タイトル: | 公開特許公報(A)_慢性疼痛治療剤 |
出願番号: | 2015034419 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/496,A61P 25/04 |
丹羽 真一 紺野 愼一 笠原 諭 増子 博文 大谷 晃司 JP 2015129160 公開特許公報(A) 20150716 2015034419 20150224 慢性疼痛治療剤 大塚製薬株式会社 000206956 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 丹羽 真一 紺野 愼一 笠原 諭 増子 博文 大谷 晃司 JP 2009211021 20090911 A61K 31/496 20060101AFI20150619BHJP A61P 25/04 20060101ALI20150619BHJP JPA61K31/496A61P25/04 1 2011530759 20100226 OL 7 特許法第30条第1項適用申請有り 発行所名 第69回日本心身医学会東北地方会 刊行物名 第69回日本心身医学会東北地方会プログラム・抄録集 発行年月日 平成21年8月27日 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC50 4C086GA07 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA08 本発明は、アリピプラゾールを有効成分として含有する慢性疼痛治療剤に関する。 慢性疼痛とは、日常生活に支障を来すような重度の不快な疼痛が6ヶ月以上続いている状態であり、国際疾病分類代10版(ICD−10)により持続性身体表現性疼痛障害という病名が付与されている。慢性疼痛の発症や憎悪に心理的要因が重要な働きをしていることが示唆されているが原因は未解明である。 整形外科に通う慢性疼痛患者の中には、神経学的所見に一貫性がなく難治性で、その背景に精神医学的問題を有すると思われる患者が少なくない。治療者が、精神医学的問題について適切な評価をせずに侵襲的な治療ばかりを繰り返すことにより、更なる痛みの憎悪を招くという悲惨な経過をたどる患者も存在する。 現在、慢性疼痛を軽減するため種々の薬剤の使用が試みられているが、それらは鎮痛効果の点で必ずしも満足できるものではない。そのため、慢性疼痛の有効な治療薬が望まれている。 ところで、アリピプラゾールは、統合失調症の治療に有用な非定型抗精神病薬である(例えば特許文献1及び2)。米国特許第4734416号明細書米国特許第5006528号明細書 本発明は、新規な慢性疼痛治療剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アリピプラゾールを慢性疼痛患者に投与したところ顕著な鎮痛効果が確認され、アリピプラゾールが慢性疼痛の治療薬として有効であることを見出した。かかる知見に基づきさらに検討を行った結果、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明はアリピプラゾールを有効成分として含有する慢性疼痛治療剤を提供する。 項1 アリピプラゾールを有効成分として含有する慢性疼痛治療剤。 項2 アリピプラゾール、その酸付加塩又はその溶媒和物を有効成分として含有する項1に記載の慢性疼痛治療剤。 項3 さらに薬学的に許容し得る担体を含有する項1又は2に記載の慢性疼痛治療剤。 項4 慢性疼痛治療剤を製造するためのアリピプラゾールの使用。 項5 慢性疼痛を治療するために用いられるアリピプラゾール。 項6 アリピプラゾールの有効量を患者に投与することを含む慢性疼痛を治療する方法。 項7 アリピプラゾールの患者への投与量が、1日当り体重1kg当り0.05〜10mg程度である項6に記載の方法。 本発明の慢性疼痛治療剤はアリピプラゾールを有効成分として含有し、顕著な鎮痛効果を発揮する。慢性疼痛患者にアリピプラゾール等の薬剤を継続的に投与した時の治療経過を示すグラフである。 本発明は、アリピプラゾールを有効成分として含有する慢性疼痛治療剤である。 アリピプラゾールは、化学名として7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリル又は7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノンと命名される化合物である。 アリピプラゾールは遊離形態のものだけでなく、薬学的に許容される酸と酸付加塩を形成していてもよい。かかる酸としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸等の有機酸を例示できる。これらの酸付加塩もまた遊離形態のアリピプラゾールと同様に、本発明において有効成分化合物として用いることができる。 また、アリピプラゾールは、溶媒和物(水和物、アルコール和物等)であってもよい。 上記のアリピプラゾールの遊離形態、酸付加塩、又は溶媒和物には、それぞれ結晶及び/又は非晶質の形態が含まれる。また、結晶の形態の場合には種々の結晶多形が含まれる。 アリピプラゾールは、慢性疼痛疾患(全身性慢性疼痛疾患である線維筋痛症等を含む)等の患者に対し顕著な鎮痛効果を発揮して症状を改善することができる。そのため、慢性疼痛治療剤として極めて有用である。具体的には、例えば、実施例1及び図1で示されるように、慢性疼痛患者に、鎮痛剤(モルヒネ)及び抗うつ剤(フルボキサミン)を投与した場合には症状に全く改善が見られなかったが、アリピプラゾールを投与した場合には劇的に症状が改善されている。 本発明の慢性疼痛治療剤には、上記のアリピプラゾールの形態に、さらに薬学的に許容し得る担体を含有していてもよい。薬学的に許容し得る担体としては、医薬製剤に通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤、賦形剤等が挙げられる。本発明の慢性疼痛治療剤の製剤形態は、一般的な医薬製剤の形態でよく、例えば錠剤、フラッシュメルト錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、トローチ、鼻腔内スプレー剤、経皮パッチ等が挙げられる。 本発明の慢性疼痛治療剤の投与方法は特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件(疾患の程度等)に応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には、経口投与される。また注射剤の場合には単独で又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、或いは単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。 本発明の慢性疼痛治療剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常アリピプラゾールの量が、1日当り体重1kg当り0.05〜10mg程度とすることができる。また投与単位形態の製剤は、単位投与量当たりアリピプラゾールを約1〜100mgの範囲で、より好ましくは1〜30mgの範囲で含有させることができる。 本出願で引用した文献は、参考として挿入される。 次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 実施例 10年以上続く慢性の後頭頚部痛を訴える慢性疼痛疾患と診断された患者に対し、約11ヶ月間、モルヒネ(morphine)、フルボキサミン(fluvoxamine)、アリピプラゾール(aripiprazole)等の薬剤を投与して、患者の後頭頚部(首)の痛みの強さを経時的に評価した。その治療経過を図1に示す。 痛みの強さの評価は痛みを0から10までの11段階として、口頭で伝える数値的評価スケール(numerical rating scale, NRS)を採用した。これは、患者が想像できる最大の痛みを10、痛みなしを0として、痛みの程度を段階的に数値化(定量化)する評価方法である。一患者の治療前後の痛みの程度を良く反映する評価方法である。 図1より、まず慢性疼痛患者(体重55kg)に塩酸モルヒネ錠(大日本住友製薬(株)製)を70mg/日で経口投与したが、首のNRS値は8〜10と高く痛みは改善されなかった。1ヶ月目の第4週からは、モルヒネに加えてフルボキサミン(デプロメール錠;明治製菓(株)製)を50mg/日で経口投与を開始し徐々にその投与量を増やしていったが、NRS値は依然として8〜10と高く痛みは全く改善されなかった。 そこで、4ヶ月目の第4週から、アリピプラゾール(エビリファイ錠;大塚製薬(株)製)を3mg/日で経口投与したところ、5ヶ月目の第1週にはNRS値が1と飛躍的に低下し、6ヶ月の第2週からはNRS値が0となり全く首に痛みを感じなくなった。さらに、8ヶ月目からモルヒネの投与を停止しても同様にNRS値は0であった。この結果より、慢性疼痛患者に対し、モルヒネ及びフルボキサミンは全く疼痛を軽減できなかったが、アリピプラゾールは劇的に疼痛を低減できることが確認された。 その後、9ヶ月目の第4週以降にアリピプラゾール(エビリファイ錠;大塚製薬(株)製)の投与量を9mg/日、さらに10ヶ月目の第4週以降に12mg/日と増量してもNRS値は0であり変化は見られなかった。 以上より、アリピプラゾールは慢性疼痛の治療薬として極めて有効であることが分かった。アリピプラゾールを有効成分として含有する持続性身体表現性疼痛障害治療剤。 【課題】新規な持続性身体表現性疼痛障害治療剤の提供。【解決手段】統合失調症の治療に有用な非定型抗精神病薬のアリピプラゾール(7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリル又は7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノン)及びその酸付加塩又はその溶媒和物を有効成分として含有する慢性疼痛治療剤。アリピプラゾールの患者への投与量が、1日当り体重1kg当り0.05〜10mg程度である慢性疼痛治療剤の投与方法。【選択図】なし