タイトル: | 特許公報(B1)_ジンセノサイド組成物 |
出願番号: | 2015510217 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/704,A61K 36/258,A61P 21/00,A61P 25/00,A61P 43/00,A23L 1/30,A61K 8/63,A61K 8/97,A61K 125/00 |
金 昌樹 金 慶光 長谷川 昌康 JP 5748256 特許公報(B1) 20150522 2015510217 20140904 ジンセノサイド組成物 金氏高麗人参株式会社 506376849 大石 征郎 100087882 金 昌樹 金 慶光 長谷川 昌康 20150715 A61K 31/704 20060101AFI20150625BHJP A61K 36/258 20060101ALI20150625BHJP A61P 21/00 20060101ALI20150625BHJP A61P 25/00 20060101ALI20150625BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150625BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150625BHJP A61K 8/63 20060101ALI20150625BHJP A61K 8/97 20060101ALI20150625BHJP A61K 125/00 20060101ALN20150625BHJP JPA61K31/704A61K36/258A61P21/00A61P25/00A61P43/00A23L1/30 BA61K8/63A61K8/97A61K125:00 A61K 31/00−31/80 A61K 36/00−36/9068 A61L 1/30 A61K 8/63 A61K 8/97 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開平11−169135(JP,A) 特開2007−145790(JP,A) 特開平10−14523(JP,A) 国際公開第2010/150867(WO,A1) 特開2004−24139(JP,A) 特開2004−26780(JP,A) 国際公開第2013/114650(WO,A1) 特開2011−182674(JP,A) WANG,H.Y. et al.,In vitro biotransformation of red ginseng extract by human intestinal microflora: Metabolites identi,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2014年 6月11日,Vol.98,p.296-306 KIM,H. et al.,Immunological activity of ginseng is enhanced by solid-state culture with Ganoderma lucidum mycelium,Journal of medicinal food,2014年 1月,Vol.17, No.1,p.150-160 金子仁 外,二重盲検法による高麗蔘粉の臨床効果の検討,臨床と研究,1979年,56巻7号,p.2236-2243 CHI,H. et al.,Transformation of Ginsenosides Rb2 and Rc from Panax ginseng by Food Microorganisms,Biological & pharmaceutical bulletin,2005年,Vol.28, No.11,p.2102-2105 4 JP2014073270 20140904 14 20150219 鳥居 福代 本発明は、経口用の組成物(食品、栄養補助食品、健康食品、医薬品など)や非経口用の組成物(化粧品、育毛剤、浴用剤など)をはじめとする各種の用途に有用なジンセノサイド組成物に関するものである。[ジペノサイドXVIIについて]−1− ジペノサイドXVIIの化学名は、「3−O−β−D−glucopyranosyl−20−O−[β−D−glucopyranosyl−(1,6)−β−D−glucopyranosyl]−20(S)−protopanaxadiol」である。−2− 特開平06−000354(特許文献1)の請求項1の発明は、「サポニン」と「グルクロン酸およびガラクチュロン酸から選ばれる少なくとも1種を構成単糖として含む多糖類」とからなるサポニン含有水可溶性組成物である。 この特許文献1の段落0004には、水に対して易溶性を示すサポニンに関連して、「水酸基が3個のサポゲニンに4個の糖が結合してなるジンセノサイドRb1、水酸基が3個のサポゲニンに3個の糖が結合してなるジペノサイドXVIIは水可溶性を示すが、これらは酸性環境下で糖を2個脱離することによってそれぞれ糖を2個、1個結合してなるジンセノサイドRg3,ジンセノサイドRh2と呼ばれる難溶性の成分に変化する。」との記載がある。 注記すると、上記の「 」内の個所は、次のことを述べている。 A:「Rb1(糖が4個結合)→酸性環境下に糖を2個脱離→Rg3(糖が2個結合)」 B:「XVII(糖が3個結合)→酸性環境下に糖を2個脱離→Rh2(糖が1個結合)」 そして、この特許文献1の段落0019の実施例3においては、アマチャヅルから抽出分離・精製したジペノサイドXVIIを含む組成物にアラビアガムを添加・混合後、蒸留水を添加して攪拌し、透明な溶液を得ることが示されている。 また、この特許文献1の段落0025の実験例3には、アマチャヅルから抽出分離・精製したジペノサイドXVIIを含む組成物を蒸留水に添加・溶解し、この溶液のpHを調整後、加熱処理して、難溶性のジンセノサイドRh2を含む組成物を調製することが示されている。−3− 特開2004−149457(特許文献2)には、ウコギ科ニンジン属の植物の花部から特定の有効成分を抽出することにつき記載があるものの、その段落0020の下から3行目に「ギペノサイドXVII」の記載があるにとどまる。−4− 特表2004−501787(特許文献3)には、その0062〜0067,0269,0270,0322,0608に「XVII」につき言及があるものの、本願発明との関係を見い出し難い。[ジンセノサイドCOについて]−1− 「CO」は、ジンセノサイドの1つであって、「ジンンセノサイドCO」と称されるほか、「コンパウンドO」あるいは「化合物O」と称されることも多い。 上記の「CO」の化学名は、「3−O−β−D−glucopyranosyl−20−O−[α−L−arabinopyranosyl−(1,6)−β−D−glucopyranosyl]−20(S)−protopanaxadiol」である。−2− 特開2003−238424(特許文献4)の段落0018には、ジンセノサイド−Rb1、ジンセノサイド−Rb2、ジンセノサイド−Rcなどは、乳酸菌や腸内細菌により代謝され、1次中間代謝物であるジンセノサイド−Rd、コンパウンド−O(「CO」のこと)、ジンセノサイド−Mc1、2次中間代謝物であるジンセノサイド−F2、コンパウンド−Y(「CY」のこと)、コンパウンド−Mc経て、最終代謝物であるコンパウンド−K(「CK」のこと)を産生するとの記載がある。 特許文献4の図2にも、「Rb1→Rd→F2」、「Rb2→CO→CY」、「Rc→Mc1→Mc」の各分解径路を経て、PPD(つまり「プロトパナキサジオール」)に至るルートが示されている。 この特許文献4の発明の目的は、その段落0012〜0014のように、抗ガン成分の強化、有効成分の性能の極大化、抗アレルギー作用・老化防止・大腸癌/肝臓損傷予防などにある。[日本農芸化学会誌における論文例](はじめに)−1− 本件は醗酵にかかるものであるので、原料が共通しかつ醗酵に用いる微生物がたとえば麹菌(ニホンコウジカビ)に属するものであれば、常に同じ生成物が得られるものであるかどうかについて、文献をあげて説明する。−2− 菌株によって結果や特性が大きく相違することは、古くから知られていることであり、そのことは、たとえば専門誌である日本農芸化学会誌に掲載されている多くの論文からも理解できる。(なお、日本農芸化学会誌に掲載の論文は、インターネットでの検索により「日本農芸化学会誌」を開き、その「巻号一覧」から巻数と号数とを指定すれば、容易に全文を閲覧・印刷することができる。)(非特許文献1) 同誌の第36巻第8号のp.657〜662(1962)(非特許文献1)の「琉球産黒麹に随伴する黄麹菌について」と題する論文には、アスペルギルス オリゼイでも、菌株が異なれば液化力や糖化力(すなわち糖鎖を分解する酸素量や力価)は異なることが示されている。その第3表には、アスペルギルス属の4種54菌株につき、液体培養の場合と固体培養の場合の液化力や糖化力のデータが示されている。第4表には、アスペルギルス属の7種55菌株につき、同様のデータが示されている。(非特許文献2) 同誌の第48巻第10号のp.529〜535(1962)(非特許文献2)の「麹の高濃度アルコール生成因子」と題する論文には、培養条件を変えると麹菌由来のプロテオリピドの生成量が異なることが示されている。(非特許文献3) 同誌の第59巻第6号のp.605〜611(1985)(非特許文献3)の「α−アミラーゼ低生産性麹菌の造成と醤油醸造への応用」と題する論文には、アスペルギルス オリゼイの菌株が異なるとα−アミラーゼやグルコアミラーゼの分泌量が異なることが示されている。[菌株が同じであるときの挙動について]−1− アスペルギルス・オリゼイ(麹菌、ニホンコウジカビ)を用いて薬用人参を処理しても、同じ成分が生成するという保証はない。アスペルギルス・オリゼイ(すなわち、属がアスペルギルスで、種がオリゼイ)を用いた場合であっても、その「菌株」の相違によって培養状態や生成物が大きく相違することはこの分野における技術常識であるということができる。 というのは、異なる生態的地位から分離採集された「菌株」は遺伝的に少しずつ異なっているので、培養状態や生産物の点で少なからぬ差が出てくるのである。−2− そして、菌株が全く同じであっても、培養条件(後述の実施例の個所においても例示するように極めて多くの条件からなる)が少しでも相違すると同じ結果は得られないことも、当業者は身にしみて感じさせられていることである。 また、同じ菌株であって、かつ培養条件を同一に設定した場合であっても、それを使う場や条件がほんの少し変わるだけで、もはや同一の挙動を示さなくなるのが通常である。たとえば、同じ菌株を分けて使う場合であっても、現場の蔵(製造現場)の天井や梁に住む菌がほんの少し混じるだけでも、挙動が変化するほど微妙なのである。−3− 原料植物を薬用人参に限ってみても、(ア)高麗人参、田七人参、アメリカ人参、竹節人参などのいずれであるか、(イ)その人参のどの部位か、(ウ)何年ものか、(エ)採取時期は何時であるか、(オ)水分率状態の調製、乾燥状態、などにより結果は大きく異なる。−4− そして、醗酵条件(培養条件)については、菌の種類の選択のほか、原料に対する菌の割合、植菌条件、固体培養かスラリー培養か、静置培養か、スラリー培養の場合はろ過の有無、培養容器の材質、培養日数、温度条件、攪拌条件(静置培養か間歇攪拌か連続攪拌か)、雰囲気条件、pH条件、pH調整に使うpH調整剤の種類や濃度の条件、菌の栄養剤の種類や濃度の条件、培養槽の蓋や覆いの開閉の有無やその開閉の回数、培養終了後のオートクレーブを用いての菌株の殺菌条件などの膨大な項目を管理するわけであるが、同一の条件を確保することは困難であり、特に固体の静置培養にあっては同一の条件を確保することは至難である。−5− これらの醗酵条件(培養条件)の設定と管理は、長年の技術ないしノウハウの蓄積のほか、事前に少量の原料を用いて試行錯誤し、かつ醗酵中にサンプリングして分析を行いながら、条件の確認や変更を行うというコントロール法も採用する。この場合、長年の経験の蓄積が大きなウエイトを占めることも多い。−6− 原料について述べれば、酒、しょうゆ、酢、味噌のような醗酵食品用の種菌造りのように原料が大豆、米、麦である場合にも、その原料のわずかな差に対応することは容易ではないが、本件のように薬用人参を原料とする醗酵の場合も、原料の変動に対応することは容易ではない。−7− アスペルギルス・オリゼイ(麹菌、ニホンコウジカビ)を用いて薬用人参を処理すれば、同じ成分が生成するという保証は何もない。 同じメーカーの同じ種麹の同じ菌株を使用した場合においても、さらに他の多くの条件の全てを正確にコントロールすることに成功したときに、はじめて工業的な生産が成り立つのである。特開平06−000354特開2004−149457特表2004−501787特開2003−238424日本農芸化学会誌、第36巻第8号、p.657〜662(1962)日本農芸化学会誌、第48巻第10号、p.529〜535(1962)日本農芸化学会誌、第59巻第6号のp.605〜611(1985)[ジペノサイドXVIIとジンセノサイドCOとの組み合わせについて]−1− 上述のように、特許電子図書館による検索によれば、ジペノサイドXVIIについての記載のある特許文献は極めて少なく(特許文献1〜3のみであると思われる)、ジンセノサイドCOについての記載のある特許文献も極めて少ないように思われる(特許文献4のみであると思われる)。 まして、ジペノサイドXVIIとジンセノサイドCOとの双方が含有される組成物について記載のある特許文献は皆無であると思われる。−2− ジンセノサイドの分解経路に関しては、その経路を部分的に示した資料ないし文献は存在しているものの、特許文献1などに登場するジペノサイドXVIIと特許文献2に登場するジンセノサイドCOとの双方を含む組成物の「相乗作用」につき記載した文献は存在しないと信じられる。−3− ジンセノサイド系成分には多種の成分がある。「高麗人参の不思議な薬効」(ビタミン文庫、発行所は株式会社マキノ出版ら、平成20年6月28日に第27刷発行、執筆者は近畿大学薬学部の教授ら)の11頁には、「高麗人参に含まれているサポニンのうちで、現在化学構造式がわかっているものは31種類あり」とあり、その12〜13頁にはその31種類のサポニンを構成するジンセノサイドの各成分につき説明があり、その169頁、170頁、186頁にもサポニンは31種類あるとの記載がある。 従って、高麗人参に含まれているジンセノサイドの成分数がn=31であるとすると、最も簡単な2つの成分の組み合わせの場合でも465通りにもなる(n×(n−1)/2)。そして、有用さの点で可能性があると思われる「特定の2つの組み合わせ」にたどりついたとしても、それら2つの成分の量的な比率をはじめとする様々な変数があるので、実験数だけでも膨大になる。−4− しかも、ジンセノサイド系の2つの成分を組み合わせた組成物に個々の成分を超える有用な作用が奏されるかどうかは、ウェルプレート(細胞培養プレート)やシャーレや試験管を用いて一度に多数を判定できるわけではなく、1つの要因の影響を調べるだけに限っても、相応の数の被験者に一定期間毎日投与して判定しなければならない。 加えて、2つの成分の組み合わせによって、 (+)プラスの作用効果が得られるか、 (−)逆にマイナスの作用効果が奏されるか、 (±)プラスの作用とマイナスの作用とが相半ばしているか、 (0)プラスの作用はなくマイナスの作用もないか、については、経験則によれば、(+)の作用効果が得られるケースは非常に少ないのである。 ただし、高麗人参由来の成分を用いているので、(−)の作用効果が得られるケースはそれほど多くはないと思われる。なお、被験者が体調不良を感じた場合は、直ちに投与試験を中止することになる。 いずれにせよ、高麗人参に含まれている成分や高麗人参を原料としてそれを醗酵させることにより生成する成分については、種類が極めて多い上、作用効果の確認には膨大な人的エネルギーを要するため、2以上の成分の組み合わせによりすぐれた作用効果を奏するジンセノサイド組成物を開発するには多大の困難を伴う。研究者の経験と、直感と、それを支える組織の協力体制により、開発に挑戦するわけであるが、ほとんどの場合が挫折に終わるのが実態である。−5− 先に述べた「ジペノサイドXVIIとジンセノサイドCOとの組成物」は、多種のジンセノサイド成分の中の特定の組み合わせにより相乗効果のすぐれたものを求めるための研究開発の過程の中で、膨大な試行錯誤を繰り返すことにより、偶然の力も借りてやっと見い出したものである。「見い出した」というより、「遭遇した」という方が適切な表現である。(本発明の目的) 本発明は、このような背景下において、特定の2つの成分を含有するジンセノサイド組成物であって、かつ好ましい作用効果を奏する組成物を提供することを目的とするものである。 本発明のジンセノサイド組成物は、各種ジンセノサイド系成分を含む組成物であって、ジペノサイドXVII(略称「XVII」)とコンパウンドO(略称「CO」)との双方の成分を含有してなること、を必須の要件とするものである。 さらに、本発明のジンセノサイド組成物は、上記の要件に加えて、・各種ジンセノサイド系成分を含む組成物であって、・前記組成物中のRb1,Rc,Rb2,Rb3,Rd,Rg3(S),Rg3(R),Rz,Rk1,Rg5,XVII,Mc1,CO,F2,CY,Rh2(S),Rh2(R),CK,PPD,Re,Rg1,Rf,Rg2(S),Rg2(R),Rh1(S),F1,PPT,Roの各成分の合計量を100重量%とするとき、・該組成物中のXVIIの含有量が1重量%以上でかつCOの含有量が3.5重量%以上であること、も必須の要件とするものである。 そして、上記においては、前記組成物中のXVIIに対するCOの重量比(CO/XVII)が1〜10の範囲内にあることが好ましく、中でも1.4〜7.8の範囲内にあることが特に好ましい。 本発明によれば、「ジペノサイドXVII」と「ジンセノサイドCO」という特定の組み合わせの組成物を見い出すことにより、すぐれた作用効果(不定愁訴の改善など)が奏されることがわかった。しかも、その作用効果が、わずか2種類という最小限の組み合わせにより発揮されるのである。 多種の成分を用いれば、1つ1つの成分の貢献度が集積して必要な作用効果が得られると期待するのは錯覚であるようである。多数の成分を用いること自体は差し支えないが、ポイントないし軸となる少数の成分の間の相乗作用を軸にしないと、逆に本来の有効成分の作用が希釈され、所期の目的を十分には達成できないようである。 以下、本発明を詳細に説明する。 以後の説明においては、ジペノサイドXVIIを「XVII」と略称し、ジンセノサイドCOを「CO」と略称することがある。[各種のジンセノサイドについて]−1− 薬用人参には有効成分として多種類のサポニンが含まれている。生の薬用人参に含まれるサポニン(以下「ジンセノサイド系成分」という)はメイジャー・ジンセノサイドが多く、生体内にすぐには吸収されるものが少ない。 しかしながら、腸内細菌が分泌する糖鎖加水分解酵素の働きによりメイジャー・ジンセノサイドの糖鎖が加水分解されてマイナー・ジンセノサイドが生成し、そのマイナー・ジンセノサイドが生体内に吸収されて効能を発揮しているものと考えられている。−2− ところが、かなりの割合の人(たとえば4人に1人)は糖鎖分解酵素を分泌する腸内微生物を持っていないため、メイジャー・ジンセノサイドのままで腸内を通過してしまうことが知られている。(たとえば、「高麗人参最前線」、2002年8月15日第1刷発行、建仁舎発行、の46頁を参照。)−3− そこで、価値の高いマイナー・ジンセノサイドをより多く吸収できるように、予めメイジャー・ジンセノサイドからマイナー・ジンセノサイドを作製しておいて、そのマイナー・ジンセノサイドを摂取するようにすれば、多くの人にとってマイナー・ジンセノサイドが吸収されるようになり、その恩恵を受けることができる。−4− さて、メイジャー・ジンセノサイドからマイナー・ジンセノサイドを製造する方法の一つとして、醗酵人参の作製がある。すなわち、微生物や酵素を使用して薬用人参を醗酵させることにより、メイジャー・ジンセノサイドの糖鎖を加水分解して、マイナー・ジンセノサイドを生成させるのである。(醗酵人参粉末の作製) 醗酵人参の作製に関しては、微生物や酵素を使用して薬用人参を醗酵させることにより、メイジャー・ジンセノサイドの糖鎖を加水分解して、マイナー・ジンセノサイドを生成させる方法がある。 これまでは、そして今でも、薬用人参のエキスを乳酸菌などで醗酵させてマイナー・ジンセノサイドを得る方法が一般的であるが、本発明においては固体(好ましくは粉砕された粒子)のままで醗酵させる方法の方が好適である。このように固体状態で醗酵させる方法によれば、エキスを抽出する必要がなく、工程的にも費用的にもエキス培養に比べて格段に優れている。(原料として使用する薬用人参) 原料として使用する薬用人参は、高麗人参、田七ニンジン、アメリカ人参、竹節人参などのいずれであってもよく、特にジンセノサイドのバランスがとれている高麗人参、特に「高麗紅参」、さらにはその「高麗紅参のヒゲ根」がベストであるが、これに限られるものではない。 いずれの原料も、好ましくは粉砕した粒子を用い、粉体そのものあるいは粉体を水に分散したスラリー状態で培養することが有利である。 スラリー醗酵の場合は、ろ過することなく、60℃以下で水分を蒸発させ、残渣を微粉末にする。この微粉末を各種の用途に用いる。たとえば、微粉末をそのまま摂取するとか、食品に混ぜて摂取するとか、顆粒状や錠剤にしてもよい。また、エタノールや含水エタノールを用いて微粉末からエキスを抽出し、液体食品や化粧品に添加しても良いし、浴用剤や育毛剤に用いても良い。医薬品として用いることも可能である。(醗酵に使用する微生物) 醗酵に使用する微生物について種々検討を行った結果、食品用に使われている麹菌(アスペルギルス オリゼイ)のうちの特定の菌株がマイナー・サポニン(マイナー・ジンセノサイド)の生成には特に適していることを見い出した。特に、麹菌(アスペルギルス オリゼイ)の菌株の1つである株式会社菱六製の「糖化マイティ株(TM株)」(市販品であり、市場で入手可能である)が本発明の目的に最も適しており、培養条件に工夫を要するものの、ジペノサイドXVIIとジンセノサイドCOとを高濃度で生成させることが判明した。 なお、トリオール系のジンセノサイドは、ジオール系ほど顕著ではなかったが、上記の菌株を用いた場合には糖鎖が若干加水分解されることが判明した。(XVIIとCOの各成分を含む組成物の製造)−1− 本発明者らは、薬用人参の固体培養において、薬用人参として種々の種類、種々の大きさや粒径のものを用い、種々の菌を植菌して培養し、培養時の水分条件や加水条件、オートクレーブ処理の有無またはタイミング、温度条件、培養日数、静置培養と攪拌とのタイミングなどに留意し、さらには培養終了後の殺菌条件に留意することにより、上記のXVIIとCOとの双方の成分を上記の好適比率で含む組成物を一挙に得るべく、鋭意検討を行った。−2− その結果、上記の菌株(糖化マイティ株)を用いて、薬用人参、好ましくは高麗人参、さらに好ましくは高麗紅参、さらに好ましくはその高麗紅参のヒゲ根を分解させることにより、Rb1,Rc,Rb2,Rb3,Rd,Rg3(S),Rg3(R),Rz,Rk1,Rg5,XVII,Mc1,CO,F2,CY,Rh2(S),Rh2(R),CK,PPD,Re,Rg1,Rf,Rg2(S),Rg2(R),Rh1(S),F1,PPT,Roの各ジンセノサイド系成分の総和に対してXVIIが1重量%以上含有されかつCOが3.5重量%以上含有されるようにすることに成功した。 ここでXVIIとCOとは必須成分であるが、残りの26成分は任意成分であるので、必ずしもそれら全ての成分が存在していなくてもよい。なお、上記の28成分のほかに、他のジンセノサイド成分を含んでいることは差し支えない。−3− また、一旦そのような好適比率の組成物を見い出しておけば、もし製造条件によってはそれらの2成分の量的比率が狙いとする比率から外れたり、別の製造条件により取得した組成物同士を適宜混合したり、不足する成分を追加混合したりすることがあっても、上記のXVIIとCOとの2成分を所期の量的組成に調整することは容易であり、その場合も本発明の実施態様に含まれる。−4− そして、このようにして生成したジペノサイドXVIIとジンセノサイドCOとの好適なバランスを持つジンセノサイド組成物を摂取すると、不定愁訴などに対する効能が最大限に発揮できるようになることが判明した。−5− 1回の醗酵実験に2週間以上を要する実験を100回以上実施し、そのときに見つけられた42種の成分(痕跡量のものを含む)のうち定量可能な28種を定量する分析操作を行った結果、XVIIとCOの2成分を特定割合で含む本発明の組成物を製造する好適な方法の例は、次の醗酵条件のうちのいくつかを満たすこと(好ましくはそれらの条件を全て満たすこと)であることがわかった。 (ア)薬用人参として、好ましくは紅参(特に紅参のヒゲ根)を用いること。 (イ)薬用人参粉砕物を用いて、好ましくは固体培養により醗酵させる固体静置培養法を採用すること。 (ウ)そのときの薬用人参粉砕物の粒径を10mm以下、好ましくは7mm以下、殊に5mm以下に設定すること。 (エ)そのときの醗酵を好ましくはアスペルギルス オリゼイ(麹菌)を用いて行うこと、特にその市販品である上記の糖化マイティ株(TM菌)を用いて行うこと。 (オ)温度条件、攪拌条件、間歇的な加水などの水分率の調整、必要に応じて行うオートクレーブ処理のタイミングに留意することなど。 次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。[予備的検討/紅参の大きさによる菌の生育度の違い]−1− 紅参(特に紅参のヒゲ根の部位)を粉砕して得た10〜20mm、5〜10mm、5mm以下の4種の大きさの紅参をオートクレーブにて殺菌後、水分含有量を35重量%とし、湿った各粉末を薄く広げ、市販の麹菌(アスベルギルス オリゼイの糖化マイティ株(TM株))を一定量植菌し、30℃にて固体静置培養を行った。経時的に該菌の生育度を観察した。−2− なお、「糖化マイティ」株または「TM」株と称される株式会社菱六製の麹菌(菌株)は、市場で容易に入手可能な著名な種麹である。ちなみに、2014年4月18日の京都新聞(夕刊)の「発酵の景」と題するシリーズには、紙面1面を使って種麹の説明記事が掲載されており、創業300年以上の種麹専門の老舗である同社の種麹のカラー写真も掲載されていて、菌が萌えるように成長する状態を知ることができる。−3− 培養1週間目と培養2週間目の結果を表1に示す。「麹菌の生育度」の欄中の符号の意味は次の如くである。 −:生育せず、±:ごく僅か生育、+:やや生育、 ++:生育、+++:非常に多く生育 表1の通り、紅参の大きさが細かいほど麹菌の生育度は大となり、酵素グルコシダーゼをよく分泌するようになることがわかる。[実施例と参考例] 次に、実施例と参考例とをあげて、本発明をさらに詳細に説明する。[各種ジンセノサイド組成の異なる錠剤の作製]−1− 高麗紅参のヒゲ根を3mm以下に粉砕し、オートクレーブにて120℃、2気圧(大気圧+1気圧)の条件で殺菌した。 水分含量が30〜40重量%であることを確認後、湿った粉末を薄く広げ、市販の麹菌である「アスペルギルス オリゼイTM株(糖化マイティ株)」および「アスペルギルス オリゼイSA株(株式会社菱六製の醤油用旭菌)」と、本出願人が保存している保存菌株である「アスペルギルス ニガー」および「ペニシリウム チトリナム」の2株との計4菌株を適当量植菌して静置し、30℃、湿度90%以上にて培養した。(各菌株の培養時間は表2に記載した。) 培養終了後、再びオートクレーブにて菌株を完全に死滅させ、乾燥し、粉砕することにより、微粉末の醗酵紅参を得た(12種類)。なお、得られた微粉末に毒性物質が含有されていないことを確認した。−2− 次に、それぞれの微粉末が94重量%、賦形剤のショ糖脂肪酸エステルが6重量%である円盤型の錠剤(300mg/粒)12種類を作製した。錠剤No.は醗酵紅参粉末No.と同じである。−3− 上記の12種類の醗酵紅参粉末中の各ジンセノサイド量を表2に示す。 ここで、表2中の「総ジンセノサイド量」とは、Rb1,Rc,Rb2,Rb3,Rd,Rg3(S),Rg3(R),Rz,Rk1,Rg5,XVII,Mc1,CO,F2,CY,Rh2(S),Rh2(R),CK,PPD,Re,Rg1,Rf,Rg2(S),Rg2(R),Rh1(S),F1,PPT,Roの総和である。 なお、表2中の「*印」は、「総ジンセノサイドに対する含有率」や「CO/XVIIの含有比」が本願の請求項2に規定の範囲からは外れている場合である。[臨床試験とその結果]−1− 不定愁訴には、肩凝り(以下、首筋の凝りを含むものとする)、疲労感、食欲不振、不眠、貧血、冷え症、便通不調、気の充実感の欠如、腰痛、胃痛、胃下垂、腹部膨満感、吐き気、生理不順、むくみ、発汗をはじめとして種々の症状があるが、広い年代にわたって肩凝りを感じる人が多い上、その肩凝り症状の有無や度合いの自己判断が容易であるので、「肩凝り」を不定愁訴の典型例とし臨床試験の判定として採用した。−2− 肩凝り症で悩む40歳から70歳の男女60名(男性24名と女性36名)に、臨床試験の内容を説明後、同意書にサインを頂き、被験者となってもらった。 60名の被験者を無作為に12グループに組み分けして(1グループは男性2人、女性3人)、肩凝り症に対する醗酵紅参粉末からなる錠剤の作用についての臨床試験を行った。−3− 後述の表3に示すように、各グループは、そのグループと同じ番号の錠剤をグループ全員が毎日3粒を摂取し、1ケ月間継続摂取した。摂取開始前と摂取1ケ月後に、被験者全員に肩凝りに対する自覚症状の有無または程度を判定してもらった。 なお、被験者には、その錠剤が「高麗人参由来のものである」ということしか伝えていない。−4− 自覚症状表には、肩凝りに対する状況が次のように7段階に分かれている。 ・状態1:肩、首筋がひどく凝り、吐き気、目まいがし、体を動かせない ・状態2:肩、首筋がひどく凝り、マッサージをすれば一時良くなり、身の回りのことは自分でできる。 ・状態3:肩、首筋が凝り苦痛だが、無理をすれば仕事はできる ・状態4:肩、首筋が凝り気味になるが、物事に集中していると忘れていることが多い ・状態5:肩、首筋が凝るが、さほどではないのでいつもそのままにほっておく ・状態6:軽く肩、首筋が凝る時があるが、ほっておいても自然に治る ・状態7:肩、首筋が凝ることはなく、いつも体が軽い−5− 被験者全員に、試験開始前と摂取1ケ月後の状態について上記に当てはまる状態の数字を記入してもらい、数字が上昇するかどうかで肩凝りに対する改善効果を評価した。 ・数字が3段階以上上昇した場合、「著効」とし、3点をつける ・数字が2段階上昇した場合、「有効」とし、2点をつける ・数字が1段階上昇した場合、「やや有効」とし、1点をつける ・数字に変化無しまたは下降した場合、「無効」とし、0点をつける−6− グループ5名の点数を合計して、各グループの改善度を求めた。このときの合計点数により、次のように判定した。 ・合計点数が13以上…効果大 (◎印) ・合計点数が12〜8…効果中 (○印) ・合計点数が 7〜3…効果小 (△印) ・合計点数が 2以下…効果無し(×印)−7− 肩凝りに対する臨床試験の結果を次の表3に示す。 本発明のジンセノサイド組成物は、経口用の組成物(食品、栄養補助食品、健康食品、医薬品など)として特に有用であり、そのほか、身体関連の非経口用の組成物(化粧料、育毛剤、入浴剤など)をはじめとする種々の用途に有用である。 各種ジンセノサイド系成分を含む組成物であって、 ジペノサイドXVII(「XVII」と略称)とコンパウンドO(「CO」と略称)との双方を必須成分として含有してなること、および、 前記組成物中のRb1,Rc,Rb2,Rb3,Rd,Rg3(S),Rg3(R),Rz,Rk1,Rg5,XVII,Mc1,CO,F2,CY,Rh2(S),Rh2(R),CK,PPD,Re,Rg1,Rf,Rg2(S),Rg2(R),Rh1(S),F1,PPT,Roの各成分の合計量を100重量%とするとき、 該組成物中のXVIIの含有量が1重量%以上でかつCOの含有量が3.5重量%以上であること、を特徴とするジンセノサイド組成物。 前記組成物中のXVIIに対するCOの重量比(CO/XVII)が1〜10の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のジンセノサイド組成物。 薬用人参の固体培養により得たものである請求項1〜2のいずれか1つに記載のジンセノサイド組成物。 不定愁訴改善用の組成物である請求項1〜3のいずれか1つに記載のジンセノサイド組成物。【課題】薬用人参由来のジンセノサイド組成物であって、経口用の組成物として特に有用な組成物を提供することを目的とする。【解決手段】各種ジンセノサイド系成分を含む組成物であって、ジペノサイドXVII(「XVII」と略称)とコンパウンドO(「CO」と略称)との双方を必須成分として含有してなることを特徴とする。組成物中に存在するジンセノサイド系成分の総和に対し、XVIIは1重量%以上含有され、かつCOは3.5重量%以上含有される。組成物中のCO/XVIIの重量比は1〜10の範囲内にある。【選択図】なし