タイトル: | 公表特許公報(A)_EGFR阻害の有害反応を予防または処置するための組成物 |
出願番号: | 2014545257 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 38/44,A61P 17/00,A61P 17/16,A61P 17/14,A61P 1/02,A61K 9/127,A61K 9/50,A61K 9/10,A61K 9/08,A61K 9/06,A61K 47/36,A61K 47/32,A61K 47/24 |
ハンス・ロイプナー ハラルト・シュニダー JP 2015500820 公表特許公報(A) 20150108 2014545257 20121206 EGFR阻害の有害反応を予防または処置するための組成物 アトークアント・ダイアグノスティクス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング 509343116 ATTOQUANT DIAGNOSTICS GMBH 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 ハンス・ロイプナー ハラルト・シュニダー EP 11192223.3 20111206 A61K 38/44 20060101AFI20141205BHJP A61P 17/00 20060101ALI20141205BHJP A61P 17/16 20060101ALI20141205BHJP A61P 17/14 20060101ALI20141205BHJP A61P 1/02 20060101ALI20141205BHJP A61K 9/127 20060101ALI20141205BHJP A61K 9/50 20060101ALI20141205BHJP A61K 9/10 20060101ALI20141205BHJP A61K 9/08 20060101ALI20141205BHJP A61K 9/06 20060101ALI20141205BHJP A61K 47/36 20060101ALI20141205BHJP A61K 47/32 20060101ALI20141205BHJP A61K 47/24 20060101ALI20141205BHJP JPA61K37/50A61P17/00A61P17/16A61P17/14A61P1/02A61K9/127A61K9/50A61K9/10A61K9/08A61K9/06A61K47/36A61K47/32A61K47/24 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2012074645 20121206 WO2013083695 20130613 28 20140723 4C076 4C084 4C076AA06 4C076AA09 4C076AA11 4C076AA16 4C076AA19 4C076AA22 4C076AA61 4C076BB01 4C076BB31 4C076CC04 4C076CC09 4C076CC18 4C076DD63F 4C076EE09A 4C076EE37A 4C076FF04 4C076FF16 4C076FF43 4C084AA02 4C084CA18 4C084CA53 4C084DC24 4C084MA13 4C084MA17 4C084MA22 4C084MA23 4C084MA24 4C084MA27 4C084MA28 4C084MA52 4C084MA63 4C084NA14 4C084ZA672 4C084ZA892 4C084ZA922 本発明は、抗EGFR抗体またはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤などのEGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応、とりわけざ瘡様皮疹を、その予防または処置を必要とする対象において予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物に関する。 上皮成長因子受容体(EGFR)の変異または過剰発現は、それぞれ上皮由来およびグリア由来の腫瘍である癌および膠芽腫のような、多くの異なるタイプの癌の原因であると同定されている。そのような腫瘍を患っている患者は、EGFR阻害剤で全身性に処置することができるが、このEGFR阻害剤は、重度の有害炎症性副作用を、特に皮膚および腸に引き起こし、それが治療の打ち切りにつながることも多い。 EGFRの阻害は、2種類の治療薬、すなわちチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)および抗EGFR抗体によって達成することができる。 例えばHeidary et al., 2008やRobert et al., 2005に記述されているように、EGFR阻害剤による処置は、患者の50%以上において、時期尚早な処置の終了をもたらしうる炎症性皮膚副作用を伴う。重要なことに、皮膚における炎症性副作用の強さは、抗がん処置の成功と正に相関している(Perez-Soler et al., 2004)。最も強い皮膚副作用を呈する患者は、抗腫瘍応答が良く抗EGFR処置後の生存期間が長い患者でもある。 抗EGFR治療を受けている患者の最も一般的な皮膚副作用は、無菌性の非感染性毛包炎、ざ瘡様丘疹膿疱性発疹(ざ瘡様皮疹(ALSR)とも呼ばれる)であり、これは処置の開始後間もなく起こる。病変はしばしば顔面領域に生じ、好中球、好酸球のような血中白血球の混合集団に加えてT細胞の真皮内浸潤が付随する。2番目に多い副作用は、頭皮異常、ひげおよび睫毛の成長などといった毛髪の変容である。さらにまた、EGFR阻害剤で処置された患者は、下痢や悪心のような胃腸障害を発症することが非常に多い。 上述したEGFR治療の有害反応は、投薬の中断または用量の低減につながり、患者の生活の質を損ない、その上、患者に重感染のリスクを課すことが非常に多い。 しかし、EGFR阻害が引き起こす有害反応を管理するための標準的処置やガイドラインはまだない。皮膚関連有害反応の処置は、現在のところ、外用抗生物質、一般的スキンケア、および衛生管理の勧告に限られている。外用ステロイドなどの他の処置選択肢の使用は、二次的副作用ゆえに、議論の余地がある。外用レチノイドは皮膚の乾燥および剥離がさらに増加するので推奨されず、ざ瘡薬治療はステロイドまたは抗生物質ほど有効ではない。重度の皮膚または胃腸有害反応を処置するための全身性ステロイドにも問題がある。というのも、それらはEGFR阻害を妨害しうるからである。 したがってEGFR阻害剤で処置された患者における有害反応を管理するための新規な治療戦略の必要性は高い。それゆえに、本発明の目的は、EGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を予防または処置するための医薬組成物を提供することである。 したがって本発明は、対象においてEGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物を提供する。 EGFR阻害剤による処置に続く炎症の基礎にある病理学的機序は、あまりよくわかっていない。特に、さまざまな常在免疫細胞集団と浸潤免疫細胞集団の役割と相互作用は、今までに調べられたことがない。健常な皮膚では、特異的な免疫細胞集団が、皮膚関連リンパ組織を構成する別個の皮膚層に位置している。ヒトとマウスの表皮は(他の種の表皮もそうだが)、重層上皮中に存在する樹状細胞(DC)のサブタイプであるランゲルハンス細胞(LC)を含んでいる。真皮中の免疫細胞集団は不均一性がはるかに高い。健常な真皮は、DC、CD4+およびCD8+ T細胞、γδT細胞およびナチュラルキラーT細胞(NKT)、マクロファージおよび肥満細胞を含んでいる。乾癬において見られるような炎症を起こしたヒト真皮には炎症性DC(IDC)の特殊化したサブタイプが現れ、これはTIP-DC(「TNFα/iNOS産生DC(TNFα and iNOS producing DC)」)と呼ばれている。さまざまな炎症性皮膚障害では、典型的なTh細胞サブタイプを、それらが産生しているキーサイトカインによって同定することができる。最近になって、慢性炎症性障害ではTh-17細胞が重要であると記述されている。しかし、正常な状態下での炎症の予防には、皮膚T細胞も重要である。その一例は、LCによって媒介される、UV-B照射による調節性T細胞(Treg)の誘導であり、この例は皮膚細胞集団間の複雑な相互作用を浮き彫りにしている(Yoshiki et al., 2010)。 皮膚肥満細胞には、皮膚の損傷または感染によって誘導されるさまざまなシグナルを感知するために、特殊な備えがある。これらは、TLR、補体受容体およびFc受容体ならびにサイトカイン受容体のような、広範囲にわたるパターン認識受容体を発現する。病原体の他、EGFRによって調節されるカテリシジンLL37のような上皮由来の危険シグナルも、肥満細胞を誘引し、活性化しうる(Lande et al., 2007;Schiemann et al., 2009)。好中球/顆粒球は、創傷、細菌感染のようなさまざまなトリガーに応答して、または乾癬や全身性エリテマトーデスのような慢性炎症性皮膚疾患中に、皮膚に動員される。ケラチノサイトでは、化学誘引を担うシグナルのいくつか、例えばIL-8、CCL-2またはGM-CSFが、EGFRによって調節されうる(Mascia et al., 2003;Roupe et al., 2010)。創傷治癒および感染性疾患では、再構築のために好中球が不可欠であるが(Lin et al., 2011b)、反応性酸素種(ROS)、ミエロペルオキシダーゼまたはインターロイキン-17aのような、それらの幅広い炎症促進性メディエーターのレパートリーは、一定の条件下では、自己免疫様疾患を引き起こしうる(Lin et al., 2011a;Villanueva et al., 2011)。 樹状細胞(DC)、T細胞および好中球を動員しうるいくつかの炎症促進性メディエーター、例えばCCL-2/MCP-1、CCL-5/RANTESおよびCXCL-10/IP-10は、EGFR刺激に応答して、ダウンレギュレートされる。重要なことに、EGFRシグナリングを阻害すると、TNFαのようなサイトカインによって誘導されるこれらのケモカインの産生が強化される(Mascia et al., 2003)。これは、EGFR阻害剤処置を受けた患者の皮膚におけるROSの主要供給源の一つでもある好中球の増加について、考えうる説明になる。異なる免疫細胞タイプとスーパーオキシド産生が、EGFR阻害剤で処置された患者に観察されるざ瘡様皮疹(ALSR)表現型の誘導に、どのように寄与し協調するかは、現時点ではまだよくわかっていない。 EGFR阻害剤による処置の胃腸副作用の基礎にある病理学的機序も、わずかしかわかっていない。EGFRリガンドTGFαを欠くマウスは、DSS誘発性大腸炎に対して感受性の増加を示した(Egger et al., 1997)。EGFRリガンドは、DSSが引き金を引く粘膜傷害に応答して増加し、この応答はTLR4シグナリングに依存する(Hsu et al., 2010)。TLR4が媒介するEGFRリガンド発現の増加は、組織損傷に応答して起こる粘膜細胞の増殖と修復にとって重要であるという仮説が立てられる。骨髄キメラマウスの解析により、EGFRリガンドの放出量が増加するには、非造血細胞(おそらく粘膜上皮細胞)においてTLRアダプター分子MyD88が必要であることと、減弱型のEGFRを保持するマウス(waved2、ベルベット(velvet)変異体)はDSS誘発性大腸炎に対する感受性が高いこととが明らかになっている(Brandl et al., 2010;Egger et al., 2000)。興味深いことに、EGFRシグナリングは、腸内微生物叢との相互作用にも関与するようである。例えば、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GGが産生するプロバイオティックタンパク質p40は、EGFR/Akt依存的に、腸管上皮細胞をアポトーシスから保護する(Yan et al., 2011)。樹立したDSS誘発性大腸炎を持つマウスをp40で処置すると、粘膜の障壁機能が劇的に改善され、疾患症状が低減することから、腸ホメオスタシスにおけるEGFRシグナリングの重要性が浮き彫りになる。 本発明で使用したアプローチは、抗EGFR標的治療を受けているがん患者と非常によく似た表現型を発症する非常に特異的で著しく好適なマウスモデル(組織特異的EGFRノックアウトマウス)を使用している点で、ユニークである。この組織特異的EGFRノックアウト法を使用すれば、特異的に皮膚および/または腸においてEGFRを欠くマウスを作製することができる。特異的に皮膚においてEGFRを欠くマウスは、ALSRに類似する重度の皮膚炎症を発症する。したがって、そのようなマウスは、EGFR阻害剤によって誘導される表現型の基礎にある機序を調べるための、そしてまた、EGFR阻害剤処置の有害反応を予防しかつ/または処置することを目的とする化合物を試験するための、汎用性の高いツールである。本発明では、これらのマウスにおいて、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を試験した。 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、スーパーオキシドアニオンの酸素と過酸化水素への不均化を触媒する酵素クラスである。したがってこれらは、酸素に暴露されるほぼ全ての細胞において、重要な抗酸化防御手段である。ヒトでは(他の全ての哺乳動物および大半の原索動物と同様に)、3つの形態のスーパーオキシドジスムターゼが存在する。SOD1は細胞質に、SOD2はミトコンドリアに、そしてSOD3は細胞外に位置している。1つ目は二量体である(2つのユニットからなる)が、それ以外は四量体(4つのサブユニット)である。SOD1とSOD3が銅および亜鉛を含有するのに対し、ミトコンドリア酵素であるSOD2はその活性中心にマンガンを有する。ネイティブのヒトCu/Zn-SOD1はホモ二量体分子(32kDa)である。これは、ROSの発生に対抗することによって、ヒト細胞を有害なレベルの酸化ストレスから保護するのに不可欠である。これは、細菌感染に対する防護具として働くことができるスーパーオキシドアニオン(・O2-)ラジカルと特異的に反応する。生物学的組織に対するその固有の酸化反応性に基いているとはいえ、これらは、望ましくない炎症応答と、タンパク質、脂質、DNAおよびRNAの発癌性修飾とを誘導する能力も有する。・O2-形成の増加は、照射源または変異誘発性化学物質のような外部環境因子によって誘導される場合もあるし、呼吸バーストの課程でマクロファージおよび好中球などの特殊化したヒト免疫細胞によって自然に誘導される場合もある。 本発明では、SODが、EGFR阻害の影響を受けるいくつかのT細胞関連パラメータに良い影響を及ぼすことを、上述のマウスモデルにおいて示し、よって、EGFR阻害の有害反応を予防または処置するためのSODの使用に関する根拠を提供する。したがって本発明は、EGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を、その予防または処置を必要とする対象において予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物を提供する。 さらに本発明は、EGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を、その予防または処置を必要とする対象において、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物を投与することによって予防または処置する方法に関する。 本発明の一実施形態では、rhSODが組換えヒトCu/Zn-SOD、最も好ましくは組換えヒトSOD1である。rhSODは、大腸菌発現系において、好ましくは回分/流加発酵プロセスを利用して、好ましくは100Lの体積で、生産することができる。遠心分離による分離の後、硫酸アンモニウム沈殿および1つ以上のクロマトグラフィー工程、好ましくは3つの異なるクロマトグラフィー工程、最も好ましくは異なるSepharose(登録商標)樹脂に基づくものによって、精製を行うことができる。その後、rhSODを滅菌濾過し、場合によっては製剤化することができる。rhSODは生理PBS中に、好ましくは30±10mg/mlの濃度で保存することができる。 rhSODは、例えばTsao et al., 1991;Land et al., 1994;Davis et al., 1997;またはDavis et al., 2004に記載されているように、遊離rhSODとして使用することができる。好ましい一実施形態では、薬物送達システムの使用によって、rhSODの薬物動態特徴を改良することができる。もう一つの好ましい実施形態では、rhSODを修飾(例えばPEG化またはレシチン化)することができる(Igarashi et al., 1992)。 とりわけ好ましい一実施形態では、rhSODがリポソームにカプセル化される。好適なリポソームrhSOD組成物は、例えばWO96/14083に記載されており、WO2002/036257に記載されているように生産することができる。 好ましい一実施形態では、リポソームが3つの異なる脂質から構成される。本発明に従って(とりわけ医薬組成物の外用適用(topical application)に)使用することができる好適な脂質は、例えばBraun et al., 2006に記載されている。好ましい一実施形態では、本発明のリポソームが、コレステロールおよび1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)を含む。さらなる好ましい一実施形態では、本発明のリポソームに含まれる第3の脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホル-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DMPG)、または1,2-ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、または卵ホスファチジル-グリセロール(EPG)、またはステアリルアミン(SA)を含む群から選択される。とりわけ好ましい一実施形態では、DPPCとコレステロールとが7:2のモル比で存在する。もう一つの好ましい実施形態では、コレステロールと第3の脂質(DMPG、DPPG、EPG、またはステアリルアミン)とが2:1の比で存在する。ある実施形態では、リポソームが、モル比が7:2:1の1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、コレステロールおよび1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホル-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DMPG)から構成される。 さらにもう一つの好ましい実施形態では、リポソームが単層である。さらにもう一つの実施形態では、リポソームが500nm未満、または350nm未満、または300nm未満、好ましくは220±50nm、より好ましくは250nm未満の平均直径を有する。より一層好ましい一実施形態では、リポソームが200±10nmの平均直径を有する。 ある実施形態では、医薬組成物がAPN201を含む。ある実施形態では、医薬組成物がAPN201である。APN201は、1.6mg/mlリポソームrhSOD、1mg/mlメチルパラベン、5mg/mlカーボポール981NF、1.44mg/mlリン酸ナトリウム二塩基性二水和物、0.2mg/ml塩化カリウム、0.2mg/mlリン酸カリウム(一塩基性)、および8mg/ml塩化ナトリウムを含むリポソームrhSOD製剤である。1mlまで高品質水を加える。APN201のリポソームは、モル比が7:2:1の1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、コレステロールおよび1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホル-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DMPG)から構成され、220±50nmの平均直径を有する。リポソームrhSODと生産方法は、WO1996/14083およびWO2002/036257にも記載されている。本発明の医薬組成物はさらにヒアルロン酸も含みうる。ヒアルロン酸(ヒアルロナンとも呼ばれる)は医薬組成物に基いて0.1〜1重量%の濃度で医薬組成物中に存在しうる。ヒアルロン酸は250kDa〜1000kDa、好ましくは250kDa〜500kDaの分子質量を有しうる。一実施形態では、ヒアルロン酸が非動物性安定化ヒアルロン酸(NASHA)である。一実施形態では、NASHAがSynocrom(登録商標)および/またはDurolane(登録商標)である。好適なヒアルロナンゲルは、例えばBrown et al., J Invest Dermatol. 1999 Nov;113(5):740-6に記載されている。 一実施形態では、本発明の医薬組成物が経腸投与用、好ましくは経口投与用であり、例えば腸溶性のカプセル剤または錠剤の形態で投与することができる。もう一つの実施形態では、本発明の医薬組成物が非経口投与用、例えば静脈内、皮内もしくは皮下投与用、または直腸投与用、例えば坐剤としての直腸投与用である。 もう一つの実施形態では、本発明の医薬組成物が外用適用用であり、乳剤、懸濁剤、溶液、ローション剤、軟膏またはゲル剤の形態で投与するか、噴霧装置を使った噴霧によって投与することができる。 本発明の一実施形態では、医薬組成物が、スプレー缶またはスプレーボトルから患部皮膚領域への噴霧により、液剤として皮膚領域に適用される。これにより、患部皮膚と指または他の適用補助具との直接的な接触が避けられ、よって余計な感染の危険が低減する。 好ましくは、本発明の医薬組成物は、医薬組成物1mlあたり0.5〜10mgのrhSOD、好ましくは1.6±0.5mg/mlを含む。 本発明の医薬組成物の一実施形態では、医薬組成物に基いて0.01〜5重量%の濃度で、rhSODが存在する。 本発明の医薬組成物は、最も好ましくは、用途および適用方法に応じ、調製済のすぐに使える医薬組成物に基いて、≧0.01重量%、特に0.05〜5重量%の濃度のrhSODを含む。外用適用には、0.01〜2mg rhSOD/cm2皮膚面積または体表面積の量を使用しうる。他方、経口または非経口適用は、0.5〜50mg rhSOD/kg体重のrhSOD用量で行うと有利であり、治療中にSOD投薬を反復するには、用量を1日あたり0.5〜10mg rhSOD/kgに調節すると有利である。 本発明の医薬組成物は、とりわけ外用適用が意図されている場合は、さらに少なくとも1つの低脂肪または無脂肪賦形剤、好ましくは有機または無機ヒドロゲル、および/またはヒアルロン酸を含みうる。とりわけ好ましい本発明の一実施形態では、医薬組成物が、少なくとも1つのポリアクリル酸またはカルボマー、例えばカーボポール、最も好ましくはカーボポール981NFを含む。カーボポールは、最終製剤の0.5〜2重量%、最も好ましくは0.5重量%の濃度で存在しうる。 さらなる物質、例えば水、緩衝剤、保存剤および/またはスキンケア因子も、本発明の医薬組成物中に存在しうる。好ましい緩衝剤は、リン酸ナトリウム二塩基性二水和物、塩化カリウム、リン酸カリウム(一塩基性)、および塩化ナトリウムを含む群から選択される。好ましい保存剤はメチルパラベンである。 とりわけ好ましい本発明の一実施形態では、医薬組成物が、1.6mg/mlリポソームrhSOD、1mg/mlメチルパラベン、5mg/mlカーボポール981NF、1.44mg/mlリン酸ナトリウム二塩基性二水和物、0.2mg/ml塩化カリウム、0.2mg/mlリン酸カリウム(一塩基性)、および8mg/ml塩化ナトリウムを含む。1mlまで高品質水を加える。 本発明の医薬組成物は、好ましくは、1日あたり1、2、3、4、または5回投与される。 本発明の一特定態様では、本発明の医薬組成物が、少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の前、処置期間中および/または処置期間後に投与される。一実施形態では、本発明の医薬組成物による処置期間がEGFR阻害療法と一緒に開始される。もう一つの実施形態では、本発明の医薬組成物による処置期間が、EGFR阻害療法の開始に先立って開始される。さらにもう一つの実施形態では、本発明の医薬組成物が、少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間中に投与される。さらにもう一つの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物が、少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の終了後に投与される。ある実施形態では、少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の終了後に、本発明の医薬組成物による処置が継続される。最も好ましい一実施形態では、本発明の医薬組成物が、少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の前、処置期間中、および処置期間後に使用される。 一実施形態では、EGFR阻害剤が、可逆的または不可逆的EGR阻害剤である。一実施形態では、EGFR阻害剤がチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)および/または抗EGFR抗体である。ある実施形態では、TKIが、リガンド誘発性受容体自己リン酸化を停止することによってEGFRの細胞内ドメインに作用する低分子量分子である。ある実施形態では、抗EGFR抗体が、EGFRの細胞外ドメインを標的とするモノクローナル抗体である。 本発明の好ましい一実施形態では、EGFR阻害剤が抗EGFR抗体、例えば限定するわけではないが、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))およびパニツムマブ(Vectibix(登録商標))、マツズマブ(EMD72000とも呼ばれる)、ネシツムマブ、およびザルツムマブなどである。 もう一つの好ましい実施形態では、EGFR阻害剤がチロシンキナーゼ阻害剤、とりわけ低分子量EGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。そのような低分子量EGFRチロシンキナーゼ阻害剤には、例えばエルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、ラパチニブ(Tyverb(登録商標)/Tykerb(登録商標))、カネルチニブ、ペリチニブ(EKB-569とも呼ばれる)、アファチニブ、およびバンデタニブなどがある。ある実施形態において、本発明は、EGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を、その処置を必要とする対象において処置するための、rhSODを含む医薬組成物に関する。 本発明の一実施形態では、EGFR阻害の有害反応が、皮膚科学的毒性反応、すなわち皮膚、爪、粘膜、または毛髪を侵す有害反応である。とりわけ好ましい本発明の一実施形態では、EGFR阻害の有害反応が発疹、とりわけ、ざ瘡様皮疹(ALSR)である。本明細書にいう、ざ瘡様皮疹(acne like skin rash)には、ざ瘡様発疹(acneiform rash)、ざ瘡様丘疹膿疱性発疹(acne like papulopustular rash)、丘疹膿疱性疹(papulopustular eruption)、ざ瘡様疹(acneiform eruption)、面皰様発疹(pimple-like rash)、面皰様疹(pimple-like eruption)および毛包炎などの同義語が含まれるものとする。ALSRは顔面紅斑として始まり、続いて丘疹(小隆起)および膿疱(小さい膿袋)が、主に顔面および体幹上部に広がる。真のざ瘡とは異なり、膿疱は無菌性である(細菌を含んでいない)。したがって本明細書で使用するALSRという用語には、顔面紅斑、丘疹および膿疱などといったALSRのさまざまな相が、さらに含まれるものとする。ざ瘡様皮疹は、異常な上皮細胞ターンオーバー、毛包閉塞、毛包破裂、基底ケラチノサイトの早発分化、基底ケラチノサイトの成長停止、ケラチノサイトによる1つ以上の炎症性メディエーター(例えばサイトカインおよび/またはケモカイン)の放出、ケラチノサイトアポトーシス、および表皮障壁機能の破壊を特徴とするか、それらを伴いうる。ざ瘡様皮疹は、有害事象共通毒性規準または有害事象共通用語規準(Common Toxicity Criteria Common or Terminology Criteria of Adverse Events)(CTCAE)、例えば有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)バージョン3.0(DCTD、NCI、NIH、DHHS、2003年3月31日、2006年8月9日公開(http://ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/docs/ctcaev3.pdf))、国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)によるCTC(例えばNCI CTC規準バージョン2.0、3.0、または4.0)、世界保健機関(WHO)のCTC、サウス・ウエスト・オンコロジー・グループ(South West Oncology Group)(SWOG)のCTCに従って、または国際癌サポーティブケア学会(Multinational Association of Supportive Care in Cancer)(www.mascc.org)の皮膚毒性試験グループ(Skin Toxicity Study Group)によって開発されたMASCC EGFR阻害剤皮膚毒性ツール(MASCC EGFR Inhibitor Skin Toxicity Tool)(MESTT)に従って、類別することができる。Supportive Care in Cancer, Volume 19, Number 8, 1079-1095(DOI:10.1007/s00520-011-1197-6)も参照されたい。 一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべきEGFR阻害の有害反応が、上述のCTCまたはCTCAE(例えばNCIによるCTC)でグレード1、2、および/または3の有害反応、例えばざ瘡様皮疹である。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべきEGFR阻害の有害反応が、上述のCTCまたはCTCAE(例えばNCIによるCTC)でグレード2および/または3の有害反応、例えばざ瘡様皮疹である。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべきEGFR阻害の有害反応が、上述のCTCまたはCTCAE(例えばNCIによるCTC)でグレード2の有害反応、例えばざ瘡様皮疹である。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべきEGFR阻害の有害反応が、上述のCTCまたはCTCAE(例えばNCIによるCTC)でグレード3の有害反応、例えばざ瘡様皮疹である。 一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべき1つ以上の有害反応が、表皮および/または真皮の細胞における造血細胞(例えばCD45陽性細胞)の増加を特徴とする。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべき1つ以上の有害反応が、ケラチノサイトにおける好中球誘引性ケモカイン(例えばCCL2および/またはCCL5)の発現レベルの増加を特徴とする。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべき1つ以上の有害反応が、表皮および/または真皮の細胞におけるCD45陽性造血細胞の特異的サブセット、すなわちCD11b+Gr-1 high細胞(好中球)のレベルの増加を特徴とする。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべき1つ以上の有害反応が、メモリーT細胞(例えばCD44陽性細胞)の減少を特徴とする。一実施形態では、本発明に従って予防または処置されるべき1つ以上の有害反応が、TCRガンマ・デルタ(TCRγδ)-CD3e highの減少および/またはTCRガンマ・デルタ(TCRγδ)-CD3e low細胞の減少を特徴とする。 本発明に従って予防または処置されるべき、さらなる好ましい有害反応には、爪周炎、亀裂、色素沈着過剰、色素沈着低下、乾燥症(乾燥肌)、そう痒、落屑、粘膜炎、口内炎、過敏反応、脱毛症、長睫毛症(trichomegalia)、多毛症、手足皮膚反応(同義語:手足症候群(hand-foot syndrome)、先端紅斑、手掌足底紅斑、手-足症候群(hand-to-foot syndrome)、ブルグドルフ(Burgdorf)反応、手掌足底発赤知覚不全、手掌足底知覚不全、手掌足底紅皮症、手掌および足底の中毒性紅斑)、発毛遅延、びまん性脱毛、および/または例えば脆性など毛髪構造の変化などがあるが、これらに限るわけではない(このような皮膚科学的有害事象のさらなる説明については、例えば「Cancer Management」第14版;「Dermatologic Adverse Events Associated With Targeted Therapies」;Mario E. Lacouture, December 2011;Munk and El-Helou 2012, Dermatology Rounds Vol 7, Issue 3「Targeted Molecular Therapies - What are the Associated Cutaneous Risks」;およびSaif MW et al., 2010, Journal of the Pancreas 11(2):176-182を参照されたい)。 以下の実施例と図面によって本発明をさらに例示するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。出生後2日目(P2;A)、P10(B)およびP20(C)におけるEGFRdEP変異体(星印で示すもの)と対照同腹仔の表現型を示す図である。図1Dおよび図1Eは、EGFRdEP-ERマウスが次第に毛髪を失い、処置開始後2〜4週間以内に炎症を発症することを示している。EGFRdEPマウスの皮膚における炎症性浸潤を示す図である。表皮(A)および真皮(B)中に浸潤する造血細胞の数をフローサイトメトリーで定量分析すると、EGFR変異体の皮膚における炎症細胞の大量浸潤が示される。造血細胞は抗マウスCD45抗体で染色した;n=3。EGFRdEPケラチノサイトが好中球誘引性ケモカインを産生することを示す図である。定量リアルタイムPCR分析はCCL-2とCCL-5のレベルの増加を示すが、GM-CSF産生量は、同腹仔対照マウスと比較して、EGFRdEPからの培養ケラチノサイトではわずかに減少している;n=3。好中球が真皮に浸潤することを示す図である。3〜4月齢のEGFRdEPマウスの真皮への浸潤物の分析結果が、同腹仔対照と比較して図示されており、これは、CD11b+ Gr-1high好中球数の増加を示している;n=3。EGFRdEP-ERノックアウトマウスにおけるガンマ-デルタT細胞(γδ-T細胞)の表皮亜集団の活性化の改変の一代表例を示す図である;n=2。EGFRdEP-ERノックアウト個体を同腹仔対照と比較した場合の、γδ-T細胞-CD3e highおよびlow発現細胞におけるCD44表面マーカーの発現の低減の一代表例を示す図である。プラセボ(青い線/バー)と対比して、EGFRdEP-ERにおけるCD44表面発現に対するAPN201(リポソームrhSOD)処置の復帰効果(赤い線/バー)に注目されたい;n=2。両マウスモデルにおける皮膚のランゲルハンス細胞(真皮および表皮の細胞抽出物)に対するrhSODの効果を示す図である。マウスをAPN201で16日間処置した。n=3。ただし、2つのEGFRdEP群では、nが、プラセボ処置群については1、SOD処置については2であった。EGFRdEP-ERマウスを上述のようにTXで8週間処置してから、APN201処置を開始した。どちらのプラセボ処置ノックアウトモデルも、皮膚におけるランゲルハンス細胞のレベルの増加を示すが、SODで処置したノックアウト個体は、EGFR野生型マウスでの状況に似た有意に低いレベルを示した。実施例1:マウス動物モデル loxPで挟まれた(flox化された)EGFRアレルを保持するマウスを、Natarajan et al., 2007に記載されているように作製した。これらのマウスは、それらを、loxPで挟まれたDNA配列を認識して組み換えるCreリコンビナーゼを組織特異的に発現するトランスジェニックマウスと交配することにより、任意の所与の細胞タイプにおいてEGFRを欠失させることを可能にする。EGFRの表皮特異的欠失のために、2つのトランスジェニック系統が使用されている。K5-Creトランスジェニック系統(Tarutani et al., 1997)では、Creリコンビナーゼが、皮膚または食道にあるような重層上皮の基底細胞において、胎生E14.5以降、活性である。したがって、誕生時には既に、皮膚ではEGFRがノックアウトされている。若齢または成体マウスにおいてEGFRをノックアウトできるようにするには、K5-CreERマウスを使用することができる(Metzger and Chambon, 2001)。これらのマウスでは、Creリコンビナーゼが、変異型エストロゲン受容体(ER)に融合されており、エストロゲン類似体4-OHタモキシフェンがERに結合しない限り、Creリコンビナーゼが核内にシャトリングするのを防止している。したがって、全身性タモキシフェン処置で、若齢または成体マウスにおけるEGFRの欠如を誘導することができる。イニシエーションのために、1サイクルあたり、体重25gあたり1mgのタモキシフェン(Sigma;10mg/mlのヒマワリ油/エタノール混合物(10:1))を5日連続して腹腔内(i.p.)注射し、2日の休薬日を加えた(1サイクル=1週間)。このノックアウトケラチノサイトを維持するために、このイニシエーション後は、体重25gあたり1mgのタモキシフェンを、週に2回、i.p.注射した。無処置マウスの分析に先立って、またはAPN201処置の開始に先立って、マウスを少なくとも8週間はタモキシフェンで処置した。 腸上皮におけるEGFRの条件的欠失のために、EGFR flox化マウスをそれぞれVil-CreおよびVil-CreERCreERトランスジェニックマウスと交配することにより、これらのアプローチ、すなわち構成的欠失と誘導的欠失の両方を、応用することができる(el Marjou et al., 2004;Madison et al., 2002)。Vil-Cre/CreERマウスでは、小腸および大腸の全ての腺窩細胞および絨毛上皮細胞において、EGFRを欠失させることができる。 特異的に皮膚または腸においてEGFRを欠くマウスは、各組織におけるEGFRの機能を調べるための汎用性の高いツールである。これらの組織においてEGFRを欠くマウスの症状が、EGFR阻害剤で全身性に処置されたがん患者と、著しくオーバーラップすることから、これらのマウスは、一方では、EGFR阻害剤によって誘導される表現型の基礎にある機序を調べるための理想的なツールになり、また他方では、これらのマウスは、阻害剤処置の副作用を低減することを目的とする化合物を試験するための理想的なツールにもなる。実施例2:表皮および腸においてEGFRを欠くマウスの作製と特徴付け EGFR変異体マウスはさまざまな上皮欠陥を示し、毛に覆われた外皮を発生することができず、生後数週間以内に死亡する。そのうえ、K5-Creトランスジェニック系統(Tarutani et al., 1997)を使った、特異的に重層上皮においてEGFRを欠く条件的ノックアウトマウス(EGFRdEPマウス)は、EGFR-/-マウスと類似する表現型を発生する。EGFRdEP変異体は目が開いた状態で生まれ、毛に覆われた外皮を発生することができず、誕生後1ヶ月を超えて生き残るマウスはわずかである(図1A〜C)。最初の4週間を生き抜いたマウスは6月齢に達することができ、無毛であり、皮膚炎症の巨視的徴候および微視的徴候を示す。その上、4週齢までは、これらのマウスは対照より有意に小さい。さらに詳しい方法の説明、例えば真皮および表皮細胞懸濁液の単離や、フローサイトメトリー分析については、実施例4およびHolcmann M, Stoitner P et. al;J Immunol. 2009 Jul 15;183(2):1133-43を参照されたい。 エストロゲン類似体タモキシフェン(TX)の全身性投与または外用投与によってEGFRの欠失を誘導することができるマウスは、EGFRfl/flマウスを、誘導性K5-CreERトランスジェニック系統(Metzger and Chambon, 2001)と交配することによって作製された。これにより、所望する任意の所与の時点で、例えば若齢または成体マウスにおいて、表皮からEGFRを欠失させることが可能になる。EGFRdEP-ERマウスは、EGFRdEPマウスと同等に毛を失い、皮膚炎を示すが、早死は示さない(図1Dおよび図1E)。 表皮においてEGFRを欠くマウスは、EGFR阻害剤で処置されたがん患者に観察されるものとよく似た皮膚炎症を発症する。皮膚試料の分析により、EGFR変異体の皮膚には、炎症細胞の大量浸潤が示される(図2)。全体として、浸潤造血細胞のパーセンテージは、EGFRdEPマウスの表皮(図2A)および真皮(図2B)では、ほぼ3倍増加する。 EGFR阻害剤で処理されたヒトケラチノサイトがケモカインCCL2/MCP-1およびCCL5/RANTESをアップレギュレートし、これに対して、GM-CSFがダウンレギュレートされることは、以前に報告されている(Mascia et al., 2010;Mascia et al., 2003)。EGFRdEPマウスのケラチノサイトでも、本発明者らはCCL-2およびCCL-5のレベルの増加を見いだし、他方、GM-CSF産生量はわずかに低減したことから(図3)、このマウス表現型は、EGFR阻害剤で処置されたヒトの試料に見られる状況を模倣していることが実証された。 CCL-2およびCCL-5は好中球およびT細胞の誘引を担うケモカインである。本発明者らは次に、EGFRdEPマウスの皮膚への浸潤物にこれらの細胞を検出することができるかどうかを調べた。EGFR阻害剤で処置された患者の患部皮膚において記載のある好中球依存性毛包炎と同様に、本発明者らは、DCの他にも、真皮に浸潤するCD11b+ Gr-1high好中球およびT細胞の数が増加していることを見いだしたが、マクロファージの数には影響がなかった(図4および未掲載の追加データ)。 EGFR阻害剤処置後に発症するヒト皮膚病変との著しいオーバーラップゆえに、EGFRdEP、EGFRdEP-ERマウスは、ヒトがん患者においてTarceva(登録商標)(エルロチニブ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)、または他のEGFR阻害剤による処置時に記載のある重度の薬物有害事象「ざ瘡様皮膚発疹(ALSR)」を反映し、したがってEGFRシグナリングの欠如が引き起こす炎症性表現型に対するSOD処置の効果を研究するための貴重なツールになる。 上述のTX誘導性K5-CreERトランスジェニックマウスを使って、特異的に表皮において、EGFRを排除した。上述のように、このマウスモデルは、EGFR欠損時に皮膚炎症を発症し、EGFR阻害剤を投与されているヒトがん患者における重度の薬物有害事象「ざ瘡様皮膚発疹(ALSR)」を反映する。このマウスモデルを使用して、リポソーム封入rhSODのヒドロゲル製剤(APN201)の、抗炎症能について調べた。実施例3:組織特異的EGFRノックアウトマウスモデルにおけるSODの効果 表1に記載の処置計画に従って、マウスを、APN201(リポソームrhSOD)およびプラセボ(媒体対照)で、外用的に処置し、炎症性表現型に対する影響を調べた。処置期間の最後にマウスを屠殺し、T-リンパ球表面マーカーおよび好中球細胞表面マーカーの発現について染色した新鮮単離皮膚組織材料で、FACS分析を行った。 図5に詳細を示すように、EGFRdEP-ERノックアウト個体の表皮コンパートメントにおけるTCRγδ-CD3e陽性T細胞の活性化の変化を検出することができた。陽性TCRγδ-CD3e細胞(highおよびlow集団)の相対数は、野生型対照マウスにおける74%から、EGFRdEP-ERノックアウト個体では43%まで有意に低減する。この驚くべき結果は、EGFRシグナルを皮膚特異的に阻害した時の、マウスにおけるTCRγδ-CD3e受容体インターナリゼーションの明確な徴候であり、そしてそれゆえに、増加したT細胞活性化の明確な徴候である。 さらにまた、図6は、EGFRdEP-ERノックアウト個体では、CD44陽性細胞集団内で、陽性TCRγδ-CD3e細胞(highおよびlow集団)が著しくダウンレギュレートされることを示している。CD44は、ヒアルロン酸(HA)との相互作用によるその係留機能と、炎症の制御におけるその二重の役割とによってよく知られている、よく目につく細胞表面マーカーである。驚いたことに、のダウンレギュレーションは、外用APN201処置によって効率よく打ち消すことができる。CD44は、肺傷害におけるその抗炎症的役割で既に知られており、アポトーシス好中球および高分子質量HAと断片化HAとの両方の除去につながるTGF-β1の活性化を増加させることによって、炎症の解消に関与する。これに対し、CD44の喪失はこの解消を遅延しまたは妨げる(Teder et al., 2002)。リポソームカプセル化rhSOD製剤(APN201)は、EGFRが存在しないことによってダウンレギュレートされたCD44陽性細胞集団中の陽性TCRγδ-CD3e細胞(highおよびlow集団)を再活性化しまたは増加させることが、初めて証明された。 本動物データは、EGFR標的がん療法誘発性有害反応の処置においてAPN201または他のrhSODを新規薬物として使用するための根拠になる。実施例4:実施例1〜3および図1〜7の詳細な方法マウス背部皮膚細胞懸濁液の調製 マウスを頸椎脱臼によって屠殺した。マウスの背部皮膚を単離した後、皮下脂肪をそぎ落とし、試料を直ちに氷冷PBS中でインキュベートした。次に、PBSを0.8%トリプシンで置き換え、試料を37℃で45分間インキュベートした。表皮と真皮を分離し、DNAse-培地と共に37℃で30分間、撹拌(600rpm)しながらインキュベートした。試料を個別に6ウェルプレートに移し、5mlの氷冷ヴュルツブル(Wuerzburg)バッファー(5%FCS、5mM EDTA、4ng/ml DNAseI、PBS)を加えた。ガラスピペットを使って単細胞懸濁液を調製した後、セルトレーナーで濾過した。4℃において1100rpmで7分間の遠心分離後に、上清を捨て、細胞ペレットを1mlの氷冷PBSに再懸濁した。 免疫細胞コンパートメントに対するリポソームrhSODの影響をモニタリングするために、EGFRdEP ERマウスを、APN201または対照としての媒体(上述の空リポソーム、1mg/mlメチルパラベン、5mg/mlカーボポール981NF、1.44mg/mlリン酸ナトリウム二塩基性二水和物、0.2mg/ml塩化カリウム、0.2mg/mlリン酸カリウム(一塩基性)、8mg/ml塩化ナトリウム、および高品質水1mlまで)で、上述のように2または5週間にわたって外用処置し、免疫細胞のパーセンテージとそれらの活性化状態を、フローサイトメトリー分析によって分析した。表皮および真皮からの細胞懸濁液を、上述のように単離し、70μmナイロンメッシュで濾過し、計数し、抗CD16/CD32抗体(Biolegend)によるブロッキング後に、4℃のPBS+5%FCS中、mAbで30分間染色した。以下のmAbを使用した:抗CD3ε-PE(クローン145-2C11)、抗CD45-APC-Cy7(クローン30F11)、抗CD44 PE(クローンIM7)、抗TCRgd-APC(クローンGL-3)、抗CD11b-FITC(クローンM1/70.15)、および抗EpCAM(クローンG8.8)、以上、いずれもBiolegend製。最後の洗浄工程後に、7ADD(Sigma)を1μg/mLの最終濃度で加えることにより、死細胞を排除した。RNA単離 遠心分離工程は全て、予冷した遠心機で行った。表皮および真皮細胞懸濁液の単離後に、試料を400gで6分間遠心分離した。ペレットを1mlのTRIzol試薬(Invitrogen;米国カリフォルニア州カールズバッド)に再懸濁し、製造者のプロトコールに従ってRNAを単離した。200μlのクロロホルムを添加した後、試料を15秒間ボルテックスし、室温で3分間インキュベートした。12,000gで15分間の遠心分離によって相分離を達成した。水相を新しいチューブに移し、500μlのイソプロピルアルコールと共に室温で10分間インキュベートした。10分間の遠心分離工程後に、上清を捨て、1mlの75%エタノールで洗浄し、7,500gで10分間遠心分離した。ペレットを37℃で乾燥し、ヌクレアーゼフリー水に溶解した。全RNA濃度は、Nanodrop分光測光器(NanoDrop ND-1000;NanoDrop Technologies、デラウェア州ウィルミントン)を使って測定した。cDNA合成 逆転写は、SuperScriptII逆転写酵素(Invitrogen;米国カリフォルニア州カールズバッド)を使って、製造者のランダムプライマー用プロトコールに従い、1μlの全RNAで行った。 定量リアルタイムPCR.各遺伝子の転写レベルは、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems;米国カリフォルニア州カールズバッド)およびABI Prism 7000サーマルサイクラーを使用し、以下のプライマーを使って定量した:CCL2-1 AGG TCC CTG TCA TGC TTC TGCCL2-2 TCT GGA CCC ATT CCT TCT TGCCL5-3 ATATGGCTCGGACACCACTCCCL5-4 CCCACTTCTTCTCTGGGTTGmGM-CSF-F GGAGGATGTGGCTGCAGAATmGM-CSF-R GGCTGTAGACCACAATGCCC TATAボックス結合タンパク質(Tbp)への標準化後に、2-δδCt法を使って相対的発現レベルを算出した。統計的方法 値は全て、別段の明示的記載がある場合を除き、個々の試料の平均および標準偏差として表す。両側スチューデントt検定を使って試料を分析した。 本発明は以下の実施形態によってさらに例示される。 1.対象においてEGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物。 2.rhSODが組換えヒトCu/Zn-SOD、好ましくは組換えヒトSOD1である、実施形態1による医薬組成物。 3.rhSODがリポソームにカプセル化されている、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 4.リポソームが350nm未満、好ましくは220±50nm、より好ましくは250nm未満、最も好ましくは200±10nmの平均直径を有する、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 5.全身性投与用、好ましくは経口投与用である、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 6.外用適用用である、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 7.乳剤、懸濁剤、溶液、ローション剤、軟膏またはゲル剤の形態で投与されるか、噴霧装置を使った噴霧によって投与される、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 8.医薬組成物1gあたり0.5〜10mgのrhSOD、好ましくは1.6±0.5mg/gを含む、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 9.rhSODが医薬組成物に基いて0.01〜5重量%の濃度で存在する、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 10.rhSODが、0.01〜2mg/cm2皮膚面積もしくは体表面積の濃度で外用適用に使用されるか、または0.5〜50mg/kg体重の濃度で経口投与に使用される、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 11.医薬組成物が少なくとも1つの低脂肪または無脂肪賦形剤、好ましくは有機または無機ヒドロゲルをさらに含む、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 12.1日あたり1、2、3、4、または5回投与される、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 13.少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の前、処置期間中、および/または処置期間後に投与される、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 14.EGFR阻害剤が抗EGFR抗体またはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 15.EGFR阻害の有害反応がざ瘡様皮疹である、前記実施形態のいずれか一つによる医薬組成物。 対象においてEGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物。 rhSODが組換えヒトCu/Zn-SODである、請求項1に記載の医薬組成物。 rhSODが組換えヒトSOD1である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 rhSODがリポソームにカプセル化されている、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 リポソームが単層リポソームである、請求項4に記載の医薬組成物。 リポソームが500nm未満、または350nm未満、または300nm未満、または250nm未満の平均直径を有する、請求項4または5のいずれか一項に記載の医薬組成物。 リポソームが220±50nmまたは200±10nmの平均直径を有する、請求項6に記載の医薬組成物。 医薬組成物がAPN201である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 全身性投与用である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 経口投与用である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 外用適用用である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。 乳剤、懸濁剤、溶液、ローション剤、軟膏またはゲル剤の形態で投与されるか、噴霧装置を使った噴霧によって投与される、請求項11に記載の医薬組成物。 rhSODが医薬組成物に基いて0.01〜5重量%の濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 医薬組成物1gあたり0.5〜10mgのrhSODを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 医薬組成物1gあたり1.6±0.5mg/gのrhSODを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 rhSODが、0.01〜2mg rhSOD/cm2皮膚面積もしくは体表面積の濃度で外用適用に使用されるか、または0.5〜50mg rhSOD/kg体重の濃度で経口投与に使用される、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 さらに少なくとも1つの低脂肪または無脂肪賦形剤を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 賦形剤が、有機もしくは無機ヒドロゲル、および/またはヒアルロン酸である、請求項16に記載の医薬組成物。 1日あたり1、2、3、4、または5回投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 少なくとも1つのEGFR阻害剤による処置期間の前、処置期間中、および/または処置期間後に投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 EGFR阻害剤が抗EGFR抗体またはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 EGFR阻害の有害反応が、ざ瘡様皮疹、爪周炎、亀裂、色素沈着過剰、色素沈着低下、乾燥症(乾燥肌)、粘膜炎、口内炎、過敏症反応、脱毛症、長睫毛症、多毛症、および/または毛髪構造の変化から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 EGFR阻害の有害反応がざ瘡様皮疹である、前記請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。 本発明は、対象においてEGFR阻害剤による処置が引き起こす1つ以上の有害反応を予防または処置するための、組換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ(rhSOD)を含む医薬組成物を開示している。 配列表