タイトル: | 特許公報(B1)_油脂成分を産生する方法、及び高級不飽和脂肪酸の製造方法 |
出願番号: | 2014541229 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12P 7/64 |
近藤 昭彦 蓮沼 誠久 賀 詩欣 皆川 純 西江 晴男 太郎田 博之 張 嘉修 JP 5746796 特許公報(B1) 20150515 2014541229 20140317 油脂成分を産生する方法、及び高級不飽和脂肪酸の製造方法 国立大学法人神戸大学 504150450 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 504261077 DIC株式会社 000002886 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 鈴木 三義 100094400 村山 靖彦 100108453 近藤 昭彦 蓮沼 誠久 賀 詩欣 皆川 純 西江 晴男 太郎田 博之 張 嘉修 JP 2013173417 20130823 20150708 C12P 7/64 20060101AFI20150618BHJP JPC12P7/64 C12P 7/64 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CiNii Science Direct 特開2013−102748(JP,A) 特開平07−075557(JP,A) Siaut M. et al.,Oil accumulation in the model green alga Chlamydomonas reinhardtii: characterization, variability be,BMC Biotechnology,2011年,Vol.11:7 Ranga Rao A. et al.,Effect of salinity on growth of green alga Botryococcus braunii and its constituents,Bioresource Technology,2007年,Vol.98,pp.560-564 中西昭仁他,1P-185 緑藻Chlamydomonas orbicularisを用いた海水塩存在下での油脂高生産条件の開発,日本生物工学会大会講演要旨集,2013年 8月25日,Vol.65,p.64 古橋賢一他,1P-195 培地塩濃度がBotryococcus brauniiからの炭化水素回収に与える影響,日本生物工学会大会講演要旨集,2013年 8月25日,Vol.65,p.66 10 NPMD FERM BP-22266 JP2014057177 20140317 22 20140821 特許法第30条第2項適用 第65回日本生物工学会大会の講演要旨集(発行日 平成25年 8月25日) (出願人による申告)平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 菅原 洋平 本発明は燃料や化学品原料等として有用な油脂成分の産生方法に関し、特に耐塩性の藻類を、段階的に塩濃度を増加させた培地で培養することを特徴とする油脂成分の産生方法に関する。 光合成生物は、光エネルギーを利用してCO2を固定する生物の総称であり、特に藻類は、培養条件が良好であれば光合成効率が高い光合成生物の一種である。藻類の工業的培養は半世紀以上にわたって行われており、工業原料、燃料、飼料及びファインケミカルの原料として、並びに健康食品としての需要があり、今後も藻類生産は産業上で重要な位置を占めると考えられる。藻類の培養過程において、CO2を固定化する工程を通じて各種有用な炭素成分が産生されることから、藻類の培養、及び培養による各種炭素成分の産生検討が盛んに行われてきている。今後、化石燃料の枯渇化が懸念されることから、代替燃料の早期の探索の必要性が高まり、また、需要者の健康志向の向上から、健康維持・向上に好ましい機能性化学品への需要が増加し、益々藻類の産生する有用成分への関心が高まってきている。従来、藻類を用いた、炭素成分の製造方法としては、例えば、燃料や化学品原料等として有用なエタノールの製造として、特許文献1には、海水の塩分濃度で生育して細胞内に澱粉を蓄積し、暗くかつ嫌気性雰囲気に保つことにより細胞内の澱粉よりエタノールを生産するクラミドモナス属に属する微細藻類Chlamydomonas sp.MT−JE−SH−1について記載がある。上記課題を解決する手段として、(1)海水の塩分濃度で生育させて細胞内に澱粉を蓄積し、暗くかつ嫌気性雰囲気に保つことにより、細胞内の澱粉よりエタノールを生産するクラミドモナス属に属する微細藻類Chlamydomonas sp.MT−JE−SH−1、及び(2)クラミドモナス属に属する微細藻類Chlamydomonas sp.MT−JE−SH−1を海水の塩分濃度で培養して細胞内に澱粉を蓄積させた後、培養した藻体を含むスラリーを、pHを6.0〜9.0の範囲に保ちながら暗黒かつ嫌気性雰囲気に保持してエタノールを生成させる方法が記載されている。 また、油脂成分の製造方法としては、特許文献2には、ラビリンチュラ科ラビリンチュラ属に属する4,7,10,13,16‐ドコサペンタエン酸生産菌L59株(FERM P−18987)であって、この微生物を培養し、菌体中に構成脂肪酸として4,7,10,13,16‐ドコサペンタエン酸を含む油脂を蓄積させたのち、菌体を分離し、分離した菌体から溶媒により前記油脂を抽出したのち、その抽出物を加水分解する方法が記載されている。非特許文献1では、海生藻類を用いた油脂産生と培養時における塩濃度の関係を検討しており、塩濃度が初期濃度で1.5Mを超える場合には、藻類の生育が抑制され、0.5〜1.0Mの場合には、高い含有率で油脂が生成されることが記載されている。特許第3837589号公報特許第4081794号公報ジャーナル オブ バイオサイエンス アンド バイオエンジニアリング,101巻、223-226ページ(2006年)(Journal of Bioscience and Bioengineering,Vol 101,223−226(2006)) 以上の背景技術では、藻類が有用である炭素成分を産生するものの生産効率が低いものが多く、需要者の要請に十分に答えられるものではなく、生産効率の高い藻類を用いた有用炭素成分の産生方法の提供が待ち望まれていた。 そこで、本発明の課題は、上記背景技術に鑑み、藻類を用いた有用炭素成分の高効率の産生方法を提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決するため、藻類の培養方法について詳細に検討を行い、課題解決に至った。 即ち、本発明では、以下に記載の油脂成分を産生する方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。[1]クラミドモナス(Chlamydomonas)属の耐塩性藻類を、段階的に塩濃度を増加させた培地で培養する油脂成分を産生する方法であって、培地中の塩濃度を2回以上増加させることを特徴とする油脂成分を産生する方法。[2]塩濃度を0.5%〜5%ずつ段階的に増加させた培地で培養する[1]に記載の油脂成分を産生する方法。[3]塩濃度を1日当たり、0.5%〜2%ずつ段階的に増加させた培地で培養する[1]又は[2]に記載の油脂成分を産生する方法。[4]培地における1段階目の塩濃度が、0.5〜5質量%の範囲である[1]〜[3]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法。[5]培養を窒素含有量が低い条件下で行う[1]〜[4]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法。[6]220nmの波長において、前記培地中の硝酸塩含有量を測定した場合、該含有量が10mg/L以下となるときに、2段階目の塩濃度を増加させる[1]〜[5]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法。[7]前記耐塩性藻類が、クラミドモナス・スピーシーズJSC4(Chlamydomonas sp. JSC4)FERM BP−22266株である[1]〜[6]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法。[8]前記培地が、海水、濃縮海水、又は人工海水を含むものである[1]〜[7]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法。[9][1]〜[8]のいずれか一つに記載の油脂成分を産生する方法により得られる油脂成分を加水分解することを特徴とする高級不飽和脂肪酸の製造方法。[10]前記高級不飽和脂肪酸が、オレイン酸、又はリノレン酸である[9]に記載の高級不飽和脂肪酸の製造方法。本発明によれば、藻類を用いた有用炭素成分を高効率で産生することのできる方法を提供することができる。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の栄養型細胞(好適生育環境、豊富な栄養条件下で旺盛に増殖する状態の細胞)の顕微鏡写真である。近縁クラミドモナス種の18S rDNA配列の比較である。近縁クラミドモナス種の18S rDNA配列の比較である。近縁クラミドモナス種の18S rDNA配列の比較である。OD220nmと、硝酸塩濃度の関係を示す検量線である。窒素十分条件下、及び窒素欠乏条件下で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)の脂肪酸の組成分析の結果である。異なる海水塩濃度で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定化能分析結果である。異なる海水塩濃度で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定化能分析結果である。異なる海水塩濃度で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定化能分析結果である。異なる海水塩濃度で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定化能分析結果である。2段階培養法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。2段階培養法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。2段階培養法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。2段階培養法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量、油脂生産速度、CO2固定化速度の時間経過プロファイルを示す結果である。グラジエント法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。グラジエント法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。グラジエント法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。グラジエント法でクラミドモナス・スピーシーズJSC4株を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量、油脂生産速度、CO2固定化速度の時間経過プロファイルを示す結果である。各方法で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)の脂肪酸の組成分析の結果である。バッチ法でクロレラ・ソロキニアナ NIES−2168株(Chlorella sorokiniana NIES-2168)を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。グラジエント法でクロレラ・ソロキニアナ NIES−2168株(Chlorella sorokiniana NIES-2168)を培養して得られたバイオマス濃度、油脂含量の時間経過プロファイルを示す結果である。[耐塩性藻類] 本発明で用いられる藻類は、耐塩性のものであれば特に限定されず、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ(Chlorella)属の藻類、ドナリエラ(Dunaliella)属の藻類、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類、ボツリオコッカス(Botryococcus)属の藻類、キートケロス・ムエレリ(Chaetoceros)属の藻類、クロロコッカム(Chlorecoccum)、ユーグレナ(Euglena)属の藻類、ヘマトコッカス (Haematococcus) 属の藻類、イソクリシス (Isochrysis) 属の藻類、ナビキュラ(Naviculaa)属の藻類、ネオクロリス(Neochloris)属の藻類、ポルフィリディウム(Porphyridium )属の藻類、プリムネシウム(Prymnesium)属の藻類、セネデス(Scenedes)属の藻類、スピルリナ(Spirulina)属の藻類、スピロギラ(Spirogyra)属の藻類、シネココッカス(Synechoccus)属の藻類、テトラセルミス(Tetraselmis)属の藻類が挙げられ、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ(Chlorella)属の藻類、ドナリエラ(Dunaliella)属の藻類、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類が好ましい。 クラミドモナスは、緑藻綱クラミドモナス目(もしくはオオヒゲマワリ目)に属する単細胞の鞭毛虫からなる属である。クラミドモナスの多くは淡水産であるが、海水中に生育するものもある。海生のクラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類とは、海産や汽水産及び海水塩を含む培地で生育可能なクラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類を言う。 クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類としては、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)等が挙げられる。 クロレラ(Chlorella)属の藻類としては、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)が挙げられ、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)が好ましい。クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)としては、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)NIES-2168株が挙げられる。ドナリエラ(Dunaliella)属の藻類としては、ドナリエラ・ビオクラータ(Dunaliella bioculata)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)が挙げられる。ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)としては、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)NIES-2168株が挙げられる。ドナリエラ・ビオクラータ(Dunaliella bioculata)としては、ドナリエラ・ビオクラータ(Dunaliella bioculata)NIES-2253株が挙げられる。ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)としては、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)NIES-2258株が挙げられる。ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類としては、ナンノクロロプシス オキュラータ(Nannochloropsis oculata)が挙げられる。ナンノクロロプシス オキュラータ(Nannochloropsis oculata)としては、ナンノクロロプシス オキュラータ(Nannochloropsis oculata)NIES-2146株が挙げられる。 更に、上記課題解決のため、本発明者らは目的とする油脂成分を高効率で産生する藻類の探索を行い、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)が特に好ましいことを見出した。[クラミドモナス・スピーシーズJSC4株]本発明で用いられるクラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)の分離精製は以下の手順により行った。即ち、台湾中西部の海岸で採取した汽水試料から、常法により1細胞だけを単離し、無菌化した。これを、以下に組成を示すHSM寒天培地を用いて、20℃、8〜15μmol photons/m2/sec、12時間明期12時間暗期の光条件で培養し、2週間に1度植え継ぐことで藻株を確立し、形態観察その他よりクラミドモナス属の緑藻と同定して、JSC4株と名づけた。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の藻類学的性質は以下の通りである。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の栄養型細胞(好適生育環境、豊富な栄養条件下で旺盛に増殖する状態の細胞)の顕微鏡写真を図1に示す。(形態的性質)(1)栄養型細胞は、楕円形であり、大きさは、約10μmである。栄養型細胞において、細胞長の約等倍の鞭毛を2本有する。栄養型細胞は、運動性を有する。(2)栄養型細胞は外囲を細胞壁に囲まれ、内部に核、葉緑体が一個存在し、その他、ミトコンドリア、ゴルジ体、液胞、油滴等が認められる。葉緑体内の基底部にピレノイドを有する。(生殖様式)(1)内生胞子は栄養細胞内に二〜八個形成され、細胞内に均等に分布する。内生胞子はその細胞内に核、葉緑体を一個有する。(2)二分裂による増殖も行う。(生理学・生化学性状)(1)培養液:海産や汽水産及び海水塩を含む培養液中で生育できる。(2)光合成能:光合成による光独立栄養生育ができる。(3)含有色素:クロロフィルa、クロロフィルb、及び他のカロテノイド類。(4)同化貯蔵物質:澱粉。(5)生育温度域:15℃〜35℃(至適温度25℃)。(6)生育pH域:pH6.0〜10.0(至適pHは7.0)。 以上の点から、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株は、形態観察その他よりクラミドモナス属の緑藻と同定した。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の18S rDNA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。図2〜図4は、近縁クラミドモナス種の18S rDNA配列を比較したものである。網掛けは、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の分子マーカー配列である。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の最近縁種は、Chlamydomonas debaryanaであるが、分子マーカー配列に着目すれば同一種でないことは明らかである。このように、18S rDNA配列の比較の点から、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株を新規の微細藻類株と判断した。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株は、2014年3月5日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)にプタベスト条約の規定下で受託番号FERM BP−22266として国際寄託されている。[培地] 本発明で用いられる培地は、耐塩性藻類が生育する条件であれば制限はないが、海水塩を含む培地であって、海水、濃縮海水、又は人工海水を含むものが油脂産生能を向上させることから、特に好ましい。 例えば、このような培地として、特に改変Bold 3N培地を好ましく用いることができる。 その他用いることのできる培地として、改変Basal培地、改変Bristol培地、BG−11培地、改変HSM培地などを挙げることができるが、高効率で油脂成分を産生できることから、改変Bold 3N培地が特に好ましい。本発明に用いられる培養の特徴として、窒素含有量が低い条件下での培養が挙げられる。窒素含有量が低い条件下での培養は、増殖に伴う窒素消費による窒素欠乏状態下における培養であっても、藻体を窒素含有量が低い培地に移植させる等による培養であってもよい。本発明において、培地中に含まれる窒素含有量は、培地中に含まれる硝酸塩の含有量を220nmの波長で測定することにより評価することができる。培地中に含まれる窒素含有量は、この方法に限定されるものではなく、 例えばイオンセンサーや発色試薬による吸光度測定などで、硝酸塩やアン モニウム塩の含有量を測定することにより評価することもできる。測定法は、1999年にCollosらによって報告された方法を改変して行った(文献:ジャーナル オブ アプライド ファイコロジー,11巻、179−184ページ(1999年)(Journal of Applied Phycology,Volume 11, P179−184 (1999))。詳細な測定法は、下記実施例に記載する。 本発明で使用された改変Bold 3N培地の組成を以下に記す。(海水塩) 本発明では、培地中の塩濃度(培地全体に占める質量%)を段階的に増加させる培養法が、油脂成分の産生能に大きく影響を及ぼすことを見出した。よって、例えば、上記培地に所定濃度の海水塩を段階的に添加することで、油脂成分の産生効率を向上させることができる。 本発明で使用が可能な海水塩は、公知慣用の海水塩を挙げることができる。本発明で用いられる海水塩は、海水を蒸発乾固させて得られたものであっても、海水や海水の濃縮液を用いてもよいが、培地中に含まれる濃度を調整するためには、海水の固形分である海水塩を用いる方がより好ましい。また、人工海水も用いることができる。本発明で用いられる人工海水は、海水の組成を模して人工的に調整された粉末や濃縮液のことであり、海水を必要とする生物の飼育や培養において、入手性、再現性、廉価性などの理由から天然海水の代用となるものである。市販の人工海水を用いることができるが、市販の人工海水は塩化ナトリウムを主成分として、様々な無機塩類やpH調整剤などが含まれており、用途により水道水や蒸留水で希釈することによって海水に近い成分となるものである。 その他、上記の海水塩等でなくても、本発明の目的に適う培地として使用が可能な塩を調整して用いることができる。(塩濃度の段階的制御) 本発明では、塩濃度の段階的な制御が、油脂産生効率に大きく影響することを見出した。 実施例で後述するように、藻類を高塩濃度下で培養すると、増殖阻害を受けるが、油脂の含量が増加することが明らかとなった。従って、油脂の生産量を増大させるために、低塩濃度下で藻類を培養して、所定の細胞数まで増加させた後、培地中の塩濃度を増加させ、高塩濃度下で藻類を培養して、細胞中の油脂の含量を増加させることが好ましい。 本発明において、耐塩性藻類を培養し始めた時に用いた培地中の塩濃度を「1段階目の塩濃度」という。培地中の塩濃度を1回のみ増加させた場合、集菌時の培地中の塩濃度は「2段階目の塩濃度」となる。塩濃度を多段階増加させて培養する場合、例えば、培地中の塩濃度をN−1回(Nは、3以上の整数を示す。)増加させた場合、集菌時の培地中の塩濃度は「N段階目の塩濃度」となる。 藻類の増殖効率を高める観点から、培地における1段階目の塩濃度が、0.5〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜3質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲であることが更に好ましい。1段階目の培養期間としては、用いる耐塩性藻類の増殖速度によって異なるが、1日〜3日が好ましい。 上述したように、油脂の含量を増加させるために、窒素含有量が低い条件下で培養することが好ましい。窒素含有量が低い条件下での培養は、増殖に伴う窒素消費による窒素欠乏状態下における培養であっても、藻体を窒素含有量が低い培地に移植させる等による培養であってもよい。藻類を窒素含有量が低い条件下で培養すると、増殖阻害を受ける観点から、油脂の生産量を増大させるために、窒素含有量が十分な条件下で藻類を培養して、所定の細胞数まで増加させた後、窒素含有量が低い条件下で培養して、細胞中の油脂の含量を増加させることが好ましい。 塩濃度の制御に加えて、窒素含有量を制御することにより、更に油脂産生効率を増大させることができる。かかる観点から、220nmの波長において、前記培地中の硝酸塩含有量を測定した場合、該含有量が10mg/L以下となるときに、2段階目の塩濃度を増加させることが好ましい。 本発明の油性成分を生産する方法において、塩濃度を0.5%〜5%ずつ段階的に増加させた培地で、耐塩性藻類を培養することが好ましい。 塩濃度の段階的制御方法としては、培地中の塩濃度を1回のみ増加させる「2段階培養法」と培地中の塩濃度をN−1回(Nは、3以上の整数を示す。)増加させる「多段階培養法(グラジエント法ともいう。)」が挙げられる。尚、本発明において、塩濃度一定の培養方法をバッチ法という。(2段階培養法) 2段階培養法において、増加させる塩濃度は、0.5%〜5%が好ましく、1%〜5%がより好ましい。2段階目の培養期間としては、用いる耐塩性藻類の増殖速度によって異なるが、3日〜8日が好ましい。(多段階培養法) 多段階培養法において、段階ごとに増加させる塩濃度は、0.5%〜2%が好ましく、0.5%〜1.5%がより好ましい。段階ごとに増加させる塩濃度は、それぞれ異なっていてもよいが、培養が容易である観点から同じであることが好ましい。同様に、各段階における培養期間は、それぞれ異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。各段階における培養期間は、1日〜3日が好ましく、1日がより好ましい。 段階数(上述したN)としては、3〜8が好ましく、4〜6がより好ましい。2段階目〜N段階目の相培養期間としては、用いる耐塩性藻類の増殖速度によって異なるが、3日〜8日が好ましく、4日〜6日がより好ましい。 なお、藻類の大量培養を想定した場合には、海水を用いることに利便性があるが、塩化ナトリウムを用いても、油脂産生に対して同様の効果を有し、好ましく用いることができる。(培養方法) 本発明において、耐塩性藻類の培養方法は、公知慣用の方法で行うことができる。 培養においては、本発明では前記培地を用いることができる。 本発明に用いる培養方法としては、静置培養法を用いることも可能であるが、藻類の藻体生産性と油脂成分の生産性を考えると、振盪培養法又は深部通気撹拌培養法による培養が好ましい。振盪培養は、往復振盪であっても、回転振盪であってもよい。培養温度としては、通常15〜40℃で藻体産生を行なうことが可能である。 上述のように耐塩性藻類を、上記培養方法で培養すると、安定した増殖を示すばかりでなく、油脂成分の割合が高度に高い耐塩性藻類が得られる。 また、光条件は、光合成可能な条件下であれば特に制限はないが、連続光とすることが好ましい。培養終了後、粗油脂を得る方法としての培養液からの藻体の回収は、一般的な方法である遠心分離法や、濾紙及びガラスフィルターによる濾過法等により行なうことが可能である。このようにして回収した藻体は、そのままか、あるいは、凍結乾燥法、熱風乾燥法などにより乾燥藻体とすることができる。得られた藻体又はその乾燥藻体から、油脂成分を抽出することが可能である。本発明では、通常炭酸ガスを供給して行うことが好ましい。炭酸ガスの供給法として、公知慣用の方法で行うことができ、例えば、培養液中に通気することにより、好適に炭酸ガスの供給を行うことができる。 本発明で産生される油脂成分は、トリグリセリドであることに特徴を有する。トリグリセリドは、グリセリンのアシル体であり、アルキルエステル化することにより、バイオディーゼル燃料としての利用が期待されている。 本発明においてトリグリセリドとして挙げられる化合物としては、グリセリンと脂肪酸とのエステル体であり、脂肪酸としては炭素数10〜30の高級飽和或いは不飽和脂肪酸である。また、本発明は、バイオディーゼル燃料として有用な高級不飽和脂肪酸の製造方法も提供する。即ち、本発明の方法において得られる油脂成分を加水分解することにより、燃焼効率の高い高級不飽和脂肪酸を製造することができる。燃焼効率の高い高級不飽和脂肪酸として、オレイン酸、又はリノレン酸を挙げることができ、燃焼効率が特に高いことから特にオレイン酸が好ましい。上記高級不飽和脂肪酸を産生するための最適海水塩濃度の検討の結果、0.5〜5質量%が好ましく、特に好ましくは2.0〜5質量%の範囲を挙げることができる。(油脂の抽出方法)藻体から油脂成分を抽出する方法としては、通常の油脂の抽出方法を用いることができ、特に、Folch法やBligh−Dyer法に代表されるクロロホルム/メタノール系等の有機溶媒による一般的な抽出方法を用いることが可能であるが、これらに限らない。 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(培養液中の藻濃度の測定) フォトバイオリアクターからの液体試料を、予め精密に秤量した0.45μm孔径のフィルターでろ過し、これを恒量になるまで凍結乾燥して精密に秤量した。ろ過前後のフィルター質量の差を、ろ過した液体試料量で割り、藻濃度を決定した。(培養液中の窒素含有量の測定) フォトバイオリアクターからの液体試料を、0.22μm孔径のフィルターでろ過し、蒸留水で20倍に希釈した。硝酸塩含有量はUV/VIS分光光度計を用いて、220nm(OD220)の波長における光学濃度によって決定した。 即ち、OD220における値を、図5に示すOD220と硝酸塩含有量の検量線を用いて、硝酸塩濃度を換算した。(藻体中の油脂成分の分析) 凍結乾燥した藻体15mgを、直径0.5mmのガラスビーズ0.5gが入ったマイクロバイアルに取り、これに1mLの0.5M濃度KOH溶液を加えて、ビーズビーター式ホモジナイザーで40分破砕処理した。処理液を7mLの0.5M濃度KOH溶液で共洗いしながら50mL容耐熱ガラスビンに移して密栓し、ウオーターバス中で100℃15分間処理した。室温まで冷却後、8mLの0.7M濃度HClメタノール溶液と10mLの14%(v/v)3フッ化ホウ素メタノール溶液(シグマ・アルドリッチ社)を加えて、再度ウオーターバス中で100℃15分間処理した。室温まで冷却後、4mLの飽和食塩水と3mLのn−へキサンを加えて、ボルテックスミキサーで5分間撹拌した。撹拌した液を50mL容プラスチック遠沈管に移して7,000rpmで2分間遠心分離した。上清100μLをエッペンドルフチューブに取り、890μLのn−へキサンと10μLの内部標準物質(ペンタデカン酸メチル、シグマ社)を加えた後、10,000rpmで3分間遠心分離し、上清をGCMS分析装置で分析した。 GCMS分析装置(GCMS−QP2010Plus、島津製作所)には、DB−23キャピラリーカラム(0.25mmφ×60m、0.15μm膜厚、アジレント・テクノロジー社)を装着し、ヘリウムガスを毎分2.3mL流した。インジェクター、イオン源及びインターフェース温度は、それぞれ230、230及び250℃に設定し、カラム温度は、試料注入後1分間は50℃で保持後に毎分25℃で175℃まで昇温し、さらに毎分4℃で230℃まで昇温後5分間保持した。上記上清1μLを注入して、スプリット比5:1でカラム分離して、脂肪酸メチルエステルの各成分を50〜500m/zのフルスキャンモードで検出し、内部標準の添加量を基に定量して、これを油脂量とした。(CO2固定化能の分析) バイオマスの濃度(g/L)の時間経過プロファイルを用いて、乾燥藻体重量当たりの時間プロットに対する増殖率を計算した。 バイオマス生産速度(Pbiomass;mg/L/d)は、以下の式で求められる。 式中、ΔXは、培養時間Δt(d)におけるバイオマスの濃度(mg/L)の変化量を示す。 更に、CO2固定化速度(PCO2;mg/L/d)は、以下の式で求められる。 藻類のバイオマスの典型的な分子式として、CO0.48H1.83N0.11P0.01を用いた。 CO2固定化率(%)は、以下の式で求められる。 式中、CCO2,influent及びCCO2,effluentは、それぞれCO2の流入濃度及び流出濃度を示す。(参考例1)(培地の比較)表3に組成を示した改変Basal培地、改変Bristol培地、BG−11培地、改変Bold 3N培地、改変HSM(High Salt medium)培地を各1リッター調製し、それぞれ容量1リッターのフォトバイオリアクターに仕込んでオートクレーブ滅菌した。各々のフォトバイオリアクターに、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)を藻濃度が約100mg/Lとなるよう接種し、室温、200μmol photons/m2/secの強度の蛍光灯光を24時間連続照射、2%炭酸ガス含有空気を毎分50mL通気、スターラーで200rpm撹拌、の条件で5.7日間培養した。各培養液の油脂成分を分析した結果を、表4に示した。藻体中の油脂含量、培養液当りの油脂生産速度とも、改変Bold 3N培地が最も高かった。(参考例2)(海水塩の添加効果(バッチ法)) 表3に組成を示した改変Bold 3N培地のSea Salt添加量を、0.5%、2%、3.5%、及び5%(w/v)とした培地を各1リッター調製し、それぞれ容量1リッターのフォトバイオリアクターに仕込んでオートクレーブ滅菌した。各々のフォトバイオリアクターに、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)を藻濃度が約100mg/Lとなるよう接種し、室温、200μmol photons/m2/secの強度の蛍光灯光を24時間連続照射、2%炭酸ガス含有空気を毎分50mL通気、スターラーで200rpm撹拌、の条件で10日間培養した。本発明において、塩濃度一定の培養方法をバッチ法という。 いずれも、藻体の増殖とともに培養液中の硝酸塩含有量は低下し、1.9ないし2.7日間で10mg/L以下になった。その後藻体中の油脂含量と油脂生産速度は、著しく増加した。特に海水塩の添加量が2%、3.5%、及び5%添加した場合、藻体中の油脂含量は50%以上の高含量に達し、最大の油脂生産速度は140mg/L/d以上と非常に高かった。(参考例3)(窒素欠乏条件下での培養がバイオディーゼルの品質にもたらす効果) バイオディーゼルの品質は、飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合で評価される。バイオディーゼル中の飽和脂肪酸含量は、高温下での酸化抑制に影響する。その一方、不飽和脂肪酸含量は、低温下での流動性に影響する。バイオディーゼル中の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が等量であることが、バイオディーゼルに、低温下及び高温下における良好な特性を付与するために重要である。脂肪酸のプロファイルは、培地中の栄養分、外気温、及び光強度から生じる環境ストレスに影響する。これらのストレスのうち、窒素欠乏条件は、藻類の脂肪代謝に影響する最も重要な因子である。 窒素十分条件下、及び窒素欠乏条件下で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株(Chlamydomonas sp. JSC4)の脂肪酸の組成を図6に示す。図6において、対照として、大豆油由来の脂肪酸の組成と比較している。クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の培養条件は、参考例2と同様である。 図6に示すように、窒素欠乏条件下では、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株における脂肪の蓄積は、オレイン酸(C18:1)が増加傾向にあり、リノレン酸(C18:3)が減少傾向にあることが確認された。バイオディーゼルの特性によると、オレイン酸を高い割合で含有することにより、より良い酸化安定性と低い外気温下における適切な目詰まり点(CFPP)を備える。更に、欧州バイオ燃料規格(EN14214)に基づくと、リノレン酸(C18:3)の含有量は、最大12%(m/m)に限定されている。よって、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株により生産される油脂は、バイオ燃料を製造するために適切な品質を有していることが確認された。 更に、図6に示すように、大豆油由来の脂肪酸の組成と比較して、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株は、高い飽和脂肪酸含有量と低い多価不飽和脂肪酸(n≧2)含有量示した。一般的に油脂における飽和脂肪酸の高含有は、バイオ燃料に優れた流動性と密度をもたらす。一方、多価不飽和脂肪酸の低含有は、低い外気温下での酸化安定性の増加のみならず、適切な目詰まり点の付与をもたらす。よって、油脂において適切な脂肪酸のプロファイルを有するという観点から、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株は、バイオ燃料の製造に適切な株であることが確認された。(参考例4)(海水塩と窒素源の制御が、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定にもたらす効果) 異なる海水塩濃度で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株のCO2固定化能を一定時間ごとに調べた。結果を図7〜図10に示す。図7〜図10に示すように、異なる海水塩濃度におけるCO2固定化率とCO2固定速度は、時間経過全般にわたり同様の傾向を示した。即ち、培養2−3日後に最高値に達した後、徐々に減少するベル型のカーブを示した。 図7〜図10において、CO2固定化率及びCO2固定速度の最大値は、海水塩の添加量が2%の条件下で得られ、それぞれ54.9%及び1319.0mg/L/dであった。この優れたCO2固定能からクラミドモナス・スピーシーズJSC4株が、工業ガスを用いたCO2固定への実用的応用に対応しうる株であることが確認された。(実施例1)(クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の油脂蓄積を促進するための2段階培養法の検討) 藻体中の油脂含量及び油脂生産速度を更に改良すべく、2段階培養法を試みた。先ず、2%海水塩を含有する改変Bold 3N培地を用いて約2日間、1段階目の培養を行った。次いで、窒素源の95%以上が枯渇した後、培地をそれぞれ、3%、5%、及び7%の海水塩を含有する窒素源制限培地に交換し、2段階目の培養を行った。 図11〜図14に示すように、それぞれ、3%、5%、及び7%の海水塩を含有する窒素源制限培地に交換した日から7日間、2段階目の培養を行った後のクラミドモナス・スピーシーズJSC4株の油脂含量は、それぞれ56%、61%、及び58%であった。これら油脂含量は、1段階目の培養後に得られた油脂含量約15%のおよそ4倍であった。中でも、2段階目の培養を、5%の海水塩含有培地下で7日行った場合は、海水塩濃度の上昇と共に油脂含量が有意に上昇し、油脂含量は61.2%であった。また、2段階目の培養を、3%の海水塩含有培地下で3日行った場合は、油脂生産速度が183.9mg/L/dであった。2段階培養法は、クラミドモナス・スピーシーズJSC4株の油脂含量を有意に促進し、その油脂含量は、バッチ法で得られる油脂含量よりも高いことが確認された。(実施例2)(多段階的に海水塩を加えた培地で培養したクラミドモナス・スピーシーズJSC4株における細胞増殖と油脂蓄積の効果の検討) 高濃度の海水塩含有培地下でのクラミドモナス・スピーシーズJSC4株の培養は、油脂含量を促進するが増殖率の低下をもたらすおそれがある。高い油脂生産速度を達成するために、塩濃度のストレスによる増殖阻害を軽減することが好ましい。そこで、グラジエント法を試みた。 先ず、2%海水塩を含有する改変Bold 3N培地を用いて約2日間培養を行った。次いで、窒素源の95%以上が枯渇した後、培養液中の塩濃度をそれぞれ、1日当たり、0.5%、1.0%、及び1.5%ずつ段階的に増加させて5日間培養した。結果を図15〜図18に示す。 図15〜図18に示すように、段階的海水塩を加えて培養することにより、細胞増殖を有意に阻害することなく、油脂含量の迅速な増加が確認された。この効果は、特に少量の海水塩の供給群で顕著に確認された。例えば、1日当たり、0.5%ずつ段階的に増加させて培養した場合には、223.2mg/L/dの最大油脂生産速度、及び59.4%の油脂含量が得られた。 グラジエント法で得られた油脂生産速度は、バッチ法(158.9mg/L/d)や2段階培養法(183.9mg/L/d)で得られた油脂生産速度よりも高かった。 また、グラジエント法で得られた脂肪酸の組成を図19に示す。図19中、Batchはバッチ法により得られた脂肪酸の組成を示し、Two−stageは2段階培養法により得られた脂肪酸の組成を示し、Salinity−gradientはグラジエント法により得られた脂肪酸の組成を示す。 図19に示すように、グラジエント法で得られた脂肪酸組成物は、飽和脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸が主であった。この脂肪酸組成物は、バイオ燃料を製造するために適切な品質を有していることが確認された。(実施例3)(段階的に海水塩を加えた培地で培養したクロレラ ソロキニアナ NIES−2168株(Chlorella sorokiniana NIES-2168)における細胞増殖と油脂蓄積の効果の検討) 他の海洋微細藻類においてもグラジエント法が有効であることを、クロレラ ソロキニアナ NIES−2168株(Chlorella sorokiniana NIES-2168)を用いて検討した。 先ず、2%海水塩を含有する改変Bold 3N培地を用いて約2日間培養を行った。次いで、窒素源の95%以上が枯渇した後、培養液中の塩濃度を1日当たり、0.5%ずつ段階的に増加させて培養した。結果を図21に示す。対照として、培養液中の塩濃度を2%に固定したバッチ法による培養も行った。結果を図20に示す。 図21に示すように、クロレラ ソロキニアナ NIES−2168株の油脂生産速度は、窒素源が欠乏した培養2日目の139.6mg/L/dから、197.8mg/L/dまで有意に促進された。 この結果から、グラジエント法は、他の海洋性微細藻類においても有効であることが確認された。以上で説明した各実施態様における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は各実施態様によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。 本発明によれば、藻類を用いた有用炭素成分を高効率で産生できる。 クラミドモナス(Chlamydomonas)属の耐塩性藻類を、段階的に塩濃度を増加させた培地で培養する油脂成分を産生する方法であって、培地中の塩濃度を2回以上増加させることを特徴とする油脂成分を産生する方法。 塩濃度を0.5%〜5%ずつ段階的に増加させた培地で培養する請求項1に記載の油脂成分を産生する方法。 塩濃度を1日当たり、0.5%〜2%ずつ段階的に増加させた培地で培養する請求項1又は2に記載の油脂成分を産生する方法。 培地における1段階目の塩濃度が、0.5〜5質量%の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法。 培養を窒素含有量が低い条件下で行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法。 220nmの波長において、前記培地中の硝酸塩含有量を測定した場合、該含有量が、10mg/L以下となるときに、2段階目の塩濃度を増加させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法。 前記耐塩性藻類が、クラミドモナス・スピーシーズJSC4(Chlamydomonas sp. JSC4)FERM BP−22266株である請求項1〜6のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法。 前記培地が、海水、濃縮海水、又は人工海水を含むものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法。 請求項1〜8のいずれか一項に記載の油脂成分を産生する方法により得られる油脂成分を加水分解することを特徴とする高級不飽和脂肪酸の製造方法。 前記高級不飽和脂肪酸が、オレイン酸、又はリノレイン酸である請求項9に記載の高級不飽和脂肪酸の製造方法。 耐塩性藻類を、段階的に塩濃度を増加させた培地で培養することを特徴とする油脂成分を産生する方法。配列表