タイトル: | 公表特許公報(A)_ポロキサマーを用いるレトロウイルス形質導入 |
出願番号: | 2014559230 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 15/09 |
ナターザ・アナスタゾフ イネス・ヘーフィッヒ クリスティアン・ティリオン JP 2015511483 公表特許公報(A) 20150420 2014559230 20130228 ポロキサマーを用いるレトロウイルス形質導入 へルムホルツ・ツェントルム・ミュンヘン−ドイチェス・フォルシュングスツェントルム・ヒューア・ゲズントハイト・ウント・ウムヴェルト(ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング) 510251486 Helmholtz Zentrum Muenchen − Deutsches Forschungszentrum Fuer Gesundheit und Umwelt (GmbH) シリオン・バイオテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング 513165908 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 稲井 史生 100157956 ナターザ・アナスタゾフ イネス・ヘーフィッヒ クリスティアン・ティリオン EP 12157461.0 20120229 C12N 15/09 20060101AFI20150324BHJP JPC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2013054104 20130228 WO2013127964 20130906 33 20141029 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA11 4B024DA02 4B024EA02 4B024GA11 本発明は、レトロウイルスベクターおよび分子量12.8kDaから約15kDaのポロキサマーを標的細胞に接触する段階を含む、標的細胞を形質導入するための方法に関する。さらに本発明は、標的細胞をレトロウイルスベクターで形質導入するための、本明細書に規定されるポロキサマーの、任意で本明細書で規定されるポリカチオンとの組み合わせでの、使用、およびレトロウイルスベクター、本明細書で規定されるポロキサマー、および任意に使用説明書、を含むキットに関する。 本明細書では、特許公報および製造者の説明書を含む多くの文献が引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連しないと考えらえる一方で、全体が出典明示により本明細書に組み込まれる。より具体的に、全ての参照文献は同程度に、明確におよび個々に出典明示により本明細書に組み込まれるように、組み込まれる。 大部分の細胞、特に初代細胞、の遺伝子組み換えのために、ウイルスベクターによって仲介される形質導入は一般に選択される方法である。特に、例えばレンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターが使用される。レンチウイルス感染は広く使用される優れた遺伝子導入であるが、インビトロでの多くの細胞型、およびインビボでの現在の適用が、高い細胞毒性に直面している。疱性口内炎ウイルス(VSV−G)の糖蛋白質の偽型レンチウイルス(LV)ベクターは、増殖および非増殖細胞(1−3)の両方の染色体に安定的に組み込まれる。第三世代の分割ゲノム(split−genome)レンチウイルスパッケージング設計および導入ベクターの3’長い末端反復(LTR)欠失などの改良された安全特性は、多くの研究者に対してLVを最も支持された系とした(4)。事実、今日の生物学的研究のすべての部門が高信頼の遺伝子導入媒体としてLVを集中して使用している。他のウイルスベクター系と異なり、レンチウイルス形質導入細胞は、ストレス信号経路の発現またはいかなる他の表現型の変化をほとんど示さず、したがって、多くの遺伝子療法および免疫治療適用を保証する(5、6)。 現在、研究及び臨床グループで使用される標的細胞への効率的なLV遺伝子送達のための最適な遺伝子導入条件に関して多くの変化がある(7)。正常なリンパ球および原発腫瘍、ならびにリンパ球細胞系は効率的な遺伝子導入が難しいことが知られている(8、9)。初代細胞への高い遺伝子導入率および患者の細胞への大規模な遺伝子導入のために高い力価のウイルス粒子を生産する能力は、臨床試験のための前提条件である。これらのウイルスの大量生産が非常に複雑で高価なので(10)、レンチウイルス形質導入率のあらゆる改良が、ウイルス産生の必要性における減少をもたらし、臨床試験のコストを削減することをさらに助けるであろう。 異なる戦略により、遺伝子導入のより高い効率を達成できる:超遠心分離(11)または限外ろ過(8)によるウイルス上清の濃縮は、遺伝子導入の効率を上げる1つの可能な方法である。遺伝子導入率を高めるための他の頻繁に使用される戦略は、ポリカチオンまたはカチオン性リポソームなどの異なる剤の補足である。しかしながら、これらのアジュバント処理の大部分は、細胞に毒性であり、標的細胞の原発組織の感受性でそれらの使用が制限される(10)。他の候補の中では、ポリブレン(polybrene)(直線的なポリカチオン重合体)が、広範囲の標的細胞で遺伝子導入率を改良し、この分野の主なアジュバントとなった(12、13)。残念ながら、ポリブレンは短い適用時間および10μg/ml未満(目標細胞種類に依存する)の低い濃度のみで、膜透過の細胞毒性の可能性を避けることができ(14)、造血性細胞などの感受性細胞における使用を制限する。 本発明の根本的な技術的課題は、レトロウイルスベクターのベクトルで細胞に形質導入するための代替、および/または、改良された手段および方法を同定することであった。 この技術的課題の解決は、請求の範囲で特徴付けられた実施形態を提供することによって、達成される。 結果として、本発明は第一の実施形態において標的細胞を形質導入するための方法であって、標的細胞をレトロウイルスベクターおよび12.8kDaから約15kDaの分子量を有するポロキサマーと接触させる段階を含む方法に関する。 レトロウイルスベクターを用いる細胞改変の文脈における「形質導入」なる用語は、当分野で周知であり、本明細書において他の意味を有さない。簡潔に、この用語は細胞に遺伝物質を導入する工程、および任意にそれに続くレトロウイルスベクターを介する該細胞のゲノムへの組み込みを示す。該遺伝物質は、標的細胞のゲノムへの組み込みを意図する該ベクターに含まれる1つ以上の標的RNA配列(以下、標的配列ともいう)と組み合わせられたウイルスRNAを含むかまたはからなる。「レトロウイルスベクター」は当分野で周知であり、例えばRetroviruses, Coffin JM, Hughes SH, Varmus HE, Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbour Laboratory Press; 1997; ISBN−10:0−87969−571−4に記載される。簡潔に、レトロウイルスベクターは、それらが含む遺伝物質を安定した形態で宿主ゲノムに組み込む能力を有する。レトロウイルスに一般的なように、それらは逆転写酵素、および任意に、RNAの相補的DNA(cDNA)へのRNA逆転写、および任意に標的細胞のゲノムへの組み込みを可能にするインテグラーゼを含む。細胞侵入に続いて、逆転写酵素は環状化された標的細胞のゲノムのcDNAおよびウイルスcDNAを合成し、その後標的細胞のゲノムに組み込まれる。レトロウイルスベクターは複製可能であるが、安全上の理由でほとんどのレトロウイルスベクターは、複製に欠失があるように設計される。対応するウイルスは、まだ感染して遺伝物質を標的細胞に送達できるが、新しいビリオンを生産するために欠失ウイルス蛋白を提供する、例えば補助蛋白質なしで複製サイクルに移行することができない。このことは、ビリオン複製およびパッケージングに必要な遺伝子を削除または置換することによって達成できる。レトロウイルスベクター複製を欠失させるための1つの方法は、標的細胞のゲノムへの導入のための標的配列を含む発現カセットに置換され得る、gag、polおよびenv遺伝子を除去することである。必須の長い末端反復(LTR)およびプシー(Ψ)要素は、ベクターの産生の間、ウイルス性カプシドへの導入遺伝子の発現とパッケージングを許容するために保有される。おそらく、本発明の方法(および使用)で導入され得る、本明細書に定義されるベクターに含まれる標的配列は、いかなる配列、特に標的細胞のゲノムへの組み込みを許容するものであり得る。例えば、タンパク質コーディング配列、RNA干渉、miRNA発現のための調節配列または腫瘍崩壊ウイルスを遺伝子導入後に発現でき、ここでタンパク質は、例えばマーカーまたは治療有用なタンパク質であり得る。レトロウイルス導入を介した安定な組み込み後に治療タンパク質を発現する概念は、例えば、「遺伝子療法」という当分野で周知の用語を含む。また、標的配列は形質導入細胞または形質導入細胞を受け入れた生物中に効果を有するタンパク質の下方制御または非コーディングRNA転写(RNA干渉による)形質導入後に結果として生じ得る。マイクロRNA(miRNA)は標的メッセンジャーRNAの安定性または翻訳効率を調節する機能的な小分子である。それらの動作はタンパク質合成の抑制および標的mRNA分解の誘導を含む(Bartel, DP: MicroRNAs: target recognition and regulatory functions. Cell. 2009 Jan; 136(2): 215−233)。この発明の更なる応用は、治療学の研究目的および生産のための、安定遺伝子発現細胞株の生産のためのレンチウイルスベクターの使用を含む。 本発明の方法の文脈で使用される「接触」なる用語は、導入事象を生じることができるように、レトロウイルスベクターおよびポロキサマーに標的細胞を接触させることをいう。接触のための導入事象が生じる条件は、当分野で周知であり、ある程度標的細胞および選択されたウイルスベクターに依存し得る。例えば、いくつかの標的細胞は、他の細胞よりトランスフェクトが困難であり、ウイルスベクターでの導入が達成できる前に、特定の培地への移行が必要となり得る。対応する方法と条件は、例えば、Jacome et al. (Lentiviral−mediated Genetic Correction of Hematopoietic and Mesenchymal Progenitor Cells From Fanconi Anemia Patients. Mol Ther. 2009 June; 17(6): 1083−1092), Chu et al. (Efficient and Stable Gene Expression into Human Osteoclasts Using an HIV−1−Based Lentiviral Vector. DNA Cell Biol. 2008 June; 27(6): 315−320), または Poczobutt et al. (Benign mammary epithelial cells enhance the transformed phenotype of human breast cancer cells. BMC Cancer. 2010; 10: 373)に記載される。例示的な条件は実施例の部に記載される。レトロウイルスベクターおよびポロキサマーを同時に、例えば混合物として、両方が同時に標的細胞に接触して導入を許容される限り、標的細胞にまたは連続モードで添加できる。好ましくは、標的細胞、レトロウイルスベクターおよびポロキサマーは少なくとも5時間、例えば少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、および最も好ましくは少なくとも12時間接触される。より長い接触時間、例えば少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、または少なくとも24時間もまた想定される。好ましくは、レトロウイルスベクターおよびポロキサマーの同時添加である。 本発明の「標的細胞」は、導入のためにウイルスベクターで標的とするいかなる細胞であってもよい。本発明に関連して使用される「細胞」なる用語は、単一の、および/または単離された細胞、または組織、生物または細胞培養物などの多重細胞体の一部としての細胞をいうことができる。言い換えれば、方法は、インビボ、エクスビボまたはインビトロで実施できる。細胞は真核細胞である。本明細書で使用される真核細胞は、脊椎動物などの動物からの細胞を含む、多重細胞真核生物のいかなる細胞のことをいう。好ましくは、細胞は哺乳類細胞である。本明細書に使用される「哺乳類細胞」は、当業者に周知であり、哺乳類のクラスに分類される動物に属するか、または由来するいかなる細胞のことをいう。本発明の方法により、哺乳類細胞のゲノムを、それを形質導入することにより改変することで達成される具体的な目標により、原獣類または獣亜綱などの異なる哺乳類のサブクラスの細胞が使用され得る。例えば、獣亜綱のサブクラス内で、好ましくは真獣下綱、より好ましくは霊長類、偶蹄目、奇蹄目、齧歯目およびウサギ目の動物の細胞が本発明の方法で使用される。その上、種の中では、本発明の方法で使用されるべき細胞が、本発明の方法による標的細胞への形質導入を経るゲノムの改変により達成される目標に等しく依存して、組織型および/または分化能を基に選択され得る。原則として本発明の方法で形質導入できる細胞の3つの基本的なカテゴリは、哺乳類の体:生殖細胞、体細胞、および幹細胞を形作る。生殖細胞は、配偶子をもたらす細胞であり、その結果、世代で連続する。幹細胞は、さらなる幹細胞を作り出す自己再生、ならびに分割およびそれぞれ異なる分化した細胞に分化できる。哺乳動物には、胚幹細胞および成体幹細胞という2つの主なタイプの幹細胞がある。体細胞は配偶子、配偶子母細胞またな未分化幹細胞でないすべての細胞を含む。哺乳動物細胞はまた、それらの分化能により分類できる。胚幹細胞などの分化多能性細胞が胎盤などの胚外組織に寄与できないが、3つの胚葉、内胚葉、中胚葉および外胚葉のいずれかに分化する可能性を有するのに対し、分化全能性の(全能としても知られる)細胞は、接合子(受精卵母細胞)およびそれに続く分割球を含む、成体の全ての細胞型に分化できる細胞である。多分化能先祖細胞には、複数の、しかし、限られた数の細胞系統から細胞をもたらす可能性がある。さらに、ほんの数個の細胞種類に展開できる少能性細胞および1つの細胞種類だけに分化できる分化単能性細胞(時々、前駆細胞とも呼ばれる)がある。例えば、造血幹細胞またはニューロン幹細胞などに由来する本発明の方法で使用できる細胞には、4つの基本的な組織、筋肉組織、神経組織、結合組織および上皮組織であり得る。ヒト細胞が本発明の方法における使用のために含まれる範囲において、そのようなヒト細胞がヒトの胚から、特にヒト胚の破壊を伴う方法で得られないことが好ましい。他方では、商業的に利用可能なヒト胚性幹細胞株から選び出されるように、ヒト胚性幹細胞は当業者の自由である。従って、本発明はヒト胚性幹細胞でヒト胚を使用するか、または破壊する必要性なしに扱われ得る。あるいは、またはヒト胚性幹細胞の代わりに、胚幹細胞に類似している多能性細胞、例えば人工多能性幹(iPS)細胞が使用され得る。それらの生成について、当分野で言及される(Hargus G et al., 2010, Proc Natl Acad Sci U S A, 107:15921−15926; Jaenisch R. and Young R., 2008, Cell 132:567−582; Saha K, and Jaenisch R., 2009, Cell Stem Cell 5:584−595)。 「ポロキサマー」なる用語は、当分野で周知であり、ポリオキシエチレンの2つの親水性鎖によって挟まれたポリオキシプロピレンの中央の疎水性鎖で構成された非イオン性トリブロック共重合体をいう。以下の式でブロック共重合体を表すことができる:HO(C2H4O)x(C3H6O)z(C2H4O)yH、ここで、zは(C3H6O)によって表された疎水性基が少なくとも2250Daの分子量を有するような整数であり、xまたはyは、8から180またはそれ以上の整数である。ポロキサマーはまた、「プルロニック」または「シンペロニック」(BASF)の商号でも知られる。重合体ブロックの長さはカスタム設計でき、その結果、多くの異なるポロキサマーが存在する。本発明の方法で使用されるべきポロキサマーは少なくとも12.8kDaから約15kDaの分子量を有するポロキサマーである。上の一般式から明らかであるように、ポロキサマーを形成する重合体ブロックの長さを変えることで、対応する分子量を有するポロキサマーが構成できる。例えば、2つのポロキサマーがほぼ同じ分子量を有するが、構造的に異なるようにすることが可能であり、それは、一のポロキサマーはより多くの疎水性ブロック重合体の反復およびより少ない親水性ブロック重合体の反復を有し、対して他方のポロキサマーはより多くの親水性ブロック重合体の反復およびより少ない疎水性ブロック重合体の反復を有し得るためである。例えば、zは42から52の範囲、例えば少なくとも43、44、45、46、47、48、49、50または少なくとも52(各値に対して);およびx+yは235から266の範囲、例えば少なくとも230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、または少なくとも350(各値に対して)とすることができる。好ましくは、zは44から50の範囲であり、x+yは235から266の範囲である。ブロック共重合体の合成が正確にできないように、上記の特定の値は合成の際に確実に達成可能でない場合があり、平均値はある程度異なるであろう(本明細書に記載されるように)。好ましくは、ポロキサマーは12.8から約14.9kDa、約13.2から約14.9kDa、約13.4から約14.9kDa、またはより好ましくは約14.0から約14.9kDa、約14.3から約14.8kDa、約14.5から約14.7kDa、および最も好ましくは約14.6kDaの分子量を有する。当業者に理解されるように、方法は多数のポロキサマーを使用して実施されるであろう。したがって、本明細書で使用される「ポロキサマー」なる用語は、特に明記のない限り、「複数のポロキサマー」(全体として数個のポロキサマーを表し、ポロキサマーの混合物とも呼ばれる)なる用語と互換性を持って使用される。本明細書に概説されるように、ポロキサマーの合成は異なる分子量のポロキサマーの混合物において不正確な結果となる。それゆえ、本明細書で使用される(a)ポロキサマーの分子量に関連する「平均」は、全く同じ組成、すなわち全く同じ分子量を有する複数のポロキサマーを生産することの技術的な不可能の結果である。それゆえ、当分野の現状の方法で製造された複数のポロキサマーは、それらの分子量に関して可変性を示す各々のポロキサマーの混合物であるが、全体として本明細書で指定される分子量平均である混合物として存在する。当業者は本発明の方法で使用できるポロキサマーを入手できる。例えば、BASFおよびSigma Aldrichは、本明細書で規定されるポロキサマーを提供する。分子量を測定するための方法は、当分野で周知であり、化学の標準的な教科書で説明される。実験的に、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)をポロキサマーの分子量を測定するために使用できる。 発明者は、本明細書の上記で規定されるポロキサマーが、驚くべきことに、付着および懸濁標的細胞において、それらの生存性力に本質的に影響せずに、レトロウイルスベクターの導入効率をかなり高めることを見出した。簡潔に、レンチウイルスベクターを使用して、「シンペロニックF108」(HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここでx+y=265.45およびz=50.34(19);平均分子量:14.6kDa)として設計されたポロキサマーが、当分野で現状のエンハンサーであるポリブレン(1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカメチルポリメソブロミド)より低い細胞毒性を、ポリブレンのものよりも100倍高い濃度でさえ示し、導入効率を増強した(HEK293T細胞)(図1、例2)。最も驚くべきことに、使用したポロキサマーの導入増強効果は特定の細胞型に限定されない。多くの確立した腫瘍細胞株は、本発明が見出されるまで、感染が困難であった。シンペロニックF108(平均分子量14.6kDa、265の親水性エチレンオキシド(EO)ユニットおよび50の疎水性プロピレンオキシド(PO)ユニットから構成される;下記でさらに説明される)の使用は、感染が困難なリンパ腫細胞株の感染率を大いに増加させた。これらの結果は、本発明で規定されるポロキサマーが、非常に費用対効果に優れた導入エンハンサーとしての使用に好適であることを示す。さらに、本明細書に下記に示されるように、上記の方法へのさらなる改変は導入効率をさらに増加させる。 本発明の方法の好ましい実施形態として、標的細胞はリンパ球、腫瘍細胞、リンパ球系細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、初代細胞、幹細胞からなる群から選択される細胞である。 「リンパ球系細胞」なる用語は、リンパ球の生成に関わる細胞およびリンパ球そのもののことをいう。「リンパ球」なる用語は、当分野で周知の小さいリンパ球(BおよびTリンパ球、プラズマ細胞)およびナチュラルキラー細胞のことをいう。リンパ球系細胞はさらに、例えばリンパ系樹状細胞、ならびに前リンパ球、リンパ芽球、リンパ球系共通前駆細胞などのリンパ球前駆細胞を含む。 本発明の、および当分野で周知の「腫瘍細胞」は、良性の、前癌状態のまたは、悪性の腫瘍の形成にかかわる新生細胞である。悪性の腫瘍細胞は、一般にがん細胞と呼ばれ、隣接している組織に転移(metastasize)または転移(spread)する能力を有し得る。好ましい腫瘍細胞は、例えば膵臓腫瘍細胞(例えば、AsPC−1およびPANC−1細胞など)リンパ腫細胞株(例えば、KARPAS−299、SUDHL−1、SUP−M2およびSR−786細胞など)、乳がん細胞(例えば、細胞MCF7、MDA−MB−361、およびT47D細胞など)である。 「神経細胞」は、当分野で周知であり、電気的および化学的信号により情報を伝える、電気的興奮細胞である細胞をいう。様々な特殊化した神経細胞、例えば感覚ニューロンおよび運動ニューロン、が存在する。例えば、かご細胞、ベッツ細胞、中型有棘ニューロン、プルキンエ細胞、錐状体細胞、レンショー細胞、顆粒細胞または前角細胞を本発明の標的細胞として使用できる。「ニューロン腫瘍細胞」は、ニューロン起源、例えばグリオーマ、髄芽細胞腫、星状細胞腫、および他のニューロン系由来のがん、の腫瘍細胞である。グリオーマ細胞株(例えば、U87およびLN18)は、本発明の方法で使用できる。 「幹細胞」なる用語は、当分野で周知であり、本明細書に上記で詳述された。本発明の方法で使用される好ましい幹細胞は、例えば、胚幹細胞(人工多能性幹細胞)、造血幹細胞、がん幹細胞である。 「上皮細胞」なる用語は当分野で周知である。上皮細胞は、主体の至る所に腔および表面構造が並び、多くの腺を形成する。上皮組織は単層上皮(一細胞の厚さ)および重層上皮(数個の細胞の層)に分類できる。上皮細胞は、またそれらの形態学により、扁平状、立方体状、円柱状および多列状の上皮細胞に分類される。例えば、ヒトの胃と小腸は上皮細胞が並ぶ。さらに、上皮細胞株は乳がん細胞(例えば、MCF7、MDA−MB−361およびT47D細胞)または細胞株HEKT293Tの細胞も含む。 「内皮細胞」なる用語は、当分野で周知であり、血管の内部の表面に並ぶ細胞をいい、本明細書において他の意味を有しない。様々な異なる種類の内皮細胞、例えば、Ea.hy96、HUVECおよびHCAEC細胞、が存在する。 本明細書で使用される「初代細胞」なる用語は当分野で周知であり、組織から単離され、インビトロ増殖のために確立された細胞をいう。対応する細胞は、ほとんどの処理を受けておらず、もしあっても集団倍加程度であり、それゆえ連続細胞株に由来するものと比較して組織の主な機能成分をより代表し、従ってインビボ状態でより代表的なモデルを代表する。様々な組織からサンプルを入手するための方法および初代細胞株を確立するための方法は当分野で周知である(例えば、Jones and Wise, Methods Mol Biol. 1997を参照)。本発明の方法で使用される初代細胞は、例えば、血液、リンパ腫および上皮腫瘍、に由来する。 ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターでの形質導入に関して、初代細胞、リンパ球、リンパ球系細胞および神経細胞はトランスフェクトが難しいと考えられている。 より好ましい実施形態において、リンパ球は初代リンパ球であり、および/または腫瘍細胞は造血腫瘍細胞、ニューロン腫瘍細胞または上皮腫瘍細胞である。 好ましくは、上皮腫瘍細胞は乳腺細胞腫瘍起源である。当分野において、後者の細胞ならびに上記の初代細胞、リンパ球およびリンパ球系細胞 がレトロウイルスベクター、とりわけアデノウイルスベクターを含む他のベクターを使用する形質導入が特に難しいことが知られている。本発明の方法を実施すると、該細胞における導入効率を、本発明の前に達成されていない当分野での現状の方法よりも有意に高めることができる。 本発明の方法の他の好ましい実施形態において、レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。 レンチウイルスベクターは、レンチウイルスビリオンを基にしたベクター、すなわち、他のレトロウイルスベクターと比較して、複製の自己不活性化(SIN)領域を有するというレンチウイルスに特異的な特徴のある、非分割標的細胞のゲノムに組み込み可能なレトロウイルスのサブクラスである。レンチウイルスは、例えば、Retroviruses, Coffin JM, Hughes SH, Varmus HE, Cold Spring HArbor (NY): Cold Sprinh Harbour Laboratory Press; 1997; ISBN−10:0−87969−571−4; O’Connell RM, Balazs AB, Rao DS, Kivork C, Yang L, Baltimore D. Lentiviral vector delivery of human interleukin−7 (hIL−7) to human immune system (HIS) mice expands T lymphocyte populations. PLoS One. 2010 Aug 6;5(8):e12009; Matrai J, Chuah MK, VandenDriessche T. Recent advances in lentiviral vector development and applications. Mol Ther. 2010 Mar;18(3):477−90に詳細に記載される。レンチウイルスベクターは、例えば、ウシ、ウマ、ネコ、羊/ヤギまたは霊長類レンチウイルス群、のレンチウイルスに基づくことができる。好ましくは、レンチウイルスベクターはHIV1、HIV2またはSIVウイルスなどの霊長類レンチウイルスに基づく。最も好ましくは、レンチウイルスベクターはHIV1レンチウイルスに基づく。当業者が知っているように、ほとんどの(商業的に利用可能な)レンチウイルスベクターは、異なるウイルスからのウイルス成分の混合物、したがって、ある程度「ハイブリッド」なベクターを示す。例えば、レンチウイルスベクターはHIV1、VSVg、CMV、WPREウイルスからの成分を含み得る。したがって、偽型化されたベクターも本発明で考えられる。 より好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは、VSV−Gで、および/またはVSV−Gに融合された抗体断片、例えばCD30−VSVg、CD44−VSVgおよびEGFR−VSVgなどで偽型化される。 ウイルスベクターの文脈における「偽型化」なる用語は、当分野で周知であり、例えばBischof et al. (Flexibility in cell targeting by pseudotyping lentiviral vectors. Methods Mol Biol. 2010;614:53−68)に記載される。偽型化は外来ウイルスエンベロープタンパク質の組み込みによるウイルスベクターの細胞型特異性の改変をいう。このアプローチを使用して、宿主の向性を変更でき、ウイルスの安定性を減少するか、または増加させることができる。例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV−G)の糖タンパク質Gは、例えばBurns et al. (Vesicular stomatitis virus G glycoprotein pseudotyped retroviral vectors: concentration to very high titer and efficient gene transfer into mammalian and nonmammalian cells. Proc Natl Acad Sci USA. 1993; 90(17): 8033−8037)に記載されるように、レンチウイルスの偽型化に使用できる。VSV−Gの使用は、有利に多くの種類の細胞型の形質導入を可能にするが、導入効率は、細胞種に応じて変化し、初代リンパ球やリンパ腫細胞株などの形質導入の困難な細胞では特に低い。 本発明の方法の異なる好ましい実施形態において、ポロキサマーは、式HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=265.45およびz=50.34、を有するか;またはポロキサマーは、式HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=236.36およびz=44.83、を有する。 HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=265.45およびz=50.34は、シンペロニックF108として当分野で知られており、約265の親水性エチレンオキシド(EO)ユニットおよび約50の疎水性プロピレンオキシド(PO)ユニットで構成される平均分子量14.6kDaの白い顆粒として合成される。ブロック共重合体はアルカリ触媒存在下でのPOおよびEO単量体の連続的な添加で合成され、POブロックのポリマー化およびそれに続くPOブロックの両端でのEO鎖の伸長により開始される。ブロック共重合体の合成が正確にできないように、x+yおよびzの反復は平均として与えられる。従って、シンペロニックF108の上記ので意義の「平均で」なる用語に関して、該中央値から逸れるポロキサマーを含む、すなわち、それは中間値(平均)の標準偏差から外れるポロキサマーを含む。この比率はその水またはリン酸バッファーでの特に問題のない溶解度を示す(19)。水溶液では、ユニマー(unimer)と呼ばれる単一のポロキサマー分子は、POコアおよびEOシェルがあるミセルとして自己集合すると説明される。実施例からわかるように、シンペロニックF108は本明細書で規定された範囲の分子量を有し、標的細胞、特にトランスフェクトが難しいことが知られている標的細胞、での導入効率の強力なエンハンサーとして働く例示的なポロキサマーである。 HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=236.36およびz=44.83は、F98として当分野で知られており(Kabanov, A et al: Pluronic Block Copolymers for Gene Delivery. Advances in Genetics. 2005; 53: 231−261.)、シンペロニックF108のように、本発明で好ましく使用される。シンペロニックF108で提供された「平均で」なる用語に関する規定は、F98にも適用される。 本発明の方法のさらなる好ましい実施形態において、該標的細胞はさらにポリカチオン性重合体またはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質と接触される。 本発明の「ポリカチオン性重合体」は、その繰り返し単位が正電荷を帯び、繰り返し単位の正電荷が、プロトン化窒素部分に由来する荷電重合体をいう。例えば、ポリエチレンイミン(PEI)では、正電荷の基はイミン基である。 「ポリカチオン性ペプチド」なる用語は、正電荷を帯びたペプチドをいう。例えば、ポリ−L−リジンは、分子式(C6H12N2O)nの分子式をもつホモ重合性のポリカチオン性ペプチドであり、本発明において、限定ではないが、nは少なくとも2、例えば少なくとも20、好ましくは200から500の間、より好ましくは500から2500の間であり得る。 本発明によると、1以上の該ポリカチオン性物質は標的細胞と接触され得る。該接触は、標的細胞がレトロウイルスベクターおよび該ポロキサマーと接触される前に、併用して、または後に、後者の成分の全てが最終的に標的細胞に同時に接触するように存在する限り、行われる。 少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6つのポリカチオン性物質などの、1つ以上のポリカチオン性物質はさらに標的細胞と接触され、それらはポリカチオン性重合体またはポリカチオン性ペプチドのいずれか、または両方、すなわちポリカチオン性重合体はポリカチオン性ペプチドと混合できる、から選択され得る。 特定の理論に拘泥されず、本明細書で言及されたポリカチオン性物質のすべてがレトロウイルスベクターと標的細胞の間の静電反発力で架橋でき、その結果、さらに導入効率を高められることが示唆される。 より好ましい実施形態において、該ポリカチオン性重合体は、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(L−リジン)ブロック共重合体(PEG−PLL)および1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカ−メチル−ポリメソブロミド(ポリブレン)からなる群から選択される;および/または該ポリカチオン性ペプチドは、硫酸プロタミンおよび平均分子量1から300kDaを有するポリ−L−リジン(PLL)からなる群から選択される。 「ポリ(エチレングリコール)−ポリ(L−リジン)ブロック共重合体(PEG−PLL)」なる用語は、分子式[C6H12N2O]x−[C2H4O]yH2O、ここで、ポリ(エチレングリコール)の平均分子量12000Daに相当する、x=48およびy=272.72である。PEG−PLLはHarada et al. Macromolecules 1995; 28:5294−5299に記載されるように合成される。 PEG−PLLを、単独でまたは、ポリブレン、硫酸プロタミン、および/またはポリ−L−リジンのいずれかと組み合わせて使用できる。おそらく、いかなるポリカチオン性物質も本質的に細胞生存に影響しない濃度で使用されるであろう。例えば、ポリブレンで一般に受け入れられた作業濃度は、8〜10μg/mlである。 実施例の部から明らかであるように、本明細書に規定されるポロキサマー、およびポリブレンの組み合わせは該ポロキサマー単独で示される増強と比較して、付加的な状態で導入効率をさらに増強した(実施例6、図5を参照)。 さらにより好ましい実施形態において、ポリカチオン性物質は1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカ−メチル−ポリメソブロミドおよび/または硫酸プロタミンである。 1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカ−メチル−ポリメソブロミドおよび硫酸プロタミンは、単独で、または互いにおよび/またはさらなるポリカチオン性物質と組み合わせて使用できる。 本発明の方法の好ましい実施形態において、該ポロキサマーは、約50から5000μg/mlの濃度で提供される。 本発明の文脈で使用される「約」なる用語は、最大で+/−20%、好ましくは+/−10%の平均偏差をいう。また好ましくは、濃度約100から4000μg/ml、約200から3000μg/ml、約300から2000μg/ml、約400から1500μg/mlまたは450から1250μg/mlである。 本明細書に規定されるポロキサマーは好ましくは、水、リン酸バッファーまたは直接細胞培養培地に溶解される。ポロキサマーは、例えば水またはリン酸バッファー中に、特定の作業濃度に希釈できる100mg/mlの原液を得るために溶解できる。200mg/ml以上の濃度であるとき、ポロキサマー溶液はゲル様となる。200mg/ml未満の濃度において、ポロキサマー溶液は流体状態となる。好ましくは、濃度はポロキサマーが流体状態で提供できる程度である。 より好ましい実施形態において、該ポロキサマーは約500から1000μg/mlの濃度で提供される。 また好ましくは、約600から1000μg/ml、700から1000μg/ml、800から1000μg/ml、または900から1000μg/mlの濃度である。後者の濃度において、本明細書で規定されるポロキサマーは水またはリン酸バッファーに希釈したときに流体状態である。当業者に理解されるように、流体のポロキサマーでの細胞への形質導入は、例えばより容易なピペッティングなどの便利な操作性を許容するように、実用上より便利であり得る。 本発明の他の好ましい実施形態において、方法は、該標的細胞と該ポロキサマーを接触させる前、させると同時およびさせた後に、該標的細胞と該レトロウイルスベクターをスピノキュレーションさせる(spinoculating)さらなる段階を含む。 「スピノキュレーション」なる用語は、レトロウイルスの細胞取り込みのために緊密な接触を確実にするためのレトロウイルスベクターでの標的細胞の遠心による接種に関連する。スピノキュレーションプロトコルは、当分野で周知であり、例えばMillington et al., 2009 (30)に記載される。スピノキュレーション段階は、該標的細胞と該ポロキサマーを接触させる前、させると同時およびさせた後に実行できる。好ましくは、ポロキサマーと標的細胞を接触した後に、スピノキュレーション段階が実行される。 スピノキュレーション段階は、本発明の方法で達成される導入効率を、特にトランスフェクトが難しい細胞において、さらに上昇させる(実施例4および6、図4および5を参照)。 他の実施形態において、本発明は本明細書の上記に規定されるポロキサマーの、任意に本明細書の上記に規定されるポリカチオン性物質と組み合わせての、標的細胞をレトロウイルスベクターで形質導入するための使用に関する。 本発明に関する、本明細書で上記されるポロキサマー、標的細胞、およびレトロウイルスベクターに関連する技術的特徴の全ての規定および組み合わせはまた、必要な変更を加えて、この実施形態に適用される。等しく、スピノキュレーション段階も考慮される。 本発明の他の実施形態は本明細書で規定されるポロキサマー、本明細書で規定されるポリカチオン性重合体および/またはポリカチオン性ペプチド、および任意に使用説明書を含むキットに関する。 ポリカチオン性重合体および/またはポリカチオン性ペプチドに関して本明細書の上記に規定される特徴の規定および組み合わせはまた、必要な変更を加えて、本発明のキットの標的細胞、ポリカチオン性重合体および/またはポリカチオン性ペプチドに適用される。キットは、任意に、本明細書の上記で規定される標的細胞をさらに含み得る。 上記実施形態の変化において、キットはレトロウイルスベクター、本明細書の上記で規定されるポロキサマー、および任意に使用説明書を含む。 キットの様々な構成成分は、1個以上のバイアルなどの1個以上の容器中に包装され得る。バイアルは、構成成分に加えて、保管のための保存料またはバッファー、メンテナンスおよび保存のための培地、例えばES細胞培地、DMEM、MEM、HBSS、PBS、HEPES、ハイグロマイシン、プロマイシン、ペニシリン−ストレプトマイシン溶液、とりわけゲンタマイシン、を含み得る。有利に、キットは当業者が便利に、例えば本発明の様々な実施形態を、作業できる構成成分の使用上の注意を含む。構成成分いずれも実験設定で使用され得る。 レトロウイルスベクターおよびポロキサマーに関して本明細書の上記に規定される特徴の規定および組み合わせはまた、必要な変更を加えて、本発明のキットのレトロウイルスベクターおよびポロキサマーに適用される。例えば、レトロウイルスベクターは、例えば偽型化などのさらなる改変をされ得たまたはされ得ないレンチウイルスベクターとすることができ;ポロキサマーは本明細書の上記で規定されたシンペロニックF108またはF98とすることができる。 本発明のキットの好ましい実施形態において、該キットはさらに本明細書で規定されるレトロウイルスベクターを含む。 図面は以下を示す。ポリカチオンのクラス(a:クロロキン、PEA、デキストラン、カルバミン酸コレステロールおよびL−オルニチン)またはポロキサマーおよび関連物質(b:シンペロニックL122、プルロニックF68およびF127、シンペロニックP85、F108およびNP30、アルコパール)でインキュベートされた、および標準化された未処置の対照(黒線=100%、3つの異なる実験±標準誤差(s.e.m)における、HEK293T細胞の細胞増殖アッセイ(WST−1)。物質で補助された細胞毒性および感染力。HEK293T細胞は、増加する濃度の、ポリカチオン(PEA)またはポロキサマー(プルロニックF68、F127、およびシンペロニックF108)の分類から選択された形質導入物質とインキュベートされた;位相差顕微鏡法(スケールバー=50μm)は細胞生存性の調査に使用される;右の行:物質(10μg/mlのポリブレン、他は1000μg/ml)の存在下でMOI2.5でのLV形質導入(GP)HEK293T細胞の緑色蛍光放出。HEK293T細胞における、物質で補助されたレンチウイルス感染力。(a) 許容濃度でのポリカチオン(PEA(1000μg/ml))またはポロキサマー(プルロニックF68(1000μg/ml)、F127(1000μg/ml)、およびシンペロニックF108(1000μg/ml))のクラスからの形質導入アジュバントの有りまたは無しでのGFP−コーディングレンチウイルス(GP)の減少しているMOIでインキュベートされた細胞蛍光アッセイの代表的なドットブロット(Dot Blot)、ポリブレンは10μg/ml使用された;(b)ポリブレン、(10μg/ml)、シンペロニックF108(1000μg/ml)および両方の物質の存在での、aに記載される形質導入実験の統計的定量化(3つの異なる実験±標準誤差(s.e.m));(c)シンペロニックF108は、ポリブレン補助LV感染よりも良い感染を示した。シンペロニックF108単体またはポリブレン(10μg/ml)との組み合わせは、ポリブレン誘導形質導入と比較したときに、感染細胞の平均量を増加させた(2個の独立した実験)。未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞における、アジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入。(a)4個のALCL細胞株を等しいMOIおよび10μg/mlのポリブレンに感染させた;(b)ポリブレン(10μg/ml)、シンペロニックF108(1000μg/ml)または両方の物質の存在下でのKARPAS−299およびSR−786細胞における導入効率の統計的定量化(3つの異なる実験±標準誤差(s.e.m.));(c)SR−786細胞における細胞PI−透過率およびアポトーシス率の分析;(d)PI透過率の統計的定量化およびKARPAS−299およびSR−786細胞におけるアポトーシス誘導(2つの異なる実験±標準誤差(s.e.m.));(e)KARPAS−299およびSR−786リンパ腫細胞のレンチウイルス感染を容易にするための最大適用濃度(5000μg/ml)までのシンペロニックF108。シンペロニックF108は単独またはポリブレンとの併用で、ポリブレン補助LV感染単独と比較して、より良い感染を示した;(f)LV感染の間のスピノキュレーション段階の効果は、KARPAS−299およびSR−786リンパ腫細胞のレンチウイルス感染を容易にするアジュバントの使用と組み合わせて試験された。スピノキュレーションプロトコルは、スピノキュレーション段階無しで感染した細胞と比較して、細胞のよりよい感染をもたらした。シンペロニックF108はT細胞由来の一次リンパ球細胞の導入を増強した。ポリブレン(10μg/ml)、シンペロニックF108(1000μg/ml)および示された濃度での両方の組み合わせのアジュバントとの、減少したMOIのGFP−コーディングレンチウイルス(GP)でインキュベートした2人のドナー(a:ドナー#1、b:ドナー#2)からの一次リンパ球からの細胞蛍光アッセイの代表的なドットブロット;グラフにおいて、導入実験の統計的定量化は、2つの異なる実験±標準誤差(s.e.m.)の平均値として表した。膵臓癌細胞における、アジュバント補助細胞毒性および感染力。物質無し、ポリブレン(10μg/ml)、シンペロニックF108(1000μg/ml)または両方の物質でインキュベートされた、MOI2.5のLV形質導入(SIH1)膵臓癌AsPC−1およびPANC−1細胞の組み合わせフェーズおよび蛍光顕微鏡分析(スケールバー=50μm)。示された場合では、細胞はさらに60分間、1,000gで遠心分離された。さらなるALCL細胞におけるアジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入。(a)ポリブレン(10μg/ml)、シンペロニックF108(1000μg/ml)または両方の物質の組み合わせの存在下でのSUDHL−1およびSUP−M2細胞におけるLV−導入効率の統計的定量化(3つの異なる実験±標準誤差(s.e.m.));(b) SUDHL−1およびSUP−M2細胞におけるPI透過率およびアポトーシス誘導の統計的定量化(2つの異なる実験±標準誤差(s.e.m.))。 実施例は、本発明を例証する。実施例1:方法細胞株および化学物質 ヒト胚腎臓細胞HEK293Tは、10%(vol/vol)ウシ胎仔血清(FCS)および2mMグルタミンが補われたDMEMで増殖した。未分化大細胞リンパ腫細胞株KARPAS−299、SUDHL−1、SR−786、およびSUP−M2は10%FCSと2mMグルタミンが補われたRPMI1640で、膵癌細胞株AsPC−1は20%FCS、2mMグルタミンおよび1mMピルビン酸ナトリウムとのPRMI1640中で、およびPANC−1は10%のFCSおよび4mMグルタミンが補足されたDMEM中で、培養された。すべての化学的アジュバントの候補は、Sigma−aldrichから購入されて、100mg/mlの原液を得るために水に溶解された。細胞増殖アッセイ(WST−1アッセイ) 6ウェルプレートにおいて、1ウェルあたり2×105の細胞が三重に播種され、1μg/mlから1000μg/mlの範囲内で規定されたアジュバント濃度で処理された。24時間のインキュベーション(5%CO2、37℃)の後に、培地を新鮮な培地に交換し、細胞をさらに48時間インキュベートした。製造業者の指示に従い、細胞増殖はWST−1比色分析細胞増殖アッセイ(Roche)で決定された。まもなく、細胞は10μlのWST−1基質での2時間の100μl細胞培養(5%CO2、37℃)に続いて、トリプシン処理された。アッセイは96ウェルマイクロタイタープレートで実施され、吸光度はTECAN−Infiniteマイクロプレートリーダー(TECAN)を使用して、490nmで測定された。レンチウイルス生産 レンチウイルス導入ベクター、pGreenPuro(pGP)およびpSIH1−H1−copGFP(pSIH1)(System Biosciences)は内部CMVプロモーターによって駆動されたcopGFPの発現を許容する。複製欠失レンチウイルス粒子(GP)は、製造業者の指示に従い、トランスフェクション試薬としてリポフェクタミン2000(Life Technologies)を使用して、16μg、8μgおよび4μgのパッケージプラスミドpMDLg/pRRE、pRSV.RevおよびpMD2.G(D. Trono, Ecole polytechnique federale de Lausanneからの好意)および8μgのpGPベクターでの、10cmペトリ皿中のHEK293T細胞の一時的な同時トランスフェクションで作製された。次に、レンチウイルス粒子(SIH1)は、業者の指示(System Biosciences)に従い、pPackH1−プラスミドパッケージングミックスを使用してHEK293T細胞内で作製された。 ウイルス粒子は、トランスフェクションの48時間後に回収され、セル残渣を低速遠心分離によって除去し、0.45μmStericupフィルターを通してろ過された。レンチウイルスは、製造業者の基準に従って、Amicon−20カラム(どちらもMilliporeから)を用いる限外濾過で濃縮された。濃縮されたウイルスアリコートは−80℃で保管された。ウイルス力価は順次希釈されたウイルスで感染させたHEK293T細胞におけるcopGFP発現の細胞蛍光アッセイで決定された。細胞株のウイルス感染 HEK293T細胞(1ウェルあたり2×105細胞)はアジュバントの有無にかかわらず、レンチウイルス(GP)を含む1mlの培地でカバーされた。膵臓癌AsPC−1およびPANC−1細胞(1ウェルあたり104細胞)は、アジュバントの有無にかかわらず、レンチウイルス(SIH1)を含む250μl上清でカバーされた。特定の場合、プレートは60分間、1,000gで遠心分離された。24時間のインキュベーション(5%CO2、37℃)の後に、上清は新鮮な培地に交換され、さらに48時間インキュベートされた。感染後48時間で組み合わせ顕微分析および照合を実施した(HBO 50/AC and AxioCam MRC, Carl Zeiss AG)。 KARPAS299、SUDHL−1、SR−786、およびSUP−M2懸濁細胞(1ウェルあたり106細胞)はアジュバントの有無にかかわらず、レンチウイルス(GP)を含む1mlの培地で再懸濁された。プレートは90分間、800gで遠心分離された。SUDHL−1細胞は遠心分離直後に洗浄および新鮮な培地に再懸濁され、48時間インキュベートされた。KARPAS−299、SR−786、およびSUP−M2細胞は、遠心分離後に一晩レンチウイルスを含む1mlの培地でインキュベートされ、その後洗浄および新鮮な培地に再懸濁され、さらに48時間インキュベートされた。T細胞起源の一次リンパ球細胞のウイルス感染 ヘルシンキ宣言で示された原則および地方の倫理委員会での許容および要求に従って2人の健康なドナーのPBMCが回収された。PBMCは、フィコール勾配遠心分離を通して単離され、ヒト血清、50U/ml IL−2(Chiron Vaccines)および50ng/ml OKT3(LGC Standards)が補足されたRPMI培地で3日間以上培養された。活性化の後に、1ウェルあたり5×105の細胞がアジュバント有りまたは無しのレンチウイルス(GP)を含む500μlの補足培地で再懸濁された。プレートは、90分間、800gで遠心分離され、一晩培養され、その後洗浄および新鮮な補足培地で再懸濁され、さらに24時間インキュベートされた。細胞蛍光分析 レンチウイルス形質導入後に、細胞はPBSで洗浄され、1μg/mlのヨウ化プロピジウム(Invitrogen)とPBS中に再懸濁された。氷上で10分間インキュベーションした後、30000の事象が、FACSDiva(BD Biosciences)で前方/側方錯乱光特性、530nmでの緑色蛍光放射、および610nmでの赤色蛍光放射を分析された。アポトーシス測定に関して、細胞はPBSで洗浄され、70%(vol/vol)のエタノールで再懸濁された後、氷上で45分間インキュベーションされた。固定の後に、細胞は遠心分離され、ペレットは40μg/mlのヨウ化プロビジウムおよび100μg/mlのRNAse(Qiagen)と共にPBSで再懸濁された。細胞はFACSDivaで赤色蛍光放射のみ分析され、30000の事象が、アポトーシスを起こした細胞のSub−G1割合(<2n)を測定するために分析された。統計分析 すべての実験が少なくとも二重で行われた。対応するグラフでは、他に言及がない場合、平均値±標準誤差(s.e.m.)で表される。実施例2:ポリカチオンおよびポロキサマーアジュバントの細胞毒性プロフィール レンチウイルス遺伝子導入のための潜在的アジュバント物質から、我々はポリカチオン様のクラスから5種類およびポロキサマー様化学物質のクラスから7種類の候補を選択した(表1)。HEK293T細胞は規定された細胞濃度で共インキュベーションされ、その後培地を変更して、細胞は細胞増殖の測定の前にさらに48時間インキュベートされた。異なる物質での特定のHEK293T増殖阻害を試験するため、我々は、WST1基質の取り込みおよび物質との共インキュベーションなしの対照細胞集団との相関を測定した(図1)。この手順は、LVおよびアジュバント(ポリブレン)が洗浄される前に、標的細胞との24時間のLVインキュベーションを含む一般的な形質導入プロトコルに応じて、準備された。 ポリカチオンのクラスについて、すべての物質が10μg/mlで無毒の性状を示した(図1a)。増加した濃度で、2つの物質(ポリブレンおよびカルバミン酸コレステロール)細胞増殖の大規模な減少が誘導された。最終的に、ポリカチオンPEAのみが1000μg/mlで無毒を維持した。したがって、5つのポリブレン様ポリカチオンのうち1つだけが、非常に高い濃度で有利な毒性プロフィールを有した。2番目の物質クラスとして、ポロキサマーは10μg/mlでよく許容された(図1b)。増加した量で、3つの物質(プルロニックF68、F127およびシンペロニックF108)が1000μg/mlでさえ、HEK293T細胞の細胞生存性を減少させずに投与できた。対照的に、ポロキサマー関連のシンペロニックNP30およびアルコパールは低濃度で既に細胞増殖抑制を示し、追加実験を検討しなかった。最終的に、ポリブレンと比較して、12のアジュバント候補のうち4つだけが改良された毒性プロフィールを提供した。したがって、我々は続いて行われるHEK293T細胞のLV形質導入にPEAならびにプルロニックF68、F127およびシンペロニックF108を使用した(図2)。PEAが低い導入効率を示した一方で、シンペロニックF108のみがポリブレンに匹敵する導入効率を示した。興味深いことに、プルロニックF68およびF127はウイルス形質導入において増強を全く示さない(ポリブレンおよびシンペロニックF108が行うような)。しかしながら、それらはウイルス感染自体を抑制はしない。表1 レンチウイルス形質導入のアジュバント候補。クラスI、ポリカチオン(ポリブレン様)およびクラスII、ポロキサマーおよび関連物質から、名称、化学用語、分子量(MW)および構造を示した。実施例3:HEK293T細胞へのアジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入 HEK293T細胞は、LVと最大許容濃度(1000μg/ml)の特定のアジュバントの混合物でカバーされた(24時間)。CopGFP−コーディング遺伝子を運ぶLVは、2.5から0.0025の減少しているMOIで適用された。培地変更の後、細胞は、さらに48時間培養され、緑色蛍光放射がフローサイトメトリーで測定された。図3aでは、4つの代表的実験がドットブロットで表される。アジュバント無しの形質導入は、全体のMOI範囲にわたって、低導入効率を示した。ポリブレンは、推奨濃度10μg/mlで、導入効率を31.5%から48.4%(MOI0.25)まで増加させる能力を有した。 他の物質は、1つのアジュバント候補:シンペロニックF108を除いて、この形質導入レベルをさらに増加させることはなかった(例として、PEAが図3aに示される)。1000μg/mlの良好な耐性を示す濃度では、このポロキサマーはポリブレン補助LV感染よりも良好な導入効率を示した。シンペロニックF108は、中間量の形質導入細胞を61.4%(MOI0.25)まで増加させ、ポリブレン誘導形質導入と比較した場合、MOI0.025でさえ、形質導入を15.5から19.6%増加させるように働いた。さらに、我々は、ポリブレンおよびシンペロニックF108が、それらの個々の形質導入能力を組み合わせられるかどうか、両方をLVプレミックスに単独でまたは組み合わせてその後のHEK293T細胞感染で共投与できるかどうかを検討した(図3b)。この組み合わせを使用して、我々はシンペロニックF108誘導総形質導入率を追加で5%まで増加できた。さらなる証拠として、付着膵臓癌細胞株AsPC−1およびPANC−1は、感染の間、ポリブレンおよびシンペロニックF108が共投与されると、より多くの量のGFP陽性細胞を示した。さらに、スピノキュレーション段階は基礎形質導入レベルを増加させ、ポリブレンおよびシンペロニックF108の組み合わせで、最大の導入効率をもたらした。実施例4:リンパ腫細胞におけるアジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入 前臨床的な研究において、多くの確立した腫瘍細胞株が、一般的なウイルス性および非ウイルス性のツールで低い導入率のみを提供する。浮遊培養で増殖する未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞株は、腫瘍細胞株のこの感染させにくいサブセットに属する8。LV感染中にスピノキュレーション段階を含む改良プロトコルで、我々は、シンペロニックF108がKARPAS−299、SR−786、SUDHL−1、およびSUP−M2リンパ腫細胞のレンチウイルス感染を容易にするかどうか試験した(図4b)。とりわけ、同じ平均MOI率(1.5)で、Karpas−299細胞はポリブレンの存在下で20.8%感染され、SR−786は既に58.8%の感染率を示した(図4a)。KARPAS−299細胞は、LVとのプレミックスにおいて、ポリブレン存在下での58.4%から、シンペロニックF108存在下での85.2%まで、GFP−陽性細胞の増加を示した(図4b)。下側のMOI範囲で、ポリブレン補助形質導入率は21.9%から33.7%またはそれぞれ41.0%まで、併用処理(ポリブレンおよびシンペロニックF108添加)で高められる。SR−786細胞の形質導入率は、KARPAS−299セルと同様に、64.9%(ポリブレン)から84.1%(シンペロニックF108)までMOI1.5で増加した。他のリンパ腫細胞株(SUDHL−1およびSUP−M2)はシンペロニックF108によるLV送達の増進において類似作用を示した。(図7a)。実施例5:標的細胞膜の透過性へのシンペロニックF108の影響 前の実験では、非イオン性ポロキサマー、シンペロニックF108はレンチウイルス形質導入の補助において、当分野でアジュバントとして知られるポリブレンよりも良い効率を示した。ポロキサマーは直接細胞膜と相互作用すると説明されるので、我々は、標的細胞の透過状態がシンペロニックF108によって変えられるかどうか検討した。リンパ腫細胞膜の透過能力をモニターするための方法として、我々は、ポリブレン、シンペロニックF108または両方の物質とのインキュベーションの後に、細胞への取り込みのためにヨウ化プロピジウム(PI)を投与した。一般に、PIは非常に透過性の、または、そうでなければ、漏出性細胞中にのみ蓄積する(図4c)。SUDHL−1細胞を除いて、すべてのリンパ腫細胞株が、ポリブレン処理と比較して、シンペロニックF108の存在下で著しく高いPI透過率を示した(図4dおよび図7b)。アポトーシスを起こした細胞(<2n)のバックグラウンドをモニターするために、我々は並列断片化DNA(parallel fragmented DNA)を測定した(図4c、d)。これらの知見は、シンペロニックF108の、細胞膜を通してレトロウイルス粒子の成功できる形質導入を許容する好ましい無毒の膜効果を示す。実施例6:シンペロニックF−108は初代リンパ球における形質導入を高める 細胞株実験では、シンペロニックF108は特にポリカチオン、ポリブレンと組み合わせてレンチウイルス感染で高性能を示した。初代細胞がそれらのウイルス性遺伝子導入への敏感さにおいて実質的に異なるように、我々は、2人の健康なドナーの血液から単離した初代リンパ球の活力およびレンチウイルス形質導入率を評価した。両方の試料は、同じスピノキュレーションプロトコルで処理された細胞株と比較して、高いMOIレベルであっても(2.5から25)、より低い、ドナー依存の形質導入率を示した(図5)。シンペロニックF108単独およびポリブレンとの組み合わせは、第2因子(22.2%から41.7%、ドナー#1、図5a)によって、または第4因子(5.2%kara19.2%,ドナー#2、図5b)によってさえ、初代リンパ球の形質導入の増加に成功した。シンペロニックF108単独だけでなく組み合わせ処理も、それらの標的細胞における顕著な細胞死を引き起こさなかった。リンパ腫細胞株および初代リンパ球で得られた結果は、シンペロニックF108のレンチウイルス粒子の形質導入アジュバントとしての有望な役割を明確に示す。実施例7:HEK293T細胞へのアジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入 HEK293T細胞は、特定のアジュバント、5000μg/mlの最大適用濃度までのシンペロニックF108と実施例3で使用されたLVの混合物でカバーされた(24時間)。CopGFP−コーディング導入遺伝子を運ぶ、実施例3で使用されるレンチウイルス粒子(GP)は、MOI0.25、および0.025で適用された。培地交換の後、細胞はさらに48時間培養され、緑色蛍光放射がフローサイトメトリーで測定された。シンペロニックF108は、試験した全ての濃度で目立った毒性なしで、よく許容された(1000μg/ml、2500μg/mlおよび5000μg/ml)。シンペロニックF108は、ポリブレン補助LV感染よりも良い感染を示した(図3c)。ポリブレン誘導形質導入と比較して、シンペロニックF108単独またはポリブレン(10μg/ml)と組み合わせは、感染細胞の平均量(2つの独立した実験)を増加させた。とりわけ、MOI0.25で、感染細胞の量が49.5%(ポリブレン10μg/ml)から、シンペロニックF−108が(1000μg/ml)の濃度で使用されたときに、66.2%、2500μg/ml濃度で68.2%、5000μg/ml濃度で64.3%まで、増加した。シンペロニックF108がポリブレン(10μg/ml)と組み合わせて使用されたとき、平均感染はさらに69.7%(1000μg/mlのシンペロニックF108)、71.2%(2500μg/mlのシンペロニックF108)、および64.8%(5000μg/mlのシンペロニックF108)に増加した。アジュバント無しで、0.25のMOIを使用するとき、23%の細胞の平均形質導入が観察された。3つの独立した生物学的反復からの二標本両側スチューデントt−検定での統計分析(表2、下記)は、ポリブレン(10μg/ml)およびシンペロニックF108(1000μg/ml)の両方がHEK293細胞の感染を有意な(p<0.0)増加で高く仲介したこと、およびシンペロニックF108(1000μg/ml)は、ポリブレン(10μg/ml)と比較して有意に(p<0.05)HEK293細胞感染を増加したことを示した。実施例8:リンパ腫細胞におけるアジュバント補助レンチウイルス遺伝子導入 LV感染の間にスピノキュレーション段階を含む改良プロトコルで、シンペロニックF108は、KARPAS−299およびSR−786リンパ腫細胞のレンチウイルス感染を容易にすることについて、最大適用濃度(5000μg/ml)まで試験された(図4e)。CopGFP−コーディング遺伝子を運ぶ実施例3で使用されたレンチウイルス粒子(GP)は、MOI2.5および0.25で適用された。シンペロニックF108は、試験した全ての濃度で目立った毒性なしで、よく許容され(1000μg/ml、2500μg/mlおよび5000μg/ml)、単独およびポリブレンとの組み合わせで、ポリブレン補助LV感染のみと比較して、より良い感染を示した。とりわけ、MOI2.5で、59.5%のKarpas−299細胞がポリブレン(10μg/ml)単独の存在下で感染し、他方で、シンペロニックF−108が1000μg/mlの濃度で存在すると83.3%、2500μg/ml濃度で81.7%、5000μg/ml濃度で77.5%感染した。KARPAS−299細胞が、同じMOI(2.5)で、シンペロニックF108およびポリブレン(10μg/ml)の組み合わせを使用したとき、感染細胞の量はさらに86%(1000μg/mlシンペロニックF108、10μg/mlポリブレン)、87.2%(2500μg/mlシンペロニックF108、10μg/mlポリブレン)、および78.9%(5000μg/mlシンペロニックF108、10μg/mlポリブレン)まで増加した(図4e)。 同じMOI2.5で、62.2%のSR−786細胞がポリブレン(10μg/ml)単独の存在下で感染し、他方で、シンペロニックF−108が1000μg/mlの濃度で存在すると82.3%、2500μg/ml濃度で83.6%、5000μg/ml濃度で79.9%、それぞれ感染した。同じMOI2.5で、シンペロニックF108(1000μg/ml)とポリブレン(10μg/ml)の組み合わせで86%、シンペロニックF108濃度(2500μg/ml)で87.2%、およびシンペロニックF108濃度(5000μg/ml)で81%が感染した(図4e)。アジュバント無しで、それぞれ平均で32.2%のSR−786、および37.2%のKARPAS−299細胞がMOI2.5で感染した。実施例9:リンパ腫細胞におけるレンチウイルス遺伝子導入へのスピノキュレーションの影響 LV感染の間のスピノキュレーション段階効果はKARPAS−299およびSR−786リンパ腫細胞のレンチウイルス感染を容易にするアジュバントの使用と組み合わせて試験された(図4f)。CopGFP−コーディング導入遺伝子を運ぶ実施例3で使用されたレンチウイルス粒子(GP)は、アジュバントの存在下、スピノキュレーション(室温、90分間、800gの遠心分離)プロトコルを適用および適用せずに、2つの異なったMOI(2.5および0.25)で適用された。試験されたすべてのMOIで、スピノキュレーションプロトコルは細胞の、より良い感染をもたらした。とりわけ、MOI2.5でのスピノキュレーションプロトコルで、59.5%のKarpas−299細胞がポリブレン(10μg/ml)単独の存在下で感染し、他方で、シンペロニックF−108が1000μg/mlの濃度で存在すると83.2%、ポリブレンおよびシンペロニックを両方使用すると86%感染した。MOI2.5で、62.2%のSR−786細胞がポリブレン(10μg/ml)単独の存在下で遺伝子導入され、シンペロニックF−108(1000μg/ml)で82.3%、両方のアジュバントを使用して88%が導入された。 スピノキュレーションなしで、MOI2.5でKarpas−299細胞を感染させると、17.8%の細胞がポリブレン(10μg/ml)の存在下で感染し、他方で、シンペロニックF−108が1000μg/mlの濃度で存在すると50%が感染し、ポリブレンおよびシンペロニックF108が両方使用されると感染はさらに増加した(図4f)。スピノキュレーションなしで、MOI0.25でKarpas−299細胞を感染させると、5.7%の細胞がポリブレン(10μg/ml)の存在下で感染し、他方で、シンペロニックF−108が1000μg/mlの濃度で存在すると10.5%が感染し、ポリブレンおよびシンペロニックF108が両方使用されると感染はさらに13.4%に増加した(図4f)。スピノキュレーションなしで、MOI2.5でSR−786細胞を感染させると、36.3%のSR−786細胞がポリブレン(10μg/ml)のみの存在下で、シンペロニックF−108(1000μg/ml)で58.2%、および両方のアジュバントが一緒に使用されると60.9%が形質導入された。スピノキュレーションなしで、MOI0.25でSR−786細胞を感染させると、8.8%のSR−786細胞がポリブレン(10μg/ml)のみの存在下で、シンペロニックF−108(1000μg/ml)で14.1%、および両方のアジュバントが一緒に使用されると17.6%が形質導入された(図4f)。 アジュバント無しおよびスピノキュレーション有りで、32.6%のSR−786細胞が2.5のMOIで感染し、アジュバント無しおよびスピノキュレーション無しでは、13%の細胞のみが感染した。アジュバント無しおよびスピノキュレーション有りで、37.2%のKarpas−299細胞が2.5のMOIで感染し、アジュバント無しおよびスピノキュレーション無しでは、3%の細胞のみが感染した。参考資料(1)Burns, J.C. et al. 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PLoS ONE 4(7): e6461. doi:10.1371/journal.pone.0006461 標的細胞を12.8kDaから約15kDaの分子量を有するポロキサマーおよびレトロウイルスベクターと接触させることを含む、標的細胞に形質導入するための方法。 標的細胞がリンパ球、腫瘍細胞、リンパ球系細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、初代細胞、幹細胞からなる群から選択される細胞である、請求項1に記載の方法。 リンパ球が初代リンパ球であり、および/または腫瘍細胞が造血腫瘍細胞、ニューロン腫瘍細胞または上皮腫瘍細胞である、請求項2に記載の方法。 レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 レンチウイルスベクターが、VSV−Gで、および/またはVSV−Gに融合された抗体断片で偽型化される、請求項4に記載の方法。 ポロキサマーが、式HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=265.45およびz=50.34、を有するか;またはポロキサマーが、式HO−[CH2CH2O]x−[CH2C2H4O]z−[CH2CH2O]y、ここで、平均でx+y=236.36およびz=44.83、を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 該標的細胞がさらにポリカチオン性重合体またはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質と接触される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 該ポリカチオン性重合体が、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(L−リジン)ブロック共重合対(PEG−PLL)および1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカ−メチル−ポリメソブロミド(ポリブレン)からなる群から選択される;および/または該ポリカチオン性ペプチドが、硫酸プロタミンおよび平均分子量1から300kDaを有するポリ−l−リジン(PLL)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。 ポリカチオン性物質が、1,5−ジメチル−1,5−ジアザ−ウンデカ−メチル−ポリメソブロミドおよび/または硫酸プロタミンである、請求項8に記載の方法。 該ポロキサマーが、約50から5000μg/mlの濃度で提供される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 該ポロキサマーが、約500から1000μg/mlの濃度で提供される、請求項10に記載の方法。 該標的細胞と該ポロキサマーを接触させる前、させると同時またはさせた後に、該標的細胞と該レトロウイルスベクターをスピノキュレーションさせる(spinoculating)さらなる段階を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 請求項1〜12のいずれか1項に規定されるポロキサマーの、任意に請求項7〜9のいずれか1項に規定されるポリカチオン性物質と組み合わせての、標的細胞をレトロウイルスベクターで形質導入するための使用。 請求項1〜12のいずれか1項に規定されるポロキサマー、請求項7〜9のいずれか1項に規定されるポリカチオン性重合体および/またはポリカチオン性ペプチド、および任意に使用説明書を含むキット。 請求項1〜12のいずれか1項に規定されるレトロウイルスベクターをさらに含む、請求項14に記載のキット。 本発明は標的細胞に形質導入するための方法に関し、前記方法は標的細胞を12.8kDaから約15kDaの分子量を有するポロキサマーおよびレトロウイルスベクターと接触させる段階を含む。さらに、本発明は、本明細書で規定されるポロキサマーの、任意で本明細書に規定されるポリカチオン性物質と組み合わせての、標的細胞をレトロウイルスベクターで形質導入するための使用、および本明細書で規定されるレトロウイルスベクター、ポロキサマーおよび任意で使用説明書を含むキットに関する。