タイトル: | 公開特許公報(A)_ホスホマイシン製剤、その製剤の製造方法、及びその製剤を含有するポリメチルメタクリレート骨セメント粉末 |
出願番号: | 2015063652 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/665,A61K 47/10,A61K 9/14,A61L 27/00,A61P 19/00,A61K 47/32 |
フォクト セバスティアン JP 2015196689 公開特許公報(A) 20151109 2015063652 20150326 ホスホマイシン製剤、その製剤の製造方法、及びその製剤を含有するポリメチルメタクリレート骨セメント粉末 ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー 510340506 林 一好 100120891 フォクト セバスティアン DE 10 2014 104 676.5 20140402 A61K 31/665 20060101AFI20151013BHJP A61K 47/10 20060101ALI20151013BHJP A61K 9/14 20060101ALI20151013BHJP A61L 27/00 20060101ALI20151013BHJP A61P 19/00 20060101ALI20151013BHJP A61K 47/32 20060101ALI20151013BHJP JPA61K31/665A61K47/10A61K9/14A61L27/00 FA61P19/00A61K47/32 13 OL 13 本発明は、ホスホマイシン製剤、その製剤の製造方法、及びその製剤を含有するポリメチルメタクリレート骨セメント粉末に関する。 関節の内部人工器官は、患者の移動性(mobility)の維持を目的として、関節疾患の幅広い範囲において、広範に及びかなり良好に用いられている。残念ながら、僅かな割合の患者は、関節の内部人工器官、並びに骨組織及び軟組織の周囲における感染症に苦しんでいる。これらの感染症を処置するため、関節の体内プロテーゼの一段階又は二段階の再置換(revision)を実施することはかなり一般的である。 抗生物質又は2以上の抗生物質を含有する再置換用ポリメチルメタクリレート骨セメントは、再置換する関節の内部人工器官の永久的な機械的固定に、役立つと証明されている。前記抗生物質は、再置換する関節の体内プロテーゼ並びに骨組織及び軟組織の周囲を、少なくともその外科手術直後、新たな細菌のコロニー形成から保護する。医師によって、特定の個人のために調製された抗生物質の混和剤とは別に、工業的に製造された再置換用ポリメチルメタクリレート骨セメントが役立つと証明されている。 それゆえ、Heraeus Medical GmbHは、再置換用ポリメチルメタクリレート骨セメント、Copal(登録商標)G+C、及びCopal(登録商標)G+Vを製造し供給する。Copal(登録商標)G+Cは、ゲンタマイシン及びクリンダマイシンの組合せを含有する。Copal(登録商標)G+Vは、ゲンタマイシン及びバンコマイシンの組合せを含有する。もし関節の体内プロテーゼの感染がメチシリン耐性のブドウ球菌(Staphylococci)(MRSA、MRSE)により引き起こされるなら、これまでのところ、ゲンタマイシン及びバンコマイシンの組合せが、特に適切である。 しかしながら、ブドウ球菌及び腸球菌のバンコマイシン−耐性株も、同様に何年かの間に公知となった。これらのバンコマイシン−耐性細菌が、近い将来、関節関連感染症の原因としての役割が高まることが想定され得ると考えられる。それゆえ、バンコマイシン−耐性細菌に対する活性を有する少なくとも1種の抗生物質を含有する再置換用ポリメチルメタクリレート骨セメントを開発することは意味がある。また、ますます問題となるグラム陰性菌も、関節関連感染症の原因として重要である。これは、特に、いわゆるESBL菌株に関係する。 ホスホマイシンは、かなり幅広い範囲の活性を有する抗生物質である。その抗菌性のホスホマイシン((2R,3S)−3−メチルオキシランホスホン酸(methyloxiranphosphonic acid),CAS 23155−02−4)は1969年に発見された(D.Hendlin et al.:Phosphonomycin a new antibiotic produced by strains of Streptomyces.Science 96(1969)122−123)。 ホスホマイシンは細菌性酵素、MurA(UDP−N−アセチルグルコサミン−エノールピルビル−トランスフェラーゼ)を阻害する(F.M.Kahan et al.:The mechanism of action of fosfomycin(phosphonomycin).Ann N Y Acad Sci 235(1974)364−386;E.D.Br)。それは、ムレイン生合成の最初の段階を触媒する。この段階において、ホスホエノールピルビン酸(PEP)に基づくエノールピルビル部分は、UDP−N−アセチルグルコサミンの3位でヒドロキシル基に転移される。これは、乳酸エーテルがUDP−N−アセチルグルコサミンの3位に生じたことを意味する。ホスホマイシンによるこの段階の中断は、バクテリア細胞壁の合成を阻害する。 ホスホマイシンは、感受性細菌に殺菌作用がある。ホスホマイシンは、メチシリン耐性のブドウ球菌を含むグラム陰性及びグラム陽性菌の双方に対して活性である(W.Graninger et al.:In vitro activity of fosfomycin against methicillin−susceptible and methicillin−resistant Staphylococcus aureus.Infection 12(1984)293−295)。また、ホスホマイシンは、バンコマイシン−耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(VRS)及びバンコマイシン−耐性腸球菌に対しても有効である(F.Allerberger,I.Klare:In−vitro activity of fosfomycin against vancomycin−resistant enterococci.J Antimicrob Chemother 43(1999)211−217;T.Hara et al.:Antimicrobial activity of fosfomycin against beta−lactamase−producing methicillin−sensitive Staphylococcus aureus and methicillin−sensitive coagulase−negative staphylococci.Jpn J Antibiot 56(20013)142−147)。加えて、ホスホマイシンはESBLに対しても有効である(M.E.Falagas et al.:Fosfomycin for the treatment of multidrug−resistant,including extended−spectrum β−lactamase producing enterobacteriaceae infections:a systematic review.Lancet Infect Dis 10(2010)43−50)。 医薬用途のために、ホスホマイシンは、保管中に十分安定であり、生理的に耐え得るpH値を有する水溶液の形態である塩に転換される。ヨーロッパ薬局方は3種のホスホマイシン塩について説明している。これらは、ホスホマイシンカルシウム塩の一水和物(CAS 26016−98−8)、ホスホマイシンの二ナトリウム塩(CAS 26016−99−9)、及びトロメタモール−ホスホマイシン(CAS 78964−85−9)である。 ホスホマイシンナトリウム塩及びホスホマイシンカルシウム塩は非常に吸湿性である。双方の塩は大気中の湿気を引き付け、そのプロセスにおいて潮解する。実験では、乾燥状態において、これらの塩がポリメチルメタクリレート骨セメントのセメント粉末に取り込まれ得ることが示されている。しかしながら、そのセメント粉末も、大気中で保存する間、大気中の湿気を引き付け、その際、抗生物質粒子は潮解する。これは、そのセメント粉末を凝集させ得る。このため、これらのホスホマイシン塩の双方は、抗菌性のポリメチルメタクリレート骨セメント粉末の工業生産には不適であり、あまり相応しくない。トロメタモール−ホスホマイシンも多少吸湿性であるけれども、ホスホマイシンのカルシウム塩及び二ナトリウム塩を用いる場合と幾分違いはない。 ホスホマイシンのカルシウム塩は、抗菌性のポリメチルメタクリレート骨セメントの製造にとって特に興味深いものである。カルシウムイオンは、骨の必須ミネラル成分である。それゆえ、ホスホマイシンのカルシウム塩を含有するポリメチルメタクリレート骨セメントが骨組織により許容されるであろうことは推定され得る。ホスホマイシンのカルシウム塩の吸湿特性のため、ポリメチルメタクリレート骨セメント粉末に前記塩を容易に組み込むことは基本的に不可能である。ポリメチルメタクリレート骨セメントの工業生産については、実施するのは基本的に不可能である。 上述の先行技術の不利益を克服するのが本発明の目的である。特に、本発明は、室温で粉末であり、最小限の吸湿特性のみを示すホスホマイシンのカルシウム塩の製剤を提供する。50%の相対湿度及び室温では、その製剤は大気中の湿気の付加により潮解し得ない。さらに、前記製剤は、容易に粉砕され、大気中の湿気を引き付けず、潮解しない流動性の粉末状固体として存在する。ホスホマイシンのカルシウム塩の製剤を含有し、ポリメチルメタクリレート骨セメントについてのISO 5833の最小限の機械的要求を満たすポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を開発することが本発明の別の目的である。 驚くべきことに、70℃より高い融点を有する糖アルコールを含有するホスホマイシンのカルシウム塩の製剤により、本発明の目的は適った。 それゆえ、本発明は、a)ホスホマイシンのカルシウム塩、及びb)70℃より高い融点を有する少なくとも1種の糖アルコールを含み、 糖アルコールの重量比が、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して少なくとも0.8であるホスホマイシン製剤に関する。 本発明は、ホスホマイシンのカルシウム塩及び70℃より高い融点を有する少なくとも1種の糖アルコールの混合物が、ホスホマイシンのカルシウム塩単独のものとは対照的に、明らかに吸湿性が低い、又はほとんど吸湿性がないことのその驚くべき知見に基づく。その混合物は、ホスホマイシンのカルシウム塩を含む場合のように、その製剤が大気中の湿気を引き付けることにより潮解することなく、又はその製剤が半流動体に凝集することなく、50%の相対湿度と室温で大気中に難無く保存できる。本発明に係るホスホマイシン製剤は容易に粉砕でき、このようにして得られた粉末は、著しい吸湿特性を示さず、難無く取り扱える。 任意の一つの理論に拘束されることを望まないが、吸湿性の作用の驚くべき改善が、水分を引き付けるカルシウムイオンの傾向を顕著に低減させる、カルシウムイオンと相互作用する糖アルコールに基づくことは推測される。 本発明に係る製剤は、非乾燥空気の存在下で、非凝集で自由流動性のポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を製造するために使用することができる。結果として、共通の技術装置及び/又は機械を、例えば再置換用セメントのための、カルシウムホスホマイシン含有セメント粉末を製造するために、大気中の湿度に対する、高価で特別な予防措置なく使用できる。 本発明を以下に詳細に説明する。 上記のように、ホスホマイシンは、(2R,3S)−3−メチルオキシランホスホン酸(CAS 23155−02−4)である。ホスホマイシンのカルシウム塩は、通常、水和物として水を含む。それは、ホスホマイシンのカルシウム塩の一水和物(CAS 26016−98−8)又はカルシウム−ホスホマイシン一水和物とも呼ばれる。ホスホマイシンのカルシウム塩は、例えば、Ecros(スペイン)から市販されている。ホスホマイシンのカルシウム塩は、吸湿性の粉末である。 70℃より高い融点を有する如何なる糖アルコールも、糖アルコールとして適切である。糖アルコールはアルジトールとも呼ばれる。1種以上の糖アルコールを使用できる。全ての立体異性体又は立体異性体の如何なる混合物も、糖アルコールとして使用できる。糖アルコールは、安価であり、毒性学の観点から許容できる。 本発明に係る製剤に使用される糖アルコールは、好ましくは4、5、若しくは6個の炭素原子を有する糖アルコールであり、又はそれらの混合物である。糖アルコールの好適な例は、エリスリトール、トレイトール、キシリトール、マンニトール、及びソルビトールを含み、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトールが特に好ましい。 本発明に係るホスホマイシン製剤において、糖アルコール(b)の重量比(b/a)は、ホスホマイシンのカルシウム塩(a)に対して、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも1、及び特に好ましくは少なくとも1.5である。本発明に係るホスホマイシン製剤における糖アルコールの重量比は、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して、通常5以下、好ましくは4以下、及び特に好ましくは3.5以下である。しかしながら、原則の問題として、糖アルコールのより高い重量分率はかえって好都合である。この場合にも、非吸湿性の粉末が得られる。しかしながら、それにより、そのセメントにおける効果的ではない材料(糖アルコール)の量が無駄に増加され、機械的安定性が弱められるから、通常は許容できない。 糖アルコールの重量比は、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して、好ましくは0.8〜5、より好ましくは1〜4、及び特に好ましくは1.5〜3.5の範囲であり、糖アルコールの重量比は、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して、特に好ましくは2〜3の範囲であり、例えば約2〜1、又は約3〜1である。 本発明に係るホスホマイシン製剤は、特に、固体の製剤、すなわち固形、好ましくは粉末として存在する。適用できる場合、粒状として存在するのがかえって好都合である。好ましくは、本発明に係るホスホマイシン製剤は、融液中に懸濁されたホスホマイシンのカルシウム塩を有する固化糖アルコールの融液であり、その固化融液は、好ましくは粉砕された又は粉末状の形態で存在する。適用できる場合、粒状の形態で使用されるのがかえって好都合である。通常、ホスホマイシン製剤は無色の、非吸湿性の粉末固体である。 適用できる場合、本発明に係るホスホマイシン製剤は、1種以上の添加剤を含有できる。しかしながら、本発明に係るホスホマイシン製剤は、好ましくは又は実質的に、ホスホマイシンのカルシウム塩及び糖アルコールからなる。 好ましくは、その製剤は、少なくとも1種の糖アルコールの融液にホスホマイシンのカルシウム塩を懸濁し、その後、その固化融液を冷却及び粉砕することによる、簡単な方法で製造される。それゆえ、本発明は、以下の工程を含むホスホマイシン製剤の製造方法にも関する:a)少なくとも1種の糖アルコールを溶融する工程;b)糖アルコール融液にホスホマイシンのカルシウム塩を懸濁する工程;c)融液中に懸濁されたホスホマイシンのカルシウム塩を有する固化融液を得るために、融液中にホスホマイシンのカルシウム塩を懸濁した後、融液を冷却する工程;及びd)粉末固体を得るために、固化融液を粉砕する工程。 工程b)において、ホスホマイシンのカルシウム塩は特に、固体として、好ましくは粉末として糖アルコール融液に添加される。工程c)において、その融液は、融液中に懸濁されたホスホマイシンのカルシウム塩を有する固化融液を得るために、前記懸濁工程の直後、好ましくは冷却される。通常、前記冷却工程は常温及び/又は室温で実施される。好ましくは、融液は急冷される。急冷のために、当業者に公知の慣用的な措置、例えば水又は氷水による外部冷却を実施できる。 融液中に懸濁されたホスホマイシンのカルシウム塩を有する固化糖アルコールの融液は、例えば、手作業で乳鉢又は粉砕器を用いて、工程d)において容易に粉砕される。粉砕する工程で、無色の、非吸湿性の粉末固体を得る。 本発明に係るホスホマイシン製剤は、粉末組成物、特にポリメチルメタクリレート骨セメント粉末に対して、抗生物質として使用するのに適切である。結果として、ホスホマイシンのカルシウム塩の吸湿特性に関連する障害を克服できる。 ポリメチルメタクリレート骨セメントは、通常、2−成分系として存在する。第一の成分は、通常、骨セメント粉末である。その骨セメント粉末は、ポリメチルメタクリレート骨セメント粉末とも呼ばれる。第二の成分は、重合可能な単量体、通常はメチルメタクリレートを含有し、通常、液体である。2つの成分の混合の結果、特定の期間の後に硬化する(養生する)塑性変形できる骨セメント生地を得る。 本発明に係るホスホマイシン製剤は、特に、ポリメチルメタクリレート骨セメントのための骨セメント粉末に対する抗生物質として、適切である。それゆえ、本発明は、上記の本発明に係るホスホマイシン製剤を、好ましくは粉末の形態で含む骨セメント粉末にも関する。 好ましくは、本発明に係るホスホマイシン製剤を含む骨セメント粉末は、さらに、少なくとも1種の粒子のポリメチルメタクリレート又はポリメチルメタクリレートコポリマー、粒子の放射線不透過性物質、ラジカル開始剤、並びに適用できる場合、さらなる抗生物質及び/又は防腐剤を含有する。好ましくは、骨セメント粉末における、本発明に係るホスホマイシン製剤の存在する割合は、骨セメント粉末の総重量に基づき、1〜20重量%である。 粒子のポリメチルメタクリレート又はポリメチルメタクリレートコポリマーは、特に、非架橋性のポリマー及び/又はコポリマーである。粒子のポリメチルメタクリレート又はポリメチルメタクリレートコポリマーは、好ましくは懸濁重合体である。 全ての一般的な粒子の放射線不透過性物質を、粒子の放射線不透過性物質として使用できる。適切な例には、特に、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、毒物学的に許容できる重金属粒子、例えばタンタル、フェライト、及びマグネタイト、又は毒物学的に許容できるカルシウム塩を含む。 ラジカル開始剤の用途は、第二の成分と混合した後、第二の成分に存在する単量体、通常は、メチルメタクリレートの重合を開始させるためである。全ての一般的なラジカル開始剤を使用できる。適切な例には、過酸化物及びアゾ化合物を含み、過酸化物と、特に過酸化ジベンゾイルが好ましい。 適用できる場合、骨セメント粉末は、1種以上のさらなる抗生物質及び/又は1種以上の防腐剤を含有できる。骨セメント粉末に存在させることができるさらなる抗生物質の適切な例には、適用できる場合、ゲンタマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、及びダプトマイシンを含む。骨セメント粉末に存在させることができる防腐剤の適切な例には、適用できる場合、オクテニジン二塩酸塩、ポリヘキサニド、過酸化カルシウム、及び過酸化カルバミドを含む。 セメント生地(cement dough)を製造するために、骨セメント粉末と混合させる第二の成分は、例えば、本発明の分野で一般的であるモノマー液(monomer liquid)となり得る。この形式のモノマー液は、例えば、メチルメタクリレート、及びN,N−ジメチル−p−トルイジンのような第三級アミン、及びp−ヒドロキノンのような安定剤、並びに/又は適用できる場合に染料を含む。 塑性変形できる骨セメント生地を製造するために、本発明に係る骨セメント粉末を、例えば、メチルメタクリレート、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−ヒドロキノンから構成される一般的なモノマー液と混合することにより使用できる。それが養生した後には、曲げ強度が少なくとも50MPaであり、曲げ弾性率が少なくとも1,800MPaであり、及び圧縮強度が少なくとも70MPaであるものに関するISO 5833の要求を満たす必要がある。 本発明に係るホスホマイシン製剤を含有する骨セメント粉末は、再置換用途のポリメチルメタクリレート骨セメントを製造するのに、スペーサを製造するのに、及び局所的な作用物質放出系を製造するのに、特に適切である。 再置換用途のためのポリメチルメタクリレート骨セメントは、感染された関節の内部人工器官の、一段階又は二段階の腐敗性の再置換(septic revision)の範囲において使用される、再置換用関節の内部人工器官の永久固定に向けたポリメチルメタクリレート骨セメントを意味すると理解されるものである。用語「スペーサ」は、感染された関節の内部人工器官の二段階の腐敗性の再置換の範囲において、一時的なプレースホルダ―として挿入される一時的なインプラントを意味すると理解されるものである。ポリメチルメタクリレート骨セメント粉末は、局所的な作用物質放出系を製造するために使用するのに適当であり、そのセメント粉末がメチルメタクリレート、及び第三級アミン、例えばN,N−ジメチル−p−トルイジンの一般的な混合物と混合され、任意の形状に鋳造(cast)又は形成され得る自己硬化セメント生地が製造され、ラジカル重合の手段により養生された後、機械的に安定な形状体が製造される。これを、局所的な抗生物質治療の範囲において使用できる。作用物質放出系は、球形、マメ形状、棒状で提供され得る。生体適合性のワイヤに対して、球形又はマメ形状の本体が付着するのにかえって好都合である。 本発明は、如何なる方法又は形態にも本発明を制限することなく、以下の実施例によってより詳細に説明されるだろう。 以下の実施例では、ホスホマイシンのカルシウム塩として、Ecros(スペイン)製のホスホマイシンのカルシウム塩の一水和物を使用し、簡略化のために、以下本願明細書において、カルシウム−ホスホマイシン一水和物と呼ぶ。[実施例1] 総量4.00gのエリスリトール(融点120℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを150℃の温度である加熱プレートに置いた。そのエリスリトールは透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例2] 総量8.00gのエリスリトール(融点120℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを150℃の温度である加熱プレートに置いた。そのエリスリトールは透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例3] 総量12.00gエリスリトール(融点120℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを150℃の温度である加熱プレートに置いた。そのエリスリトールは透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例4] 総量8.00gキシリトール(融点94℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを150℃の温度である加熱プレートに置いた。そのキシリトールは溶融し、透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例5] 総量12.0gキシリトール(融点94℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを150℃の温度である加熱プレートに置いた。そのキシリトールは透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例6] 総量8.00gマンニトール(融点166℃、Sigma−Aldrich)を磁器製のるつぼに秤量した。次いで、その磁器製のるつぼを230℃の温度である加熱プレートに置いた。そのマンニトールは透明な融液を形成した。次いで、総量4.00gのカルシウム−ホスホマイシン一水和物をその融液に添加した。激しく撹拌することにより、カルシウム−ホスホマイシン一水和物を融液と混合した。次いで、その混合物を、すぐに室温まで冷却した。その融液は、無色の固体に固化した。その固体を磁器製のるつぼから取り出し、乳鉢で粉砕した。製剤が大気中の湿気を引き付けることにより凝集又は潮解することなく、難なく大気中に保存できる無色の粉末固体を製造した。[実施例7〜12、ポリメチルメタクリレート骨セメント粉末について] 何れの場合も、88.53gの粒子ポリメチルメタクリレートコメチルアクリレート(懸濁液ポリマー)、10.00gの二酸化ジルコニウム、及び1.47gの過酸化ジベンゾイル(75%)(25重量%の水で鈍性化された(phlegmatised)過酸化ジベンゾイル)の混合物をTurbulaミキサーを用いて粉砕することにより製造した。(実施例7) 総量40.0gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例1の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。次いで、44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液(メチルメタクリレート、クロロフィリンE141、N,N−ジメチル−p−トルイジン、及びp−ヒドロキノンを含有する混合物)と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。その生地を用いて、ISO 5833に従って曲げ強度及び曲げ弾性率を試験するために、75mm×10mm×3.3mmの大きさの帯状の試験体を製造した。加えて、圧縮強度試験のために、円筒形の試験体(直径6mm、高さ12mm)を製造した。(実施例8) 総量40.00gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例2の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。総量44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。次いで、実施例7のように、試験体を製造した。(実施例9) 総量40.00gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例3の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。総量44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。次いで、実施例7のように、試験体を製造した。(実施例10) 総量40.00gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例4の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。総量44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。次いで、実施例7のように、試験体を製造した。(実施例11) 総量40.00gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例5の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。総量44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。次いで、実施例7のように、試験体を製造した。(実施例12) 総量40.00gのポリメチルメタクリレート骨セメント粉末を、実施例6の4.00gのホスホマイシン製剤と混合した。総量44.0gのそのセメント粉末を、20mlのPalacosモノマー液と混合した。これを30秒間撹拌した。このようにして、塑性変形できるセメント生地を製造した。次いで、実施例7のように、試験体を製造した。[実施例7〜12のISO 5833に従った機械的パラメータの試験] ISO 5833では、50MPa以上の曲げ強度、少なくとも1,800MPa以上の曲げ弾性率、及び70MPa以上の圧縮強度を要求する。24時間の間、23℃及び50%の相対湿度で実施例7〜12の試験体を保管した後、曲げ強度、曲げ弾性率、及び圧縮強度をISO 5833に従って測定した。その結果は、曲げ強度、曲げ弾性率、及び圧縮強度に関するISO 5833の機械的要求が実施例8〜12のセメントで満たされたことを示す。実施例7のセメントは、曲げ弾性率及び圧縮強度に関する要求を満たす。曲げ強度は、ISO 5833で要求される限界である。a)ホスホマイシンのカルシウム塩、及びb)70℃より高い融点を有する、少なくとも1種の糖アルコールを含み、 前記糖アルコールの重量比が、前記ホスホマイシンのカルシウム塩に対して少なくとも0.8である、ホスホマイシン製剤。 前記糖アルコールが4、5、又は6個の炭素原子を含み、 前記糖アルコールが、好ましくは、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のホスホマイシン製剤。 前記糖アルコールの重量比が、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して少なくとも1であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のホスホマイシン製剤。 固体、好ましくは粉末の製剤であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤。 固化糖アルコールの融液であり、 前記ホスホマイシンのカルシウム塩が前記融液中で分散されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤。 前記糖アルコールの重量比が、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して0.8〜5、好ましくは1〜4、及びより好ましくは1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤。 請求項1〜6の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤の製造方法であって、a)少なくとも1種の糖アルコールが融解される工程;b)前記ホスホマイシンのカルシウム塩が撹拌しながら、前記糖アルコールの融液に懸濁される工程;c)前記融液中に懸濁された前記ホスホマイシンのカルシウム塩を有する固化融液を得るために、前記融液中に懸濁された前記ホスホマイシンのカルシウム塩を有する前記融液が、冷却される工程;及びd)粉末固体を得るために、前記固化融液が粉砕に供される工程を含む製造方法。 前記冷却される工程において、前記融液中に分散された前記ホスホマイシンのカルシウム塩を有する前記融液が急冷されることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。 請求項1〜6の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤を含む骨セメント粉末。 少なくとも1種の粒子のポリメチルメタクリレート又はポリメチルメタクリレートコポリマー、粒子の放射線不透過性物質、及び過酸化ジベンゾイルのようなラジカル開始剤をさらに含み、適用できる場合、さらなる抗生物質及び/又は防腐剤を含む、請求項9に記載の骨セメント粉末。 前記骨セメント粉末における、前記ホスホマイシン製剤の存在する割合が1〜20重量%であることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の骨セメント粉末。 再置換目的のためのポリメチルメタクリレート骨セメントを製造するため、スペーサを製造するため、及び局所的な作用物質放出系を製造するための、請求項9〜11の何れか1項に記載の骨セメント粉末の使用。 粉末組成物、特に骨セメント粉末における抗生物質としての、請求項1〜6の何れか1項に記載のホスホマイシン製剤の使用。 【課題】ホスホマイシン製剤、及びホスホマイシン製剤を含有するポリメチルメタクリレート骨セメント粉末の提供。【解決手段】a)ホスホマイシンのカルシウム塩、及びb)エリスリトール、及びキシリトール等の、70℃より高い融点を有する少なくとも1種の糖アルコールを含み、糖アルコールの重量比が、ホスホマイシンのカルシウム塩に対して少なくとも0.8であるホスホマイシン製剤、及びホスホマイシン製剤を含有するポリメチルメタクリレート骨セメント粉末。【選択図】なし