タイトル: | 公表特許公報(A)_異所性石灰化の治療のためのチオ硫酸ナトリウム |
出願番号: | 2015510835 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 33/04,A61P 43/00,A61K 9/107,A61K 47/44,A61P 17/00,A61P 3/14 |
ラツィムバザフィ,ヴォア ジョス,ジェレミー ギゴニ,ヴァンサン コードロン,エリック JP 2015516407 公表特許公報(A) 20150611 2015510835 20130510 異所性石灰化の治療のためのチオ硫酸ナトリウム アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル 591100596 ユニベルシテ ドゥ リモージュ 506336795 セアッシュユ・ドゥ・リモージュ 514284051 CHU DE LIMOGES ユニベルシテ パリ−スュッド 506346026 UNIVERSITE PARIS−SUD 特許業務法人 津国 110001508 津国 肇 100078662 三宅 俊男 100116528 柴田 明夫 100146031 小國 泰弘 100122736 田中 洋子 100122747 生川 芳徳 100132540 ラツィムバザフィ,ヴォア ジョス,ジェレミー ギゴニ,ヴァンサン コードロン,エリック EP 12305517.0 20120510 A61K 33/04 20060101AFI20150515BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150515BHJP A61K 9/107 20060101ALI20150515BHJP A61K 47/44 20060101ALI20150515BHJP A61P 17/00 20060101ALI20150515BHJP A61P 3/14 20060101ALI20150515BHJP JPA61K33/04A61P43/00 105A61K9/107A61K47/44A61P17/00A61P3/14 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2013059744 20130510 WO2013167741 20131114 22 20150105 4C076 4C086 4C076AA17 4C076CC18 4C076CC21 4C076CC26 4C076EE53 4C076FF67 4C076FF68 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA17 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA22 4C086MA63 4C086NA06 4C086NA10 4C086ZA89 4C086ZB21 4C086ZC21 本発明は、親油性物質中親水性物質型(hydrophile in lipophile)エマルション中に分散されたチオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物、並びに、個体における異所性石灰化および/またはその結果の治療のための局所投与のためのその使用に関し、チオ硫酸ナトリウムは、さらに親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物の形態である。本発明はまた、これらの医薬組成物を調製するための方法に関する。発明の背景 皮膚および皮下の石灰化(一般的には異所性石灰化と称される)は数多くの疾病を併発する。それらは異栄養性石灰化、転移性石灰化、特発性石灰化、または医原性石灰化、またはカルシフィラキシーに分類され得る。 異栄養性石灰化は、局所組織の異常の結果であり、正常な血漿中カルシウムおよびリンレベルにも関わらず発達する。これらの石灰化により発症し得る主な疾病は、結合組織病(強皮症、CREST症候群、若年性皮膚筋炎、ループス)、皮膚および皮下感染(脂肪組織炎)、皮膚腫瘍(特に毛母腫)、特定の先天性疾患(エーラス・ダンロス病、ウェルナー症候群、弾性線維性仮性黄色腫)である。 転移性石灰化は、対照的に、カルシウムおよびリンの代謝の異常の結果である(高カルシウム血症および/または高リン血症)。それ故、これらの異常を引き起こす全ての疾病は、石灰化の発症の原因となり得る。 特発性石灰化は、組織病変またはカルシウムおよびリンの代謝の異常を伴うことなく起こる。この群の主な公知の疾病は、腫瘍性石灰沈着症、陰嚢石灰化、並びに表皮下石灰化小結節である。 医原性石灰化は、カルシウムまたはp−アミノサリチル酸の注射後に起こり得る。それらはまた、飽和塩化カルシウム電極の使用後にも記載されている。 カルシフィラキシーは、小さなサイズの血管および皮下脂肪組織の石灰化に相当する。殆どの場合、慢性腎不全に続発して起こり、しばしばカルシウムおよびリンの代謝異常に関連しているが、その特異な病態生理およびその特定の進展の様式を考えると、依然として別個の存在であり続けている。 異常な性質およびその存在が目に見えないことを超越して、これらの石灰化は、機能に関して(運動範囲および関節機能の制限)、疼痛に関して(いくつかの石灰化、特にカルシフィラキシーにおいては非常に痛みを伴う性質である)、または栄養レベルにおいて(皮膚および皮下組織の虚血および壊死)合併症を引き起こし得、これはそのような手段によってさらなる感染性の合併症がもたらされ得る。 これらの皮膚および皮下の石灰化のために多くの治療が試されおよび報告されているが(ビスホスホネート、カルシウムチャネル遮断剤、プロベネシド)、現在までに、十分な水準で証明されその効力が実証された既存の治癒的処置は全くない。 チオ硫酸ナトリウムは、シアン化物中毒の解毒剤として、およびシスプラチンによる腎毒性の予防に、米国で承認されている。いくつかの刊行物が、異所性石灰化、特にカルシフィラキシーの治療のためのチオ硫酸ナトリウムの効果の可能性を示唆している。シアン化物の解毒剤としてのその医薬品販売承認の脈絡において、および大半の公表された症例において、チオ硫酸ナトリウムは、好ましくは、静脈内経路によって投与された。ある文献は、経口投与によるその使用を報告している。例えば尿路結石症、腎石灰沈着症、腫瘍性石灰沈着症、カルシフィラキシー、または腎性線維化皮膚症によって引き起こされる石灰化の治療のための、全身療法によるチオ硫酸ナトリウムの使用の可能性に対する関心が高まっている。しかしながら、これらの全身経路による全身性副作用の可能性(消化器疾患、代謝性アシドーシス、全身的な骨に関連した結果など)に関する浸透している懸念は依然としてある。 また、米国で承認され、癜風の治療に適応される、商標名Versiclear(登録商標)で知られている、アセチルサリチル酸と組み合わせた、皮膚適用のための25%チオ硫酸ナトリウムを含む、既存の濃縮ローションも存在する。その賦形剤中のプロピレングリコールおよびイソプロピルアルコールの存在も注記すべきである。 チオ硫酸ナトリウムの局所使用は、特に異所性石灰化の治療のために有利であり得る。 2つの文献が、皮膚経路によるチオ硫酸ナトリウムの投与の効果を報告している。第1の症例は、全身性エリテマトーデスに罹患し、脛骨に潰瘍を含む網状皮斑を呈する41歳の女性に関し、前記病変には感染および異栄養性石灰化が合併している(Wolf et al. Arch Dermatol 2008; 144: 1560-2)。チオ硫酸ナトリウムを用いての皮膚治療は1週間に2回投与され、治療計画は、診療所(physician's practice)で、10%のチオ硫酸ナトリウム湿布を貼ることにより行なわれ、その後、包帯で被覆された。この治療法は、潰瘍の周辺への局所副腎皮質ステロイドの適用により補完された。さらに、毎日、患者は酢酸湿布を貼り、その後、包帯がなされた。患者の治療は、適切な経口用抗生物質により補足された。6か月後、表在性石灰化は消滅し、同時に疼痛は次第に軽減され、抗生物質を減量することが可能であった。3か月後、罹患領域上でほぼ完全な再上皮化が起こったので、抗生物質療法を中止することができた。 第2の文献は、皮膚経路によって治療された2つの他の症例を報告している。第1の症例は、変形性関節症、多発性硬化症および偽性副甲状腺機能低下症に罹患し、皮膚へのカルシウム沈着および線維症とともに脚における潰瘍を呈する、74歳の女性に関する(Bair et al, J Drugs Dermatol 2011; 10 : 1042-4)。患者は、潰瘍領域および周辺の皮膚に1日2回、酸化亜鉛中25%のチオ硫酸ナトリウムの局所適用を受けた。この治療は、圧迫および脚の持ち上げを容易にする、伸縮性のある包帯の使用を伴った。潰瘍の容態は5週間後に有意に改善し、良好な再上皮化が起こり、15週間の連続治療後に完全に治癒した。第2の症例は、脚における異栄養性石灰化によってもたらされた血清中高カルシウムレベル、軽度の腎不全および石灰化潰瘍を有する、81歳の男性に関する。この患者は、第1の患者と同じ治療を受け、12週間の治療の後に完全に治癒した。 これらの刊行された両方の文献が、チオ硫酸ナトリウムの皮膚投与は、皮膚異栄養性石灰化を伴う脚の潰瘍を治療できることを示す。しかしながら、これらの文献は、チオ硫酸ナトリウムの製剤に関する正確な詳細を示していない。 チオ硫酸塩の有効性を説明する2つの主な仮説が存在する。第1の仮説は、血管に付着したカルシウムとのキレート形成であり、その産物である非常に可溶性のチオ硫酸ナトリウムはその後、腎臓を通して排泄される。第2の機序は、チオ硫酸ナトリウム(これは2つの不対電子を有する)の抗酸化特性に関与し、これは、内皮機能の回復およびeNOS酵素(内皮一酸化窒素シンターゼ)の産生に寄与する。 他の仮説も考えられ得る。チオ硫酸ナトリウム分子は、実際に、2つの不対電子を有し、これは、カルシフィラキシーに伴う内皮機能不全の最中に生じる反応性酸素種と反応するために利用され得る。生理学的な抗酸化剤であるグルタチオン(GSH γ−グルタミル−システイニル−グリシン)の産生が、この反応中に観察された。チオ硫酸ナトリウムはまた、L−システインが示す内因性基質に由来する酵素的硫黄転移反応を含むチオール化合物の関与する多種多様な反応からの、神経血管調節ガスであるH2Sの放出の原因であり得る。このH2S分子は、血管拡張特性、鎮痛特性および抗炎症特性を付与されていることが知られており、これは、報告されている全症例において観察される疼痛緩解作用を説明し得る。内皮機能不全の改善はまた、報告されている神経障害性疼痛の強力かつ迅速な緩解を説明し得る。 カルシウムに対するチオ硫酸ナトリウムのキレート形成特性は、疼痛性プラークまたは小結節の形態で発症する皮膚石灰化に対するその作用に関与し、前記作用は、長期間かけて行なわれ、数か月間の治療を必要とするが、その腎臓における出来事は、客観的に身体検査(触診)および画像診断によって実証される。 本発明者らは、親油性物質中親水性物質型エマルション中に分散されたチオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物を開発した。本発明者らはまた、左肘の後側表面上の大きなサイズの皮膚石灰化(これが肘の可動化を制限した)を有する12歳の少年に皮膚経路によってこの調製物を投与した。患者は、10%(重量比)に達するチオ硫酸ナトリウム含量を有する約1〜1.5gの医薬組成物を毎晩局所的に適用した。患者は、チオ硫酸ナトリウムによる治療中には他のどの種類の治療も受けなかった。6か月間の治療後、検診は劇的な改善を示し、目に見える皮膚病変は全くなく、肘の可動化は正常な状態まで回復した。さらに、全身性または局所性副作用は全く観察されなかった。これらのデータは、チオ硫酸ナトリウムを、軟組織石灰化の効果的かつ安全な治療を提供する手段として、局所投与のために使用することができることを実証する。 従ってその結果、本発明は、任意の他の予防的または治療的な石灰化のための薬物療法または理学療法の施療の有無を問わず、個体における異所性石灰化および/またはその結果の治療のための局所投与を目的としたチオ硫酸ナトリウムの使用に関する。本発明はまた、本発明者らによって開発された親油性物質中親水性物質型エマルション中に分散されたチオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物と、この医薬組成物を調製するための方法とに関する。発明の説明局所投与による異所性石灰化および/またはその結果の治療のためのチオ硫酸ナトリウムの使用 本発明は、まず第1に、個体における異所性石灰化および/またはその結果の治療のための局所投与のための使用のためのチオ硫酸ナトリウムに関し、該チオ硫酸ナトリウムは、さらに親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物の形態である。 「チオ硫酸ナトリウム」という用語は、無水の式Na2S2O3を有する任意の化合物、または、以下の名称によって一般的に知られている任意の化合物を指す:チオ硫酸ナトリウム、ハイポサルフェートナトリウム(hyposulphate of sodium)、チオ硫酸二ナトリウム塩、ハイポサルフェートナトリウム(sodium hyposulphate)、チオ硫酸ナトリウム(natrii thiosulfas)、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム(natrium thiosulfuricum)、チオ硫酸ナトリウム(natrium thiosulfat)。 市販されているチオ硫酸ナトリウムは、しばしば水和物であり、一般的に五水和物Na2S2O3・5H2O(CAS番号 10102-17-7: IPCS, 1993)である。実験式H10Na2O8S2を有するので、その分子量は248.2である。チオ硫酸ナトリウム五水和物は、顆粒または結晶の形態で存在する固体の生成物であり、これは無色または白色であり、無臭である。それは僅かに吸湿性であるので、加湿雰囲気中においては潮解性となる。チオ硫酸ナトリウム五水和物は45℃で融解し、約49℃のその結晶水中で溶解し、水に非常に可溶性である(20℃で780g/l)。100℃では、それはその水分子を失い、その温度を超えると分解して、硫黄酸化物および酸化ナトリウムを放出する。 チオ硫酸ナトリウムは、酸と接触すると、毒性のある二酸化硫黄を放出することによって分解する。それはヨウ化物、水銀、銀、鉛および他の重金属の塩、並びに酸化剤と反応する。さらに、それは強力な酸化剤(塩素酸、硝酸塩または過マンガン酸塩)との接触で爆発する場合もある。 水溶液は、酸によって加速される反応に基づいて、Na2S2O3→Na2SO3+Sへと緩徐に分解し、酸素の存在下でNa2S2O3+H2O→Na2SO4+H2Sへと加速される。飽和水溶液の計算されたpHは8.1であるが、10%まで濃縮された溶液は、6.0〜8.4までの中性に近いpHを有する。pKa1は1.46〜1.74である。1.21%の濃度のリン酸ナトリウム・12水和物(Na2HPO4・12H2O)の添加された0.15g/mLの注射溶液は、pH8.2〜8.8を有する。アンプルにパッケージングされているので、その後、3年間は安定である。これらの溶液は、熱によりさらにより急速に分解する。チオ硫酸ナトリウム五水和物は、空気との接触および光への暴露を防ぎながら、冷所環境で酸および酸化剤から遠ざけて保存されるべきである。 治療しようとする「個体」は、特に、哺乳動物、好ましくはヒトである。個体は、例えば、成人または小児であり得る。個体は、本発明による医薬組成物の他に、任意の他の予防的または治療的な石灰化のための薬物療法または理学療法の施療の有無を問わない。特定の態様によると、個体は、本発明による医薬組成物の他に、他の予防的または治療的な石灰化のための薬物療法または理学療法の施療を受けていない。 「局所投与」によって、例えば皮膚、開口部または粘膜上への、局所経路による任意の投与と理解される。本明細書において使用されるような局所投与は、皮膚、耳、鼻、膣、尿道、および直腸投与経路を含む。 チオ硫酸ナトリウムは、局所効果を得ることを目的とした局所投与に特に好適である剤形であるクリームに製剤化される。 本発明者らは、任意の他の治療を併用することなく、チオ硫酸ナトリウムおよび親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物を局所経路により投与することが、腫瘍性石灰沈着症症候群に罹患している12歳の少年の肘における大きなサイズの皮膚石灰化を劇的に減少させることを可能としたことを報告した。結果として、チオ硫酸ナトリウムおよび親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物は、それ故、1つ以上の異所性石灰化を有する個体を治療するために局所経路を介して有利に使用され得る。さらに、本発明による医薬組成物は、好ましくは単独で使用され得、すなわち、他の治療治療と組合せない。 「異所性石灰化」という用語は、組織、特に軟組織または局所投与による治療の近づける任意の他の場所における、カルシウム塩の全ての病的な沈着または任意の骨の成長を指す。「軟組織」という用語は、骨組織以外の組織を指し、これは生体の他の構造および器官を接続、支持または取り囲む。軟組織は、腱、靭帯、筋膜、皮膚、線維組織、脂肪組織、滑膜、筋肉、神経および血管を含む。 皮膚は、3つの層からなる構造を有する:表皮、真皮および皮下組織(hypodermis)すなわち皮下組織(subcutaneous tissue)。皮下組織は、脂肪組織および結合組織を含み、これは、大血管および神経を収容する。大半の血管石灰化および異所性石灰化は、皮膚および皮下組織に位置する。さらに、これらの組織は、特に近づき易いために、チオ硫酸ナトリウムの局所投与が可能となる。結果として、治療しようとする石灰化は、好ましくは、皮膚または皮下の石灰化である。 局所経路によって投与されるチオ硫酸ナトリウムは、その原因が何であれ、あらゆる異所性石灰化の治療を可能とし得る。特に、チオ硫酸ナトリウムを使用して、転移性、異栄養性、医原性または特発性石灰化、カルシフィラキシーに関連した石灰化、または皮膚異所性骨化を治療することができる。 チオ硫酸ナトリウムは、好ましくは、原発性甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、ミルク・アルカリ症候群、高カルシウム血症、続発性甲状腺機能亢進症、腎不全、高リン血症、特に遺伝性高リン血症、強皮症、皮膚筋炎、特に若年型、混合結合組織病、ループス、CREST症候群、エーラス・ダンロス症候群、弾性線維性仮性黄色腫、ウェルナー症候群、遅発性皮膚ポルフィリン症、偽性副甲状腺機能低下症、偽性偽性副甲状腺機能低下症、(原発性または続発性)静脈不全症または動脈不全症、糖尿病、陰嚢石灰沈着症、骨化性筋炎、外傷後異所性骨化および特にヒドロキシアパタイトまたはピロリン酸カルシウムのカルシウム結晶沈着によって引き起こされた任意の他の疾病または病状からなる群より選択された疾病または病状に関連している石灰化を治療するために使用され得る。 局所経路によって投与されるチオ硫酸ナトリウムはまた、異所性石灰化の結果を治療するのに使用され得る。 「異所性石灰化の結果」という用語は、異所性石灰化の存在に関連した任意の合併症を指す。この種類の合併症は、例えば、機能的合併症(特に、運動範囲および関節機能の制限)、疼痛、栄養に関する合併症(特に、皮膚および/または皮下組織の虚血または壊死)、または感染の場合がある。 チオ硫酸ナトリウムの局所投与を容易にするために、および、治療しようとする石灰化部位への到達を容易にするために、チオ硫酸ナトリウムは、さらに親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物に製剤化される。 チオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物 本発明による治療を実施するために使用される医薬組成物は、所望の目標を達成するのに効果的である量のチオ硫酸ナトリウムを含む。さらに、治療の実施に使用される医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製物へのチオ硫酸ナトリウムの製剤化を容易にする賦形剤および補助剤を含む、適切な薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的に許容される」という用語は、石灰化または骨化に対する活性成分の効力を負の方向へと干渉せず、かつ、投与される宿主に対して毒性ではない、任意の担体を包含する。特に、本発明による組成物に適した薬学的に許容される担体は、皮膚、開口部または粘膜上への前記組成物の適用に特に適した担体である。適切な薬学的に許容される担体は当技術分野において周知であり、例えば、この分野における標準的な参考テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA, 1985)に記載されている。薬学的に許容される担体は、局所投与形態と、チオ硫酸ナトリウムの溶解度および安定性とに従って選択される。 チオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物はクリームの剤形に製剤化される。 クリーム中に使用される薬学的に許容される担体は、分散された親水相および連続的な親油相を含む、親油性物質中親水性物質型(H/L)エマルションを含む。 それ故、本発明の別の局面は、チオ硫酸ナトリウムおよび親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物に関する。特に、本発明による組成物は、チオ硫酸ナトリウムおよび親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物であり得る。 「エマルション」は、水と油のように混和しない液体の親油相および親水相の巨視的には均一であるが顕微鏡的には不均一である混合物である。一方の相が第2の相に液滴の形態で分散されている。「親油性物質中親水性物質型エマルション」では、親水相が親油相に分散されている。 好ましくは、本発明による組成物中のチオ硫酸ナトリウムの重量含量は、前記組成物の全重量に対して5%〜25%である。さらにより好ましくは、本発明による組成物中のチオ硫酸ナトリウムの重量含量は、前記組成物の全重量に対して、5%〜15%、特に8%〜12%、またはさらには9.5%〜10.5%である。 用量は、個々のニーズ、所望の効果、石灰化のサイズおよび場所に基づいて投与される。投与される用量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、並びに、併用療法(適用可能である場合)、治療頻度、および所望の効果の性質に依存することが理解される。各治療に必要とされる全用量は、複数回の用量で投与されても、1回量で投与されてもよい。本発明による組成物についての適応量は、例えば、約1〜1.5gであり得、これは毎日、例えば毎晩、局所的に適用され、一晩中作用し続ける。 好ましくは、本発明による親油性物質中親水性物質型(H/L)エマルションは、親水性成分、室温で液体である親油性成分、および室温で固体である親油性成分を含む。「室温」という用語は、18℃〜25℃の温度を指すと理解される。 室温で固体である親油性成分は、好ましくは、ワックスを含む。「ワックス」という用語は、室温で固体であるかまたは実質的に固体であり、その融点が一般的には35℃を超える、化合物を指す。ワックスは、動物、植物、鉱物または合成起源であり得る。 室温で固体である親油性成分は、例えば、蜜蝋、例えば白ろうおよび黄ろう、鯨ろう、パルミチン酸セチル、カルナウバろう、カンデリラろう、オーリクリー(ouricurry)ろう、日本ろう、コルクファイバーワックス、またはサトウキビろう、パラフィンろう、ワセリンすなわち石油ゼリー、モンタンろう、微結晶ろう、ラノリンろう、オゾケライトまたはセレシン、硬化油、例えば硬化ヒマシ油、シリコンろう、植物ろう(すなわちバター)、室温で固体である脂肪族アルコール、合成ろう、例えばフィッシャー・トロプシュまたはポリエチレンろう、またはその混合物を含み得る。 本発明による組成物に含まれる各成分の重量含量は変化し得る。好ましくは、室温で固体である親油性成分は、前記組成物の全重量に対して、5重量%〜28重量%、好ましくは8重量%〜25重量%、さらにより好ましくは10重量%〜23重量の含量で存在する。 さらに、室温で液体である親油性成分と、室温で液体である親水性成分の重量比は、好ましくは0.8〜1.9、好ましくは1〜1.9、好ましくは1.1〜1.8、さらにより好ましくは1.15〜1.75である。優先的には、室温で液体である親油性成分と室温で液体である親水性成分の重量比は、医薬組成物を小児に使用する場合には1〜1.9である。それは、医薬組成物を成人に使用する場合には0.8〜1.9まで変化してもよい。 「液体の親油性成分」という用語は、疎水性特性を有する、同一または異なる分子からなり、室温で液体である、物質を指す。液体の親油性成分は、特に油を含み得る。油は、植物、動物、鉱物または合成起源であり得る。 室温で液体である親油性成分は、例えば、ミンク油、タラ肝油、またはハリバ肝油、ウミガメ油のような動物油、パラフィン油のような鉱物油、パーヒドロスクアレンのような合成油、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪酸または脂肪族エステル、2−フェニル安息香酸エチル、パルミチン酸オクチル、ラノリン酸イソプロピル、トリグリセリド(カプリン酸/カプリル酸のエステルを含む)、炭酸ジカプリリル、エトキシル化またはプロポキシル化脂肪族エステルおよびエーテル;シリコン油(シクロメチコン、ポリジメチルシロキサンまたはPDMS)またはフッ素オイル、およびポリアルキレン、トリメット酸トリアルキル、例えばトリメット酸トリデシル、植物油、またはその混合物を含み得る。好ましくは、本発明に記載の室温で液体である親油性成分は、少なくとも1種類の植物油を含む。 「植物」または「植物起源」という用語は、1種以上の植物の1種類以上の部分から抽出されるか、あるいは、それに由来する、物質を指す。それ故これは、特に、動物に由来する化合物を除外する。 本発明の1つ以上の植物油は、好ましくは、植物起源の油もしくは植物起源の油の混合物、植物起源のヘプタン酸もしくはオクタン酸のトリグリセリドのような4〜10個の炭素原子を有する液体の脂肪酸のトリグリセリド、またはヒマワリ油、コーン油、大豆油、マローもしくはスクワッシュ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アーモンド油、アプリコット油、甘扁桃油、マカダミア油、アララ油、コリアンダー油、ヒマシ油、アボカド油、ローズヒップオイル、ローズヒップフルーツオイル、ブドウ種子油、クロフサスグリオイル、ホホバ油、オリーブ油、ラッカセイ油、ココナッツ油、核油;例えば植物起源のカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリドのような半合成油;ホホバ油、シアバター油;好ましくは7〜14個の炭素原子を含む、植物起源の鎖状アルカン、およびその混合物のいずれか1種類からなる群より選択される。 「液体の親水性成分」、特に「水溶液」は、水並びにおそらく溶媒および/または水溶性添加剤を含み得る。水溶性溶媒により、特に、2〜8個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子を有するアルコール、例えばエタノールを挙げることができる。ポリオールにより、例えば、グリセロール、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールを挙げることができる。水相は、場合により、水溶性活性物質、保存剤、塩、ゲル化剤、充填剤、水分散性または水溶性ポリマー、水溶性色素などのような他の添加剤を含み得る。 本発明による「添加剤」は、例えば、安定化剤、賦形剤、緩衝剤または保存剤であり得る。室温で液体である親水性成分中に場合により存在する溶媒および/または水溶性添加剤は、例えば、ガムと、陰イオン性、陽イオン性、両親媒性または非イオン性界面活性剤と、シリコン界面活性剤と、ガムと、樹脂と、分散剤と、半結晶ポリマーと、親水性構造化剤と、抗酸化剤と、保存剤と、芳香剤と、中和剤と、防腐剤と、UVフィルターと、親水性ビタミン、保湿剤、皮膚軟化剤またはコラーゲン保護剤のような化粧品活性物質と、これらの混合物との中から選択され得る。 好ましくは、本発明は、チオ硫酸ナトリウムおよび親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物に関し、前記エマルションは、前記エマルションの全重量に対して:(i)室温で固体である親油性成分7重量%〜30重量%、好ましくは、10重量%〜25重量%と;(ii)室温で液体である親油性成分45重量%〜65重量%、好ましくは、50重量%〜60重量%と;(iii)室温で液体である親水性成分15重量%〜40重量%、好ましくは、20重量%〜35重量%とを含む。 好ましくは、室温で固体である親油性成分は、ワックスを含む。好ましくは、室温で液体である親油性成分は、植物油を含む。好ましくは、室温で液体である親水性成分は少なくとも水を含み、場合により1つ以上の溶媒および/または水溶性添加剤、特に芳香剤を含む。 特に、親油性物質中親水性物質型エマルションは、Galenワックスまたはコールドクリーム(Cold Cream)であり得る。 「Galenワックス」は、皮膚科用局方製剤の製剤化のための基剤として特に使用されるエマルションである。元来の処方は、蜜蝋(または白ろう)、甘扁桃油、バラ香水、およびホウ酸ナトリウムを含む。Galenワックスのための可能な処方の一例を、ここで以下に提供する:白ろう 13g甘扁桃油 53.5gバラ香水 33gホウ酸ナトリウム 0.5g 「コールドクリーム」は、皮膚科用局方製剤の製剤化のための基剤として使用される別のエマルションであり、その処方は、Galenワックスとは、鯨ろう(すなわちパルミチン酸セチル)、ベンゾインチンキ、およびバラのエキスの存在だけ異なる。コールドクリームのための可能な処方の一例をここで以下に提供する:白ろう 8g鯨ろうすなわちパルミチン酸セチル 16g甘扁桃油 55gバラ香水 16gバラのエキス 0.5gベンゾインチンキ 4gホウ酸ナトリウム 0.5g 従って、本発明によるより特定の医薬組成物は、チオ硫酸ナトリウムの重量含量が、前記組成物の全重量に対して、5重量%〜25重量%、特に8重量%〜15重量%、または8重量%〜12重量%、またはさらには9.5重量%〜10.5重量%であり、親油性物質中親水性物質型エマルションがGalenワックスまたはコールドクリームである、組成物である。 本発明による医薬組成物の調製法 本発明の最終局面は、親油性物質中親水性物質型エマルション中にチオ硫酸ナトリウムを分散するステップを含む、本発明による組成物を調製するための方法に関し、前記チオ硫酸ナトリウムは、場合により、親水性溶液にあらかじめ溶解されている。 本発明による組成物を調製するための方法は、好ましくは、チオ硫酸ナトリウムを、例えばすりつぶすまたは微粉化によって、微細かつ均一な粉末へと小さくする第1ステップを含む。このようにして得られた粉末は、その後の段階で、親油性物質中親水性物質型エマルションである薬学的に許容される担体に分散され得る。 第1の態様によると、チオ硫酸ナトリウム粉末は、巨視的および/または顕微鏡的に均一な生成物が得られるまで、例えば、チオ硫酸ナトリウム粉末と親油性物質中親水性物質型エマルションの連続的な混合によって、親油性物質中親水性物質型エマルションに直接分散され得る。 第2の態様によると、第1ステップの間に得られたチオ硫酸ナトリウム粉末を、第2ステップで薬学的に許容される担体の組成物中に使用される親水性成分の一部に溶解し得、これによりチオ硫酸ナトリウムを含む水溶液を得ることができる。その後、第3のステップは、チオ硫酸ナトリウムを含むこの水溶液を、残りの薬学的に許容される担体と、すなわち、組成物に使用された薬学的に許容される担体の全部の親油性成分と、チオ硫酸ナトリウムを溶解するステップに使用されない薬学的に許容される担体の親水性成分の一部とを含むエマルションとを、混合することからなる。 特に、この第2の態様によると、本発明による組成物を調製するための方法は、以下からなるステップ: 1)微細かつ均一な粉末が得られるまで、チオ硫酸ナトリウムをすりつぶすまたは微粉化するステップ; 2)液体の薬学的に許容される担体の親油性成分中に、固体の薬学的に許容される担体の親油性成分を融解することにより、全体的に親油性の成分を得るステップ; 3)液体の薬学的に許容される担体の親水性成分を構成する成分を混合するステップ; 4)ステップ2)で得られた全体的に親油性の成分を、ステップ3)で得られた液体の親水性成分の第1画分と、均一な混合物が得られるまで一緒に混合するステップ; 5)ステップ1)で得られたチオ硫酸ナトリウム粉末を、ステップ3)で得られた液体の親水性成分の第2画分に溶解することにより、チオ硫酸ナトリウムを含む水溶液を得るステップ; 6)ステップ5)で得られたチオ硫酸ナトリウムを含む水溶液を、ステップ4)で得られた混合物に加え、均一な医薬組成物が得られるまで混合するステップを含み得る。 本発明による組成物の調製法のこの第2の態様によると、親水性成分を2つの画分(「第1画分および第2画分」と呼ばれる)に分離する。ステップ4)および5)は、任意の順序で実施され得る。好ましくは、ステップ5)は、水溶液中のチオ硫酸ナトリウムの分解を制限するために、ステップ6)の直前に実施される。 あるいは、この第2の態様によると、本発明による組成物の調製法は、以下からなるステップ: 1)微細かつ均一な粉末が得られるまで、チオ硫酸ナトリウムをすりつぶすまたは微粉化するステップ; 2)液体の薬学的に許容される担体の親油性成分中に、固体の薬学的に許容される担体の親油性成分を融解することにより、全体的に親油性の成分を得るステップ; 3)場合により、液体の薬学的に許容される担体の親水性成分を構成する成分の一部を混合するステップ; 4)ステップ2)で得られた全体的に親油性の成分を、ステップ3)で得られた液体の親水性混合物と、または液体の薬学的に許容される担体の親水性成分を構成する成分の1つと、均一な混合物が得られるまで一緒に混合するステップ; 5)ステップ1)で得られたチオ硫酸ナトリウム粉末を、ステップ4)で使用された/使用されなかった液体の薬学的に許容される担体の親水性成分を構成する成分に溶解することにより、チオ硫酸ナトリウムを含む水溶液を得るステップ; 6)ステップ5)で得られたチオ硫酸ナトリウムを含む水溶液を、ステップ4)で得られた混合物に加え、均一な医薬組成物が得られるまで混合するステップを含み得る。 得られた医薬組成物の均一性は、例えば、顕微鏡を用いて、連続的な親油相に分散された親水性小球のサイズ、並びに、所与の寸法の視野におけるその数を評価することによって監視および制御される場合がある。このような制御はまた、本発明による医薬組成物の調製法の良好な再現性を担保できる場合がある。さらに、活性成分の含量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーを用いて制御され得る。最後に、特定の物理的および化学的パラメーターは、例えば本発明による医薬組成物のpH範囲を制御することができる。 本発明による医薬組成物は、好ましくは、ヒトへの使用のための医薬品に適した、内部が光沢仕上げされたアルミニウムチューブにパッケージングされ得る。このようなパッケージングは、実際に、医薬組成物と空気中の酸素(チオ硫酸ナトリウムの分解因子)との接触と、使用中の微生物による汚染とを制限することができる。その後、チューブは、好ましくは、冷所かつ乾燥した場所で、酸および酸化物質から遠ざけて保存される。 実施例1:材料および方法 漸増濃度のチオ硫酸ナトリウム(5%、10%、15%、20%および25%)を含む一連の製剤が調製された(表1参照)。続いて、調製された組成物は、以下の品質基準を満たすことが確認された:硫黄の臭気の放出がない、目視により均一である、および、広げた場合に均一である。 実施例2 左肘の後側表面上にかなりのサイズの皮下石灰化を呈する家族性腫瘍性石灰沈着症症候群に罹患している12歳の少年。石灰化のサイズのために、肘の可動化が低下した。機能的障害と、手術による介入が限定される可能性とから、チオ硫酸ナトリウムを用いての経皮的な治療を行うことが決断された。調製物は、親油性基剤に分散されたチオ硫酸ナトリウム(10/90、重量/重量)からなるものであった(表1において「Fi10」として示される製剤)。小児は、他のいかなる薬物療法または理学療法も受けなかった。 患者は、約1〜1.5gの治療製品を毎晩局所適用し、一晩中作用させた。全身性または局所性のいずれの副作用も報告または観察されなかった。6か月間の治療後、検診により、劇的な改善が確認され、目に見える皮下病変も全くなく、肘の可動化は正常状態まで回復した。X線分析により、改善がさらに確認された。 チオ硫酸ナトリウムは、皮下石灰化の治療のための有望な薬剤である。チオ硫酸ナトリウムの静脈内投与に関する刊行された論文は、有望な結果を報告している。しかしながら、消化器、代謝および骨に関連した副作用によりチオ硫酸ナトリウムの全身投与に対する安全性に関する懸念は依然としてある。結果として、チオ硫酸ナトリウムの局所適用は、この治療が有効で、全身副作用がほとんどないか全くないことを示した。2本の刊行された文献は、皮膚経路によって適用されたチオ硫酸ナトリウムを用いる顕微鏡的異栄養性石灰化のための治療の成功症例を報告しているが、どちらの文献においても、治療は他の療法と併用されていた。本発明者らの知る限りでは、本明細書に記載されているのは、他の治療とチオ硫酸ナトリウムを併用することなく、チオ硫酸ナトリウムの局所投与後に、かなりのサイズの皮下転移性石灰化が消失した最初に報告された症例である。石灰化の初期のサイズ、得られた劇的な改善、および比較的短期間での前向きな進展は、この進展が自発的ではあり得ないことを示唆する。 これらのデータは、チオ硫酸ナトリウムを局所投与に使用して、皮下転移性石灰化だけでなく、原因が何であれ、関与する機序に関係なく、全ての軟組織石灰化のための、効果的かつ安全な治療を提供することができることを示す。 実施例3 推定表面積10cm×5cmの右足足首領域と、各推定表面積6cm×4cmの2箇所のパッチを有する膝窩領域における機能の制限の原因であるかなりの骨化を呈する、進行性骨異形成に罹患している体重27kgの9歳の小児。非ステロイド系抗炎症薬およびエチドロン酸二ナトリウムを用いての治療にも関わらず改善は全く観察されなかった。急激な再燃に際し、親油性物質中親水性物質型エマルション中10%の濃度で分散されたチオ硫酸ナトリウムに基づく本発明による組成物を用いての治療が試みられた(製剤は、表1において「Ff10」として示されている)。小児は、他のいかなる薬物療法または理学療法も受けなかった。 6か月後の治療の効力を評価するために、画像診断(コンピューター断層撮影またはCTスキャナー)による探索的テストと、メトヘモグロビン血症について特にスクリーニングするための生物学的分析とが、とりわけ治療前および治療の6か月後に計画された。これらの探索的テストが、腎機能および肝機能の調査を含む通常の検査と、カルシウムおよびリンの検査とに加えて実施された。 治療3か月後、臨床医は、すでに骨化上の皮膚がより大きく動くことを認めた。 治療の効力の観点から、6か月後の結果は、皮膚がその下の化骨組織と接着していないことを確認した。さらに、カルシウムの皮膚からの排出は完全に消失した。最後に、スキャナーにより、局所治療の適用前には進展プロセスがあったにもかかわらず、骨化のサイズは安定化していたことが判明した。 耐容性の観点から、腎機能および肝機能の変化は全く観察されず、メトヘモグロビン血症は1%未満であった。 これらの結果はさらに、15%というより高い濃度での治療を継続することを促した(製剤は表1において「Ff15」として示されている)。 実施例4 第3の症例は、15年以上前に診断されたCREST型の強皮症に罹患している72歳の女性患者に関する。長い間、患者は指の石灰化を有し、時々潰瘍を合併し、最近になって両前腕の外表面上に集密的な石灰化を合併していた。この患者の通常の一般的な治療は、プレドニゾロン5mgおよびボセンタンを併用した。患者は局所的な治療を全く受けなかった。 石灰化の現象の広がり(前腕上への出現)と、対称性とにより、本発明による製剤の局所投与が、一方の腕には10%の濃度(製剤は表1において「Ff10」として示されている)、他方の腕には25%の濃度(製剤は表1において「Ff25」として示されている)と決定された。 3か月間の治療後、結果は、両方の濃度における完全な耐容性を示す。「僅かな改善」が患者に認められ、25%の濃度で比較的より高い改善を示した。 強皮症に適切に適合された、実施例2で注記したのと同じタイプの評価が、6か月後に設定された。 実施例5 1部のカルシウム粉末を30部の無菌飲用水中に混合することによって、以下のカルシウム塩の溶液を調製した:グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、およびリン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、およびリン酸三カルシウム。これらの溶液の予想される挙動が、特に炭酸塩から塩化物へと、および他の塩を通して移行する場合に、水溶性の増加が確認された。 実施例1に記載された1部の各製剤が、10部の各々の以前に調製されたカルシウム溶液(PA x%/カルシウム塩)に加えられる。本発明による記載の医薬組成物との接触時間は、約7または8時間であり、インビトロにおけるシミュレーションは、60rpmで設定された撹拌速度では4時間後、120rpmについては2時間後などと見積もられた。全混合物を、Rayneri攪拌機を用いて120rpmの速度で2時間混合する。 カルシウム塩の溶解に対する製剤の効果は、比濁法によって定量される。カルシウム塩の溶解に関する製剤の効力が大きくなればなるほど、その濁度は低くなる。逆に、調製物が、試験されるカルシウム塩に対して全く効果を及ぼさない場合には濁度は高い。 一部の混合物は、これらの方法に満足のいくやりかたで応答しないので、可視範囲の分光光度測定が実施される。最大感度を得るために、吸収ピークの波長が、吸光度の測定を実施する前にスキャンすることによって決定される。希釈は必要である限り行なわれる。 測定は、リファレンス対照溶液を伴う。 チオ硫酸ナトリウムと親油性物質中親水性物質型エマルションとを含む医薬組成物。 前記チオ硫酸ナトリウムの重量含量が、前記組成物の全重量に対して5%〜25%である、請求項1に記載の医薬組成物。 前記親油性物質中親水性物質型エマルションは、室温で固体である親油性成分と、室温で液体である親油性成分と、室温で液体である親水性成分とを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。 前記室温で固体である親油性成分は、前記組成物の全重量に対して5重量%〜28重量%の含量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記室温で液体である親油性成分と、前記室温で液体である親水性成分との重量比が、0.8〜1.9である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記室温で液体である親油性成分と、前記室温で液体である親水性成分との重量比は、1〜1.9である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記エマルションは、前記エマルションの全重量に対して: a)前記室温で固体である親油性成分7重量%〜30重量%と; b)前記室温で液体である親油性成分45重量%〜65重量%と; c)前記室温で液体である親水性成分15重量%〜40重量%とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記室温で液体である親油性成分は少なくとも1種類の植物油を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記室温で液体である親水性成分は、水と、場合により、1種類以上の溶媒および/または水溶性添加剤とを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記チオ硫酸ナトリウムの重量含量は前記組成物の全重量に対して8%〜12%であり、前記親油性物質中親水性物質型エマルションはGalenワックスである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記チオ硫酸ナトリウムはさらに親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物の形態である、個体における異所性石灰化および/またはその結果の治療のための局所投与のための使用のための請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。 前記石灰化は皮膚または皮下の石灰化である、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。 前記石灰化は、転移性石灰化、異栄養性石灰化か、医原性石灰化か、特発性石灰化か、カルシフィラキシーに関連した石灰化か、皮下異所性骨化かである、請求項11または12に記載の使用のための医薬組成物。 石灰化が、原発性甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、ミルク・アルカリ症候群、高カルシウム血症、続発性甲状腺機能亢進症、腎不全、高リン血症、特に遺伝性高リン血症、強皮症、皮膚筋炎、特に若年型皮膚筋炎、混合結合組織病、ループス、CREST症候群、エーラス・ダンロス症候群、弾性線維性仮性黄色腫、ウェルナー症候群、遅発性皮膚ポルフィリン症、偽性副甲状腺機能低下症、偽性偽性副甲状腺機能低下症、(原発性または続発性)静脈不全症または動脈不全症、糖尿病、陰嚢石灰沈着症、骨化性筋炎、外傷後異所性骨化、および、特にヒドロキシアパタイトまたはピロリン酸カルシウムのカルシウム結晶沈着によって引き起こされる任意の他の疾病または病状からなる群より選択された疾病または病状に関連する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。 前記親油性物質中親水性物質型エマルション中に前記チオ硫酸ナトリウムを分散するステップを含み、該チオ硫酸ナトリウムは、場合により、親水性溶液にあらかじめ溶解されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を調製するための方法。 本発明は、親油性物質中親水性物質型エマルション中に分散されたチオ硫酸ナトリウムを含む医薬組成物と、個体における異所性石灰化および/またはその結果の治療のための局所投与のためのその使用とに関する。チオ硫酸ナトリウムは、さらに親油性物質中親水性物質型エマルションを含む医薬組成物の形態である。本発明はまたこれらの医薬組成物を調製するための方法に関する。