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タイトル:公開特許公報(A)_トロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤
出願番号:2015038676
年次:2015
IPC分類:A61K 8/60,A61K 31/7024,A61Q 19/08,A61P 17/16,C07K 14/78,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

徳留 嘉寛 JP 2015178493 公開特許公報(A) 20151008 2015038676 20150227 トロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤 マルホ株式会社 000113908 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 村田 美由紀 100117743 小池 順造 100163658 當麻 博文 100174296 竹井 増美 100158724 徳留 嘉寛 JP 2014038475 20140228 A61K 8/60 20060101AFI20150911BHJP A61K 31/7024 20060101ALI20150911BHJP A61Q 19/08 20060101ALI20150911BHJP A61P 17/16 20060101ALI20150911BHJP C07K 14/78 20060101ALI20150911BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20150911BHJP JPA61K8/60A61K31/7024A61Q19/08A61P17/16C07K14/78C12Q1/68 A 21 5 OL 21 4B063 4C083 4C086 4H045 4B063QA01 4B063QA13 4B063QA18 4B063QQ02 4B063QQ08 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS16 4B063QS25 4B063QS32 4B063QX02 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC402 4C083AC422 4C083AC542 4C083AD092 4C083AD341 4C083AD342 4C083AD512 4C083CC04 4C083DD33 4C083EE12 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA03 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA17 4C086MA28 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045EA34 4H045FA71 本発明は、細胞、特に皮膚線維芽細胞におけるトロポエラスチンの発現を促進し、ひいてはエラスチンの産生を促進する、トロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤に関する。 加齢や紫外線等による皮膚の老化には、皮膚真皮の細胞外マトリックス成分の減少や変性が関与することが知られている。 主な細胞外マトリックス成分としては、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン等の線維状タンパク質、およびヒアルロン酸等のムコ多糖類が知られている。 上記細胞外マトリックス成分のうち、コラーゲンまたはヒアルロン酸に対し、軟骨や関節の滑液に含まれるムコ多糖類であるコンドロイチン硫酸が産生促進作用を有することが知られ、コンドロイチン硫酸を有効成分として含有するコラーゲン産生促進剤、およびヒアルロン酸産生促進剤が開示されている(特許文献1、2)。 一方、同じ皮膚真皮の細胞外マトリックス成分であるエラスチンに対しては、ラット新生児の肺線維芽細胞において、不溶性エラスチンの沈着が減少すること、ケロイド線維芽細胞において、コンドロイチン硫酸により、細胞外マトリックスへのエラスチンの蓄積が減少することが報告されている(非特許文献1、2)。 エラスチンは、細胞外マトリックスを構成する弾性線維の主成分であり、組織に弾力性および柔軟性を付加する。特に、皮膚真皮においては、皮膚に弾力性を与え、皮膚のはりを保持する機能を有する。加齢によるエラスチン線維の減少は、皮膚のたるみやしわといった老化症状の大きな要因となるといわれている。また、紫外線による光老化では、真皮網状層のエラスチン線維が変性沈着して、弾力性がなく硬化したしわの多い光老化皮膚の原因となるといわれている。 皮膚の老化の進行に伴う上記のようなエラスチンの減少や変性を防止すべく、エラスチンを分解する酵素であるエラスターゼの活性を阻害し、また、エラスターゼの産生を抑制する物質のスクリーニングが行われてきた。また、細胞外マトリックスにおけるエラスチンの生成を促進する物質の探求も行われている。 しかしながら、エラスターゼ活性阻害作用またはエラスターゼ産生抑制作用、あるいはエラスチンの産生促進作用を有する成分は、多くが植物抽出物等の天然由来成分に求められており、その有効性、安定性、経皮吸収性等の観点から、十分満足できるものが得られているとは言い難い。特開2012−031122号公報特開2012−031123号公報Archives Biochemistry and Biophysics, Vol. 302, No. 2, pp. 322-331, 1993Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 390, pp. 1221-1228, 2009 本発明は、細胞外マトリックスにおけるエラスチンの産生を促進するため、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの発現を促進し、ひいてはエラスチンの産生を促進し得るトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コンドロイチン二糖、すなわちコンドロイチンの構成単位であるグルクロン酸とN−アセチルガラクトサミンよりなる二糖、のトリ硫酸エステルまたはその塩が、トロポエラスチンの発現を促進することで細胞外マトリックスにおけるエラスチンの産生を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、次の[1]〜[21]に関する。[1]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を含有する、トロポエラスチン発現促進剤。[2]コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、上記[1]に記載のトロポエラスチン発現促進剤。[3]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、上記[1]または[2]に記載のトロポエラスチン発現促進剤。[4]皮膚線維芽細胞のトロポエラスチンの発現を促進する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のトロポエラスチン発現促進剤。[5]皮膚の老化の防止または改善用である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のトロポエラスチン発現促進剤。[6]皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のトロポエラスチン発現促進剤。[7]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を含有する、エラスチン産生促進剤。[8]コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、上記[7]に記載のエラスチン産生促進剤。[9]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、上記[7]または[8]に記載のエラスチン産生促進剤。[10]皮膚真皮の細胞外マトリックスにおけるエラスチンの産生を促進する、上記[7]〜[9]のいずれかに記載のエラスチン産生促進剤。[11]皮膚の老化の防止または改善用である、上記[7]〜[10]のいずれかに記載のエラスチン産生促進剤。[12]皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品である、上記[7]〜[11]のいずれかに記載のエラスチン産生促進剤。[13]細胞にコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させることによる、トロポエラスチンの発現の促進方法。[14]コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、上記[13]に記載の促進方法。[15]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、上記[13]または[14]に記載の促進方法。[16]細胞が皮膚線維芽細胞である、上記[13]〜[15]のいずれかに記載の促進方法。[17]細胞にコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させ、トロポエラスチンの発現を促進することによる、エラスチン産生の促進方法。[18]コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、上記[17]に記載の促進方法。[19]コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、上記[17]または[18]に記載の促進方法。[20]細胞が皮膚線維芽細胞である、上記[17]〜[19]のいずれかに記載の促進方法。[21]上記[17]〜[20]のいずれかに記載の促進方法によって得られたエラスチン。 本発明に係るトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、トロポエラスチン遺伝子の発現を増加させて、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンタンパク質の発現を増加させることができ、皮膚真皮の細胞外マトリックス等において、エラスチン線維の産生を促進することができる。 また、本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、経皮吸収性に優れ、エラスチンの減少、変性による皮膚の老化を有効に防止し、または改善することができる。 さらに、本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、皮膚線維芽細胞等の細胞に作用させて、該細胞のトロポエラスチンの発現を促進してエラスチンの産生を促進することができ、皮膚シートの生成等、再生医療分野においても有用である。コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルのナトリウム塩を24時間作用させた後のトロポエラスチン遺伝子発現について、他のコンドロイチン硫酸類と比較して示す図である。コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルのナトリウム塩を8時間または24時間作用させた後のトロポエラスチン遺伝子発現について、他のコンドロイチン硫酸類と比較して示す図である。コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルのナトリウム塩を24時間作用させた後のトロポエラスチン発現について、他のコンドロイチン硫酸類と比較して示す図である。コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルのナトリウム塩を48時間作用させた後のトロポエラスチン発現を示す図である。コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルのナトリウム塩を24時間作用させた後のエラスチン産生量を示す図である。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を有効成分として含有する。 コンドロイチン二糖は、グルクロン酸とN−アセチルガラクトサミンがβ−1,3−結合してなる二糖であり、コンドロイチンの構成単位である。 本発明において、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルを構成するコンドロイチン二糖としては、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシン[3−O−β−D−グルコピラヌロノシル−2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−β−D−ガラクトピラノース]、および下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体が挙げられる。下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体は、N−アセチルコンドロシンのグルクロン酸残基の4位水酸基が水素に置換され、4位と5位の間の結合が二重結合となった化合物である。 本発明においては、上記N−アセチルコンドロシンまたはその化学修飾体のトリ硫酸エステルを好適に用いることができる。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤に含有されるコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルとしては、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものが好ましく用いられる。 また、本発明においては、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルの塩としては、薬学的に許容される塩であれば、特に限定されることなく用いることができるが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が、好ましい塩として例示される。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルは、コンドロイチナーゼABC等、コンドロイチン硫酸分解酵素を用いて、種々のタイプのコンドロイチン硫酸を分解する方法等、自体公知の方法によって製造することができるが、デキストラ ラボラトリーズ(DEXTRA LABORATORIES)社等より提供されている市販の製品を用いることが便利である。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤には、上記したコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステル、およびその塩からなる群より1種を選択し、単独で含有させてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて含有させてもよい。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤またはエラスチン産生促進剤におけるコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩の含有量は、その剤形の種類等にもよるが、トロポエラスチン発現促進効果またはエラスチン産生促進効果および製剤安定性等を考慮すると、トロポエラスチン発現促進剤またはエラスチン産生促進剤の全量に対し、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルの量として0.001重量%〜10重量%とすることが好ましく、0.01重量%〜5重量%とすることがより好ましく、0.1重量%〜3重量%とすることがさらに好ましい。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、一般的な製剤化方法、たとえば第16改正日本薬局方製剤総則に記載された方法に従い、製剤化に際して一般的に用いられる溶剤または基剤に、有効成分であるコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を加え、必要に応じて賦形剤、乳化剤、溶解補助剤、懸濁化剤等の添加剤等を加えて混合し、均質に溶解、分散または懸濁して調製することができ、液剤、ゲル剤、クリーム剤等の半固形剤、固形剤、スプレー剤等、種々の剤形で提供することができる。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの遺伝子の発現を促進し、トロポエラスチンタンパク質の生成を促進することにより、エラスチンの産生を促進する。それゆえ、エラスチン線維の再構築効果が期待される。 特に、皮膚線維芽細胞のトロポエラスチン発現の促進に有効であり、皮膚真皮の細胞外マトリックスにおけるエラスチン産生の促進、エラスチン線維の再構築に有用である。 従って、本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、しわ、たるみ等、エラスチンの減少または変性に起因する皮膚の老化症状の発現、進行を防止し、または前記老化症状を改善するために好ましく用いられる。 よって、本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品として、好ましく提供することができる。 皮膚外用医薬品としては、外用散剤等の外用固形剤;ローション剤、リニメント剤等の外用液剤;外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤;油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等の軟膏剤;水中油型または油中水型のクリーム剤;水性または油性ゲル剤;テープ剤またはパップ剤等の貼付剤等が挙げられる。これらは、一般的な溶剤または基剤を用い、必要に応じて一般的な添加剤を加え、また、必要に応じて支持体、剥離ライナー等を用いて、一般的な皮膚外用医薬品の製造方法、たとえば第16改正日本薬局方製剤総則「皮膚などに適用する製剤」に記載された方法に準じて調製される。 上記溶剤としては、精製水、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。 上記基剤としては、オリーブ油、ダイズ油、ツバキ油、ゴマ油、落花生油、カカオ脂、牛脂、豚脂等の動植物性油脂;カルナウバロウ、ミツロウ等のロウ;オクチルドデカノール、セタノール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;スクワラン、白色ワセリン、流動パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素といった油脂性基剤、ゼラチン、マクロゴール等の親水性基剤が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。 また、上記添加剤としては、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、デキストリン等の賦形剤;アジピン酸ジイソプロピル、カプリン酸、クロタミトン、炭酸プロピレン等の溶解補助剤;アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、大豆レシチン、ポビドン等の懸濁化剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤または乳化剤;カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)等の粘稠剤;トリアセチン、ミリスチン酸イソプロピル等の可塑剤;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;エデト酸ナトリウム、ソルビトール、チモール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の安定化剤;アスコルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の保存剤;塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のpH調整剤などが挙げられ、必要に応じて、1種または2種以上を選択して用いる。 なお、本発明のトロポエラスチン発現促進剤またはエラスチン産生促進剤が皮膚外用医薬品として提供される場合には、本発明の特徴を損なわない範囲で、コエンザイムQ10、デオキシリボ核酸ナトリウム、アシタバ抽出物、クロレラ抽出物、酵母抽出物、オタネニンジン抽出物、ヒバマタ抽出物、ロイヤルゼリー抽出物等の細胞賦活剤;加水分解シルク、カッコン抽出物、シャクヤク抽出物、卵殻膜タンパク質、レチノール等の抗シワ・抗老化剤;アズレン、アラントイン、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、キダチアロエ抽出物、グリチルリチン酸等の抗炎症・肌荒れ防止剤等を含有させることができる。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤またはエラスチン産生促進剤が皮膚外用医薬品として提供される場合において、その適用量は、トロポエラスチン発現促進剤またはエラスチン産生促進剤の剤形、対象となる患者の性別、年齢、皮膚の老化症状やその程度等により異なるが、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルの量として、好ましくは1日当たり0.1μg/cm2〜200μg/cm2であり、より好ましくは1μg/cm2〜50μg/cm2である。前記の量は、1回で適用してもよく、数回に分けて適用してもよい。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品としても提供することができる。かかる医薬部外品または化粧品は、皮膚外用医薬品に準じて製造することができ、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック等の形態で提供され得る。 また、本発明は、上記コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を細胞に作用させて、トロポエラスチンの発現を促進する方法を提供する。 さらに、本発明は、上記コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を細胞に作用させ、トロポエラスチンの発現を促進することにより、エラスチン産生を促進する方法を提供する。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させる細胞としては、皮膚線維芽細胞が好ましく、皮膚線維芽細胞にコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させることにより、皮膚線維芽細胞において、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの発現を促進することができるため、皮膚真皮の細胞外マトリックスにおけるエラスチン産生を促進し、前記細胞外マトリックスを構成する弾性線維の主成分であるエラスチン線維の構築を図ることができる。 皮膚線維芽細胞におけるトロポエラスチンの発現を促進させるためには、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩は、コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルの量として、皮膚線維芽細胞5×104個に対し、0.02μg〜3μg作用させることが好ましく、0.03μg〜1μg作用させることがより好ましい。 本発明の上記トロポエラスチンの発現促進方法およびエラスチン産生の促進方法は、医療用皮膚シートの調製等、再生医療分野において有用である。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。 まず、以下の試験例にて用いた皮膚線維芽細胞の培養方法、および各評価に用いた試料について示す。 なお、以下の試験例にて、特に製品名および提供元を記載しない試薬等は、和光純薬工業株式会社より入手した。 (1)皮膚線維芽細胞の培養方法 10(w/v)%牛胎仔血清添加ダルベッコ修正基礎培地(DMEM−10%FBS)3mLに正常ヒト皮膚線維芽細胞(胎児由来)を5×104個播種し、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした。 (2)試料 (i)コンドロイチン二糖トリ硫酸エステル四ナトリウム(CDi−TriS・Na4):コンドロイチン二糖(下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体)のグルクロン酸残基の2位、N−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位に硫酸基が結合したトリ硫酸エステルの四ナトリウム塩(「Chondroitin disaccharide ΔDi−triS,sodium salt」(カタログNo.C3207)、デキストラ ラボラトリーズ(DEXTRA LABORATORIES)社)を用いた。 (ii)コンドロイチン二糖硫酸エステル二ナトリウム(CDi−S・Na2):コンドロイチン二糖(下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体)のN−アセチルガラクトサミン残基の6位に硫酸基が結合した硫酸エステルの二ナトリウム塩(「Chondroitin disaccharide ΔDi−6S,sodium salt」(カタログNo.C3203)、デキストラ ラボラトリーズ(DEXTRA LABORATORIES)社)を用いた。 (iii)低分子量の高硫酸化コンドロイチン硫酸(L−CS):グルクロン酸およびN−アセチルガラクトサミンよりなる二糖単位がトリ硫酸エステル化されたコンドロイチン硫酸(重量平均分子量=3,700Da)は、特開2012−157271号公報および特開2010−077256号公報に記載された方法に従って調製した。重量平均分子量は、マルトペンタオースおよびプルランを標準試料として用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)−示差屈折計(RI)法により求めた。 (iv)高分子量の高硫酸化コンドロイチン硫酸(H−CS):グルクロン酸およびN−アセチルガラクトサミンよりなる二糖単位がトリ硫酸エステル化されたコンドロイチン硫酸(重量平均分子量=4,700Da)は、特開2012−157271号公報に記載された方法に従って調製した。重量平均分子量は、マルトペンタオースおよびプルランを標準試料として用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)−示差屈折計(RI)法により求めた。 [試験例1]コンドロイチン二糖トリ硫酸エステルがトロポエラスチン遺伝子発現に及ぼす効果の評価 (1)トロポエラスチン遺伝子発現に対するCDi−TriS・Na4、CDi−S・Na2およびH−CSの影響 (i)60mmディッシュにて、培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞(培地3mL;細胞数=5×104個/mL)に各試料の水溶液(10μg/mL)を30μL添加(各試料の最終濃度=0.1μg/mL)し、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした後培地を除去し、3mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。なお、試料を添加せずに同様に処理したものを対照とした。 (ii)PBSを除去し、RNA抽出試薬(RNA Iso Plus、タカラバイオ株式会社)を1mL添加し、細胞RNA抽出液を得た。 (iii)細胞RNA抽出液1mLとクロロホルム200μLを混和し、12,000×g、4℃の条件で15分間遠心分離した後、上清を回収し、クロロホルム200μLを加えて混和し、12,000×g、4℃の条件で15分間遠心分離した。 (iv)上清を回収し、イソプロパノール500μLと混和し、−30℃で一夜静置し、12,000×g、4℃の条件で15分間遠心分離した。 (v)上清を除去し、RNA沈殿物に冷70(v/v)%エタノール500μLを添加し、12,000×g、4℃の条件で15分間遠心分離した。 (vi)再度上清を除去し、RNA沈殿物に冷70(v/v)%エタノール500μLを添加し、12,000×g、4℃の条件で15分間遠心分離し、RNA沈殿物をジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水(DEPC treated water、株式会社ニッポンジーン)で溶解して、マイクロプレートリーダー(日本モレキュラーデバイス株式会社)により吸光度を測定し、RNAの濃度および純度を算出した(260nm/280nm)。 (vii)逆転写キット(PrimeScript RT reagent KIT(Perfect Real Time、タカラバイオ株式会社))および逆転写装置(Veriti 96 well Thermal cyclar(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社)を用いて、RNAを逆転写し、Real Time PCRキット(SYBR Premix EX taq(Tli RNase Plus、タカラバイオ株式会社))を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い(PCR装置:Step One Plus リアルタイムPCRシステム、(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社)、トロポエラスチン遺伝子の発現量を求めた。 結果は、対照におけるトロポエラスチン遺伝子発現量を1とした場合の相対値にて、表1および図1に示した。 表1および図1に示されるように、CDi−TriS・Na4を正常ヒト線維芽細胞に24時間作用させた場合には、対照の3倍近いトロポエラスチン遺伝子の発現が見られたが、H−CS、CDi−S・Na2によっては、トロポエラスチン遺伝子発現の有意な増加は見られなかった。 (2)トロポエラスチン遺伝子発現に対するCDi−TriS・Na4、L−CSおよびH−CSの影響 試料として、CDi−S・Na2の代わりにL−CSを用い、試料添加後のインキュベーション時間を8時間および24時間とした他は、上記(1)と同様に処理または操作し、各試料を8時間または24時間作用させた後のトロポエラスチンの発現量を求めた。 結果は、対照におけるトロポエラスチン遺伝子発現量を1とした場合の相対値にて、表2および図2に示した。 表2および図2に示されるように、各試料を8時間作用させた後には、いずれの試料によっても、トロポエラスチン遺伝子発現の増加が見られた。しかし、24時間作用させた後では、L−CS、H−CSによるトロポエラスチン遺伝子発現量は、それぞれ対照の1.42倍および対照の1.05倍にまで減少したのに対し、CDi−TriS・Na4を作用させた場合の遺伝子発現量は対照の2.75倍であり、CDi−TriS・Na4によるトロポエラスチン遺伝子発現の増加は、長時間(24時間作用後)まで持続することが認められた。 [試験例2]トロポエラスチンタンパク質発現に対するCDi−TriS・Na4、L−CSおよびH−CSの影響の評価 (1)培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞(培地3mL;細胞数=5×104個/mL)に各試料の水溶液(30μg/mL)30μLを添加(各試料の最終濃度=0.3μg/mL)し、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした後、培地を除去し、3mLのPBSで洗浄した。なお、試料を添加せずに同様に処理したものを対照とした。 (2)PBSを除去し、タンパク質抽出用溶液(2(w/v)% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10(v/v)%グリセロール、10mMオルトバナジン酸ナトリウム、62.5mMトリス−塩酸緩衝液、pH=6.8)400μLを添加し、タンパク質を抽出した。 (3)ローリー法によりタンパク質量を定量し、対照および各試料添加群のタンパク質抽出液について、タンパク質含有量が同量になるように調整して、以下の通り、ウェスタンブロット法により、トロポエラスチンタンパク質を検出、定量した。 (4)(3)でタンパク質含有量を調整した各群のタンパク質抽出液と、SDS−PAGEサンプルバッファー(62.5mMトリス−塩酸緩衝液(pH=6.8)、2(w/v)%SDS、10(v/v)%グリセロール、1(w/v)%ブロモフェノールブルー)を1:1で混和し、95℃で3分間加温した後、7(w/v)%ポリアクリルアミドゲル(トロポエラスチン検出用)または10(w/v)%ポリアクリルアミドゲル(β−アクチン検出用)を用いて、ミニプロティアンTetraセル(バイオ−ラッド(BIO−RAD)社)にてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った(泳動用バッファー:2.5mMトリス、190mMグリシン、0.1(w/v)%SDS水溶液)。 (5)SDS−PAGEにより分離したタンパク質をゲルからポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Amersham Hy bond −P、ポアサイズ=0.45μm、ジーイー ヘルスケア(GE Healthcare)社)へ転写(転写装置:criterion トランスブロットセル(バイオ−ラッド(BIO−RAD)社)、転写用バッファー:2.5mMトリス、190mMグリシン、15(v/v)%メタノール水溶液、転写条件:45分間、3A)し、ブロッキングバッファー(5(w/v)%スキムミルク、1(w/v)% Tween20、0.13M塩化ナトリウム、0.02Mトリス−塩酸緩衝液、pH=7.2)中にて90分間振とうした。 (6)Tween 20添加トリス緩衝生理食塩水(TBS−T;1(w/v)% Tween 20、0.13M塩化ナトリウム、0.02Mトリス−塩酸緩衝液、pH=7.2)で5分間振とうする操作を3回繰り返した後、1次抗体(トロポエラスチン検出用:Rabbit Anti−Elastin polyclonal Antibody、Unconjugated(バイオス(Bioss)社、β−アクチン検出用:β‐actin(13E5)Rabbit mAb(セルシグナリングテクノロジー(Cell signaling technology)社)反応溶液に一夜浸漬した。 (7)TBS−Tで20分間振とうする操作を3回繰り返した後、2次抗体(Amersham ECL Rabbit IgG、Horseradish Peroxidase linked whole antibody(ジーイー ヘルスケア(GE Healthcare)社)反応溶液中で1時間振とうした。 (8)TBS−Tで10分間振とうする操作を3回繰り返した後、化学発光試薬(Amersham ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(ジーイー ヘルスケア(GE Healthcare)社)を添加し、高感度化学発光標識画像入力装置(LAS−1000 Plus、富士フィルム株式会社)にて画像を解析した。 ウェスタンブロット法による解析の結果、60kDa付近にトロポエラスチンのバンドが検出された。トロポエラスチンタンパク質の発現量は、β−アクチンタンパク質の発現量に対する量として求め、対照における前記発現量を1とした場合の相対値により、表3および図3に示した。 表3および図3に示されるように、CDi−TriS・Na4を24時間作用させた後において、トロポエラスチンタンパク質の発現が対照の約1.5倍に増加したことが認められた。一方、L−CS、H−CSを24時間作用させた後には、トロポエラスチンタンパク質の発現の増加は認められなかった。 [試験例3]トロポエラスチンタンパク質発現に対するCDi−TriS・Na4の影響の評価 培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるトロポエラスチンタンパク質発現に対するCDi−TriS・Na4の影響について、CDi−TriS・Na4のインキュベーション時間を48時間とした他は、上記試験例2と同様にタンパク質を回収してウェスタンブロット法により解析し、CDi−TriS・Na4を48時間作用させた後におけるトロポエラスチンタンパク質発現に対する影響を評価した。 結果は、β−アクチンタンパク質の発現量に対するトロポエラスチンタンパク質の発現量について、対照における前記発現量を1とした場合の相対値により、表4および図4に示した。 表4および図4より、CDi−TriS・Na4を48時間作用させた後において、トロポエラスチンタンパク質の発現は対照の約4倍にまで増加することが認められた。 [試験例4]エラスチン産生に対するCDi−TriS・Na4の影響の評価 (1)培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞(培地3mL;細胞数=5×104個/mL)にCDi−TriS・Na4水溶液(30μg/mL)30μLを添加(CDi−TriS・Na4の最終濃度=0.3μg/mL)し、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした後、培地を除去し、3mLのPBSで洗浄した。なお、CDi−TriS・Na4を添加せずに同様に処理したものを対照とした。 (2)PBSを除去し、タンパク質抽出用溶液(2(w/v)% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10(v/v)%グリセロール、10mMオルトバナジン酸ナトリウム、6.27mMトリス−塩酸緩衝液、pH=6.8)400μLを添加し、タンパク質を抽出した。 (3)ローリー法によりタンパク質量を定量し、対照およびCDi−TriS・Na4添加群のタンパク質抽出液について、タンパク質含有量が同量になるように調整して、以下の通り、ウェスタンブロット法により、エラスチンタンパク質を検出、定量した。 (4)(3)でタンパク質含有量を調整した両群のタンパク質抽出液と、SDS−PAGEサンプルバッファー(2.5mM トリス−塩酸緩衝液(pH=6.8)、2(w/v)%SDS、10(v/v)%グリセロール、1(w/v)%ブロモフェノールブルー)を1:1で混和し、95℃で3分間加温した後、7(w/v)%ポリアクリルアミドゲル(エラスチン検出用)または10(w/v)%ポリアクリルアミドゲル(β−アクチン検出用)を用いて、ミニプロティアンTetraセル(バイオ−ラッド(BIO−RAD)社)にてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った(泳動用バッファー:2.5mM トリス、190mMグリシン、0.1(w/v)% SDS水溶液)。 (5)SDS−PAGEにより分離したタンパク質をゲルからポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Amersham Hy bond −P、ポアサイズ=0.45μm、ジーイー ヘルスケア(GE Healthcare)社)へ転写(転写装置:criterion トランスブロットセル(バイオ−ラッド(BIO−RAD)社)、転写用バッファー:2.5mM トリス、190mMグリシン、15(v/v)%メタノール水溶液、転写条件:40分間、100V、3A)し、ブロッキングバッファー(5(w/v)%スキムミルク、1(w/v)%Tween20、0.13M塩化ナトリウム、0.02Mトリス−塩酸緩衝液、pH=7.2)中にて60分間振とうした。 (6)Tween 20添加トリス緩衝生理食塩水(TBS−T;1(w/v)% Tween 20、0.13M塩化ナトリウム、0.02Mトリス−塩酸緩衝液、pH=7.2)で15分間振とうする操作を3回繰り返した後、1次抗体(エラスチン検出用:Rabbit Anti−Elastin polyclonal Antibody、Unconjugated(バイオス(Bioss)社、β−アクチン検出用:β−actin(13E5)Rabbit mAb(セルシグナリングテクノロジー(Cell signaling technology)社)反応溶液に一夜浸漬した。 (7)TBS−Tで15分間振とうする操作を3回繰り返した後、2次抗体(Amersham ECL Rabbit IgG、Horseradish Peroxidase linked whole antibody(ジーイー ヘルスケア(GE Healthcare)社)反応溶液中で1時間振とうした。 (8)TBS−Tで10分間振とうする操作を3回繰り返した後、化学発光試薬(ECL Prime Western Blotting Detection (BIO−RAD社)を添加し、高感度化学発光標識画像入力装置(LAS−1000 Plus、富士フィルム株式会社)にて画像を解析した。 ウェスタンブロット法による解析の結果、75kDa付近にエラスチンのバンドを検出した。エラスチンの産生量は、β−アクチンタンパク質の発現量に対する量として求め、対照における前記産生量を1とした場合の相対値により、表5および図5に示した。 表5および図5に示されるように、CDi−TriS・Na4を24時間作用させた後において、エラスチンの産生が対照の約1.4倍に増加したことが認められた。 [実施例1]水中油型乳剤性ローション剤 表6に示す処方に従い、水中油型乳剤性ローション剤を調製する。すなわち、表6中のスクワラン以下、モノステアリン酸グリセリンまでの成分を容器に秤量し、約75℃に加温し、撹拌溶解させて油相とする。別容器に、表6中のカルボキシビニルポリマー以下、精製水までの成分を秤量し、約75℃に加温し、撹拌溶解させて水相とする。前記油相に前記水相を加え、ホモミキサーで均一に乳化した後、室温まで冷却して水中油型乳剤性ローション剤を得る。 以上詳述したように、本発明により、トロポエラスチン遺伝子の発現を増加させて、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンタンパク質の発現を増加させることができ、特に皮膚真皮の細胞外マトリックスにおいて、エラスチン線維の生成を促進させ得るトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤を提供することができる。 本発明のトロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤は、エラスチンの減少、変性による皮膚の老化の防止または改善に有用で、皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品として提供することができる。 さらに、本発明により、皮膚シートの生成等、再生医療分野において有用な皮膚線維芽細胞等のトロポエラスチンの発現促進方法、およびエラスチン産生の促進方法を提供することができる。 本出願は、わが国で出願された特願2014−038475を基礎とするものであり、その内容は本明細書に全て包含されるものである。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を含有する、トロポエラスチン発現促進剤。 コンドロイチン二糖が、下記化学式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記化学式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、請求項1に記載のトロポエラスチン発現促進剤。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、請求項1または2に記載のトロポエラスチン発現促進剤。 皮膚線維芽細胞のトロポエラスチンの発現を促進する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトロポエラスチン発現促進剤。 皮膚の老化の防止または改善用である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトロポエラスチン発現促進剤。 皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトロポエラスチン発現促進剤。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を含有する、エラスチン産生促進剤。 コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、請求項7に記載のエラスチン産生促進剤。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、請求項7または8に記載のエラスチン産生促進剤。 皮膚真皮の細胞外マトリックスにおけるエラスチンの産生を促進する、請求項7〜9のいずれか1項に記載のエラスチン産生促進剤。 皮膚の老化の防止または改善用である、請求項7〜10のいずれか1項に記載のエラスチン産生促進剤。 皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品または皮膚用化粧品である、請求項7〜11のいずれか1項に記載のエラスチン産生促進剤。 細胞にコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させることによる、トロポエラスチンの発現の促進方法。 コンドロイチン二糖が、下記化学式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記化学式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、請求項13に記載の促進方法。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、請求項13または14に記載の促進方法。 細胞が皮膚線維芽細胞である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の促進方法。 細胞にコンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を作用させ、トロポエラスチンの発現を促進することによる、エラスチン産生の促進方法。 コンドロイチン二糖が、下記式(1)で示されるN−アセチルコンドロシンまたは下記式(2)で示されるN−アセチルコンドロシンの化学修飾体である、請求項17に記載の促進方法。 コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルが、コンドロイチン二糖のグルクロン酸残基の2位の水酸基、ならびにN−アセチルガラクトサミン残基の4位および6位の水酸基に硫酸基がエステル結合したものである、請求項17または18に記載の促進方法。 細胞が皮膚線維芽細胞である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の促進方法。 請求項17〜20のいずれか1項に記載の促進方法によって得られたエラスチン。 【課題】エラスチンの前駆体であるトロポエラスチンの発現を促進して、細胞外マトリックスにおけるエラスチンの産生を促進し得る、トロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤を提供する。【解決手段】コンドロイチン二糖のトリ硫酸エステルまたはその塩を有効成分として含有する、トロポエラスチン発現促進剤およびエラスチン産生促進剤。【選択図】図5


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