。(但し、ビフェニル骨格の左右のそれぞれのフェニル構造は異なる。))[4][1]〜[2]のいずれかに記載の製造方法で得られることを特徴とする、式(4)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)[5]式(5)で表される、3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)本発明によれば、液状もしくは低溶融粘度で、良好な溶剤溶解性を示すビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法およびエポキシ樹脂を提供でき、その硬化物は優れた耐熱性、低線膨張性、耐湿性や高熱伝導性を示す。実施例1で得られた3,4’,5−トリグリシジルオキシビフェニルのGPCチャートである実施例1で得られた3,4’,5−トリグリシジルオキシビフェニルのC13NMRチャートである実施例1で得られた3,4’,5−トリグリシジルオキシビフェニルのMSチャートである実施例2で得られた2,4,4’−トリグリシジルオキシビフェニルのGPCチャートである実施例2で得られた2,4,4’−トリグリシジルオキシビフェニルのC13NMRチャートである実施例2で得られた2,4,4’−トリグリシジルオキシビフェニルのMSチャートである以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、多価ヒドロキシビフェニルにエピハロヒドリンを反応させる下記式(1)で示されるビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造において、原料となる高純度の多価ヒドロキシビフェニルの製造工程において、位置選択的クロスカップリング反応を行うことを特徴としている。(式中、k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。(但し、ビフェニル骨格の左右のそれぞれのフェニル構造は異なる。))本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造において、原料となる多価ヒドロキシビフェニルは、位置選択的クロスカップリング反応を含む製造方法で得ることを特徴とする。位置選択的クロスカップリング反応とは、二つの芳香環上の炭素間でC−C結合を形成してビフェニル構造を構築する際に、二つの結合する炭素の位置が限定されており、他の炭素の位置では結合が起こらない反応であり、高純度の多価ヒドロキシビフェニルを得る事ができる。すなわち、結合に関与する炭素上に水素原子以外のハロゲン等の置換基が存在し、金属触媒との置換基−金属交換によって進行する反応である。ビフェニル骨格を構築するカップリング反応の中には、例えば特許文献1に記載の方法のように、反応中にフェノキシラジカルが生成して位置選択的にC−C結合が形成される反応もあるが、位置選択性を発現するには、原料の立体構造において水酸基の位置が限定されていることや副反応抑制のために置換基の導入等が必要であることなど、多くの制約があり、さらに、多量体や副反応物の生成抑制が難しいなど問題点がある。一方、金属触媒との置換基−金属交換によって進行する反応では、水酸基が反応点のオルト位、メタ位、パラ位のどの位置にあっても良いことから構造選択の幅が広い点、クロスカップリングにおける副生成物であるホモカップリング物が生成しない点、および、多量体化が起こらない点で、高純度の多官能低分子エポキシ樹脂の前駆体を製造するのに好適である。本発明における高純度の多価ヒドロキシビフェニルの製造方法に含まれる位置選択的カップリング反応は、C−C結合の形成に関与する炭素上に、金属触媒との間で置換基−金属交換が可能な置換基を有する原料を用いる反応であれば公知慣用の方法を用いることができる。前記位置選択的クロスカップリング反応は、例えば、以下に示すアリール化合物のうち何れか二つを、下記に示す金属触媒を用いてカップリングする反応が挙げられる。前記アリール化合物は、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲノ基;トリメチルシリル、トリメトキシシリル、トリフルオロシリル、クロロジメチルシリル等のシリル基;トリメチルスタニル、トリブチルスタニル等のスタニル基;ジヒドロキシボロニル等のボロニル基;トリフラート、ノナフラート、メシラート基、トシラート基等のスルホニル基等の置換基を有する化合物、もしくは、ハロゲン化アリールを原料として、マグネシウムや亜鉛で活性化したマグネシウムハライド誘導体、亜鉛ハライド誘導体である。前記アリール化合物のうち何れか二つをカップリングする金属触媒には、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム、ジルコニウム、マンガン、ゲルマニウム、ビスマス、鉛、インジウム等から選ばれる少なくとも一つの金属またはその化合物を用いることが好ましい。前記金属の化合物とは、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、有機錯体、活性炭担持物等である。特に前記の反応例の中でも、反応基質の入手の容易さや取り扱いの簡便さ、副生成物の除去の容易さから、アリールボロン酸とハロゲン化アリール等を、有機パラジウム錯体等を触媒として塩基共存下で反応させる鈴木カップリング反応(J.Organomet.Chem.,576,147(1999); Synth.Commun.,11,513(1981))が好適である。すなわち、本発明の高純度の多価ヒドロキシビフェニルの製造方法における位置選択的ヘテロカップリング反応は、下記式(2)で表されるアリールボロン酸類、その無水物、エステルおよびボレート塩から選ばれる少なくとも一つの化合物と下記式(3)で表されるハロゲン化アリールまたはアリールスルホネートを、有機パラジウム錯体等を触媒として塩基共存下で反応を行うものである。上記式(2)または(3)において、k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良く、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートを表す。前記炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、シクロプロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。前記の置換基は、本発明の製造工程に著しい影響を与えるものでなければいかなる置換基を有していても良い。本発明の製造工程により製造されるエポキシ樹脂における溶融粘度の低下と、その硬化物における架橋密度の増加を考慮すると、置換基は、水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、さらに好ましくは水素原子もしくはメチル基、アリル基である。R3及びR4は、水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基等が挙げられる。工業用に安価に入手可能である点で、水素原子もしくはメチル基が好ましい。前記式(2)で表されるアリールボロン酸類は、脱水三量化した無水物もしくはボロン酸エステル、ボレート塩等の構造であっても良い。前記ボロン酸エステルには、例えば、−B(OMe)2、B(OiPr)2等のアルキルエステル;カテコールやピナコールを縮合させた環状のエステル等が挙げられる。 また、前記ボレート塩には、トリフルオロボレート塩、トリヒドロキシボレート塩、ビシクロ[2,2,2]オクタンを有する有機環状トリオールボレート塩等が挙げられる。前記式(3)におけるXは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートである。 原料の入手の容易さと反応性の良さから、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましい。前記式(2)および式(3)におけるk1およびl1は0〜4の整数、mおよびnは1〜5の整数である。mとnの和が大きいほど本発明の製造方法によって製造されるエポキシ樹脂は多官能となり、耐熱性は向上する一方で脆さと耐湿性は悪化する。したがって、mとnの和は2〜8が好ましく、さらに好ましくは3〜6である。前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリールもしくはアリールスルホネートのモル比に特に制限はないが、1:1〜5:1が好ましく、収率がよい点で1:1〜2:1がさらに好ましい。前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリール等のカップリング反応で用いられる金属触媒は、例えば、パラジウム−活性炭素、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の0価のパラジウム化合物や、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II) ジクロリド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、アリルパラジウム(II)クロリド2量体、シクロペンタジエニルアリルパラジウム(II)、水酸化パラジウム等の2価のパラジウム化合物が挙げられる。また、パラジウム化合物以外にも、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。また、必要に応じてそれらを2種以上を用いることもできる。尚、該パラジウム化合物は、反応中、溶解していても、何らかの担体に担持されていてもよい。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は収率がよい点で好ましく、入手容易であり収率がよい点で、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。用いるパラジウム触媒の量は、ハロゲン化アリールもしくはアリールスルホネート1モルに対し、通常0.00001〜0.1モル、好ましくは0.001〜0.05モルである。また、前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリール等のカップリング反応は、ホスフィン類やイミン類の存在下で反応を行うことができる。中でも、トリアリールホスフィン類の存在下で行うのが好ましく、さらには、トリフェニルホスフィンの存在下で行うのがより好ましい。前記ホスフィン類やイミン類を用いる場合、その使用量は、通常、パラジウム化合物1モルに対して0.5〜5.0モルであり、好ましくは1.0〜2.2モルである。前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリール等のカップリング反応は、塩基の存在下に実施することが必須である。用いることのできる塩基としては、例えば、酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属重炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムのようなアルカリ金属酢酸塩;リン酸ナトリウムのようなアルカリ金属リン酸塩等の無機塩基;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコール金属塩類;トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機塩基を挙げることができ、これらを単独もしくは必要に応じて2種以上を併用して用いることができる。中でも、収率がよい点でアルカリ金属炭酸塩が好ましい。塩基の使用量は、ハロゲン化アリールもしくはアリールスルホネート1モルに対し、0.5〜5.0モル、好ましくは1.0〜2.0モルである。 前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリール等のカップリング反応は、通常、溶媒を用いて行われる。使用する溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン又はクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;水が挙げられ、これらを単独もしくは必要に応じて2種以上を併用して用いることができる。溶媒の使用量は、ハロゲン化アリールもしくはアリールスルホネートに対し、通常0.1重量倍〜50重量倍、好ましくは0.5重量倍〜20重量倍である。 前記式(2)のアリールボロン酸類と前記式(3)のハロゲン化アリール等のカップリング反応は、0〜150℃で行われる。反応時間は反応温度、反応基質、反応量等により異なるが、通常10分〜20時間の範囲である。本発明における高純度の多価ヒドロキシビフェニルの製造工程において、前記式(2)および式(3)におけるR3またはR4が水素原子以外の場合、位置選択的クロスカップリング反応後、水酸基の保護基は公知慣用の方法にて脱保護される。本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法は、前記フェノール誘導体の位置選択的カップリング反応で合成した高純度の多価ヒドロキシビフェニルとエピハロヒドリンを反応させる工程を含む。前記工程は、具体的には、例えばフェノール化合物中のフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが可能であり、経済的に好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とする本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を得ることができる。なお、本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法は、前記フェノール誘導体の位置選択的カップリング反応で合成した高純度の多価ヒドロキシビフェニルに、本発明の効果を損なわない範囲で、他の多価フェノールを併用して、エピハロヒドリンと反応させても良い。さらに本発明の製造方法によれば、前記位置選択的クロスカップリング反応を含む製造工程により得られた式(6)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニルにエピハロヒドリンを反応させることで、下記式(4)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂を製造することができる。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)該エポキシ樹脂の製造方法は、具体的には、例えば(i)式(7)で表されるアリールボロン酸と、式(8)で表されるハロゲン化アリールまたはアリールスルホネートとを用いて、有機パラジウム錯体等を触媒として塩基共存下で反応させる工程、(ii)式(7)および式(8)においてR3及びR4が水素原子以外の場合、水酸基の脱保護を行う工程、(iii)前記(i)または(ii)の工程で得られた、前記式(6)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニルにエピハロヒドリンを反応させ、前記式(4)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂を製造する工程、からなる方法が挙げられる。ただし、前記式(6)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル誘導体を製造する工程で、前述の金属触媒との置換基−金属交換によって進行する位置選択的カップリング反応を行っていれば、原料およびカップリング方法はこの限りではない。(k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良く、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートを表す。)さらに本発明の製造方法によれば、前記位置選択的クロスカップリング反応を含む製造工程により得られた式(9)で表される3,4’ ,5−トリヒドロキシビフェニルにエピハロヒドリンを反応させることで、下記式(5)で表される3,4’ ,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂を製造することができる。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)該エポキシ樹脂の製造方法は、具体的には、例えば(i)式(7)で表されるアリールボロン酸と、式(10)で表されるハロゲン化アリールまたはアリールスルホネートとを用いて、有機パラジウム錯体等を触媒として塩基共存下で反応させる工程、(ii)式(7)および式(10)においてR3及びR4が水素原子以外の場合、水酸基の脱保護を行う工程、(iii)前記(i)または(ii)の工程で得られた、前記式(9)で表される3,4’ ,5−トリヒドロキシビフェニルにエピハロヒドリンを反応させ、前記式(5)で表される3,4’ ,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂を製造する工程、からなる方法が挙げられる。ただし、前記式(9)で表される3,4’ ,5−トリヒドロキシビフェニルを製造する工程で、前述の金属触媒との置換基−金属交換によって進行する位置選択的カップリング反応を行っていれば、原料およびカップリング方法はこの限りではない。(k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良く、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートを表す。)前記の2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂および3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂の硬化物は、ビフェニル骨格に由来する優れた耐熱性、低熱膨張性とともに、極めて優れた熱伝導性を示す。既存の優れた耐熱性を示すエポキシ樹脂として、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)社製 HP−4700、エポキシ当量160〜170g/eq、軟化点85〜95℃、150℃溶融粘度0.3〜0.6Pa・s、重量平均分子量648)等の多官能低分子エポキシ樹脂が知られている。この既存エポキシ樹脂は非常に高い耐熱性を示す硬化物を作製できる一方で、固形であり溶融粘度が高いため作業性が悪く、さらに、硬化剤を使用しない単独硬化物は作成できない。一方、本発明の2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂および3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂は、液状または低融点の結晶であり低溶融粘度であるため作業性が良く、例えば前述した単独硬化物の作成が可能であり、また、既存樹脂に比べシリカをさらに高充填できるため、低熱膨張性、難燃性および熱伝導性がより優れた封止材の作成が可能である。また、多くの既存液状エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂であるため、それらの硬化物は高い耐熱性を発現することができない。既存液状エポキシ樹脂の中でも耐熱性が高いナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)社製 HP−4032D、エポキシ当量136〜148g/eq、粘度50〜60Pa・s)であっても、近年の先端材料分野における要求性能には達していない。しかし、本発明の前記2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂は、これらを単独もしくは他の液状エポキシ樹脂と併用して高耐熱の液状封止材または液状接着剤等を作製することができ、さらなる耐熱性が求められる用途への展開が可能である。本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点、融点、GPC、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。 1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠し、以下の機器で測定した。 機器名 :(株)コーデックス製 MODEL CV−1S2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠し、グリセリンを熱媒とし、ボール&リング(B&R)法にて測定した。 機器名 :(株)メイテック製 ASP−M2型 昇温速度:5/min 3)融点:示差熱熱量重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200)を用いて測定した。測定条件 測定温度:室温〜300℃測定雰囲気:窒素昇温速度:10℃/min4)GPC:測定条件は以下の通り。 測定装置 :ショーデックス製「GPC−104」、カラム:ショーデックス製「KF−401HQ」+ショーデックス製「KF−401HQ」+ショーデックス製「KF−402HQ」 +ショーデックス製「KF−402HQ」検出器: RI(示差屈折率計) データ処理:ウォーターズ株式会社製「Empower 2」 測定条件: カラム温度 40℃ 移動相: テトラヒドロフラン 流速: 1.0ml/分 標準 : (使用ポリスチレン) ウォーターズ株式会社製「Polystyrene Standard 400」 試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。 5)NMR:日本電子株式会社製 NMR LA300 溶媒 :アセトン‐d66)MS :日本電子株式会社製 ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計JMS−T100GC イオン化モード:FD カソード電圧:−10kV エミッタ電流:0mA → 40mA[25.6 mA/min.] 溶媒:テトラヒドロフラン サンプル濃度:2%合成例1(3,4’,5−メトキシビフェニルの合成)温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、1−ブロモ−3,5−ジメトキシベンゼン110g、イソプロピルアルコール(以下IPA)257g及び炭酸カリウム139gを水107gに予め溶解した溶液を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)5.9gを加え、さらに4−メトキシフェニルボロン酸83gを予めIPA109gに溶解した溶液を滴下した。反応液を3時間加熱還流したのち、水500mLを加え、IPA層を分離し、水層を分液漏斗に移しトルエン500mLを加え抽出した。有機層をそれぞれ飽和食塩水で洗浄した。真空下で溶媒を留去した後、トルエン500mLを加え、沈殿物をろ別し、トルエンを減圧留去した。得られた粗生成物にメタノール200mLを加え、沈殿物をろ取し、50℃の真空乾燥機中で5時間乾燥させ、3,4’,5−トリメトキシビフェニル113gを得た。合成例2(3,4’,5−トリヒドロキシビフェニルの合成)温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例1で得られた3,4’,5−トリメトキシビフェニル100gとヨウ化ナトリウム488g及びアセトニトリル628gを仕込んだ後、塩化トリメチルシラン356gを滴下し、50℃で18時間反応した。反応液を室温まで冷却し、水500mLを加えた。アセトニトリルを減圧留去し、酢酸エチル1Lを加え、混合液を分液漏斗に移し、有機層を分離した後、さらに、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。酢酸エチル溶液を200mL程度まで減圧濃縮して、析出した3,4’,5−トリヒドロキシビフェニルを主成分とする結晶をろ取した。得られた残渣に酢酸エチル50mLとトルエン150mLを加えて80℃で10分加熱撹拌し、溶け残った沈殿をろ取し、50℃の真空乾燥機中で5時間乾燥させ、3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル62gを得た。合成例3(2,4,4’−トリメトキシビフェニルの合成)温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、1−ブロモ−2,4−ジメトキシベンゼン110g、IPA257g及び炭酸カリウム139gを水107gに予め溶解した溶液を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)5.9gを加え、さらに4−メトキシフェニルボロン酸83gを予めIPA109gに溶解した溶液を滴下した。反応液を3時間加熱還流したのち、水500mLを加え、IPA層を分離し、水層を分液漏斗に移しトルエン500mLを加え抽出した。有機層をそれぞれ飽和食塩水で洗浄した。真空下で溶媒を留去した後、トルエン500mLを加え、沈殿物をろ別し、トルエンを減圧留去した。得られた粗生成物にメタノール200mLを加え、沈殿物をろ取し、50℃の真空乾燥機中で5時間乾燥させ、2,4,4’−トリメトキシビフェニル105gを得た。合成例4(2,4,4’−トリヒドロキシビフェニルの合成)温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例3で得られた2,4,4’−トリメトキシビフェニル100gとヨウ化ナトリウム488g及びアセトニトリル628gを仕込んだ後、塩化トリメチルシラン356gを滴下し、60℃で8時間反応した。反応液を室温まで冷却し、水500mLを加えた。アセトニトリルを減圧留去し、酢酸エチル1Lを加え、混合液を分液漏斗に移し、有機層を分離した後、さらに、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。酢酸エチル溶液を200mL程度まで減圧濃縮して、析出した2,4,4’−トリヒドロキシビフェニルを主成分とする結晶をろ取した。得られた残渣に酢酸エチル50mLとトルエン150mLを加えて80℃で10分加熱撹拌し、溶け残った沈殿をろ取し、50℃の真空乾燥機中で5時間乾燥させ、2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル52gを得た。実施例1(3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂の合成)温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例2で得た3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル43g、エピクロルヒドリン295g、n−ブタノール103gを仕込み溶解させた。40℃に昇温した後に、48質量%水酸化ナトリウム水溶液53gを8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し更に1時間反応させた。反応終了後、水83gを加えて静置した後、下層を棄却した。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン118gを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液67gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂である3,4’,5−トリグリシジルオキシビフェニル(A−1)62gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−1)は常温で融点97℃の結晶で、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.27dPa・s、エポキシ当量は135g/当量であった。得られたエポキシ樹脂のGPCチャートを図1に、C13NMRチャートを図2に、MSスペクトルを図3に示す。MSスペクトルから3,4’,5−トリグリシジルオキシビフェニル(A−1)を示す370のピークが検出された。なお、図1のGPCチャートにおいて、検量線から求めた測定分子量は実際の分子量との間にずれが生じるので、各ピークの分子量をMSスペクトルを元に修正した。実施例2(2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂の合成)温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例4で得た2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル43g、エピクロルヒドリン295g、n−ブタノール103gを仕込み溶解させた。40℃に昇温した後に、48質量%水酸化ナトリウム水溶液53gを8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し更に1時間反応させた。反応終了後、水83gを加えて静置した後、下層を棄却した。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン118gを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液67gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂である2,4,4’−トリグリシジルオキシビフェニル(A−2)63gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−2)は常温で粘度943Pa・sの液状で、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.14dPa・s、エポキシ当量は133g/当量であった。得られたエポキシ樹脂のGPCチャートを図4に、C13NMRチャートを図5に、MSスペクトルを図6に示す。MSスペクトルから2,4,4’−トリグリシジルオキシビフェニル(A−2)を示す370のピークが検出された。なお、図4のGPCチャートにおいて、検量線から求めた測定分子量は実際の分子量との間にずれが生じるので、各ピークの分子量をMSスペクトルを元に修正した。実施例3〜8および比較例1〜5実施例1〜2で得られた本発明のエポキシ樹脂(A−1、A−2)及び比較用エポキシ樹脂として、3,3’ ,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂(A−3)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂HP−4700(DIC(株)社製)(A−4)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂HP−4032D(DIC(株)社製)(A−5)、硬化剤としてフェノールノボラック型フェノール樹脂TD−2131(DIC(株)社製、水酸基当量104g/当量)、無水メチルハイミック酸MHAC−P(日立化成(株)社製、中和当量89g/当量)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)、イミダゾール(2P4MHZ-PWおよび2E4MZ(共に四国化成工業(株)社製))を用いて表1に示した組成で配合し、それぞれ下記の硬化条件(I)〜(III)の何れかの条件にて作成した硬化物について耐熱性、線膨張係数、熱伝導度を評価した。各エポキシ樹脂の性状とその硬化物の性状を表1に示す。<硬化条件(I)>配合物を11cm×9cm×2.4mmの型枠に流し込み、プレスで150℃の温度で10分間成型した後、型枠から成型物を取出し、次いで、175℃の温度で5時間硬化した。<硬化条件(II)>配合物を6cm×11cm×0.8mmの型枠に流し込み、130℃の温度で2時間仮硬化した後、型枠から成型物を取出し、次いで、170℃の温度で2時間、さらに250℃の温度で8時間硬化した。<硬化条件(III)>配合物を6cm×11cm×0.8mmの型枠に流し込み、110℃の温度で2時間仮硬化した後、型枠から成型物を取出し、次いで、250℃の温度で2時間硬化した。<耐熱性(ガラス転移温度;Tg(DMA)>粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。<耐熱性(5%重量減少温度)>示差熱熱量重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200)を用いて、5%重量減少温度を測定した。測定条件 測定温度:室温〜500℃測定雰囲気:窒素昇温速度:10℃/min<線膨張係数>熱機械分析装置(TMA:島津製作所社製TMA−50)を用いて、引張モードで熱機械分析を行った。測定条件荷重:1.5g昇温速度:10℃/分で2回測定温度範囲:50℃から300℃上記条件での測定を同一サンプルにつき2回実施し、2回目の測定における、25℃から280℃の温度範囲における平均膨張係数を線膨張係数として評価した。<熱伝導度>熱伝導率(λ)を、密度(ρ)、熱拡散率(α)、比熱容量(C)を用いて、λ=αρCの式に基づき、算出した。比重、熱拡散率および比熱容量は、それぞれ、以下に示す方法により求めた。(1)比重電子天秤CP224Sおよび比重測定キットYDK01CP(ザイリトリウス社製)を用いて、比重を測定した。(2)熱拡散率熱拡散率測定装置LFA447Nanoflash(NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率を測定した。(3)比熱容量示差走査熱量計EXSTAR7200(日立ハイテクサイエンス社製)により、25℃における比熱容量を算出した。測定条件 測定温度:−20〜100℃測定雰囲気:窒素昇温速度:10℃/minフェノール誘導体の位置選択的クロスカップリング反応を含む製造工程により得られた多価ヒドロキシビフェニルをグリシジル化したエポキシ樹脂は、液状もしくは低溶融粘度であり、その硬化物は、耐熱性、低熱膨張性、熱伝導性において優れた性能を示す。 位置選択的クロスカップリング反応を含む製造工程により得られた多価ヒドロキシビフェニルと、エピハロヒドリンとを反応させる工程とを有することを特徴とする、下記式(1)で示されるビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法。(式中、k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。(但し、ビフェニル骨格の左右のそれぞれのフェニル構造は異なる。)) 位置選択的クロスカップリング反応が、 下記式(2)で表されるアリールボロン酸類、その無水物、エステルおよびボレート塩から選ばれる少なくとも一つの化合物と、 下記式(3)で表されるハロゲン化アリールまたはアリールスルホネートから選ばれる少なくとも一つの化合物とを用いるクロスカップリング反応である、請求項1に記載のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の製造方法。(k1、l1はそれぞれ0〜4の整数、m、nはそれぞれ1〜5の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良く、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート、メシラート、トシラートまたはノシラートを表す。) 前記ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂が、下記式(4)で表される2,4,4’−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載の製造方法。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。) 前記ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂が、下記式(5)で表される3,4’,5−トリヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載の製造方法。(式中、k1は0〜4の整数、l1は0〜3の整数、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基を有していても良い炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)