生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B1)_毛状疣贅病の予防および/または治療方法
出願番号:2014549838
年次:2015
IPC分類:A61K 31/26,A61P 17/00,A61P 31/00


特許情報キャッシュ

岡田 啓司 関山 泰司 JP 5740062 特許公報(B1) 20150501 2014549838 20140703 毛状疣贅病の予防および/または治療方法 三菱化学フーズ株式会社 593204214 国立大学法人岩手大学 504165591 特許業務法人 津国 110001508 津国 肇 100078662 三宅 俊男 100116528 柴田 明夫 100146031 小國 泰弘 100122736 岡田 啓司 関山 泰司 JP 2013139496 20130703 20150624 A61K 31/26 20060101AFI20150604BHJP A61P 17/00 20060101ALI20150604BHJP A61P 31/00 20060101ALI20150604BHJP JPA61K31/26A61P17/00 171A61P31/00 171 A61K 31/26 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特表2013−518563(JP,A) 特表2012−510469(JP,A) 特表2011−500790(JP,A) 特表2002−501480(JP,A) 関山泰司,“カラシ抽出物およびホップ抽出物の抗菌効果とその応用”,月刊フードケミカル,日本,2013年 2月 1日,Vol.29,No.2,P.19-25 関山泰司 外3名,“6. アリルカラシ油によるサルモネラの制御”,日本産業動物獣医学会・日本小動物獣医学会・日本獣医公衆衛生学会 平成5年度 学会年次大会プログラム,日本,1994年 2月,Vol.1993,P.397 3 JP2014067769 20140703 12 20141009 中尾 忍 本発明は、有蹄動物の肢蹄疾患である毛状疣贅病の予防および/または治療方法に関する。 毛状疣贅病(Hairy Wart Disease)は、牛などの有蹄動物の間で伝播する伝染病である。中でも趾皮膚炎(Digital Dermatitis:DD)は、トレポネーマ(Treponema)属の細菌に起因する重篤な肢蹄疾患として知られており、乳牛が罹患した場合、重度の跛行や体重減少などを招き、牛乳生産量の低下を引き起こすことから、日本を含む多くの酪農国において重大な問題となっている。現在、乳牛の毛状疣贅病の予防および/または治療方法としては、アルギン酸ナトリウム、硫酸銅、消石灰、抗生物質(リンコマイシンなど)などの薬剤を含ませた蹄浴槽を牛舎などに設置して乳牛にそこを通らせることによる足浴(フットバス)などが採用されている。しかしながら、アルギン酸ナトリウムや硫酸銅や消石灰を用いた場合の効果は満足できるものではなく、抗生物質の用いた場合の効果は優れるが、薬剤耐性菌の発生の恐れや、抗生物質が牛乳に混入する恐れがあるといった問題がある。また、例えば、特許文献1においてはペルオキシカルボン酸を用いた予防および/または治療方法が、特許文献2においては金属収斂剤を含む使用液を用いた予防および/または治療方法が、特許文献3においては架橋剤を含む組成物を用いた予防および/または治療方法が提案されているが、より優れた予防および/または治療方法の開発は非常に意義深い現状にある。特許第4198193号公報特表2011−500790号公報特表2012−510469号公報 そこで本発明は、有蹄動物の肢蹄疾患である毛状疣贅病に対する新規な予防および/または治療方法を提供することを目的とする。 本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、カラシやワサビの辛味成分であるイソチオシアン酸エステルが、毛状疣贅病に対して優れた予防および/または治療効果を有することを見出した。 上記の知見に基づいてなされた本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療方法は、請求項1記載の通り、イソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与することによる。 また、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、請求項6記載の通り、イソチオシアン酸エステルを有効成分とする。 本発明によれば、イソチオシアン酸エステルを用いた毛状疣贅病に対する新規な予防および/または治療方法を提供することができる。 また、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、有蹄動物が、他の予防および/または治療剤に比べて、その臭いを嫌うことがなく、有効に予防および/または治療を進めることができる。実施例1においてアルギン酸ナトリウムを用いて有効であった患部の写真である。同、消石灰を用いて有効であった患部の写真である。同、イソチオシアン酸アリルを用いて著効であった患部の写真である。実施例2においてイソチオシアン酸アリルを用いて治癒した患部の写真である。実施例4において病変部の菌スコアに対するイソチオシアン酸アリルの効果の削蹄の有無による差異を示した図である。同、病変部の痛みに対するイソチオシアン酸アリルの効果の削蹄の有無による差異を示した図である。 本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療方法は、イソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与することによる。イソチオシアン酸エステルを予防的に投与することで毛状疣贅病の発症を防止することができ、治療的に投与することで発症した毛状疣贅病を治癒することができる。 また、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、イソチオシアン酸エステルを有効成分として含有するが、上記予防および/または治療方法と同様に、予防にも治療にも使用することができる。 本発明の適用対象となる有蹄動物としては、乳牛をはじめとする牛のほか、羊、豚、馬などが挙げられる。毛状疣贅病はこうした有蹄動物の肢蹄疾患であり、前出の趾皮膚炎のほか、乳頭腫性肚皮膚炎(Papillomatus Digital Dermatltis(PDD))、伝染性牛趾間皮膚炎(Infectious Bovine Interdigital Dermatitis(IDD))、家畜趾間腐爛(Stable Foot Rot(SFR))、さらには近年、急増しているヘアリーアタック(蹄の隙間から原因菌が蹄角質内に侵入して化膿を引き起こす蹄病)などをその範疇に包含するものである。 本発明のイソチオシアン酸エステルの具体例としては、イソチオシアン酸アリルなどのイソチオシアン酸C2−6アルケニル;イソチオシアン酸フェニルなどのイソチオシアン酸アリール;イソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸プロピル、イソチオシアン酸イソプロピル、イソチオシアン酸ブチル、イソチオシアン酸イソブチル、およびイソチオシアン酸イソアミルなどのイソチオシアン酸C1−6アルキル;イソチオシアン酸ベンジルなどのイソチオシアン酸フェニルC1−6アルキル;イソチオシアン酸シクロヘキシルなどのイソチオシアン酸C3−6シクロアルキルなどが挙げられる。イソチオシアン酸C2−6アルケニル、特にイソチオシアン酸アリルが、良好な毛状疣贅病に対する予防および/または治療効果を奏する点から、好ましい。 本発明のイソチオシアン酸エステルはカラシやワサビから抽出された天然品であってもよいし、それ自体公知の方法によって合成された合成品であってもよい。また、イソチオシアン酸エステルは単一のものを用いてもよいし、複数種類のものを混合して用いてもよい。 本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療方法は、イソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与することによるが、このイソチオシアン酸エステルとしては、イソチオシアン酸エステルをそのまま使用してもよいが、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤を使用してもよい。 イソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与する方法は特段限定されるものではなく、イソチオシアン酸エステルを含ませた蹄浴槽を利用した足浴による方法の他、イソチオシアン酸エステルを担持させたシートを踏ませることで塗布する方法、イソチオシアン酸エステルを含ませた噴霧剤を肢蹄に噴霧する方法、イソチオシアン酸エステルを含ませた塗布剤を肢蹄に塗布する方法、イソチオシアン酸エステルを担持させた貼付剤を肢蹄に張り付ける方法、イソチオシアン酸エステルを担持させたシート剤を踏ませて肢蹄にイソチオシアン酸エステルを転着させる方法などを採用することができる。これらの方法は組み合わせて採用してもよい。いずれの方法を採用しても、予防的に行うことで毛状疣贅病の発症を防止することができ、治療的に行うことで発症した毛状疣贅病を治癒することができる。イソチオシアン酸エステルは揮発性の高い油状物質であり、そのまま投与してもよいが、水などの溶媒または分散媒に溶解または分散させるなどして、水溶性に製剤化したもの、噴霧できるようにしたもの、粉末組成物にしたものなどを、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤として上記の投与に使用してもよく、投与方法に応じて適宜、好適な製剤を選択して用いることができる。 特に予防の場合には、イソチオシアン酸エステルを含ませた、足浴、シート、噴霧剤、もしくは塗布剤、またはイソチオシアン酸エステルを担持させた貼付剤を用いることが好ましく、感染している可能性のある部位に上記噴霧剤もしくは塗布剤を噴霧もしくは塗布したり、または上記貼付剤を貼り付けたりしてもよい。 また、治療の場合には、患部に対して、高い濃度でイソチオシアン酸エステルが投与されることが好ましいため、上記足浴やシートなどを用いてもよいが、直接的に患部に上記噴霧剤もしくは塗布剤を噴霧もしくは塗布したり、または上記貼付剤を貼り付けたりすることが好ましい。 イソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与するに際しては、予め肢蹄に付着した泥や厩肥などを水で洗い流すなどして肢蹄を清浄することが望ましい。例えば、まず肢蹄(患部)を清浄にし、例えば、水を用いてまたは足浴を最初に通ることにより洗浄して、泥や厩肥を落とし、そしてイソチオシアン酸エステルの噴霧、塗布、貼り付けなどを行ってもよい。また、予め削蹄した後に投与することも好ましい。 また、装置やセンサーを用いて、自動的に投与するシステムを使用してもよく、定期的にイソチオシアン酸エステルを投与することが容易となるため、特に予防には有効である。 イソチオシアン酸エステルの投与量は、予防および/または治療の対象とする有蹄動物の種類、年齢、体重、症状の程度などによって適宜設定することができる。 また、イソチオシアン酸エステルは、1回の投与で十分な効果を挙げられる場合もあるが、定期的に投与してもよく、特に予防の場合には定期的な投与が好ましい。投与間隔は、特定の時間間隔で行ってもよく、毎日、一日おきに、または週に1回適用することができる。予防的投与の場合は例えば1日〜7日に1回といった割合で定期的に投与すればよく、治療的投与の場合は1回限りの投与であってもよいし、複数回の投与であってもよい。一般に、治療においては、同日にまたは連日に1回または2回適用することにより痂皮の形成が促進される。 本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、粉末や製剤化された固体状のものであっても、水などの溶媒もしくは分散媒に溶解もしくは分散された液体状のものであってもよく、スプレーなどで霧状にしたり、泡状にしたりして使用してもよい。 上記の通り、イソチオシアン酸エステルは、水溶性に製剤化したもの、噴霧できるようにしたもの、粉末組成物にしたものなどを、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤として用いることもできるが、本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、有効成分として用いるイソチオシアン酸エステルに加え、その他の成分、例えば、湿潤剤、抗菌剤、増粘剤、界面活性剤、着色剤、香料などを含んでいてもよい。 湿潤剤としては、皮膚に対する保湿効果を有する保湿剤、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ラノリン、ポリエチレングリコール、ラノリン−ポリエチレングリコール、ラノリン−ポリエチレングリコール誘導体、アロエベラ、アラントイン、またはこれらの混合物などを用いることができる。 抗菌剤としては、抗菌性を有する植物の抽出物や精油など、具体的には、タイム、レモングラス、柑橘類、レモン、オレンジ、アニス、クローブ、アニシード、マツ、シナモン、ゼラニウム、バラ、ミント、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、ペパーミント、樟脳、アジョワン、ビャクダン、ローズマリー、クマツヅラ、フリーグラス、レモングラス、ラタニア、ヒマラヤスギ、またはこれらの混合物などを用いることができる。 増粘剤としては、天然に存在する高分子物質やその加工物(ローカストビーンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、卵アルブミン、ゼラチン寒天、カラゲニンガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、クインスシードエキス、トラガカントガム、デンプン、化工デンプンなど)、半合成高分子物質〔セルロースエーテル(ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ヒドロキシプロピルグアーガム、可溶性デンプン、カチオン性セルロース、カチオン性グアーなど〕、または合成高分子物質(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ポリマー、ポリメタクリル酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリ塩化ビニリデンポリマーなど)などを用いることができる。 界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などを用いることができる。 本発明の毛状疣贅病の予防および/または治療剤は、通常、イソチオシアン酸エステルを毛状疣贅病に対して有効量を含有すればよく、好ましくはイソチオシアン酸エステルを5質量%以上含有する。 なお、本発明の予防および/または治療方法は、有効成分としてイソチオシアン酸エステルのみを使用してもよいが、毛状疣贅病の予防および/または治療に有効なその他の薬剤、例えば、アルギン酸ナトリウム、硫酸銅、消石灰、抗生物質などと併用してもよい。 また、本発明の予防および/または治療剤は、有効成分としてイソチオシアン酸エステルのみを含んでいてもよいが、毛状疣贅病の予防および/または治療に有効なその他の薬剤、例えば、アルギン酸ナトリウム、硫酸銅、消石灰、抗生物質などと併用してもよい。 以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。実施例1:イソチオシアン酸エステルの趾皮膚炎に対する効果 イソチオシアン酸アリルの粉末組成物(三菱化学フーズ社製の商品名「ワサオーロパウダー」)3gを脱脂綿に載せて趾皮膚炎に罹患している乳牛の患部にあて、その上から伸縮包帯を巻きつけることで貼付剤の形態で患部にイソチオシアン酸アリルを投与し、2日後に効果判定を行った。また、同様の方法でアルギン酸ナトリウムと消石灰をそれぞれ投与して2日後に効果判定を行った。結果を表1に示す。 表1から明らかなように、効果の程度が有効以上の割合は、アルギン酸ナトリウムを用いた場合には20%、消石灰を用いた場合には29%であったのに対し、イソチオシアン酸アリルを用いた場合には100%であった。以上の結果から、イソチオシアン酸アリルは趾皮膚炎に対して極めて優れた効果を有することがわかった。アルギン酸ナトリウムを用いて有効であった患部の写真を図1に、消石灰を用いて有効であった患部の写真を図2に、イソチオシアン酸エステルを用いて著効であった患部の写真を図3にそれぞれ示す。アルギン酸ナトリウムや消石灰を用いた場合に比較してイソチオシアン酸エステルを用いた場合の効果の程度は明らかに高いことがわかる。実施例2:イソチオシアン酸エステルのヘアリーアタックに対する効果 イソチオシアン酸アリルの粉末組成物(三菱化学フーズ社製の商品名「ワサオーロパウダー」)3gを脱脂綿に載せてヘアリーアタックに罹患している乳牛(5頭)の患部にあて、その上から伸縮包帯を巻きつけることで貼付剤の形態で患部にイソチオシアン酸アリルを投与し、1週間後に効果判定を行った。その結果、5頭の乳牛のうち、患部が治癒した乳牛は2頭、患部が良好化した乳牛は1頭、患部が不変であった乳牛は1頭であり、イソチオシアン酸アリルは5頭のうち4頭の乳牛の患部に対して良好化以上の効果をもたらした(治癒した患部の写真を図4に示す)。ヘアリーアタックは趾皮膚炎に比較して重篤かつ広範囲にわたって病巣を有する肢蹄疾患であり、有効な予防および/または治療方法が今だ見出されていない現状においては、イソチオシアン酸アリルのこの効果は画期的と言えるものであった。実施例3:イソチオシアン酸エステルによる牛趾皮膚炎の治療効果試験 趾皮膚炎罹患牛2頭より採材を行った。まず、治療前の患部からバイオプシーにより趾皮膚炎病変を採取した。採取後、イソチオシアン酸アリルを含む粉末組成物(三菱化学フーズ社製の商品名「ワサオーロパウダー」)を患部に塗布した。7日後に臨床症状の改善を確認した後に、再度バイオプシーにより材料を採取した。採材時には肉眼的に趾皮膚炎ステージを判定した。治療前後の病変内の優勢菌種を調べるため、2頭の治療前後の趾皮膚炎病変材料4検体からDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子に対するユニバーサルプライマーを用いた低サイクル(25サイクル以下)PCRを行い、増幅された遺伝子断片を大腸菌ベクターにクローニングした。1検体につき192クローンを無作為に採取して、増幅した16SrRNA遺伝子の塩基配列を決定した。このうち、1,450bpを超える塩基配列データが得られたクローンを使用して、BLAST検索による相同性解析を実施し、菌種を決定した。2頭の各々の結果を表2および3に示す。 2頭いずれも趾皮膚炎ステージは、治療前採材時においてM4、治療後採材時においてM2であり、治療効果が確認された。表2および3から明らかなように、治療前には、すべての材料から高頻度にTreponema属菌が検出されたが、治療後の材料からのTreponema属菌検出は極めて低頻度であった。 このことから、Treponema属菌は治療前の趾皮膚炎病変部に最優勢菌種として存在しており、趾皮膚炎の有力な原因の候補であることが示唆された。イソチオシアン酸エステルを患部に塗布すると、臨床症状の改善が認められるとともに、治療後の材料からのTreponema属菌検出率が極めて低頻度であったことから、イソチオシアン酸エステルはTreponema属菌に対して高い抗菌活性を有し、また、趾皮膚炎の治療薬としても有用であることが認められる。実施例4:イソチオシアン酸エステルの趾皮膚炎に対する効果(削蹄の有無) 趾皮膚炎に罹患している乳牛の患部に、イソチオシアン酸アリル(ワサオーロパウダー、三菱化学フーズ社製)を塗布し、2日後、4日後、6日後の病変部の菌スコア、痛みの変化を観察した。 削蹄の有無による効果の差異を確認するため、以下のA〜Dの条件で比較した。A:削蹄した後に、患部にイソチオシアン酸アリルを塗布B:削蹄せずに、患部にイソチオシアン酸アリルを塗布C:削蹄した後に、患部をオキシドール洗浄後、イソチオシアン酸アリルを塗布D:削蹄した後に、患部をオキシドール洗浄(イソチオシアン酸アリルを塗布せず) 病変部の菌スコアは、蹄球のスタンプ標本から、以下のとおり菌数をスコア化したものである。3:視野がTreponemaで埋め尽くされる2:視野に多数のTreponemaを確認する1:稀にTreponemaを確認する0:Treponemaを確認できない 痛みの変化は、圧力計で患部を強く圧迫し、痛みを感じた時点での加圧レベルを評価した。数字が大きくなるほど痛みは小さい。 結果を図5及び図6に示す。 削蹄後にイソチオシアン酸アリルを投与すると、病変部の菌が減少することがわかった。また、患部をオキシドール洗浄後、イソチオシアン酸アリルを塗布すると、さらに病変部の菌が減少することがわかった。 また、削蹄後にイソチオシアン酸アリルを投与すると、痛みが小さくなることがわかった。実施例5:イソチオシアン酸エステルの趾皮膚炎に対する効果(投与方法) 趾皮膚炎に罹患している乳牛の患部に、イソチオシアン酸エステルを投与する方法について検討した。0日目及び7日目に、表4及び5に記載のとおり、次のA1〜D1の方法を組み合わせた投与を行い、0日目、2日目、7日目、14日目、及び21日目に、病変部をスコア化した病変スコアの評価(表4)、及び痛みの評価(表5)を行った。A1:ワセリン10gにイソチオシアン酸アリル(ワサオーロパウダー、三菱化学フーズ社製)を混ぜ込み、患部に塗布した後、バンデージを巻くB1:穿刺部位にモクタールを塗布C1:イソチオシアン酸アリル(ワサオーロパウダー、三菱化学フーズ社製)6gと3gをそれぞれ不織布からなるバッグ(ティーバッグ)に入れた。6gの方を患部に、3gの方を蹄の間に入れて、軽くバンデージを巻き、ビニール袋で覆い、靴下をはかせた。D1:削蹄直後に、ワセリン10gにイソチオシアン酸アリル(ワサオーロパウダー、三菱化学フーズ社製)を混ぜ込み、患部に塗布した後、蹄全体をビニール袋で覆い、靴下をはかせた。 なお、病変スコアは以下の通りとした。4:Dopferの分類M2 大潰瘍病変3:Dopferの分類M1 小潰瘍病変2:Dopferの分類M3 痂皮形成1:Dopferの分類M4 小0:Dopferの分類M0 正常 また、痛みの変化は、圧力計で患部を強く圧迫し、痛みを感じた時点での加圧レベルを評価した。数字が大きくなるほど痛みは小さい。 病変スコアの結果では、投与方法によらず殆ど治癒できることがわかった。また、痛みについては、C1の方法で痛みが軽減できる傾向があることがわかった。 本発明は、有蹄動物の肢蹄疾患である毛状疣贅病に対する新規な予防および/または治療方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。 イソチオシアン酸アリルを有蹄動物の肢蹄に投与することによる毛状疣贅病の予防および/または治療方法。 イソチオシアン酸アリルを有蹄動物の削蹄後の肢蹄に投与する、請求項1記載の方法。 イソチオシアン酸アリルを有効成分とする毛状疣贅病の予防および/または治療剤。 有蹄動物の肢蹄疾患である毛状疣贅病に対する新規な予防および/または治療方法を提供すること。 イソチオシアン酸アリルなどのイソチオシアン酸エステルを有蹄動物の肢蹄に投与することによる。本発明の適用対象となる有蹄動物としては、乳牛をはじめとする牛のほか、羊、豚、馬などが挙げられる。


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