タイトル: | 公表特許公報(A)_アレルギー性疾患又は大鬱病性障害(うつ病)の予防又は治療用組成物 |
出願番号: | 2014541247 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/00,A61K 36/71,A61K 36/23,A61K 36/07,A61P 37/06,A61P 37/08,A61P 29/00,A61P 27/16,A61P 25/24,A61P 17/00,A61P 11/06 |
霜出 義輝 JP 2015508052 公表特許公報(A) 20150316 2014541247 20130221 アレルギー性疾患又は大鬱病性障害(うつ病)の予防又は治療用組成物 霜出 義輝 597115141 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 霜出 義輝 JP PCT/JP2012/001231 20120223 A61K 36/00 20060101AFI20150217BHJP A61K 36/71 20060101ALI20150217BHJP A61K 36/23 20060101ALI20150217BHJP A61K 36/07 20060101ALI20150217BHJP A61P 37/06 20060101ALI20150217BHJP A61P 37/08 20060101ALI20150217BHJP A61P 29/00 20060101ALI20150217BHJP A61P 27/16 20060101ALI20150217BHJP A61P 25/24 20060101ALI20150217BHJP A61P 17/00 20060101ALI20150217BHJP A61P 11/06 20060101ALI20150217BHJP JPA61K35/78 WA61K35/78 FA61K35/78 NA61K35/84 AA61P37/06A61P37/08A61P29/00A61P27/16A61P25/24A61P17/00A61P11/06 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC JP2013000969 20130221 WO2013125225 20130829 17 20141021 4C088 4C088AA04 4C088AB32 4C088AB40 4C088CA11 4C088MA07 4C088NA05 4C088ZA12 4C088ZA34 4C088ZA59 4C088ZA89 4C088ZB08 4C088ZB11 4C088ZB13 本発明は漢方薬の合剤を含むアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎又は大鬱病性障害(うつ病)の予防又は治療用組成物に関する。 漢方薬は複数の生薬を組合せた方剤をいい、患者の体全体の調子を整えることで疾患を治療する。漢方薬は患者の症状(東洋医学における証(Sho))に基づいて生薬が選択され投与される。 アトピー性皮膚炎、気管支喘息、及びアレルギー性鼻炎に対しては種々の薬剤を用いた治療法が試みられているが、高率に治癒もしくは完全寛解に導入できる治療法は殆ど存在しない。これらの疾患に効果があるとされる漢方薬も存在するが、それらの漢方薬が上記疾患に対する治療効果があるという明確なエビデンスはなかった。従って、上記疾患を治癒させる漢方薬はないと当業界では考えられている。また、大鬱病性障害(うつ病)に効果があるとされる薬剤は種々存在するが、寛解率は約30%程度であり、寛解した例においても多くの場合、再発が認められる。 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)は黄連(オウレン)、黄ゴン(オウゴン)、黄柏(オウバク)および山梔子(サンシシ)の4種類の生薬から構成され、主に消化性潰瘍および胃炎などの胃腸疾患、のぼせ、めまい、神経症、不眠症、皮膚病、皮膚掻痒症などに効果があるとされる(特許文献1及び2を参照)。補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、蒼朮(ソウジュツ)若しくは白朮(ビャクジュツ)、柴胡(サイコ)、当帰(トウキ)、升麻(ショウマ)、陳皮(チンピ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)並びに甘草(カンゾウ)の10種類の生薬から構成され、胃腸の働きをよくして体力の回復を助け、体の疲れ、食欲不振、胃弱、夏やせ、こじれて長びくカゼ、痔、あるいは病中・病後、手術後などで体力が弱っているときに効果があるとされる(特許文献3を参照)。また、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)は茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)若しくは白朮(ビャクジュツ)、桂皮(ケイヒ)並びに甘草(カンゾウ)の4種類の生薬から構成され、めまいや立ちくらみの改善に効果があるとされる。さらに、補中益気湯等の漢方薬が免疫賦活能を有するとの報告もあった(特許文献4を参照)。 漢方薬がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎及び大鬱病性障害に対して効果があるという報告はあるが(非特許文献1〜3を参照)、漢方薬を混合した合剤が治癒若しくは完全寛解に導くという報告はなかった。特開2003-113108号公報特開2004-091408号公報再表2007/077606号公報特開2003-306442号公報Egashira Y, nagano H, et al: Ann NY Acad Sci. 1993, 685, 580-583.Ikeda Y et al: Jpn J Pharmacol,90(4): 328-336,2002Mizoguchi K et al: Pharmacol Biochem Behav, 75(2):419-425,2003 本発明は黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)及び補中益気湯(ホチュウエッキトウ)の合剤、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)の合剤を有効成分として含むアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎又は大鬱病性障害の治療用組成物の提供を目的とする。 ある種の漢方薬がアレルギー性疾患に効果があるという報告があったが、漢方薬はある疾患に対してではなく、患者ひとりひとりの症候(証)に対して処方されていた。証はある特定の疾患を表すのではなく、患者の体力、体質、症状等を含む患者の総合的な状態をいう。また、漢方薬に含まれる個々の生薬も薬理効果が明確になっていないものが多かった。従って、アレルギー性疾患に効果があると言われる漢方薬があったとしても、それはアレルギー性疾患と類似した症状、例えば、皮膚がかゆくなる等の症状を有する患者の証に対する漢方薬であって、1つの疾患としてのアレルギー性疾患の治療に効果がある漢方薬とすることはできなかった。実際、薬理効果を示すことにより、ある漢方薬がある疾患に対する治療薬として用いることができることを示すエビデンスは少なかった。 本発明者は、患者の証に基づかず、特定の疾患であるアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎又は大鬱病性障害の患者に対して効果を奏する漢方薬について鋭意検討を行った。その結果、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)及び補中益気湯(ホチュウエッキトウ)の合剤、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)の合剤が、生体においてマクロファージ系細胞の活性化を抑制することにより、これらの疾患を高効率で治癒させることを見出した。本発明者は患者にこれらの合剤を投与し効果を検証することにより、上記合剤がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎又は大鬱病性障害という特定の疾患の予防又は治療薬として用い得ることを見出し、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)及び補中益気湯(ホチュウエッキトウ)の合剤、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)の合剤を有効成分として含む治療用組成物に関する本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] 黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む免疫疾患の予防又は治療用組成物。[2] 免疫疾患がアレルギー性疾患である、[1]の免疫疾患の予防又は治療用組成物である、アレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。[3] アレルギー性疾患がアトピー性皮膚炎である、[2]のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。[4] アトピー性皮膚炎の予防又は治療用組成物であって、黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤を有効成分として含む、躯幹若しくは四肢の炎症に炎症があり、顔面、耳もしくは頭部に炎症が認められないアトピー性皮膚炎の治療に用いられる、[3]のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。[5] アトピー性皮膚炎の予防又は治療用組成物であって、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、頚部及びそれより上躯幹若しくは四肢の炎症の有無は問わず、顔面、耳もしくは頭部に炎症が認められるアトピー性皮膚炎の治療に用いられる、[3]のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。[6] アレルギー疾患が気管支喘息及びアレルギー性鼻炎からなる群から選択される、[2]の黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、アレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。[7] 免疫疾患が大鬱病性障害(うつ病)である、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、[1]の免疫疾患の治療用組成物である大鬱病性障害(うつ病)の治療用組成物。 本発明の黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む組成物は、証に基づくことなく、特定の疾患、すなわちアトピー性皮膚炎、気管支喘息若しくはアレルギー性鼻炎であるアレルギー性疾患あるいは大鬱病性障害(うつ病)の予防又は治療に用いることができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の組成物は、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ:Formula antidoti coptidis)及び補中益気湯(ホチュウエッキトウ:Formula repletionis animalis et supletionis medii)、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ:Formula glycyrrhizae atractylodis cinnamomi hoelen)を有効成分として含む、黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤である。 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)は、生薬である黄連(オウレン)(Copridis Rhizoma)、黄ごん(オウゴン)(Scutellaria Root)、黄柏(オウバク)(Phellodendron Bark)及び山梔子(サンシシ)(Gardenia Fruit)を配合した漢方薬である。成人における1日量は、それぞれの乾燥生薬の配合重量は、例えば黄連1.5g〜2.0g、黄ごん3.0g、黄柏1.5g〜3.0g、山梔子2.0g〜3.0gである。 以下、黄連、黄ごん、黄柏及び山梔子について説明するが、以下に示したもの以外のものを指すこともある。黄連は、キンポウゲ科(Ranunculaceae)のオウレンCoptis japonica Makinoまたは他の同属植物の根をほとんど除いた根茎を乾燥したものをいう。黄ゴンはシソ科(Labiatae)のコガネバナScutellaria baicalensis Georgiの周皮を除いた根を乾燥したものをいう。黄柏はミカン科(Rutaceae)キハダPhellodendron amurense RUPR.又はその他同属植物の周皮(コルク皮)を除いた樹皮を乾燥したものをいう。その他同属植物として例えばシナキハダPhellodendron chinense Schneiderが挙げられる。山梔子はアカネ科(Rubiaceae)のクチナシGardenia jasminoides ellis又はその他同属植物の果実を乾燥したものをいう。 黄連解毒湯は上記の4種類の生薬のエキス製剤を入手して上記配合重量で混合することにより製造することができる。若しくは、上記4種類の乾燥生薬を上記配合重量で600mlの湯に入れ1時間かけて300mlにまで煮出(濃縮)し、その300mlを1日量として製造することができる。それぞれの漢方薬1回100mlを混合し1回200mlとし毎食前に1日3回服用するようにする。それぞれの漢方薬1回150mlを混合し1回300mlとし朝夕食前に1日2回服用するようにすることもできる。 また、市販のものを用いることもできる。市販のものとして、オースギ黄連解毒湯エキスT錠(大杉製薬)、クラシエ黄連解毒湯エキス錠(クラシエ薬品)、コタロー黄連解毒湯エキス細粒(小太郎漢方製薬)、サカモト黄連解毒湯エキス顆粒-S(阪本漢法)、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)(ツムラ)、JPS黄連解毒湯エキス顆粒(調剤用)(ジェーピーエス)等がある。 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、生薬である人参(ニンジン)(Ginseng Root)、黄耆(オウギ)(Astragalus Root)、蒼朮(ソウジュツ)(Atractylodes Lancea Rhizoma)若しくは白朮(ビャクジュツ)(Atractylodis Rhizoma)、柴胡(サイコ)(Bupleurum Root)、当帰(トウキ)(Japanese Angelica Root)、升麻(ショウマ)(Cimicifuga Rhizoma)、陳皮(チンピ)(Citrus Unshiu Peel)、生姜(ショウキョウ)(Ginger Rhizoma)、大棗(タイソウ)(Jujube Fruit)並びに甘草(カンゾウ)(Glycyrrhiza Root)を配合した漢方薬である。成人における1日量は、それぞれの乾燥生薬の配合重量で、例えば、人参4.0g、黄耆3.0g、蒼朮若しくは白朮4.0g、柴胡2.0g、当帰3.0g、升麻1.0g、陳皮2.0g、生姜2.0g、大棗2.0g、甘草1.5gである。 以下、人参、黄耆、蒼朮若しくは白朮、柴胡、当帰、升麻、陳皮、生姜、大棗及び甘草について説明するが、以下に示したもの以外のものを指すこともある。人参はウコギ科(Araliaceae)のオタネニンジンPanax ginseng C.A.Meyerの細根を除いた根又はこれを軽く湯通し乾燥させたものをいう。黄耆はマメ科(Leguminosae)のキバナオウギAstragalus membranaceus Bunge又はその他同属植物の根を乾燥したものをいい、その他同属植物としてナイモウオウギA.mongholicus Bungeが挙げられる。蒼朮はキク科(Compositae)のホソバオケラAtractylodes lancea De Candolle又はその変種の根茎を乾燥したものをいい、その変種としてはシナオケラA. lancea DC. var. chinensis Kitamuraが挙げられる。白朮はキク科(Compositae)のオケラAtractylodes japonica Koidzumiの、通例周皮を除いた根茎(和白朮)又はオオバナオケラAtractylodes ovata De Candolleの根茎(唐白朮)をいう。柴胡(サイコ)はセリ科(Umbelliferae)のミシマサイコBupleurum falcatum L.またはその変種の根をいう。柴胡の変種として、マンシュウミシマサイコ(北柴胡)Bupleurum chinense DC、ホソバミシマサイコB. scorzoneraefolium Willd(南柴胡)、また、ナデシコ科(Caryophylaceae)のStellaria dichotoma L. var. Ianceolata Bungeも柴胡に含まれる。当帰はセリ科(Umbelliferae)のトウキAngelica acutiloba Kitagawa又はその他近縁植物の根で、通例湯通ししたものをいう。その他近縁植物として、ミヤマトウキ(ナンブトウキ、イワテトウキ)A. acutiloba Kitagawa subsp・iwatwnsis Kitagawa、カラトウキA. sinensis (Oliv.) Dielsが含まれる。升麻はキンポウゲ科(Ranunculaceae)のサラシナショウマCimicifuga simplex Wormskjord又はその他同属植物の根茎を乾燥したものをいい、その他同属植物としてC. dahurica (Turcz.) Maxim.(北升麻)やC. heracleifolia Komarov(関升麻)が含まれる。陳皮(チンピ)は、ミカン科(Rutaceae)のウンシュウミカンCitrus unshiu Markov.又はその他近縁植物の成熟した果皮を干したものをいう。その他近縁植物として、ポンカンやオレンジが挙げられる。生姜はショウガ科(Zingiberaceae)のショウガZingiber officinale Roscoeの根茎をいう。大棗はクロウメモドキ科(Rhamnaceae)のナツメZizyphus jujuba Miller var. inermis (Bunge) Rehder 又はその他の近縁植物の成熟果実を乾燥したものをいう。甘草はマメ科(Leguminosae)のウラルカンゾウGlycyrrhiza uralensis Fischer、ナンキンカンゾウGlycyrrhiza glabra L.等やその他同属植物の根および匍匐茎(ほふくけい)をいう。 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は上記の10種類の生薬のエキス製剤を入手して上記配合量で混合することにより製造することができる。若しくは、上記10種類の乾燥生薬を上記配合量で600mlの湯に入れ煮出し1時間かけて300mlにまで濃縮し、その300mlを1日量として製造することができる。また、市販のものを用いることもできる。市販のものとして、クラシエ補中益気湯エキス細粒(クラシエ薬品)、サンワ補中益気湯Aエキス錠(三和生薬)、ツムラ補中益気湯エキス顆粒(ツムラ)、補中益気湯エキス錠「コタロー」(小太郎漢方製薬)、ロート補中益気湯錠(ロート製薬)、JPS補中益気湯エキス顆粒(調剤用)(ジェーピーエス)等がある。 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)は、茯苓(ブクリョウ)(Hoelen)、蒼朮(ソウジュツ)(Atractylodes Lancea Rhizoma)若しくは白朮(ビャクジュツ)(Atractylodis Rhizoma)、桂皮(ケイヒ)(Cinnamon Bark)並びに甘草(カンゾウ)(Glycyrrhiza Root)を配合した生薬である。成人における1日量は、それぞれの乾燥生薬の配合重量比は、例えば、茯苓4g〜6g、蒼朮若しくは白朮2g〜3g、桂皮3g〜4g、甘草1g〜2gである。 以下、茯苓及び桂皮について説明するが、以下に示したもの以外のものを指すこともある。蒼朮若しくは白朮並びに甘草は上記のとおりである。 茯苓は、サルノコシカケ科(Polyporaceae)のマツホドPoria cocos Wolfの菌核をそのまま、または外層をほとんど除いて乾燥したものをいう。桂皮はクスノキ科(Lauraceae)のCinnamomum cassia Blume又はその他同属植物の樹皮を乾燥したものをいう。 苓桂朮甘湯は上記の4種類の生薬のエキス製剤を入手して上記配合量で混合することにより製造することができる。若しくは、上記4種類の乾燥生薬を上記配合量で600mlの湯に入れ1時間かけて300mlにまで煮出し、その300mlを1日量として製造することができる。また、市販のものを用いることもできる。市販のものとして、クラシエ苓桂朮甘湯エキス細粒(クラシエ薬品)、コタロー苓桂朮甘湯エキス細粒(小太郎漢方製薬)、ツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒(ツムラ)、オースギ苓桂朮甘湯エキスTG(大杉製薬)、JPS苓桂朮甘湯エキス顆粒(調剤用)(ジェーピーエス)等がある。 黄連解毒湯、補中益気湯又は苓桂朮甘湯に含まれる生薬のエキスは、例えば上記生薬を水若しくは熱水、エタノール、酢酸等でエキスを抽出し、スプレードライや凍結乾燥により乾燥し粉末として用いることができる。該粉末を混合し、黄連解毒湯、補中益気湯又は苓桂朮甘湯を製造し、これらを混合し合剤を製造する。 黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤は成人1日用量として黄連解毒湯乾燥エキス末1.3g〜2.71gと補中益気湯乾燥エキス末3.57g〜7gを混合すればよい。この場合、それぞれの漢方薬1回100mlを混合し1回200mlとし毎食前に1日3回服用するようにする。それぞれの漢方薬1回150mlを混合し1回300mlとし朝夕食前に1日2回服用するようにすることもできる。市販漢方薬エキスを用いる場合、市販黄連解毒湯エキス及び市販補中益気湯エキスの指定された1日量をそれぞれ3分割し、混合して合剤とし1日3回食前に服用するようにすればよい。また、市販黄連解毒湯エキス及び市販補中益気湯エキスの指定された1日量をそれぞれ2分割し、混合して1日2回朝夕食前に服用するようにしてもよい。また、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は成人1日用量として黄連解毒湯乾燥エキス末1.3g〜2.71gと苓桂朮甘湯乾燥エキス末1.5g〜7gを混合すればよい。この場合、それぞれの漢方薬1回100mlを混合し1回200mlとし毎食前に1日3回服用するようにする。それぞれの漢方薬1回150mlを混合し1回300mlとし朝夕食前に1日2回服用するようにすることもできる。市販漢方薬エキスを用いる場合、市販黄連解毒湯エキス及び市販苓桂朮甘湯の指定された1日量をそれぞれ3分割し、混合して1日3回食前に服用するようにすればよい。また、市販黄連解毒湯エキス及び市販苓桂朮甘湯の指定された1日量をそれぞれ2分割し、混合して1日2回朝夕食前に服用させるようにしてもよい。混合したものを通常の製剤に用いる適当な賦形剤、補助剤等を加えて製剤製造の常法に従って散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤等の経口製剤とすることにより本発明の組成物を得ることができる。また、その他適宜結合剤、崩壊剤、界面活性剤、矯味剤、香料を配合してもよい。賦形剤として例えば、デンプン、デキストリン、乳糖、白糖、マンニット、結晶セルロース、無水ケイ酸等が挙げられる。 本発明の組成物は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中黄連解毒湯及び補中益気湯、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯が0.1〜100重量%程度含まれる。本発明の組成物の患者への投与量は患者の年齢を考慮して、1日1回又は数回に分けて、数日から数十カ月にわたって投与すればよい。 本発明の黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤、並びに黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は、生体におけるマクロファージ系の免疫細胞の活性を低減させ、炎症反応やアレルギー反応を抑制し得る。該合剤を含む組成物は、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患、又は大鬱病性障害(major depressive disorder)の予防又は治療に用いることができる。大鬱病性障害は、うつ病とも呼ぶ。 黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤、並びに黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤はアトピー性皮膚炎の予防又は治療薬として用いることができる。アトピー性皮膚炎の炎症が躯幹若しくは四肢の炎症の有無にかかわらず、頭部顔面、耳若しくは頭部に存在する場合は、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を投与し、アトピー性皮膚炎の炎症が躯幹若しくは四肢に炎症があり、顔面、耳若しくは頭部に存在しない場合は黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤を投与すればよい。 投与量は、例えば成人における場合、市販医療用漢方エキス製剤で1日用量が7.5gあれば、各々の漢方薬2.5gずつの混合合剤を食前に1日3回経口投与する。各々の患者の反応により異なるが、患者の症状及び皮膚炎症が消失するまで投与する。また、患者が17歳未満の非成人の場合、表1に示す年齢別薬用量に従って、投与すればよい。 本発明の組成物の治療を行った場合、通常アトピー性皮膚炎の再発は認められないが、万一再発した場合は、最初の治療よりも短期間の投与、例えば2〜3週間の投与で炎症が認められなくなる。また、本発明の合剤によるアトピー性皮膚炎の治癒率は88%以上である。 黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は、アレルギー性疾患等の免疫疾患の予防又は治療に用いることができる。アレルギー性疾患としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等が含まれる。アトピー性皮膚炎患者は気管支喘息及びアレルギー性鼻炎を高率に合併しており、本発明の組成物はアトピー性皮膚炎患者が併発している気管支喘息及びアレルギー性鼻炎の予防又は治療に用いることができ、またアトピー性皮膚炎患者以外の患者の気管支喘息及びアレルギー性鼻炎の予防又は治療に用いることもできる。 例えば成人における場合、市販医療用漢方エキス製剤で1日用量が7.5gあれば、黄連解毒湯2.5gと苓桂朮甘湯の混合合剤を食前に1日3回経口投与する。症状消失までの期間は、中等症及び重症の気管支喘息患者200例に於いては16.2日であった。中等症以上のアレルギー性鼻炎123例においては、症状消失までの期間は9.3日であった。気管支喘息及びアレルギー性鼻炎患者に上気道感染時に症状が出現したが、上気道感染症治癒とともに症状は消失し、再発はなかった。投与期間は、いずれも1週間から14週であった。また、アトピー性皮膚炎では、皮膚症状、すなわち、炎症又は痒みが全くなくなった時点から約8週間以上は投与を継続することが好ましい。気管支喘息は、咳、息切れなどの症状が完全になくなった時点から、約8週間以上は投与を継続することが好ましい。アレルギー性鼻炎は、全く症状がなくなった時点から約4週間以上投与を継続することが好ましい。 本発明の合剤によるアレルギー性疾患の治癒率は93%以上である。 黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は、大鬱病性障害の予防又は治療に用いることができる。すなわち、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は、抗うつ作用を有する組成物として、あるいは抗うつ剤として用いることができる。大鬱病性障害については種々の分類方法が提案されているが、本発明においては、大鬱病性障害は、例えば、世界保健機構(World Health Organization)が発表している「国際疾病分類・第10版」(International Classification of Diseases, Injuries and Causes of Death. 10th version; ICD-10)において「大鬱病性障害」関連障害と分類されている疾患、又は米国精神医学会(American Psychiatric Association, APA)の「精神障害の診断と統計分類のための手引き」(Diagnostic Statistic Manual of Mental Disorders, DSM)のDSM-IVによる多軸診断によって評価される「大鬱病性障害」をいう。本発明において、大鬱病性障害様症状やうつ的症状も大鬱病性障害に含まれる。 本願発明者は、C型慢性肝炎に対してインターフェロン療法を行った症例群おけるインターフェロン療法が有効であった例とインターフェロン療法が無効であった例との個体における免疫的差異を研究していた時に、インターフェロン治療が成功しC型肝炎ウイルスが消失し肝機能が正常になった二十数症例中において3例が、ウイルス消失後にも免疫の活性が高い症例、すなわち可溶性CD35(sCD35)抗原活性が高く、マクロファージ系の活性が高い症例があったため、それらを追跡したところ、インターフェロン投与によりそのインターフェロンの副作用である大鬱病性障害になった患者であることを見出し、大鬱病性障害は免疫の活性化、つまりマクロファージ系を中心とした免疫学的炎症によるサイトカインのアンバランスが原因であることを見出した。また、アレルギー疾患を持つ患者が大鬱病性障害を高率に合併していることを見出した。すなわち、大鬱病性障害患者のうち88.8%の患者においてアレルギー疾患が併存している。また、アレルギー疾患を漢方薬で治療すると大鬱病性障害が寛解することを見出した。すなわち、大鬱病性障害は免疫学的炎症が原因となる疾患であると言える。加えて、大鬱病性障害が寛解する際に用いられた漢方薬の合剤が、黄連解毒湯と苓桂朮甘湯である場合に限り大鬱病性障害が寛解すること、及びアレルギー疾患の病歴がない大鬱病性障害患者においても上記漢方薬の合剤により大鬱病性障害が完全寛解することを見出した。これらの結果は、大鬱病性障害が免疫疾患であることを示している。アトピー性皮膚炎、気管支喘息及びアレルギー性鼻炎の炎症に樹状細胞などマクロファージ系細胞が関与していることと大鬱病性障害発症にCD35の活性が関与していることを統合すると、本発明の黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤は、マクロファージ系細胞の活性を抑制することができ、また可溶性CD35の活性を抑えることにより大鬱病性障害を予防又は治療することができる。投与量は、成人における市販医療用漢方薬エキスの1日用量が黄連解毒湯7.5gでありかつ苓桂朮甘湯が7.5gであった場合、黄連解毒湯2.5gと苓桂朮甘湯2.5gの混合合剤を1日3回食前に経口投与する。大鬱病性障害は、DSM-IVの症状がなくなり、SDSが40点未満になった時点から、約8週間以上は投与を継続することが好ましい。 本発明の組成物は、ヒトを含む哺乳動物を対象とする。ヒト以外の哺乳動物としては、サルなどの霊長類、ラット、マウスなどのげっ歯類、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ等が挙げられる。 さらに、本発明の組成物を食品、飲料品に混合し飲食品組成物又は飼料組成物として使用することができる。この際、飲食品又は飼料の1回の摂取分量に対して黄連解毒湯及び補中益気湯、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯が例えば市販医療用漢方薬エキスが人において1日量が7.5gの場合100mg/kgの量となるように配合すればよい。本発明の組成物は、粉末、顆粒状、液状、ペースト状などの飲食品組成物又は飼料組成物として用いることもできる。飲食品は、健康飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等を含む。ここで、特定保健用食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品をいう。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例1 黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤の調製 本実施例においては、市販漢方薬エキスを用い、市販黄連解毒湯エキス及び市販補中益気湯エキスの指定された1日量をそれぞれ3分割し、混合して合剤とし1日3回食前に服用するようにした。市販黄連解毒湯エキス及び市販補中益気湯エキスの指定された1日量をそれぞれ2分割し、混合して1日2回朝夕食前に服用することもできる。 17歳未満の治療対象である場合、17歳以上及び成人の1日薬用量を100%して表1に示す年齢別薬用量を用い投与した。実施例2 黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤の調製 実施例においては、市販漢方薬エキスを用い、市販黄連解毒湯エキス及び市販苓桂朮甘湯の指定された1日量をそれぞれ3分割し、混合して1日3回食前に服用するようにした。市販黄連解毒湯エキス及び市販苓桂朮甘湯の指定された1日量をそれぞれ2分割し、混合して1日2回朝夕食前に服用することもできる。 17歳未満の治療対象である場合、17歳以上及び成人の1日薬用量を100%して表1に示す年齢別薬用量を用い投与した。実施例3 アトピー性皮膚炎の治療 アトピー性皮膚炎の治療には、実施例1で調製した黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤、並びに実施例2で調製した黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を用いた。 アトピー性皮膚炎(AD)患者241例(平均年齢23.4歳、男性90例、女性151例、平均罹患期間10.5年)に対して本発明の組成物を用いて治療を行った。241例の患者のうち69例(28.6%)は最も重度であり、78例(32.4%)は重度であり、91例(37.8%)は中等度であり、3例(1.2%)は軽度の患者であった。ここで、重症度は日本国厚生労働省が2005年に発行した「厚生労働科学研究・アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」に従い行った。本発明の組成物による治療は、経口により行った。 躯幹若しくは四肢に炎症があり、顔面、耳若しくは頭部に炎症が存在しないアトピー性皮膚炎患者の場合は黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤を投与した。投与量は、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)及びツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)の1日量が7.5gであるので、それぞれの2.5gずつを混合して1日3回食前に投与した。 躯幹若しくは四肢の炎症の有無にかかわらず、頭部顔面、耳若しくは頭部に炎症が存在するアトピー性皮膚炎患者の場合は、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を投与した。投与量は、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)及びツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒(医療用)の1日量が7.5gであるので、それぞれの2.5gずつを混合して1日3回食前に投与した。 17歳未満の治療対象である場合、1日薬用量を表1の年齢別薬用量を用い投与した。治療開始時、各々の患者のアレルゲンを検索し陽性であったアレルゲンは回避させた。 193例(80.1%)において完全に治癒し、23例(9.5%)において著名改善が認められ、3例(1.2%)において改善が認められ、22例(9.1%)は途中で治療を中止した。治療を中止した患者を除くと、219例中の88.1%の患者で完全な治療効果が認められ、10.5%の患者で著名改善効果が認められた。治癒までに要した投与期間は平均11.3週間(1週〜65週)であり、治療に要した期間は平均15.0週間(1週〜98.7週)であった。実施例4 気管支喘息の治療方法 気管支喘息の治療には、実施例2で調製した黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を用いた。投与量は、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)及びツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒(医療用)の1日量が7.5gであるので、それぞれの2.5gずつを混合して1日3回食前に投与した。 中等症を超える重症度の持続性気管支喘息(BA)患者278例(平均年齢43.0歳、男:女=99:179)を対象にして本発明の組成物による治療を行った。標準治療群52例、漢方薬治療群226例であった。重症度診断、及び治療効果は、治療開始時と症状固定時にGuidelines (GINA report 2006, 2008)により診断した。気管支喘息重症(severe)の診断は、喘息発作である夜間症状がほぼ毎日明け方にあるもので、気管支喘息中等症(moderate)の診断は、喘息発作である夜間症状が明け方に週1回以上あるものである。同時にACT(Asthma Control Test)も検討した。標準治療においては、全例にコルチコステロイド+長時間作用型β2-アドレナリン作動薬(ICS+LABA)を用い、症例により、leukotorien拮抗薬を追加した。結果 治療開始時の疾患重症度は、両群の間に統計的に差はなかった。治療により全く症状が消失したものは、漢方治療群93.5%(200/214)(dropout12例)、標準治療群26.9%(14/52)であった。治療により全ての治療薬の必要がなくなったもの(完全寛解)は、漢方治療群93.5%、標準治療群25%であり、双方ともに漢方薬治療が有意に効果があった(P<0.01)。治療開始時と症状固定時におけるACTは、漢方薬治療群14.7vs24.8、標準治療群14.0vs20.3であり、有意に漢方薬治療が効果があった(P<0.01)。漢方薬治療群での症状消失までの期間は、16.2日(n=200)であった。 現在の気管支喘息(BA)の治療法はいまだは不十分であるが、本実施例により、東洋医学における漢方薬での治療法では殆どの患者に完全寛解が達成できることが示された。実施例5 アレルギー性鼻炎治療 アレルギー性鼻炎の治療には、実施例2で調製した黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を用いた。つまり、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)2.5gとツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒(医療用)2.5gを混合し合剤とし、1日3回食前に投与した。 アレルギー性鼻炎の診断は、鼻アレルギー診療ガイドライン(Practical Guideline for the Management of Allergic Rhinitis in Japan)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編、ライフ・サイエンス刊)を用いた。対象は、持続性アレルギー性鼻炎で中等度以上の症状のある患者であった。 持続性アレルギー性鼻炎(AR)患者123例に対して本発明の組成物を用いて治療を行った。本発明の組成物による治療は、経口投与により行った。効果判定は、治療により持続的に無症状となり、その後無治療となった場合を完全寛解と判定した。 アレルギー性鼻炎患者においては、完全寛解した患者の比率は93.5%であった。症状消失までの平均期間は9.3日であった。治療を行った患者において、副作用は認められず、治療後8週後において再発は認められなかった。実施例6 大鬱病性障害の治療方法 大鬱病性障害の治療には、実施例2で調製した黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を用いた。つまり、ツムラ黄連解毒湯エキス顆粒(医療用)2.5gとツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒(医療用)2.5gを混合し合剤とし、1日3回食前に投与した。 大鬱病性障害患者187例(平均年齢52.0歳、16歳〜94歳)(男:女=46:141)を対象にして本発明の組成物を用いた治療を行った。漢方治療を希望した大鬱病性障害患者163例を本発明の組成物で治療を行い(漢方治療群)、漢方薬治療を希望しなかった患者24例をコントロールとした。治療開始時の抗精神薬治療の有無は問わなかった。治療対象患者の診断と治療効果は、DSM-IV(Diagnostic Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition)とSDS(Zung Self-Rating Depression Scale)を用い、大鬱病性障害の寛解の判定もDMS-IVとSDSを用いた。また、SDSを用い治療前後及び経過観察に用い、客観的な差異を数値として表した。40点以上のSDSは、大鬱病性障害を示す。コントロール群においては、塩酸ミルナシプラン、パロキセチン塩酸塩水和物、塩酸セルトラリン及びスルピリドなどの抗大鬱病性障害薬投与が83.3%(20/24)の例に行われた。検定は、T-testとYates 2×2 chi square testを用いた。結果 大鬱病性障害患者183例において気管支喘息、アレルギー性鼻炎もしくはアレルギー性結膜炎の合併率は88.8%(166/187)であった。漢方治療群において脱落は20例であり全体の12.3%であった。漢方薬治療群の治療前の平均SDSは52.8(n=143)であり、コントロール群の観察開始時の平均SDSは52.6(n=24)であり統計学的に有意差はなかった。漢方薬治療群の正常化時の平均SDSは33.3(n=143)で有意(P<0.01)に低下していた。漢方薬治療群においてDMS-IVとSDSを用い診断し正常化したのは97.2%(139/143)であり、非正常化例は2.1%であった。コントロール群においては観察期間中(平均観察期間42.7週)の正常化率は12.5%(3/24)であり、漢方薬治療群においてコントロール群に対し有意(P<0.01)に高い大鬱病性障害寛解率が観察された。漢方薬治療群における寛解までの期間は9.7週(n=139)であり、投与期間の平均は20.2週(n=139)であった。11例に再発が認められたが、全例が容易に寛解した。漢方薬治療群において1例のみに薬剤性肝障害の副作用があったが、中止により正常に復帰した。 大鬱病性障害患者のほとんど全てにアレルギー症状が合併しており、これらの例において、漢方薬合剤(黄連解毒湯+苓桂朮甘湯の合剤)に使用により、両方の疾患が治癒した。つまり、大鬱病性障害はアレルギー性疾患又は免疫性疾患であると考えられ、大鬱病性障害のコントロールの新しい方法に結びつく。 世界的な大鬱病性障害の急激な増加とその治療の困難性を考えると、本実施例は、アトピー性皮膚炎、気管支喘息及びアレルギー性鼻炎を治癒し得る漢方薬で大鬱病性障害が容易に完全寛解することを示す。このことは、大鬱病性障害の病因が免疫応答亢進、若しくは免疫学的炎症であることを示し、本発明の組成物は、大鬱病性障害の完全寛解のための新しい治療として用い得ることを示す。 本発明の黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む組成物はアトピー性皮膚炎、気管支喘息又はアレルギー性鼻炎であるアレルギー性疾患あるいは大鬱病性障害の予防又は治療に利用することができる。 黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む免疫疾患の予防又は治療用組成物。 免疫疾患がアレルギー性疾患である、請求項1記載の免疫疾患の予防又は治療用組成物である、アレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。 アレルギー性疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項2記載のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。 アトピー性皮膚炎の予防又は治療用組成物であって、黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤を有効成分として含む、躯幹若しくは四肢の炎症に炎症があり、顔面、耳もしくは頭部に炎症が認められないアトピー性皮膚炎の治療に用いられる、請求項3記載のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。 アトピー性皮膚炎の予防又は治療用組成物であって、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、頚部及びそれより上躯幹若しくは四肢の炎症の有無は問わず、顔面、耳もしくは頭部に炎症が認められるアトピー性皮膚炎の治療に用いられる、請求項3記載のアレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。 アレルギー性疾患が気管支喘息及びアレルギー性鼻炎からなる群から選択される、請求項2記載の黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、アレルギー性疾患の予防又は治療用組成物。 免疫疾患が大鬱病性障害である、黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含む、請求項1記載の免疫疾患の治療用組成物である大鬱病性障害の治療用組成物。 【課題】黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤、あるいは黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含むアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎又は大鬱病性障害の治療用組成物の提供。【解決手段】黄連解毒湯及び補中益気湯の合剤又は黄連解毒湯及び苓桂朮甘湯の合剤を有効成分として含むアレルギー性疾患又は大鬱病性障害の予防又は治療用組成物。【選択図】なし